説明

車両用シートの高さ調整装置

【課題】簡易かつ省スペースな構成でシートの高さを調整可能な車両用シートの高さ調整装置を提供する。
【解決手段】規制部材22は、付勢リンク13とフレーム部材15との間にて揺動軸Lを基準として同軸的に配置されて、付勢リンク13のフレーム部材15に対する揺動を規制可能に構成されている。また、スプリング21は、螺旋状に巻かれた弾性体により構成されており、その一端側21aおよび他端側21bで揺動軸Lの近傍のリンク側係合部13aおよびフレーム側係合部15aを付勢するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの高さを調整可能な車両用シートの高さ調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートの高さ調整装置として下記特許文献1に開示される車両用シートのハイト機構が知られている。このハイト機構は、操作部材に付与された動力をピニオンおよびセクタギヤを介してリヤリンクの回動角度を変えるように当該リヤリンクに伝達することで、シートをリヤリンクの回動角度に応じた任意の高さに調整、設定するように構成されている。そして、リヤリンクを含めた各リンクの回動を規制するために、ピニオン等の回動を規制するブレーキユニットが、ピニオンと操作部材との間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−290518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に係るハイト機構の構成では、各リンクの回動を規制するための規制機構が複雑な機構を有するため、ハイト機構の低コスト化が阻害されるだけでなく省スペース化をも阻害してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、簡易かつ省スペースな構成でシートの高さを調整可能な車両用シートの高さ調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の車両用シートの高さ調整装置では、車体に固定されるベース部材とシートを支持するフレーム部材とを複数のリンクで相対移動可能に連結するとともにこれら各リンクの回動角度に応じて前記ベース部材に対する前記フレーム部材の相対位置を変化させることで前記シートの高さを調整する車両用シートの高さ調整装置において、前記各リンクのうち少なくとも1つを前記シートの高さが高くなる回動方向に付勢する付勢部材と、前記付勢部材により付勢される付勢リンクと前記フレーム部材との間にて回動軸を基準として同軸的に配置されて前記付勢リンクの前記フレーム部材に対する回動を規制可能な規制部材と、前記規制部材を、前記付勢リンクの回動を規制する規制状態とその規制を解除する規制解除状態とのいずれかの状態に切り替えるための操作レバーと、を備え、前記付勢リンクには、前記回動軸の近傍にリンク側係合部および当該回動軸を中心とする円弧状のスリットが形成され、前記付勢部材は、螺旋状に巻かれた弾性体により構成されており、その一端側で前記リンク側係合部を付勢するとともに、その他端側で前記スリットを挿通する前記フレーム部材のフレーム側係合部を付勢することで、前記付勢リンクを前記回動方向に付勢することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、規制部材は、付勢リンクとフレーム部材との間にて回動軸を基準として同軸的に配置されて、付勢リンクのフレーム部材に対する回動を規制可能に構成されている。
【0008】
このため、規制部材を、一側(付勢リンク側)と他側(フレーム部材側)との相対回動を規制する簡易な機構で構成することができる。特に、規制部材として同じシートに採用されるリクライニング機構のロック機構などを流用することで標準化をすすめて、簡易かつ安価な機構で規制部材を構成することができる。
【0009】
また、付勢部材は、螺旋状に巻かれた弾性体により構成されているため小型化が容易であり、その一端側および他端側で回動軸の近傍のリンク側係合部およびフレーム側係合部を付勢するように配置されることから、当該付勢部材を回動軸近傍に省スペースで配置することができる。
したがって、簡易かつ省スペースな構成でシートの高さを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のハイト機構20を搭載するシート装置10のフレーム構造を示す斜視図である。
【図2】図1のハイト機構20の分解斜視図である。
【図3】図2の規制部材22における内歯22bおよび外歯22aの噛合状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るハイト機構20を搭載するシート装置10の一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るシート装置10は、主に、車体Bに固定されるベース部材11と、このベース部材11に対して一対の前側リンク12および一対の後側リンク13を介して支持されるシート本体14と、を備えている。このシート装置10は、ベース部材11とシート本体14のフレーム部材15とを各リンク12,13で相対移動可能に連結するとともに、これら各リンク12,13の回動角度に応じてベース部材11に対するフレーム部材15の相対位置を変化させることで、シート本体14、すなわちシートの高さが調整可能に構成されている。
【0012】
ベース部材11は、車体Bに固定されるロアレールとこのロアレールに対して長手方向に摺動可能に支持されるアッパーレールとを備えており、摺動規制状態が解除されたアッパーレールがロアレールに対して摺動することで、当該アッパーレールに支持されるシート本体14等を車体Bに対してスライドさせるスライドレール装置である。
【0013】
シート本体14は、着座者の座部を受けるシートクッションおよび着座者の背部を受けるシートバック(図示略)と、これらシートクッションおよびシートバックを傾動可能に支持するフレーム部材15と、シートバックをシートクッションに対して傾動するためのリクライニング装置16とを備えている。このリクライニング装置16は、シートクッションを支持するシートクッションフレームおよびシートバックを支持するシートバックフレームの一方に連結される内歯と他方に連結される外歯とが噛合することにより両フレームの相対回動、すなわちシートバックの傾動を規制し、内歯および外歯の噛合を解除することでその規制を解除する公知の機構として構成されている。
【0014】
リクライニング装置16の近傍には、シートの高さを調整するためのハイト機構20が設けられており、このハイト機構20は、図2に示すように、スプリング21と、規制部材22と、操作レバー23とを備えている。
【0015】
スプリング21は、螺旋状に巻かれた弾性体により構成されており、一端側21aおよび他端側21bが後述するリンク側係合部13aおよびフレーム側係合部15aに係合するように屈曲して形成されている。このスプリング21は、リクライニング装置16の近傍に配置される後側リンク13(以下、付勢リンク13ともいう)をシートの高さが高くなる回動方向(以下、起立方向ともいう)に付勢する役割を果たすものである。なお、この起立方向に対して、シートの高さが低くなる回動方向を後傾方向ともいう。
【0016】
規制部材22は、付勢リンク13とフレーム部材15との間にて回動軸Lを基準として同軸的に配置されて、付勢リンク13のフレーム部材15に対する回動を規制する役割を果たすものである。この規制部材22は、図3に示すように、付勢リンク13およびフレーム部材15のいずれか一方に固定されるフレームの内周面に形成される外歯22aと、他方に固定されるフレームに支持される一対の内歯22bと、両内歯22bを外歯22aに噛合させるためのカム22cとを備えている。
【0017】
そして、カム22cがロック位置に回動してこのカム22cにより外方に付勢された両内歯22bが外歯22aに噛合するとき、付勢リンク13のフレーム部材15に対する回動が規制される。また、カム22cがロック解除位置に回動してこのカム22cによる両内歯22bへの付勢が解除されると、両内歯22bと外歯22aとの噛合が解除されて、付勢リンク13のフレーム部材15に対する回動の規制が解除される。なお、規制部材22は、上述したリクライニング装置16の公知の規制機構とほぼ同様に構成されている。
【0018】
操作レバー23は、連結片23aを介して規制部材22のカム22cに回動軸L上にて連結されている。この操作レバー23は、その操作に応じてカム22cをロック位置およびロック解除位置に回動させることで、規制部材22を、付勢リンク13の回動を規制する規制状態とその規制を解除する規制解除状態とのいずれかの状態に切り替える役割を果たすものである。そして、連結片23aがコイルばね23bにより規制方向に付勢されることで、操作レバー23は、外力等が作用しない限り、上記規制状態に対応する位置を維持する。
【0019】
また、上述したフレーム部材15には、図2に示すように、回動軸Lの近傍にて内方に突出するフレーム側係合部15aが形成されている。また、付勢リンク13には、回動軸Lの近傍にて内方に突出するリンク側係合部13aが形成されるとともにこのリンク側係合部13aの近傍にスリット13bが形成されている。このスリット13bは、回動時にフレーム側係合部15aが相対移動可能に挿通するように、回動軸Lを中心として円弧状に形成されている。
【0020】
そして、スプリング21は、その一端側21aにてリンク側係合部13aに係合するとともに、その他端側21bにてスリット13bを挿通するフレーム側係合部15aに係合するように、組み付けられる。このため、リンク側係合部13aおよびフレーム側係合部15aは、スプリング21により上記起立方向に対応する方向に付勢されることとなる。これにより、付勢リンク13は、スプリング21によりフレーム部材15に対して起立方向に常時付勢されることとなる。
【0021】
以上のように構成されるハイト機構20の作動について説明する。
操作レバー23が遥動操作されず規制部材22のカム22cがロック解除位置に回動しない場合には、規制部材22は規制状態を維持する。これにより、付勢リンク13の回動の規制が維持されるので、シートの高さが一定に維持される。
【0022】
そして、操作レバー23が上方へ遥動操作されると、規制部材22のカム22cがロック解除位置に回動するので、規制部材22による規制状態が解除され、付勢リンク13の回動の規制が解除される。
【0023】
このとき、シート本体14に対して外力が作用しなければ、スプリング21の付勢力によりリンク側係合部13aおよびフレーム側係合部15aが上記起立方向に対応する方向に付勢されて、付勢リンク13および他のリンク12,13がフレーム部材15に対して起立方向に回動しシートの高さが高くなる。なお、フレーム側係合部15aが付勢リンク13におけるスリット13bの一側縁13cに当接するとき、シートの高さが最も高くなる。
【0024】
また、付勢リンク13の回動の規制が解除された状態でシート本体14に対して乗員の自重等により押し下げる力が作用すると、スプリング21の付勢力に抗してリンク側係合部13aおよびフレーム側係合部15aが上記後傾方向に対応する方向に回動されて、付勢リンク13および他のリンク12,13がフレーム部材15に対して後倒方向に回動しシートの高さが低くなる。なお、フレーム側係合部15aが付勢リンク13におけるスリット13bの他側縁13dに当接するとき、シートの高さが最も低くなる。
【0025】
そして、上述のようにシートの高さを調整した後に操作レバー23を元の位置に戻すと、規制部材22のカム22cがロック位置に回動するので、規制部材22が規制状態となる。これにより、付勢リンク13の回動が規制されて、シートの高さが調整後の高さに維持される。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係るハイト機構20では、規制部材22は、付勢リンク13とフレーム部材15との間にて回動軸Lを基準として同軸的に配置されて、付勢リンク13のフレーム部材15に対する回動を規制可能に構成されている。
【0027】
このため、規制部材22を、一側(付勢リンク13側)と他側(フレーム部材15側)との相対回動を規制する簡易な機構で構成することができる。特に、規制部材として同じシートに採用されるリクライニング機構16のロック機構などを流用することで標準化をすすめて、簡易かつ安価な機構で規制部材22を構成することができる。
【0028】
また、スプリング21は、螺旋状に巻かれた弾性体により構成されているため小型化が容易であり、その一端側21aおよび他端側21bで回動軸Lの近傍のリンク側係合部13aおよびフレーム側係合部15aを付勢するように配置されることから、当該スプリング21を回動軸L近傍に省スペースで配置することができる。
したがって、簡易かつ省スペースな構成でシートの高さを調整することができる。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)付勢リンク13におけるスリット13bの一側縁13cは、要求されるシートの高さの上限位置に応じて形成されてもよい。また、付勢リンク13におけるスリット13bの他側縁13dは、要求されるシートの高さの下限位置に応じて形成されてもよい。すなわち、スリット13bの形状に応じて、付勢リンク13とフレーム部材15との回動範囲を設定することができる。
【0030】
(2)シートの高さが下限位置近傍にあるときのフレーム部材15および各リンク12,13の少なくともいずれかを上方に付勢する付勢手段を設けてもよい。このため、操作レバー23が上方へ遥動操作されて付勢リンク13の回動の規制が解除されるとき、乗員の自重によりシート本体14が押し下がる場合でも、上記付勢手段により下限位置近傍にて付勢される。これにより、規制解除時に、シート本体14が下がりきって他の部材に衝突することから大きな衝撃力が乗員に作用することを防止することができる。
【符号の説明】
【0031】
10…シート装置
11…ベース部材
12…前側リンク
13…後側リンク,付勢リンク
13a…リンク側係合部
13b…スリット
14…シート本体
15…フレーム部材
15a…フレーム側係合部
20…ハイト機構(車両用シートの高さ調整装置)
21…スプリング
21a…一端側
21b…他端側
22…規制部材
23…操作レバー
L…回動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定されるベース部材とシートを支持するフレーム部材とを複数のリンクで相対移動可能に連結するとともにこれら各リンクの回動動角度に応じて前記ベース部材に対する前記フレーム部材の相対位置を変化させることで前記シートの高さを調整する車両用シートの高さ調整装置において、
前記各リンクのうち少なくとも1つを前記シートの高さが高くなる回動方向に付勢する付勢部材と、
前記付勢部材により付勢される付勢リンクと前記フレーム部材との間にて回動軸を基準として同軸的に配置されて前記付勢リンクの前記フレーム部材に対する回動を規制可能な規制部材と、
前記規制部材を、前記付勢リンクの回動を規制する規制状態とその規制を解除する規制解除状態とのいずれかの状態に切り替えるための操作レバーと、を備え、
前記付勢リンクには、前記回動軸の近傍にリンク側係合部および当該回動軸を中心とする円弧状のスリットが形成され、
前記付勢部材は、螺旋状に巻かれた弾性体により構成されており、その一端側で前記リンク側係合部を付勢するとともに、その他端側で前記スリットを挿通する前記フレーム部材のフレーム側係合部を付勢することで、前記付勢リンクを前記回動方向に付勢することを特徴とする車両用シートの高さ調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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