説明

車両用シート格納装置

【課題】 極めて簡易な操作でヘッドレストを格納してシートクッションに対するシートバックの傾斜角度のロックを解除することができる車両用シート格納装置を提供する。
【解決手段】 車両用シート格納装置は、ヘッドレスト13が格納され、且つ、シートクッション(ロアアーム11)に対しシートバック12が傾斜されて着座時シート状態から非着座時シート状態へと切り替えられる。ヘッドレスト13の格納に連動して、シートクッションに対するシートバック12の傾斜角度のロックが解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストが格納され、且つ、シートクッションに対しシートバックが傾斜されて着座時シート状態から非着座時シート状態へと切り替えられる車両用シート格納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シート格納装置としては種々のものが提案されており、例えば図7に示したように、リアシート90においてシートクッション91に対しシートバック92を前側に傾斜させて同シートクッション91に積み重ねるように折り畳むものが知られている。そして、こうしたリアシート90は、折り畳む際のフロントシート93との干渉を回避するため、ヘッドレスト94の格納機能を有している(例えば特許文献1など)。
【0003】
つまり、ヘッドレスト94を着座時と同様に立ち上がったままでは、折り畳む際のヘッドレスト94の先端軌跡が曲線C1となって図7に斜線で示した領域Dにおいてフロントシート93と干渉することになり、折り畳み不可となってしまう。従って、折り畳む際は、ヘッドレスト94を格納してその先端軌跡を曲線C2とし、フロントシート93との干渉を回避している。
【0004】
なお、曲線C1は、着座時にシートバック92の傾斜角度を調整する際のヘッドレスト94の先端軌跡と一致するが、ヘッドレスト94がフロントシート93と干渉するまでシートバック92が前倒される状態での使用形態がないことはいうまでもない。
【特許文献1】特開2004−8493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、ヘッドレストの格納のための操作とシートクッションに対するシートバックの傾斜角度のロックを解除するための操作とが互いに独立しており、これらの操作を予め定めた手順に従って行うことが必要である。あるいは、手順を誤って操作をした場合には、当該操作のやり直しを余儀なくされて煩わしいものとなっている。
【0006】
本発明の目的は、極めて簡易な操作でヘッドレストを格納してシートクッションに対するシートバックの傾斜角度のロックを解除することができる車両用シート格納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ヘッドレストが格納され、且つ、シートクッションに対しシートバックが傾斜されて着座時シート状態から非着座時シート状態へと切り替えられる車両用シート格納装置において、前記ヘッドレストの格納に連動して、前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度のロックを解除することを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シート格納装置において、前記ヘッドレストの格納に連動して、前記傾斜角度の調整可能範囲を前記着座時シート状態において設定されている該傾斜角度の調整可能範囲から前記非着座時シート状態での該傾斜角度まで拡張することを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用シート格納装置において、前記格納されたヘッドレストが復帰されることで、前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲での該傾斜角度をロック可能にすることを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用シート格納装置において、前記ヘッドレストの格納完了状態又は該ヘッドレストの復帰状態では、前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲での該傾斜角度をロック可能にすることを要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、ヘッドレストが格納され、且つ、シートクッションに対しシートバックが傾斜されて着座時シート状態から非着座時シート状態へと切り替えられる車両用シート格納装置において、前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度をロックするロック部材と、前記シートバックに支持され、前記ヘッドレストの格納に連動する連動部材と、前記連動部材に連結され、該連動部材に連動して前記ロック部材による前記傾斜角度のロックを解除するロック解除部材とを備えたことを要旨とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両用シート格納装置において、前記シートバックに支持され、前記連動部材と前記ロック解除部材との連結を仲介する傾斜角度切替部材と、前記シートクッションに設けられた係止部材とを備え、前記傾斜角度切替部材は、前記係止部材に係止されて前記傾斜角度の調整可能範囲を前記着座時シート状態において設定されている該傾斜角度の調整可能範囲に規制するとともに、前記連動部材に連動して前記係止部材との係止が回避され、前記傾斜角度の調整可能範囲を前記着座時シート状態において設定されている該傾斜角度の調整可能範囲から前記非着座時シート状態での該傾斜角度まで拡張することを要旨とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の車両用シート格納装置において、前記ロック解除部材は、前記格納されたヘッドレストが復帰されることで、前記連動部材に連動して前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲での前記ロック部材による該傾斜角度のロックを可能にすることを要旨とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項5又は6に記載の車両用シート格納装置において、前記ロック解除部材は、前記ヘッドレストの格納完了状態又は該ヘッドレストの復帰状態では、前記連動部材を介して前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲での前記ロック部材による該傾斜角度のロックを可能にすることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明では、例えば周辺部材(隣接シートなど)との干渉を回避するためのヘッドレストの格納を前提に、これに連動してシートクッションに対するシートバックの傾斜角度のロックが解除されて傾斜可能とされる。従って、ヘッドレストを格納さえすれば、その他の操作部材(例えば前記傾斜角度のロック解除用の操作レバーなど)に煩わされることなく着座時シート状態から非着座時シート状態への切り替えが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、前記ヘッドレストの格納に連動して、前記傾斜角度の調整可能範囲が、前記着座時シート状態において設定されている該傾斜角度の調整可能範囲から前記非着座時シート状態での該傾斜角度まで拡張される。換言すれば、前記ヘッドレストが格納されない限り、前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲を超えた傾斜角度には調整し得ず、着座に不適な傾斜角度で乗員の着座を許すことを回避できる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、前記格納されたヘッドレストが復帰されない限り、前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲であっても前記傾斜角度をロックし得ず、着座に不適なヘッドレストを格納したままでの乗員の着座を許すことを回避できる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、前記ヘッドレストの格納完了状態又は該ヘッドレストの復帰状態では、前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲での該傾斜角度のロックが可能となる。従って、前記ヘッドレストの格納の如何に関わらず前記傾斜角度のロックが可能となり、例えば前記着座時シート状態において視野の拡大のためにヘッドレストのみを格納するといった用途にも供し得る。また、乗員の着座時には、ヘッドレストのみを復帰させればよいことから、着座時シート状態への切り替えを極めて簡易に行うことができる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、例えば周辺部材(隣接シートなど)との干渉を回避するためのヘッドレストの格納を前提に、これに連動する前記連動部材を介して前記ロック解除部材によりシートクッションに対するシートバックの傾斜角度のロックが解除されて傾斜可能とされる。従って、ヘッドレストを格納さえすれば、その他の操作部材(例えば前記ロック部材による前記傾斜角度のロック解除用の操作レバーなど)に煩わされることなく着座時シート状態から非着座時シート状態への切り替えが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明では、前記ヘッドレストの格納に連動する前記連動部材を介して前記係止部材との係止が回避され、前記傾斜角度切替部材により前記傾斜角度の調整可能範囲が、前記着座時シート状態において設定されている該傾斜角度の調整可能範囲から前記非着座時シート状態での該傾斜角度まで拡張される。換言すれば、前記ヘッドレストが格納されない限り、前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲を超えた傾斜角度には調整し得ず、着座に不適な傾斜角度で乗員の着座を許すことを回避できる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、前記格納されたヘッドレストが復帰されない限り、前記ロック部材は前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲であっても前記傾斜角度をロックし得ず、着座に不適なヘッドレストを格納したままでの乗員の着座を許すことを回避できる。
【0022】
請求項8に記載の発明では、前記ヘッドレストの格納完了状態又は該ヘッドレストの復帰状態では、前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲での前記ロック部材による該傾斜角度のロックが可能となる。従って、前記ヘッドレストの格納の如何に関わらず前記ロック部材による前記傾斜角度のロックが可能となり、例えば前記着座時シート状態において視野の拡大のためにヘッドレストのみを格納するといった用途にも供し得る。また、乗員の着座時には、ヘッドレストのみを復帰させればよいことから、着座時シート状態への切り替えを極めて簡易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2は、本発明が適用される自動車などの車両に搭載される車両用シートを概略的に示す側面図である。図1及び図2において右側が車両の後側に相当する。この車両用シートは、運転席や助手席などの後側に配置されるリアシートとして搭載されている。
【0024】
同図に示されるように、この車両用シートは、シートクッションの骨格をなすロアアーム11と、同ロアアーム11に対し回動中心O1にて回動可能に連結されたシートバック12と、同シートバック12の先端部前側に回動可能に連結されたヘッドレスト13とを備えている。本実施形態において、上記ヘッドレスト13は、これを前傾させて折り畳むように一側方向(図1の反時計回転方向)に回動させることで格納される。このヘッドレスト13の格納は、後述する車両用シートの格納時に車室内の周辺部材(フロントシートなど)との干渉を回避し、あるいはシート全体をコンパクトにまとめて収納性を向上させるためのものである。
【0025】
また、この車両用シートは、これらロアアーム11及びシートバック12の回動中心O1と同軸に配置された周知のロック部材14と、回動中心O1にて回動可能に連結されたロック解除部材としての操作レバー15とを備えている。これらロック部材14及び操作レバー15は、相互に回転力を伝達しうるように連結されている。
【0026】
上記ロック部材14は、図示しない付勢部材の付勢力にて前記ロアアーム11及び前記シートバック12の相対回動を規制し、前記シートクッション(ロアアーム11)に対するシートバック12の傾斜角度をロックする。このとき、ロック部材14及び操作レバー15間に回転力の伝達はなく、操作レバー15はシートバック12の長手方向に延出する態様で保持されている。
【0027】
一方、上記ロック部材14は、操作レバー15が一側方向(図1の反時計回転方向)に回動操作されてその回転力が伝達されると、付勢部材に抗して前記ロアアーム11及び前記シートバック12の相対回動を許容し、前記シートクッション(ロアアーム11)に対するシートバック12の傾斜角度のロックを解除する。従って、この状態では、シートクッション(ロアアーム11)に対しシートバック12を傾斜させることが可能となる。また、上記操作レバー15の操作力が解放されると、上記ロック部材14は、付勢部材の付勢力にて再び前記ロアアーム11及び前記シートバック12の相対回動を規制する。
【0028】
前記シートバック12には、連動部材を構成する連動リンク21と、2重管式の連動ケーブル22と、傾斜角度切替部材としてのストッパリンク23とが設けられている。上記連動リンク21は、前記シートバック12の先端部後側に回動可能に連結されており、その先端を前記ヘッドレスト13の回動中心近傍に延出させている。この連動リンク21の長手方向中間部には、一端がシートバック12に係止されたコイルスプリング24の他端が係止されている。上記連動リンク21は、上記コイルスプリング24により一側方向(図1の反時計回転方向)に回動するように付勢されており、当該方向への回動が上記シートバック12に設けられたストッパ片12aにて規制されている。一方、前記ヘッドレスト13の基端部には、径方向に凹設された連動用カム13aが形成されている。
【0029】
従って、上記ヘッドレスト13を格納すべくこれを前傾させて折り畳むように一側方向(図1の反時計回転方向)に回動させると、上記連動用カム13aにより上記連動リンク21の先端が押圧され、同連動リンク21は前記コイルスプリング24に抗して他側方向(図1の時計回転方向)に回動する(図2参照)。そして、このヘッドレスト13の格納状態では、上記連動用カム13aにより上記連動リンク21の先端が係止されたままとなり、同連動リンク21は前記コイルスプリング24に抗して当該回動位置に保持される。また、上記格納されたヘッドレスト13を復帰すべくこれを立ち上げるように他側方向(図1の時計回転方向)に回動させると、上記連動リンク21は連動用カム13aから解放され、前記コイルスプリング24の付勢力にてストッパ片12aに係止されるまで一側方向(図1の反時計回転方向)に回動する。
【0030】
前記連動ケーブル22は、連動リンク21の下方において一方のケーブル端末22aがシートバック12に固定されている。また、上記連動ケーブル22は、ストッパリンク23の上方において他方のケーブル端末22bがシートバック12に固定されている。そして、上記連動ケーブル22が有する内部ワイヤ22cの一端(一方のケーブル端末22aから突出する先端)は連動リンク21の先端部に連結されており、同内部ワイヤ22cの他端(他方のケーブル端末22bから突出する先端)はストッパリンク23に連結されている。
【0031】
従って、上記連動ケーブル22は、前記連動リンク21が他側方向(図1の時計回転方向)に回動することで、これに連動してケーブル端末22a側から内部ワイヤ22cを繰り出すとともに、ケーブル端末22b側から内部ワイヤ22cを引き込む。また、上記連動ケーブル22は、以下に説明するストッパリンク23の回動に連動してケーブル端末22a側から内部ワイヤ22cを引き込むとともに、ケーブル端末22b側から内部ワイヤ22cを繰り出す。
【0032】
すなわち、前記ストッパリンク23は、前記シートバック12の基端部前側に回動可能に連結されており、上下に分岐する連動リンク部23a及びストッパリンク部23bを有している。そして、上記ストッパリンク23は、上記連動リンク部23aが前記操作レバー15の回動中心O1の上方を通過するようにその先端を後側に延出させている。また、上記連動リンク部23aの先端部には、一端がシートバック12に係止されたコイルスプリング25の他端が係止されている。上記連動リンク部23a(ストッパリンク23)は、上記コイルスプリング25により他側方向(図1の時計回転方向)に回動するように付勢されている。そして、前記ケーブル端末22bから突出する内部ワイヤ22cの他端は、連動リンク部23aの先端部に連結されている。
【0033】
従って、前記連動ケーブル22は、前記ストッパリンク23がコイルスプリング25の付勢力にて他側方向(図1の時計回転方向)に回動することで、前記連動リンク21がストッパ片12aに係止されるまでケーブル端末22a側から内部ワイヤ22cを引き込むとともに、ケーブル端末22b側から内部ワイヤ22cを繰り出す。なお、前記連動リンク部23aの上端面は、長手方向中間部が前記操作レバー15の回動中心O1の径方向に湾出するように曲成されたガイド面23cを形成している。
【0034】
また、上記ストッパリンク23は、前記ストッパリンク部23bが前記シートバック12の回動中心O1の周方向に沿うようにその先端を後側に延出させている。このストッパリンク部23bは、前記ヘッドレスト13の格納時と復帰時(立ち上がり時)との間で、前記ロアアーム11に対する前記シートバック12の傾斜角度の調整可能範囲を切り替えるためのものである。
【0035】
詳述すると、前記ロアアーム11には係止部材としてのストッパ片11aが固設されており、図1で示したヘッドレスト13の復帰状態では、前記ストッパリンク部23bの先端面によって形成される当接面23dが前記回動中心O1の周方向でこのストッパ片11aに対向している。また、前記シートバック12には、上記ストッパリンク23の回動中心の近傍で前記回動中心O1の径方向に突出するストッパ12bが形成されており、回動中心O1の周方向でこのストッパ片11aに対向している。いうまでもなく、上記当接面23dは、ストッパリンク部23bの延出分だけストッパ12bよりもストッパ片11aの近傍に配置されている。従って、ヘッドレスト13の復帰状態では、前記シートバック12を前傾させる際の前記傾斜角度の調整可能範囲は、上記ストッパリンク23の当接面23dがストッパ片11aに係止されるまでの範囲に規制されている。なお、ヘッドレスト13の復帰状態(立上り状態)で、このように当接面23dにて前記傾斜角度の調整可能範囲が規制される状態を着座時シート状態といい、このときの傾斜角度の調整可能範囲は前記シートバック12の過剰な前傾を抑制する着座に好適な範囲に設定されている。従って、この着座時シート状態では、乗員は上述の態様で設定されている傾斜角度の調整可能範囲でその要望に合わせて当該傾斜角度を調整・ロックすることが可能である。
【0036】
一方、図2で示したヘッドレスト13の格納状態では、前記ストッパリンク23の一側方向への回動に伴い前記当接面23dが前記回動中心O1の径方向内側に移動して半径方向に小さくなり、回動中心O1の周方向で上記ストッパ片11aから外れる。このとき、前記ストッパ12bのみがストッパ片11aに対向することになる。従って、ヘッドレスト13の格納状態では、前記シートバック12を前傾させる際の前記傾斜角度の調整可能範囲は、上記シートバック12のストッパ12bがストッパ片11aに係止されるまでの範囲に拡張されている。なお、ヘッドレスト13が格納され、且つ、前記ストッパ12bがストッパ片11aに係止されるまで前記ロアアーム11に対してシートバック12が傾斜(前傾)されている状態を非着座時シート状態といい、車両用シートを格納する際のシート姿勢に一致している。
【0037】
前記操作レバー15には、その回動中心O1の周方向一側(図1の右側)に延出する延出部15aが形成されており、この延出部15aには前記ガイド面23cと当接するピン15bが突設されている。上記ピン15bは、図1で示したヘッドレスト13の復帰状態において前記傾斜角度のロックを解除すべく上記操作レバー15が一側方向(図1の反時計回転方向)に回動操作される際に、前記ガイド面23cに沿って移動する。従って、上記操作レバー15の操作がストッパリンク23と実質的に干渉することはない。
【0038】
一方、前記ストッパリンク23が一側方向(図1の反時計回転方向)に回動すると、上記操作レバー15はガイド面23cによりピン15bが押圧されることで、これに連動して一側方向に回動する。このとき、前記傾斜角度のロックが解除されることは既述のとおりである。
【0039】
ここで、本実施形態の動作を総括して説明する。まず、図1で示したヘッドレスト13の復帰状態(着座時シート状態)からの動作を説明する。この状態で、上記ヘッドレスト13を格納すべくこれを一側方向(図1の反時計回転方向)に回動させると、上記連動用カム13aにより上記連動リンク21の先端が押圧され、同連動リンク21は前記コイルスプリング24に抗して他側方向(図1の時計回転方向)に回動する(図2参照)。
【0040】
このとき、上記連動ケーブル22は、前記ケーブル端末22a側から内部ワイヤ22cを繰り出すとともに、ケーブル端末22b側から内部ワイヤ22cを引き込む。これにより、前記ストッパリンク23は連動ケーブル22(内部ワイヤ22c)により引っ張られて、前記コイルスプリング25に抗して一側方向(図1の反時計回転方向)に回動する。これに伴い、前記当接面23dが前記回動中心O1の径方向内側に移動し、前記シートバック12を前傾させる際の前記傾斜角度の調整可能範囲は、上記シートバック12のストッパ12bがストッパ片11aに係止されるまでの範囲に拡張される。同時に、上記操作レバー15は前記ガイド面23cがピン15bを押圧することで一側方向(図1の反時計回転方向)に回動し、前記ロック部材14による前記傾斜角度のロックを解除する。
【0041】
つまり、前記ヘッドレスト13が格納されると、そのときの傾斜角度に関係なくこれに連動して前記ロック部材14による前記傾斜角度のロックが解除される。そして、この状態で前記ロアアーム11に対し前記シートバック12をストッパ12bがストッパ片11aに係止されるまで傾斜(前傾)させると、非着座時シート状態へと切り替えられる。
【0042】
一方、非着座時シート状態からシートバック12を引き起こしても、ヘッドレスト13が格納状態である限り前記傾斜角度のロックが解除のままであることはいうまでもない。引き続き、上記ヘッドレスト13を復帰すべくこれを他側方向(図2の時計回転方向)に回動させると、上記連動リンク21は連動用カム13aから解放され、前記コイルスプリング24の付勢力にてストッパ片12aに係止されるまで一側方向(図2の反時計回転方向)に回動する。
【0043】
このとき、前記連動ケーブル22は、前記ストッパリンク23がコイルスプリング25の付勢力にて他側方向(図1の時計回転方向)に回動することで、前記連動リンク21がストッパ片12aに係止されるまでケーブル端末22a側から内部ワイヤ22cを引き込むとともに、ケーブル端末22b側から内部ワイヤ22cを繰り出す。これに伴い、前記当接面23dが前記回動中心O1の周方向で前記ストッパ片11aに対向することになり、前記シートバック12を前傾させる際の前記傾斜角度の調整可能範囲は、着座時シート状態において設定されている傾斜角度の調整可能範囲に規制される。同時に、上記操作レバー15は前記ガイド面23cによるピン15bの押圧から解放されることで他側方向(図1の時計回転方向)に回動し、前記ロック部材14による前記傾斜角度のロックを許容する。つまり、前記ヘッドレスト13が復帰されると、着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲での同傾斜角度のロックが可能とされる。
【0044】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、前記ヘッドレスト13の格納に連動する連動リンク21、連動ケーブル22及びストッパリンク23を介して前記操作レバー15によりシートクッション(ロアアーム11)に対するシートバック12の傾斜角度のロックが解除されて傾斜可能とされる。従って、ヘッドレスト13を格納さえすれば、操作レバー15の手動による操作に煩わされることなく着座時シート状態から非着座時シート状態への切り替えが可能となる。
【0045】
(2)本実施形態では、前記ヘッドレスト13の格納に連動する連動リンク21、連動ケーブル22及びストッパリンク23を介して前記ストッパ片11aとの係止が回避される。そして、前記ストッパリンク23(ストッパリンク部23b)により前記傾斜角度の調整可能範囲が、前記着座時シート状態において設定されている傾斜角度の調整可能範囲から前記非着座時シート状態での傾斜角度まで拡張される。換言すれば、前記ヘッドレスト13が格納されない限り、前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲を超えた傾斜角度には調整し得ず、着座に不適な傾斜角度で乗員の着座を許すことを回避できる。
【0046】
(3)本実施形態では、前記格納されたヘッドレスト13が復帰されない限り、前記ロック部材14は前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲であっても同傾斜角度をロックし得ず、着座に不適なヘッドレストを格納したままでの乗員の着座を許すことを回避できる。つまり、乗員は、ヘッドレスト13の復帰を忘れたままで着座し得ず、安全性を向上することができる。
【0047】
(4)本実施形態では、比較的形態変更の自由度が大きいヘッドレスト13の格納(回動)を利用して、これに連動してロック部材14による前記傾斜角度のロックを解除するようにしたことで、設計の自由度を増大することができる。つまり、上記ヘッドレスト13の広い回動範囲を利用することで、ロック部材14による前記傾斜角度のロックを解除するための構成をより汎用化することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様にヘッドレストの格納に連動してシートクッション(ロアアーム11)に対するシートバック12の傾斜角度のロックを解除するものの、格納完了時に再びロックし得るように変更した構成であるため、同様の部分については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
図3〜図6は、本発明が適用される自動車などの車両に搭載される車両用シートを概略的に示す側面図である。同図に示されるように、前記シートバック12の先端部前側には、ヘッドレスト31が回動可能に連結されている。そして、上記シートバック12には、前記連動リンク21に代えて連動部材を構成する第1連動リンク32及び第2連動リンク33が設けられている。
【0050】
上記第1連動リンク32は、前記シートバック12の先端部後側に回動可能に連結されており、その先端を前記ヘッドレスト31の回動中心近傍に延出させている。この第1連動リンク32の長手方向中間部には、前記コイルスプリング24の他端が係止されている。上記第1連動リンク32は、上記コイルスプリング24により一側方向(図3の反時計回転方向)に回動するように付勢されており、当該方向への回動が前記ストッパ片12aにて規制されている。また、前記第1連動リンク32の先端部には、前記内部ワイヤ22cの一端(一方のケーブル端末22aから突出する先端)が連結されている。
【0051】
前記第2連動リンク33は、前記第1連動リンク32の先端部に回動可能に連結されている。この第2連動リンク33は、第1連動リンク32の基端側(回動中心側)に延出しており、その先端部に突設された係止ピン33aが第1連動リンク32に形成された長孔32aに挿通されることで同第1連動リンク32と係合している。この長孔32aは上記第2連動リンク33の回動中心の周方向に伸びており、同第2連動リンク33は係止ピン33aが長孔32aの周方向一側及び他側の内壁面に係止されるまでの範囲で第1連動リンク32に対する相対回動が許容されている。
【0052】
また、上記第2連動リンク33は、第1連動リンク32よりも前記ヘッドレスト31の回動中心近傍に更に延出するリンク部33bを有している。一方、前記ヘッドレスト13の基端部には、径方向に伸びる一対の第1連動用カム31a及び第2連動用カム31bが形成されている。上記第1連動用カム31aは、ヘッドレスト31の一側方向(図3の反時計回転方向)の回動において第2連動用カム31bよりも進角側に配置されている。
【0053】
従って、上記ヘッドレスト31を格納すべくこれを前傾させて折り畳むように一側方向(図3の反時計回転方向)に回動させると、上記第1連動用カム31aにより上記第2連動リンク33のリンク部33bが押圧される。このとき、第2連動リンク33の係止ピン33aが長孔32aの周方向一側(図3の下側)の内壁面に係止されると、これら第1及び第2連動リンク32,33の相対回動が規制されこれらは一体となって前記コイルスプリング24に抗して他側方向(図3の時計回転方向)に回動する(図4参照)。
【0054】
なお、この第1連動リンク32の回動により、これに連動して前記ロック部材14による前記傾斜角度のロックが解除され、併せて前記シートバック12を前傾させる際の前記傾斜角度の調整可能範囲が上記シートバック12のストッパ12bがストッパ片11aに係止されるまでの範囲に拡張されることは第1の実施形態と同様である。
【0055】
そして、図4に示したヘッドレスト31の格納を完了しつつある状態で前記ロアアーム11に対し前記シートバック12をストッパ12bがストッパ片11aに係止されるまで傾斜(前傾)させると、同ヘッドレスト31の格納完了とともに非着座時シート状態へと切り替えられる(図5参照)。
【0056】
図5に示すように、上記ヘッドレスト31の格納完了時には、前記第2連動リンク33のリンク部33bは、上記第1連動用カム31aを乗り越えて第2連動用カム31bに対向する。このとき、上記第2連動リンク33は解放され、前記第1連動リンク32はこれと一体で前記コイルスプリング24の付勢力にてストッパ片12aに係止されるまで一側方向(図5の反時計回転方向)に回動する。これにより、前記ロック部材14による前記傾斜角度のロックが許容されることは既述のとおりである。また、これに伴い前記当接面23dが前記回動中心O1の径方向外側に移動する(戻る)が、前記ストッパリンク部23bは前記ストッパ片11aを迂回するように曲成されており、非着座時シート状態において同ストッパリンク部23bがストッパ片11aと干渉することはない。
【0057】
さらに、前記操作レバー15の回動操作にてロック部材14による前記傾斜角度のロックを解除し、図6に示すように非着座時シート状態からシートバック12を引き起こすと、同操作レバー15を解放することでヘッドレスト31の格納の如何に関わらず前記傾斜角度がロックされる。そして、引き続き、上記ヘッドレスト13を復帰すべくこれを他側方向(図6の時計回転方向)に回動させると、上記第2連動用カム31bがリンク部33bと当接するものの、第2連動リンク33は係止ピン33aが長孔32aの内壁面に係止されるまでの範囲で一側方向(図6の反時計回転方向)に回動(揺動)することでこれを吸収する。このときの第2連動リンク33の揺動は、上記第1連動リンク32と実質的に干渉することはなく、ヘッドレスト31の復帰時に前記ロック部材14による前記傾斜角度のロックが解除されることはない。そして、上記ヘッドレスト31の復帰完了時には、上記リンク部33bは、上記第2連動用カム31bを乗り越えて第1連動用カム31aに対向する(図3参照)。
【0058】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)(2)(4)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、前記ヘッドレスト31の格納完了状態又は同ヘッドレスト31の復帰状態では、前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲での前記ロック部材14による同傾斜角度のロックが可能となる。従って、前記ヘッドレスト31の格納の如何に関わらず前記ロック部材14による前記傾斜角度のロックが可能となり、例えば前記着座時シート状態において視野の拡大のためにヘッドレストのみを格納するといった用途にも供し得る。また、乗員の着座時には、ヘッドレスト31のみを復帰させればよいことから、着座時シート状態への切り替えを極めて簡易に行うことができる。
【0059】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記第2の実施形態において、第1連動リンク32に係止ピンを突設し、第2連動リンク33にこれが挿通される長孔を形成してもよい。
【0060】
・前記各実施形態において、ストッパリンク23及びその周辺構造を割愛し、ヘッドレスト13,31の格納に連動してロック部材14による前記傾斜角度のロックを解除するのみの構成を採用してもよい。
【0061】
・前記各実施形態において、前記連動ケーブル22は、連動リンク21又は第1連動リンク32とストッパリンク23とを連動しうるのであれば2重管式でなくてもよい。
・前記各実施形態においては、操作レバー15の回動中心は、回動中心O1からシフトさせてもよい。
【0062】
・前記各実施形態において、ヘッドレストの格納は、これを後傾させるように回動させて行ってもよい。あるいは、ヘッドレストの格納は、これをシートバック12側に引き込むようにスライドさせて行ってもよい。要は、これら形態でのヘッドレストの格納に連動してロック部材14による前記傾斜角度のロックを解除できるのであればよい。
【0063】
・前記各実施形態において、車両用シートの格納にあたっては、シートクッション(ロアアーム11)に対してシートバック12を後傾させるようにしてもよい。また、上記シートバック12の前傾、後傾によらず、これに合わせて車両用シートを車両フロアに設けた収納部(床下収納など)に収納するようにしてもよい。
【0064】
・本発明は、シート不使用時にこれを収納部に収納しうる収納シート、テーブル化可能なテーブルシート、タンブルシートなどへの適用が可能である。
・本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態を概略的に示す側面図。
【図2】同実施形態の動作を概略的に示す側面図。
【図3】本発明の第2実施形態を概略的に示す側面図。
【図4】同実施形態の動作を概略的に示す側面図。
【図5】同実施形態の動作を概略的に示す側面図。
【図6】同実施形態の動作を概略的に示す側面図。
【図7】ヘッドレストを格納する必要性を示す説明図。
【符号の説明】
【0066】
11…シートクッションの骨格をなすロアアーム、12…シートバック、13,31…ヘッドレスト、14…ロック部材、15…操作レバー、21…連動リンク、22…連動ケーブル、23…ストッパリンク、32…第1連動リンク、33…第2連動リンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストが格納され、且つ、シートクッションに対しシートバックが傾斜されて着座時シート状態から非着座時シート状態へと切り替えられる車両用シート格納装置において、
前記ヘッドレストの格納に連動して、前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度のロックを解除することを特徴とする車両用シート格納装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シート格納装置において、
前記ヘッドレストの格納に連動して、前記傾斜角度の調整可能範囲を前記着座時シート状態において設定されている該傾斜角度の調整可能範囲から前記非着座時シート状態での該傾斜角度まで拡張することを特徴とする車両用シート格納装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用シート格納装置において、
前記格納されたヘッドレストが復帰されることで、前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲での該傾斜角度をロック可能にすることを特徴とする車両用シート格納装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車両用シート格納装置において、
前記ヘッドレストの格納完了状態又は該ヘッドレストの復帰状態では、前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲での該傾斜角度をロック可能にすることを特徴とする車両用シート格納装置。
【請求項5】
ヘッドレストが格納され、且つ、シートクッションに対しシートバックが傾斜されて着座時シート状態から非着座時シート状態へと切り替えられる車両用シート格納装置において、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度をロックするロック部材と、
前記シートバックに支持され、前記ヘッドレストの格納に連動する連動部材と、
前記連動部材に連結され、該連動部材に連動して前記ロック部材による前記傾斜角度のロックを解除するロック解除部材とを備えたことを特徴とする車両用シート格納装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用シート格納装置において、
前記シートバックに支持され、前記連動部材と前記ロック解除部材との連結を仲介する傾斜角度切替部材と、
前記シートクッションに設けられた係止部材とを備え、
前記傾斜角度切替部材は、
前記係止部材に係止されて前記傾斜角度の調整可能範囲を前記着座時シート状態において設定されている該傾斜角度の調整可能範囲に規制するとともに、
前記連動部材に連動して前記係止部材との係止が回避され、前記傾斜角度の調整可能範囲を前記着座時シート状態において設定されている該傾斜角度の調整可能範囲から前記非着座時シート状態での該傾斜角度まで拡張することを特徴とする車両用シート格納装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の車両用シート格納装置において、
前記ロック解除部材は、前記格納されたヘッドレストが復帰されることで、前記連動部材に連動して前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲での前記ロック部材による該傾斜角度のロックを可能にすることを特徴とする車両用シート格納装置。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の車両用シート格納装置において、
前記ロック解除部材は、前記ヘッドレストの格納完了状態又は該ヘッドレストの復帰状態では、前記連動部材を介して前記着座時シート状態において設定されている前記傾斜角度の調整可能範囲での前記ロック部材による該傾斜角度のロックを可能にすることを特徴とする車両用シート格納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−6720(P2006−6720A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190072(P2004−190072)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】