説明

車両用シート

【課題】この発明は、車体のメンバ近傍に設置されたシートクッションの振動を低減可能とする車両用シートを提供することを目的とする。
【解決手段】車体のフロアパネル2の各種メンバ(サイドシル1、トンネルメンバ4、クロスメンバ5)近傍に設置されるシートクッション40と、シートバック50とからなる車両用のシート3であって、シートクッション40の、横スライド機構30を構成するロアレール31に振動低減用の錘部101を固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体のフロアのメンバ近傍に設置されるシートクッションと、シートバックとからなる車両用シートに関し、特に、該シートにおける振動を低減可能とするものに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいては、近時の車体の大型化傾向あるいはシートアレンジの多様化等を背景として、後席シートを前後スライド機構と左右スライド機構とを介して車体フロア側に固定し、該シートを前後方向と左右方向の二方向へスライド自在とするものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−205775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両用シートの内、例えば、車両前後方向において前後輪の間の略中間部に配置されたものは、車両走行時にサスペンションフレームから伝達される振動の影響を受け易いことが分かっている。特に、このシートは、車体フロアの各種メンバ(例えば、車幅方向中央部のトンネルメンバ、サイドシル、クロスメンバ等)の近傍に設置されることによって、振動が上記各種メンバを介して伝達され易くなっている。
【0004】
さらに、昨今の車体の軽量化傾向に伴い、上記振動があまり減衰することなく上記シートへ伝達され、これによってシートがより振動し易くなっているという実情もある。
【0005】
そこで、近年では、シートクッションから上方に延びるように配設されることによって特に振動し易い状態にあるシートバックに錘部を取付けることが行われている。このようにすることで、シートバックにおける振動周波数を変化させて、上記伝達された振動の周波数との共振を防止し、その結果シートバックの振動を低減させることを可能にしている。
【0006】
しかしながら、近年では、上述したような車体の軽量化がさらに進んでいることや、シートのレイアウト上の都合等により、シートクッションが振動する場合があり、乗員着座時の快適性を著しく低下させる事態となっている。
【0007】
この発明は、車体のメンバ近傍に設置されたシートクッションの振動を低減可能とする車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車両用シートは、車体フロアのメンバ近傍に設置されるシートクッションと、シートバックとからなる車両用シートであって、上記シートクッションに、振動低減用の錘部を固定したものである。
【0009】
この構成によれば、錘部により、車体フロアのメンバを介してシートクッションに伝達される振動を低減することが可能になる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記錘部が、上記シートクッションの後部に設置されているものである。
【0011】
この構成によれば、乗員着座時に大きな着座荷重がかかることにより最も敏感に感じ取られるシートクッション後部での振動をより低減することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記錘部が、シート幅方向に沿う延設形状であるものである。
【0013】
この構成によれば、シートクッションの後部に錘部を集中的に配設できるため、上記振動をより効果的に低減できる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記シートクッションが、車体フロアに設置されるシート基部と、該シート基部上の横スライド部と、該横スライド部により横移動する着座面を有するクッション部とを備え、上記錘部は、上記シート基部に設けられるものである。
【0015】
錘部をクッション部に設けた場合には、クッション部の横移動に伴い、錘部がシート基部より車幅方向にはみ出て、片持ち支持の状態になり、振動を増大させる可能性があるが、シート基部に錘部を設けることで、このような振動の増大を抑制することができる。
さらに、錘部をクッション部に設けた場合には、クッション部の横移動の際に錘部がシート基部に干渉しないように、この錘部を上方配置する等の工夫が必要となり、クッション部におけるレイアウト性を悪化させたり、着座面と錘部との間の厚みを確保しようとした時には、シートクッションの大型化を招いたりする虞があるが、錘部をシート基部に設けることで、このような不具合を抑制できる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記シート基部は、シート幅方向に延設して上記横スライド部とにより横スライド機構部を構成するロアレールを有し、上記錘部は、上記ロアレールに連結支持されるものである。
【0017】
この構成によれば、ロアレールを利用して錘部を連結支持することができるため、クロスメンバ等の専用の取付け部材を別途設ける必要がなく、錘部の取付けのための構成を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、錘部により、車体フロアのメンバを介してシートクッションに伝達される振動を低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本実施形態に係る車両用シートが適用された車両の概略斜視図であり、図2は、同概略平面図である。なお、図中において矢印(F)は車両前方、矢印(R)は車両後方を示す。
【0020】
図1においては、図中一点鎖線で示すように車両の前後方向に延びる左右一対のサイドシル1、1(但し、図面においてはサイドシルインナのみを示す)間にフロアパネル2を設けて、車体の下面(床面)を構成している。ここで、本実施形態では、例えば、特開平11−240364号公報に開示されているものと同様、フロアパネル2を、後方位置の方が前方位置よりも高くなるように設定している。
【0021】
図1、図2(シートクッション40(後述)が最前方位置でかつ最外方位置に位置した状態を示している)に示す車両の車室内には、運転席シート及び助手席シート(不図示)からなる1列目シートが配設されるとともに、さらに、この1列目シートの後方側には、2列目シート3及び3列目シート(不図示)が前から順に配設されている。なお、図1、図2においては、2列目に配設された左右のシート3のうち片側のみを示している。
【0022】
そして、本実施形態では、上述したように、フロアパネル2において後方位置の方が前方位置よりも高くなるように設定されていることで、後方にあるシートのシートクッションほど高い位置に設定されている。このため、後方に位置するシートに着座した乗員の前方視界を十分確保して、前方側シートの存在により乗員が受ける圧迫感を緩和するようにしている。
【0023】
ところで、上述のフロアパネル2の車幅方向中央部には、図1に示すように、車室内側に突出して、車両の前後方向に延びるトンネルメンバ4を設けるとともに、左右のサイドシル1とトンネルメンバ4との間にて車幅方向に延びるクロスメンバ5を設けている。
【0024】
そして、フロアパネル2のトンネルメンバ4及びクロスメンバ5のすぐ後方位置には、上方に段上げ形成されたキックアップ部2aが設けられており、このキックアップ部2aの上端から後方に向けて延びるキックアップフロア部2bが形成されている。
【0025】
さらに、キックアップフロア部2bの後部においてさらに上方に段上げ形成された第2キックアップ部2cが設けられるとともに、この第2キックアップ部2cの上端から後方に向けて延びる第2キックアップフロア部2dが設けられている。
【0026】
また、車体側部には、2列目シート3の側方において、図2に示すように、乗降用開口部6が設けられていると共に、該開口部6の後方において、後輪7を収容するリヤホイールハウス8が車室内に膨出して設けられている。
【0027】
ここで、2列目シート3は、そのシートクッション40が、図1に示すように、キックアップフロア部2b上に配設されるとともに、車両前後方向において前輪(不図示)と後輪7との間の略中間部に位置し、サイドシル1、トンネルメンバ4、及びクロスメンバ5等、フロアパネル2の各種メンバの近傍に設置されている。
【0028】
また、第2キックアップフロア部2d上には、図1では図示を省略しているが、例えば車幅方向に並設された複数人掛け用(一般的には3人掛け)の3列目シートが配設される。
【0029】
図3は、シートスライド機構の平面図であって、前後スライド機構を主として記載した図であり、図4は、図3におけるX−X線矢視断面図である。また、図5は、シートスライド機構の平面図であって、横スライド機構を主として記載した図であり、図6は、図5におけるY−Y線矢視断面図である。2列目シート3は、フロアパネル2に前後方向に設けられた前後スライド機構10と、図3、図4に示すように、該前後スライド機構10上により前後方向に移動可能に支持されたシート基部本体20、該シート基部本体20上に設けられた横スライド機構30、及び該横スライド機構30により車幅方向に移動可能に支持されたサイドフレーム41等からなるシートクッション40と、該シートクッション40の後端部に下端部が支持されたシートバック50と、ヘッドレスト51とを有している。
【0030】
前後スライド機構10は、図1及び図4に示すように、上方が開放された断面コ字状の複数の取付けブラケットB、Bを介してフロアパネル2に固定されており、この取付けブラケットBにより、前後スライド機構10及び2列目シート3のシートクッション40の底部がフロアパネル2から上方に離間した位置に配置されている。
【0031】
前後スライド機構10は、車両前後方向に延びる左右一対のロアレール11、11と、ローラ及びボールを介して該ロアレール11、11に前後方向に摺動可能に支持された左右一対のアッパレール12、12と、アッパレール12、12をロアレール11、11に対して移動不能にロックする前後ロック機構60と、該前後ロック機構60を操作する前後ロック操作レバー61とを有している。なお、ロアレール11、11の上面はカバー部材13、13により覆われている。
【0032】
また、上述したように、各シートのシートクッションが、後方にあるシートのシートクッションほど高い位置に設定されるようにするために、ロアレール11は、後方に向かうにつれて若干斜め上方に傾斜するように配置されている。
【0033】
また、1つの2列目シート3に対応して配設された一対のロアレール11、11の内、車幅方向外側のものについては、図1に示すように、第2キックアップフロア部2dの後端部近傍まで延びている。これにより、不図示の他端側のロアレール11とによって、車幅方向に並設された上記3列目シート用のロアレールを構成しており、3列目シートの前後移動を可能にしている。
【0034】
ところで、2列目シート3のシート基部本体20は、図3、図4に示すように、アッパレール12、12の前端部及び後端部に形成された上方延出部に前端部及び後端部が固定されたベースフレーム21、21と、該ベースフレーム21、21に固定されたカバー部材22、22とを有している。
【0035】
横スライド機構30は、図5、図6に示すように、シート基部本体20のベースフレーム21、21の前部上面及び後部上面に固定され、2列目シート3の幅方向(車幅方向)に延びる前後一対のロアレール31、31と、該ロアレール31、31上において、図示しないローラ及びボールを介して横方向(車幅方向)に摺動可能に延設された前後一対のアッパレール32、32と、アッパレール32、32をロアレール31、31に対して移動不能にロックする横ロック機構80と、該横ロック機構80を操作する横ロック操作レバー81とを有している。
【0036】
ここで、ロアレール31は、シート基部本体20とともに、フロアパネル2上で車幅方向の位置が固定されるように配置され、このシート基部本体20とロアレール31とにより2列目シート3の基部を構成している。
【0037】
また、横ロック操作レバー81の操作部81aと、前記前後ロック操作レバー61の操作部61aとは、持ち替えが容易となるように、近接して配置されている。
【0038】
シートクッション40は、図3、図4に示すように、横スライド機構30の前後のアッパレール32、32の左右の端部に前部及び後部の下部がそれぞれ固定された左右のサイドフレーム41、41と、該左右のサイドフレーム41、41の間において、横スライド機構30の前後のアッパレール31、31の上方でそれぞれ車幅方向に延び、該アッパレール31、31に固着されると共に両サイドフレーム41、41を連結する断面コ字状のフロントフレーム42及びリヤフレーム43と、該左右のサイドフレーム41、41の前後方向中間よりもやや前方で車幅方向に延び、両サイドフレーム41、41を連結するクロスフレーム44と、左右のサイドフレーム41、41に固定されたクッション材45と、該クッション材45の左右の側部の下方にそれぞれ配設され、前記シート基部本体20、横スライド機構30、シートバック50の下部を側方から覆うカバー部材46とを有している。このカバー部材46は樹脂で成形されている。
【0039】
ここで、シートクッション40では、上述した各部材41〜46等により、アッパレール32によって一体的に横移動可能とされるクッション部を構成しており、これにより、クッション材45の上面に形成した乗員の着座面45aを横移動可能としている。
【0040】
次に、前後ロック機構60について詳しく説明する。図3、図4に示すように、この前後ロック機構60は、シートクッション40の左右のサイドフレーム41、41間において前記クロスフレーム44よりも後方で車幅方向に延び、左右の端部が該フレーム44に対して回動可能にかつ車幅方向に移動不能に支持された回動軸62と、略L字状とされて、該回動軸62に車幅方向内側のサイドフレーム41、41近傍で屈曲部が固定され、前端部に前記前後ロック操作レバー61の後端部が固着された揺動部材63と、回動軸62に前端部が左右のサイドフレーム41、41の車幅方向中間付近で固着され、後方にほぼ水平に延びるレバー部材64と、前記シートクッション40のクロスフレーム44と前記揺動部材62の上端部とを前後に連結し、該揺動部材62を図4において反時計回り方向に付勢するバネ部材65と、該揺動部材62の反時計回り方向への所定量以上の揺動を規制するストッパ66と、前記シート基部本体20の左右のベースフレーム21、21間において前記回動軸62の下方で車幅方向に延び、左右の端部が該ベースフレーム21、21に固定された支持軸67と、前後に長い形状とされ、後端部が前記レバー部材64の下方に位置し、前後方向中間部が該支持軸67に左右のベースフレーム21、21のシート内方側近傍でそれぞれ回動可能にかつ車幅方向に移動不能に支持された左右の揺動部材68、68と、該揺動部材68、68を図4において反時計回り方向に付勢するバネ部材(図示していないが支持軸67上に設けられている)と、左右の揺動部材68、68の後端部間で車幅方向に延び左右の端部が該後端部に固着された連結棒69と、左右の揺動部材68、68の前部下部に固着され、前後方向に一定間隔で下方に突出する突起を有する櫛歯部材70と、前記前後スライド機構10のロアレール11の上面部に、その前端部近傍から後端部近傍に渡って前記櫛歯部材70の突起の前後間隔と等間隔で形成され、該突起と係合可能な孔部(図示せず)とを有している。
【0041】
そして、前後ロック操作レバー61を操作すると、すなわち該操作レバー61の前端部を符号aで示すように上方に引き上げると、揺動部材63の前端部が符号bで示すように引き上げられることにより、該揺動部材63及びレバー部材64が回動軸62を中心として符号cで示すように回動する。また、この時、レバー部材64の後端部が連結棒69に当接してレバー部材64を符号dで示すように下方に押し下げることにより、揺動部材63が支持軸62を中心として、図4において時計回り方向に揺動する。
【0042】
つまり、揺動部材63の前端部側が符号eで示すように上方に移動し、その結果、櫛歯部材70の突起とロアレール11の孔部との係合が解除され、ロックが解除される。そして、前後ロック操作レバー61をこの状態で維持することにより、アッパレール12より上方のシートクッション40、シートバック50及びヘッドレスト51が、前後方向に移動可能となる。
【0043】
そして、前後方向に移動させた後、前後ロック操作レバー61から手を離すと、バネ部材65により揺動部材63が図4において反時計回り方向に付勢されていることにより、該揺動部材63はストッパ66に当接した状態まで反時計回りに回動し、初期位置に復帰する。
【0044】
また、シート基部本体20側の揺動部材68は、図示しないバネ部材により反時計回り方向に付勢されていることにより、該揺動部材68は櫛歯部材70がロアレール11の上面部に当接するまで反時計回りに回動する。そして、この状態で、シート3を若干前後に移動させると、櫛歯部材70の突起とロアレール11の孔部との前後位置が一致した時に、揺動部材68がさらに反時計回りに微量揺動して、櫛歯部材70の突起とロアレール11の孔部とが係合し、アッパレール12とロアレール11とがロックされることとなる。
【0045】
次に、前記横ロック機構80について詳しく説明する。図5、図6に示すように、この横ロック機構80は、シートクッション40の前記クロスフレーム44の下方で車幅方向に延びると共に、該クロスフレーム44に下垂状態で固着された左右一対のブラケット47、47の下部に回動可能にかつ車幅方向に移動不能に支持された回動軸82と、該回動軸82における車幅方向内側のサイドフレーム41側に固定され、前記横ロック操作レバー81の後端部に形成された歯部81bと噛み合うギヤ83と、前記回動軸82の他方の端部側に固着されたレバー部材84と、シートクッション40のリヤフレーム43の前壁に前後に揺動可能に支持され、車幅方向に一定間隔で後方に突出する突起を有する櫛歯部材85と、横スライド機構30のアッパレール32の前壁における前記櫛歯部材85の突起に対応する位置に形成された孔部と、ロアレール31の前面部にその車幅方向一端部近傍から他端部近傍に渡って前記櫛歯部材85の突起の車幅方向間隔と等間隔で形成され、該突起と係合可能な多数の孔部と、前記レバー部材84の先端部と櫛歯部材85の縦壁の下端部とを弛みなく連結する連結ケーブル86と、横ロック操作レバー81を図6において反時計回り方向に付勢するバネ部材(図示せず)と、横ロック操作レバー81の反時計回り方向への所定量以上の揺動を規制するストッパ87と、横ロック操作レバー81の時計回り方向への所定量以上の揺動を規制するストッパ88とを有している。
【0046】
そして、横ロック操作レバー81を操作すると、すなわち該操作レバー81の前端部を符号fで示すように上方に引き上げると、該操作レバー81が支持軸90を中心として回動することにより、該操作レバー81の後端部の歯部81b側が符号gで示すように前方下方に移動し、その結果、ギヤ部材83が符号hで示すように回動する。
【0047】
また、この時、ギヤ部材83と固着された回動軸82、及び該回動軸82に固着されたレバー部材84が同方向に回動することとなる。その結果、連結ケーブル86を介して、櫛歯部材85が符号iで示すように回動して、櫛歯部材85の突起とロアレール31の孔部との係合が解除され、ロックが解除される。そして、横ロック操作レバー81をこの状態で維持することにより、ロアレール31、すなわちシート基部より上方のアッパレール32、クッション部、シートバック50、及びヘッドレスト51が、横方向に移動可能となる。
【0048】
そして、横方向に移動させた後、横ロック操作レバー81から手を離すと、上記バネ部材により横ロック操作レバー81が図6において反時計回り方向に付勢されていることにより、該横ロック操作レバー81はストッパ87に当接した状態まで反時計回りに回動し、初期位置に復帰する。また、これに伴って他の部材も初期位置方向へ移動し、櫛歯部材85がロアレール31の前面部に当接するまで反時計回りに回動する。そして、この状態で、上記クッション部を若干車幅方向に移動させると、櫛歯部材85の突起とロアレール31の孔部との前後位置が一致した時に、櫛歯部材85がさらに符号iで示すように微量揺動して、櫛歯部材85の突起とロアレール31の孔部とが係合し、アッパレール32とロアレール31とがロックされることとなる。
【0049】
ところで、本実施形態では、上述したように、2列目シート3のシートクッション40が、前輪と後輪7との間の略中間部に配置されることで、車両走行時にサスペンションフレームから伝達される振動の影響を受け易くなっており、特に、2列目シート3が、サイドシル1、トンネルメンバ4、及びクロスメンバ5等のフロアパネル2の各種メンバの近傍に設置されることによって、振動が上記各種メンバ1、4、5を介して伝達され易くなっている。
【0050】
さらに、シートクッション40が、フロアパネル2から上方に離間する位置に取付けられるといったレイアウト上の都合や、車両の軽量化が施されている場合には、その軽量化の影響等により、シートクッション40において振動が発生し易くなっている。
【0051】
そこで、本実施形態では、図2〜図6に示すように、シートクッション40に、シート幅方向に延設する棒状の錘部101を固定することとし、この錘部101を、上記シート基部を構成する横スライド機構30の後側のロアレール31に取付けブラケット102を介して連結支持している。
【0052】
このため、各種メンバ1、4、5を介してシートクッション40に伝達される振動を低減することが可能になり、乗員着座時の快適性が低下することを抑制できる。
【0053】
ここで、乗員がシートに着座した時には、一般的に、シートクッションの後部に乗員の臀部が位置するようになっており、シートクッション40に振動が発生した時には、臀部によって大きな着座荷重がかかっていることにより、乗員はシートクッション40の後部で最も敏感に振動を感じ取ることになる。
【0054】
本実施形態では、錘部101が、後側のロアレール31の底面に取付けられることによって、シートクッション40の後部下方に設置されている。このため、乗員着座時に大きな着座荷重がかかることにより最も敏感に感じ取られるシートクッション40後部での振動を低減することができる。
【0055】
そして、後側のロアレール31において2列目シート3の幅方向に延設するように錘部101を配設することで、例えば車両前後方向に延設するように配設した場合と比べ、シートクッション40の後部に錘部101を集中的に設置できるため、上記振動をより効果的に低減できる。
【0056】
ところで、本実施形態では、横方向の位置が固定されたシート基部側(ここではロアレール31)に錘部101を設けているが、例えば、図6にて二点鎖線で示す錘部101′のように、クッション部等、横スライド可能な側に設けることも考えられる。
【0057】
しかしながら、この場合、クッション部を横移動させると、これに伴い、図7にて二点鎖線で示すように、錘部101′も横移動してしまい、これがシート基部より車幅方向にはみ出てしまう。このように錘部101′がはみ出てしまうと、錘部101′がシート基部を介してフロアパネル2に対し片持ち支持されたような状態となるため、錘部101′自身が振動して、シートクッション40における振動をより増大させてしまう可能性がある。
【0058】
また、錘部101′を、特に図示のようにシートクッション40のクッション部内に配設すると、元々サイドフレーム41やクッション部45等により構成が簡素化されているクッション部に新たなブラケットを設ける必要があり、その構成を複雑化させるという問題がある。
【0059】
そして、錘部101′の場合には、2列目シート3の横移動の際に錘部101′が上記シート基部と干渉することがないように、図示のように錘部101′を可及的に上方へ配置する必要があり、クッション部におけるレイアウト性を悪化させることになってしまう。
【0060】
さらに、図6に示すように、錘部101′と着座面45aとの間のクッション材45の厚みD1が薄くなることで、乗員が着座した時に錘部101′の存在によって着座面45aに凹凸を感じることになり、乗員の着座性を損ねてしまう。
【0061】
また、上述したようなクッション部の横移動に伴う錘部のはみ出しを抑制する場合に、例えば、図6、図7にて二点鎖線で示す錘部101″のように、シート幅方向の長さを抑えつつ、その分太さを増大させることによって重量を確保することが考えられるが、この場合、錘部101″の太さが増すことで、図6に示すように、錘部101″と着座面45aのクッション材45の厚みD2がより薄くなってしまう。従って、乗員が着座した時の座面の凹凸がより顕著に感じられるようになり、好ましくない。
【0062】
そこで、乗員に着座面45aにて凹凸を感じることがないように、着座面45aをより上方に設定してクッション部45と錘部101′との間の厚みを確保することも考えられるが、このようにすると、クッション部45を大型化させることになり、その結果シートクッション40の大型化を招く虞がある。
【0063】
従って、本実施形態の錘部101のように、これを上記シート基部に設けることで、上述したような振動の増大を抑制することができる他、クッション部45内に錘部101′を設けた場合のようなレイアウト性の悪化やシートクッション40の大型化等の不具合を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記シート基部を構成する横スライド機構30のロアレール31に錘部101を連結支持する構成となっているが、このロアレール31は、元々2列目シート3を安定的に横スライドさせるために高い剛性を有している。この場合、ロアレール31を利用して錘部101を連結支持することができるため、クロスメンバ等の専用の取付け部材を別途設ける必要がなく、錘部101の取付けのための構成を簡略化することができる。
【0065】
ところで、上述した実施形態では、シートクッション40における振動を低減することを主眼として、シートクッション40のシート基部にのみ錘部101を備えることとしたが、例えば、この錘部101に加えて、シートバック50やヘッドレスト51に錘部をさらに設置し、シート3全体の振動低減を図るようにしてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、クッション部の前後移動及び横移動を可能とする2列目シート3に対して錘部101を設ける場合を説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、前後移動のみ、横移動のみ、または移動不可とされるものに本発明を適用してもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、3列シートタイプの車両の2列目シートに錘部を設けた場合を説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、フロアパネルの各種メンバの近傍に設置されることによって振動が伝達され易くなっているものであれば、いずれのシートに対しても本発明を適用することができる。
【0068】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の車体フロアのメンバは、サイドシル1、トンネルメンバ4、クロスメンバ5に対応し、
以下同様に、
シート基部は、シート基部本体20、及びロアレール31に対応し、
横スライド部は、アッパレール32に対応し、
クッション部は、サイドフレーム41、フロントフレーム42、リヤフレーム43、クロスフレーム44、クッション材45、及びカバー部材46に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】この発明の実施形態に係る車両用シートが適用された車両の概略斜視図。
【図2】図1に示す車両の概略平面図。
【図3】シートスライド機構の平面図(前後スライド機構を主として記載)。
【図4】図3におけるX−X線矢視断面図。
【図5】シートスライド機構の平面図(横スライド機構を主として記載)。
【図6】図6におけるY−Y線矢視断面図。
【図7】錘部をクッション部側に設けた場合を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0070】
1…サイドシル
2…フロアパネル
3…2列目シート
4…トンネルメンバ
5…クロスメンバ
20…シート基部本体
30…横スライド機構
31…ロアレール
32…アッパレール
40…シートクッション
41…サイドフレーム
42…フロントフレーム
43…リヤフレーム
44…クロスフレーム
45…クッション材
46…カバー部材
50…シートバック
101…錘部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロアのメンバ近傍に設置されるシートクッションと、シートバックとからなる車両用シートであって、
上記シートクッションに、振動低減用の錘部を固定した
車両用シート。
【請求項2】
上記錘部は、上記シートクッションの後部に設置されている
請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
上記錘部は、シート幅方向に沿う延設形状である
請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
上記シートクッションは、上記車体フロアに設置されるシート基部と、
該シート基部上の横スライド部と、
該横スライド部により横移動する着座面を有するクッション部とを備え、
上記錘部は、上記シート基部に設けられる
請求項3記載の車両用シート。
【請求項5】
上記シート基部は、シート幅方向に延設して上記横スライド部とにより横スライド機構部を構成するロアレールを有し、
上記錘部は、上記ロアレールに連結支持される
請求項4記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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