説明

車両用シート

【課題】シートバック内部から着座する着座者に向けて風を送る送風機をシートバックに内蔵する車両用シートにおいて、布製のシートカバーの汚れを抑えて、外観上の見栄えの良さを保つようにする。
【解決手段】袋状に形成されるシートカバー60の背面部分62のうち少なくとも内部パッド50を被覆していない部分は、シートバック30の外部からシートバック30の内部への通気を遮る通気遮断部65として形成される。低通気性を有する内部パッド50とシートカバー60の通気遮断部65とにより、シートバック30の内部にはシートバック30の外部からの通気を遮断する。これによって、シートバック30の外部にある外気を送風機41の存するシートバック30の内部に向かって吸気するには、シートカバー60を通して吸気しないようになり、シートカバー60をエアフィルターのように機能してしまうことを阻止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に設置される車両用シートに関する。詳しくは、本発明は、シートバック内部から着座者に向けて風を送る送風機をシートバックに内蔵する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、乗員が着座する車両用シートが設置される。車両用シートは、乗員が着座するシートクッションと、乗員が着座した場合の背凭れとなるシートバックとを備える。この車両用シートのシートバックにあっては、シートバック内部から車両用シートに着座する着座者に向けて風を送るものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の車両用シートは、一般に空調シートと称されており、シートバックの内部に送風機が装置されて構成される。
【0003】
一方、上記したように空調シートと称される車両用シートにあっては、外装をなすように内部パッドを被覆するシートカバーが配設されている。このシートカバーは、下記特許文献1に開示されるものとは異なるものが知られている。すなわち、下記特許文献1にて開示されるシートカバーは、着座者側面側(前面側)と背面側とが分割構造にて形成されるものとなっているが、これとは異なり、着座者側面側と背面側とが一体化された袋状にて形成されるものが知られている。このように袋状にて形成されるシートカバーは、覆い被せるだけで配設することができる点で配設作業を簡単化でき、一体の袋状にて形成される点で部品点数が少なくできて以って安価に製造することができ且つ省スペース化を図ることができる。
他方、このようなシートカバーは、一般的に、感触等の観点から布製にて形成される。このため、このようなシートカバーは、シートバックの内部と外部とで通気可能となる通気性を有して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−8334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した空調シートと称される車両用シートにあっては、内蔵される送風機によって、シートバック内部から、車両用シートに着座するシートバック外部の着座者に向けて風を送るようになっている。このため、シートバック内部に存する送風機は、シートバック外部にある外気を、シートバック内部に向かって吸気することとなる。この際、シートバック内部に吸気される外気は、布製のシートカバーを通気する。そうすると、シートカバーは、エアフィルターのように機能してしまって汚れてしまう。このようにシートカバーが汚れてしまうと、外観上の見栄えが悪くなって具合が悪い。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートバック内部から着座者に向けて風を送る送風機をシートバックに内蔵する車両用シートにおいて、布製のシートカバーの汚れを抑えて、外観上の見栄えの良さを保つようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するにあたって、本発明に係る車両用シートは、次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係る車両用シートは、乗員が着座するシートクッションと、着座した乗員の背凭れとなるシートバックとを具備し、該シートバック内部から該シートクッションに着座する着座者に向けて風を送る送風機を該シートバックに内蔵する車両用シートであって、前記シートバックは、低通気性を有しながら且つ着座者側面側とは反対側の背面側の一部を除き該シートバック外周に面して配設される内部パッドと、通気性を有しながら且つ該シートバックの外装をなすように該内部パッドを被覆する布製のシートカバーとを備え、前記内部パッドには、前記送風機から送られる風を該シートバックの着座者側面に導く導風路が形成されており、前記シートカバーは、配設状態時に該シートバックの前記着座者側面側に位置する着座者側面部分と、配設状態時に該シートバックの前記背面側に位置する背面部分とが、繋ぎ合わされた袋状にて形成されており、前記シートカバーの前記背面部分のうち少なくとも前記内部パッドを被覆していない部分は、前記シートバック外部から該シートバック内部への通気を遮るように、前記着座者側面部分の前記シートカバーに比して通気性が低く設定された通気遮断部として形成されていることを特徴とする。
【0008】
この第1の発明に係る車両用シートによれば、送風機から送られる風は、内部パッドに形成された導風路を通ってシートバックの着座者側面に導かれることとなる。ここで、この風は、布製のシートカバーの通気性により、シートバック内部からシートバック外部へと送られる。これによって、着座者には風が当てられることとなり、着座者は冷涼感を味わうことができる。
また、袋状に形成されるシートカバーの背面部分のうち少なくとも内部パッドを被覆していない部分は、シートバック外部からシートバック内部への通気を遮る通気遮断部として形成されているので、この低通気性を有する内部パッドとシートカバーの通気遮断部とにより、シートバック内部にはシートバック外部からの通気を遮断する。これによって、シートバック外部にある外気を送風機の存するシートバック内部に向かって吸気するには、シートカバーを通して吸気しないようになり、シートカバーをエアフィルターのように機能してしまうことを阻止することができる。したがって、この布製のシートカバーを汚してしまうこともなくなり、外観上の見栄えを変わりなく維持することができる。
【0009】
第2の発明に係る車両用シートは、前記第1の発明に係る車両用シートにおいて、前記内部パッドは、該シートバックの前記着座者側面側と、該シートバックの上面側と、該シートバックの左右側面側とに亘って、連なるようにして設けられており、前記通気遮断部は、前記シートバックの前記背面側に位置する前記内部パッドの端部に一部重なるまで、延在して形成されていることを特徴とする。
この第2の発明に係る車両用シートによれば、シートカバーの通気遮断部は、シートバックの背面側に位置する内部パッドの端部に一部重なるまで延在して形成されているので、この内部パッドとシートカバーの通気遮断部との境界部分からのシートバック内部に向かう吸気を、より好ましく遮断することができる。これによって、この内部パッドとシートカバーの通気遮断部との境界部分を特に汚してしまうこともなくなり、外観上の見栄えを変わりなく維持することができる。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係る車両用シートによれば、布製のシートカバーを汚してしまうこともなくなり、外観上の見栄えを変わりなく維持することができる。
第2の発明に係る車両用シートによれば、内部パッドとシートカバーの通気遮断部との境界部分を特に汚してしまうこともなくなり、外観上の見栄えを変わりなく維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両内に設置される車両用シートの斜視図である。
【図2】図1におけるII−II一部断面矢視を示す車両用シートの一部断面図である。
【図3】図2にて示すシートバックに関して拡大して示す拡大断面図である。
【図4】図1におけるIV−IV断面矢視を示す車両用シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の車両用シートを実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、車両内に設置される車両用シート10の斜視図である。図2は、図1におけるII−II一部断面矢視を示す車両用シート10の一部断面図である。図3は、図2にて示すシートバック30に関して拡大して示す拡大断面図である。図4は、図1におけるIV−IV断面矢視を示す車両用シート10の断面図である。なお、図2〜図4は、シートバック30の内部を分かり易いものにするために、適宜に簡略化した図となっている。また、図1等に示す図示符号30aが、車両用シート10のシートバック30の前面と一致するシートバック30の着座者側面である。また、この着座者側面30aの反対側面となる図示符号30bが、シートバック30の背面である。また、シートバック30のうちヘッドレスト18が設けられる図示符号30cが、シートバック30の上面である。また、この上面30cの反対側面となる図示符号30dが、シートバック30の下面である。また、図4に示すように、このシートバック30の幅方向両側面となる図示符号30e,30fが、左右側面である。
図1に示すように、車両用シート10は、自動車等の車両内に設置されるものである。この車両用シート10は、乗員が着座するシートクッション20と、乗員が着座した場合の背凭れとなるシートバック30と、乗員が着座した場合の頭凭れとなるヘッドレスト18とを備える。なお、図示の車両用シート10においては図示省略しているが、ヘッドレスト18は、不図示のヘッドレストステーを後に説明するシートバックフレーム31に連結する構造にて、シートバック30に対して取り付けられている。
この車両用シート10は、図2および図3に示すように、シートバック30の内部から、シートクッション20に着座する着座者に向けて風を送る送風装置40を内蔵する。この送風装置40は、風を送る送風機41を具備して構成されるものであり、シートバック30に内蔵されている。このため、この車両用シート10は、図示するように、内蔵される送風装置40(送風機41)から送られる風を、着座者に向けて通風することができる。
シートバック30は、図2および図3に示すように、骨組みをなすシートバックフレーム31を備えて構成される。このシートバックフレーム31は、サイドフレーム32とサイドフレーム32の上部を連結するアッパーフレーム33とを備える。このサイドフレーム32は、シートクッション20の骨組みをなすシートクッションフレーム21に、リクライニング装置23を介装した状態で連結される。なお、図示符号25は、リクライニング装置23と連結される連結ロッドである。
【0013】
このシートバック30は、上記したシートバックフレーム31に連結され支持される支持部材(特に図示していない)と、この支持部材にて支持される送風装置40および内部パッド50と、シートバック30の外装をなすシートカバー60とを備える。
送風装置40について説明する。送風装置40は、適宜の支持部材(不図示)を介して、上記したアッパーフレーム33に取り付けられる。この送風装置40は、概略、送風機41と、ダクト部47とを備える。送風機41は、シートバック30の内部からシートクッション20に着座する着座者に向けて送る風を発生させるものである。この送風機41は、遠心方向に送風するように構成される遠心ブロア(遠心送風機)にて構成される。この送風機41は、回転することにより風を発生する送風機本体42と、この送風機本体42を収容するハウジング43とを備える。送風機本体42は、詳細については図示していないが、広く利用される遠心送風機と同様、回転駆動力を発生するモータ部と、このモータ部により回転する翼部とを備える。翼部は、回転することにより遠心方向に風を送るように構成される。これに対してハウジング43は、送風機本体42を収容しつつ、適宜の吸気口44および排気口45が形成されている。なお、吸気口44は、シートバック30前面側に向くように配設され、送風機41にて送られる風を吸気する。排気口45は、シートバック30下面側に延びるように配設され、接続されるダクト部47に送風機41にて送られる風を排気する。ダクト部47は、弾性変形可能な樹脂ゴムにて形成される。このダクト部47は、上流側の上流口48が上記した排気口45に接続されており、下流側の下流口49が次に説明する内部パッド50(導風路55)に接続される。このように、ダクト部47は、送風機41にて発生させた風を内部パッド50の導風路55に適切に遅れるように適宜形成される。なお、このダクト部47の上流口48は、ハウジング43(送風機41)の排気口45に対して、適宜の嵌合構造にて接続される。また、このダクト部47の下流口49は、導風路55の接続口56に対して、適宜の接着構造にて接続される。
【0014】
内部パッド50について説明する。内部パッド50は、適宜の支持部材(不図示)に支持されつつ上記したシートバックフレーム31(サイドフレーム32およびアッパーフレーム33)に取り付けられる。内部パッド50は、シートクッション20に着座した着座者がシートバック30を背凭れとして利用するに際し、この背凭れ感触を良くするためのクッション材として機能する。また、この内部パッド50は、後に説明する導風路55を形成することが可能となる低通気性を有して形成される。このため、この内部パッド50は、例えば発泡ウレタン樹脂のように、低通気性のクッション変形可能な発泡樹脂成形体により形成されており、背面側の一部を除くシートバック30の外周に面して配設される。具体的には、内部パッド50は、図3および図4に示すように、シートバック30の着座者側面30a側(着座者側面部51)と、シートバック30の上面側(上面部52)と、シートバック30の左右側面側(左右側面部53,53)とに亘って連なるように、発泡樹脂の一体成形により形成されている。
【0015】
ここで、内部パッド50のうち上面部52および左右側面部53,53にあっては、図3および図4に示すように、その背面側個所をシートバック30の背面30bの外周に面するように延在させている。すなわち、図1にも示すように、シートバック30のうち、着座者側面30a、上面30c、左右側面30e,30fの合計4面については、シートバック30の外周に面するように、内部パッド50(着座者側面部51、上面部52、左右側面部53,53)が配設されている。これに対して、シートバック30の背面30bについては、内部パッド50がシートバック30の外周に面するように配設されていない。ただ、内部パッド50の上面部52および左右側面部53,53については、このシートバック30の背面30bの外周に一部面するように延在している。すなわち、内部パッド50(上面部52、左右側面部53,53)の背面側端部54は、図示するように、シートバックフレーム31(サイドフレーム32、アッパーフレーム33)よりも背面側に延在するように形成されており、この背面側端部54が、シートバック30の背面30bの外周に一部面するように存するものとなっている。この背面側端部54は、シートバック30の背面30b側に位置する内部パッド50の端部に相当する部分であり、図3および図4に示すように、シートバックフレーム31(サイドフレーム32、アッパーフレーム33)を、背面側から覆うような形状にて形成されている。
図3および図4に示すように、この内部パッド50の着座者側面部51には、送風機41から送られる風をシートバック30の着座者側面30aに導くための導風路55が形成されている。この導風路55は、上記したようにダクト部47の下流口49が接続されるものとなっており、送風装置40から送られる風をシートバック30の着座者側面30aに導くものである。このため、図3に示すように、導風路55のうち背面側(図示右側)には、ダクト部47の下流口49と接続するように開口した接続口56が設けられており、導風路55のうち着座者側面側(図示左側)には、次に説明するシートカバー60を通気して風を送り出す噴出口57が設けられている。この噴出口57は、図1等に示すように、シートバック30の着座者側面30aに左右2列上下3段の合計6つ形成されている。このように導風路55は、図3に示すように、上記した接続口56から噴出口57,57,・・・に繋がる連通構造にて形成されており、送風機41から送られる風をシートバック30の着座者側面30aに導くことができるようになっている。なお、この内部パッド50は、上記したように低通気性の発泡樹脂成形体にて形成されているので、この導風路55以外の個所については、通気しないようになっている。
【0016】
これに対して、シートカバー60は、通気性を有しながらシートバック30の外装をなすように上記した内部パッド50を被覆するものであり、布製にて形成される。このシートカバー60は、図3および図4に示すように、配設状態時にシートバック30の着座者側面30a側に位置する着座者側面部分61と、配設状態時にシートバック30の背面30b側に位置する背面部分62とが繋ぎ合わされるように、シートバック30の上面30c側(上面部分63)および左右側面30e,30f側(左右側面部分64,64)を連接させた袋状にて形成される。なお、シートカバー60は、図示省略されているが、ヘッドレスト18を取り付けるためのヘッドレストステー連結個所は僅かに開口した形状を有する。つまり、このシートカバー60は、上記した内部パッドの50の噴出口57,57,・・・から、シートバック30の外部に噴き出させることができるようにされた、通気性を有する布製にて一体化された袋状に形成される。このように一体化された袋状に形成されるシートカバー60は、図3に示すように、シートバック30の上面30c側から下面30d側に向けて被せていくように、シートバック30の外装をなすように配設される。なお、このシートカバー60を配設した場合には、この袋状形状によって、シートバック30の下面30d側に自然に通気可能な僅かな隙間(図示符号S)が形成される。
【0017】
ところで、シートカバー60の背面部分62のうち、少なくとも内部パッド50を被覆していない部分は、通気遮断部65として形成されている。すなわち、シートカバー60の背面部分62のうち、上記した内部パッド50を被覆しない部分を非被覆部65aと設定し、上記した内部パッド50の背面側端部54に対して一部重なる部分をラップ部65bと設定し、これら非被覆部65aとラップ部65bとを合体してなる部分を通気遮断部65として設定している。換言すれば、上記した内部パッド50を被覆しない部分を非被覆部65aを、内部パッド50の背面側端部54に対して一部重なるまで、周方向拡大させると、通気遮断部65として設定されるべき大きさとなる。
この通気遮断部65は、シートカバー60の着座者側面部分61の通気性に比して、その通気性が低くなるように形成されている。具体的には、図3および図4に示すように、通気遮断部65は、シートカバー60において上記したように範囲設定され、外部に露出しないシートカバー60の内側部分に、非通気性を有する非通気フィルム66が貼着されることにより形成されている。このように、シートカバー60の内側部分に非通気フィルム66が貼着された通気遮断部65は、この非通気フィルム66の非通気性により、シートカバー60の着座者側面部分61の通気性に比して、低い通気性に設定されたものとなる。これによって、シートカバー60のうち通気遮断部65にあっては、シートバック30の外部からシートバック30の内部への通気を遮るように作用することとなる。
なお、シートカバー60は、上記したように袋状に形成されるものであるため、配設された場合には、シートバック30の下面30d側には通気可能な僅かな隙間(図示符号S)が、自然に形成されるようになっている。また、この僅かな隙間Sの下側には、下帯69が配設されている。
【0018】
上記のように構成された車両用シート10によれば、次のような作用効果を奏することができる。
上記した車両用シート10によれば、送風機41から送られる風は、内部パッド50に形成された導風路55を通ってシートバック30の着座者側面30aに導かれることとなる。ここで、この風は、布製のシートカバー60の通気性により、シートバック30の内部からシートバック30の外部へと送られる。これによって、着座者には風が当てられることとなり、着座者は冷涼感を味わうことができる。
また、袋状に形成されるシートカバー60の背面部分62のうち少なくとも内部パッド50を被覆していない部分は、シートバック30の外部からシートバック30の内部への通気を遮る通気遮断部65として形成されているので、この低通気性を有する内部パッド50とシートカバー60の通気遮断部65とにより、シートバック30の内部にはシートバック30の外部からの通気を遮断する。これによって、シートバック30の外部にある外気を送風機41の存するシートバック30の内部に向かって吸気するには、シートカバー60を通して吸気しないようになり、シートカバー60をエアフィルターのように機能してしまうことを阻止することができる。したがって、布製のシートカバー60を汚してしまうこともなくなり、外観上の見栄えを変わりなく維持することができる。
なお、シートバック30の外部にある外気を送風機41の存するシートバック30の内部に向かって吸気するにあたっては、シートバック30の下面30d側に自然と形成された僅かな隙間Sから吸気することとなる。この僅かな隙間Sは、車両用シート10の外観上の見栄えに殆ど影響を与えないシートバック30の下面30d側に形成されるものとなっている。このため、たとえ、この僅かな隙間Sの周辺が通気により汚れてしまっても、車両用シート10の外観に悪影響を与えることはない。
また、上記した車両用シート10によれば、シートカバー60の通気遮断部65は、シートバック30の背面側に位置する内部パッド50の端部となる背面側端部54に一部重なるまで延在して形成されているので、この内部パッド50とシートカバー60の通気遮断部65との境界部分からのシートバック30の内部に向かう吸気を、より好ましく遮断することができる。これによって、この内部パッド50とシートカバー60の通気遮断部65との境界部分を特に汚してしまうこともなくなり、外観上の見栄えを変わりなく維持することができる。
【0019】
なお、本発明に係る車両用シートにあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜に変更することができる。
例えば、上記した実施の形態の車両用シート10における通気遮断部65は、シートカバー60の内側部分に非通気性を有する非通気フィルム66が貼着されることにより形成されるものとなっていた。しかしがなら、本発明に係る車両用シートの通気遮断部としては、シートバック30の外部からシートバック30の内部への通気を遮るように、着座者側面部分61のシートカバー60に比して通気性が低く設定されるように形成されればよく、上記したようにシートカバー60の内側部分に非通気フィルム66を貼着して形成されることに限定されないものである。
具体的には、上記した非通気フィルム66とは異なり、柔らかいフェルトを上記したシートカバー60の内側部分に貼着して通気遮断部を形成するものであってもよい。また、このような非通気フィルムやフェルト等とは異なり、適宜のバッキング処理を施すことによって通気遮断部を形成するものであってもよい。ただ、上記したシートカバー60の着座者側面部分61の通気性としては、一般的に「通気度:100cc/cm2/sec以上」を確保するように設定されるため、これに比して低い通気性となる通気遮断部としては、「通気度:10cc/cm2/sec以下」となるように設定されることが好ましい。
また、上記した実施の形態の通気遮断部65が設定される範囲としては、内部パッド50を被覆しない部分の非被覆部65aと、内部パッド50の背面側端部54に対して一部重なる部分のラップ部65bとを合体させてなる範囲によって設定されるものであった。しかしながら、本発明に係る通気遮断部が設定される範囲としては、このラップ部65bを除く、内部パッド50を被覆しない部分の非被覆部65aのみの範囲で設定されるものであってもよい。
また、上記した実施の形態の車両用シート10にあっては、シートバック30の外部にある外気を送風機41の存するシートバック30の内部に向かって吸気するにあたって、シートバック30の下面30d側に自然と形成された僅かな隙間Sから吸気するように構成されるものであった。しかしながら、本発明に係る車両用シートは、これに限定されることなく、外気をシートバックの内部に向かって吸気可能とする構成であれば適宜な構成を採用することができる。例えば、この外気を吸気する構成として、上記した隙間Sと連通するダクトが設けられ、このダクトの吸気口をシートクッション20の下に配置して外気を吸気するように構成されるものであってもよい。また、外観上の見栄えを考慮する必要があるが、シートカバー60のうちの着座者側面側の一部を網状部分に形成して、その網状部分から外気を吸気するように構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0020】
10 車両用シート
18 ヘッドレスト
20 シートクッション
21 シートクッションフレーム
23 リクライニング装置
25 連結ロッド
30 シートバック
30a シートバックの着座者側面
30b シートバックの背面
30c シートバックの上面
30d シートバックの下面
30e シートバックの左側面
30f シートバックの右側面
31 シートバックフレーム
32 サイドフレーム
33 アッパーフレーム
40 送風装置
41 送風機
42 送風機本体
43 ハウジング
44 吸気口
45 排気口
47 ダクト部
48 上流口
49 下流口
50 内部パッド
51 内部パッドの着座者側面部
52 内部パッドの上面部
53 内部パッドの側面部
54 内部パッドの背面側端部
55 導風路
56 接続口
57 噴出口
60 シートカバー
61 シートカバーの着座者側面部分
62 シートカバーの背面部分
63 シートカバーの上面部分
64 シートカバーの側面部分
65 通気遮断部
65a 非被覆部
65b ラップ部
66 非通気フィルム
69 下帯
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションと、着座した乗員の背凭れとなるシートバックとを具備し、該シートバック内部から該シートクッションに着座する着座者に向けて風を送る送風機を該シートバックに内蔵する車両用シートであって、
前記シートバックは、低通気性を有しながら且つ着座者側面側とは反対側の背面側の一部を除き該シートバック外周に面して配設される内部パッドと、通気性を有しながら且つ該シートバックの外装をなすように該内部パッドを被覆する布製のシートカバーとを備え、
前記内部パッドには、前記送風機から送られる風を該シートバックの着座者側面に導く導風路が形成されており、
前記シートカバーは、配設状態時に該シートバックの前記着座者側面側に位置する着座者側面部分と、配設状態時に該シートバックの前記背面側に位置する背面部分とが、繋ぎ合わされた袋状にて形成されており、
前記シートカバーの前記背面部分のうち少なくとも前記内部パッドを被覆していない部分は、前記シートバック外部から該シートバック内部への通気を遮るように、前記着座者側面部分の前記シートカバーに比して通気性が低く設定された通気遮断部として形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記内部パッドは、該シートバックの前記着座者側面側と、該シートバックの上面側と、該シートバックの左右側面側とに亘って、連なるようにして設けられており、
前記通気遮断部は、前記シートバックの前記背面側に位置する前記内部パッドの端部に一部重なるまで、延在して形成されていることを特徴とする車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−121381(P2011−121381A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278348(P2009−278348)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】