説明

車両用シート

【課題】作業を行いやすい車両用シートの提供を課題とする。
【解決手段】シートバック23を起立位置Stから略水平の倒伏位置Dwへ倒すことが可能な車両用シート20に、背面ベルト32を備え、この背面ベルト32は、シートバック23の背面28に沿って延びることで、倒伏位置Dwにあるシートバック23の背面28に載置された載置物や乳幼児Baを拘束することが可能な位置に設けられていることを特徴とする。
【効果】シートバック23の背面28に載置された載置物や乳幼児Baを拘束した上で作業を行う。載置物や乳幼児Baの動きを拘束することで、作業を行いやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックを起立位置から略水平の倒伏位置へ倒すことが可能な車両用シートの改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートには、シートバックを前に倒す形式のものがある。この種のシートにおいては略水平状態となったシートバックの背面を有効利用する技術の開発が進められている(例えば、特許文献1(図9)参照。)。
【0003】
特許文献1に示される車両用シートは、シートバックを前方に向かって倒すことができる。シートバックを略水平になるまで倒すことで、シートバックの背面をテーブル面として使用することができる。
【0004】
ところで、略水平状態のシートバックの背面には、必要に応じて種々の物を載せたい。例えば、背面にものを載せて作業をすることが考えられる。また、背面に乳幼児を寝かせておむつを替えることも考えられる。このときに、種々の作業を容易に行えることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−192998公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、略水平状態のシートバックの背面を使って容易に作業を行うことが可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、シートバックを起立位置から略水平の倒伏位置へ倒すことが可能な車両用シートに、背面ベルトを備え、
この背面ベルトは、シートバックの背面に沿って延びることで、倒伏位置にあるシートバックの背面に載置された載置物や乳幼児を拘束することが可能な位置に設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、背面ベルトに有しているタングが着脱可能なバックルを、さらに有していることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明では、バックルは、シートバックの内部に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、シートバックを起立させた状態で、車両用シートのシートクッションに着座している乗員を拘束するための乗員拘束用ベルトが、車両に設けられており、
バックルは、背面ベルトに有しているタングの他に、乗員拘束用ベルトに有しているタングをも着脱可能な構成であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、シートバックの内部に、背面ベルトを巻取ることが可能なベルト巻取り機構を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、シートバックの背面に載置された載置物や乳幼児を拘束する、背面ベルトが備えられている。シートバックの背面に載置された載置物や乳幼児を拘束した上で作業を行う。載置物や乳幼児の動きを拘束することで、作業を行いやすくなる。即ち、略水平状態のシートバックの背面を使って容易に作業を行うことが可能であるといえる。
【0013】
請求項2に係る発明では、背面ベルトにタングが備えられ、このタングはバックルに着脱可能とされる。タングとバックルを離間させた状態で、載置物や乳幼児をシートバックの背面に載置し、載置後にタングをバックルに差し込む。載置物や乳幼児を容易に拘束することができ、作業がさらに容易になる。
【0014】
請求項3に係る発明では、シートバックの内部にバックルが設けられる。シートバックの背面に拘束に必要な部材を集中させることで、車両用シートの小型化を図ることができる。車室内の空間をさらに有効に利用することができ望ましい。
【0015】
請求項4に係る発明では、背面ベルトに設けられたタングと乗員拘束用ベルトに設けられたタングとが、バックルに着脱可能とされる。走行中は、乗員拘束用ベルトのタングをバックルに差し込み、乗員を拘束する。一方、停車中は、背面ベルトのタングをバックルに差し込むことで、載置物や乳幼児を拘束した上で作業を行うことができる。バックルを別個設ける場合に比べ、部品点数の削減を図ることができる。
【0016】
請求項5に係る発明では、背面ベルトを巻取るための巻取り機構が設けられる。巻取り機構が設けられることで、背面ベルトの不使用時に、背面ベルトが巻き取られる。必要な場合にのみ背面ベルトを引き出せるようにすることで、背面ベルトが不要な場合の外観を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車両用シートの斜視図である。
【図2】実施例1に係る車両用シートの平面図である。
【図3】車両用シートの作用を説明する図である。
【図4】実施例2に係る車両用シートの平面図である。
【図5】実施例3に係る車両用シートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0019】
実施例1に係る車両用シートの構造について、図1及び図2に基づき説明する。
図1は、車両用シート20を斜め後方から見た状態で表している。図2は、倒伏位置Dwにある車両用シート20を上方から見た状態で表している。図1及び図2に示された車両用シート20は、右ハンドル車の助手席を例示している。
【0020】
車両用シート20は、車両10のフロア11に取付けられる前後の脚部12、13と、これらの脚部12、13に支持されるレール14とによって車体前後方向に移動可能に支持される。
【0021】
車体前後方向に移動可能に支持される車両用シート20は、レール14に支持されるシート基部21と、このシート基部21に支持されるシートクッション22と、このシートクッション22の上面に倒伏されたシートバック23と、シートバック23の先端に設けられるヘッドレスト24とからなる。
【0022】
シート基部21の側部に、レバー25が設けられる。このレバー25を操作することで、図1の想像線で示す起立位置Stから、実線で示す倒伏位置Dwまで、シートバック23は倒伏される。
【0023】
シートバック23の背面28側に、載置物や乳幼児Ba(以下、まとめて「乳幼児」と記載する。)が載置される凹部31が形成される。この凹部31に載置された乳幼児Baは、シートバック23の背面28に沿って延ばされる背面ベルト32で拘束される。
【0024】
背面ベルト32の端部にはタング33が設けられ、このタング33はシートクッション22の側方に設けられるバックル34に着脱可能とされる。バックル34からタング33を離脱させると、背面ベルト32は、シートバック23内に設けられたベルト巻取り機構35によって巻取られる。
【0025】
ベルト巻取り機構35が設けられることで、背面ベルト32の不使用時に、背面ベルト32が巻き取られる。必要な場合にのみ背面ベルト32を引き出せるようにすることで、背面ベルト32が不要な場合の外観を高めることができる。
【0026】
この他に、シートバック23の内部には、ティッシュペーパー37等の小物を収納する収納部38が設けられ、この収納部38の開口に回動可能に蓋部39が備えられる。シートバック23の背面28を用いて作業を行う場合に、収納部38を備えることで、作業に必要な小物をすぐに取り出すことができる。即ち、収納部38を備えることで、作業の利便性の向上に資する。
【0027】
このように構成された車両用シート20の近傍には、図1に示すように、センターピラー41が立てられる。センターピラー41には、シートバック23を起立させた際に、シートクッション22に着座する乗員が拘束される乗員拘束用ベルト42が備えられる。
【0028】
乗員拘束用ベルト42は、端部にタング43が設けられ、このタング43は、バックル34に着脱可能とされる。バックル34からタング43を離脱させると、乗員拘束用ベルト42は、センターピラー41に設けられたベルト巻取り機構44によって巻取られる。乗員拘束用ベルト42は、センターピラー41に取付けられたアッパーアンカ45に支持される。
【0029】
背面ベルト32に設けられたタング33と乗員拘束用ベルト42に設けられたタング43とが、バックル34に着脱可能とされる。走行中は、乗員拘束用ベルト42のタング43をバックル34に差し込み、乗員を拘束する。一方、停車中は、背面ベルト32のタング33をバックル34に差し込むことで、乳幼児Baを拘束した上で作業を行うことができる。バックル34を個別に設ける場合に比べ、部品点数の削減を図ることができる。
次図で車両用シート20の作用を説明する。
【0030】
図3(a)は、走行中の車両10を上方から見た図であり、(b)は、停車し作業を行っている状態の車両10を上方から見た図であり、(c)は(b)の作業を側方から見た図である。
【0031】
(a)に示すように、車両10の走行中、乳幼児Baはチャイルドシートと称される乳幼児用シート48に着座し、この乳幼児用シート48に備えられたベルト49で拘束される。
【0032】
車両10が停車し、おむつ替え等の作業をすることがある。作業をするに当たってはまず、乗員Crはレバー25を操作しシートバック23を倒伏させる。次に、倒伏させたシートバック23の背面28に乳幼児Baを移動させ、寝かせる。乳幼児Baを寝かせたら、背面28に向かって開口される引出し口51から背面ベルト32を引出し、バックル34に背面ベルト32を装着する。
【0033】
背面ベルト32を装着することで、乳幼児Baは拘束される。シートバック23の背面28に載置された乳幼児Baを拘束した上で作業を行う。乳幼児Baの動きを拘束することで、作業を行いやすくなる。即ち、略水平状態のシートバック23の背面28を使って容易に作業を行うことが可能であるといえる。
【0034】
さらに、図1及び図2をも参照して、タング33とバックル34を離間させた状態で、乳幼児Baをシートバック23の背面28(凹部31)に載置し、載置後にタング33をバックル34に差し込む。乳幼児Baを容易に拘束することができ、作業がさらに容易になる。
【0035】
なお、走行中は乗員Crが車両用シート20に着座し、停車後に後部シート52に移動して作業を行うことや、運転者Drが停車後に後部シート52に移動して作業を行うこともできる。
【0036】
図3(c)に示すように、車両10に車両用シート20を搭載することで、乗員Cr(又は運転者Dr)は、後部シート52に着座した状態で作業を行うことができる。即ち、狭い車室内空間であっても、作業を行いやすい姿勢で作業を行うことができる。
特に乳幼児用シート48を設置し、後部シート52の作業スペースが狭くなった車両10に、車両用シート20を搭載することは有益である。
図4及び図5で本発明の別実施例について説明する。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図4は、実施例2に係る車両用シート60を上方から見た図であり、図2に対応する。
【0038】
バックル61は、シートバック23の内部に設けられる。シートバック23の背面28に拘束に必要な部材を集中させることで、車両用シート20の小型化を図ることができる。車室内の空間をさらに有効に利用することができ望ましい。
【0039】
さらに、凹部31には、面ファスナー62aが貼着される。面ファスナー62aが貼着された凹部31に、面ファスナー62bが縫いつけられたタオル地等の布63が被せられ、面ファスナー62a、62bが合わせられる。
【0040】
凹部31に布63が敷設されることで、乳幼児Baは快適に過ごすことができる。また、面ファスナー62a、62bを設け、布63を凹部31に対して着脱自在にする。着脱自在にされることで、布63を取り外して洗濯することができる。洗濯することができるため、衛生面から望ましい。
【実施例3】
【0041】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図5は、実施例3に係る車両用シート70を上方から見た図であり、図2及び図4に対応する。
【0042】
ゴム製の背面ベルト71が、シートバック23の背面28側に縫いつけられる。このような背面ベルト71を設けた場合も、乳幼児Baの動きを拘束することができるため、作業を行いやすい。また、ゴム製の背面ベルト71を用いた場合は、乳幼児Baを拘束するために必要な部品点数も少なく済むため、車両用シート70を安価に製造することができる。
【0043】
尚、本発明に係る車両用シート20は、助手席を例に説明したが、例えばシートが3列に配置される車両の場合は、2列目のシートの背面に背面ベルトを設けることもできる。即ち、任意のシートの背面に背面ベルトを設けることができる。
【0044】
加えて、2列目のシートが、いわゆるベンチシートである場合がある。このような場合、倒伏位置にあるシートに対して、背面ベルトを車体前後方向に延ばすこともできる。即ち、背面ベルトは車幅方向に向かって延ばされるものに限られず、シートの形状に合わせて任意の方向に向かって延ばすことができる。
【0045】
なお、ベルトをシートバックの背面に収納するように構成したが、例えばシートバックの背面にタングを引っ掛けて保持するようなフックを設けることも可能である。さらに、バックル側にもベルトを設けて、そのバックルも上記フックに引っ掛けられるように構成することも可能である。このように既存のシートバックに大幅な変更をしないで構成することができ、また起立したシートバックに着座する乗員の着座フィーリングに影響を与えない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の車両用シートは、車室内が狭い四輪車に好適である。
【符号の説明】
【0047】
10…車両、20、60、70…車両用シート、22…シートクッション、23…シートバック、28…背面、32、71…背面ベルト、33…(背面ベルトの)タング、34、61…バックル、35…(背面ベルトの)ベルト巻取り機構、42…乗員拘束用ベルト、43…(乗員拘束用ベルトの)タング、Dw…倒伏位置、St…起立位置、Ba…乳幼児(載置物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックを起立位置から略水平の倒伏位置へ倒すことが可能な車両用シートに、背面ベルトを備え、
この背面ベルトは、前記シートバックの背面に沿って延びることで、前記倒伏位置にある前記シートバックの背面に載置された載置物や乳幼児を拘束することが可能な位置に設けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記背面ベルトに有しているタングが着脱可能なバックルを、さらに有していることを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記バックルは、前記シートバックの内部に設けられていることを特徴とする請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シートバックを起立させた状態で、前記車両用シートのシートクッションに着座している乗員を拘束するための乗員拘束用ベルトが、車両に設けられており、
前記バックルは、前記背面ベルトに有しているタングの他に、前記乗員拘束用ベルトに有しているタングをも着脱可能な構成であることを特徴とする請求項2記載の車両用シート。
【請求項5】
前記シートバックの内部に、前記背面ベルトを巻取ることが可能なベルト巻取り機構を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−230658(P2011−230658A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102892(P2010−102892)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】