説明

車両用シート

【課題】着座者の疲労を低減することができると共に、着座者の頸部の鞭打ち障害を防止又は軽減することができる車両用シートを得る。
【解決手段】車両用シート10では、シートクッションフレーム20に対するバックフレーム下部38Bの後傾に連動してバックフレーム上部38Aがバックフレーム下部38Bに対し前傾する。これにより、着座者の疲労を低減することができる。しかも、バックフレーム上部38Aのフレーム本体であるアッパフレーム58(パイプ材)と、バックフレーム下部38Bとがヒンジボルト74、76によって直接的に連結されているため、当該連結部分においてシートバックフレーム38の剛性が低下することを回避できる。これにより、車両の後面衝突時におけるバックフレーム上部38Aの後傾が抑制されるので、バックフレーム上部38Aの上端部に連結されたヘッドレスト18によって着座者の頭部を迅速に支持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに係り、特に中折れ式のシートバックを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されたパワーコンフォートシート構造では、シートクッションフレームの後端部に、リクライニング機構を介して中折れ式のシートバックが連結されている。このシートバックの下半部は、左右のサイドフレームを備えており、これらのサイドフレームの上端部には、略く字形状に形成されたリンクの中間部が回転可能に連結されている。リンクの後端部には、シートバックの上半部の骨格の一部をなす下端のフレームが固定されており、リンクの前端部には、コネクティングアーム(連結手段)の上端部が回転可能に連結されている。コネクティングアームの下端部は、シートクッションフレームに回転可能に連結されており、シートバックの下半部がシートクッションフレームに対して後傾すると、シートバックの上半部がコネクティングアームによって引っ張られることにより、上半部が下半部に対して前傾する。これにより、シートバックの後傾に伴って着座者の頭部が後傾することを抑制し、着座者の疲労を低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−11603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成のパワーコンフォートシート構造では、シートバックの上半部の骨格を構成するパイプ状のフレームが、板状のリンクを介して下半部のサイドフレームに連結されているため、当該リンクの部位でシートバックの剛性が低下していると考えられる。このため、例えば、車両の後面衝突によってシートバックに対し着座者から車両後方側への荷重が負荷された際には、シートバックの上半部のフレームと下半部のサイドフレームとの間でリンクが変形する可能性がある。この場合、シートバックの上半部が下半部に対して後傾し、シートバックの上部に取り付けられたヘッドレストが着座者の頭部から離れてしまう。その結果、着座者の頭部がヘッドレストによって迅速に支持されなくなるため、着座者の頸部の鞭打ち障害を防止又は軽減する上で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、着座者の疲労を低減することができると共に、着座者の頸部の鞭打ち障害を防止又は軽減することができる車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、バックフレーム下部がシートクッションフレームに対してリクライニング可能に連結されると共に、上端部にヘッドレストが連結されたバックフレーム上部が連結手段を介してシートクッションフレーム側に連結され、前記シートクッションフレームに対する前記バックフレーム下部の後傾に連動して前記バックフレーム上部が前記バックフレーム下部に対し前傾する中折れ式のシートバックフレームを備え、前記バックフレーム上部は、フレーム本体がパイプ材によって形成され、前記フレーム本体の下端部が前記バックフレーム下部の上端部に対して連結軸を介して回転可能に連結されていることを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の車両用シートでは、シートバックフレームのバックフレーム下部がシートクッションフレームに対してリクライニング可能に連結されており、バックフレーム下部の上端部には、バックフレーム上部の下端部が連結軸を介して回転可能に連結されている。このバックフレーム上部は、連結手段を介してシートクッションフレーム側に連結されており、バックフレーム下部がシートクッションフレームに対して後傾すると、バックフレーム上部がバックフレーム下部に対し前傾する。これにより、シートバックに凭れる着座者の筋肉の負担を最小化すること等ができるので、着座者の疲労を低減することができる。
【0008】
しかも、この車両用シートでは、バックフレーム上部がパイプ材によって形成されたフレーム本体を有しており、当該フレーム本体の下端部が、バックフレーム下部の上端部に対して連結軸を介して回転可能に連結されている。このように、バックフレーム上部のフレーム本体を構成するパイプ材と、バックフレーム下部とが連結軸によって直接的に連結されているため、当該連結部分においてシートバックフレームの剛性が低下することを回避できる。これにより、車両の後面衝突時におけるバックフレーム上部の後傾が抑制されるので、バックフレーム上部の上端部に連結されたヘッドレストによって着座者の頭部を迅速に支持することができる。したがって、着座者の頸部の鞭打ち傷害を防止又は軽減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記フレーム本体の下端部は、円形断面に形成されており、前記連結軸が前記円形断面を径方向に貫通していることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の車両用シートでは、バックフレーム上部は、パイプ材によって形成されたフレーム本体の下端部が円形断面に形成されており、当該円形断面を径方向に貫通した連結軸によってバックフレーム上部とバックフレーム下部とが連結されている。このように、フレーム本体(パイプ材)の下端部、すなわちバックフレーム下部への連結部の断面が扁平化されることなく、円形断面のまま保持されることにより、パイプ材の剛性が低下することを防止できる。これにより、バックフレーム上部とバックフレーム下部との連結部分において、シートバックフレームの剛性が低下することを一層良好に抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記バックフレーム下部は、左右一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの各上端部を連結した補強フレームとを有し、前記バックフレーム上部の前記フレーム本体は、各下端部が前記一対のサイドフレームの各上端部に対してそれぞれ前記連結軸を介して連結された左右一対のサイド部を有し、前記連結手段は、前記一対のサイド部のうちの一方に固定されたアッパブラケットと、上端部が前記アッパブラケットに回転可能に連結され、下端部が前記シートクッションフレーム側に回転可能に連結されたリンク部材と、を有することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の車両用シートでは、バックフレーム下部を構成する左右一対のサイドフレームの各上端部と、バックフレーム上部におけるフレーム本体(パイプ材)を構成する左右一対のサイド部の各下端部とが、それぞれ連結軸を介して連結されている。また、上記左右一対のサイド部のうちの一方には、アッパブラケットが固定されており、このアッパブラケットには、リンク部材の上端部が回転可能に連結されている。リンク部材の下端部は、シートクッションフレーム側に回転可能に連結されており、バックフレーム下部がシートクッションフレームに対して後傾すると、バックフレーム上部がリンク部材に引っ張られる。これにより、バックフレーム上部がバックフレーム下部に対して前傾する。
【0013】
ここで、この車両用シートでは、バックフレーム上部のフレーム本体を構成する左右一対のサイド部のうちの一方のみが、アッパブラケット及びリンク部材を介してシートクッションフレーム側に連結された片持構造とされている。これにより、部品点数を低減することができると共に、車両用シートの低コスト化を図ることができる。しかも、バックフレーム下部を構成する左右一対のサイドフレームの各上端部が補強フレームによって連結されているため、片持構造によってシートバックフレームの剛性が低下することを回避できる。
【0014】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記バックフレーム下部は、左右一対のサイドフレームを有し、前記バックフレーム上部の前記フレーム本体は、各下端部が前記一対のサイドフレームの各上端部に対してそれぞれ前記連結軸を介して連結された左右一対のサイド部を有し、前記連結手段は、前記一対のサイド部のそれぞれに固定された左右一対のアッパブラケットと、前記一対のアッパブラケットのそれぞれに各上端部が回転可能に連結され、各下端部が前記シートクッションフレーム側に回転可能に連結された左右一対のリンク部材と、を有することを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の車両用シートでは、バックフレーム下部を構成する左右一対のサイドフレームの各上端部と、バックフレーム上部におけるフレーム本体(パイプ材)を構成する左右一対のサイド部の各下端部とが、それぞれ連結軸を介して連結されている。また、上記左右一対のサイド部には、それぞれアッパブラケットが固定されており、これらのアッパブラケットには、それぞれリンク部材の上端部が回転可能に連結されている。各リンク部材の下端部は、シートクッションフレーム側に回転可能に連結されており、バックフレーム下部がシートクッションフレームに対して後傾すると、バックフレーム上部が各リンク部材によって引っ張られる。これにより、バックフレーム上部がバックフレーム下部に対して前傾する。
【0016】
ここで、この車両用シートでは、バックフレーム上部のフレーム本体を構成する左右一対のサイド部の両方が、左右一対のアッパブラケット及び左右一対のリンク部材を介してシートクッションフレーム側に連結された両持構造とされている。このため、シートバックに対して着座者から後方側への荷重が負荷された際には、当該荷重の一部を左右一対のリンク部材が負担することにより、バックフレーム上部を左右両側でバランス良く支持することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートでは、着座者の疲労を低減することができると共に、着座者の頸部の鞭打ち障害を防止又は軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの主要部の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示されるシートバックフレームを含む周辺部材の分解斜視図である。
【図3】図1の3−3線に沿った切断面を示す拡大横断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るシートクッションフレーム及びシートバックフレームの構成を示し、(A)はシートバックフレームが起立した状態を示す側面図であり、(B)はシートバックフレームが後傾した状態を示す側面図である。
【図5】従来の標準的なシートバックフレームの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図5を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印Wは、それぞれ車両用シート10の前方向、上方向、幅方向を示している。また、本実施形態では、車両用シート10の前方向、上方向、幅方向は、この車両用シート10が搭載された車両の前方向、上方向、幅方向と略一致している。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、着座者の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、このシートクッション12の後端部にリクライニング機構14を介して連結され、着座者の背部を支持するシートバック16と、このシートバック16の上端部に連結され、着座者の頭部を支持するヘッドレスト18とを備えている。
【0021】
シートクッション12は、その骨格を構成するシートクッションフレーム20を備えており、このシートクッションフレーム20には、表皮22によって覆われたシートクッションパッド(図示省略)が取り付けられている。
【0022】
シートクッションフレーム20は、シート前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム24、26と、サイドフレーム24、26の各前端部を連結したフロントフレーム28と、サイドフレーム24、26の各後端部を連結したリヤフレーム30とを含んで構成されている。サイドフレーム24、26及びフロントフレーム28は、板金材料によって形成されており、リヤフレーム30は、円形断面の金属製のパイプ材によって形成されている。
【0023】
サイドフレーム24、26の後端部には、リクライニング機構14を構成するフレーム32、34がボルト及びナットによって締結固定されている。これらのフレーム32、34は、板金材料によって形成されており、シート右側のフレーム34には、更にリンクブラケット36が固定されている。このリンクブラケット36は、板金材料によって形成されており、フレーム34からシート前方側の斜め上方側へ突出している。
【0024】
一方、シートバック16は、分離されたシートバック上部16Aとシートバック下部16Bとの組み合わせによって形成されており、その骨格を構成するシートバックフレーム38は、分離されたバックフレーム上部38Aとバックフレーム下部38Bとの組み合わせからなる中折れ式に形成されている。バックフレーム上部38Aには、表皮40によって覆われたシートバックパッド上部(図示省略)が取り付けられており、バックフレーム下部38Bには、表皮42によって覆われたシートバックパッド下部(図示省略)が取り付けられている。
【0025】
図2に示されるように、バックフレーム下部38Bは、シートバック16の上下方向に延びる左右一対のサイドフレーム本体44、46と、サイドフレーム本体44、46の各上端部におけるシート幅方向内側面に接合された左右一対のヒンジブラケット50、52と、ヒンジブラケット50、52の各上端部を連結した補強パイプ54(補強フレーム)と、サイドフレーム本体44、46の各下端側を連結したロアプレート48と、を含んで構成されている。
【0026】
サイドフレーム本体44、46、ヒンジブラケット50、52、及びロアプレート48は、板金材料によって形成されており、補強パイプ54は、円形断面の金属製のパイプ材によって形成されている。ロアプレート48及びヒンジブラケット50、52は、スポット溶接等によりサイドフレーム本体44、46に接合されている。サイドフレーム本体44、46及びヒンジブラケット50、52は、バックフレーム下部38Bのサイドフレーム51、53を構成している。また、補強パイプ54の長手方向両端部は、扁平状に潰されており、これらの扁平状の部位がサイドフレーム本体44、46の後面に溶接されている。
【0027】
サイドフレーム本体44、46の各下端部は、前述したフレーム32、34に対してシート幅方向に重ね合わされており、リクライニング機構14を構成する左右一対のリクライナー(図示省略)を介してフレーム32、34に連結されている。なお、このリクライニング機構14は、従来周知のものであり、サイドフレーム本体44、46の下端部間に架け渡された連結シャフト56がシート幅方向に沿った軸線回りに回転されると、左右一対のリクライニングユニットに設けられた遊星歯車機構が回転し、シートバックフレーム38のバックフレーム下部38Bがシートクッションフレーム20に対して前後に傾動する構成になっている。
【0028】
一方、バックフレーム上部38Aは、断面円形の金属製のパイプ材が略逆U字状に曲げ加工されて形成されたアッパフレーム58(フレーム本体)を備えている。このアッパフレーム58は、左右一対のサイド部58A、58Bと、サイド部58A、58Bの各上端部を連結したアッパ部58Cとによって構成されている。
【0029】
アッパ部58Cには、左右一対のヘッドレストサポートブラケット60が溶接されている。これらのヘッドレストサポートブラケット60には、それぞれヘッドレストサポート61が装着されており、これらのヘッドレストサポート61には、ヘッドレスト18の骨格を構成するヘッドレストフレーム62が連結されている。また、サイド部58A、58Bの各上下方向中間部は、板金材料によって形成されたアッパプレート64によって連結(補強)されている。
【0030】
サイド部58A、58Bの各下端部は、バックフレーム下部38Bのヒンジブラケット50、52に対してシート幅方向外側に重ね合わされている。サイド部58A、58Bの各下端部では、アッパフレーム58を構成するパイプ材が円形断面を保持しており(図3参照)、サイド部58A、58Bの各下端部には、上記円形断面を径方向(シート幅方向)に貫通した貫通孔66、68が形成されている。これらの貫通孔66、68は、ヒンジブラケット50、52に形成された貫通孔70、72と対向しており、これらの貫通孔70、72を貫通したヒンジボルト74、76(連結軸)がヒンジブラケット50、52に溶接されたウェルドナット78、80に螺合している。これらのヒンジボルト74、76は段付きボルトであり、先端側に設けられた段部がヒンジブラケット50、52に当接すると共に、当該段部よりも先端側に形成された雄ねじ部がウェルドナット78、80に螺合している。これにより、サイド部58A、58Bは、ヒンジブラケット50、52に対する相対回転を許容する僅かな隙間が確保された状態でヒンジブラケット50、52に締結されており、バックフレーム上部38Aがバックフレーム下部38Bに連結されている。ヒンジボルト74、76は、シート幅方向に沿った軸線上に同軸的に配置されており、バックフレーム上部38Aはバックフレーム下部38Bに対してヒンジボルト74、76回り(シート幅方向に沿った軸線回り)に回転可能とされている。
【0031】
また、シート右側のサイド部58Bには、板金材料によって形成されたアッパブラケット82が溶接されている。このアッパブラケット82は、サイド部58Bに対してシート幅方向外側に配置されており、シートバック16の上下方向に沿って長尺に形成されている。アッパブラケット82の下端部には、貫通孔84が形成されており、当該貫通孔84には、前述したヒンジボルト76が貫通している。アッパブラケット82の下部側からは、シートバック16の前方側へ向けてリンク連結片82Aが延出されている。
【0032】
リンク連結片82Aに対してシート幅方向外側には、円形断面の金属製のパイプ材によって形成されたリンクパイプ86(リンク部材)の長手方向一端部(上端部)が重ね合わされている。リンクパイプ86の上端部は、ヒンジボルト76に対してシート前方側の斜め上方側に配置されている。また、このリンクパイプ86の上端部は、扁平状に潰されており、当該扁平状の部位には、貫通孔88が形成されている。この貫通孔88は、リンク連結片82Aに形成された貫通孔90と対向しており、これらの貫通孔88、90を貫通したリンクボルト92(段付きボルト)がリンク連結片82Aに溶接されたウェルドナット91に螺合している。これにより、リンクパイプ86の上端部がアッパブラケット82に回転可能に連結されている。リンクボルト92は、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されており、リンクパイプ86は、アッパブラケット82に対してリンクボルト92回り(シート幅方向に沿った軸線回り)に回転可能とされている。
【0033】
リンクパイプ86の下端部は、リクライニング機構14の連結シャフト56に対してシート前方側の斜め上方側に配置されており、前述したリンクブラケット36の上端部に対してシート幅方向外側に重ね合わされている。リンクパイプ86の下端部は、扁平状に潰されており、当該扁平状の部位には、貫通孔94が形成されている。この貫通孔94は、リンクブラケット36に形成された貫通孔96と対向しており、これらの貫通孔94、96を貫通したリンクボルト98(段付きボルト)がリンクブラケット36に溶接されたウェルドナット99に螺合している。これにより、リンクパイプ86の下端部がリンクブラケット36に回転可能に連結されている。リンクボルト98は、軸線方向がシート幅方向に沿う状態で配置されており、リンクパイプ86は、リンクブラケット36に対してリンクボルト98回り(シート幅方向に沿った軸線回り)に回転可能とされている。
【0034】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
上記構成の車両用シート10では、着座者の胸郭及び腰椎がシートバック上部16A及びシートバック下部16Bによって独立して支持される。ここで、シートバック下部16Bの骨格を構成するバックフレーム下部38Bは、シートクッションフレーム20に対してリクライニング可能に連結されており、バックフレーム下部38Bの上端部には、シートバック上部16Aの骨格を構成するバックフレーム上部38Aの下端部がヒンジボルト74、76を介して回転可能に連結されている。このバックフレーム上部38Aは、アッパブラケット82やリンクパイプ86等を介してシートバックフレーム38側のリンクブラケット36に連結されている。
【0036】
このため、図4(A)に示される状態から、図4(B)に矢印Sで示されるようにバックフレーム下部38Bがシートクッションフレーム20に対して後傾すると、図4(B)に矢印Tで示されるようにバックフレーム上部38Aがリンクパイプ86に引っ張られる。これにより、図4(B)に矢印Uで示されるようにバックフレーム上部38Aがバックフレーム下部38Bに対し前傾する。
【0037】
これにより、シートバック下部16Bの背凭れ面の後傾角度Xと、シートバック下部16Bの背凭れ面に対するシートバック上部16Aの背凭れ面の傾斜角度Yとの関係が、疲労低減姿勢の理論上の関係と略同様になるので、着座者の疲労を低減することができる。つまり、着座者の上半身の後傾が抑制されることにより、着座者の筋肉の負担が最小化されると共に、椎間板の内部応力が最小化される。また、車両用シート10に負荷される着座者からの荷重が、シートクッション12及びシートバック16に最適に配分されるようになる。さらに、着座者の頭部の後傾が抑制されることにより、着座者の視界が良好に確保される。以上のことから、着座者の疲労が低減される。
【0038】
しかも、この車両用シート10では、バックフレーム上部38Aのフレーム本体であるアッパフレーム58がパイプ材によって形成されており、当該パイプ材の下端部が、ヒンジブラケット50、52(バックフレーム下部38Bの上端部)に対してヒンジボルト74、76を介して回転可能に連結されている。このように、バックフレーム上部38Aのフレーム本体を構成するパイプ材が、ヒンジボルト74、76によって直接的にバックフレーム下部38Bに連結されているため、当該連結部分においてシートバックフレーム38の剛性が低下することを回避できる。これにより、車両の後面衝突時におけるバックフレーム上部38Aの後傾が抑制されるので、バックフレーム上部38Aの上端部に連結されたヘッドレスト18によって着座者の頭部を迅速に支持することができる。したがって、着座者の頸部の鞭打ち傷害を防止又は軽減することができる。
【0039】
また、この車両用シート10では、バックフレーム上部38Aのフレーム本体(アッパフレーム58)を構成するパイプ材の下端部が、円形断面に形成されており、当該円形断面を径方向に貫通したヒンジボルト74、76によってバックフレーム上部38Aとバックフレーム下部38Bとが連結されている。このように、アッパフレーム58(パイプ材)の下端部、すなわちバックフレーム下部38Bへの連結部の断面が扁平化されることなく、円形断面のまま保持されることにより、パイプ材の剛性が低下することを防止できる。これにより、バックフレーム上部38Aとバックフレーム下部38Bとの連結部分において、シートバックフレーム38の剛性が低下することを一層良好に抑制することができる。
【0040】
さらに、この車両用シート10では、バックフレーム上部38Aを構成する左右一対のサイド部58A、58Bのうち、一方のサイド部58Bのみがリンクパイプ86等を介してシートクッションフレーム20側に連結された片持構造とされている。これにより、部品点数を低減することができると共に、車両用シート10の低コスト化を図ることができる。しかも、バックフレーム下部38Bを構成する左右一対のサイドフレーム本体44、46の各上端部が補強パイプ54によって連結されているため、片持構造によってシートバックフレーム38の剛性が低下することを回避できる。
【0041】
また、この車両用シート10では、図5に示される如き標準的なシートバックフレーム100(標準骨格)を流用して、中折れ式のシートバックフレーム38を製造することができる。つまり、シートバックフレーム100におけるサイドフレーム本体44、46の上端側及びフレーム34の一部を切削すると共に、リンクブラケット36、ヒンジブラケット50、52、補強パイプ54、アッパブラケット82、及びリンクパイプ86等を追加することにより、シートバックフレーム38を製造することができる。このように、一からの専用設計ではなく、標準骨格の改造により、中折れ式のシートバックフレーム38を製造することができるので、車両用シート10の製造コストを低減することができる。
【0042】
(実施形態の補足)
なお、上記実施形態では、一方のサイド部58Bみがリンクパイプ86等を介してシートクッションフレーム20側に連結された片持構造とされた構成にしたが、請求項1及び請求項2に係る発明はこれに限らず、両方のサイド部58A、58Bがリンクパイプ86等を介してシートクッションフレーム20側に連結された両持構造にしてもよい。つまり、アッパブラケット82、リンクパイプ86、リンクブラケット36、及びリンクボルト92、98等を、車両用シート10の左側にも追加することにより、両持構造とすることができる。この場合、シートバック16に対して着座者から後方側への荷重が負荷された際には、当該荷重の一部を左右一対のリンクパイプ86等が負担することにより、バックフレーム上部38Aを左右両側でバランス良く支持することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、サイドフレーム本体44、46の各上端部にヒンジブラケット50、52が固定された構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、サイドフレーム本体44、46とヒンジブラケット50、52が一体に形成された構成にしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、ヒンジブラケット50、52が補強パイプ54(補強フレーム)によって連結された構成にしたが、請求項1及び請求項2に係る発明はこれに限らず、補強フレームが省略された構成にしてもよい。
【0045】
さらに、上記実施形態では、リクライニング機構14のフレーム34にリンクブラケット36が固定された構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、フレーム34とリンクブラケット36が一体に形成された構成にしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、バックフレーム上部38Aのフレーム本体であるアッパフレーム58の左右の下端部が円形断面に形成され、当該円形断面をヒンジボルト74、76(連結軸)が径方向に貫通した構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、アッパフレーム58の左右の下端部が扁平状に潰され、当該扁平状の部分をヒンジボルト74、76が貫通した構成にしてもよい。
【0047】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0048】
10 車両用シート
20 シートクッションフレーム
38 シートバックフレーム
38A バックフレーム上部
38B バックフレーム下部
51、53 サイドフレーム
54 補強パイプ(補強フレーム)
58 アッパフレーム(フレーム本体)
58A、58B サイド部
76 ヒンジボルト(連結軸)
82 アッパブラケット
86 リンクパイプ(リンク部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックフレーム下部がシートクッションフレームに対してリクライニング可能に連結されると共に、上端部にヘッドレストが連結されたバックフレーム上部が連結手段を介してシートクッションフレーム側に連結され、前記シートクッションフレームに対する前記バックフレーム下部の後傾に連動して前記バックフレーム上部が前記バックフレーム下部に対し前傾する中折れ式のシートバックフレームを備え、
前記バックフレーム上部は、フレーム本体がパイプ材によって形成され、前記フレーム本体の下端部が前記バックフレーム下部の上端部に対して連結軸を介して回転可能に連結されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記フレーム本体の下端部は、円形断面に形成されており、前記連結軸が前記円形断面を径方向に貫通していることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記バックフレーム下部は、左右一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの各上端部を連結した補強フレームとを有し、
前記バックフレーム上部の前記フレーム本体は、各下端部が前記一対のサイドフレームの各上端部に対してそれぞれ前記連結軸を介して連結された左右一対のサイド部を有し、
前記連結手段は、
前記一対のサイド部のうちの一方に固定されたアッパブラケットと、
上端部が前記アッパブラケットに回転可能に連結され、下端部が前記シートクッションフレーム側に回転可能に連結されたリンク部材と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記バックフレーム下部は、左右一対のサイドフレームを有し、
前記バックフレーム上部の前記フレーム本体は、各下端部が前記一対のサイドフレームの各上端部に対してそれぞれ前記連結軸を介して連結された左右一対のサイド部を有し、
前記連結手段は、
前記一対のサイド部のそれぞれに固定された左右一対のアッパブラケットと、
前記一対のアッパブラケットのそれぞれに各上端部が回転可能に連結され、各下端部が前記シートクッションフレーム側に回転可能に連結された左右一対のリンク部材と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−148674(P2012−148674A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8771(P2011−8771)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】