説明

車両用シート

【課題】シートバックの姿勢にかかわらず、解除部材を操作性良く牽引することにある。
【解決手段】長孔40が、シートバックの回転軌跡に倣った円弧形状を有するとともに、第一取付け部26aを臨むリクライニング軸Sの周りに形成されて、第一リンクアーム31の他側よりもリクライニング軸Sに近接配置するとともに、シートバックの起倒動作時において、第二取付け部26bが、長孔40内を相対移動しつつ、リクライニング軸Sと第一取付け部26aを結ぶ直線上に配置することにより、第一取付け部26aと第二取付け部26bの相対位置関係を維持可能な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置と、解除部材(リクライニング装置のロックを解除する部材)を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シートとして、特許文献1に開示の車両用シートが公知である。この車両用シートは、リクライニング装置と、解除部材と、連結部材を有する。
リクライニング装置は、シートクッションに対してシートバックを起倒させる装置であり、リクライニング軸と、ロック機構を有する。リクライニング軸は、シート幅方向に延びる棒状部材であり、シートバックの起倒動作の回転中心となる。またロック機構は、シートバックの回転を規制する機構であり、リクライニング軸の軸周りの回転にて解除(又は逆回転にて作動)可能である。
また解除部材は、シートバックからリクライニング軸に向かって延びる索状の部材であり、被覆部にて周囲が被覆される。そして連結部材は、リクライニング軸と解除部材を連結する平板部材(略扇状)であり、一側の曲面部(円弧状)と、他側の頂部を有する。
【0003】
公知技術では、プレート部材(略矩形の平板部材)を、シートクッション後部に取付けつつ、シートバック下部に延設する。
そしてリクライニング軸を、プレート部材上部とシートバック下部に挿設して、シートクッションに対してシートバックを起倒(回転)可能に連結する。このとき公知技術では、リクライニング軸にバネ材を組付けて逆回転方向に付勢する。そしてリクライニング軸を逆回転させて、ロック機構を作動させることにより、シートクッションに対するシートバックの回転動作を規制する(シートバックの姿勢を維持する)ことができる。
【0004】
つぎに連結部材(扇状)をリクライニング軸に取付ける。このとき連結部材の頂部側をリクライニング軸に固定しつつ、曲面部側を、シート後方(リクライニング軸とは異なる位置)に配置する。
そして解除部材を、シートバック側からリクライニング軸に向けて延ばしつつ、被覆部の端部を、シートバック下部に固定する。つぎに被覆部の先端から解除部材を引出しつつ(解除部材の初期長さ寸法を設定しつつ)、連結部材(曲面部)に固定する。
公知技術では、解除部材を牽引して連結部材を引き上げることにより、バネ部材の付勢力に抗してリクライニング軸を軸周りに回転させる。これによりロック機構が解除されて、シートクッションに対するシートバックの回転が許容されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−214573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで公知技術では、被覆部が、シートバック下部に固定されるとともに、解除部材の先端が、曲面部(リクライニング軸のシート後方位置)に固定される。
そしてシートバックの起倒動作により、被覆部の固定部分が、シートバックとともにリクライニング軸を回転中心として回転移動する。このとき被覆部の固定部分と曲面部の相対位置関係が変わる(解除部材の初期長さ寸法が変わる)ことにより、解除部材の操作性が悪化することがあった。
例えばシートバックを前傾姿勢とすることで、被覆部の固定部分と曲面部が離間する。このため被覆部から解除部材が余分に引出される(解除部材の初期長さ寸法が長くなる)などして、解除部材の操作荷重が大きくなる。
またシートバックを起立姿勢とすることで、被覆部の固定部分と曲面部が近接する。このため解除部材の弛みによる遊びが生じて、リクライニング軸の回転までに余分な牽引を要する(操作ロスが発生する)。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シートバックの姿勢にかかわらず、解除部材を操作性良く牽引することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用シートは、リクライニング装置と、解除部材と、連結部材を有する。
リクライニング装置は、シートクッションに対してシートバックを起倒可能に連結する装置である。また解除部材は、シートバックからリクライニング装置のリクライニング軸に向かって延びる索状の部材である。そして連結部材は、リクライニング軸と解除部材を連結する部材である。
本発明では、解除部材の途中が、第一取付け部により、シートバック側に取付けられるとともに、解除部材の端部が、第二取付け部により連結部材に取付けられる。これにより解除部材の初期長さ寸法(第一取付け部と第二取付け部の間の寸法)が設定される。そして第二取付け部から第一取付け部に向けて解除部材を牽引して、リクライニング軸を、連結部材を介して軸周りに回転させる。これによりリクライニング装置のロックを解除して、シートクッションに対するシートバックの起倒動作を許容する。
この種のシート構成では、シートバックの姿勢にかかわらず、解除部材を操作性良く牽引できることが望ましい。
【0008】
そこで本発明では、上述の連結部材が、平板状の第一リンクアームと、平板状の第二リンクアームと、第二リンクアームに設けられて第二取付け部を摺動可能に取付ける長孔とを有する。
そして第一リンクアームの一側をリクライニング軸に回転不能に取付けて、第一リンクアームの他側を、リクライニング軸を回転中心として回転可能とする。また第二リンクアームの一側を、シートバックとは異なる部位に回転可能に取付けて、第二リンクアームの他側を、第一リンクアームの他側に回転可能に取付ける。
そして解除部材を牽引して、第一リンクアームと第二リンクアームを連動して回転させることにより、リクライニング軸を回転させる構成とする。
【0009】
そして本発明では、長孔が、シートバックの回転軌跡に倣った円弧形状を有するとともに、第一取付け部を臨むリクライニング軸の周りに形成されて、第一リンクアームの他側よりもリクライニング軸に近接配置する。
そしてシートバックの起倒動作時において、第二取付け部が、長孔内を相対移動しつつ、リクライニング軸と第一取付け部を結ぶ直線上に配置することにより、第一取付け部と第二取付け部の相対位置関係を維持可能な構成とした。
本発明では、シートバックの回転動作時において、第一取付け部と第二取付け部の相対位置関係(解除部材の初期長さ寸法)を極力維持することにより、解除部材を操作性良く牽引することができる。
【0010】
第2発明の車両用シートは、第1発明の車両用シートであって、上述の第二リンクアームに、リクライニング軸との干渉を回避する非干渉部位を設けて、リクライニング軸を跨ぎつつ配置する。
そして起立状態のシートバックを基準として、第一リンクアームと第二リンクアームを、第一取付け部と第二取付け部を結ぶ解除部材に対して直交状に配置した。
本発明では、第一リンクアームと第二リンクアームを、解除部材に対して直交状に配置することにより、解除部材の操作荷重(初期荷重)を低減することができる。
【0011】
第3発明の車両用シートは、第2発明の車両用シートにおいて、上述の非干渉部位が、リクライニング軸を挿入可能な凹部であるとともに、第二リンクアーム途中を、車両用シートの幅方向とは異なる方向に曲げ変形させて形成される。
本発明では、非干渉部位が、車両用シートの幅方向とは異なる方向に湾曲変形(突出)するため、幅方向における車両用シートの寸法増加を好適に抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る第1発明によれば、シートバックの姿勢にかかわらず、解除部材を操作性良く牽引することができる。また第2発明によれば、解除部材を更に操作性良く牽引できる。そして第3発明によれば、解除部材をコンパクトに牽引できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両用シートの概略側面図である。
【図2】車両用シートの内部構成一部の斜視図である。
【図3】リクライニング軸と解除部材と連結部材の斜視図である。
【図4】リクライニング装置一部の分解斜視図である。
【図5】解除部材と連結部材の正面図である。
【図6】シートバックの起倒動作時における解除部材と連結部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図6を参照して説明する。各図には、適宜、車両用シート前方に符号F、車両用シート後方に符号B、車両用シート上方に符号UP、車両用シート下方に符号DWを付す。
図1の車両用シート2は、シートクッション4と、シートバック6と、ヘッドレスト8を有する。これらシート構成部材は、シート骨格をなすフレーム部材(4F,6F,8F)と、シート外形をなすクッション材(4P,6P,8P)と、クッション材に被覆の表皮材(4S,6S,8S)とを有する。
【0015】
そして車両用シート2は、リクライニング装置R(リクライニング軸S)と、解除部材20と、連結部材30を有する(各部材の詳細は後述、図1及び図2を参照)。
本実施例では、シートクッション4後部とシートバック6下部を、リクライニング装置Rを介して起倒(回転)可能に連結する。
シートバック6は、リクライニング軸Sを回転中心として、例えば起立姿勢から前傾姿勢に変位可能となる(傾斜角度θ1で傾動可能となる)。そしてリクライニング装置Rをロック(後述)することで、シートバック6の姿勢(起立姿勢や前傾姿勢等)を維持できる。
【0016】
そして解除部材20を牽引して、リクライニング軸Sを、連結部材30を介して軸周りに回転させることにより、リクライニング装置Rのロックを解除する。
これによりシートクッション4に対するシートバック6の起倒動作が許容されるのであるが、この種のシート構成では、シートバック6の姿勢にかかわらず、解除部材20を操作性良く牽引できることが望ましい。
そこで本実施例では、後述の構成により、シートバック6の姿勢にかかわらず、解除部材20を操作性良く牽引可能とした。以下、各構成について詳述する。
【0017】
[シートバック]
シートバック6は、略長方形状(正面視)の部材であり、基本構成(6S,6P,6F)と、第一被取付け部16aを有する(図1〜図3を参照)。
フレーム部材6Fは、略長方形状の枠体であり、シート側部をなす側部フレーム6a(平板状の部材)を有する。
そして第一被取付け部16aは、略U字状の突出部位であり、側部フレーム6aの下部裏面に形成できる。本実施例では、第一被取付け部16aを、リクライニング装置Rの上方に設けて、解除部材20(後述)を嵌装する。
【0018】
[シートクッション]
シートクッション4は、略長方形状(上方視)の部材であり、基本構成(4S,4P,4F)と、プレート部材14と、第二被取付け部14bを有する(図1及び図2を参照)。
プレート部材14は、略矩形の平板部材であり、シートクッション4後部とシートバック6下部を被覆可能な寸法を有する(図2を参照)。本実施例では、プレート部材14の下部を、シートクッション4後部(フレーム部材4F)に固定しつつ、プレート部材14の上部を、シートバック6下部に向けて延設する。そしてプレート部材14上部とシートバック6下部を、リクライニング装置R(後述)を介して連結することにより、シートクッション4に対してシートバック6を起倒(回転)可能に連結する。
そして第二被取付け部14bは、略円筒状の突出部位であり、フレーム部材4F(又はプレート部材14)に形成できる。本実施例では、第二被取付け部14bを、リクライニング軸Sの前方(リクライニング軸Sとは異なる部位)に設けて、連結部材30(後述の第二リンクアーム32)を回転可能に取付ける。
【0019】
(解除部材)
解除部材20は、可撓性を有する索状部材であり、被覆部22と、取手部24と、第一取付け部26aと、第二取付け部26bを有する(図1〜図3を参照)。
被覆部22は、解除部材20周囲を被覆する筒部位であり、典型的に可撓性を有する材質(エラストマ,樹脂、ゴム等)にて形成できる。本実施例では、被覆部22の一側から解除部材20を引出し可能である。また取手部24は、略L字状の部材であり、解除部材20の他側に取付け可能である。
そして第一取付け部26aは、被覆部22周面の凹部位であり、被覆部22の一端側(解除部材の途中)に形成できる。また第二取付け部26bは、解除部材20の一端部に設けられる部位(典型的に円筒状)であり、後述の連結部材30(長孔40)に対して摺動可能に嵌装できる。
【0020】
(連結部材)
連結部材30は、リクライニング軸Sと解除部材20を連結する部材であり、第一リンクアーム31と、第二リンクアーム32を有する(図2及び図3を参照)。
第一リンクアーム31は、平板状の部材(比較的短尺な長方形状)であり、孔部31aと、突出部31bを有する。
孔部31aは、リクライニング軸Sを回転不能に挿設する貫通孔であり、第一リンクアーム31の一側に形成される。また突出部31bは、略円筒状の凸部位であり、第一リンクアーム31の他側に突設されてシート幅方向に延びる。
そして本実施例の第一リンクアーム31は略クランク状(側面視)をなしており、第一リンクアーム31の他側が、シート幅方向に向けて一側よりも一段高く設定される(シート幅方向でみたリクライニング軸Sの突出寸法よりも高く設定される)。
【0021】
また第二リンクアーム32は、平板状の部材(比較的長尺な長方形状)であり、一対の孔部(第一孔部36a,第二孔部36b)と、非干渉部位38と、長孔40を有する(図2及び図3を参照)。
第一孔部36aは、第二リンクアーム32一側の貫通孔(略円形)であり、第二被取付け部14bを回転可能に挿入できる。また第二孔部36bは、第二リンクアーム32他側の貫通孔(略長方形状)であり、突出部31bを摺動可能に挿入できる。
【0022】
(非干渉部位・長孔)
非干渉部位38は、第二リンクアーム32途中の凹部であり、リクライニング軸Sを挿入可能である。本実施例の非干渉部位38は、第二リンクアーム32の略中央部分を、第二取付け部位26aを臨むシート上方(車両用シート2の幅方向とは異なる方向)に曲げ変形(湾曲変形又は屈曲変形)させて形成できる。
また長孔40は、第二リンクアーム32(非干渉部位38)の貫通孔であり、第二取付け部26bを摺動可能に取付けることができる。本実施例では、長孔40を、非干渉部位38の上部側に形成して、第一取付け部26aを臨むリクライニング軸Sの周りに配置可能とする(図5及び図6を参照)。そして長孔40は、シートバック6の回転軌跡に倣った円弧形状を有する(中心角θ2、θ2=θ1)。
【0023】
[連結部材の配設作業]
図2及び図3を参照して、第一リンクアーム31の一側(孔部31a)にリクライニング軸Sを回転不能に挿設しつつ、第一リンクアーム31の他側を、シート後方に向けて略水平に延設する。このとき第一リンクアーム31の他側(一段高い部位)をシート側方に向けつつ、突出部31bを、同方向に向けて突出配置する(第二リンクアーム32に連結可能に突設する)。
本実施例では、第一リンクアーム31の他側が、リクライニング軸S(孔部31a)を回転中心として回転することにより、リクライニング軸Sを軸周りに回転できる(図5の回転軌跡R1を参照)。
【0024】
つぎに第二リンクアーム32の一側(第一孔部36a)を、第二被取付け部14b(シートクッション側)に回転可能に取付けつつ、第二リンクアーム32の他側をシート後方に略水平に延設する。
本実施例では、非干渉部位38にリクライニング軸Sを挿入しつつ(リクライニング軸Sとの干渉を回避しつつ)、第二リンクアーム32を、リクライニング軸Sを跨いで配置する。そして長孔40(円弧形状)をシート上方側に配置して、第一リンクアーム31の他側よりもリクライニング軸Sに近接配置する。
【0025】
そして第二リンクアーム32の他側(第二孔部36b)に突出部31bを挿入しつつ、第一リンクアーム31の他側に回転可能に連結する。
本実施例では、第二リンクアーム32の他側が、第二被取付け部14bを回転中心として回転する(図5の回転軌跡R2を参照)。この第二リンクアーム32の回転により、第一リンクアーム31の他側を回転させることで、リクライニング軸Sを軸周りに回転できる(第一リンクアーム31と第二リンクアーム32の連動回転により、リクライニング軸Sを回転できる)。このとき第二孔部36b内を突出部31bが移動することで、第一リンクアーム31の回転軌跡R1と、第二リンクアーム32の回転軌跡R2の差を吸収できる。
【0026】
[解除部材の取付け作業]
図1を参照して、シートバック6上部に取手部24を取付ける。このとき取手部24の前側を回転中心として、取手部24の後側をシート上下に揺動可能に取付ける。そして取手部24をシート上方に持ち上げて、解除部材20をシート上方に牽引する。
つぎに図1〜図3を参照して、解除部材20を、取手部24(シートバック側)からリクライニング軸Sに向けて延長する。このとき第一取付け部26a(解除部材の途中)を、第一被取付け部16aに取付けて固定するとともに、第二取付け部26b(解除部材20の一端部)を長孔40に対して摺動可能に取付ける。これにより解除部材20の初期長さ寸法(第一取付け部26aと第二取付け部26bの間の寸法)が設定される。
【0027】
ここで本実施例では、第一リンクアーム31と第二リンクアーム32が略水平にシート後方に延びる。そこで起立状態のシートバック6を基準として、解除部材20(第一取付け部26aと第二取付け部26bを結ぶ部分)を略垂直状に配設する。
これにより第一リンクアーム31と第二リンクアーム32を、解除部材20(第一取付け部26aと第二取付け部26bを結ぶ部分)に対して直交状に配置できる(両部材の交わる角度90°±5°)。
【0028】
[リクライニング装置]
リクライニング装置Rは、ラチェット50rと、ガイド10rと、ロック機構(ヒンジカム20r,スライドカム30r,ポール40r)を備える(図4を参照)。
ラチェット50rは、シートバック6下部に取付けられ、ガイド10rは、プレート部材14上部に取付けられる。
【0029】
ラチェット50rは、円盤形状の部材(径小)であり、リクライニング軸Sを挿設する中心孔52rと、円形凹部54rを有する。
円形凹部54rは、ラチェット50rの内側(ガイド10rを臨む側)に形成される。そして円形凹部54rの内周面には、ポール40r(後述)が噛合い可能な内歯部56rと、歯のない平滑部58rとが周方向に180度の間隔にて交互に設けられる。
【0030】
またガイド10rは、円盤形状の部材(径大)であり、リクライニング軸Sを挿設する中心孔12rと、複数の溝(ポール案内溝14r,カム案内溝16r)を有する。
ポール案内溝14rとカム案内溝16rは、ガイド10rの内側(ラチェット50rを臨む側)に互いに十字状に交差して縦横に延びる。
そしてポール案内溝14rに、ポール40r(後述)が縦方向に進退可能に嵌合する。またカム案内溝16rに、スライドカム30r(後述)が横方向に進退可能に嵌合する。
【0031】
本実施例では、ガイド10rとラチェット50rを互いに対向状に嵌め合わせたのち、両部材(中心孔)に、リクライニング軸Sを挿設する。
つぎにガイド10rとラチェット50rの外周部をリング部材60rにてカシメ付けることで、ガイド10rとラチェット50rを、リクライニング軸S回りに相対回転自在とする。これによりプレート部材14(シートクッション4)に対してシートバック6が回転可能に連結される。
【0032】
(リクライニング装置の内部構成)
本実施例では、ヒンジカム20rと、スライドカム30rと、一対のポール40rを、この順でガイド10rとラチェット50rの間に配置する。
ヒンジカム20rは、リクライニング軸Sを挿入可能な軸部22r(筒状)と、その外周から外方へ突出したアーム部24rを備える。
またポール40rは、外歯部42r(平板状)と、一対の脚部44rを有する。外歯部42rは、ラチェット50rの内歯部56rに噛合い可能な部位であり、一対の脚部44rは、外歯部42r両端を一端に向けて屈曲してなる部位である。
【0033】
そしてスライドカム30r(正面視で略長方形状)は、中心の挿入孔32rと、一対のアーム溝34rと、一対の係合突部36rと、一対のカム面38rを有する。
一対のアーム溝34rは、挿入孔32rの外周一部をシート上下に切欠いて形成できる。また一対の係合突部36rは、シート上下に突出する略L字状の部位であり、スライドカム30rの外周に設けられる。そして係合突部36rの両側外周に、一対のカム面38r(部分的に凹状)が形成される。
【0034】
本実施例では、上述の各部材を、リクライニング軸Sで支持しつつ、ガイド10rに組付ける。
このときガイド10rの中心孔12rに、ヒンジカム20r(軸部22r)を挿入する。つぎにアーム部24rを、スライドカム30r(アーム溝34r)に挿設するとともに、スライドカム30rを、カム案内溝16r(横方向に延びる溝)に嵌合する。
そして一対のポール40rを、ポール案内溝14r(縦方向に延びる溝)に嵌合しつつ、スライドカム30rの上下に各々配置する。
そして各部材に、リクライニング軸Sを挿入しつつ、ロックスプリング9r(渦巻きバネ)をヒンジカム20rに嵌装する。そしてヒンジカム20rとリクライニング軸Sを、ガイド10rに対して軸周りに逆回転方向に付勢する。
この状態においてポール40rの脚部44rをカム面38r(凹状部分とは異なる部位)に配置する。これにより一対のポール40rが、シート上下に位置するラチェット50rの内歯部56rに噛合い状態となる。
そしてポール40rとラチェット50rの噛合いにより、ガイド10rとラチェット50rとの相対的な回転が阻止されて、リクライニング装置Rがロックされる。
【0035】
そして解除部材20の牽引(後述)により、リクライニング軸Sとともにヒンジカム20rを、ロックスプリング9rの付勢力に抗して回転させる。
これによりヒンジカム20r(アーム部24r)が、スライドカム30rを押圧してカム案内溝16r内を左右方向へスライドさせる。そしてスライドカム30rが横方向にずれることで、一対のポール40rの脚部44rがカム面38rの凹状部分に嵌り込む。これにより両ポール40rが、ポール案内溝14r内においてラチェット50rの径方向内方(離間方向)にスライド移動する。
そしてポール40rとラチェット50rが離間して互いの噛合いが解除されることで、ガイド10rとラチェット50rの相対的な回転が可能となる(リクライニング装置Rのロックが解除される)。
【0036】
[解除部材によるロック解除動作]
図1及び図2を参照して、シートバック6を起立姿勢としたのち、取手部24を上方に引き上げて解除部材20を牽引する。
本実施例では、解除部材20を、第一取付け部26aから第二取付け部26bに向けて牽引する。これにより第二リンクアーム32他側が、第二被取付け部14bを回転中心として回転しつつ、シート上方に吊り上げられる。
そして第二リンクアーム32の吊り上げに伴って、第一リンクアーム31一側を回転中心として、第一リンクアーム31他側(突出部31b)が吊り上げられることにより、リクライニング軸Sが回転する。これにより上述の通りリクライニング装置Rのロックが解除されて、シートクッション4に対するシートバック6の起倒動作が許容される。
そして本実施例では、第一リンクアーム31と第二リンクアーム32を略水平に延設しつつ、解除部材20に対して直交状に配置する(図5を参照)。これにより解除部材20の牽引力が、第一リンクアーム31と第二リンクアーム32に対して垂直方向(接線方向)にかかることにより、解除部材20の操作性の向上(初期荷重の低減等)を図ることができる。
【0037】
(シートバックの起倒動作)
そして上述のシート構成では、シートバック6の起倒動作により、解除部材20の初期長さ寸法が変わることが懸念される。
そこで本実施例では、上述の起倒動作時において、第二取付け部26bが、長孔40内を摺動しつつ、リクライニング軸Sと第一取付け部26aを結ぶ直線上に配置される(図6を参照)。
例えばシートバック6を起立姿勢とすることで、第二取付け部26bが長孔40の上端に移動して、第一取付け部26aと第二取付け部26bの相対位置関係が維持される(初期長さ寸法L1)。またシートバック6を前傾姿勢とすることで、第二取付け部26bが長孔40の下端に移動して、第一取付け部26aと第二取付け部26bの相対位置関係が維持される(初期長さ寸法L2、L2=L1)。
このようにシートバック6の起倒動作時に、第一取付け部26aと第二取付け部26bの相対位置関係(解除部材20の初期長さ寸法)を維持することで、解除部材20を操作性良く牽引できる。
【0038】
以上説明したとおり本実施例では、シートバック6の姿勢にかかわらず、第一取付け部26aと第二取付け部26bの相対位置関係を極力維持できる。
また本実施例では、第一リンクアーム31と第二リンクアーム32を、解除部材20に対して直交状に配置したことにより、解除部材20の初期荷重を低減できる(操作性の向上を図ることができる)。
そして本実施例では、非干渉部位38が、車両用シート2の幅方向とは異なる方向に湾曲変形(突出)する。これによりシート幅方向における車両用シート2の寸法増加を好適に抑えることができる。
このため本実施例によれば、シートバック6の姿勢にかかわらず、解除部材20を操作性良く牽引することができる。
【0039】
本実施形態の車両用シートは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施形態では、第二リンクアーム32の略中央部分をシート上方に湾曲変形させて非干渉部位38を形成する例を説明した。非干渉部位は、第二リンクアームをシート幅方向に湾曲変形させて形成することもできる。
(2)また本実施形態では、起立状態のシートバック6を基準として、第一リンクアーム31と第二リンクアーム32を、解除部材20に対して直交状に配置する例を説明した。これとは異なり、シート構成によっては、第一リンクアーム31と第二リンクアーム32を解除部材20に対して直交状に配置させる必要はない。
(3)また本実施形態では、リクライニング装置のロック機構を例示したが、同装置の構成を限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0040】
2 車両用シート
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
16a 第一被取付け部
14b 第二被取付け部
20 解除部材
26a 第一取付け部
26b 第二取付け部
30 連結部材
31 第一リンクアーム
32 第二リンクアーム
38 非干渉部位
40 長孔
R リクライニング装置
S リクライニング軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションに対してシートバックを起倒可能に連結するリクライニング装置と、前記シートバック側から前記リクライニング装置のリクライニング軸に向かって延びる索状の解除部材と、前記リクライニング軸と前記解除部材を連結する連結部材を有し、
前記解除部材の途中が、第一取付け部により、前記シートバック側に取付けられるとともに、前記解除部材の端部が、第二取付け部により前記連結部材に取付けられ、
前記第二取付け部から前記第一取付け部に向けて前記解除部材を牽引して、前記リクライニング軸を、前記連結部材を介して軸周りに回転させることにより、前記リクライニング装置のロックを解除して、前記シートクッションに対する前記シートバックの起倒動作を許容する構成の車両用シートにおいて、
前記連結部材が、平板状の第一リンクアームと、平板状の第二リンクアームと、前記第二リンクアームに設けられて前記第二取付け部を摺動可能に取付ける長孔とを有し、
前記第一リンクアームの一側を前記リクライニング軸に回転不能に取付けて、前記第一リンクアームの他側を、前記リクライニング軸を回転中心として回転可能とするとともに、前記第二リンクアームの一側を、前記シートバックとは異なる部位に回転可能に取付けて、前記第二リンクアームの他側を、前記第一リンクアームの他側に回転可能に取付け、
前記解除部材を牽引して、前記第一リンクアームと前記第二リンクアームを連動して回転させることにより、前記リクライニング軸を回転させる構成とし、
前記長孔が、前記シートバックの回転軌跡に倣った円弧形状を有するとともに、前記第一取付け部を臨む前記リクライニング軸の周りに形成されて、前記第一リンクアームの他側よりも前記リクライニング軸に近接配置するとともに、
前記シートバックの起倒動作時において、前記第二取付け部が、前記長孔内を相対移動しつつ、前記リクライニング軸と前記第一取付け部を結ぶ直線上に配置することにより、前記第一取付け部と前記第二取付け部の相対位置関係を維持可能な構成とした車両用シート。
【請求項2】
前記第二リンクアームに、前記リクライニング軸との干渉を回避する非干渉部位を設けて、前記リクライニング軸を跨ぎつつ配置し、
起立状態の前記シートバックを基準として、前記第一リンクアームと前記第二リンクアームを、前記第一取付け部と前記第二取付け部を結ぶ前記解除部材に対して直交状に配置した請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記非干渉部位が、前記リクライニング軸を挿入可能な凹部であるとともに、前記第二リンクアーム途中を、前記車両用シートの幅方向とは異なる方向に曲げ変形させて形成される請求項2に記載の車両用シート。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−47043(P2013−47043A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185865(P2011−185865)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】