車両用スパッツ及び車両用スパッツの取付構造
【課題】車両の下部に設置される外装部品に対して容易に且つ低コストに取付可能な車両用スパッツを提供する。
【解決手段】スパッツ本体10の上端部に取付部本体14を一体形成すると共に、スパッツ本体10又は取付部本体14に対して、取付部本体14との間で外装部品を挟持する挟持部16を、ヒンジ部28を介して一体的に連結し、更に、取付部本体14と挟持部16とによる外装部品の挟持状態下で、取付部本体14と挟持部16のうちの少なくとも何れか一方に係合して、それら取付部本体14と挟持部16とを外装部品に固定する係合突起18を、取付部本体14と挟持部16のうちの少なくとも何れか他方に対して一体的に突設して、構成した。
【解決手段】スパッツ本体10の上端部に取付部本体14を一体形成すると共に、スパッツ本体10又は取付部本体14に対して、取付部本体14との間で外装部品を挟持する挟持部16を、ヒンジ部28を介して一体的に連結し、更に、取付部本体14と挟持部16とによる外装部品の挟持状態下で、取付部本体14と挟持部16のうちの少なくとも何れか一方に係合して、それら取付部本体14と挟持部16とを外装部品に固定する係合突起18を、取付部本体14と挟持部16のうちの少なくとも何れか他方に対して一体的に突設して、構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スパッツと車両用スパッツの取付構造とに係り、特に、車両の下部に設置される外装部品に取り付けられて、車両走行時における車両下部での空気の流れを制御する車両用スパッツと、そのような車両用スパッツを外装部品に有利に取り付けるための構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両には、走行安定性や燃費の向上等を目的として、車両走行時に生ずる空気抵抗を低減させる空力部品が、様々な部位に取り付けられている。例えば、フェンダーライナやアンダーカバー等、自動車の下部に設置される外装部品には、所謂車両用スパッツ(遮蔽板)が、取り付けられている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
この車両用スパッツは、一般に、スパッツ本体と、このスパッツ本体の上端部に一体形成された取付部とを有している。そして、スパッツ本体が、車輪の前方において、自動車下部の外装部品から下方に突出するように配置された状態で、取付部にて外装部品に取り付けられるようになっている。かくして車両用スパッツが外装部品に取り付けられることにより、自動車の下部を通過する気流が、スパッツ本体にて車輪の前で遮断されるように制御されて、かかる気流と、車輪の回転によって生ずる気流との干渉が抑制され、以て、自動車下部での空気抵抗の低減化が図られるようになっているのである。
【0004】
ところが、そのような従来の車両用スパッツは、通常、ねじ止めやボルト止め等の面倒な作業を行って外装部品に取り付けられている。しかも、車両用スパッツが取り付けられるべき外装部品が、作業のし難い車両の下部に設置されているものであるため、ねじ止めやボルト止めの作業が更に煩わしいものとなっていた。
【0005】
また、かかる従来の車両用スパッツを外装部品に取り付ける際には、多くの場合、車両用スパッツのねじ止め等の取付作業の実施に先立って、外装部品の補強や外装部品へのねじ穴の形成等のために、車両用スパッツとは別個の部材からなるスパッツリテーナが、所定のクリップ等にて外装部品に固定されていた。そのため、車両用スパッツを外装部品に取り付けるのに、スパッツリテーナを外装部品にクリップ止めするための余分な作業を行わなければならず、それが、車両用スパッツの取付作業における作業性の更なる低下を招いていた。また、スパッツリテーナやクリップ等の専用の取付部品の使用によって、車両用スパッツの外装部品への取付コストが上昇することも避けられなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61−183271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、専用の取付部品を何等用いることなく、しかも工程数の少ない簡略な作業により、外装部品に対して容易に且つ低コストに取付可能な車両用スパッツを提供することにある。また、本発明にあっては、そのような車両用スパッツを外装部品に対して容易に且つ低コストに取り付け得る構造を提供することをも、その解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した課題、又は本明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙する各種の態様において、好適に実施され得るものである。また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。そして、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0009】
<1> 車両の下部に設置される外装部品に対して、該外装部品から下方に突出するように取り付けられることにより、車両走行時における車両下部での空気の流れを制御するスパッツ本体と、該スパッツ本体の上端部に一体形成された、該スパッツ本体を該外装部品に取り付けるための取付部とを有してなる車両用スパッツであって、前記取付部を、(a)前記スパッツ本体が前記外装部品から下方に突出するように配置された状態下で、該外装部品に重ね合わされて配置されるように、該スパッツ本体の上端部に一体形成された取付部本体と、(b)該取付部本体又は前記スパッツ本体に対して、ヒンジ部を介して一体的に連結されており、該ヒンジ部の屈曲によって、該取付部本体との間で前記外装部品を挟持する挟持部と、(c)前記取付部本体と前記挟持部のうちの少なくとも何れか一方に対して一体的に突設されており、該取付部本体と該挟持部とによる前記外装部品の挟持状態下で、該取付部本体と該挟持部のうちの少なくとも何れか他方に係合することにより、それら取付部本体と挟持部とを該外装部品に固定して、前記スパッツ本体の該外装部品への取付けを実現せしめる係合突起とを含んで構成したことを特徴とする車両用スパッツ。
【0010】
<2> 前記取付部本体と前記挟持部のうちの何れか一方に位置決め用係合部が設けられて、該取付部本体と挟持部のうちの何れか一方が前記外装部品に重ね合わされて配置された状態下で、該位置決め用係合部が該外装部品に係合して、該外装部品に対する該取付部本体と挟持部のうちの何れか一方の摺動が規制されることにより、該外装部品に対する該取付部本体と挟持部のうちの何れか一方の位置決めが行われるようになっている上記態様<1>に記載の車両用スパッツ。
【0011】
<3> 前記取付部本体と前記挟持部のうちの少なくとも何れか一方に、前記係合突起が、係合爪を有して一体的に突設される一方、該取付部本体と該挟持部のうちの少なくとも何れか他方に、係合孔が穿設されており、前記外装部品が該取付部本体と該挟持部との間で挟持された状態下で、該係合突起が該係合孔に挿通されて、該係合爪が、該係合孔の外装部品側とは反対側の開口周縁部に係合せしめられることにより、該取付部本体と該挟持部とが該外装部品に固定されるようになっている上記態様<1>又は<2>に記載の車両用スパッツ。
【0012】
<4> 前記係合突起が、前記取付部本体と前記挟持部のうちの何れか一方における前記外装部品の外側面との重合せ面に突設されている上記態様<1>乃至<3>のうちの何れか一つに記載の車両用スパッツ。
【0013】
<5> 車両の下部に設置される外装部品に対して、該外装部品から下方に突出するように取り付けられることにより、車両走行時における車両下部での空気の流れを制御する車両用スパッツを、該外装部品に取り付けるための構造であって、上記態様<1>乃至<4>のうちの何れか一つに記載の車両用スパッツの前記スパッツ本体を、前記外装部品から下方に突出するように配置して、該車両用スパッツの前記取付部本体を該外装部品に重ね合わせて配置する一方、該車両用スパッツの前記ヒンジ部を屈曲せしめて、該取付部本体と前記挟持部との間で該外装部品を挟持させた状態下で、該取付部本体と該挟持部のうちの少なくとも何れか一方に一体形成された前記係合突起を、それらのうちの少なくとも何れか他方に係合させて、該取付部本体と該挟持部とを該外装部品に固定することにより、前記車両用スパッツを該外装部品に取り付けるようにしたことを特徴とする車両用スパッツの取付構造。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明に従う車両用スパッツにおいては、スパッツ本体を外装部品から下方に突出するように配置する一方、ヒンジ部を屈曲させることにより、取付部本体と挟持部とにて外装部品を挟持させた状態下で、取付部本体と挟持部のうちの少なくとも何れか一方に一体的に突設された係合突起を、それらのうちの少なくとも何れか他方に係合させるだけのワンタッチの操作を行うことによって、外装部品に取り付けられるようになっている。それ故、本発明に係る車両用スパッツは、従来品とは異なって、車両用スパッツとは別個の独立した専用の取付部品を何等用いることなく、しかも、そのような取付部品を用いた工程や、面倒なねじ止め乃至はボルト止めの作業を実施することもなしに、工程数の少ない簡略な作業により、外装部品に対して容易に取り付けられ得る。また、専用の取付部品が省略されている分だけ、外装部品に対して安価に取り付けられ得る。
【0015】
従って、かくの如き本発明に従う車両用スパッツにあっては、外装部品への取付コストの低減化が有利に実現され得ると共に、外装部品への取付作業の効率化及び取付性の向上が効果的に達成され得るのである。
【0016】
また、本発明に従う車両用スパッツの取付構造によれば、車両用スパッツ以外の余分な取付部品を用いることなく、工程数の少ない簡略な作業により、車両用スパッツを外装部品に対して容易に取り付けることが出来る。従って、かくの如き本発明に従う車両用スパッツの取付構造にあっても、本発明に係る車両用スパッツにおいて奏される優れた作用・効果と実質的に同一の作用・効果が、極めて有効に享受され得ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に従う構造を有する車両用スパッツの一実施形態を示す正面説明図である。
【図2】図1に示された車両用スパッツの右側面説明図である。
【図3】図2におけるIII部拡大説明図である。
【図4】図1に示された車両用スパッツを自動車のフェンダーライナに取り付ける際に実施される工程の一例を示す説明図であって、(a)は、車両用スパッツの挟持部をフェンダーライナの所定位置に位置決めして配置した状態を示し、(b)は、車両用スパッツをフェンダーライナに取り付けた状態を示している。
【図5】本発明に従う構造を有する車両用スパッツの別の実施形態を示す図2に対応する図である。
【図6】図5に示された車両用スパッツを自動車のフェンダーライナに取り付ける際に実施される工程の一例を示す説明図であって、図4の(b)に対応する図である。
【図7】本発明に従う構造を有する車両用スパッツの更に別の実施形態を示す図2に対応する図である。
【図8】図7に示された車両用スパッツを自動車のフェンダーライナに取り付ける際に実施される工程の一例を示す説明図であって、図4の(b)に対応する図である。
【図9】本発明に従う構造を有する車両用スパッツの他の実施形態を示す図2に対応する図である。
【図10】本発明に従う構造を有する車両用スパッツの更に他の実施形態を示す図2に対応する図である。
【図11】本発明に従う構造を有する車両用スパッツの更に別の実施形態を示す図1に対応する図である。
【図12】図11に示された車両用スパッツの右側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0019】
先ず、図1及び図2には、本発明に従う車両用スパッツの一実施形態として、自動車のフェンダーライナに取り付けられるスパッツが、その正面形態と右側面形態とにおいて、それぞれ示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態のスパッツは、スパッツ本体10と取付部12とを一体的に有する、可撓性を備えた樹脂体成形品にて、構成されている。
【0020】
より具体的には、スパッツ本体10は、矩形の平板形状を呈し、後述するように、自動車に設置されたフェンダーライナ(図示せず)の下面から下方に突出して、上下方向に延びるように位置せしめられた状態で、フェンダーライナに取り付けられるようになっている。このスパッツ本体10においては、フェンダーライナへの取付状態下で上下方向に延びる長さ(図1における上下方向の延出寸法)が、フェンダーライナから地面までの距離よりも小さくされていると共に、フェンダーライナへの取付状態下で車幅方向に延びる幅(図1における左右方向の延出寸法)が、自動車のタイヤの幅よりも小さくされている。なお、以下からは、スパッツ本体10のフェンダーライナへの取付形態に基づいて、便宜上、スパッツ本体10の長さ方向に対応する方向を上下方向、スパッツ本体10の幅方向を左右方向、スパッツ本体10の厚さ方向(図2の左右方向)を前後方向と言うこととする。
【0021】
そして、かかるスパッツ本体10の上端部に対して、取付部12が一体成形により形成されている。この取付部12は、取付部本体14と挟持部16とを備えている。取付部本体14は、矩形の平板形状を呈し、スパッツ本体10と同じ厚さ及び幅(図1における左右方向の延出寸法)と所定の長さ(図2における左右方向の延出寸法)とを有している。そのような取付部本体14が、スパッツ本体10の前面の上端縁から、スパッツ本体10に対して直角な角度で前方(図2における左方向)に延び出すようにして、スパッツ本体10に一体形成されている。換言すれば、本実施形態のスパッツは、全体として、長さ方向の中間部において直角に屈曲せしめられてなる屈曲板形態を呈する部分を有し、かかる屈曲板状部分のうちの上下方向に延びる部位にて、スパッツ本体10が構成される一方、前後方向に延びる部位にて、取付部本体14が構成されているのである。
【0022】
また、そのような取付部本体14の上面の幅方向両側の端部における長さ方向中間部には、係合突起18が、それぞれ2個ずつ、対を為して、一体的に突設されている。それら各係合突起18は、板状小片部20と係合爪22とからなっている。板状小片部20は、厚さ方向に撓み乃至は弾性変形可能とされた小片状の矩形平板形態を有し、取付部本体14の上面に対して、鉛直上方に向かって一体的に突設されている。係合爪22は、板状小片部20の先端部の厚さ方向一方の面に一体形成されており、板状小片部20の先端から基端側に向かって、板状小片部20を徐々に厚肉化させるように傾斜する摺動傾斜面24と、摺動傾斜面24の下端縁と板状小片部20の側面とを連結するように水平に延びる係合面26とを有している。
【0023】
そして、かかる係合突起18が、取付部本体14の上面の幅方向両側の各端部において、スパッツ本体10からの延出方向中央部よりも先端(前端)側に所定寸法だけ偏寄した箇所に、それぞれ一対ずつ配置されている。また、そのような配置状態下で、対を為す2個の係合突起18,18のそれぞれの板状小片部20が、係合爪22の形成側とは反対側の面同士において互いに所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
【0024】
一方、挟持部16も、矩形の平板形態を呈し、取付部本体14と同じ厚さ及び幅(図1における左右方向の延出寸法)と、取付部本体14よりも所定寸法だけ長い長さ(図2における左右方向の延出寸法)とを有している。そして、このような挟持部16が、長さ方向の一端部において、スパッツ本体10の上端面に対して、ヒンジ部28を介して、一体的に連結されている。
【0025】
このヒンジ部28は、図3に示されるように、挟持部16の長さ方向一端部の下面から、一体的に突出し且つかかる長さ方向一端部の全幅に亘って連続的に延出して、突出先端部において、スパッツ本体10の上端面に一体化されてなる形態を有している。そして、かかるヒンジ部28においては、その厚さが、挟持部16側からスパッツ本体10側に向かって徐々に薄くされている。
【0026】
これによって、ヒンジ部28が、図2や図3に二点鎖線で示されるように、最も薄肉となるスパッツ本体10との連結部位(一体化部位)において容易に屈曲せしめられるようになっている。そして、そのようなヒンジ部28を介して一体的に連結された挟持部16とスパッツ本体10とが、ヒンジ部28の屈曲に基づいて、挟持部16の下面とスパッツ本体10の上面とを互いに接近又は離隔させるように、ヒンジ部28のスパッツ本体10との連結部位を回動中心として、スパッツ本体10や取付部12の幅方向に延びる回動軸回りに回動せしめられ得るようになっている。
【0027】
また、図1及び図2に示される如く、挟持部16の長さ方向におけるヒンジ部28側とは反対側の端部には、その幅方向中央部に、矩形の切欠部30が形成されている一方、幅方向両側の端部には、位置決め用係合部としての引っ掛け部32が、鉤形状を有して、それぞれ一体形成されている。
【0028】
さらに、かかる挟持部16の幅方向両側の各端部において、長さ方向中央部よりも引っ掛け部32,32が形成される端部側に所定寸法だけ偏寄した位置には、係合孔34が、板厚方向に貫通して、それぞれ1個ずつ形成されている。この係合孔34は、矩形形状を呈し、挟持部16の長さ方向に延びる縦辺部の長さが、取付部本体14に設けられた係合突起18の板状小片部20の幅(図2における左右方向の寸法)よりも所定寸法だけ大きくされている一方、挟持部16の幅方向に延びる横辺部の長さが、対を為す係合突起18,18における板状小片部20,20同士の対向面間距離よりも大きく、且つかかる対向面間距離に、2個の板状小片部20,20のそれぞれの、係合爪22の非形成部位たる基端部の厚さの合計寸法を加えた寸法よりも小さくされているか、或いはそのような合計寸法と略同一の大きさとされている。また、挟持部16の長さ方向におけるヒンジ部28側の端縁から各係合孔34の中心までの寸法と、取付部本体14の長さ方向におけるスパッツ本体10側の端縁から各係合突起18の中心までの寸法とが、同一の大きさとされている。
【0029】
かくして、本実施形態では、ヒンジ部28が屈曲して、取付部本体14と挟持部16とが互いに接近するように回動せしめられることにより、取付部本体14に設けられた係合突起18の一対ずつが、各係合爪22の摺動傾斜面24において、挟持部16の2個の係合孔34,34のそれぞれの内周面に摺動し、且つ対を為す係合突起18の各板状小片部20を互いに接近させる方向に撓み変形させつつ、各係合孔34内に、それぞれ突入せしめられるようになっている。そして、図2に二点鎖線で示されるように、取付部本体14と挟持部16とが、互いに平行に延びる位置にまで回動せしめられたときに、各係合突起18の係合爪22が、各係合孔34の内周面を乗り越えて、板状小片部20が撓み変形状態から復元されると共に、係合面26において、挟持部16の上面における各係合孔34の開口部周縁部に係合せしめられるようになっている。また、ここでは、取付部本体14と挟持部16とが互いに平行に延びる位置に配置されたときの取付部本体14の上面と挟持部16の下面との間の距離が、スパッツが取り付けられるべきフェンダーライナ部分の厚さ寸法と略同じ程度の大きさとされている。
【0030】
そして、かくの如き構造とされた本実施形態のスパッツは、例えば、以下のようにして、フェンダーライナに取り付けられる。
【0031】
すなわち、先ず、図4の(a)に示されるように、ヒンジ部28を屈曲させることなく伸張させた状態で、取付部12の挟持部16を、フェンダーライナ36に設けられた挿通孔38内に、フェンダーライナ36の下面側から、前方に向かって延びるように挿通する(差し込む)。なお、ここでは、挿通孔38が、フェンダーライナ36のうち、図示しないタイヤの前方において、前後方向に延びるフェンダーライナ部分36aと上下方向に延びるフェンダーライナ部分36bとを跨いで延びるように形成されている。
【0032】
そして、前後方向に延びるフェンダーライナ部分36aの挿通孔38よりも前側に位置する部位に穿設された、係合孔34と同程度の大きさを有する2個の貫通孔40(図4には1個のみを示す)に対して、挟持部16に形成された2個の係合孔34(図4には1個のみを示す)をそれぞれ対応位置させた状態で、挟持部16を、フェンダーライナ部分36aの上面に重ね合わせて、配置する。また、そのような状態において、フェンダーライナ部分36aの各貫通孔40よりも更に前側の部位に穿設された2個の係合孔42(図4には1個のみを示す)内に、挟持部16の前端部に設けられた2個の鉤状の引っ掛け部32(図4には1個のみを示す)をそれぞれ挿通して、それら各引っ掛け部32を、かかる係合孔40の左右方向に対向する側面と後側に位置する側面とに係合させると共に、下側開口部の周縁部に引っ掛ける。
【0033】
これにより、フェンダーライナ部分36aの上面に対する挟持部16の左右両側と後方側への摺動を規制して、挟持部16の係合孔34とフェンダーライナ部分36aの貫通孔40とが互いに対応せしめられる位置において、挟持部16を位置決めする。また、そのように位置決めされて、フェンダーライナ部分36aに重ね合わされた状態において、挟持部16とフェンダーライナ部分36aとの離間を規制せしめる。このとき、取付部12の取付部本体14は、フェンダーライナ部分36aから離間して位置せしめられており、また、スパッツ本体10も、フェンダーライナ部分36aに対する所定の取付位置とは異なる位置に配置されている。
【0034】
次に、図4の(a)に矢印:アで示されるように、取付部本体14がフェンダーライナ部分36aの下面に接近するように、ヒンジ部28を屈曲させて、取付部本体14とスパッツ本体10とを、ヒンジ部28を回動中心として、車幅方向に延びる回動軸回りに回動させる。このとき、挟持部16の引っ掛け部32,32が、フェンダーライナ部分36aの各係合孔40の下側開口部の周縁部に引っ掛けられているため、取付部本体14とスパッツ本体10との回動によって、挟持部16がフェンダーライナ部分36aから浮き上がるように離間することが阻止される。そうして、挟持部16のフェンダーライナ部分36aへの重合せ状態が安定的に維持される。
【0035】
そのようなヒンジ部28の屈曲により、図4の(b)に示される如く、取付部本体14を、挟持部16と平行に前後方向に延びるように位置せしめた状態下で、フェンダーライナ部分36aの下面に重ね合わせる。そうして、フェンダーライナ部分36aを、それら挟持部16と取付部本体14との間で挟持させる。また、取付部本体14をフェンダーライナ部分36aの下面に重ね合わせることによって、スパッツ本体10を、車幅方向(左右方向)に広がり、且つフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に向かって突出させるように配置する。
【0036】
そして、挟持部16と取付部本体14とによるフェンダーライナ部分36aの挟持状態下で、取付部本体14の上面に一体形成された2対の係合突起18の一対ずつを、フェンダーライナ部分36aに設けられた2個の貫通孔40(図4には1個のみを示す)内と、それらにそれぞれ対応位置せしめられた挟持部16の2個の係合孔34(図4には1個のみを示す)内にそれぞれ挿通させて、それら各係合突起18の係合爪22を、挟持部16の上面における各係合孔34の開口周縁部に係合させる。
【0037】
かくして、挟持部16と取付部本体14とからなる取付部12をフェンダーライナ部分36aに固定する。以て、スパッツ本体10を、車幅方向に広がり、且つフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に向かって突出させた状態において、スパッツ全体をフェンダーライナ36に取り付ける。そして、それにより、自動車の下部を通過する気流を、タイヤの前側でスパッツにて遮断せしめて、そのような気流と、タイヤの回転によって生ずる気流との干渉を抑制し、その結果として、自動車下部で生ずる空気抵抗を低減化するのである。
【0038】
このように、本実施形態のスパッツは、スパッツ本体10と取付部12とヒンジ部28とを一体的に有する一体成形品からなっている。そして、取付部12の挟持部16をフェンダーライナ36の挿通孔38内に挿通し、ヒンジ部28を屈曲させて、挟持部16と取付部本体14との間で、フェンダーライナ36を部分的に挟持させると同時に、取付部本体14に一体形成された2対の係合突起18を、挟持部16の2個の係合孔34内に挿通させて、挟持部16に係合させるワンタッチの操作を行うだけで、フェンダーライナ36に取り付けられるようになっている。それ故、従来品とは異なって、面倒なねじ止め乃至はボルト止めの作業を実施することなく、また、余分な費用がかかる専用の取付部品を一切使用することもなしに、フェンダーライナ36に対する取付作業が、数少ない簡略な工程により、迅速且つ容易に、しかも安価に実施され得る。
【0039】
従って、かくの如き本実施形態のスパッツにあっては、フェンダーライナ36に対する取付コストの低減化と取付作業の効率化及び取付性の向上とが、極めて効果的に実現され得るのである。そして、その結果として、自動車の走行時に、自動車の下部で生ずる空気抵抗の低減化を、より安価に且つ容易に達成することが可能となる。
【0040】
また、かかるスパッツでは、フェンダーライナ36への取付時において、フェンダーライナ36を挟持部16と取付部本体14との間で挟持する前に、挟持部16に設けられた各引っ掛け部32が、フェンダーライナ部分36aの下面における各係合孔42の開口周縁部に係合せしめられることで、挟持部16が、それに設けられた各係合孔34をフェンダーライナ部分36aに形成された各貫通孔40にそれぞれ対応させる位置に位置決めされるようになっている。これによって、取付部12、ひいてはスパッツ全体が、フェンダーライナ36の予め設定された位置に対して、よりスムーズに且つ容易に取り付けられ得る。
【0041】
さらに、各引っ掛け部32が各係合孔42の開口周縁部に係合せしめられることにより、挟持部16がフェンダーライナ部分36aに重ね合わされて位置決めされた状態下で、挟持部16のフェンダーライナ部分36aからの離間が阻止されるようになっている。それ故、ヒンジ部28を屈曲する際に、挟持部16をフェンダーライナ部分36aに対して何等押さえ付けておかなくとも、挟持部16のフェンダーライナ部分36aに対する重合せ状態が確実に維持されて、挟持部16と取付部本体14とによるフェンダーライナ部分36aの挟持操作、更にはそれら挟持部16と取付部本体14のフェンダーライナ部分36aへの固定操作が、スムーズに且つ確実に実施され得る。これによっても、スパッツのフェンダーライナ36への取付作業の効率化や取付性の向上が、有利に図られ得る。
【0042】
更にまた、本実施形態においては、挟持部16と取付部本体14とによるフェンダーライナ部分36aの挟持状態下で、挟持部16に係合して、それら挟持部16と取付部本体14とをフェンダーライナ部分36aに固定させる係合突起18が、取付部本体14のフェンダーライナ部分36aとの重合せ面たる上面に対して、一体的に突設されている。それ故、スパッツのフェンダーライナ部分36aへの取付状態下で、かかる係合突起18が、フェンダーライナ部分36aから下方に突出することがない。従って、そのような係合突起18が、自動車下部を通過する気流を乱し、その結果として、空気抵抗を増大させるようなことが、未然に防止され得る。
【0043】
また、本実施形態のスパッツにあっては、スパッツ本体10の上端部から垂直方向に向かって一体的に突設された取付部本体14が、スパッツ本体10をフェンダーライナ部分36aから鉛直下方に突出するように配置した状態下で、かかるフェンダーライナ部分36aの下面に重ね合わされて配置されている。それ故、例えば、スパッツ本体10が縁石等の障害物に接触して、スパッツ本体10に対して前方側に押圧力が加えられたときに、取付部本体14が、フェンダーライナ部分36aの下面に対して突っ張るような働きを為し、それによって、スパッツ本体10が前方側に倒れ込むように変形することが有利に防止され得る。
【0044】
さらに、本実施形態では、薄肉のフェンダーライナ部分36aに挟持部16が重ね合わされており、そして、取付部本体14に一体形成された係合突起18が、それらフェンダーライナ部分36aの貫通孔40と挟持部16の係合孔34とに挿通せしめられて、係合突起18の係合爪22が挟持部16に係合している。それ故、例えば、係合突起18の係合爪22が薄肉のフェンダーライナ部分36aだけに係合する場合とは異なって、係合突起18に対して、フェンダーライナ部分36aの貫通孔40や挟持部16の係合孔34から抜け出す方向に作用力が加えられたときに、フェンダーライナ部分36aが容易に変形して、係合突起18が貫通孔40内から簡単に抜け出してしまうようなことが、効果的に防止され得る。従って、スパッツ本体10に対して後方側に押圧力が加えられたときに、係合突起18がフェンダーライナ部分36aの貫通孔40や挟持部16の係合孔34から抜け出すことが有利に阻止され、以て、スパッツ本体10が後方側に倒れ込むように変形することが効果的に防止され得る。かくして、本実施形態のスパッツにあっては、空気抵抗の低減化機能が、より安定的に且つ確実に発揮され得るのである。
【0045】
次に、図5及び図6には、取付部12の構造が前記第一の実施形態とは異なる別の実施形態が、示されている。なお、それら図5及び図6に示される実施形態、及び後述する図7乃至図12に示される幾つかの実施形態に関しては、前記第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図5乃至図12中に、図1乃至図4と同一の符号を付すことにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0046】
すなわち、図5から明らかなように、本実施形態のスパッツにあっては、取付部12の取付部本体14の長さ方向におけるスパッツ本体10側とは反対側端部の幅方向両側端部に、鈎形状の引っ掛け部32が、それぞれ1個ずつ(図5には1個のみを示す)設けられている。また、かかる取付部本体14の長さ方向中間部における幅方向両側の端部には、係合孔34が、それぞれ1個ずつ(図5には1個のみを示す)形成されている。一方、挟持部16の下面の長さ方向中間部における幅方向両側の端部には、係合突起18が、2個ずつ、対を為して、一体形成されている(図5には1個のみを示す)。それら各係合突起18は、前記第一の実施形態と同様に、板状小片部20と係合爪22とからなり、対を為すものの板状小片部20同士が、係合爪22の形成面とは反対側の面を互いに対向配置させた状態で、挟持部16に設けられている。
【0047】
そして、このような構造とされた本実施形態のスパッツをフェンダーライナ36に取り付ける際には、例えば、先ず、図6に二点鎖線で示されるように、挟持部16を、フェンダーライナ36に設けられた挿通孔38内に挿通する。このとき、図6に実線で示されるように、取付部本体14の上面を、前後方向に延びるフェンダーライナ部分36aの下面に重ね合わせると共に、スパッツ本体10を、車幅方向(左右方向)に広がり、且つフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に突出させるように配置する。また、そのような配置状態下で、取付部本体14の長さ方向中間部に設けられた各係合孔34を、フェンダーライナ部分36aに形成された各貫通孔40にそれぞれ対応位置させる一方、取付部本体14の先端部に設けられた各引っ掛け部32を、フェンダーライナ部分36aの各係合孔42に挿通して、各係合孔42の上側開口部の周縁部に引っ掛ける。これにより、取付部本体14の係合孔34とフェンダーライナ部分36aの貫通孔40とが対応せしめられる位置で、取付部本体14のフェンダーライナ部分36aに対する摺動とフェンダーライナ部分36aからの離間が阻止されように、取付部本体14を位置決めする。
【0048】
次いで、図6に矢印:イで示される如く、挟持部16がフェンダーライナ部分36aの上面に接近するように、ヒンジ部28を屈曲させることにより、挟持部16を、かかるヒンジ部28を回動中心として回動させる。これにより、図6に実線で示されるように、挟持部16を、取付部本体14と平行に前後方向に延びるように位置せしめた状態下で、フェンダーライナ部分36aの下面に重ね合わせて、フェンダーライナ部分36aを、それら挟持部16と取付部本体14との間で挟持させる。そして、それと同時に、挟持部16の下面に一体形成された2対の係合突起18の一対ずつを、フェンダーライナ部分36aに設けられた2個の貫通孔40内と、それらにそれぞれ対応位置せしめられた取付部本体14の2個の係合孔34内にそれぞれ挿通させて、各係合突起18の係合爪22を、取付部本体14の下面における各係合孔34の開口周縁部に係合させる。
【0049】
かくして、挟持部16と取付部本体14とからなる取付部12をフェンダーライナ部分36aに固定する。そして、それによって、スパッツ本体10を、車幅方向に広がり、且つフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に向かって突出させた状態において、スパッツ全体をフェンダーライナ36に取り付けるのである。
【0050】
このように、本実施形態のスパッツにおいては、挟持部16をフェンダーライナ部分36aの挿通孔38に挿通させて、ヒンジ部28を屈曲させることにより、フェンダーライナ部分36aを挟持部16と取付部本体14との間で挟持させた状態で、挟持部16に一体形成された各係合突起18の係合爪22を取付部本体14の各係合孔の開口周縁部に係合させるワンタッチの操作を行うだけで、余分な費用のかかる専用の取付部品を何等用いることなく、スパッツ全体が、所望の形態で、フェンダーライナ36に取り付けられるようになっている。従って、このような本実施形態のスパッツにあっても、前記第一の実施形態において奏される優れた作用・効果と同様な作用・効果が、有効に享受され得る。
【0051】
次に、図7及び図8には、取付部12の構造が前記第一及び第二の実施形態とは更に異なる別の実施形態が、示されている。本実施形態のスパッツにおいては、取付部本体14が、スパッツ本体10の上端部から上方に一直線に延びるように、一体形成されている。即ち、本実施形態のスパッツは、1個の矩形の平板部44を有し、この平板部44の長さ方向一方側(図7中の下側)の略半分の部分にて、スパッツ本体10が構成されている一方、かかる平板部44の長さ方向他方側(図7中の上側)に位置する残りの部分にて、取付部本体14が構成されている。そして、そのような平板部44の厚さ方向一方側の面の長さ方向中間部に対して、挟持部16が、ヒンジ部28を介して、一体的に連結されている。
【0052】
そして、本実施形態のスパッツをフェンダーライナ36に取り付ける際には、例えば、先ず、図8に二点鎖線で示されるように、挟持部16を、フェンダーライナ36の挿通孔38内に挿通し、上下方向に延びるフェンダーライナ部分36bに沿って延びるように位置させる。そして、上下方向に延びるフェンダーライナ部分36bの挿通孔38よりも上側の部位に設けられた2個の貫通孔40(図8には1個のみ示す)に対して、挟持部16に形成された2個の係合孔34(図8には1個のみ示す)をそれぞれ対応位置させた状態で、挟持部16を、フェンダーライナ部分36bの前面に重ね合わせて、配置する。また、そのような状態において、フェンダーライナ部分36bの貫通孔40よりも更に上側の部位に穿設された2個の係合孔42(図8には1個のみ示す)内に、挟持部16の上端部に設けられた鉤状の2個の引っ掛け部32(図8には1個のみ示す)をそれぞれ挿通させて、それら各引っ掛け部32を、フェンダーライナ部分36bの後面における各係合孔40の開口周縁部に引っ掛ける。これにより、挟持部16のフェンダーライナ部分36bに対する摺動とフェンダーライナ部分36bからの離間が阻止されように、挟持部16を位置決めする。
【0053】
そして、そのような状態から、図8に矢印:ウで示される如く、取付部本体14がフェンダーライナ部分36bの後面に接近するように、ヒンジ部28を屈曲させることにより、取付部本体14とスパッツ本体10とを、ヒンジ部28を回動中心として回動させる。
【0054】
かくして、図8に実線で示される如く、取付部本体14を、挟持部16と平行に且つ上下方向に延びるように位置せしめた状態下で、フェンダーライナ部分36bの後面に重ね合わせる。これにより、フェンダーライナ部分36bを、挟持部16と取付部本体14との間で挟持させる。また、取付部本体14をフェンダーライナ部分36bの後面に重ね合わせることによって、スパッツ本体10を、車幅方向(左右方向)に広がり、且つ前後方向に延びるフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に向かって突出させるように配置する。
【0055】
そして、挟持部16と取付部本体14とによるフェンダーライナ部分36bの挟持状態下で、取付部本体14のフェンダーライナ部分36bとの重合せ面に一体形成された2対の係合突起18の一対ずつを、フェンダーライナ36に設けられた2個の貫通孔40内と、それらにそれぞれ対応位置せしめられた挟持部16の2個の係合孔34内に挿通させて、各係合突起18の係合爪22を、挟持部16の前面における各係合孔34の開口周縁部に係合させる。
【0056】
かくして、挟持部16と取付部本体14とからなる取付部12をフェンダーライナ部分36bに固定する。以て、スパッツ本体10を、車幅方向に広がり、且つフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に向かって突出させた状態において、スパッツ全体をフェンダーライナ36に取り付けるのである。
【0057】
このように、本実施形態のスパッツにあっても、フェンダーライナ部分36bを挟持部16と取付部本体14との間で挟持させる操作と、挟持部16に一体形成された各係合突起18の係合爪22を取付部本体14の各係合孔34の開口周縁部に係合させる操作とを行う一連の作業を実施するだけで、余分な費用のかかる専用の取付部品を何等用いることなく、スパッツ全体が、所定の形態で、フェンダーライナ36に取り付けられるようになっている。従って、このような本実施形態のスパッツにあっても、前記第一及び第二の実施形態において奏される優れた作用・効果と同様な作用・効果が、有効に享受され得る。
【0058】
ところで、前記第一乃至第三の実施形態では、挟持部16が、ヒンジ部28を介して、スパッツ本体10に対して一体的に連結されていたが、例えば、図9に示されるように、挟持部16を、ヒンジ部28を介して、取付部本体14のスパッツ本体10側の端部に対して一体的に連結することも出来る。
【0059】
また、図10に示されるように、挟持部16を、ヒンジ部28を介して、取付部本体14のスパッツ本体10側とは反対側の端部に対して一体的に連結することも可能である。この場合には、引っ掛け部32が、挟持部16や取付部本体14に対して、それらのヒンジ部28側の端部とは反対側の端部に設けられることとなる(図10には、引っ掛け部32が挟持部16に設けられた構造を有するもののみを示した)。
【0060】
さらに、前記せる全ての実施形態は、スパッツ本体10が、ヒンジ部28の延出方向に広がるように形成されてなる構造、換言すれば、ヒンジ部28が、スパッツ本体10の幅方向に沿って延びるように形成されてなる構造を有していたが、例えば、図11及び図12に示されるように、ヒンジ部28が、挟持部16と取付部本体14とを一体的に連結し、且つスパッツ本体10の幅方向と直角な方向に延びるように形成されてなる構造を採用することも出来る。このような構造を採用する場合には、ヒンジ部28を屈曲して、フェンダーライナ36を挟持部16と取付部本体14との間で挟持させるときに、それら挟持部16と取付部本体14とが、ヒンジ部28を回動中心として、前後方向に延びる回動軸回りに回動させられるようになる。
【0061】
かくの如き構造を有するスパッツにあっては、例えば、挟持部16や取付部本体14をフェンダーライナ36の挿通孔38内に、何等挿通させることなく、前後方向に延びるフェンダーライナ部分36aを、その左側や右側の側部から、挟持部16と取付部本体14とにて挟持させて、取付部12をフェンダーライナ部分36aに固定することが出来る。これにより、スパッツ本体10を、車幅方向に広がり、且つフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に向かって突出させた状態において、スパッツ全体をフェンダーライナ36に取り付けることが可能となる。それ故、本実施形態のスパッツを用いれば、挟持部16や取付部本体14を挿通させるための挿通孔38を、フェンダーライナ36から省略することが出来る。以て、スパッツのフェンダーライナ36に対する取付性が、効果的に高められ得ることとなる。
【0062】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0063】
例えば、挟持部16と取付部本体14の両方に、係合突起18と係合孔34とをそれぞれ設けることも可能である。また、それら係合突起18と係合孔34の挟持部16や取付部本体14への取付位置や取付個数等は、適宜に変更され得る。
【0064】
さらに、係合突起18の挟持部16や取付部本体14への係合構造も、係合孔34の開口周縁部に係合爪22を係合させる例示の構造に、何等限定されるものではなく、公知の構造が適宜採用され得ることは、言うまでもないところである。また、例示の構造を採用する場合にあっても、係合爪22の形状等は、適宜に変更され得る。
【0065】
更にまた、ヒンジ部28も、部分的に薄肉化されてなる例示の構造以外に、例えば、全体乃至は一部を柔軟な材質とすることによって、容易に屈曲可能とされた構造のものを採用することも出来る。
【0066】
また、位置決め用係合部を引っ掛け部32以外の構造をもって形成することも可能であり、更に、引っ掛け部32等からなる位置決め用係合部を、挟持部16と取付部本体14の両方に設けることも出来る。
【0067】
加えて、本発明は、フェンダーライナに取り付けられるスパッツ、及びフェンダーライナへのスパッツの取付構造以外に、例えば、アンダーカバーに取り付けられるスパッツ、及びアンダーカバーへのスパッツの取付構造等、車両の下部に設置される外装部品に取り付けられる車両用スパッツ、及びそのような外装部品への車両用スパッツの取付構造の何れに対しても、有利に適用されるものであることは、勿論である。
【0068】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0069】
10 スパッツ本体 12 取付部
14 取付部本体 16 挟持部
18 係合突起 28 ヒンジ部
32 引っ掛け部 34,42 係合孔
36 フェンダーライナ 38 挿通孔
40 貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スパッツと車両用スパッツの取付構造とに係り、特に、車両の下部に設置される外装部品に取り付けられて、車両走行時における車両下部での空気の流れを制御する車両用スパッツと、そのような車両用スパッツを外装部品に有利に取り付けるための構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両には、走行安定性や燃費の向上等を目的として、車両走行時に生ずる空気抵抗を低減させる空力部品が、様々な部位に取り付けられている。例えば、フェンダーライナやアンダーカバー等、自動車の下部に設置される外装部品には、所謂車両用スパッツ(遮蔽板)が、取り付けられている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
この車両用スパッツは、一般に、スパッツ本体と、このスパッツ本体の上端部に一体形成された取付部とを有している。そして、スパッツ本体が、車輪の前方において、自動車下部の外装部品から下方に突出するように配置された状態で、取付部にて外装部品に取り付けられるようになっている。かくして車両用スパッツが外装部品に取り付けられることにより、自動車の下部を通過する気流が、スパッツ本体にて車輪の前で遮断されるように制御されて、かかる気流と、車輪の回転によって生ずる気流との干渉が抑制され、以て、自動車下部での空気抵抗の低減化が図られるようになっているのである。
【0004】
ところが、そのような従来の車両用スパッツは、通常、ねじ止めやボルト止め等の面倒な作業を行って外装部品に取り付けられている。しかも、車両用スパッツが取り付けられるべき外装部品が、作業のし難い車両の下部に設置されているものであるため、ねじ止めやボルト止めの作業が更に煩わしいものとなっていた。
【0005】
また、かかる従来の車両用スパッツを外装部品に取り付ける際には、多くの場合、車両用スパッツのねじ止め等の取付作業の実施に先立って、外装部品の補強や外装部品へのねじ穴の形成等のために、車両用スパッツとは別個の部材からなるスパッツリテーナが、所定のクリップ等にて外装部品に固定されていた。そのため、車両用スパッツを外装部品に取り付けるのに、スパッツリテーナを外装部品にクリップ止めするための余分な作業を行わなければならず、それが、車両用スパッツの取付作業における作業性の更なる低下を招いていた。また、スパッツリテーナやクリップ等の専用の取付部品の使用によって、車両用スパッツの外装部品への取付コストが上昇することも避けられなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61−183271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、専用の取付部品を何等用いることなく、しかも工程数の少ない簡略な作業により、外装部品に対して容易に且つ低コストに取付可能な車両用スパッツを提供することにある。また、本発明にあっては、そのような車両用スパッツを外装部品に対して容易に且つ低コストに取り付け得る構造を提供することをも、その解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した課題、又は本明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙する各種の態様において、好適に実施され得るものである。また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。そして、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0009】
<1> 車両の下部に設置される外装部品に対して、該外装部品から下方に突出するように取り付けられることにより、車両走行時における車両下部での空気の流れを制御するスパッツ本体と、該スパッツ本体の上端部に一体形成された、該スパッツ本体を該外装部品に取り付けるための取付部とを有してなる車両用スパッツであって、前記取付部を、(a)前記スパッツ本体が前記外装部品から下方に突出するように配置された状態下で、該外装部品に重ね合わされて配置されるように、該スパッツ本体の上端部に一体形成された取付部本体と、(b)該取付部本体又は前記スパッツ本体に対して、ヒンジ部を介して一体的に連結されており、該ヒンジ部の屈曲によって、該取付部本体との間で前記外装部品を挟持する挟持部と、(c)前記取付部本体と前記挟持部のうちの少なくとも何れか一方に対して一体的に突設されており、該取付部本体と該挟持部とによる前記外装部品の挟持状態下で、該取付部本体と該挟持部のうちの少なくとも何れか他方に係合することにより、それら取付部本体と挟持部とを該外装部品に固定して、前記スパッツ本体の該外装部品への取付けを実現せしめる係合突起とを含んで構成したことを特徴とする車両用スパッツ。
【0010】
<2> 前記取付部本体と前記挟持部のうちの何れか一方に位置決め用係合部が設けられて、該取付部本体と挟持部のうちの何れか一方が前記外装部品に重ね合わされて配置された状態下で、該位置決め用係合部が該外装部品に係合して、該外装部品に対する該取付部本体と挟持部のうちの何れか一方の摺動が規制されることにより、該外装部品に対する該取付部本体と挟持部のうちの何れか一方の位置決めが行われるようになっている上記態様<1>に記載の車両用スパッツ。
【0011】
<3> 前記取付部本体と前記挟持部のうちの少なくとも何れか一方に、前記係合突起が、係合爪を有して一体的に突設される一方、該取付部本体と該挟持部のうちの少なくとも何れか他方に、係合孔が穿設されており、前記外装部品が該取付部本体と該挟持部との間で挟持された状態下で、該係合突起が該係合孔に挿通されて、該係合爪が、該係合孔の外装部品側とは反対側の開口周縁部に係合せしめられることにより、該取付部本体と該挟持部とが該外装部品に固定されるようになっている上記態様<1>又は<2>に記載の車両用スパッツ。
【0012】
<4> 前記係合突起が、前記取付部本体と前記挟持部のうちの何れか一方における前記外装部品の外側面との重合せ面に突設されている上記態様<1>乃至<3>のうちの何れか一つに記載の車両用スパッツ。
【0013】
<5> 車両の下部に設置される外装部品に対して、該外装部品から下方に突出するように取り付けられることにより、車両走行時における車両下部での空気の流れを制御する車両用スパッツを、該外装部品に取り付けるための構造であって、上記態様<1>乃至<4>のうちの何れか一つに記載の車両用スパッツの前記スパッツ本体を、前記外装部品から下方に突出するように配置して、該車両用スパッツの前記取付部本体を該外装部品に重ね合わせて配置する一方、該車両用スパッツの前記ヒンジ部を屈曲せしめて、該取付部本体と前記挟持部との間で該外装部品を挟持させた状態下で、該取付部本体と該挟持部のうちの少なくとも何れか一方に一体形成された前記係合突起を、それらのうちの少なくとも何れか他方に係合させて、該取付部本体と該挟持部とを該外装部品に固定することにより、前記車両用スパッツを該外装部品に取り付けるようにしたことを特徴とする車両用スパッツの取付構造。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明に従う車両用スパッツにおいては、スパッツ本体を外装部品から下方に突出するように配置する一方、ヒンジ部を屈曲させることにより、取付部本体と挟持部とにて外装部品を挟持させた状態下で、取付部本体と挟持部のうちの少なくとも何れか一方に一体的に突設された係合突起を、それらのうちの少なくとも何れか他方に係合させるだけのワンタッチの操作を行うことによって、外装部品に取り付けられるようになっている。それ故、本発明に係る車両用スパッツは、従来品とは異なって、車両用スパッツとは別個の独立した専用の取付部品を何等用いることなく、しかも、そのような取付部品を用いた工程や、面倒なねじ止め乃至はボルト止めの作業を実施することもなしに、工程数の少ない簡略な作業により、外装部品に対して容易に取り付けられ得る。また、専用の取付部品が省略されている分だけ、外装部品に対して安価に取り付けられ得る。
【0015】
従って、かくの如き本発明に従う車両用スパッツにあっては、外装部品への取付コストの低減化が有利に実現され得ると共に、外装部品への取付作業の効率化及び取付性の向上が効果的に達成され得るのである。
【0016】
また、本発明に従う車両用スパッツの取付構造によれば、車両用スパッツ以外の余分な取付部品を用いることなく、工程数の少ない簡略な作業により、車両用スパッツを外装部品に対して容易に取り付けることが出来る。従って、かくの如き本発明に従う車両用スパッツの取付構造にあっても、本発明に係る車両用スパッツにおいて奏される優れた作用・効果と実質的に同一の作用・効果が、極めて有効に享受され得ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に従う構造を有する車両用スパッツの一実施形態を示す正面説明図である。
【図2】図1に示された車両用スパッツの右側面説明図である。
【図3】図2におけるIII部拡大説明図である。
【図4】図1に示された車両用スパッツを自動車のフェンダーライナに取り付ける際に実施される工程の一例を示す説明図であって、(a)は、車両用スパッツの挟持部をフェンダーライナの所定位置に位置決めして配置した状態を示し、(b)は、車両用スパッツをフェンダーライナに取り付けた状態を示している。
【図5】本発明に従う構造を有する車両用スパッツの別の実施形態を示す図2に対応する図である。
【図6】図5に示された車両用スパッツを自動車のフェンダーライナに取り付ける際に実施される工程の一例を示す説明図であって、図4の(b)に対応する図である。
【図7】本発明に従う構造を有する車両用スパッツの更に別の実施形態を示す図2に対応する図である。
【図8】図7に示された車両用スパッツを自動車のフェンダーライナに取り付ける際に実施される工程の一例を示す説明図であって、図4の(b)に対応する図である。
【図9】本発明に従う構造を有する車両用スパッツの他の実施形態を示す図2に対応する図である。
【図10】本発明に従う構造を有する車両用スパッツの更に他の実施形態を示す図2に対応する図である。
【図11】本発明に従う構造を有する車両用スパッツの更に別の実施形態を示す図1に対応する図である。
【図12】図11に示された車両用スパッツの右側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0019】
先ず、図1及び図2には、本発明に従う車両用スパッツの一実施形態として、自動車のフェンダーライナに取り付けられるスパッツが、その正面形態と右側面形態とにおいて、それぞれ示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態のスパッツは、スパッツ本体10と取付部12とを一体的に有する、可撓性を備えた樹脂体成形品にて、構成されている。
【0020】
より具体的には、スパッツ本体10は、矩形の平板形状を呈し、後述するように、自動車に設置されたフェンダーライナ(図示せず)の下面から下方に突出して、上下方向に延びるように位置せしめられた状態で、フェンダーライナに取り付けられるようになっている。このスパッツ本体10においては、フェンダーライナへの取付状態下で上下方向に延びる長さ(図1における上下方向の延出寸法)が、フェンダーライナから地面までの距離よりも小さくされていると共に、フェンダーライナへの取付状態下で車幅方向に延びる幅(図1における左右方向の延出寸法)が、自動車のタイヤの幅よりも小さくされている。なお、以下からは、スパッツ本体10のフェンダーライナへの取付形態に基づいて、便宜上、スパッツ本体10の長さ方向に対応する方向を上下方向、スパッツ本体10の幅方向を左右方向、スパッツ本体10の厚さ方向(図2の左右方向)を前後方向と言うこととする。
【0021】
そして、かかるスパッツ本体10の上端部に対して、取付部12が一体成形により形成されている。この取付部12は、取付部本体14と挟持部16とを備えている。取付部本体14は、矩形の平板形状を呈し、スパッツ本体10と同じ厚さ及び幅(図1における左右方向の延出寸法)と所定の長さ(図2における左右方向の延出寸法)とを有している。そのような取付部本体14が、スパッツ本体10の前面の上端縁から、スパッツ本体10に対して直角な角度で前方(図2における左方向)に延び出すようにして、スパッツ本体10に一体形成されている。換言すれば、本実施形態のスパッツは、全体として、長さ方向の中間部において直角に屈曲せしめられてなる屈曲板形態を呈する部分を有し、かかる屈曲板状部分のうちの上下方向に延びる部位にて、スパッツ本体10が構成される一方、前後方向に延びる部位にて、取付部本体14が構成されているのである。
【0022】
また、そのような取付部本体14の上面の幅方向両側の端部における長さ方向中間部には、係合突起18が、それぞれ2個ずつ、対を為して、一体的に突設されている。それら各係合突起18は、板状小片部20と係合爪22とからなっている。板状小片部20は、厚さ方向に撓み乃至は弾性変形可能とされた小片状の矩形平板形態を有し、取付部本体14の上面に対して、鉛直上方に向かって一体的に突設されている。係合爪22は、板状小片部20の先端部の厚さ方向一方の面に一体形成されており、板状小片部20の先端から基端側に向かって、板状小片部20を徐々に厚肉化させるように傾斜する摺動傾斜面24と、摺動傾斜面24の下端縁と板状小片部20の側面とを連結するように水平に延びる係合面26とを有している。
【0023】
そして、かかる係合突起18が、取付部本体14の上面の幅方向両側の各端部において、スパッツ本体10からの延出方向中央部よりも先端(前端)側に所定寸法だけ偏寄した箇所に、それぞれ一対ずつ配置されている。また、そのような配置状態下で、対を為す2個の係合突起18,18のそれぞれの板状小片部20が、係合爪22の形成側とは反対側の面同士において互いに所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
【0024】
一方、挟持部16も、矩形の平板形態を呈し、取付部本体14と同じ厚さ及び幅(図1における左右方向の延出寸法)と、取付部本体14よりも所定寸法だけ長い長さ(図2における左右方向の延出寸法)とを有している。そして、このような挟持部16が、長さ方向の一端部において、スパッツ本体10の上端面に対して、ヒンジ部28を介して、一体的に連結されている。
【0025】
このヒンジ部28は、図3に示されるように、挟持部16の長さ方向一端部の下面から、一体的に突出し且つかかる長さ方向一端部の全幅に亘って連続的に延出して、突出先端部において、スパッツ本体10の上端面に一体化されてなる形態を有している。そして、かかるヒンジ部28においては、その厚さが、挟持部16側からスパッツ本体10側に向かって徐々に薄くされている。
【0026】
これによって、ヒンジ部28が、図2や図3に二点鎖線で示されるように、最も薄肉となるスパッツ本体10との連結部位(一体化部位)において容易に屈曲せしめられるようになっている。そして、そのようなヒンジ部28を介して一体的に連結された挟持部16とスパッツ本体10とが、ヒンジ部28の屈曲に基づいて、挟持部16の下面とスパッツ本体10の上面とを互いに接近又は離隔させるように、ヒンジ部28のスパッツ本体10との連結部位を回動中心として、スパッツ本体10や取付部12の幅方向に延びる回動軸回りに回動せしめられ得るようになっている。
【0027】
また、図1及び図2に示される如く、挟持部16の長さ方向におけるヒンジ部28側とは反対側の端部には、その幅方向中央部に、矩形の切欠部30が形成されている一方、幅方向両側の端部には、位置決め用係合部としての引っ掛け部32が、鉤形状を有して、それぞれ一体形成されている。
【0028】
さらに、かかる挟持部16の幅方向両側の各端部において、長さ方向中央部よりも引っ掛け部32,32が形成される端部側に所定寸法だけ偏寄した位置には、係合孔34が、板厚方向に貫通して、それぞれ1個ずつ形成されている。この係合孔34は、矩形形状を呈し、挟持部16の長さ方向に延びる縦辺部の長さが、取付部本体14に設けられた係合突起18の板状小片部20の幅(図2における左右方向の寸法)よりも所定寸法だけ大きくされている一方、挟持部16の幅方向に延びる横辺部の長さが、対を為す係合突起18,18における板状小片部20,20同士の対向面間距離よりも大きく、且つかかる対向面間距離に、2個の板状小片部20,20のそれぞれの、係合爪22の非形成部位たる基端部の厚さの合計寸法を加えた寸法よりも小さくされているか、或いはそのような合計寸法と略同一の大きさとされている。また、挟持部16の長さ方向におけるヒンジ部28側の端縁から各係合孔34の中心までの寸法と、取付部本体14の長さ方向におけるスパッツ本体10側の端縁から各係合突起18の中心までの寸法とが、同一の大きさとされている。
【0029】
かくして、本実施形態では、ヒンジ部28が屈曲して、取付部本体14と挟持部16とが互いに接近するように回動せしめられることにより、取付部本体14に設けられた係合突起18の一対ずつが、各係合爪22の摺動傾斜面24において、挟持部16の2個の係合孔34,34のそれぞれの内周面に摺動し、且つ対を為す係合突起18の各板状小片部20を互いに接近させる方向に撓み変形させつつ、各係合孔34内に、それぞれ突入せしめられるようになっている。そして、図2に二点鎖線で示されるように、取付部本体14と挟持部16とが、互いに平行に延びる位置にまで回動せしめられたときに、各係合突起18の係合爪22が、各係合孔34の内周面を乗り越えて、板状小片部20が撓み変形状態から復元されると共に、係合面26において、挟持部16の上面における各係合孔34の開口部周縁部に係合せしめられるようになっている。また、ここでは、取付部本体14と挟持部16とが互いに平行に延びる位置に配置されたときの取付部本体14の上面と挟持部16の下面との間の距離が、スパッツが取り付けられるべきフェンダーライナ部分の厚さ寸法と略同じ程度の大きさとされている。
【0030】
そして、かくの如き構造とされた本実施形態のスパッツは、例えば、以下のようにして、フェンダーライナに取り付けられる。
【0031】
すなわち、先ず、図4の(a)に示されるように、ヒンジ部28を屈曲させることなく伸張させた状態で、取付部12の挟持部16を、フェンダーライナ36に設けられた挿通孔38内に、フェンダーライナ36の下面側から、前方に向かって延びるように挿通する(差し込む)。なお、ここでは、挿通孔38が、フェンダーライナ36のうち、図示しないタイヤの前方において、前後方向に延びるフェンダーライナ部分36aと上下方向に延びるフェンダーライナ部分36bとを跨いで延びるように形成されている。
【0032】
そして、前後方向に延びるフェンダーライナ部分36aの挿通孔38よりも前側に位置する部位に穿設された、係合孔34と同程度の大きさを有する2個の貫通孔40(図4には1個のみを示す)に対して、挟持部16に形成された2個の係合孔34(図4には1個のみを示す)をそれぞれ対応位置させた状態で、挟持部16を、フェンダーライナ部分36aの上面に重ね合わせて、配置する。また、そのような状態において、フェンダーライナ部分36aの各貫通孔40よりも更に前側の部位に穿設された2個の係合孔42(図4には1個のみを示す)内に、挟持部16の前端部に設けられた2個の鉤状の引っ掛け部32(図4には1個のみを示す)をそれぞれ挿通して、それら各引っ掛け部32を、かかる係合孔40の左右方向に対向する側面と後側に位置する側面とに係合させると共に、下側開口部の周縁部に引っ掛ける。
【0033】
これにより、フェンダーライナ部分36aの上面に対する挟持部16の左右両側と後方側への摺動を規制して、挟持部16の係合孔34とフェンダーライナ部分36aの貫通孔40とが互いに対応せしめられる位置において、挟持部16を位置決めする。また、そのように位置決めされて、フェンダーライナ部分36aに重ね合わされた状態において、挟持部16とフェンダーライナ部分36aとの離間を規制せしめる。このとき、取付部12の取付部本体14は、フェンダーライナ部分36aから離間して位置せしめられており、また、スパッツ本体10も、フェンダーライナ部分36aに対する所定の取付位置とは異なる位置に配置されている。
【0034】
次に、図4の(a)に矢印:アで示されるように、取付部本体14がフェンダーライナ部分36aの下面に接近するように、ヒンジ部28を屈曲させて、取付部本体14とスパッツ本体10とを、ヒンジ部28を回動中心として、車幅方向に延びる回動軸回りに回動させる。このとき、挟持部16の引っ掛け部32,32が、フェンダーライナ部分36aの各係合孔40の下側開口部の周縁部に引っ掛けられているため、取付部本体14とスパッツ本体10との回動によって、挟持部16がフェンダーライナ部分36aから浮き上がるように離間することが阻止される。そうして、挟持部16のフェンダーライナ部分36aへの重合せ状態が安定的に維持される。
【0035】
そのようなヒンジ部28の屈曲により、図4の(b)に示される如く、取付部本体14を、挟持部16と平行に前後方向に延びるように位置せしめた状態下で、フェンダーライナ部分36aの下面に重ね合わせる。そうして、フェンダーライナ部分36aを、それら挟持部16と取付部本体14との間で挟持させる。また、取付部本体14をフェンダーライナ部分36aの下面に重ね合わせることによって、スパッツ本体10を、車幅方向(左右方向)に広がり、且つフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に向かって突出させるように配置する。
【0036】
そして、挟持部16と取付部本体14とによるフェンダーライナ部分36aの挟持状態下で、取付部本体14の上面に一体形成された2対の係合突起18の一対ずつを、フェンダーライナ部分36aに設けられた2個の貫通孔40(図4には1個のみを示す)内と、それらにそれぞれ対応位置せしめられた挟持部16の2個の係合孔34(図4には1個のみを示す)内にそれぞれ挿通させて、それら各係合突起18の係合爪22を、挟持部16の上面における各係合孔34の開口周縁部に係合させる。
【0037】
かくして、挟持部16と取付部本体14とからなる取付部12をフェンダーライナ部分36aに固定する。以て、スパッツ本体10を、車幅方向に広がり、且つフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に向かって突出させた状態において、スパッツ全体をフェンダーライナ36に取り付ける。そして、それにより、自動車の下部を通過する気流を、タイヤの前側でスパッツにて遮断せしめて、そのような気流と、タイヤの回転によって生ずる気流との干渉を抑制し、その結果として、自動車下部で生ずる空気抵抗を低減化するのである。
【0038】
このように、本実施形態のスパッツは、スパッツ本体10と取付部12とヒンジ部28とを一体的に有する一体成形品からなっている。そして、取付部12の挟持部16をフェンダーライナ36の挿通孔38内に挿通し、ヒンジ部28を屈曲させて、挟持部16と取付部本体14との間で、フェンダーライナ36を部分的に挟持させると同時に、取付部本体14に一体形成された2対の係合突起18を、挟持部16の2個の係合孔34内に挿通させて、挟持部16に係合させるワンタッチの操作を行うだけで、フェンダーライナ36に取り付けられるようになっている。それ故、従来品とは異なって、面倒なねじ止め乃至はボルト止めの作業を実施することなく、また、余分な費用がかかる専用の取付部品を一切使用することもなしに、フェンダーライナ36に対する取付作業が、数少ない簡略な工程により、迅速且つ容易に、しかも安価に実施され得る。
【0039】
従って、かくの如き本実施形態のスパッツにあっては、フェンダーライナ36に対する取付コストの低減化と取付作業の効率化及び取付性の向上とが、極めて効果的に実現され得るのである。そして、その結果として、自動車の走行時に、自動車の下部で生ずる空気抵抗の低減化を、より安価に且つ容易に達成することが可能となる。
【0040】
また、かかるスパッツでは、フェンダーライナ36への取付時において、フェンダーライナ36を挟持部16と取付部本体14との間で挟持する前に、挟持部16に設けられた各引っ掛け部32が、フェンダーライナ部分36aの下面における各係合孔42の開口周縁部に係合せしめられることで、挟持部16が、それに設けられた各係合孔34をフェンダーライナ部分36aに形成された各貫通孔40にそれぞれ対応させる位置に位置決めされるようになっている。これによって、取付部12、ひいてはスパッツ全体が、フェンダーライナ36の予め設定された位置に対して、よりスムーズに且つ容易に取り付けられ得る。
【0041】
さらに、各引っ掛け部32が各係合孔42の開口周縁部に係合せしめられることにより、挟持部16がフェンダーライナ部分36aに重ね合わされて位置決めされた状態下で、挟持部16のフェンダーライナ部分36aからの離間が阻止されるようになっている。それ故、ヒンジ部28を屈曲する際に、挟持部16をフェンダーライナ部分36aに対して何等押さえ付けておかなくとも、挟持部16のフェンダーライナ部分36aに対する重合せ状態が確実に維持されて、挟持部16と取付部本体14とによるフェンダーライナ部分36aの挟持操作、更にはそれら挟持部16と取付部本体14のフェンダーライナ部分36aへの固定操作が、スムーズに且つ確実に実施され得る。これによっても、スパッツのフェンダーライナ36への取付作業の効率化や取付性の向上が、有利に図られ得る。
【0042】
更にまた、本実施形態においては、挟持部16と取付部本体14とによるフェンダーライナ部分36aの挟持状態下で、挟持部16に係合して、それら挟持部16と取付部本体14とをフェンダーライナ部分36aに固定させる係合突起18が、取付部本体14のフェンダーライナ部分36aとの重合せ面たる上面に対して、一体的に突設されている。それ故、スパッツのフェンダーライナ部分36aへの取付状態下で、かかる係合突起18が、フェンダーライナ部分36aから下方に突出することがない。従って、そのような係合突起18が、自動車下部を通過する気流を乱し、その結果として、空気抵抗を増大させるようなことが、未然に防止され得る。
【0043】
また、本実施形態のスパッツにあっては、スパッツ本体10の上端部から垂直方向に向かって一体的に突設された取付部本体14が、スパッツ本体10をフェンダーライナ部分36aから鉛直下方に突出するように配置した状態下で、かかるフェンダーライナ部分36aの下面に重ね合わされて配置されている。それ故、例えば、スパッツ本体10が縁石等の障害物に接触して、スパッツ本体10に対して前方側に押圧力が加えられたときに、取付部本体14が、フェンダーライナ部分36aの下面に対して突っ張るような働きを為し、それによって、スパッツ本体10が前方側に倒れ込むように変形することが有利に防止され得る。
【0044】
さらに、本実施形態では、薄肉のフェンダーライナ部分36aに挟持部16が重ね合わされており、そして、取付部本体14に一体形成された係合突起18が、それらフェンダーライナ部分36aの貫通孔40と挟持部16の係合孔34とに挿通せしめられて、係合突起18の係合爪22が挟持部16に係合している。それ故、例えば、係合突起18の係合爪22が薄肉のフェンダーライナ部分36aだけに係合する場合とは異なって、係合突起18に対して、フェンダーライナ部分36aの貫通孔40や挟持部16の係合孔34から抜け出す方向に作用力が加えられたときに、フェンダーライナ部分36aが容易に変形して、係合突起18が貫通孔40内から簡単に抜け出してしまうようなことが、効果的に防止され得る。従って、スパッツ本体10に対して後方側に押圧力が加えられたときに、係合突起18がフェンダーライナ部分36aの貫通孔40や挟持部16の係合孔34から抜け出すことが有利に阻止され、以て、スパッツ本体10が後方側に倒れ込むように変形することが効果的に防止され得る。かくして、本実施形態のスパッツにあっては、空気抵抗の低減化機能が、より安定的に且つ確実に発揮され得るのである。
【0045】
次に、図5及び図6には、取付部12の構造が前記第一の実施形態とは異なる別の実施形態が、示されている。なお、それら図5及び図6に示される実施形態、及び後述する図7乃至図12に示される幾つかの実施形態に関しては、前記第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図5乃至図12中に、図1乃至図4と同一の符号を付すことにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0046】
すなわち、図5から明らかなように、本実施形態のスパッツにあっては、取付部12の取付部本体14の長さ方向におけるスパッツ本体10側とは反対側端部の幅方向両側端部に、鈎形状の引っ掛け部32が、それぞれ1個ずつ(図5には1個のみを示す)設けられている。また、かかる取付部本体14の長さ方向中間部における幅方向両側の端部には、係合孔34が、それぞれ1個ずつ(図5には1個のみを示す)形成されている。一方、挟持部16の下面の長さ方向中間部における幅方向両側の端部には、係合突起18が、2個ずつ、対を為して、一体形成されている(図5には1個のみを示す)。それら各係合突起18は、前記第一の実施形態と同様に、板状小片部20と係合爪22とからなり、対を為すものの板状小片部20同士が、係合爪22の形成面とは反対側の面を互いに対向配置させた状態で、挟持部16に設けられている。
【0047】
そして、このような構造とされた本実施形態のスパッツをフェンダーライナ36に取り付ける際には、例えば、先ず、図6に二点鎖線で示されるように、挟持部16を、フェンダーライナ36に設けられた挿通孔38内に挿通する。このとき、図6に実線で示されるように、取付部本体14の上面を、前後方向に延びるフェンダーライナ部分36aの下面に重ね合わせると共に、スパッツ本体10を、車幅方向(左右方向)に広がり、且つフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に突出させるように配置する。また、そのような配置状態下で、取付部本体14の長さ方向中間部に設けられた各係合孔34を、フェンダーライナ部分36aに形成された各貫通孔40にそれぞれ対応位置させる一方、取付部本体14の先端部に設けられた各引っ掛け部32を、フェンダーライナ部分36aの各係合孔42に挿通して、各係合孔42の上側開口部の周縁部に引っ掛ける。これにより、取付部本体14の係合孔34とフェンダーライナ部分36aの貫通孔40とが対応せしめられる位置で、取付部本体14のフェンダーライナ部分36aに対する摺動とフェンダーライナ部分36aからの離間が阻止されように、取付部本体14を位置決めする。
【0048】
次いで、図6に矢印:イで示される如く、挟持部16がフェンダーライナ部分36aの上面に接近するように、ヒンジ部28を屈曲させることにより、挟持部16を、かかるヒンジ部28を回動中心として回動させる。これにより、図6に実線で示されるように、挟持部16を、取付部本体14と平行に前後方向に延びるように位置せしめた状態下で、フェンダーライナ部分36aの下面に重ね合わせて、フェンダーライナ部分36aを、それら挟持部16と取付部本体14との間で挟持させる。そして、それと同時に、挟持部16の下面に一体形成された2対の係合突起18の一対ずつを、フェンダーライナ部分36aに設けられた2個の貫通孔40内と、それらにそれぞれ対応位置せしめられた取付部本体14の2個の係合孔34内にそれぞれ挿通させて、各係合突起18の係合爪22を、取付部本体14の下面における各係合孔34の開口周縁部に係合させる。
【0049】
かくして、挟持部16と取付部本体14とからなる取付部12をフェンダーライナ部分36aに固定する。そして、それによって、スパッツ本体10を、車幅方向に広がり、且つフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に向かって突出させた状態において、スパッツ全体をフェンダーライナ36に取り付けるのである。
【0050】
このように、本実施形態のスパッツにおいては、挟持部16をフェンダーライナ部分36aの挿通孔38に挿通させて、ヒンジ部28を屈曲させることにより、フェンダーライナ部分36aを挟持部16と取付部本体14との間で挟持させた状態で、挟持部16に一体形成された各係合突起18の係合爪22を取付部本体14の各係合孔の開口周縁部に係合させるワンタッチの操作を行うだけで、余分な費用のかかる専用の取付部品を何等用いることなく、スパッツ全体が、所望の形態で、フェンダーライナ36に取り付けられるようになっている。従って、このような本実施形態のスパッツにあっても、前記第一の実施形態において奏される優れた作用・効果と同様な作用・効果が、有効に享受され得る。
【0051】
次に、図7及び図8には、取付部12の構造が前記第一及び第二の実施形態とは更に異なる別の実施形態が、示されている。本実施形態のスパッツにおいては、取付部本体14が、スパッツ本体10の上端部から上方に一直線に延びるように、一体形成されている。即ち、本実施形態のスパッツは、1個の矩形の平板部44を有し、この平板部44の長さ方向一方側(図7中の下側)の略半分の部分にて、スパッツ本体10が構成されている一方、かかる平板部44の長さ方向他方側(図7中の上側)に位置する残りの部分にて、取付部本体14が構成されている。そして、そのような平板部44の厚さ方向一方側の面の長さ方向中間部に対して、挟持部16が、ヒンジ部28を介して、一体的に連結されている。
【0052】
そして、本実施形態のスパッツをフェンダーライナ36に取り付ける際には、例えば、先ず、図8に二点鎖線で示されるように、挟持部16を、フェンダーライナ36の挿通孔38内に挿通し、上下方向に延びるフェンダーライナ部分36bに沿って延びるように位置させる。そして、上下方向に延びるフェンダーライナ部分36bの挿通孔38よりも上側の部位に設けられた2個の貫通孔40(図8には1個のみ示す)に対して、挟持部16に形成された2個の係合孔34(図8には1個のみ示す)をそれぞれ対応位置させた状態で、挟持部16を、フェンダーライナ部分36bの前面に重ね合わせて、配置する。また、そのような状態において、フェンダーライナ部分36bの貫通孔40よりも更に上側の部位に穿設された2個の係合孔42(図8には1個のみ示す)内に、挟持部16の上端部に設けられた鉤状の2個の引っ掛け部32(図8には1個のみ示す)をそれぞれ挿通させて、それら各引っ掛け部32を、フェンダーライナ部分36bの後面における各係合孔40の開口周縁部に引っ掛ける。これにより、挟持部16のフェンダーライナ部分36bに対する摺動とフェンダーライナ部分36bからの離間が阻止されように、挟持部16を位置決めする。
【0053】
そして、そのような状態から、図8に矢印:ウで示される如く、取付部本体14がフェンダーライナ部分36bの後面に接近するように、ヒンジ部28を屈曲させることにより、取付部本体14とスパッツ本体10とを、ヒンジ部28を回動中心として回動させる。
【0054】
かくして、図8に実線で示される如く、取付部本体14を、挟持部16と平行に且つ上下方向に延びるように位置せしめた状態下で、フェンダーライナ部分36bの後面に重ね合わせる。これにより、フェンダーライナ部分36bを、挟持部16と取付部本体14との間で挟持させる。また、取付部本体14をフェンダーライナ部分36bの後面に重ね合わせることによって、スパッツ本体10を、車幅方向(左右方向)に広がり、且つ前後方向に延びるフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に向かって突出させるように配置する。
【0055】
そして、挟持部16と取付部本体14とによるフェンダーライナ部分36bの挟持状態下で、取付部本体14のフェンダーライナ部分36bとの重合せ面に一体形成された2対の係合突起18の一対ずつを、フェンダーライナ36に設けられた2個の貫通孔40内と、それらにそれぞれ対応位置せしめられた挟持部16の2個の係合孔34内に挿通させて、各係合突起18の係合爪22を、挟持部16の前面における各係合孔34の開口周縁部に係合させる。
【0056】
かくして、挟持部16と取付部本体14とからなる取付部12をフェンダーライナ部分36bに固定する。以て、スパッツ本体10を、車幅方向に広がり、且つフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に向かって突出させた状態において、スパッツ全体をフェンダーライナ36に取り付けるのである。
【0057】
このように、本実施形態のスパッツにあっても、フェンダーライナ部分36bを挟持部16と取付部本体14との間で挟持させる操作と、挟持部16に一体形成された各係合突起18の係合爪22を取付部本体14の各係合孔34の開口周縁部に係合させる操作とを行う一連の作業を実施するだけで、余分な費用のかかる専用の取付部品を何等用いることなく、スパッツ全体が、所定の形態で、フェンダーライナ36に取り付けられるようになっている。従って、このような本実施形態のスパッツにあっても、前記第一及び第二の実施形態において奏される優れた作用・効果と同様な作用・効果が、有効に享受され得る。
【0058】
ところで、前記第一乃至第三の実施形態では、挟持部16が、ヒンジ部28を介して、スパッツ本体10に対して一体的に連結されていたが、例えば、図9に示されるように、挟持部16を、ヒンジ部28を介して、取付部本体14のスパッツ本体10側の端部に対して一体的に連結することも出来る。
【0059】
また、図10に示されるように、挟持部16を、ヒンジ部28を介して、取付部本体14のスパッツ本体10側とは反対側の端部に対して一体的に連結することも可能である。この場合には、引っ掛け部32が、挟持部16や取付部本体14に対して、それらのヒンジ部28側の端部とは反対側の端部に設けられることとなる(図10には、引っ掛け部32が挟持部16に設けられた構造を有するもののみを示した)。
【0060】
さらに、前記せる全ての実施形態は、スパッツ本体10が、ヒンジ部28の延出方向に広がるように形成されてなる構造、換言すれば、ヒンジ部28が、スパッツ本体10の幅方向に沿って延びるように形成されてなる構造を有していたが、例えば、図11及び図12に示されるように、ヒンジ部28が、挟持部16と取付部本体14とを一体的に連結し、且つスパッツ本体10の幅方向と直角な方向に延びるように形成されてなる構造を採用することも出来る。このような構造を採用する場合には、ヒンジ部28を屈曲して、フェンダーライナ36を挟持部16と取付部本体14との間で挟持させるときに、それら挟持部16と取付部本体14とが、ヒンジ部28を回動中心として、前後方向に延びる回動軸回りに回動させられるようになる。
【0061】
かくの如き構造を有するスパッツにあっては、例えば、挟持部16や取付部本体14をフェンダーライナ36の挿通孔38内に、何等挿通させることなく、前後方向に延びるフェンダーライナ部分36aを、その左側や右側の側部から、挟持部16と取付部本体14とにて挟持させて、取付部12をフェンダーライナ部分36aに固定することが出来る。これにより、スパッツ本体10を、車幅方向に広がり、且つフェンダーライナ部分36aの下面から鉛直下方に向かって突出させた状態において、スパッツ全体をフェンダーライナ36に取り付けることが可能となる。それ故、本実施形態のスパッツを用いれば、挟持部16や取付部本体14を挿通させるための挿通孔38を、フェンダーライナ36から省略することが出来る。以て、スパッツのフェンダーライナ36に対する取付性が、効果的に高められ得ることとなる。
【0062】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0063】
例えば、挟持部16と取付部本体14の両方に、係合突起18と係合孔34とをそれぞれ設けることも可能である。また、それら係合突起18と係合孔34の挟持部16や取付部本体14への取付位置や取付個数等は、適宜に変更され得る。
【0064】
さらに、係合突起18の挟持部16や取付部本体14への係合構造も、係合孔34の開口周縁部に係合爪22を係合させる例示の構造に、何等限定されるものではなく、公知の構造が適宜採用され得ることは、言うまでもないところである。また、例示の構造を採用する場合にあっても、係合爪22の形状等は、適宜に変更され得る。
【0065】
更にまた、ヒンジ部28も、部分的に薄肉化されてなる例示の構造以外に、例えば、全体乃至は一部を柔軟な材質とすることによって、容易に屈曲可能とされた構造のものを採用することも出来る。
【0066】
また、位置決め用係合部を引っ掛け部32以外の構造をもって形成することも可能であり、更に、引っ掛け部32等からなる位置決め用係合部を、挟持部16と取付部本体14の両方に設けることも出来る。
【0067】
加えて、本発明は、フェンダーライナに取り付けられるスパッツ、及びフェンダーライナへのスパッツの取付構造以外に、例えば、アンダーカバーに取り付けられるスパッツ、及びアンダーカバーへのスパッツの取付構造等、車両の下部に設置される外装部品に取り付けられる車両用スパッツ、及びそのような外装部品への車両用スパッツの取付構造の何れに対しても、有利に適用されるものであることは、勿論である。
【0068】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0069】
10 スパッツ本体 12 取付部
14 取付部本体 16 挟持部
18 係合突起 28 ヒンジ部
32 引っ掛け部 34,42 係合孔
36 フェンダーライナ 38 挿通孔
40 貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の下部に設置される外装部品に対して、該外装部品から下方に突出するように取り付けられることにより、車両走行時における車両下部での空気の流れを制御するスパッツ本体と、該スパッツ本体の上端部に一体形成された、該スパッツ本体を該外装部品に取り付けるための取付部とを有してなる車両用スパッツであって、
前記取付部を、
前記スパッツ本体が前記外装部品から下方に突出するように配置された状態下で、該外装部品に重ね合わされて配置されるように、該スパッツ本体に一体形成された取付部本体と、
該取付部本体又は前記スパッツ本体に対して、ヒンジ部を介して一体的に連結されており、該ヒンジ部の屈曲によって、該取付部本体との間で前記外装部品を挟持する挟持部と、
前記取付部本体と前記挟持部のうちの少なくとも何れか一方に対して一体的に突設されており、該取付部本体と該挟持部とによる前記外装部品の挟持状態下で、該取付部本体と該挟持部のうちの少なくとも何れか他方に係合することにより、それら取付部本体と挟持部とを該外装部品に固定して、前記スパッツ本体の該外装部品への取付けを実現せしめる係合突起と、
を含んで構成したことを特徴とする車両用スパッツ。
【請求項2】
前記取付部本体と前記挟持部のうちの何れか一方に位置決め用係合部が設けられて、該取付部本体と挟持部のうちの何れか一方が前記外装部品に重ね合わされて配置された状態下で、該位置決め用係合部が該外装部品に係合して、該外装部品に対する該取付部本体と挟持部のうちの何れか一方の摺動が規制されることにより、該外装部品に対する該取付部本体と挟持部のうちの何れか一方の位置決めが行われるようになっている請求項1に記載の車両用スパッツ。
【請求項3】
車両の下部に設置される外装部品に対して、該外装部品から下方に突出するように取り付けられることにより、車両走行時における車両下部での空気の流れを制御する車両用スパッツを、該外装部品に取り付けるための構造であって、
請求項1又は請求項2に記載の車両用スパッツの前記スパッツ本体を、前記外装部品から下方に突出するように配置して、該車両用スパッツの前記取付部本体を該外装部品に重ね合わせて配置する一方、該車両用スパッツの前記ヒンジ部を屈曲せしめて、該取付部本体と前記挟持部との間で該外装部品を挟持させた状態下で、該取付部本体と該挟持部のうちの少なくとも何れか一方に一体形成された前記係合突起を、それらのうちの少なくとも何れか他方に係合させて、該取付部本体と該挟持部とを該外装部品に固定することにより、前記車両用スパッツを該外装部品に取り付けるようにしたことを特徴とする車両用スパッツの取付構造。
【請求項1】
車両の下部に設置される外装部品に対して、該外装部品から下方に突出するように取り付けられることにより、車両走行時における車両下部での空気の流れを制御するスパッツ本体と、該スパッツ本体の上端部に一体形成された、該スパッツ本体を該外装部品に取り付けるための取付部とを有してなる車両用スパッツであって、
前記取付部を、
前記スパッツ本体が前記外装部品から下方に突出するように配置された状態下で、該外装部品に重ね合わされて配置されるように、該スパッツ本体に一体形成された取付部本体と、
該取付部本体又は前記スパッツ本体に対して、ヒンジ部を介して一体的に連結されており、該ヒンジ部の屈曲によって、該取付部本体との間で前記外装部品を挟持する挟持部と、
前記取付部本体と前記挟持部のうちの少なくとも何れか一方に対して一体的に突設されており、該取付部本体と該挟持部とによる前記外装部品の挟持状態下で、該取付部本体と該挟持部のうちの少なくとも何れか他方に係合することにより、それら取付部本体と挟持部とを該外装部品に固定して、前記スパッツ本体の該外装部品への取付けを実現せしめる係合突起と、
を含んで構成したことを特徴とする車両用スパッツ。
【請求項2】
前記取付部本体と前記挟持部のうちの何れか一方に位置決め用係合部が設けられて、該取付部本体と挟持部のうちの何れか一方が前記外装部品に重ね合わされて配置された状態下で、該位置決め用係合部が該外装部品に係合して、該外装部品に対する該取付部本体と挟持部のうちの何れか一方の摺動が規制されることにより、該外装部品に対する該取付部本体と挟持部のうちの何れか一方の位置決めが行われるようになっている請求項1に記載の車両用スパッツ。
【請求項3】
車両の下部に設置される外装部品に対して、該外装部品から下方に突出するように取り付けられることにより、車両走行時における車両下部での空気の流れを制御する車両用スパッツを、該外装部品に取り付けるための構造であって、
請求項1又は請求項2に記載の車両用スパッツの前記スパッツ本体を、前記外装部品から下方に突出するように配置して、該車両用スパッツの前記取付部本体を該外装部品に重ね合わせて配置する一方、該車両用スパッツの前記ヒンジ部を屈曲せしめて、該取付部本体と前記挟持部との間で該外装部品を挟持させた状態下で、該取付部本体と該挟持部のうちの少なくとも何れか一方に一体形成された前記係合突起を、それらのうちの少なくとも何れか他方に係合させて、該取付部本体と該挟持部とを該外装部品に固定することにより、前記車両用スパッツを該外装部品に取り付けるようにしたことを特徴とする車両用スパッツの取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−269730(P2010−269730A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124359(P2009−124359)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]