説明

車両用スマートキーシステム

【課題】 処理負荷が小さい照合調停処理を行なうことが可能な車両用スマートキーシステムを提供する。
【解決手段】 照合を行なうために車載機器から携帯機に照合の要求の信号を送信する照合要求送信手段と、照合要求に対する携帯機からの応答信号を受信する応答信号受信手段と、車両の状態に応じて照合要求を生成する照合要求生成手段と、生成された照合要求の内容を記憶する照合要求記憶手段と、記憶された照合要求の内容の個数を記憶する照合要求数記憶手段と、照合要求の内容数が所定の範囲内にあるかを判定する照合要求数判定手段と、照合要求の内容数が所定の範囲内にあると判定された場合に、記憶された照合要求の内容に応じて照合を行なう照合調停手段と、を備えることを特徴とする車両用スマートキーシステとして提供可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機(電子キー)と車載機器との間の無線通信により、ドアのロックとロック解除とを自動的に行なったり、実際のキーを使わずにエンジン始動を可能にしたりする機能(いわゆるスマート機能)を提供する、車両用スマートキーシステムに関する。特に、スマート機能の照合判定に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザが所持する携帯機(電子キー)と、車両の制御装置(ECU)との間で無線通信を行なうことにより、携帯機を所持したユーザが車両に接近したことを検知してドアのロックを自動的に解除したり、逆にユーザが車両から離れたことを検知してドアを自動的にロックしたりする機能を提供するスマートキーシステムは、昨今、多くの車両に採用されつつある。スマートキーシステムが提供するこうした機能は、スマート機能と呼ばれる。
【0003】
携帯機を所持したユーザが車両に接近すると、携帯機はECUからの問い合わせ信号を受信して、固有のIDコードを含む応答信号をECUに送信する。ECUは、受信した応答信号に含まれるIDコードを自身のメモリに記録されたコードと照合することにより、携帯機が当該車両用のものであるかどうかを判定し、携帯機が当該車両用のものであれば、所定の制御処理を行なう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7,図8は従来技術による照合調停処理の例である。図7において、ECUに含まれる照合調停部35は、照合の実行要求の有無を、即照合要求,定期照合要求,登録照合要求,ダイアグ照合要求等の照合の種類・エリア毎に所定のタイミングで問い合わせ、その問い合わせ結果に基づいて照合処理を行なう。照合の種類・エリアは図4の通りである。
【0005】
照合要求の種類・エリア毎に照合の実行要求の有無を問い合わせた(図8のS11〜S13)後、個別に照合の実行要求の有無を調べて照合の実行要求のあるものについて照合を行ない(図8のS15〜S17,S18)、その結果を通知する(図8のS23)。照合の実行要求は例えば照合要求フラグとしてスマートECU(図1参照)に含まれるRAM等のメモリの所定の領域に記憶される。
【0006】
本構成では、照合の実行要求の有無にかかわらず全ての種類・エリア(運転席・助手席・トランク等)、照合種類(即・定期)、照合モード(通常・登録・ダイアグ)の全ての照合要求フラグをポーリング(問い合わせ)処理(フラグ内容参照処理)により参照する必要がある。即照合の実行要求のように不定期に要求が発生するものについては殆ど常時照合要求フラグを参照しなくてはならず、処理負荷が大きくなるという問題があった。特に照合要求が無い場合には無駄な処理といえる。
【0007】
また、フェールセーフ処理に関しても照合要求フラグが何らかの原因によりクリアされてしまった場合もタイムアウト処理(図8のS19〜S21)しか機能せず、再度照合実行要求フラグをセットするような救済処理は行われていなかった。
【0008】
上記事情を背景とし、本発明の課題は、処理負荷が小さい照合調停処理を行なうことが可能な車両用スマートキーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための車両用スマートキーシステムを提供するものである。即ち、請求項1によれば、車両毎の固有のIDコードを記録した携帯機と車載機器との間で無線通信を行ない、車載機器が、車両から所定距離範囲内に当該車両用の携帯機が存在するか否かをIDコードによって照合し、その照合結果に基づいて所定の制御を行なう車両用スマートキーシステムにおいて、照合を行なうために車載機器から携帯機に照合の要求の信号を送信する照合要求送信手段と、照合要求に対する携帯機からの応答信号を受信する応答信号受信手段と、車両の状態に応じて照合要求を生成する照合要求生成手段と、生成された照合要求の内容を記憶する照合要求記憶手段と、記憶された照合要求の内容の個数を記憶する照合要求数記憶手段と、照合要求の内容数が所定の範囲内にあるかを判定する照合要求数判定手段と、照合要求の内容数が所定の範囲内にあると判定された場合に、記憶された照合要求の内容に応じて照合を行なう照合調停手段と、を備えることを特徴とする車両用スマートキーシステムとして構成される。
【0010】
本発明は、従来は図7のように、照合調停部35が分散した各記憶領域に記憶される照合要求フラグを参照して照合要求の有無を検出していたものを、図6のように、照合調停部35に含まれる記憶領域に発生した照合要求の個数とその照合要求の内容を記憶し、定期的に記憶領域(図6の41)を参照し、照合要求の個数が所定の数の範囲(例えば1個以上)の場合は、記憶されている照合要求の内容に基づいて照合処理を行なうものである。記憶領域を参照する処理の周期は短くする必要があるが、照合要求がない(照合要求の個数がゼロ)場合は直ちに処理が終了するので、車両用スマートキーシステム全体としての処理負荷は増大しないという効果がある。
【0011】
また、請求項2によれば、上記課題を解決するための車両用スマートキーシステムは、車両毎の固有のIDコードを記録した携帯機と車載機器との間で無線通信を行ない、車載機器が、車両から所定距離範囲内に当該車両用の携帯機が存在するか否かをIDコードによって照合し、その照合結果に基づいて所定の制御を行なう車両用スマートキーシステムにおいて、照合を行なうために車載機器から携帯機に照合の要求の信号を送信する照合要求送信手段と、照合要求に対する携帯機からの応答信号を受信する応答信号受信手段と、車両の状態に応じて照合要求を生成する照合要求生成手段と、生成された照合要求の内容を記憶する照合要求記憶手段と、照合要求記憶手段に照合要求の内容が記憶されているかを判定する照合要求記憶判定手段と、照合要求記憶手段に照合要求の内容が記憶されていると判定された場合に、記憶された照合要求の内容に応じて照合を行なう照合調停手段と、を備えることを特徴とする車両用スマートキーシステムとして構成される。
【0012】
本発明は、従来は図7のように、照合調停部35が分散した各記憶領域に記憶される照合要求フラグを参照して照合要求の有無を検出していたものを、図6のように、照合調停部35に含まれる記憶領域に発生した照合要求の個数とその照合要求の内容を記憶し、定期的に記憶領域(図6の42)を参照し、照合要求の内容が記憶されている場合は、記憶されている照合要求の内容に基づいて照合処理を行なうものである。記憶領域を参照する処理の周期は短くする必要があるが、照合要求がない(照合要求の個数がゼロ)場合は直ちに処理が終了するので、車両用スマートキーシステム全体としての処理負荷は増大しないという効果がある。
【0013】
また、請求項3によれば、上記課題を解決するための車両用スマートキーシステムは、車両毎の固有のIDコードを記録した携帯機と車載機器との間で無線通信を行ない、車載機器が、車両から所定距離範囲内に当該車両用の携帯機が存在するか否かをIDコードによって照合し、その照合結果に基づいて所定の制御を行なう車両用スマートキーシステムにおいて、照合を行なうために車載機器から携帯機に照合の要求の信号を送信する照合要求送信手段と、照合要求に対する携帯機からの応答信号を受信する応答信号受信手段と、車両の状態に応じて照合要求を生成する照合要求生成手段と、生成された照合要求の内容を記憶する照合要求記憶手段と、記憶された照合要求の内容の個数を記憶する照合要求数記憶手段と、照合要求の内容数が所定の範囲内にあるかを判定する照合要求数判定手段と、照合要求記憶手段に照合要求の内容が記憶されているかを判定する照合要求記憶判定手段と、照合要求の内容数が所定の範囲内にあると判定され、かつ照合要求記憶手段に照合要求の内容が記憶されていると判定された場合に、記憶された照合要求の内容に応じて照合を行なう照合調停手段と、を備えることを特徴とする車両用スマートキーシステムとして構成される。
【0014】
本発明は、従来は図7のように、照合調停部35が分散した各記憶領域に記憶される照合要求フラグを参照して照合要求の有無を検出していたものを、図6のように、照合調停部35に含まれる記憶領域に発生した照合要求の個数とその照合要求の内容を記憶し、定期的に記憶領域(図6の41および42)を参照し、照合要求の個数が所定の数の範囲(例えば1個以上)で、かつ照合要求の内容が記憶されている場合は、記憶されている照合要求の内容に基づいて照合処理を行なうものである。記憶領域を参照する処理の周期は短くする必要があるが、照合要求がない(照合要求の個数がゼロ)場合は直ちに処理が終了するので、車両用スマートキーシステム全体としての処理負荷は増大しないという効果がある。また、照合要求の個数とその照合要求の内容との両方をから照合要求の有無を確認するため、二重系の処理によるソフトウエアの信頼性が向上する効果もある。
【0015】
請求項4によれば、本発明の車両用スマートキーシステムは、照合要求の内容には照合を行なうための優先度を含み、照合要求記憶手段は受信した照合要求の内容を優先度の高い順に並べ替えるソート手段を含み、照合調停手段は並べ替えられた照合要求の内容順に照合を行なう構成をとることもできる。例えば、運転者が車両に接近した場合の照合要求の優先度を定期的に行なわれる照合要求の優先度よりも高く設定すれば、運転者が車両に接近して乗り込もうとする際の照合処理が優先して行なわれるため、乗車時にドアノブを操作してドアが開くまでのタイムラグ等は発生しなくなる。
【0016】
請求項5によれば、本発明の車両用スマートキーシステムは、照合要求の内容数が所定の範囲内にあると判定され、かつ照合要求記憶手段に照合要求の内容が記憶されていると判定されない場合には、全ての照合要求の内容について照合要求の有無を問い合わせる照合要求問い合わせ手段を備える構成をとることもできる。本構成によって、照合要求の内容数と照合要求の内容の記憶状態とに食い違いがあっても、全ての照合要求の有無を問い合わせることによって照合処理の漏れを防止することが可能となる(所謂フェールセーフ処理)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
処理負荷が小さい照合調停処理を行なうことが可能な車両のスマートキーシステムを提供する目的を、発生した照合要求を一括して所定の記憶領域に照合の優先度順に記憶し、その記憶領域に照合要求が記憶されている場合にのみ優先度順に照合処理を行なう構成により実現した。
【実施例】
【0018】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の車両用スマートキーシステム(以下、スマートキーシステムと略称)1の構成を示すブロック図である。図1に示すごとく、スマートキーシステム1は、車両に搭載されるスマートECU3と、ユーザが所持するべき携帯機17(電子キー17ともいう)を備える。スマートECU3には、受信機11(本発明の照合要求受信手段)、車室外発信機13および車室内発信機15が接続されている。スマートECU3は、これらの送受信機を介して携帯機17との間で無線通信を行なう。送受信機は、アンテナ、変調・復調回路等の公知の無線通信手段を含むものである。
【0019】
スマートECU3(本発明の照合要求数判定手段,照合要求記憶判定手段,照合調停手段,ソート手段)は周知のCPU31,ROM32,RAM33(本発明の照合要求数記憶手段,照合要求記憶手段,照合要求問い合わせ手段)およびスマートECU3に接続される機器との信号・データの処理を行なう入出力回路34を含んで構成され、ROM32あるいはRAM33に記憶されたプログラムおよびデータによって各種制御処理を行なう。
【0020】
また、スマートECU3には、車両のドアハンドルに内蔵されたタッチセンサ5と、ドアのキーシリンダに内蔵されたキー連動スイッチ7と、トリガロックスイッチ9からの信号が、図示しないスイッチ回路等を介して入力されるようになっている。タッチセンサ5は、たとえば静電容量の変化によって、ユーザがドアハンドルに手を掛けたかどうかを検知するものであり、各ドアハンドルに個別に設けられている(内蔵されている)。なお、上記ドアにはトランクのドアが含まれるものとする。
【0021】
キー連動スイッチ7は、機械式のキー(メカニカルキー)を用いてドアをロックすること又はドアのロックを解除することに応じてONされるスイッチであり、ドア等に設けられたキーシリンダに内蔵されている。トリガロックスイッチ9は、ロック専用のスイッチであり、ロックを解除する機能は持たず、たとえば運転席のドアのハンドル部分、またはドアハンドルの近くに設けられるものである。つまり、トリガロックは、車室外に携帯機17があり、かつ車室内に携帯機17が無いことを検知した場合に作動する。
【0022】
また、スマートECU3は、ドアロックコントローラ21(ドアロックECU)、エンジン始動コントローラ23(エンジンECU)に信号を送信する構成となっている。具体的に、スマートECU3は、ドアロックコントローラ21に対し、車両のドアをロック状態またはロック解除状態とする旨の信号を送る。これを受けて、ドアロックコントローラ21は、ドアをロック状態またはロック解除状態とするためのモータ制御を行なう。ドアのロックとロック解除とを自動で行なう制御は、スマートロック機能と呼ばれる。
【0023】
また、エンジン始動コントローラ23に対しては、メカニカルキーを用いることなく、所定のスイッチ操作によってエンジンを始動することを許容する旨の信号を送る。つまり、携帯機17を所持した運転者は、ハンドル付近に設けられたイグニッションスイッチを操作するだけで、キーを挿し込むことなくエンジンを始動できる。このような機能は、スマートイグニッション機能と呼ばれる。
【0024】
携帯機17は、スマートECU3との間でデータを送受信可能な携帯型無線装置として構成されたものである。また、携帯機17は、ワイヤレススイッチ19を備えている。ワイヤレススイッチ19は、ユーザがこのスイッチを操作することによって、ドアをロックしたり、ロックを解除したりするものである。つまり、スマートキーシステム1は、上記スマート機能の提供にかかる制御とは別に、ドアをロックまたはロック解除状態にするワイヤレスドア制御を行なう。本実施形態では、部品コスト低減の観点から、スマート機能のためのスマートコントローラと、ワイヤレスドア制御のためのワイヤレスコントローラとを、スマートECU3に兼用させているが、スマートコントローラとワイヤレスコントローラとを別々のECUにて構成するようにしてもよい。
【0025】
図2に示すごとく、車室外発信機13(本発明の照合要求送信手段)は、車両の運転席(D席)、助手席(P席)および左右後部座席への乗降用ドア、さらには車両のトランク開閉用ドアに設けられている。多くの場合、車室外発信機13は、ドアのハンドル部品に内蔵されており、その周囲に定期的に第1の問い合わせ信号を送信する。第1の問い合わせ信号は、ドアから70cm〜1m程度の範囲(第1のキー応答エリアSA)内にのみ届くよう、その出力が調整される。したがって、第1のキー応答エリアSA内に存在する携帯機17だけが、第1の問い合わせ信号を受信できる。第1の問い合わせ信号を受信した携帯機17は、メモリに記録されているIDコードを、応答信号として受信機11に向けて送信する。
【0026】
また、車室内発信機15(本発明の照合要求送信手段)は、たとえば室内中央のルームランプ部分に内蔵されており、車室内に定期的に第2の問い合わせ信号を送信する。第2の問い合わせ信号は、車室内の所定範囲(第2のキー応答エリアTA)にのみ届くよう、その出力が調整される。したがって、第2のキー応答エリアTA内(要するに車内)に存在する携帯機17だけが、第2の問い合わせ信号を受信できる。第2の問い合わせ信号を受信した携帯機17は、メモリに記録されているIDコードを、応答信号として受信機11に向けて送信する。
【0027】
受信機11(本発明の応答信号受信手段)は、たとえば運転席前方のルームミラーに組み込まれており、キー応答エリアSA,TA内の携帯機17から質問信号に応答して送信されてくる応答信号を受信して、携帯機17に固有のIDコードを復号する。もちろん、応答信号には、携帯機17が第1の応答エリアSAに存在するのか、第2の応答エリアTAに存在するのかを識別可能にするデータが含まれることとなる。
【0028】
次に、図3のフロー図を用いて照合調停処理について説明する。なお、本処理はROM32あるいはRAM33に記憶され、CPU31により、ROM32あるいはRAM33に記憶された他のプログラムとともに繰り返し実行される。まず、受信機11が携帯機17からの所定の信号を受信した場合、あるいは、照合の種類によって定められるタイミング(周期)等により照合要求が生成される。
【0029】
照合要求が生成されると(S31:Yes)、照合要求数をインクリメント(1増加)し(S32)、照合要求の内容(図4の照合エリア、詳細は後述)を示す照合実行キューをセットする(S33)。照合要求数,照合実行キューは、図5のようにRAM33あるいはスマートECU3に含まれる図示しない不揮発メモリの照合要求数記憶領域41,照合実行キュー記憶領域42に一括して記憶される。照合要求数は照合実行キューの総数となっている。図5(a)の状態は、照合実行キュー記憶領域42に記憶されている照合実行キューがキュー1〜キュー3の3個あるので、照合要求数記憶領域41に記憶される照合要求数は3である。ここで、新たな照合要求(キュー4)が発生すると、図5(b)のように照合実行キュー記憶領域42の空き領域1にキュー4が記憶され、照合要求数は4となる。
【0030】
他のエリアの照合処理が行なわれていない場合(S34:No)は、1個以上の照合要求がある、あるいは照合実行キュー記憶領域42に照合実行キューが記憶されている(全て空き領域でない)かを調べる(S35)。照合要求もなく照合実行キューも記憶されていない場合(S35:No)は処理を終了する。
【0031】
一方、1個以上の照合要求があるか、あるいは照合実行キュー記憶領域42に照合実行キューが記憶されている場合(S35:Yes)は、照合要求の数と照合実行キューの数を比較し両者が同じ値の場合(S36:Yes)はデータの整合が取れていると判定し、照合実行キュー記憶領域42の先頭アドレスの位置に記憶されている照合実行キュー(図5(a)ではキュー1)を読み込み(S37)、キュー1の内容が示す照合エリアについて照合処理を行なう(S38)。
【0032】
即ち、照合エリア(図4参照)の内容に応じて車室外発信機13あるいは車室内発信機15から携帯機17に対して照合要求信号を送信し、携帯機17からの該照合要求信号に対する応答信号を受信機11によって受信し、その受信内容(携帯機17のIDコード等)を用いて携帯機17の照合を行なう。
【0033】
そして、照合が終了すると(S42:Yes)、照合結果を通知するとともに(S43)、照合実行キュー記憶領域42のキュー1の内容をクリアし(S44)、照合要求数記憶領域41の照合要求数をデクリメント(1減少)し(S45)、照合実行キュー記憶領域42の記憶内容をそれぞれ照合実行キュー記憶領域42の先頭アドレスの位置へ1個ずつ移動させ、照合実行キュー記憶領域42の末尾を空き領域とする(S46)。
【0034】
図5の例では、図(c)のようにキュー1は消去され、キュー1の内容が記憶されていた領域にキュー2の内容が記憶され、キュー2の内容が記憶されていた領域にキュー3の内容が記憶され、キュー3の内容が記憶されていた領域にキュー4の内容が記憶されるというように記憶領域が順次移動しキュー4の内容が記憶されていた領域は空き領域1となる。また、キュー1が削除されたことで照合要求数は3となる。
【0035】
データの整合が取れていない(照合要求の数と照合実行キューの数が異なる)場合(S36:No)、照合実行キュー記憶領域42に何らかの照合実行キューが記憶されている場合(S39:Yes)には照合要求の数によらず該照合実行キューの内容にしたがって上述した照合処理を行なう。
【0036】
データの整合が取れていない、かつ照合実行キューが記憶されていない場合(S39:No)は、照合要求数記憶領域41および照合実行キュー記憶領域42の内容をクリアし(S41,S42)、全ての照合の種類について照合要求があるかどうかを問い合わせる(S47)。従来技術のように、照合要求数記憶領域41,照合実行キュー記憶領域42とは別に照合要求フラグ記憶領域を設け、照合要求発生時(S31:Yes)に該当する照合要求フラグをセットし、照合が終了した場合(S42:Yes)に該照合要求フラグをクリアするという構成とすれば、照合実行キューと照合要求フラグとの2つの方法で照合要求を確認でき、照合漏れをなくすことが可能となる。照合の有無を調べる際に照合要求フラグ記憶領域を常時参照するわけではないので(整合が取れていないに時のみ参照)、処理の負荷は増大しない。
【0037】
図4を用いて照合要求の詳細(抜粋)について説明する。照合要求は「通常」,「ダイアグ(評価)用」,「登録」の照合モードに大分類され、「通常」は通常使用されるモード、「ダイアグ(評価)用」は整備等でECUの動作確認等を行なうときのモード、「登録」は新たに携帯機を登録する場合のモードである。
【0038】
各モードは照合種類によって中分類される。「即照合」は携帯機17が所定の操作を行なったり、車両に接近した場合等に照合要求が発生するもの、「WAKE照合」は車両の運転席(D席)、助手席(P席)および左右後部座席への乗降用ドア、さらには車両のトランク開閉用ドアに設けられている車室外発信機13のそれぞれの照合エリアでの照合を同時に行なう場合に照合要求が発生するもの、「順次照合」は車両の運転席(D席)、助手席(P席)および左右後部座席への乗降用ドア、さらには車両のトランク開閉用ドアに設けられている車室外発信機13のそれぞれの照合エリアでの照合を所定の順序で行なう場合に照合要求が発生するもの、「定期照合」は一定時間毎に照合要求が発生するもの、「登録照合」は新たに携帯機を登録する場合に照合要求が発生するものである。
【0039】
各照合種類は個別の照合エリアによって小分類される。例えば、「車外D席」は運転席の乗降用ドアに設けられた車室外発信機13による照合エリアにおいて発生する照合要求である。
【0040】
優先Noは照合種類,照合エリア毎に一意に定められるもので、0が最も優先度が高く数値が大きくなるにつれて優先度が低くなる。例えば、照合エリア「車外D席」における「即照合」要求が発生した場合、照合実行キュー記憶領域42には、数値0が記憶される。空き領域には優先Noに含まれない数値(例えば99)が記憶される。
【0041】
照合実行キュー記憶領域42のキュー1に、「定期照合,車外D席」要求(数値11)が記憶されている状態で、「車外D席,即照合」要求(数値0)が発生した場合、優先度の高い順にキューの並べ替え(ソート)が行なわれ、キュー1には「車外D席,即照合」要求(数値0)が記憶され、キュー2に「定期照合,車外D席」要求(数値11)が記憶される。そして、「車外D席,即照合」要求に対する照合処理が先に実行される。
【0042】
本実施例(図3)では、以下の3つの条件のうちいずれか一つが成立した場合に照合処理を実行しているが、照合処理を実行する条件として(1)から(3)のうちのいずれか一つのみを用いる構成、任意の二つの組み合わせを用いる構成をとってもよい。例えば(1)のみを照合処理を実行する条件として用いる場合は、照合要求の数と照合実行キューの数が異なるときは、照合要求数記憶領域41あるいは照合実行キュー記憶領域42の記憶内容によらず、それらの記憶内容をクリアし、全ての照合の種類について照合要求があるかどうかを問い合わせる。図3のフロー図では、ステップS36の条件が不成立の場合(S36:No)、ステップS40以下の処理を行なうものである。
(1)照合要求の個数と照合実行キューの個数が同じ。
(2)照合要求の個数がゼロではないが照合実行キューはない(照合要求の個数>照合実行キューの個数)。
(3)照合要求の個数がゼロであるが照合実行キューはある(照合要求の個数<照合実行キューの個数)。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】車両のスマートキーシステムの構成を示す図。
【図2】無線通信エリアを示す模式図。
【図3】照合調停処理を説明するためのフロー図。
【図4】照合要求の内容の示す図。
【図5】照合要求数記憶領域,照合実行キュー記憶領域の構成を示す図。
【図6】本発明の照合調停処理の構成を示す模式図。
【図7】従来技術の照合調停処理の構成を示す模式図。
【図8】従来技術の照合調停処理を示すフロー図。
【符号の説明】
【0045】
1 車両用スマートキーシステム
3 スマートECU(照合要求数判定手段,照合要求記憶判定手段,照合調停手段,ソート手段,照合要求問い合わせ手段)
11 受信機(応答信号受信手段)
13 車室外発信機(照合要求送信手段)
15 車室内発信機(照合要求送信手段)
17 携帯機
32 RAM(照合要求数記憶手段,照合要求記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両毎の固有のIDコードを記録した携帯機と車載機器との間で無線通信を行ない、前記車載機器が、車両から所定距離範囲内に当該車両用の前記携帯機が存在するか否かを前記IDコードによって照合し、その照合結果に基づいて所定の制御を行なう車両用スマートキーシステムにおいて、
前記照合を行なうために前記車載機器から前記携帯機に前記照合の要求の信号を送信する照合要求送信手段と、
前記照合要求に対する前記携帯機からの応答信号を受信する応答信号受信手段と、
前記車両の状態に応じて前記照合要求を生成する照合要求生成手段と、
前記生成された照合要求の内容を記憶する照合要求記憶手段と、
前記記憶された照合要求の内容の個数を記憶する照合要求数記憶手段と、
前記照合要求の内容数が所定の範囲内にあるかを判定する照合要求数判定手段と、
前記照合要求の内容数が所定の範囲内にあると判定された場合に、前記記憶された照合要求の内容に応じて前記照合を行なう照合調停手段と、
を備えることを特徴とする車両用スマートキーシステム。
【請求項2】
車両毎の固有のIDコードを記録した携帯機と車載機器との間で無線通信を行ない、前記車載機器が、車両から所定距離範囲内に当該車両用の前記携帯機が存在するか否かを前記IDコードによって照合し、その照合結果に基づいて所定の制御を行なう車両用スマートキーシステムにおいて、
前記照合を行なうために前記車載機器から前記携帯機に前記照合の要求の信号を送信する照合要求送信手段と、
前記照合要求に対する前記携帯機からの応答信号を受信する応答信号受信手段と、
前記車両の状態に応じて前記照合要求を生成する照合要求生成手段と、
前記生成された照合要求の内容を記憶する照合要求記憶手段と、
前記照合要求記憶手段に前記照合要求の内容が記憶されているかを判定する照合要求記憶判定手段と、
前記照合要求記憶手段に前記照合要求の内容が記憶されていると判定された場合に、前記記憶された照合要求の内容に応じて前記照合を行なう照合調停手段と、
を備えることを特徴とする車両用スマートキーシステム。
【請求項3】
車両毎の固有のIDコードを記録した携帯機と車載機器との間で無線通信を行ない、前記車載機器が、車両から所定距離範囲内に当該車両用の前記携帯機が存在するか否かを前記IDコードによって照合し、その照合結果に基づいて所定の制御を行なう車両用スマートキーシステムにおいて、
前記照合を行なうために前記車載機器から前記携帯機に前記照合の要求の信号を送信する照合要求送信手段と、
前記照合要求に対する前記携帯機からの応答信号を受信する応答信号受信手段と、
前記車両の状態に応じて前記照合要求を生成する照合要求生成手段と、
前記生成された照合要求の内容を記憶する照合要求記憶手段と、
前記記憶された照合要求の内容の個数を記憶する照合要求数記憶手段と、
前記照合要求の内容数が所定の範囲内にあるかを判定する照合要求数判定手段と、
前記照合要求記憶手段に前記照合要求の内容が記憶されているかを判定する照合要求記憶判定手段と、
前記照合要求の内容数が所定の範囲内にあると判定され、かつ前記照合要求記憶手段に前記照合要求の内容が記憶されていると判定された場合に、前記記憶された照合要求の内容に応じて前記照合を行なう照合調停手段と、
を備えることを特徴とする車両用スマートキーシステム。
【請求項4】
前記照合要求の内容には前記照合を行なうための優先度を含み、前記照合要求記憶手段は前記受信した照合要求の内容を前記優先度の高い順に並べ替えるソート手段を含み、前記照合調停手段は前記並べ替えられた照合要求の内容順に前記照合を行なうものである請求項2または3に記載の車両用スマートキーシステム。
【請求項5】
前記照合要求の内容数が所定の範囲内にあると判定され、かつ前記照合要求記憶手段に前記照合要求の内容が記憶されていると判定されない場合には、全ての照合要求の内容について前記照合要求の有無を問い合わせる照合要求問い合わせ手段を備えるものである請求項3に記載の車両用スマートキーシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−144260(P2006−144260A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332044(P2004−332044)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】