説明

車両用ソーラ換気装置

【課題】車両に標準装備された空調装置を有効に利用することで、装置全体を簡易かつ安価に構成可能な車両用ソーラ換気装置を提供する。
【解決手段】車両用ソーラ換気装置は、エアコンECU12(空調制御手段)とソーラECU22(ソーラ換気制御手段)を備える。ソーラECU22は、エアコンECU12とソーラバッテリ23(ソーラ発電手段)からの電力を供給可能に接続され、かつエアコンECU12と多重通信バスBUS(車内通信線)を介して内気センサ14および外気センサ15による車室内の内気温Trおよび車室外の外気温Tamを取得可能に接続される。ソーラECU22は、イグニッションスイッチIGswのオフ時にソーラバッテリ23からの電力を駆動源としてエアコンECU12を起動し、エアコンECU12および多重通信バスBUSを介して取得した車室内の内気温Trおよび車室外の外気温Tamに応じてモータファン21を駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ソーラ換気装置に関し、特にイグニッションスイッチのオフ時に自動的に換気作動するモータファンを備えた車両用ソーラ換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用ソーラ換気装置として、例えば下記特許文献1に記載されているように、車室内の温度がサーモスイッチで設定された所定温度を超えたとき、停車時換気システムが自動的に作動状態となるものが知られている。また、例えば下記特許文献2に記載されているように、手動スイッチのオン操作を条件として、太陽電池による電力を駆動源として換気装置が作動状態となるものも知られている。
【特許文献1】特開2000−219035号公報
【特許文献2】特開昭62−261520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載された車両用ソーラ換気装置では、停車時換気システムを作動させるためにサーモスイッチを新設する必要があり、コストの上昇につながるという問題があった。また、上記特許文献2に記載された車両用ソーラ換気装置では、手動スイッチのオン操作により換気装置の作動が維持される構成とされているので、太陽電池の電力消耗が早く、換気装置が早期に停止するおそれがあり、換気装置による良好な換気効果を得ることが困難であった。
【0004】
本発明の課題は、車両に標準装備された空調装置を有効に利用することで、装置全体を簡易かつ安価に構成可能な車両用ソーラ換気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用ソーラ換気装置は、車室内の内気温を検出する内気センサと、車室外の外気温を検出する外気センサと、前記内気センサおよび前記外気センサと接続されて前記検出された車室内の内気温および車室外の外気温に応じて車室内を空調制御する空調制御手段と、太陽光を受けて発電するソーラ発電手段と、車室内を換気するモータファンと、前記空調制御手段と前記ソーラ発電手段からの電力を供給可能に接続されて同電力を駆動源として前記モータファンを駆動制御するソーラ換気制御手段とを備え、前記ソーラ換気制御手段は、前記空調制御手段と車内通信線を介して前記内気センサおよび前記外気センサによる車室内の内気温および車室外の外気温を取得可能に接続されており、前記ソーラ換気制御手段は、イグニッションスイッチのオフ時に前記電力を駆動源として前記空調制御手段を起動し、前記空調制御手段および前記車内通信線を介して取得した前記車室内の内気温に応じて前記モータファンを駆動制御することを特徴とする。
【0006】
この車両用ソーラ換気装置では、ソーラ換気制御手段によって、イグニッションスイッチのオフ時にソーラ発電手段から供給される電力を駆動源として空調制御手段が起動され、内気センサによる車室内の内気温が空調制御手段および車内通信線を介して取得される。そして、取得した車室内の内気温に応じてモータファンが駆動制御される。
【0007】
このため、車両に標準装備されている空調装置の内気センサを有効に利用してモータファンを駆動制御することが可能となって、装置全体を簡易かつ安価に構成することが可能である。
【0008】
本発明の実施に際して、前記ソーラ換気制御手段は、前記車室内の内気温に加えて前記車室外の外気温を取得し、前記取得した車室内の内気温と車室外の外気温との温度差が所定の設定値以上であるとき前記モータファンを駆動し、前記温度差が前記設定値未満となったとき前記モータファンの駆動を停止するものであるとよい。
【0009】
これによれば、取得した車室内の内気温と車室外の外気温との温度差に応じて、モータファンが駆動され、またはその駆動が停止される。このため、ソーラ発電手段の電力の無駄な消耗が防止され、モータファンの駆動が早期に停止される事態が回避されて、モータファンによる良好な換気効果を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は本発明による車両用ソーラ換気装置の一実施形態のブロック図を示していて、この車両用ソーラ換気装置は、空調装置10と換気装置20とで構成されている。空調装置10は、エアコンユニット11、エアコンECU12およびメインバッテリ13を備えており、換気装置20は、モータファン21、ソーラECU22およびソーラバッテリ23を備えている。
【0011】
エアコンユニット11は、周知のものであり、内気吸入口または外気吸入口から空気を吸入して複数の吹出口に向けて送風するためのブロワモータ、各吸入口を選択的に開閉する内外気切り替えダンパを動作させるための内外気切り替えダンパ用モータなどの各種モータを備えている。
【0012】
エアコンECU12(空調制御手段)は、CPU,ROM,RAMなどからなるマイクロコンピュータと、上記した各種モータを駆動する駆動回路とを主要構成部品としていて、操作パネルの操作に応じて上記した各種モータを駆動制御する。メインバッテリ13は、電力供給線L1を介してエアコンECU12に接続されていて、イグニッションスイッチIGswのオン時にエアコンECU12を経由してエアコンユニット11に電力を供給する。
【0013】
また、エアコンECU12には、内気センサ14、外気センサ15を始めとする各種センサが接続されている。内気センサ14は、車室内の内気温を検出してエアコンECU12に出力する。外気センサ15は、車室外の外気温を検出してエアコンECU12に出力する。
【0014】
モータファン21は、車両のトランクルーム、フロア部、天井部などに取り付けられていて、車室内の空気を車両外部に排出する。
【0015】
ソーラECU22(ソーラ換気制御手段)は、CPU,ROM,RAMなどからなるマイクロコンピュータと、モータファン21を駆動する駆動回路22aとを主要構成部品としており、ROM等に記憶された図2のモータファン駆動制御プログラムをイグニッションスイッチIGswのオフ時に繰り返し実行し、その実行に応じた制御信号を駆動回路22aに出力する。駆動回路22aは、制御信号に応じた駆動電流をモータファン21に流す。
【0016】
ソーラバッテリ23(ソーラ発電手段)は、ソーラパネル、太陽電池など太陽光を受けて発電するものであり(例えば、発電能力が1000W/m)、サンルーフなどの太陽光を受ける部位に組み込まれている。このソーラバッテリ23は、電力供給線L2を介してソーラECU22に接続されていて、イグニッションスイッチIGswのオフ時にソーラECU22を経由してモータファン21に電力を供給する。
【0017】
エアコンECU12とソーラECU22は、何れも多重通信のための多重通信入力回路と多重通信出力回路を備えており、これらの入出力回路を経て車内通信線としての多重通信バスBUS(例えば、CAN)を介して双方向に通信可能に接続されていて、ソーラECU22が、エアコンECU12に接続された内気センサ14および外気センサ15からの温度信号(温度データ)を、エアコンECU12および多重通信バスBUSを介して取得可能とされている。
【0018】
また、エアコンECU12とソーラECU22は、電力供給線L3を介して接続されていて、イグニッションスイッチIGswのオフ時にソーラバッテリ23からの電力が電力供給線L2からソーラECU22および電力供給線L3を経てエアコンECU12に供給され、ソーラバッテリ23からの電力を駆動源としてソーラECU22によりエアコンECU12が定期的に起動されるようになっている。
【0019】
次に、上記のように構成した本実施形態の作動について説明する。ソーラECU22は、イグニッションスイッチIGswのオフ時にROM等に記憶されている図2のモータファン駆動制御プログラムを所定の短時間毎に繰り返し実行している。
【0020】
このモータファン駆動制御プログラムは、ステップS10にてその実行が開始され、ステップS11にて、ソーラECU22はエアコンECU12を定期的に起動する。このとき、エアコンECU12は、ソーラECU22および電力供給線L3を経て供給されるソーラバッテリ23からの電力を駆動源として、図3に示すように、内気センサ14および外気センサ15による車室内の内気温Trおよび車室外の外気温Tamをそれぞれ検知し、検知した内気温Trおよび外気温Tamを多重通信バスBUSを介してソーラECU22に送信する。これにより、ソーラECU22は、所定の時間間隔で内気センサ14および外気センサ15による車室内の内気温Trおよび車室外の外気温Tamを取得することができる。
【0021】
ステップS12では、ステップS11にて取得した車室内の内気温Trと車室外の外気温Tamとの温度差(Tr−Tam)が、正の値である設定値To以上であるか否かを判定する。ここで、設定値Toは、車室内の換気が必要であると判断される程度の大きさの値に設定されている。
【0022】
夏場においては、イグニッションスイッチIGswのオン時に空調装置10が作動状態にあるのが一般的であり、温度差(Tr−Tam)が負となる場合には、ステップS12にて「No」と判定し、ステップS14の処理の実行によりモータファン21を駆動することなく、ステップS15にてこのモータファン駆動制御プログラムの実行を終了する。以後、温度差(Tr−Tam)が負である状態、または温度差(Tr−Tam)が正であるが設定値To未満の状態が続く限り、ステップS10〜S12,S14,S15の処理が繰り返し実行され、モータファン21の駆動停止状態が維持される。
【0023】
温度差(Tr−Tam)が設定値To未満の状態から、太陽光による車室内温度の上昇により温度差(Tr−Tam)が設定値To以上となった場合には、ステップS12にて「Yes」と判定し、ステップS13にてモータファン21を駆動する。温度差(Tr−Tam)が設定値To以上の状態が続く限り、ステップS10〜S13,S15の処理が繰り返し実行され、モータファン21の駆動状態が維持される。
【0024】
そして、温度差(Tr−Tam)が設定値To未満となった場合には、ステップS12にて「No」と判定し、ステップS14にてモータファン21の駆動を停止する。
【0025】
以上の説明からも明らかなように、上記実施形態においては、ソーラECU22によるステップS11の処理の実行によって、イグニッションスイッチIGswのオフ時にソーラバッテリ23から供給される電力を駆動源としてエアコンECU12が定期的に起動され、内気センサ14および外気センサ15による車室内の内気温Trおよび車室外の外気温TamがエアコンECU12および多重通信バスBUSを介して取得される。そして、取得した車室内の内気温Trおよび車室外の外気温Tamに応じて、ステップS13またはステップS14の処理によりモータファン21が駆動制御される。
【0026】
これにより、車両に標準装備されている空調装置10の内気センサ14および外気センサ15を有効に利用してモータファン21を駆動制御することが可能となって、装置全体を簡易かつ安価に構成することが可能である。
【0027】
また、上記実施形態では、ソーラECU22によるステップS12の処理の実行によって、取得した車室内の内気温Trと車室外の外気温Tamとの温度差(Tr−Tam)に応じて、モータファン21が駆動され(ステップS13)、またはその駆動が停止される(ステップS14)。
【0028】
これにより、ソーラバッテリ23の電力の無駄な消耗が防止され、モータファン21の駆動が早期に停止される事態が回避されて、モータファン21による良好な換気効果を得ることが可能である。
【0029】
なお、上記実施形態では、ステップS11の処理の実行によって、ソーラECU22が内気センサ14および外気センサ15による車室内の内気温Trおよび車室外の外気温Tamを取得し、ステップS12にて、取得した車室内の内気温Trおよび車室外の外気温Tamに応じて、ステップS13またはステップS14の処理の実行によりモータファン21を駆動制御する構成としたが、これに限らず、内気センサ14による車室内の内気温Trのみを取得し、例えば、取得した車室内の内気温Trが設定温度以上であるときモータファン21を駆動し、取得した車室内の内気温Trが設定温度未満であるときモータファン21の駆動を停止する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による車両用ソーラ換気装置の一実施形態を示すブロック図。
【図2】図1のソーラECUによって実行されるモータファン駆動制御プログラムを示すフローチャート。
【図3】図2のモータファン駆動制御プログラムにおけるステップS11の処理の実行時に、ソーラECUがエアコンECUおよび多重通信バスBUSを介して内気センサおよび外気センサによる車室内の内気温および車室外の外気温を取得する場合を示す説明図。
【符号の説明】
【0031】
10 空調装置
11 エアコンユニット
12 エアコンECU(空調制御手段)
13 メインバッテリ
14 内気センサ
15 外気センサ
20 換気装置
21 モータファン
22 ソーラECU(ソーラ換気制御手段)
23 ソーラバッテリ(ソーラ発電手段)
BUS 多重通信バス(車内通信線)
L1〜L3 電力供給線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の内気温を検出する内気センサと、
車室外の外気温を検出する外気センサと、
前記内気センサおよび前記外気センサと接続されて前記検出された車室内の内気温および車室外の外気温に応じて車室内を空調制御する空調制御手段と、
太陽光を受けて発電するソーラ発電手段と、
車室内を換気するモータファンと、
前記空調制御手段と前記ソーラ発電手段からの電力を供給可能に接続されて同電力を駆動源として前記モータファンを駆動制御するソーラ換気制御手段とを備え、
前記ソーラ換気制御手段は、前記空調制御手段と車内通信線を介して前記内気センサおよび前記外気センサによる車室内の内気温および車室外の外気温を取得可能に接続されており、前記ソーラ換気制御手段は、イグニッションスイッチのオフ時に前記電力を駆動源として前記空調制御手段を起動し、前記空調制御手段および前記車内通信線を介して取得した前記車室内の内気温に応じて前記モータファンを駆動制御することを特徴とする車両用ソーラ換気装置。
【請求項2】
前記ソーラ換気制御手段は、前記車室内の内気温に加えて前記車室外の外気温を取得し、前記取得した車室内の内気温と車室外の外気温との温度差が設定値以上であるとき前記モータファンを駆動し、前記温度差が前記設定値未満であるとき前記モータファンの駆動を停止する請求項1に記載の車両用ソーラ換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−61884(P2009−61884A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230716(P2007−230716)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】