説明

車両用ドアトリム構造

【課題】 車両用ドアトリム構造の部品点数を低減すると共に、車両用ドアトリムのコスト低減を図る。
【解決手段】 車室R側に膨出するアームレスト3をドアトリム本体2に一体に形成すると共に、アームレスト3の側壁14を高剛性部12,13と低剛性部11とにより構成し、該アームレスト3の上面7に下方向の荷重が入力されたときには、低剛性部11が弾性変形することでアームレスト3の上面7を下方向に撓ませるようにしたので、アームレスト3に一体に設けられた低剛性部11がクッション部として機能することにより、ドアトリム本体2とは別体にクッション材を設ける必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車などの車両に用いられる車両用ドアトリム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両のドアトリム本体に設けられるアームレストは、アームレスト表皮の内側に、クッション材、芯部材などが設けられて構成されている。
【0003】
特許文献1には、アームレストの表皮(発泡樹脂基材)をドアトリム本体と一体化して、芯部材を廃止した構造が開示されている。
【0004】
これら何れのアームレストも、乗員が該アームレストに肘を掛けたときの入力を、クッション材によって吸収し、肘掛性を良好にしている。
【特許文献1】特開2004−148905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらのアームレストは、クッション材がドアトリム本体とは別体となっているため、ドアトリム構造全体の部品点数が多くなってしまうという問題がある。また、部品点数が多いことにより、ドアトリム構造のコストが高くなるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、車両用ドアトリム構造の部品点数を低減すると共に、車両用ドアトリムのコスト低減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用ドアトリム構造は、車室側に膨出するアームレストをドアトリム本体に一体に形成すると共に、前記アームレストの側壁を高剛性部と低剛性部とにより構成し、該アームレスト上面に下方向の荷重が入力されたときには、前記低剛性部が弾性変形することで該アームレスト上面を下方向に撓ませることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アームレスト上面に下方向の荷重が入力されたときには、ドアトリム本体に一体に形成したアームレストの側壁の低剛性部が弾性変形することでアームレスト上面を下方向に撓ませることにより、低剛性部がクッション部として機能するので、ドアトリム本体とは別体にクッション材を設ける必要がない。よって、車両用ドアトリム構造の部品点数が従来に比べて低減され、また、車両用ドアトリムのコスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の車両用ドアトリム構造1を示す斜視図、図2は図1中のA−A線に沿う断面図、図3は連接部が弾性変形した状態の車両用ドアトリム構造1を示す縦断正面図である。
【0010】
図1及び図2に示すように、車両用ドアトリム構造1を構成するドアトリム本体2には、車室R側に膨出されたアームレスト3が一体に形成されている。このドアトリム本体2は、図示しないドアパネルに固定されるものである。ドアトリム本体2の上部9には、上カバー4が設けられている一方、その下部10の車室R側には、ポケット部5が設けられている。また、ドアトリム本体2の上部9の車室R側には、側面カバー6が設けられている。この側面カバー6の上端13a部は、ドアトリム本体2と上カバー4とに挟持されている。
【0011】
一体化されたドアトリム本体2とアームレスト3とは、例えばポリプロピレン樹脂によって形成されている。
【0012】
アームレスト3は、ドアトリム本体2の中央部に形成されており、車両前後方向に延在されている。このアームレスト3の上面7には、ウィンドウガラス昇降用のパワーウィンドウスイッチ8等が配設されている。
【0013】
アームレスト3は、その上部9と下部10とが連接部11によって連接されて構成されている。このアームレスト3では、上部9の側壁(以下、上部側壁という)12、下部10の側壁(以下、下部側壁という)13及び連接部11によって、側壁14が構成されている。本実施形態では、上部側壁12と下部側壁13とが高剛性部であり、連接部11が低剛性部である。
【0014】
アームレスト3の側壁14の上部である上部側壁12とその側壁14の下部である下部側壁13とは、水平方向にオフセットされている。本実施形態では、上部側壁12が下部側壁13よりも車室R側へ位置するようにオフセットされており、上部側壁12のアームレスト3内側(車外側)に下部側壁13の上端13a部が入り込んでいる。即ち、上部側壁12の下端12aは、下部側壁13の上端13aよりも上方に位置している。上部側壁12と下部側壁13とは、同じ肉厚に形成され、その肉厚は、ドアトリム本体2の肉厚と略同じにされている。
【0015】
連接部11は、帯状に形成されるともに、略N字状に湾曲するようにその両端部を互いに逆方向に折り返されている。そして、この連接部11の一端側が、上部側壁12の下端12aに接続し、他端側が下部側壁13の上端13aに接続している。連接部11は、上部側壁12及び下部側壁13よりも薄い肉厚に形成されている。この連接部11は、車両前後方向に沿って一定の間隔をあけて複数(本実施形態では6個)配置されている(図4参照)。以上の構造によって、連接部11の剛性は、上部側壁12及び下部側壁13よりも低くされている。
【0016】
この構造のアームレスト3では、アームレスト3の上面7に下方向の荷重が入力されたときには、図3に実線で示すように、低剛性部である連接部11が弾性変形することでアームレスト3の上面7を下方向に撓ませる。ここで、図3中の仮想線は、連接部11が変形していない状態のアームレスト3を示している。そして、その下方向の荷重が取り除かれたときには、連接部11が元形状に復帰することで、アームレスト3の上面7を元の位置に復帰させる(図2)。即ち、連接部11がクッション部として機能する。このようにクッション部として機能する連接部11によって、乗員がアームレスト3の上面7に肘を掛けたときのクッション性の向上が図られている。
【0017】
次に、アームレスト3の連接部11の成形方法を図4及び図5に基づいて説明する。図4は、連接部11がN字状に湾曲される前の状態を示す斜視図、図5は連接部11の成形方法を説明するための説明図である。
【0018】
図4及び図5に実線で示すように、N字状に湾曲される前の連接部11は、下部側壁13の上端13aから車室R側へ水平に延出し、その延出端部で上部側壁12の下端12aへ向けて屈曲されている。この状態では、アームレスト3の上部9が下部10に対して跳ね上げられている。この状態から、アームレスト3の上部9を押し下げることにより、図5中の仮想線で示すように、連接部11がN字状に湾曲される。これにより、上部側壁12が下部側壁13の上部9を覆う位置に位置付けられる。この状態では、連接部11間に形成されたスリット15がアームレスト3の上部9によって覆われる。
【0019】
以上説明したように、本実施形態では、アームレスト3の上面7に下方向の荷重が入力されたときには、ドアトリム本体2に一体に形成したアームレスト3の連接部11が弾性変形することでアームレスト3の上面7を下方向に撓ませることにより、連接部11がクッション部として機能するので、ドアトリム本体2とは別体にクッション材を設ける必要がなく、その分、車両用ドアトリム構造1の部品点数が従来に比べて低減されるとともに、車両用ドアトリムのコスト低減を図ることができる。
【0020】
また、アームレスト3においてクッション部として機能する連接部11が側壁14を兼ねているので、クッション材をドアトリム本体2とは別体で設けた場合に比べて質量を低減することができる。
【0021】
また、アームレスト3においてクッション部として機能する連接部11が側壁14を兼ねているので、クッション材をドアトリム本体2とは別体で設けた場合に比べて、アームレスト3を小型化することができ、よって、スペースを有効に用いることができる。
【0022】
また、クッション部として機能する連接部11を含めたアームレスト3がドアトリム本体2に一体に形成されていることから、それらを一体のままリサイクル処理することができるので、車両用ドアトリム構造1のリサイクル性が向上する。
【0023】
また、アームレスト3において連接部11間に形成されたスリット15がアームレスト3の上部9によって覆われていることにより、美観の向上が図られる。
【0024】
また、本実施形態においては、アームレスト3の上部側壁12と下部側壁13とを水平方向にオフセットさせると共にこれらの上部側壁12と下部側壁13とで高剛性部を構成し、かつ、上部側壁12と下部側壁13とを連接させた連接部11によって低剛性部を構成したことにより、アームレスト3の上面7に荷重が入力された場合に、アームレスト3の上部9が下部10に対してスムーズに移動する。
【0025】
また、本実施形態においては、連接部11を、車両前後方向に沿って間隔をあけて複数配置したことにより、複数の連接部11全体での剛性が、上部側壁12と下部側壁13との間全てを単一の連接部で埋めた場合の連接部の剛性に比べて低くなるので、アームレスト3の上面7の上下移動が容易になり、乗員がアームレスト3に肘を掛けたときのクッション性が向上する。
【0026】
なお、本発明は、本実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態の車両用ドアトリム構造を示す斜視図である。
【図2】図1中のA−A線に沿う断面図である。
【図3】連接部が弾性変形した状態の車両用ドアトリム構造を示す縦断正面図である。
【図4】連接部がN字状に湾曲される前の状態を示す斜視図である。
【図5】連接部の成形方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0028】
2 ドアトリム本体
3 アームレスト
7 アームレストの上面
11 連接部(低剛性部)
12 上部側壁(高剛性部、アームレスト側壁の上部)
13 下部側壁(高剛性部、アームレスト側壁の下部)
14 側壁
R 車室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側に膨出するアームレストをドアトリム本体に一体に形成すると共に、前記アームレストの側壁を高剛性部と低剛性部とにより構成し、該アームレスト上面に下方向の荷重が入力されたときには、前記低剛性部が弾性変形することで該アームレスト上面を下方向に撓ませることを特徴とする車両用ドアトリム構造。
【請求項2】
前記アームレストの側壁の上部と下部とを水平方向にオフセットさせると共にこれらの上部と下部とで前記高剛性部を構成し、かつ、前記上部と前記下部とを連接させた連接部によって前記低剛性部を構成したことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアトリム構造。
【請求項3】
前記連接部を、車両前後方向に沿って間隔をあけて複数配置したことを特徴とする請求項2記載の車両用ドアトリム構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−240427(P2006−240427A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57377(P2005−57377)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】