説明

車両用ドア制御装置

【課題】 本発明は、強風のときにドアの外にいる人や物にドアをぶつけてしまうことを防止する車両用ドア制御装置の提供を目的とする。
【解決手段】 風速検出手段により強風を示す所定値が検出され、かつ、前記停止状態判断手段により停止状態であると判断された場合、車両ドアをロックする。これにより、不用意に開けたドアが強風にあおられて、ドア外にいる人や隣接車両等にぶつかるのを未然に防止することができる。また、車両ドアが開けられる前に、車両ドアを一度ロック状態にした上で、乗員に対しての警報が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアロックやドア開放を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドアの外にある障害物の位置を距離センサーによって検出することによって、ドアの開放可能角度を算出する車両ドア開放支援装置が知られている(例えば、特許文献1)。この車両ドア開放支援装置は、算出された開放可能角度を音声や表示によって運転者や乗客に知らせることによって、ドアとドアの外にある障害物が接触しないように、ドアの開放操作を支援するものである。
【特許文献1】特開2003−104055号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、不用意にドアを開けてしまったために、ドアが強風にあおられて、ドアの外にいる人や隣接車両等にそのドアをぶつけてしまうという場面がよく見受けられる。ドアがあおられるような強風や突風が吹いていることを知らずにドアを開けてしまったことが原因である場合が多い。
【0004】
このような強風が吹いている状況において、上述の従来技術の車両ドア開閉支援装置では、たとえ隣接車両等との距離に基づいて算出された開放可能角度を音声や表示によって運転者等に知らせたとしても、強風にあおられドアをぶつけてしまうおそれがある。また、開放可能角度内の所定の開放角度となるようにドアを自動制御したとしても、隣接車両等との距離のみに基づいて開度制御しているため、強風が吹いたときには同様にドアをぶつけてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、強風のときにドアの外にいる人や物にドアをぶつけてしまうことを防止する車両用ドア制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一局面によれば、
風速を検出する風速検出手段と、
車両が停止状態であるか否かを判断する停止状態判断手段と、
前記風速検出手段により強風を示す所定値が検出され、かつ、前記停止状態判断手段により停止状態であると判断された場合、車両ドアをロックするドアロック制御手段とを備えることを特徴とする車両用ドア制御装置が提供される。本局面によれば、強風が吹いているときは車両ドアをロックすることによって、不用意に開けた車両ドアが強風にあおられてドア外にいる人や隣接車両等にぶつかるのを未然に防止することができる。
【0007】
また、本局面において、前記ドアロック制御手段により前記車両ドアがロックされた場合、ロックされた旨若しくは強風である旨を乗員に対し報知する報知手段を更に備えることが好ましい。これにより、強風で自動的に車両ドアをロックしたことを乗員に認識させることができる。
【0008】
また、本局面において、前記ドアロック制御手段により前記車両ドアがロックされている状態で、前記車両ドアのアンロック操作、または、ドアハンドル操作があった場合に報知することが好ましい。これにより、乗員が車両ドアを開けようとする動作、つまり、アンロック操作やドアハンドル操作、を感知したときには、乗員に強風が吹いていることをドアが開く前に報知して認識させることができる。このとき、ドアハンドル操作の場合はもちろんのこと、アンロック操作の場合でも車両ドアはドアロック制御手段によってロックされた状態であるので、車両ドアが開くことはない。このため、ドアロック制御手段によりロックが解除された後若しくは乗員が自ら車両ドアを開けることができるようになったときには、強風にあおられないように乗員自らが十分注意して車両ドアを開けることが期待できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強風のときにドアの外にいる人や物にドアをぶつけてしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図1は、本発明の一実施例である車両用ドア制御装置の構成を示す図である。
【0011】
風速センサー10は、車外で吹いている風の速度を検出することができる。風速センサー10には、例えば、白金巻線式風速センサー、超音波式風速センサーがある。
【0012】
白金巻線式風速センサーは、センサー素子である白金の抵抗値変化に基づいて風速を検出する。つまり、このセンサーに風があたると、熱が奪われてセンサーの温度が変わるにつれて、白金の抵抗値も変化する。この抵抗値の変化は風速が早ければ早いほど大きく変化するため、予め定められた風速と抵抗値との関係に基づき、抵抗値(または電流)を測定することによって、風速を検出することが可能になる。
【0013】
超音波式風速センサーは、超音波の伝播の変化に基づいて風速を検出する。つまり、超音波の伝播は風向や風速によって影響を受けるため、超音波を発信するトランスデューサーから受信するトランスデューサーへの超音波の伝達に要する時間に基づいて、風速を検出することが可能である。
【0014】
なお、風速を測定することできる手段であればよいため、上述の風速センサーに限らず、風によって圧力センサーが受けた圧力値に基づき、圧力と風速との所定の関係演算式を演算することによって、風速を算出してもよい。
【0015】
車速センサー11は、タイヤの回転に基づいて車速を検出することができる。車速センサー11により検出された車速は、車両が停止状態であるか否かを判断するために使用される。
【0016】
ドアハンドル14は、車室内の乗員がドアを開けるために設けられたハンドルである。ドアハンドル14には、乗員によるドアハンドル操作に従ってON/OFFするスイッチ15が配設されている。例えば、ドアハンドル14を引くことによって車両ドア(図示しない)が開くタイプの場合、ドアハンドル14を引いたときにはスイッチ15がONし、ドアハンドルから手を離したときにはスイッチ15がOFFする。なお、車両ドアがロックされている状態で車両ドアが開かない状態であっても、スイッチ15はドアハンドル14の上記操作によってON/OFFするものである。言い換えれば、乗員が車両ドアを開けようとする意思を感知するためのものである。
【0017】
車両ドアには、ドアロック装置16とロックノブ17が配設されている。ロックノブ17は、車室内から乗員自らが車両ドアをロック・アンロックする操作をするためのつまみ若しくはスイッチ状のものである。ドアロック装置16は、ロックノブ17からのロック・アンロック操作入力、または、後述するドア機能制御装置13からのロック・アンロック操作入力信号に従って、車両ドアのロックとアンロックをする装置である。
【0018】
ドア機能制御装置13は、スイッチ15からのON/OFF信号を受信したり、ドアロック装置16が車両ドアをロック・アンロックしたことを認識したり、ドアロック装置16に対し車両ドアをロック・アンロックさせる制御信号を送信したりする。また、ドア機能制御装置13は、後述するドアロック制御手段12との間でも信号を送受信する。
【0019】
ドアロック制御手段12は、風速センサー10により強風を示す所定値が検出され、かつ、車両が停止状態である判断された場合、車両ドアをロックするようにドア機能制御装置13に対し制御信号を送信する。車両の停止状態は、車速センサー11の値に基づいてドアコントロールECU(Electric Control Unit)等が判断する。なお、ドアロック制御手段12とドア機能制御装置13とを一体にした装置をドアコントロールECUとして設定してもよいし、ドア機能制御装置13をドアコントロールECUとし、ドアロック制御手段12を別体のECUとして設定してもよい。
【0020】
ところで、風速センサー10は車両に搭載されているため、車両が走行しているときに検出される走行風と車両が走行していないときに検出される自然風を区別しなければならない。なぜならば、車両が走行しているために強風を示す所定値が検出されている場合を除かなければならないからである。そこで、風速センサー10と車速センサー11とを併用することにより走行風と自然風を区別している。例えば、車速センサー11によって検出される車速が零であれば、風速センサー10により検出された風速は自然風である。一方、車速センサー11によって検出される風速が零以外の値であれば、風速センサー10により検出された風速は走行風である。
【0021】
ドアロック制御手段12は、また、スピーカ等の音声出力装置18や、マルチメディアディスプレイやウォーニングランプ等の警報表示装置19と接続されている。音声出力装置18及び警報表示装置19は、ドアロック制御手段12が制御した制御内容について乗員に対して知らせるべき情報を音声情報や視覚情報として報知するためのものである。例えば、強風が吹いているので車両ドアを注意して開けるようにと知らせたり、強風のため車両ドアが開かないよう強制的にロックしている旨を知らせたりする。
【0022】
それでは、本発明の車両用ドア制御装置の動作について図を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施例である車両用ドア制御装置の動作を示すフロー図である。まず、車両が停止状態であるか否かを判断し(ステップ100)、風速が強風を示す所定の値A[m/s]以上であるか否かを判断する(ステップ110)。車両が停止状態で、かつ、風速が所定の値A以上であるならば、ステップ120に移る。それ以外であるならば、フローの最初に戻る。
【0023】
ステップ120では、車両ドアがロック状態であるか否かを判断する。車両ドアがすでにロックされた状態であるならば、ステップ140に移る。車両ドアがまだロックされていない状態であるならば、ドアロック制御手段12はドア機能制御装置13を介してドアロック装置16が車両ドアをロックするよう制御し(ステップ130)、ステップ140に移る。つまり、ステップ120、130においては、車両が停止状態かつ風速が強風であるならば、車両ドアが開かないロック状態にしている。
【0024】
ステップ140において、ドアロック制御手段12は、車両ドアをアンロック禁止状態にする。つまり、ドアロック制御手段12は、一時的に、車両ドアを開けられないようにしている。
【0025】
そして、音声出力装置18や警報表示装置19を通して、乗員に対して、強風のため車両ドアを自動的にロックした状態である旨を報知する(ステップ150)。例えば、音声出力装置18によって「強風のため車両ドアがロックされました」と音声案内が行われるとともに、マルチメディアディスプレイに「強風のため車両ドアがロックされました」と表示される。
【0026】
ステップ150で警報を発した後、ステップ160において、乗員が車両ドアを開けようとしてアンロック操作をしたか否かを判断するようにしている。乗員自らがロックノブ17によりアンロック操作をした場合、強風のため車両ドアを注意して開けるよう警報する(ステップ200)。例えば、音声出力装置18によって「強風のため注意して車両ドアを開けてください」と音声案内が行われるとともに、マルチメディアディスプレイに「強風のため注意して車両ドアを開けてください」と表示される。
【0027】
アンロック操作がなかった場合でも、ステップ170において、乗員が車両ドアを開けようとしてドアハンドル操作をしたか否かを判断する。乗員自らがドアハンドル14を引いた場合、ロックノブ17によりアンロック操作をした場合と同様に、強風のため車両ドアを注意して開けるよう警報する(ステップ200)。例えば、音声出力装置18によって「強風のため注意して車両ドアを開けてください」と音声案内が行われるとともに、マルチメディアディスプレイに「強風のため注意して車両ドアを開けてください」と表示される。
【0028】
ステップ180において、乗員に対しステップ150で警報したときから所定時間経過後(例えば、数秒後)、または、風速が強風ではなくなっている場合(風速<A)にはステップ190に移り、それ以外の場合にはステップ160に戻る。つまり、ステップ180の条件に該当するまで、ステップ160とステップ170の判断を実行している。
【0029】
ステップ190において、ステップ140でアンロック禁止にした状態を解除する。ここで、制御フローは終了する。
【0030】
これにより、まず、車両が停止したときに、強風のため車両ドアを自動的にロックした状態である旨を乗員に知らせる。そして、乗員が車両ドアを開けようとした際は、ドアロックがかけられた上で、強風のため車両ドアを注意して開けるよう、再度、知らせている。つまり、車両ドアが乗員によって開けられる前に強風であることを十分乗員に対し認識させることができる。したがって、車両ドアのロックを乗員自らがアンロックにし、その車両ドアを開けるときには強風が吹いているという認識があるので、強風にあおられないよう注意をして車両ドアを開ける。そして、たとえ強風や突風が吹いたとしても、車両ドアを隣接車両等にぶつけてしまうおそれがなくなる。
【0031】
なお、上記実施例は、車両ドアにロックをかけて運転する習慣がある人や車速感応式ロックのように自動的にロックがかかるシステムを有する車両を対象とする場合をはじめ、ロックをかけずに運転する人を対象とする場合であっても、本発明が解決しようとする課題を解決可能である。車両ドアを一度ロック状態にした上で、車両ドアが開けられる前に警報する構成としているからである。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0033】
例えば、車両ドアはサイドドアに限らず、バックドア、すなわち、ロックがかかるような人が乗り降りできるようなドアでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例である車両用ドア制御装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施例である車両用ドア制御装置の動作を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0035】
10 風速センサー
11 車速センサー
12 ドアロック制御手段
13 ドア機能制御装置
14 ドアハンドル
16 ドアロック装置
18 音声出力装置
19 警報表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風速を検出する風速検出手段と、
車両が停止状態であるか否かを判断する停止状態判断手段と、
前記風速検出手段により強風を示す所定値が検出され、かつ、前記停止状態判断手段により停止状態であると判断された場合、車両ドアをロックするドアロック制御手段とを備えることを特徴とする車両用ドア制御装置。
【請求項2】
前記ドアロック制御手段により前記車両ドアがロックされた場合、ロックされた旨若しくは強風である旨を乗員に対し報知する報知手段を更に備える請求項1記載の車両用ドア制御装置。
【請求項3】
前記報知手段は、前記ドアロック制御手段により前記車両ドアがロックされている状態で、前記車両ドアのアンロック操作、または、ドアハンドル操作があった場合に報知する請求項2記載の車両用ドア制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−63567(P2006−63567A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245183(P2004−245183)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】