説明

車両用ドア装置

【課題】ドア駆動モータとして永久磁石形同期電動機を用いた車両用ドア装置において、非常時にドアを容易に開けられるようにする。
【解決手段】電力変換器4から給電される永久磁石形同期電動機2で駆動される引戸式のドア1と、このドアを閉位置で機械的にロックする施錠装置8と、この施錠装置8を非常時に手動操作で解錠する手動解錠装置13とを備えた車両用ドア装置において、電力変換器4から永久磁石形同期電動機2に給電する給電回路5を開閉する電磁接触器6を設け、手動解錠装置13が操作されたことを解錠検知スイッチ16で検知したら、電磁接触器6をオフして給電回路5を開路する。これにより、ドア1を手で開けて永久磁石形同期電動機2を回しても発電制動が生じなくなり、ドア1を手で容易に開けられるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、永久磁石形同期電動機で駆動される引戸式のドアを有する車両用ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両ドアは運行中には絶対に開いてはならないが、非常時には手動で容易に開く必要がある。そのため、従来一般に車両用ドア装置には、ドア閉止状態でドアを機械的にロックする鎖錠装置が設けられる一方、非常時には手動操作により鎖錠装置を解錠する手動解錠装置が設けられている。この種の車両用ドア装置については、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2003−237568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来、車両のドア駆動モータとして永久磁石形同期電動機を用い、この永久磁石形同期電動機に電力変換器(インバータ)から可変周波数の電力を供給してドアの開閉及び速度制御を行うものがある。その場合、手動解錠装置でドアロックを解錠してドアを手動で動かそうとすると、永久磁石形同期電動機が発電機となり、それとつながっている電力変換器や電源に対し電力を回生する発電制動がかかる。そのため、永久磁石形同期電動機に連結されたドアを手動で開ける際には、通常の摩擦力以外に発電制動に対抗する力が必要となり、かつこの発電制動力はドアを急いで開けようとするほど大きくなるという問題があった。
【0004】
そこで、この発明の課題は、ドア駆動モータとして永久磁石形同期電動機を用いた車両用ドア装置において、非常時にドアを容易に開けられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は、電力変換器から給電される永久磁石形同期電動機で駆動される引戸式のドアと、このドアを閉位置で機械的にロックする施錠装置と、この施錠装置を非常時に手動操作で解錠する手動解錠装置とを備えた車両用ドア装置において、前記電力変換器から前記永久磁石形同期電動機に給電する給電回路を開閉する手段と、前記解錠装置が操作されたことを検知する手段と、この検知手段により前記解錠装置が操作されたことを検知したら、前記開閉手段により前記給電回路を開路する制御手段とを設けるものとする。
【0006】
従来一般に、車両用ドア装置において、電力変換器から永久磁石形同期電動機に給電する場合、電力の供給/遮断は給電回路の開閉によらず、電力変換器の出力を制御して行っている。そのため、電力供給が途絶えたドア閉止状態においても電力変換器と永久磁石形同期電動機との間の給電回路は形成されたままであり、その結果としてドアを手で開けて永久磁石形同期電動機を回すと発電制動が生じる。そこで、この発明は、非常解錠装置を操作した場合のみ、これを検知して開閉手段で給電回路を開路するものである。これにより、永久磁石形同期電動機の回生回路が絶たれ、発電制動が生じなくなる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、非常時に手動解錠装置でドアロックを解除し、ドアを手で開ける場合に摩擦力のみしか生じないので、ドアを開けて脱出することが容易である。また、従来、車両運行中に何らかの要因でドアが開いたことを検知すると、モータにドア閉方向の駆動力を与えて乗客が車外に出ないようにするものがあるが、その場合にも手動解錠装置の操作時には給電回路が開路されるため、モータに駆動力が与えられることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図1〜図3に基づいて、この発明の実施の形態を説明する。ここで、図1は車両用ドア装置のシステム構成図、図2は図1における施錠装置部分の拡大図、図3は図2における手動解錠装置を操作した状態の図である。図1において、引戸式のドア1は図示しないレールにより、図1の左右方向に走行可能に吊り下げ支持され、永久磁石形同期電動機2により開閉駆動される。電源3の直流電力は電力変換器(インバータ)4により可変周波数の3相交流に変換され、給電回路5を介して永久磁石形同期電動機2に供給される。給電回路5には電路の開閉手段としての電磁接触器6が挿入されている。電磁接触器6の操作電磁石6aは操作回路7を介して電源3により励磁され、接点6aは常時はオンしている。
【0009】
図2において、ドア1は施錠装置8により閉止状態に施錠されている。施錠装置8は、車両側に昇降可能に案内支持されたロックピン9、ドア側に固定されたロックバー10、解錠用ソレノイド11、ロックピン9の昇降を検知する解錠検知スイッチ12等からなり、ロックバー10には上下方向に貫通するロックホール10aが設けられている。ロックピン9は図示しないスプリングにより常時下向きに付勢され、図示施錠状態においてロックピン9はロックホール10aに嵌入してドア1をロックしている。
【0010】
平常時においてドア開指令があると、図示しない制御装置は解錠用ソレノイド11を付勢してロックピン9を持ち上げる。これにより、ロックピン9はロックホール10aから抜け出しドアロックが解除され、同時に解錠検知スイッチ12から解錠信号が送出される。そこで、この解錠信号を待って、制御装置は永久磁石形同期電動機2を駆動しドア1を開く。
【0011】
一方、図2において、非常時の脱出のために手動解錠装置13が設けられている。手動解錠装置13は、車両側にピン14を支点に回動可能に支持された非常ハンドル15、非常ハンドル15が操作されたことを検知する手動解錠検知スイッチ16等からなっている。手動解錠検知スイッチ16の図示しない接点は操作回路7(図1)に挿入され、この接点は図2の施錠状態においてオンされている。
【0012】
図2の施錠状態において、非常事態が発生した場合、非常ハンドル15を図3に示す直立位置まで矢印方向に回動させると、ロックピン9が図示の通り持ち上げられる。これにより、ドア1の機械的ロックが解除され、ドア1は手動で開けられるようになる。同時に、手動解錠検知スイッチ16の接点がオフされる。その結果、電磁接触器6の操作回路7が開路され、操作電磁石6aの励磁が解かれて電磁接触器6の接点6bがオフする。これにより、給電回路5が開路され、永久磁石形同期電動機2は電力変換器4から電気的に切り離される。従って、ドア1を手動で開けることにより永久磁石形同期電動機2が回されても発電制動はかからず、ドア1は容易に開けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態を示す車両用ドア装置のシステム構成図である。
【図2】図1における施錠装置部分の拡大図である。
【図3】図2における手動解錠装置を操作した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0014】
1 ドア
2 永久磁石形同期電動機
3 電源
4 電力変換器
5 給電回路
6 電磁接触器
6a 電磁接触器の操作電磁石
6b 電磁接触器の接点
7 電磁接触器の操作回路
8 施錠装置
9 ロックピン
10a ロックホール
11 解錠用ソレノイド
12 解錠検知スイッチ
13 手動解錠装置
15 非常ハンドル
16 手動解錠検知スイッチ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器から給電される永久磁石形同期電動機で駆動される引戸式のドアと、このドアを閉位置で機械的にロックする施錠装置と、この施錠装置を非常時に手動操作で解錠する手動解錠装置とを備えた車両用ドア装置において、
前記電力変換器から前記永久磁石形同期電動機に給電する給電回路を開閉する手段と、前記手動解錠装置が操作されたことを検知する手段と、この検知手段により前記手動解錠装置が操作されたことを検知したら、前記開閉手段により前記給電回路を開路する制御手段とを設けたことを特徴とする車両用ドア装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−299549(P2006−299549A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119397(P2005−119397)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】