説明

車両用バックドアの構造

【課題】バックドア本体を構成するアウターパネルを上下で2分割すること無く、ウィンドガラスの下端部を下方に広げて車両後方視界の向上を図るとともに、ライセンスプレートをウィンドガラスの下端直下に配置することによってライセンスプレートの視認性の向上を図ることが可能な車両用バックドアの構造を提供することにある。
【解決手段】本発明は、バックドア本体4を構成するアウターパネル3の面に、ライセンスプレートを配置するための凹部7を形成した車両用バックドア2の構造において、凹部7の上端をバックウィンドガラス5の下端面の下方に重なるように延在させ、凹部7とウィンドガラス5の下端面との間にライセンスランプ8を収容配置するとともに、ライセンスランプ8を囲むように、凹部7とウィンドガラス5の下端面との間の空間を塞ぐライセンスガーニッシュ10を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後面に配置されるバックドアに係り、さらに詳しくは、バックドアの上部に取付けられるウィンドガラスの面積をできるだけ広くして、車両後方の視界を確保すると同時に、ライセンスプレートの位置をできるだけ上方に配置して、ライセンスプレートの視認性を高めた車両用バックドアの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車の中には、車体後面部に開口部が設けられているとともに、該開口部を開閉するバックドアが配設されているものがある。このようなバックドアは、インナーパネル及びアウターパネルから成るバックドア本体を備えており、このバックドア本体の上部には、ウィンドガラスを装着する窓用の開口部が設けられている。
【0003】
上記バックドアとしては、デザイン的観点などから、窓用の開口部を有する枠状部の下方で上下2分割したパネル部材によってバックドア本体のアウターパネルを構成しているものがある(例えば、特許文献1参照)。この構成のアウターパネルでは、ウィンドガラスの直下にライセンスプレートを配置するための凹部が形成されており、2分割されたパネル部材の接合部は、ウィンドガラスの下端縁で覆われている。
【特許文献1】特公平4−15126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のバックドアの構造にあっては、バックドア本体のアウターパネルを上下2枚のパネル部材によって構成しなければならなかったので、上下2枚のパネル部材を接合するための加工工程が必要となり、これに伴って、加工工数が増えてコスト高を招くという不具合があった。また、ライセンスプレートを照明するライセンスランプを収容するためのスペースを設ける必要があるので、バックドア本体のパネル面に支持されないウィンドガラスの端面部分が生じることになり、この箇所におけるバックドアの開閉時のウィンドガラスへの負担が大きいという問題があった。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、バックドア本体を構成するアウターパネルを上下で2分割すること無く、ウィンドガラスの下端部を下方に広げて車両後方視界の向上を図るとともに、ライセンスプレートをウィンドガラスの下端直下に配置することによってライセンスプレートの視認性の向上を図ることが可能な車両用バックドアの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、バックドア本体を構成するアウターパネルの面に、ライセンスプレートを配置するための凹部を形成した車両用バックドアの構造において、前記凹部の上端をウィンドガラスの下端面の下方に重なるように延在させ、前記凹部と前記ウィンドガラスの下端面との間にライセンスランプを収容配置するとともに、該ライセンスランプを囲むように、前記凹部と前記ウィンドガラスの下端面との間の空間を塞ぐ樹脂部品を設けている。
【0007】
また、本発明において、前記樹脂部品と前記ウィンドガラスの下端面との当接面の箇所には、クッション部材が挟持されている。
さらに、本発明において、前記樹脂部品は、下面開口部を有するボックス状に形成され、前記樹脂部品の下面には、開閉可能な蓋部が一体形成されており、該蓋部を開放させることにより露出する開口部から固定部材を挿入することによって、前記樹脂部品が前記バックドア本体に取付けられている。
【発明の効果】
【0008】
上述の如く、本発明に係る車両用バックドアの構造は、バックドア本体を構成するアウターパネルの面に、ライセンスプレートを配置するための凹部を形成したものであって、前記凹部の上端をウィンドガラスの下端面の下方に重なるように延在させ、前記凹部と前記ウィンドガラスの下端面との間にライセンスランプを収容配置するとともに、該ライセンスランプを囲むように、前記凹部と前記ウィンドガラスの下端面との間の空間を塞ぐ樹脂部品を設けているので、バックドア本体を構成するアウターパネルを上下で2分割すること無しに、ウィンドガラスの下端部を下方に広げることより車両後方視界の向上を図ることができるとともに、ライセンスプレートをウィンドガラスの下端直下に配置することによりライセンスプレートの視認性を向上させることができる。しかも、樹脂部品の存在によって、ウィンドガラスの下端部の支持強度を低下させること無く、バックドアの外観品質を向上させ、かつ組付け性の低下を防止しながら、ライセンスプレートを照明するライセンスランプを収容することができる。
【0009】
また、本発明において、前記樹脂部品と前記ウィンドガラスの下端面との当接面の箇所には、クッション部材が挟持されているので、バックドアを開閉する時に掛かるウィンドガラスの下端部への負荷を軽減させることができる。
【0010】
さらに、本発明において、前記樹脂部品は、下面開口部を有するボックス状に形成され、前記樹脂部品の下面には、開閉可能な蓋部が一体形成されており、該蓋部を開放させることにより露出する開口部から固定部材を挿入することによって、前記樹脂部品が前記バックドア本体に取付けられているので、ウィンドガラスを固定した後であっても、樹脂部品の蓋部の開閉操作によって、固定部材を外部に露出させることなく、樹脂部品をバックドア本体に取付けることができ、優れた外観と良好な組付け性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両用バックドアの構造について、図面を参照しながら、その実施形態に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る車両用バックドアの構造が適用される自動車を斜め後方から見た斜視図、図2は図1における自動車の車体後面部に取付ける前の状態にあるバックドアの斜視図、図3は上記実施形態に係るバックドアを車両後方から見た正面図、図4は上記実施形態に係るバックドアにおいて、バックドア本体のアウターパネルの凹部とウィンドガラスの下端面との間にライセンスガーニッシュを配置した状態の斜視図、図5は上記実施形態に係るライセンスガーニッシュを示すものであって、(A)はライセンスガーニッシュの蓋部を開いた状態の斜視図、(B)はライセンスガーニッシュの蓋部を閉じた状態の斜視図、図6は図4におけるA−A線断面図である。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態における自動車1の後面部には、車体壁の一部を構成する開閉可能なバックドア2が配設されている。このバックドア2は、図2に示すように、車体後面の開口部1aの上縁にヒンジ機構20を介して上下方向に開閉可能に取付けられている。
バックドア2は、図2〜図4及び図6に示すように、車両室外側がアウターパネル3により構成されるバックドア本体4を備えており、該バックドア本体4の上部には、内方にバックウィンドガラス5を配置するためのウィンド開口部Pが形成された窓枠6が一体的に設けられている。この窓枠6の車両室外側から、バックウィンドガラス5が接着材により貼り付けられている。
【0013】
上記アウターパネル3の車両室外側の面には、図2〜図4に示すように、ライセンスプレート(図示せず)を配置するための凹部7がウィンド開口部Pの下方に隣接して直下に形成されている。この凹部7の上端は、バックウィンドガラス5の下端面の下方に重なるように上方へ延在して形成されている。これにより、延在部7aの領域は、アウターパネル3をプレス絞り加工で徐々に傾斜面に成形することが可能となるため、従来技術のように窓枠部とその下方面で上下に分割すること無しに、アウターパネル3の下端を大きく下方に広げて視界の確保を行ったバックウィンドガラス5の下端の直下に連続してライセンスプレート(図示せず)を配置するための凹部7の底となる平面を確保できるとともに、ライセンスプレート(図示せず)をより上方に配置することができるようになっている。
【0014】
また、凹部7とバックウィンドガラス5の下端面との間の延在部7a内には、ライセンスランプ8が収納配置されており、延在部7aには、ライセンスランプ8を取付けるための差込孔9が穿設されている。これにより、ライセンスランプ8を別途覆い隠すためのガーニッシュ等の装飾部品を省略することが可能となっている。しかも、バックウィンドガラス5の下端とライセンスプレート(図示せず)の配置位置との間には、ガーニッシュ等を配置するスペースを設ける必要が無くなるため、バックウィンドガラス5の下端とライセンスプレート(図示せず)の位置をより近づけることが可能となっている。
但し、このような構造にすると、延在部7a以外の箇所ではバックウィンドガラス5の外周縁端部がウィンド開口部Pの窓枠6の縁端面によって裏面側から支持されているが、この凹部7に重なった延在部7aの箇所のみ、バックウィンドガラス5の端縁部がパネル面から浮いた状態になる。そのため、バックドア2を開ける時に、当該空間に乗員が指を入れてバックウィンドガラス5の下端を引き上げ、あるいは、閉める際にはこの部分を押圧するなどの可能性があり、バックウィンドガラス5の下端縁部に負荷が集中するおそれがある。
そこで、本発明の実施形態に係る車両用バックドア2の構造では、このような凹部7の延在部7aとその上に組付けられるバックウィンドガラス5の下端縁部との間の空間を塞ぐライセンスガーニッシュ(樹脂部品)10が配置されている。
【0015】
本実施形態のライセンスガーニッシュ10は、図4〜図6に示すように、樹脂材を用いて下面開口部を有するボックス状に一体形成されている。すなわち、ライセンスガーニッシュ10は、中央部分がライセンスランプ8の上方側を迂回して囲むような円弧状に形成され、中央部分の左右両側の側部がそれぞれ車幅方向に延長した細長い形状に形成されている。より詳しくは、ライセンスガーニッシュ10は、少なくともバックウィンドガラス5の裏面を支持する後面部10aと、バックウィンドガラス5及びアウターパネル3の間に手が入らないように隙間を塞ぐための下面部10bとを備えている。
ライセンスガーニッシュ10の後面部10aには、クッション部材11が中央部分と側部の形状に対応して貼り付けられており、当該クッション部材11がライセンスガーニッシュ10とバックウィンドガラス5の下端面との当接面の箇所に挟持されることによって、バックドア2を開閉する時に生じるバックウィンドガラス5の下端部への衝撃の伝達を抑えている。
【0016】
一方、上記ライセンスガーニッシュ10の左右両側部の下面部10bには、下面開口部12を開閉することが可能な蓋部13がそれぞれ一体形成されている。この蓋部13は、基端側の薄肉部13aをヒンジとして回動自在に形成され、先端側を係止爪などにより下面開口部12の縁部に係止して閉止されるようになっている。また、蓋部13と対応するライセンスガーニッシュ10の内部には、アウターパネル3とほぼ平行になるような角度で傾斜する傾斜壁14が形成されており、該傾斜壁14にはボルト(固定部材)15を螺入させるボルト孔16がアウターパネル3の取付孔17と対応して設けられている。
このため、ライセンスガーニッシュ10は、これをバックドア本体4のアウターパネル3に取付ける際、蓋部13を開放させることにより下面開口部12を露出させ、露出させた下面開口部12からボルト15を傾斜壁14のボルト孔16及びアウターパネル3の取付孔17に挿入して締め付けることによりアウターパネル3に取付け、取付け後、蓋部13を閉じることが可能な構造となっている。
【0017】
本発明の実施形態に係るバックドア2の構造では、ライセンスプレート(図示せず)を配置するためのアウターパネル3の凹部7の上端がウィンド開口部Pの直下で、バックウィンドガラス5の下端面の下方に重なるように上方へ延在して形成され、延在部7a内にライセンスランプ8が収納配置されているとともに、延在部7aとその上に組付けられるバックウィンドガラス5の下端縁部との間の空間を塞ぐライセンスガーニッシュ10が配置されているため、バックウィンドガラス5の下端部の下方への拡大により車両後方視界を向上させることができる上、ライセンスプレート(図示せず)のバックウィンドガラス5の下端直下の配置により当該ライセンスプレートの視認性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の実施形態に係るバックドア2の構造では、ライセンスガーニッシュ10が下面開口部12を有するボックス状に形成され、かつ下面部10bには開閉可能な蓋部13が一体形成されており、蓋部13を開放させることにより下面開口部12を露出させ、この露出させた下面開口部12からボルト15をボルト孔16及び取付孔17に挿入して締め付けることによりアウターパネル3に取付け、その取付け後に蓋部13を閉じることが可能であるため、ライセンスガーニッシュ10を取付ける際に、バックウィンドガラス5を先に取付けていると、工具を入れるスペースが無く、ボルト15を締め付けることができず、ボルト15を外部に露出させること無しに取付けができないという問題点を解消でき、乗員の手が入る空間を塞ぎ、ボルト15が蓋部13で覆われることにより、バックドア2の外観上の見栄えを良くし、組付け性の向上を図ることができる。
さらに、本発明の実施形態に係るバックドア2の構造では、ライセンスガーニッシュ10の組付けがバックウィンドガラス5を先に取付けた後でも可能となるため、車両完成後でもライセンスガーニッシュ10を脱着させることができ、優れたメンテナンス性を有している。しかも、蓋部13はライセンスガーニッシュ10と一体化されているため、部品点数を削減でき、蓋部13の係止爪などが壊れても、蓋部13がライセンスガーニッシュ10から脱落するおそれはない。
【0019】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、ライセンスガーニッシュ10の形状は、既述の実施形態のものに限定されず、ライセンスランプ8の設置位置などに応じて適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用バックドアの構造が適用される自動車を斜め後方から見た斜視図である。
【図2】図1における自動車の車体後面部に取付ける前の状態にあるバックドアを示す斜視図である。
【図3】上記実施形態に係るバックドアを車両後方から見た正面図である。
【図4】上記実施形態に係るバックドアにおいて、バックドア本体のアウターパネルの凹部とウィンドガラスの下端面との間にライセンスガーニッシュを配置した状態を示す斜視図である。
【図5】上記実施形態に係るライセンスガーニッシュを示すものであって、(A)はライセンスガーニッシュの蓋部を開いた状態の斜視図、(B)はライセンスガーニッシュの蓋部を閉じた状態の斜視図である。
【図6】図4におけるA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 自動車
2 バックドア
3 アウターパネル
4 バックドア本体
5 バックウィンドガラス
7 凹部
7a 延在部
8 ライセンスランプ
9 差込孔
10 ライセンスガーニッシュ(樹脂部品)
10a 後面部
10b 下面部
11 クッション部材
12 下面開口部
13 蓋部
14 傾斜壁
15 ボルト(固定部材)
16 ボルト孔
17 取付孔
P ウィンド開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックドア本体を構成するアウターパネルの面に、ライセンスプレートを配置するための凹部を形成した車両用バックドアの構造において、前記凹部の上端をウィンドガラスの下端面の下方に重なるように延在させ、前記凹部と前記ウィンドガラスの下端面との間にライセンスランプを収容配置するとともに、該ライセンスランプを囲むように、前記凹部と前記ウィンドガラスの下端面との間の空間を塞ぐ樹脂部品を設けたことを特徴とする車両用バックドアの構造。
【請求項2】
前記樹脂部品と前記ウィンドガラスの下端面との当接面の箇所には、クッション部材が挟持されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用バックドアの構造。
【請求項3】
前記樹脂部品は、下面開口部を有するボックス状に形成され、前記樹脂部品の下面には、開閉可能な蓋部が一体形成されており、該蓋部を開放させることにより露出する開口部から固定部材を挿入することによって、前記樹脂部品が前記バックドア本体に取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用バックドアの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−96292(P2009−96292A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268964(P2007−268964)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】