説明

車両用バッテリの固定構造

【課題】バッテリ間のブラケットの固定部をコンパクト化し、バッテリの搭載スペースを確保する。
【解決手段】車両に設けられたバッテリケースのケース本体20上に複数のバッテリモジュール18を並べ、バッテリモジュール18の上面にそれぞれバッテリ固定ブラケット35を掛け渡し、バッテリ固定ブラケット35の端部35a、35bをケース本体20にボルト39とナット40とにより締結固定して、複数のバッテリモジュール18をケース本体20に固定する車両用バッテリの固定構造であって、隣り合うバッテリモジュール18の間の区画壁23に設けられた1つのボルト39に、2つのバッテリ固定ブラケット35の端部35a、35bを共に固定し、一方のバッテリ固定ブラケット35と区画壁23との締結部と他方のバッテリ固定ブラケット35と区画壁23との締結部とを、上面視において重なり合うように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリの車両への固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量のバッテリが搭載され、当該バッテリの電力で駆動されるモータを走行駆動源の1つとするハイブリッド車や電気自動車が広く開発されている。
このような電気自動車では、容量及び出力電圧を確保するため、複数のバッテリが車体上に搭載されている。
複数のバッテリは、車体に設けられた載置台上に並べて搭載され、その上部側からベルトが掛け渡されて、当該ベルトの両端を例えばボルトにより載置台に固定することで載置台に固定される構造となっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2864948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、複数のバッテリを1つのベルトでまとめて固定しているので、1個のバッテリの固定解除に伴い全てのバッテリの固定が解除されてしまう。特に、バッテリが金属等のような延びの少ない部材で形成されたブラケットによって固定されている場合には、複数のバッテリのうち1個のみ交換したい場合でも、全てのボルトを外してブラケットを取り外さなければならず、メンテナンス時の工数増加を招いてしまう。
【0005】
そこで、バッテリ毎に1個ずつブラケットで固定する方法が考えられるが、いずれのブラケットもバッテリの中央部を掛け回すようにするためには、バッテリ間にブラケットの固定部を並べて2箇所設けなければならず、よってバッテリ間の距離を確保する必要があり、限られた搭載スペースで極力大きなバッテリを搭載するには不利な要因となってしまう。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、複数のバッテリをブラケットによって個々に載置台に固定する車両用バッテリの固定構造において、バッテリ間のブラケットの固定部をコンパクト化し、バッテリの搭載スペースを確保することが可能な車両用バッテリの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するべく、請求項1の車両用バッテリの固定構造は、車両に設けられた載置台上に複数のバッテリを並べ、複数のバッテリの上面にそれぞれブラケットを掛け渡し、ブラケットの端部を載置台にボルトとナットにより締結固定して、複数のバッテリを載置台に固定する車両用バッテリの固定構造であって、載置台は、隣り合うバッテリの間に当該バッテリを区画する区画壁を有し、ブラケットの端部は区画壁の上面に締結固定されると共に、一方のブラケットと区画壁との第1締結部と、他方のブラケットと区画壁との第2締結部とが、上面視において重なりあうように配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の車両用バッテリの固定構造は、請求項1において、ボルトは、区画壁に固定されるとともに、ねじ部の中間部に段差が設けられ、当該段差と前記ナットによりブラケットの端部を挟んで固定可能であることを特徴とする。
また、請求項3の車両用バッテリの固定構造は、請求項1または2において、載置台は、区画壁を複数有し、第1締結部と第2締結部との上下関係は、隣り合う区画壁で同一であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の車両用バッテリの固定構造は、請求項1〜3のいずれか1項において、車両はバッテリを走行駆動源とする電気自動車であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の車両用バッテリの固定構造によれば、複数のバッテリがブラケットによって載置台にそれぞれ固定されるので、複数のバッテリのうち一部分のバッテリのみ着脱したい場合に、当該バッテリを固定するブラケットを取り外せば着脱が可能となり、バッテリ交換等のメンテナンス作業を容易にすることができる。
特に、隣り合うバッテリにそれぞれ掛け渡された複数のブラケットのうち、一方のブラケットと区画壁との第1締結部と、他方のブラケットと区画壁との第2締結部とが、上面視において重なりあうように配置されているので、バッテリ間の各締結部の設置スペースを抑制することができ、バッテリの搭載スペースを十分に確保することが可能となる。
【0011】
請求項2の車両用バッテリの固定構造によれば、区画壁に固定されたボルトのねじ部の中間部に段差が設けられ、段差とナットによりブラケットの端部を挟んで固定可能であるので、ナットを強く締め付けることが可能となる。よって、ナットの緩みが抑えられ、バッテリを確実に固定することが可能となる。
請求項3の車両用バッテリの固定構造によれば、第1締結部と第2締結部との上下関係が隣り合う区画壁で同一であるので、ブラケットの形状を同一にして、部品共通化を図ることが可能となる。
【0012】
請求項4の車両用バッテリの固定構造によれば、車両がバッテリを走行駆動源とする電気自動車であるので、電気自動車に搭載されている複数のバッテリを確実に固定するとともに、バッテリの搭載スペースを確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るバッテリユニットが載置された電気自動車の斜視図である。
【図2】バッテリユニットの概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るバッテリモジュールの固定構造を示す上面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るバッテリモジュールの固定構造を示す縦断面図である。
【図5】バッテリモジュールが3つ以上配列される場合の固定構造を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るバッテリモジュールの固定構造を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るバッテリが搭載された電気自動車用の斜視図である。
図1に示すように、電気自動車1は車体2の床下にバッテリユニット10が載置されるとともに、図示しない外部からの充電経路とを備えており、当該充電経路から電力の供給を受けて充電を行う充電器12が車体2の後部に配置され、バッテリユニット10は充電器12に接続されて蓄電するように構成されている。電気自動車は、バッテリユニット10を動力源として図示しない電気モータを駆動することで、タイヤを回転駆動し走行可能となっている。
【0015】
図2は、バッテリユニット10の概略構成図である。
図2に示すように、バッテリユニット10は、バッテリケース15内に複数のバッテリモジュール18(本発明のバッテリに該当する)が収納されて構成されている。バッテリケース15は、上面が開口した箱形のケース本体20(載置台)とケース本体20の上面を覆うカバー22とから構成されている。ケース本体20及びカバー22は電気絶縁性を有する樹脂により形成されている。
【0016】
バッテリモジュール18は、直方体の形状であって、ケース本体20上に2列に車両前後方向に複数個並べて収納されている。バッテリモジュール18の列の間には、ケース本体20の底壁から上方に突出し、バッテリモジュール18を区画する区画壁23が設けられている。ケース本体20及びカバー22の周縁部には、互いに重なりあうように夫々フランジ25、26が形成されている。フランジ25、26には、所定間隔毎にボルト孔が設けられており、当該ボルト孔に夫々ボルト28を挿入し、ナット29によって締め付けることで、ケース本体20とカバー22とが固定される構造となっている。
【0017】
図3は、バッテリモジュール18の固定構造を示す上面図である。
図4は、バッテリモジュール18の固定構造を示す縦断面図である。
図3、4に示すように、バッテリモジュール18は、バッテリ固定ブラケット35(固定手段)によりケース本体20に固定されている。本実施形態のバッテリ固定ブラケット35は、ベルト状の鋼板を折り曲げて形成されており、バッテリモジュール18毎に設けられている。
【0018】
バッテリ固定ブラケット35は、バッテリモジュール18の上面に載せられ、バッテリモジュール18の中央部を横断するように配置されている。バッテリ固定ブラケット35の両端部は、バッテリモジュール18の側面に沿って下方に曲げられており、更にその両端部でバッテリモジュール18の上面と平行に幅方向外方に曲げられている。また、このバッテリ固定ブラケット35の両端部の幅方向外方に曲げられた部位である端部35a、35bには、ボルト孔37が設けられている。バッテリ固定ブラケット35の下方に曲げられた部位のうち一方の側板部35cは、他方の側板部35dより数cm長く形成されている。
【0019】
バッテリモジュール18間の区画壁23には、先端を上方に向けてボルト39が挿入されて固定されている。ボルト39は、先端のねじ部38が区画壁23の上端から突出するように配置されている。また、ケース本体20には、バッテリモジュール18の列の外側にも、バッテリモジュール18間の区画壁23と同様の形状であって、かつ同様にボルト39が固定された壁部24が設けられている。
【0020】
そして、バッテリモジュール18をケース本体20上に並べ、バッテリ固定ブラケット35をバッテリモジュール18毎に上面に載せ、両端のボルト孔37にボルト39を挿入し、ナット40により夫々締め付けることで、バッテリ固定ブラケット35の両端を区画壁23及び壁部24に固定し、バッテリモジュール18をケース本体20に固定する構造となっている。
【0021】
本実施形態では、特にバッテリモジュール18間の区画壁23には、隣合うバッテリモジュール18を固定する2つのバッテリ固定ブラケット35の端部35a、35bが、1つのボルト39によって共に締結固定され、一方のバッテリ固定ブラケット35と区画壁23との締結部(第1締結部)と、他方のバッテリ固定ブラケット35と区画壁23との締結部(第2締結部)とが、上面視において重なり合うように配置されている。詳しくは、バッテリモジュール18間のボルト39には、隣合う2つのバッテリ固定ブラケット35のうち一方が長く形成された側板部35c側の端部35aを固定し、他方が短く形成された側板部35d側の端部35bを固定するように配置されている。バッテリモジュール18間のボルト39に、2つのバッテリ固定ブラケット35のうち長く形成された側板部35c側の端部35aが先に挿入され、ナット40により締め付けて一方のバッテリモジュール18が固定され、端部35aの上に他方の短く形成された側板部35d側の端部35bが挿入され、ナット40により締め付けることで、他方のバッテリモジュール18が固定される。
【0022】
以上のように、本実施形態では、バッテリモジュール18毎にバッテリ固定ブラケット35により固定されるので、1つのバッテリ固定ブラケット35を取り外すことでバッテリモジュール18の固定を解除することが可能となる。よって、複数搭載されたバッテリモジュール18のうち1つバッテリモジュール18のみ着脱したい場合には、当該バッテリモジュール18を固定するバッテリ固定ブラケット35を取り外せばバッテリモジュール18の着脱が可能となるので、バッテリ交換等のメンテナンス作業を容易にすることができる。
【0023】
但し、バッテリモジュール間の区画壁23において、バッテリ固定ブラケット35の端部35aを着脱する場合には、共に固定されたバッテリ固定ブラケット35の端部35bをあらかじめ取り外さなければならないが、少なくともこの共に固定された端部35bを取り外せば当該バッテリ固定ブラケット35が着脱可能となるので、全てのバッテリ固定ブラケット35を取り外す必要がなく、バッテリモジュール18の着脱作業を容易にすることができる。
【0024】
なお、バッテリモジュール18を個々にバッテリ固定ブラケット35によって固定する場合には、並べて配置された2つのバッテリモジュール18間には、通常2つのボルト39を必要とする。しかしながら、本実施形態では、上記のように、1つのボルト39によって、2つのバッテリ固定ブラケット35の端部35a、35bが共に固定され、第1締結部と第2締結部とが上面視で重なり合うように配置されているので、バッテリモジュール18間のボルト39の設置個数を2個から1個に減らすことができる。したがって、バッテリモジュール18間のボルト39、即ち締結部の設置スペースが抑制され、バッテリモジュール18の搭載スペースを十分に確保することができる。本実施形態のような電気自動車1においては、限られた搭載スペースでもバッテリモジュール18を大きくして容量を増加させることが可能となる。
【0025】
図5は、バッテリモジュールが3つ以上配列される場合の固定構造を示す縦断面図である。
バッテリモジュール18が3つ以上配列される場合には、図5に示すように、バッテリモジュール18間の区画壁23に固定するバッテリ固定ブラケット35の上下関係を、隣り合う区画壁23で同一にするとよい。このようにすれば、隣り合うバッテリ固定ブラケット35の形状を同一にすることが可能となり、部品共通化を図ることができる。
【0026】
図6は、本発明の第2の実施形態のバッテリモジュール18の固定構造を示す拡大縦断面図である。
以下、本発明の第2の実施形態について、第1の実施形態と異なる部分について説明する。
図6に示すように、本発明の第2の実施形態では、区画壁23に設けられたボルト50(第1の実施形態のボルト39に相当する)のねじ部38の中間に段差51が設けられ、段差51の下部と上部とでねじ径が異なる構成としている。そして、段差の下部のねじ部38aにバッテリ固定ブラケット35の端部35aが固定されるように、また段差51の上部のねじ部38bにバッテリ固定ブラケット35の端部35bが固定可能となるように、夫々ボルト孔37の孔径が設定されている。バッテリ固定ブラケット35の端部35bは、ボルト50の段差51とナット40との間に挟まれて固定される。また、バッテリ固定ブラケット35の端部35aは、ねじ部38aの下端に設けられた段差53とナット40との間に挟まれて固定される。
【0027】
このような構成により、本実施形態では、ナット40を強く締め付けることが可能となる。よって、ナット40の緩みが抑えられ、バッテリ固定ブラケット35を区画壁23に、即ちケース本体20に強く固定することができ、バッテリモジュール18をより確実に固定することが可能となる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0028】
例えば、上記実施形態では、バッテリ固定ブラケット35は、ベルト状に形成されているが、バッテリモジュール18の上面全体を覆う形状であってもよい。
また、上記実施形態では、1つのバッテリ固定ブラケット35によって1つのバッテリモジュール18を固定しているが、本発明はこれに限定するものではない。例えば1つのバッテリ固定ブラケット35によって複数のバッテリモジュール18を固定している場合でも、バッテリ固定ブラケット35を複数備えているものであれば、その固定部に本発明を適用することが可能である。
【0029】
また、本実施形態では、電気自動車のバッテリに本願の固定構造を適用しているが、ハイブリッド車あるいはエンジン駆動の車両においても、車両に並べて搭載された複数個のバッテリの固定構造に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 電気自動車
18 バッテリモジュール
20 ケース本体
23 区画壁
35 バッテリ固定ブラケット
39、50 ボルト
40 ナット
51 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた載置台上に複数のバッテリを並べ、前記複数のバッテリの上面にそれぞれブラケットを掛け渡し、前記ブラケットの端部を前記載置台にボルトとナットにより締結固定して、前記複数のバッテリを前記載置台に固定する車両用バッテリの固定構造であって、
前記載置台は、隣り合う前記バッテリの間に当該バッテリを区画する区画壁を有し、
前記ブラケットの端部は前記区画壁の上面に締結固定されると共に、一方のブラケットと前記区画壁との第1締結部と、他方のブラケットと前記区画壁との第2締結部とが、上面視において重なりあうように配置されていることを特徴とする車両用バッテリの固定構造。
【請求項2】
前記ボルトは、前記区画壁に固定されるとともに、ねじ部の中間部に段差が設けられ、当該段差と前記ナットにより前記ブラケットの端部を挟んで固定可能であることを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリの固定構造。
【請求項3】
前記載置台は、前記区画壁を複数有し、
前記第1締結部と前記第2締結部との上下関係は、隣り合う区画壁で同一であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用バッテリの固定構造。
【請求項4】
前記車両は前記バッテリを走行駆動源とする電気自動車であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用バッテリの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−169171(P2012−169171A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29810(P2011−29810)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】