説明

車両用フードエアバッグ装置

【課題】車両用フードエアバッグ装置において、フード下面側に高剛性の部材を備えている場合において当該高剛性の部材から衝突体への荷重入力量を低減する。
【解決手段】車両用フードエアバッグ装置10をフード14に固定するために用いられる縦断面形状がZ形状の前側リインフォース28の縦壁部28Cを、エアバッグケース46の縦壁46Aと展開したエアバッグ60の車両前方側の端部60Dとの間の領域Sの範囲内、より好ましくは衝突体の衝突荷重の作用方向の一つである矢印Fよりも車両後方側に配置した。これにより、衝突体が直接的に前側リインフォース28の縦壁部28Cから反力を受けることがなくなり、その意味で衝突体が歩行者である場合の歩行者保護性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突体との衝突時にフード上面側に膨張展開される車両用フードエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、フード後端部にフード幅方向に長い開口を形成して当該開口を開閉可能なカバー(リッド)で覆い、かつ開口の下方側にエアバッグケースを配置して、当該エアバッグケース内にインフレータ及び折り畳み状態のエアバッグを収納した車両用フードエアバッグ装置が開示されている。
【0003】
上記構成によれば、歩行者等の衝突体と前面衝突すると、インフレータが作動してガスが発生し、エアバッグが膨張される。これにより、カバーがフード外方へ展開され、フード上面側へエアバッグが展開される。その結果、歩行者の頭部等の衝突体を保護しようというものである。
【特許文献1】特許第3245489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、フードアウタパネルの下面側にフード幅方向に沿って前後一対のフードインナ(骨格部材)が配設されており、これらのフードインナ間に車両前後方向を長手方向とするステーを掛け渡し、このステーにエアバッグケース(エアバッグモジュール)を固定する構成を採っているが、フードインナ及びステーはいずれも高剛性の部材であるため、これらの部材の配置には充分に配慮する必要がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、フード下面側に高剛性の部材を備えている場合において当該高剛性の部材から衝突体への荷重入力量を低減することができる車両用フードエアバッグ装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、フードアウタパネルにおけるフード後端側に形成されたバッグ膨出用開口部を開放可能に覆うカバーと、このカバーの下方側に配置され、衝突体との衝突時にガスを噴出するガス発生手段と、フードアウタパネルと当該フードアウタパネルの下面側に離間して配置されたフードインナパネルとの間に折り畳み状態で格納され、前記ガス発生手段から発生したガスの供給を受けて膨張し、前記カバーをフード外方へ展開させて少なくともフード上に膨張展開されるエアバッグと、前記フードアウタパネルと前記フードインナパネルとの間に配置されると共に前記インフレータ及び前記エアバッグを含むエアバッグモジュールのフードへの固定部位を補強し、更に少なくとも前記フード上方側からの衝突荷重に対して剛性が高い高剛性部が、格納時におけるエアバッグの車両前方側の端部と展開時におけるエアバッグの車両前方側の端部との間の領域に配置された補強部材と、を有することを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記補強部材の高剛性部は展開時におけるエアバッグの車両前方側の端部よりも所定距離だけ車両後方側へオフセットして配置されている、ことを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記補強部材は、バッグ膨出用開口部の車両前方側の端縁に沿うように車両幅方向に沿って延在する長尺状の部材として構成されている、ことを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記補強部材はフードアウタパネルとフードインナパネルとを繋ぐ方向を高さ方向とする縦壁部を高剛性部として備えており、当該縦壁部はフードアウタパネルの下面近傍に至る高さを有しかつフードアウタパネルへの固定部位を支持する固定支持部と、当該固定支持部よりも低い高さとされかつフードアウタパネルへの固定部位を支持しない非固定支持部と、を含んで構成されている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項5記載の本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記補強部材の高さ方向の所定位置には、衝突体からの荷重入力時に当該荷重の入力部位を座屈変形させるための脆弱部が設けられている、ことを特徴としている。
【0011】
請求項6記載の本発明は、請求項4記載の車両用フードエアバッグ装置において、前記縦壁部における固定支持部には、衝突体からの荷重入力時に当該固定支持部を座屈させる脆弱部が設けられている、ことを特徴としている。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、歩行者等の衝突体と衝突すると、ガス発生手段によってガスが噴出される。このため、フードアウタパネルとフードインナパネルとの間に折り畳み状態で格納されたエアバッグが膨張してカバーを下面側から押圧し、これをフード外方へ展開させる。これにより、フード後端側に形成されたバッグ膨出用開口部が開放され、エアバッグが少なくともフード上に膨張展開される。その結果、膨張展開したエアバッグに歩行者等の衝突体が受け止められることにより、衝突時の衝突エネルギーが吸収されて歩行者等の衝突体が受ける反力を下げることができる。
【0013】
ここで、本発明では、フードアウタパネルとフードインナパネルとの間にインフレータ及びエアバッグを含むエアバッグモジュールのフードへの固定部位を補強する補強部材が配設されており、かかる補強部材が備える高剛性部を、格納時におけるエアバッグの車両前方側の端部と展開時におけるエアバッグの車両前方側の端部との間の領域に配置したので、衝突体が展開したエアバッグによる保護エリアの範囲内に衝突してくれば、衝突体が補強部材の高剛性部に直接的に当接するのを回避することができる。より正確に説明すると、衝突体と補強部材の高剛性部との間には展開したエアバッグが介在することになるので、仮に衝突体が補強部材の高剛性部の真上又はその近傍に衝突してきたとしても、衝突体が有する衝突エネルギーはエアバッグによって吸収される。従って、衝突体が補強部材の高剛性部から大きな反力を受けることはない。
【0014】
請求項2記載の本発明によれば、補強部材の高剛性部が展開時におけるエアバッグの車両前方側の端部よりも所定距離だけ車両後方側へオフセットして配置されているので、衝突体がフード斜め上方から衝突してきた場合、即ち衝突体がエアバッグによる保護エリアの内側へ食い込むように衝突してきた場合にも、衝突体が補強部材の補強部に直接的に当接するのを回避することができる。
【0015】
請求項3記載の本発明によれば、補強部材がバッグ膨出用開口部の車両前方側の端縁に沿うように車両幅方向に沿って延在する長尺状の部材として構成されているので、エアバッグの車両幅方向に対する略全域で補強部材による補強効果が得られる。従って、エアバッグの膨張展開時の反力に対する支持力を上げることができ、その分、エアバッグの展開形状が狙い通りになる(展開精度が向上される)。
【0016】
請求項4記載の本発明によれば、補強部材は縦壁部を備えており、この縦壁部が高剛性部となる。
【0017】
ここで、本発明では、縦壁部に固定支持部と非固定支持部とを設け、相対的に高さが高い固定支持部においてフードアウタパネルへの固定部位を支持し、相対的に高さが低い非固定支持部ではフードアウタパネルへの固定部位を支持しないこととしたので、非固定支持部においてはフードアウタパネルとの間には隙間が形成されることなる。従って、この隙間をフードアウタパネルのエネルギー吸収ストロークとして利用することができる。換言すれば、補強部材をその長手方向の全長に亘ってフードアウタパネルに固定する構成に比し、衝突荷重を受けた際にフードアウタパネルが変形し易くなる。
【0018】
請求項5記載の本発明によれば、補強部材の高さ方向の所定位置に衝突体からの荷重入力時に当該荷重の入力部位を座屈変形させるための脆弱部を設けたので、脆弱部の周辺部が座屈変形することによるエネルギー吸収効果が得られると同時に衝突体への荷重反力が低減される。
【0019】
請求項6記載の本発明によれば、縦壁部における固定支持部に、衝突体からの荷重入力時に当該固定支持部を座屈させる脆弱部を設けたので、剛性が高い縦壁部の固定支持部から衝突体へ入力される荷重反力を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、請求項1記載の車両用フードエアバッグ装置は、フードアウタパネルとフードインナパネルとの間に、インフレータ及びエアバッグを含むエアバッグモジュールのフードへの固定部位を補強する補強部材を配設し、かかる補強部材が備える高剛性部を、格納時におけるエアバッグの車両前方側の端部と展開時におけるエアバッグの車両前方側の端部との間の領域に配置したので、フード下面側に高剛性の部材を備えている場合において当該高剛性の部材から衝突体への荷重入力量を低減することができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項2記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、補強部材の高剛性部を展開時におけるエアバッグの車両前方側の端部よりも所定距離だけ車両後方側へオフセットして配置したので、衝突体への荷重入力量を低減することが可能な有効範囲を拡大することができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項3記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、補強部材をバッグ膨出用開口部の車両前方側の端縁に沿うように車両幅方向に沿って延在する長尺状の部材として構成したので、エアバッグの展開形状が狙い通りとなり、その結果、衝突体が歩行者であった場合の歩行者保護性能を高めることができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項4記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、補強部材はフードアウタパネルとフードインナパネルとを繋ぐ方向を高さ方向とする縦壁部を高剛性部として備えており、フードアウタパネルの下面近傍に至る高さを有しかつフードアウタパネルへの固定部位を支持する固定支持部と、当該固定支持部よりも低い高さとされかつフードアウタパネルへの固定部位を支持しない非固定支持部と、を含んで縦壁部を構成したので、衝突体が歩行者であった場合の歩行者保護性能を高めることができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項5記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、衝突体が歩行者であった場合の歩行者保護性能をより一層高めることができるという優れた効果を有する。
【0025】
請求項6記載の本発明に係る車両用フードエアバッグ装置は、衝突体が歩行者であった場合の歩行者保護性能をより一層高めることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図3を用いて、本発明に係る車両用フードエアバッグ装置の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0027】
図2には、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10が搭載された車両12の外観が斜視図にて示されている。この図に示されるように、車両用フードエアバッグ装置10は、エンジンルーム72(図1参照)を開閉するフード14の後端側に車両幅方向に沿って配設されている。
【0028】
図1には、組付状態の車両用フードエアバッグ装置10を車両前後方向に沿って切断した状態を側方から観た縦断面図が示されている。この図に示されるように、フード14は、フード外板を構成すると共にフード14の意匠面を構成するフードアウタパネル16を備えている。フードアウタパネル16の後端側略中央部には、車両幅方向を長辺方向とする平面視で略矩形状のバッグ膨出用開口部18が形成されている。
【0029】
フードアウタパネル16の裏面側には、フード内板を構成するフードインナパネル20がフードアウタパネル16に対して所定距離だけ車両下方側に離間した位置に配設されている。このフードインナパネル20におけるバッグ膨出用開口部18と対向する位置には、バッグ膨出用開口部18と同様形状のフードインナ側開口部26が形成されている。このフードインナ側開口部26を利用して、車両用フードエアバッグ装置10のエアバッグモジュール22が配設されている。
【0030】
エアバッグモジュール22は、フードインナ側開口部26を下方側から閉塞する高強度のロアプレート24を備えている。ロアプレート24は平面視でフードインナ側開口部26よりも一回り大きく形成されており、フードインナ側開口部26に対して車両下方側から当接配置されることにより、フードインナ側開口部26を閉塞している。
【0031】
フードインナパネル20におけるフードインナ側開口部26の前縁側には側面視で略Z字状に形成された補強部材としての前側リインフォース28の下端部28Aが当接配置されており、ロアプレート24の前端部24Aと共にボルト30及びナット32でフードインナパネル20に共締めされている。同様に、フードインナパネル20におけるフードインナ側開口部26の後縁側には側面視で略Z字状に形成された後側リインフォース34の下端部34Aが当接配置されており、ロアプレート24の後端部24Bと共にボルト30及びナット32でフードインナパネル20に共締めされている。また、前側リインフォース28の上端部28B及び後側リインフォース34の上端部34Bは、接着剤(マスチック)36等の固定手段によりフードアウタパネル16の裏面に固定されている。
【0032】
なお、これらの前側リインフォース28及び後側リインフォース34は、フードインナパネル20にフードインナ側開口部26を形成したことによる剛性低下分を補強し、エアバッグモジュール22をフードアウタパネル16及びフードインナパネル20から成るフード14の閉空間に固定するために設置されている。
【0033】
上述したロアプレート24におけるフードインナ側開口部26に臨む部位は、車両下方側へ若干凹んだ形状を成しており、この若干凹んだ部分に上方側が開放されて前壁46A及び後壁46Bを備えた略箱体形状のエアバッグケース46が取り付けられている。
【0034】
エアバッグケース46内には、略円柱形状に形成されたガス発生手段としてのインフレータ58が車両幅方向を長手方向として配置されていると共に、所定の折り畳み方によって折り畳まれたエアバッグ60が収容されている。正確には、インフレータ58は、折り畳み状態のエアバッグ60内に収容された状態でエアバッグケース46及びロアプレート24に固定されている。
【0035】
なお、インフレータ58としては機械着火式、電気着火式のいずれを使用してもよく、又ガス発生剤封入タイプ、高圧ガス封入タイプのいずれでも適用可能である。また、インフレータ58の周壁部の所定位置には、複数のガス噴出孔がインフレータ58の周方向に形成されている。
【0036】
また、図2に二点鎖線で示されるように、膨張展開したエアバッグ60は、フード後端側、カウル、ウインドシールドガラス64の下端部等を覆うように車両幅方向に扁平に展開する本体部60Aと、この本体部60Aと連通されると共に本体部60Aの両サイドからフロントピラー66に沿って延在しフロントピラー66の下部を覆う延長部60Bとを備えている。
【0037】
エアバッグケース46の開放側端部、即ちバッグ膨出用開口部18は、カバーとしての金属製のエアバッグドア48によって開放可能に塞がれている。具体的には、バッグ膨出用開口部18はフードアウタパネル16の一般面16Aに対して車両下方側へ一段下がる段差形状に形成されており、エアバッグドア48はこの段差部50に納まる厚さ及び大きさに形成されている。エアバッグドア48の後端部48Aには、当該後端部48Aを含めて略弓字状に形成された展開ヒンジ部48Bが一体に形成されている。展開ヒンジ部48Bはエアバッグドア48の幅方向に所定の間隔で設けられている。これに対応して、前述した後側リインフォース34における展開ヒンジ部48Bと対向する位置にはブラケット52が固定されており、このブラケット52に展開ヒンジ部48Bの下端部48B1がボルト54及びナット56によって固定されている。従って、エアバッグドア48は、前面衝突時になるとバッグ膨張圧によって、ボルト54及びナット56の締結点を展開中心として、展開ヒンジ部48Bの前後逆向きのコ字状を成すヒンジ中間部48B2を塑性変形させながら、車両後方側へ片開きに展開される構成である。
【0038】
ここで、補強部材としての前側リインフォース28は、前述したように縦断面形状が略Z字形状を成しており、プレス成形によって製作されている。また、前側リインフォース28は、下端部28Aと上端部28Bとの間に略車両上下方向に沿って延在する高剛性部としての縦壁部28Cを備えている。この縦壁部28Cは、フード14の斜め上方側からの衝突荷重(衝突荷重の荷重作用方向を図1に矢印Fで示す)に対して剛性が高い高剛性部となる。そこで、本実施形態では、かかる縦壁部28Cを、格納時におけるエアバッグ60の車両前方側の端部60C(正確には折り畳み状態のエアバッグ60の車両前方側の端部60Cの前後方向位置を規定するエアバッグケース46の前壁46A)と展開時におけるエアバッグ60の車両前方側の端部60Dとによって囲まれた車両前後方向の領域S内に配置しており、この点に本実施形態の大きな特徴がある。
【0039】
補足すると、領域Sは、仮にフードアウタパネル16を平面とみなした場合、エアバッグケース46の前壁46Aの前面を通る垂線s1と、展開したエアバッグ60の本体部60Aの車両前方側の端部60Dを通る垂線s2とで画定される車両前後方向の領域を指している。衝突体がフードアウタパネル16の真上から衝突してくる場合には、この垂線s1と垂線s2との間の領域S内に前側リインフォース28の縦壁部28Cが配置されていればよいという意味である。なお、この領域Sは、エアバッグ60による保護エリアの一部を成している。
【0040】
これに対し、衝突体の衝突荷重の作用方向Fは、フードアウタパネル16に立てた垂線ではなく、垂線よりも前傾した所定の傾斜方向を指しており、前記領域Sの内側(車両後方側)へ食い込む方向(領域Sを車両後方側へ侵食する方向)を意味している。これは実際の衝突体の衝突方向が所定角度傾斜した方向から衝突してくることが多いことを考慮したものである。従って、この衝突体の衝突荷重の作用方向Fを基準にすると、前側リインフォース28の縦壁部28Cは、衝突荷重の作用方向Fとエアバッグケース46の前壁46Aとで囲まれた領域に存在していればよいという意味である。なお、衝突荷重の作用方向を何度にするかは、任意に決定される。要するに、ある傾斜角度を決定した場合に、その傾斜方向よりも車両後方側でかつエアバッグケース46の前壁46Aよりも車両前方側の領域に、前側リインフォース28の剛性の高い部分(縦壁部28C)を配置することが肝要ということである。
【0041】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0042】
歩行者等の衝突体と前面衝突すると、インフレータ58が作動して複数のガス噴出孔からガスが噴出される。このため、エアバッグケース46内に折り畳み状態で格納されたエアバッグ60が膨張してエアバッグドア48が下面側から押圧される。エアバッグドア48に作用するバッグ膨張圧が所定位置に達すると、エアバッグドア48は展開ヒンジ部48Bを中心としてフード外方側(ウインドシールドガラス64側)へ展開させる。これにより、フード後端側に形成されたバッグ膨出用開口部18が開放され、図2に二点鎖線で示されるようにエアバッグ60が膨張展開される。その結果、膨張展開したエアバッグ60の本体部60A或いは延長部60Bに歩行者等の衝突体が受け止められることにより、前面衝突時の衝突エネルギーが吸収されて歩行者等の衝突体が受ける反力を下げることができる。
【0043】
ここで、本実施形態では、フードアウタパネル16とフードインナパネル20との間に、エアバッグモジュール22のフード14への固定部位を補強する前側リインフォース28及び後側リインフォース34を配設し、このうちの前側リインフォース28の縦壁部28Cを、エアバッグケース46の前壁46Aと展開時におけるエアバッグ60の車両前方側の端部60Cとの間の領域S内に配置したので、衝突体が展開したエアバッグ66による保護エリアの範囲内に衝突してくれば、衝突体が前側リインフォース28の縦壁部28Cに直接的に当接するのを回避することができる。より正確に説明すると、衝突体と前側リインフォース28の縦壁部28Cとの間には展開したエアバッグ60が介在することになるので、仮に衝突体が前側リインフォース28の縦壁部28Cの真上又はその近傍に衝突してきたとしても、衝突体が有する衝突エネルギーはエアバッグ60によって吸収される。従って、衝突体が前側リインフォース28の縦壁部28Cから大きな反力を受けることはない。その結果、本実施形態によれば、フードアウタパネル16の下面側に高剛性の部材を備えている場合において当該高剛性の部材から衝突体への荷重入力量を低減することができる。
【0044】
なお、後側リインフォース34については、平面視でエアバッグ60の本体部60Aによって完全に覆われるので、上記のような配慮をする必要がない。
【0045】
また、本実施形態では、前側リインフォース28の縦壁部28Cが展開時におけるエアバッグ60の車両前方側の端部60Dよりも所定距離だけ車両後方側へオフセットして配置されているので、衝突体がフードアウタパネル16の斜め上方(例えば、図1の矢印F方向)から衝突してきた場合、即ち衝突体がエアバッグ60による保護エリアの内側へ食い込むように衝突してきた場合にも、衝突体が前側リインフォース28の縦壁部28Cに直接的に当接するのを回避することができる。その結果、本実施形態によれば、衝突体への荷重入力量を低減することが可能な有効範囲を拡大することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、前側リインフォース28(及び後側リインフォース34)がバッグ膨出用開口部18の車両前方側の端縁に沿って車両幅方向に沿って延在する長尺状の部材として構成されているので、エアバッグ60の車両幅方向に対する略全域で前側リインフォース28(及び後側リインフォース34)による補強効果が得られる。従って、エアバッグ60の膨張展開時の反力に対する支持力を上げることができ、その分、エアバッグ60の展開形状が狙い通りになる(展開精度が向上される)。その結果、本実施形態によれば、エアバッグの展開形状にバラツキがある場合に比べて、衝突体が歩行者であった場合の歩行者保護性能を高めることができる。
【0047】
〔第2実施形態〕
以下、図4を用いて、本発明に係る車両用フードエアバッグ装置の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0048】
図4には、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10の要部に係る前側リインフォース80の斜視図が示されている。この図に示されるように、この第2実施形態では、前側リインフォース80の上部に所定の間隔で凹部82が形成されており、これにより全体としては等脚台形状の固定支持部としての凸部84と逆等脚台形状の非固定支持部としての凹部82とが交互に形成された形状となっている。なお、この前側リインフォース80も、前述した前側リインフォース28と同様に縦断面形状がZ字状とされており、下端部80A、上端部80B、縦壁部80Cを備えている。
【0049】
上記凸部84は凹部82よりも高さが高く、前側リインフォース80のフードインナパネル20への組付状態では凸部84の上端に位置する上端部80B(「フードアウタパネルへの固定部位」に相当)はフードアウタパネル16の下面に近接配置される程度の高さを有している。この上端部80Bを接着剤(マスチック)36でフードアウタパネル16の裏面に接着しており、当該上端部80Bを凸部84が支持する構成となっている。この状態では、フードアウタパネル16の下面と凹部82の底部82Aとの間に所定高さの隙間86が形成されている。
【0050】
(作用・効果)
上記構成によれば、前側リインフォース80の上部に凸部84と凹部82とを交互に形成し、凸部84の上端に位置する上端部80Bをフードアウタパネル16の裏面に接着剤36で固定し、凹部82にはフードアウタパネル16の裏面から離間させて隙間86を設けたので、衝突体がフード上方側から衝突してきた場合に、エアバッグ60で衝突体の衝突エネルギーを吸収することができると共に、凹部82の形成位置ではアウタパネル16が隙間86を潰す方向へ変形することができる。つまり、隙間86をフードアウタパネル16のエネルギー吸収ストローク(ストローク)として利用することができる。従って、衝突体が歩行者であった場合の歩行者保護性能を高めることができる。
【0051】
〔第3実施形態〕
以下、図5を用いて、本発明に係る車両用フードエアバッグ装置の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態、第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0052】
図5には、本実施形態に係る車両用フードエアバッグ装置10の要部に係る前側リインフォース90の斜視図が示されている。この図に示されるように、この第3実施形態では、第2実施形態の前側リインフォース80の形状をそのまま踏襲しており、更に凸部84の中央部に脆弱部としての略矩形状の開口92が形成されている。この開口92は凸部84の形成位置でのみ形成されており、凹部82の形成位置には形成されていない。
【0053】
なお、この前側リインフォース90も、前述した前側リインフォース80と同様に縦断面形状がZ字状とされており、下端部90A、上端部90B、縦壁部90Cを備えている。
【0054】
(作用・効果)
上記構成によれば、衝突体がフード上方側から衝突してきた場合に、エアバッグ60で衝突体の衝突エネルギーを吸収することができると共に、開口92が形成されたことにより脆弱化(低剛性化)された凸部84側でも積極的に座屈変形が生じてエネルギー吸収がなされる。また、凹部82の形成位置では、アウタパネル16は隙間86を潰す方向へ変形することができる。従って、フードアウタパネル16のエネルギー吸収ストロークが、実質的には前側リインフォース90の長手方向の全域に確保することができる。その結果、本実施形態によれば、衝突体が歩行者であった場合の歩行者保護性能を高めることができる。
【0055】
〔第4実施形態〕
以下、図6を用いて、本発明に係る車両用フードエアバッグ装置の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0056】
図6には、車両用フードエアバッグ装置10の縦断面構造が示されている。この実施形態では、前述した第1実施形態における前側リインフォース28の長手方向の両端部(車両幅方向の両端部)が車両前方側へ延出されている点に特徴がある。
【0057】
具体的には、上述した各実施形態の前側リインフォース28、80、90では、高剛性部たる縦壁部28C、80C、90Cがいずれもその長手方向の全長に亘って衝突体の衝突荷重の作用方向である矢印Fよりも車両後方側に控えた位置に配設されていたが、この実施形態では、長手方向の両端部については矢印Fや領域Sを越えて車両前方側へ延出されており、当該上端延長部28Dをフード前後方向に沿って延在する長尺状のフードインナリインフォース94等のフード構成部材に固定(スポット溶接)されている。
【0058】
(作用・効果)
上記構成によっても、前述した第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。また、第2実施形態及び第3実施形態に本構造を適用すれば、第2実施形態及び第3実施形態で説明した作用・効果が得られる。
【0059】
加えて、この実施形態では、前側リインフォース28の長手方向の中間部は下端部28Aと上端部28Bの二点でフード14に固定されているのに対し、前側リインフォース28の長手方向の両端部は下端部28A、上端部28B、上端延長部28Dの三点でフード14に固定されているので、長尺状部材である前側リインフォース28の車両幅方向周りの捩り剛性を高めることができ、ひいてはフードアウタパネル16の支持剛性を向上させることができるというメリットがある。その結果、本実施形態によれば、衝突体が歩行者であった場合の歩行者保護性能の向上とフードアウタパネル16の支持剛性の向上(ひいては、乗員等がフードアウタパネル16上に手を載せたときにべこつくのを防止)の両立を図ることができる。
【0060】
〔本実施形態の補足説明〕
上述した第1実施形態から第3実施形態では、前側リインフォース28、80、90の全体を衝突体の衝突荷重の作用方向Fよりも車両後方側に配置したが、これに限らず、少なくとも衝突荷重に対する剛性が高い高剛性部が領域Sの範囲内、衝突荷重の作用方向Fよりも車両後方側に存在していればよい。従って、第4実施形態の前側リインフォース28のようにその長手方向の両端部28Dが前記領域Sや衝突荷重の作用方向Fよりも車両前方側に存在する構成であっても本発明に含まれる。
【0061】
また、脆弱部としては開口92を形成する構成以外にも種々の構成を採ることができる。例えば、開口92の形成部位の板厚を薄くする方法や、縦壁部28Cの高さ方向の中間部付近に板厚方向(車両前後方向)に凹む凹部を縦壁部28Cの全長に亘って設ける構成を採ってもよい。この場合、衝突荷重が入力されると、薄肉部や凹部が縦壁部28Cの変形起点となり、脆弱部として作用する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】組付状態の車両用フードエアバッグ装置を車両前後方向に沿って切断した状態を側方から観た縦断面図(図2の1‐1線断面図)である。
【図2】図1に示される車両用フードエアバッグ装置が搭載された車両の外観を、エアバッグが展開した状態も含めて示す斜視図である。
【図3】図1に示される前側リインフォースの全体斜視図である。
【図4】第2実施形態に係る前側リインフォースの全体斜視図である。
【図5】第3実施形態に係る前側リインフォースの全体斜視図である。
【図6】第4実施形態に係る組付状態の車両用フードエアバッグ装置を車両前後方向に沿って切断した状態を側方から観た縦断面図(図1に対応する縦断面図)である。
【符号の説明】
【0063】
10 車両用フードエアバッグ装置
12 車両
14 フード
16 フードアウタパネル
18 バッグ膨出用開口部
20 フードインナパネル
22 エアバッグモジュール
28 前側リインフォース(補強部材)
28C 縦壁部(高剛性部)
30 ボルト
32 ナット
36 接着剤
48 エアバッグドア(カバー)
58 インフレータ(ガス発生手段)
60 エアバッグ
60C 車両前方側の端部(格納時におけるエアバッグの車両前方側の端部)
60D 車両前方側の端部(展開時におけるエアバッグの車両前方側の端部)
80 前側リインフォース(補強部材)
80C 縦壁部(高剛性部)
82 凹部(非固定支持部)
84 凸部(固定支持部)
90 前側リインフォース(補強部材)
90C 縦壁部(高剛性部)
92 開口(脆弱部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードアウタパネルにおけるフード後端側に形成されたバッグ膨出用開口部を開放可能に覆うカバーと、
このカバーの下方側に配置され、衝突体との衝突時にガスを噴出するガス発生手段と、
フードアウタパネルと当該フードアウタパネルの下面側に離間して配置されたフードインナパネルとの間に折り畳み状態で格納され、前記ガス発生手段から発生したガスの供給を受けて膨張し、前記カバーをフード外方へ展開させて少なくともフード上に膨張展開されるエアバッグと、
前記フードアウタパネルと前記フードインナパネルとの間に配置されると共に前記インフレータ及び前記エアバッグを含むエアバッグモジュールのフードへの固定部位を補強し、更に少なくとも前記フード上方側からの衝突荷重に対して剛性が高い高剛性部が、格納時におけるエアバッグの車両前方側の端部と展開時におけるエアバッグの車両前方側の端部との間の領域に配置された補強部材と、
を有することを特徴とする車両用フードエアバッグ装置。
【請求項2】
前記補強部材の高剛性部は展開時におけるエアバッグの車両前方側の端部よりも所定距離だけ車両後方側へオフセットして配置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項3】
前記補強部材は、バッグ膨出用開口部の車両前方側の端縁に沿うように車両幅方向に沿って延在する長尺状の部材として構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項4】
前記補強部材はフードアウタパネルとフードインナパネルとを繋ぐ方向を高さ方向とする縦壁部を高剛性部として備えており、
当該縦壁部はフードアウタパネルの下面近傍に至る高さを有しかつフードアウタパネルへの固定部位を支持する固定支持部と、当該固定支持部よりも低い高さとされかつフードアウタパネルへの固定部位を支持しない非固定支持部と、を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項5】
前記補強部材の高さ方向の所定位置には、衝突体からの荷重入力時に当該荷重の入力部位を座屈変形させるための脆弱部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用フードエアバッグ装置。
【請求項6】
前記縦壁部における固定支持部には、衝突体からの荷重入力時に当該固定支持部を座屈させる脆弱部が設けられている、
ことを特徴とする請求項4記載の車両用フードエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−168584(P2007−168584A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368320(P2005−368320)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】