説明

車両用ブレーキ液圧制御装置およびその製造方法

【課題】 製造工程を簡略化することができる構成の車両用ブレーキ液圧制御装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 オリフィスとして機能するシリンダ状部分10の小径部10aの両側にフィルタ部11を備える。このフィルタ部11をシリンダ状部分10と一体化することでオリフィス構成部品1を構成し、オリフィス構成部品1を管路3に固定すれば、フィルタ部11も共に管路3内に固定される構成となる。そして、オリフィス構成部品1を製造するに際し、フィルタ部11のシリンダ状部分10への固定工程を溝部10bの形成工程と兼用する。これにより、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造工程の簡略化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ液圧を制御するための油圧回路内にオリフィスが備えられている車両用ブレーキ液圧制御装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1において、ブレーキ液圧を制御するための油圧回路が形成されたブロックがシールプレートを介してマスタシリンダに接続されてなる車両用ブレーキ液圧制御装置が提案されている。このような車両用ブレーキ液圧制御装置におけるブロックには、例えば特許文献2に示されるような各種制御弁が備えられるブレーキ液圧制御用の油圧回路が形成される。
【0003】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置において、油圧回路内にオリフィスが備えられる場合がある。このような油圧回路におけるオリフィスの近傍の断面図を図9に示す。
【0004】
図9に示されるように、ブロックJ1に形成された管路J2内に、オリフィスJ3aが形成されたシリンダ状のオリフィス構成部品J3を管路J2の入口J2aから圧入することで、油圧回路内にオリフィスJ3aが備えられた構成となっている。そして、ブロックJ1に形成された管路J2とマスタシリンダJ4に形成された管路J5とが同軸上に配置されていない場合があることから、シールプレートJ6に備えられた枠状のシール部材J7の内側に、両管路J2、J5の入口J2a、J5aが含まれるような配置とされることで、両管路J2、J5がブレーキ液の流路として接続された状態とされている。
【0005】
このような構成の車両用ブレーキ液圧制御装置では、管路J2に挿入されたオリフィス構成部品J3がブロックJ1から抜けてしまうことが考えられる。このような場合、オリフィス構成部品J3がマスタシリンダJ4の壁面に接してしまい、オリフィス構成部品J3の外周壁面によってブレーキ液の流路が遮断されてしまう。このため、オリフィス構成部品J3の外周壁面にスリット状の溝部J3bが形成され、仮に管路J2からオリフィス構成部品J3が抜けても、溝部J3bにて流路が確保できるようになっている。
【特許文献1】特開平8−11697号公報
【特許文献2】特開平11−139273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しなしながら、上記のようにオリフィス構成部品J3をブロックJ1に固定した車両用ブレーキ液圧制御装置では、オリフィス構成部品J3が管路J2から抜けたときのことを考慮した流路確保用の溝部を形成するための加工工程が必要になる。
【0007】
さらに、オリフィス構成部品J3のブロックJ1への挿入方向が一方向に決まっており、オリフィス構成部品J3が正しい方向に向いていることを確認した上でブロックJ1へ圧入しなければならないという確認工程も必要になる。
【0008】
また、上記の構成では、オリフィスJ3aの両側にフィルタが配置されていないが、異物によってオリフィスJ3aが塞がれる可能性があることを考慮すると、オリフィスJ3aの両側にフィルタを配置するのが好ましい。このようにオリフィスJ3aの両側にフィルタを設ける場合、フィルタの配置工程が必要になる。
【0009】
このように、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造のために、様々な工程が必要になり、製造工程の煩雑化の要因となっている。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、製造工程を簡略化することができる構成の車両用ブレーキ液圧制御装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、オリフィス構成部品(1)は、中空部を有するシリンダ形状で構成され、シリンダ形状の中空部においてオリフィスが形成されたシリンダ状部分(10)を有し、シリンダ状部分のうち、ブロックにおける管路の入口(3a)側の端部には、該シリンダ状部分の内径から外径に至るまで連続するようにカシメ形成された溝部(10b)が備えられていることを特徴としている。
【0012】
このように、カシメによってオリフィス構成部品におけるシリンダ状部分の端部に溝を形成することで、溝部を容易に形成することが可能となる。
【0013】
この場合、請求項10に示されるように、シリンダ状部分の両端部にカシメにより溝部を形成することもできる。
【0014】
このように、シリンダ状部分の両端部に溝部をカシメ形成したものとしている。これにより、オリフィス構成部品のどちらの端部から管路に挿入しても構わない構成とすることができ、オリフィス構成部品の挿入方向の確認工程を省略することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、オリフィス構成部品(1)は、中空部を有するシリンダ形状で構成され、シリンダ形状の中空部においてオリフィスが形成されたシリンダ状部分(10)を有し、シリンダ状部分の先端とブロックにおける入口とが共にカシメられることで、オリフィス構成部品が第1管路に固定されていると共に、シリンダ状部分における先端に溝部(10b)が形成された構成とされていることを特徴としている。
【0016】
このように、シリンダ状部分の第1管路内への固定がカシメによって行われ、そのカシメによってシリンダ状部分に対して溝部を形成した構造としている。このような構成の車両用ブレーキ液圧制御装置では、シリンダ状部分の第1管路内への固定工程と、シリンダ状部分での溝部の形成工程とを兼ねることができ、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造工程の簡略化を図ることが可能となる。
【0017】
この場合、請求項3に示されるように、シリンダ状部分の端部と共に、ブロックにおける管路の入口がカシメるようにすれば、オリフィス構成部品を管路内により強固に固定することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、シリンダ状部分の中空部におけるオリフィスの両側に配置されたフィルタ部(11)とを備えており、 フィルタ部は、溝部(10b)を形成する際にカシメによって突出した部分によってシリンダ状部分に固定されていることを特徴としている。
【0019】
このように、シリンダ状部分のうちカシメによって突出した部分によってフィルタ部を固定することが可能となる。このような構成のオリフィス構成部品を車両用ブレーキ液圧制御装置に用いれば、フィルタ部の固定工程と溝部の形成工程を兼ねることができ、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造工程の簡略化を図ることが可能となる。
【0020】
これら請求項1ないし4に記載の発明は、請求項5に示されるように、第1管路と第2管路とが、互いの軸がずれた配置とされるような車両用ブレーキ液圧制御装置に適用されると好適である。
【0021】
請求項6に記載の発明では、シリンダ状部分の両先端における外径は、該シリンダ状部分の長手方向の中央位置よりも小さいことを特徴としている。
【0022】
このように、シリンダ状部分の両先端における外径をシリンダ状部分の長手方向の中央位置よりも小さくすることで、シリンダ状部分の中央位置が第1管路に圧入される構造となる。
【0023】
請求項7に記載の発明では、シリンダ状部分の両先端における外径は、第1管路のうち、オリフィス構成部品が挿入される部位の内径よりも小さくされていることを特徴としている。
【0024】
このように、シリンダ状部分の両先端における外径を、第1管路のうち、オリフィス構成部品が挿入される部位の内径よりも小さくすることで、シリンダ状部分の両端部がカシメられても、そのときに突出する部分によってシリンダ状部分が第1管路に挿入され難くなることを防止することができる。
【0025】
なお、請求項1ないし7に記載の発明において、溝部の数は、請求項8に示されるように、単数であっても複数であっても、いずれでも構わない。
【0026】
請求項9に記載の発明では、オリフィス構成部品のうち、溝部を除いた部分は、オリフィスを中心として軸方向に対称な構成となっていることを特徴としている。
【0027】
このように、オリフィス構成部品のうち、溝部を除いた部分を、オリフィスを中心として左右対称な構成とすれば、オリフィス構成部品を第1管路に挿入する際に、オリフィス構成部品の挿入方向を確認する必要性がなくなる。このため、オリフィス構成部品をこのような構成にすることで、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造工程の簡略化を図ることができる。
【0028】
請求項11に記載の発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法であって、中空部を有するシリンダ形状で構成され、シリンダ形状の中空部においてオリフィスが形成されたシリンダ状部分(10)を用意する工程と、このシリンダ状部分の両先端を突起が形成された冶具(20)でカシメることにより、シリンダ状部分の先端に溝部(10b)を形成する工程と、溝部が形成されたシリンダ状部分をオリフィス構成部材として、第1管路に固定する工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0029】
このような製造方法によれば、シリンダ状部分の両先端に溝部を形成しておくことにより、オリフィス構成部品を管路に挿入する際に、その挿入方向の確認工程を省略することが可能となる。これにより、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造工程の簡略化を図ることが可能となる。
【0030】
請求項12に記載の発明では、シリンダ状部分の中空部におけるオリフィスの両側にフィルタ部(11)を配置する工程を有し、シリンダ状部分の先端に溝部(10b)を形成する工程では、カシメによってシリンダ状部分における突出した部分によりフィルタ部をシリンダ状部分に固定するようになっており、オリフィス構成部品を第1管路に固定する工程では、フィルタ部がシリンダ状部分に固定されたものをオリフィス構成部材として、第1管路に固定することを特徴としている。
【0031】
このような製造方法によれば、フィルタ部が配置されたシリンダ状部分の先端を突起が形成された冶具(20)でカシメることにより、シリンダ状部分の先端に溝部(10b)を形成すると共に、該カシメによってシリンダ状部分における突出した部分によりフィルタ部をシリンダ状部分に固定している。これにより、フィルタ部の固定工程と溝部の形成工程を兼ねることができ、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造工程の簡略化を図ることが可能となる。
【0032】
請求項13に記載の発明では、中空部を有するシリンダ形状で構成され、シリンダ形状の中空部においてオリフィスが形成されたシリンダ状部分(10)をオリフィス構成部品として用意する工程と、シリンダ状部分を第1管路に挿入したのち、シリンダ状部分の先端を突起が形成された冶具(20)でカシメることにより、シリンダ状部分の先端に溝部(10b)を形成すると共に、シリンダ状部分をブロックに固定する工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0033】
これにより、オリフィス構成部品への溝部の形成と、ブロックへの固定を同時に行うことができる。このため、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造工程の簡略化を図ることが可能となる。
【0034】
請求項14に記載の発明では、シリンダ状部分をブロックに固定する工程では、シリンダ状部分を第1管路に挿入したのち、シリンダ状部分の先端とブロックにおける第1管路の入口と冶具でカシメることにより、シリンダ状部分の先端に溝部(10b)を形成すると共に、該カシメによってシリンダ状部分をブロックに固定するを特徴としている。
【0035】
このような製造方法によれば、シリンダ状部分を第1管路に挿入したのち、シリンダ状部分の先端とブロックにおける第1管路の入口とを突起が形成された冶具(20)でカシメることにより、シリンダ状部分の先端に溝部(10b)を形成すると共に、該カシメによってシリンダ状部分をブロックに固定している。これにより、より強固に固定できると共に、シリンダ状部分の第1管路内への固定工程と、シリンダ状部分での溝部の形成工程とを兼ねることができ、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造工程の簡略化を図ることが可能となる。
【0036】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0038】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態を適用した車両用ブレーキ液圧制御装置について説明する。本実施形態における車両用ブレーキ液圧制御装置は、油圧回路が構成されたブロックと管路構成部品となるマスタシリンダとをシールプレートを介して連結したものである。この車両用ブレーキ液圧制御装置の全体構成に関しては、上述した特許文献1に示されるものと同様であるため、ここでは、その特徴部分となるオリフィス構成部品についてのみ説明する。
【0039】
図1は、車両用ブレーキ液圧制御装置におけるオリフィス構成部品1の近傍の部分拡大断面図である。また、図2は、オリフィス構成部品1の斜視図である。以下、これらの図を参照してオリフィス構成部品の詳細について説明する。
【0040】
図1に示されるようにオリフィス構成部品1は、ブロック2に形成された管路3内に、管路3の入口3aから圧入されることで、ブロック2とマスタシリンダ4およびシールプレート5に備えられたシール部材5a等によって構成される油圧回路内に組み込まれている。
【0041】
オリフィス構成部品1は、中空部を有するシリンダ状部分10とシリンダ状部分10内に保持された2つのフィルタ部11とを有した構成となっている。
【0042】
シリンダ状部分10は、その中央部において、中空部の幅を狭めた小径部10aを有しており、その小径部10aがオリフィスとして機能するようになっている。このような形状のシリンダ状部分10における小径部10aの両側それぞれにフィルタ部11が1つずつ配置されている。そして、シリンダ状部分11における両端に3つずつ溝部10bが形成されている。各溝部10bは、シリンダ状部分10を両端面側からカシメることで形成されたもので、シリンダ状部分10の内壁と外壁とを貫通するような構成、つまり内径から外径に至るまで連続した構成とされている。このため、溝部10bの周囲において、シリンダ状部分10の壁面は、シリンダ状部分10の中空部側に突出した形状となっており、その突出した部分によって各フィルタ部11がシリンダ状部分10から抜けないようになっている。
【0043】
また、シリンダ状部分10の外径は、シリンダ状部分10の長手方向(軸方向)の中央位置において他の部位よりも大きくされている。この外形が大きくされた部分が管路3の内径よりも大きくされているため、オリフィス構成部品1を管路3内に挿入したときに、この部分が管路3に圧入され、オリフィス構成部品1が管路3内において固定される。換言すれば、シリンダ状部分10のうち圧入される部分に対して両端部の外径が小さくされている。このため、シリンダ状部分10の両端部がカシメられても、そのときに突出する部分によってシリンダ状部分10が管路3に挿入され難くなることを防止することができる。
【0044】
なお、ブロック2に形成された管路3は、オリフィス構成部品1が挿入される側となる入口3aからオリフィス構成部品1の長手方向のサイズ分奥に入った位置において、段差3bが形成された段つき形状となっており、段差3bよりも入口3a側の方が奥側よりも内径が大きくされている。この段差3bにより、オリフィス構成部品1が管路3内の所定位置に保持され、管路3の奥側に入り込み過ぎないようになっている。
【0045】
フィルタ部11は、円筒形状で構成され、その円筒形状の中央部においてフィルタ11aが備えられている。フィルタ11aには、所定の開口幅とされた複数の孔が形成されており、このフィルタ11bにより、オリフィスとして機能する小径部10aが異物によって詰まらないようにされている。
【0046】
ここで、図1から判るように、オリフィス構成部品1が配置された管路3は、マスタシリンダ4に形成された管路6と同軸上に形成されておらず、紙面上下方向において互いの軸がずれた状態となっている。
【0047】
このため、管路3からオリフィス構成部品1が抜けてしまった場合、仮に、溝部10bが形成されていない構成であれば、図3に示されるように、マスタシリンダ5の壁面に接したオリフィス構成部品1によってブレーキ液の流路が遮断されることになる。しかしながら、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置に備えられたオリフィス構成部品1には、シリンダ状部分10の端面に溝部10bが形成されているため、この溝部10bによってブレーキ液の流路が確保される。
【0048】
以上のように構成される車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法について、図4に示すオリフィス構成部品1の製造工程図を参照して説明する。
【0049】
まず、オリフィス構成部品1を製造すべく、シリンダ状部分10を用意すると共に、2つのフィルタ部11を用意する。このとき用意するシリンダ状部分10は、まだ溝部10bが形成される前のものであり、図4に示されるように、シリンダ状部分10の小径部10aを中心とした左右対称の形状をしている。
【0050】
そして、図4に示されるように、フィルタ部11の1つをシリンダ状部分10における一方の入口から挿入する。この後、冶具20を用いて、フィルタ部11が挿入されたシリンダ状部分10の先端をカシメる。図5(a)、(b)は、冶具20の正面図および斜視図を示したものである。これらの図に示されるように、冶具20の先端には、断面三角形の突起20aが形成されており、この突起20aによりシリンダ状部分10の先端がカシメられる。このカシメられた部分が溝部10となる。
【0051】
続いて、このようなシリンダ状部分10へのフィルタ部11への固定工程を再度行うことで、2つのフィルタ部11がシリンダ状部分10に固定される。これにより、オリフィス構成部品1が完成する。このように製造されたオリフィス構成部品1は、両先端に溝部10bが3つずつ、互いに同じ角度(120度)ずつずれて形成されたものとなる。そして、両端部に形成された3つずつの溝部10bは、形成された位置がシリンダ状部分10の中心軸を中心とした周方向にずれたものとなっているかもしれないが、それを除けば、オリフィス構成部品1の形状はシリンダ状部分10の小径部10aを中心として左右対称となる。
【0052】
この後、油圧回路が形成されたブロック2を用意し、ブロック2に形成された管路3内にオリフィス構成部品1を挿入する。このとき、オリフィス構成部品1がシリンダ状部分10の小径部10aを中心とした左右対称の形状となっていることから、オリフィス構成部品1はいずれの先端から挿入されても構わない。
【0053】
そして、管路3の内径よりもオリフィス構成部品1におけるシリンダ状部分10の一部の外径の方が大きくされていることから、シリンダ状部分10が管路3に圧入されることになる。これにより、管路3内にオリフィス構成部品1が固定される。
【0054】
この後の製造工程図に関しては図示しないが、シールプレート5を介してマスタシリンダ4とブロック2とを固定し、図示しない各種制御弁やモータなどをブロック2に取り付けることで車両用ブレーキ液圧制御装置が完成する。
【0055】
以上説明した本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置では、オリフィスとして機能するシリンダ状部分10の小径部10aの両側にフィルタ部11を備えた構成としている。そして、このフィルタ部11をシリンダ状部分10と一体化することでオリフィス構成部品1を構成し、オリフィス構成部品1を管路3に固定ることで、フィルタ部11も共に管路3内に固定される構成としている。また、フィルタ部11のシリンダ状部分10への固定工程を溝部10bの形成工程と兼用したものとしている。
【0056】
したがって、フィルタ部11を管路3に個々に組み付ける場合と比べてフィルタ部11の管路3への固定工程を簡素化することができる。フィルタ部11のシリンダ状部分10への固定工程と溝部10bの形成工程を1度に行うことができるため、これら各工程を別工程とする場合と比べて製造工程を簡素化することができる。
【0057】
さらに、シリンダ状部分10の両端部に形成された3つの溝部10bの形成位置が異なるものの、オリフィス構成部品1をシリンダ状部分10の小径部10aを中心とした左右対称の形状としている。このため、管路3にオリフィス構成部品1を挿入する際に、いずれの先端から挿入されても構わないようにでき、オリフィス構成部品1の挿入方向を確認する必要性を無くすことができる。
【0058】
このように、オリフィス構成部品1を本実施形態に示す構成とすることで、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造工程の簡略化を図ることが可能となる。これにより、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造コスト削減を図ることも可能となる。
【0059】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図6は、車両用ブレーキ液圧制御装置におけるオリフィス構成部品1の近傍の部分拡大断面図である。以下、この図を用いて、本実施形態における車両用ブレーキ液圧制御装置について説明する。
【0060】
本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置は、第1実施形態に対して、オリフィス構成部品1の構成を変更し、かつ、オリフィス構成部品1の管路3への固定方法を変更したものである。その他の構成については、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0061】
図6に示されるように、本実施形態のオリフィス構成部品1は、第1実施形態で説明したシリンダ状部分10のみで構成されている。このシリンダ状部分10には、第1実施形態と同様の小径部10aが備えられているが、溝部10bは、シリンダ状部分10の両端のうちの一方、具体的には管路3の入口3a側にしか備えられていない。
【0062】
そして、本実施形態のオリフィス構成部品1は、段差3bに接触するまで管路3に嵌め込まれ、管路3の入口3a側において、ブロック3の一部と共にシリンダ状部分10がカシメられることで、管路3内に固定されている。
【0063】
このように構成された車両用ブレーキ液圧制御装置においても、溝部10bが管路3の入口3a側に形成されていることから、管路3からオリフィス構成部品1が抜けてマスタシリンダ4の壁面に接したとしても、溝部10bによりブレーキ液の流路が確保されるようになっている。
【0064】
以上のように構成される車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法について、図7に示すオリフィス構成部品1の組み付け工程図を参照して説明する。
【0065】
まず、オリフィス構成部品1を管路3内に挿入する。そして、第1実施形態の図5に示した冶具20を用いて、管路3の入口3a近傍と共にシリンダ状部分10の端部をカシメることで、オリフィス構成部品1を管路3に固定する。これにより、オリフィス構成部品1の管路3への固定工程と溝部10bの形成工程が同時に行われる。
【0066】
この後の製造工程図に関しては図示しないが、シールプレート5を介してマスタシリンダ4とブロック2とを固定し、図示しない各種制御弁やモータなどをブロック2に取り付けることで車両用ブレーキ液圧制御装置が完成する。
【0067】
以上説明した本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置では、オリフィス構成部品1の管路3への固定工程と溝部10bの形成工程とを兼用したものとしている。このため、オリフィス構成部品1の管路3への固定工程と溝部10bの形成工程とを個々に行う場合と比べて、製造工程の簡素化を図ることが可能となる。
【0068】
また、オリフィス構成部品1をシリンダ状部分10の小径部10aを中心とした左右対称の形状としている。このため、管路3にオリフィス構成部品1を挿入する際に、いずれの先端から挿入されても構わないようにでき、オリフィス構成部品1の挿入方向を確認する必要性を無くすことができる。
【0069】
このように、本実施形態に示すように、オリフィス構成部品1を管路3に固定する際に溝部10bを同時に形成することで、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造工程の簡略化を図ることが可能となる。これにより、車両用ブレーキ液圧制御装置の製造コスト削減を図ることも可能となる。
【0070】
(他の実施形態)
上記第1、第2実施形態では、シリンダ状部分10の端部に設ける溝部10bが3つずつとしたが、この数は単なる例示であり、単数であっても、複数であっても構わない。
【0071】
上記第2実施形態では、第1実施形態で示したフィルタ部11を備えていないオリフィス構成部品1を例に挙げて説明したが、オリフィス構成部品1を管路3に固定する際に、シリンダ状部分10と共にフィルタ部11を管路3内に挿入し、オリフィス構成部品1の固定と共に、フィルタ部11の固定を行うことも可能である。
【0072】
さらに、上記第1実施形態では、オリフィス構成部品1にフィルタ部11が備えられたものを例に挙げて説明したが、フィルタ部11を無くしたものとしても良い。つまり、図8に示されるように、溝部10bが形成されたシリンダ状部分10を管路に圧入しても良い。
【0073】
この場合、フィルタ部11を固定する工程と溝部10bを形成する工程とを兼ねることができなくなるが、少なくともオリフィス構成部品1を管路3に挿入する際の挿入方向の確認工程を省略することができるという効果がある。
【0074】
また、上記第2実施形態では、溝部10bを形成する際にブロック2における管路3の入口3aもカシメられるようにしている。しかしながら、管路3の入口3aは、必ずしもカシメなくても良い。つまり、溝部10bを形成する際のカシメがシリンダ状部分10に対して行われた場合、溝部10bの形成に伴ってオリフィス構成部品1を管路3内に挿入固定することができるため、これらを同時に行うことが可能となる。ただし、管路3の入口3aを共にカシメるようにすれば、より強固に固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用ブレーキ液圧制御装置におけるオリフィス構成部品の近傍の断面構成を示す図である。
【図2】オリフィス構成部品の斜視図である。
【図3】オリフィス構成部品が管路から抜けた場合の模式図である。
【図4】オリフィス構成部品の製造工程を示した図である。
【図5】オリフィス構成部品の製造に用いられる冶具の模式図であって、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態における車両用ブレーキ液圧制御装置におけるオリフィス構成部品の近傍の断面構成を示す図である。
【図7】図6に示す車両用ブレーキ液圧制御装置におけるオリフィス構成部品の固定工程を示した模式図である。
【図8】他の実施形態で示すオリフィス構成部品の管路への組み付けの様子を示した図である。
【図9】従来の車両用ブレーキ液圧制御装置におけるオリフィス構成部品の近傍の断面構成を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1…オリフィス構成部品、2…ブロック、3…管路(第1管路)、3a…入口、3b…段差、4…マスタシリンダ、5…シールプレート、5a…シール部材、6…管路(第2管路)、10…シリンダ状部分、10a…小径部、10b…溝部、11…フィルタ部、11a…フィルタ、20…冶具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧回路における第1管路(3)が形成されたブロック(2)と、
前記ブロックに形成された前記第1管路と接続される第2管路(6)が形成された管路構成部品(4)と、
前記ブロックと前記管路構成部品との間に配置されたシールプレート(5)と、
前記ブロックに形成された前記管路内に固定されたオリフィス構成部品(1)とを有する車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記オリフィス構成部品は、
中空部を有するシリンダ形状で構成され、前記シリンダ形状の前記中空部においてオリフィスが形成されたシリンダ状部分(10)を有し、
前記シリンダ状部分のうち、前記ブロックにおける前記管路の入口(3a)側の端部には、該シリンダ状部分の内径から外径に至るまで連続するようにカシメ形成された溝部(10b)が備えられていることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
油圧回路における第1管路(3)が形成されたブロック(2)と、
前記ブロックに形成された前記第1管路と接続される第2管路(6)が形成された管路構成部品(4)と、
前記ブロックと前記管路構成部品との間に配置されたシールプレート(5)と、
前記ブロックに形成された前記管路内に固定されたオリフィス構成部品(1)とを有する車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記オリフィス構成部品は、
中空部を有するシリンダ形状で構成され、前記シリンダ形状の前記中空部においてオリフィスが形成されたシリンダ状部分(10)を有し、
前記シリンダ状部分のうち、前記ブロックにおける前記管路の入口(3a)側の端部がカシメられることで、前記オリフィス構成部品が前記第1管路に固定されていると共に、前記シリンダ状部分における前記先端に該シリンダ状部分の内径から外径に至るまで連続する溝部(10b)が形成された構成とされていることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記シリンダ状部分の端部と共に、前記ブロックにおける前記管路の入口がカシメられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記オリフィス構成部品は、
前記シリンダ状部分の前記中空部における前記オリフィスの両側に配置されたフィルタ部(11)を備えており、
該フィルタ部は、前記溝部(10b)を形成する際にカシメによって突出した部分によって前記シリンダ状部分に固定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
前記第1管路と前記第2管路とは、互いの軸がずれた配置となっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
前記シリンダ状部分の両先端における外径は、該シリンダ状部分の長手方向の中央位置よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項7】
前記シリンダ状部分の両先端における外径は、前記第1管路のうち、前記オリフィス構成部品が挿入される部位の内径よりも小さくされていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項8】
前記溝部は、前記シリンダ状部分の先端に単数もしくは複数設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項9】
前記オリフィス構成部品のうち、前記溝部を除いた部分は、前記オリフィスを中心として軸方向に対称な構成となっていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項10】
前記オリフィス構成部品における前記シリンダ状部分の両端部に前記溝部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項11】
油圧回路における第1管路(3)が形成されたブロック(2)と、
前記ブロックに形成された前記第1管路と接続される第2管路(6)が形成された管路構成部品(4)と、
前記ブロックと前記管路構成部品との間に配置されたシールプレート(5)と、
前記ブロックに形成された前記管路内に固定されたオリフィス構成部品(1)とを有する車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法であって、
中空部を有するシリンダ形状で構成され、前記シリンダ形状の前記中空部においてオリフィスが形成されたシリンダ状部分(10)を用意する工程と、
前記シリンダ状部分の先端を突起が形成された冶具(20)でカシメることにより、前記シリンダ状部分の先端に溝部(10b)を形成する工程と、
前記溝部が形成された前記シリンダ状部分を前記オリフィス構成部材として、前記第1管路に固定する工程と、を含んでいることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法。
【請求項12】
前記シリンダ状部分の前記中空部における前記オリフィスの両側にフィルタ部(11)を配置する工程を有し、
前記シリンダ状部分の先端に溝部(10b)を形成する工程では、前記カシメによって前記シリンダ状部分における突出した部分により前記フィルタ部を前記シリンダ状部分に固定するようになっており、
前記オリフィス構成部品を前記第1管路に固定する工程では、前記フィルタ部が前記シリンダ状部分に固定されたものを前記オリフィス構成部材として、前記第1管路に固定することを特徴とする請求項11に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法。
【請求項13】
油圧回路における第1管路(3)が形成されたブロック(2)と、
前記ブロックに形成された前記第1管路と接続される第2管路(6)が形成された管路構成部品(4)と、
前記ブロックと前記管路構成部品との間に配置されたシールプレート(5)と、
前記ブロックに形成された前記管路内に固定されたオリフィス構成部品(1)とを有する車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法であって、
中空部を有するシリンダ形状で構成され、前記シリンダ形状の前記中空部においてオリフィスが形成されたシリンダ状部分(10)を前記オリフィス構成部品として用意する工程と、
前記シリンダ状部分を前記第1管路に挿入したのち、前記シリンダ状部分の先端を突起が形成された冶具(20)でカシメることにより、前記シリンダ状部分の先端に溝部(10b)を形成すると共に、前記シリンダ状部分を前記ブロックに固定する工程と、を含んでいることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法。
【請求項14】
前記シリンダ状部分を前記ブロックに固定する工程では、前記シリンダ状部分を前記第1管路に挿入したのち、前記シリンダ状部分の先端と前記ブロックにおける前記第1管路の入口と前記冶具でカシメることにより、前記シリンダ状部分の先端に溝部(10b)を形成すると共に、該カシメによって前記シリンダ状部分を前記ブロックに固定するを特徴とする請求項13に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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