説明

車両用ブレーキ装置

【課題】倍力液圧室に背面を臨ませたマスタピストンがケーシングに摺動可能に収容されるマスタシリンダと、液圧発生源と、リザーバと、ブレーキ操作部材からのブレーキ操作入力に応じて前記液圧発生源の出力液圧を調圧して前記倍力液圧室に作用せしめる調圧弁手段とを備え、前記マスタシリンダが車輪ブレーキに接続される車両用ブレーキ装置において、調圧弁手段を複数の異なる車種にそのまま適用し得るようにして部品の種類の増大を回避し得るとともに調圧弁手段の構成を単純化する。
【解決手段】調圧弁手段7が、電気的な制御によって液圧発生源6の出力液圧を調圧して倍力液圧室9に作用せしめるべく構成され、倍力液圧室9およびリザーバR間に、調圧弁手段7の不調時に倍力液圧室9の液圧をリザーバR側に解放するための解放弁103が介設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倍力液圧室に背面を臨ませたマスタピストンがケーシングに摺動可能に収容されるマスタシリンダと、液圧発生源と、リザーバと、ブレーキ操作部材からのブレーキ操作入力に応じて前記液圧発生源の出力液圧を調圧して前記倍力液圧室に作用せしめる調圧弁手段とを備え、前記マスタシリンダが車輪ブレーキに接続される車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用ブレーキ装置は、たとえば特許文献1等により既に知られている。
【特許文献1】特開2002−264795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来のものでは、調圧弁手段が、ブレーキ操作入力に応じて機械式に作動するように構成されており、調圧弁手段の構成が複雑となるだけでなく、ブレーキ操作入力に対して所定の圧力でしか調圧できないので、仕様の異なる車種に適用する際には、その車種に応じて倍力比やストローク等を考慮して新たな調圧弁手段を準備しなければならず、部品の種類が増えてしまう。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、仕様の異なる車種にそのまま適用し得るようにして部品の種類の増大を回避し得るとともに構成を単純化した調圧弁手段を備える車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、倍力液圧室に背面を臨ませたマスタピストンがケーシングに摺動可能に収容されるマスタシリンダと、液圧発生源と、リザーバと、ブレーキ操作部材からのブレーキ操作入力に応じて前記液圧発生源の出力液圧を調圧して前記倍力液圧室に作用せしめる調圧弁手段とを備え、前記マスタシリンダが車輪ブレーキに接続される車両用ブレーキ装置において、前記調圧弁手段が、電気的な制御によって前記液圧発生源の出力液圧を調圧して前記倍力液圧室に作用せしめるべく構成され、前記倍力液圧室および前記リザーバ間に、前記調圧弁手段の不調時に前記倍力液圧室の液圧を前記リザーバ側に解放するための解放弁が介設されることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記調圧弁手段が、前記液圧発生源側からのブレーキ液の流通だけを許容して前記液圧発生源および前記倍力液圧室間に設けられる一方向弁と、前記倍力液圧室および前記リザーバ間に介設されるリニアソレノイド弁とで構成されることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記調圧弁手段が、前記液圧発生源および前記倍力液圧室間に介設される第1リニアソレノイド弁と、前記倍力液圧室および前記リザーバ間に介設される第2リニアソレノイド弁とから成ることを特徴とする。
【0008】
さらに請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記解放弁が常閉型電磁弁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、調圧弁手段が電気的に制御駆動されるものであるので、車種に応じて倍力比を自在に変化させることが可能であり、簡単な構成で仕様の異なる多くの種類の車両に適用することが可能であり、部品点数の増大を回避することができる。しかも調圧弁手段が何らかの原因で不調となったときには、解放弁を開弁することで倍力液圧室の液圧を解放することができる。
【0010】
また請求項2または3記載の発明によれば、調圧弁手段の構成を単純化することができる。
【0011】
さらに請求項4記載の発明によれば、通常のブレーキ作動時に解放弁は消磁、閉弁状態を維持すればよいので、消費電力を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図3は本発明の第1実施例を示すものであり、図1は車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図、図2は液圧モジュレータの構成を示す液圧回路図、図3は図1の要部拡大図である。
【0014】
先ず図1において、四輪車両のブレーキ装置は、タンデム型であるマスタシリンダMAと、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル5から入力されるブレーキ操作力に応じて液圧発生源であるポンプ6の液圧を調圧して前記マスタシリンダMAに作用せしめる調圧弁手段7と、前記ブレーキペダル5の操作ストロークをシミュレートするストロークシミュレータ8Aとを備える。
【0015】
前記マスタシリンダMAは、倍力液圧室9に背面を臨ませるとともに後方側にばね付勢される後部マスタピストン10と、後方側にばね付勢されつつ後部マスタピストン10の前方に配置される前部マスタピストン11とを備え、後部マスタピストン10および前部マスタピストン11は第1のケーシング12に摺動自在に嵌合される。
【0016】
前記第1のケーシング12には、端壁12aで前端が閉じられた第1シリンダ孔13が設けられる。前部マスタピストン11は、前端を開放した有底円筒状に形成されており、前記端壁12aとの間に前部出力液圧室14を形成して第1シリンダ孔13に摺動可能に嵌合される。また後部マスタピストン10は、前記前部マスタピストン11との間に後部出力液圧室15を形成して第1シリンダ孔13に摺動可能に嵌合される。しかも後部マスタピストン10には、後部出力液圧室13側を開放した第1凹部16と、倍力液圧室9側を開放した第2凹部17とが、相互間に隔壁10aを介在させて同軸に設けられる。
【0017】
前部出力液圧室14には、有底円筒状である前記前部マスタピストン11の閉塞端および前記端壁12a間に縮設される前部戻しばね18が、前部マスタピストン11を後方側に付勢するばね力を発揮するようにして収容され、後部出力液圧室13には、後部マスタピストン10の隔壁10aおよび前部マスタピストン11間に縮設される後部戻しばね19が、後部マスタピストン10を後方側に付勢するようにして収容される。
【0018】
第1シリンダ孔13の内周には、後部マスタピストン10の外周に摺接する後部リップシール22と、該後部リップシール22よりも後方で後部マスタピストン10の外周に摺接する環状シール部材23とが装着されており、後部リップシール22および前記環状シール部材23間で、第1のケーシング12および後部マスタピストン10間に通じる後部解放ポート24が第1のケーシング12に設けられる。前記後部解放ポート24は、リザーバRの第2液溜め室26に接続されており、後部リップシール22は、後部出力液圧室15の液圧が、後部リップシール22および前記環状シール部材23間で後部マスタピストン10および第1のケーシング12間に生じる間隙の液圧すなわち第2液溜め室26の液圧よりも低下したときには第2液溜め室26から後部出力液圧室15側へのブレーキ液の流通を許容する。また後部マスタピストン10には、その後退限位置(図1で示す位置)で前記後部解放ポート24を後部出力液圧室15に通じさせるリリーフ孔28が設けられる。
【0019】
第1シリンダ孔13の内周には、前部マスタピストン11の外周に摺接する前部リップシール29と、該前部リップシール29よりも後方で前部マスタピストン11の外周に摺接する環状シール部材30とが軸方向に間隔をあけて装着されており、前部リップシール29および前記環状シール部材30間で第1シリンダ孔13の内周および前部マスタピストン11の外周間に生じる間隙に通じる前部解放ポート31が第1のケーシング12に設けられ、この前部解放ポート31はリザーバRの第1液溜め室25に接続される。而して前部リップシール29は、前部出力液圧室14の液圧が、前部リップシール29および前記環状シール部材30間で前部マスタピストン11および第1のケーシング12間に生じる間隙の液圧すなわち第1液溜め室25の液圧よりも低下したときには第1液溜め室25から前部出力液圧室14側へのブレーキ液の流通を許容する。また前部マスタピストン11には、その後退限で前記前部解放ポート31を前部出力液圧室14に通じさせるリリーフ孔32が設けられる。
【0020】
第1のケーシング12には、後部マスタピストン10の前進作動に応じて高圧となる後部出力液圧室15の液圧を出力する後部出力ポート33と、前部マスタピストン11の前進作動に応じて高圧となる前部出力液圧室14の液圧を出力する前部出力ポート34とが設けられる。しかも後部出力ポート33は液圧モジュレータ35を介して右前輪および左後輪用車輪ブレーキBA,BBに接続され、前部出力ポート34は前記液圧モジュレータ35を介して左前輪および右後輪用車輪ブレーキBC,BDに接続される。また前部出力ポート34には液圧センサ36が接続される。
【0021】
図2において、液圧モジュレータ35は、後部出力ポート33および右前輪用車輪ブレーキBA間に介設される常開型電磁弁37Aと、後部出力ポート33および左後輪用車輪ブレーキBB間に介設される常開型電磁弁37Bと、後部出力ポート33側へのブレーキ液の流通を許容して前記両常開型電磁弁37A,37Bにそれぞれ並列に接続される一方向弁38A,38Bと、右前輪用車輪ブレーキBAおよび第1リザーバ40A間に介設される常閉型電磁弁39Aと、左後輪用車輪ブレーキBBおよび第1リザーバ40A間に介設される常閉型電磁弁39Bと、前部出力ポート34および左前輪用車輪ブレーキBC間に介設される常開型電磁弁37Cと、前部出力ポート34および右後輪用車輪ブレーキBD間に介設される常開型電磁弁37Dと、前部出力ポート34側へのブレーキ液の流通を許容して前記両常開型電磁弁37C,37Dにそれぞれ並列に接続される一方向弁38C,38Dと、左前輪用車輪ブレーキBCおよび第2リザーバ40B間に介設される常閉型電磁弁39Cと、右後輪用車輪ブレーキBDおよび第2リザーバ40B間に介設される常閉型電磁弁39Dと、第1リザーバ40Aの液圧をくみ上げて後部出力ポート33側に戻す第1ポンプ41Aと、第2リザーバ40Bの液圧をくみ上げて前部出力ポート34側に戻す第2ポンプ41Bと、第1および第2ポンプ41A,41Bを共通に駆動する電動モータ42と、第1ポンプ41Aおよび後部出力ポート33間に介設される第1オリフィス43Aと、第2ポンプ41Bおよび前部出力ポート34間に介設される第2オリフィス43Bとを備える。
【0022】
このような液圧モジュレータ35によれば、後部および前部出力ポート33,34から出力されるブレーキ液圧を自在に調圧することができ、ブレーキ操作時のアンチロックブレーキ制御を行うことができる。
【0023】
再び図1において、ストロークシミュレータ8Aは、第1シリンダ孔13と同軸であって第1シリンダ孔13よりも大径の第2シリンダ孔47を有して第1のケーシング12の後部に液密にかつ同軸に結合される第2のケーシング48と、前記マスタシリンダMAにおける後部マスタピストン10の後部を臨ませる前記倍力液圧室9を第1のケーシング12の後端との間に形成して第2シリンダ孔47に摺動可能に嵌合されるバックアップピストン49と、第2のケーシング48が後端に備える内向き鍔部48aに前方から当接する外向き鍔部50aを軸方向中間部に有してバックアップピストン49内に前半部を嵌合させる円筒状のスリーブ50と、該スリーブ50内に摺動可能に嵌合されるシミュレータピストン51と、シミュレータピストン51に相対摺動可能に嵌合される入力ピストン52と、該入力ピストン52および前記シミュレータピストン51間に介装される弾性体53と、第1のケーシング12および前記バックアップピストン49間に縮設されるばね54とを備える。
【0024】
バックアップピストン49は、前記スリーブ50の前半部を嵌合せしめるようにして後方に開放した第1摺動孔55を有しており、第2のケーシング48の後端の内向き鍔部48aに前記スリーブ50の外向き鍔部50aを介して当接することで後退限位置が規制されるようにして第2シリンダ孔47に摺動可能に嵌合される。このバックアップピストン49の前端には当接突部49aが同軸に突設されており、該当接突部49aは、前記マスタシリンダMAにおける後部マスタピストン10に設けられる第2凹部17に、第2凹部17の閉塞端すなわち隔壁10aに先端を当接させることを可能として挿入される。
【0025】
また前記バックアップピストン49の外周には、第2シリンダ孔47の内周に摺接する一対の環状シール部材56,57が軸方向に間隔をあけて装着されており、両環状シール部材56,57間で第2シリンダ孔47の内面に開口する連通孔58が第2のケーシング48に設けられ、この連通孔58はアキュムレータ59のアキュムレータ室61に連通される。
【0026】
アキュムレータ59は、両端を閉じた円筒状のハウジング60と、該ハウジング60の一端との間にアキュムレータ室61を形成して該ハウジング60に摺動可能に嵌合される有底円筒状のアキュムレータピストン62と、該アキュムレータピストン62を前記アキュムレータ室61の容積を減少する側に付勢するばね力を発揮してハウジング60の他端およびアキュムレータピストン62間に縮設されるアキュムレータばね63とを備え、比較的小型に構成される。
【0027】
而して前記倍力液圧室9および前記アキュムレータ59間には入口弁66が介設されるものであり、この入口弁66はバックアップピストン49の前部に内蔵される。
【0028】
図3において、バックアップピストン49には、シミュレータピストン51の前端に設けられる嵌合突部51aを液密にかつ相対摺動可能に嵌合せしめる第2摺動孔67が、第1摺動孔55よりも小径にして第1摺動孔55の前端に同軸に連なるようにして設けられ、前記嵌合突部51aの前端を当接させ得るようにして後方に臨む環状段部68を第2摺動孔67の前端との間に形成する弁孔69と、該弁孔69の前端に通じる弁室70と、該弁室70を前記弁孔69との間に挟んで弁孔69と同軸に延びる連通孔71とが、バックアップピストン49の前部から当接突部49aにかけて設けられ、連通孔71の前端は倍力液圧室9に常時通じるようにして前記当接突部49aの前端に開口する。
【0029】
入口弁66は、前記弁孔69の前端周縁部に形成される弁座72に着座して弁孔69を閉鎖し得るようにして弁室70に収容される弁体73と、弁体73を弁座72に着座させるように付勢するばね力を発揮して当接突部49aおよび弁体73間に縮設される弁ばね74と、前記弁体73に連設されて弁孔69に同軸に挿通される開弁ロッド75とを備えるものであり、開弁ロッド75の後端は、シミュレータピストン51における嵌合突部51aの前端に当接される。
【0030】
而して前記嵌合突部51aの前端および前記環状段部68間でバックアップピストン49内には液室76が形成されており、この液室76を前記連通孔58に連通させる連通路77がバックアップピストン49に設けられる。
【0031】
前記液室76にはアキュムレータ59の保持圧が作用し、閉弁位置にある前記弁体73には前記液室76の液圧による液圧力が開弁方向に作用する。一方、前記閉弁位置にある弁体73には、連通孔71を介して倍力液圧室9に連通している弁室70の液圧による液圧力および弁ばね74のばね力が閉弁方向に作用しており、入口弁66は、液室76すなわちアキュムレータ59の液圧から前記弁室70すなわち倍力液圧室9の液圧を減算した液圧による開弁方向の液圧力が前記弁ばね74のばね力に打ち勝ったときに開弁する。
【0032】
またブレーキペダル5によるブレーキ操作初期には、入力ピストン52から弾性体53を介してシミュレータピストン51にはバックアップピストン49に対して前進する方向の力が作用するものであり、そのシミュレータピストン51および嵌合突部51aのバックアップピストン49に対する前進作動によって開弁ロッド75が押圧され、それによっても入口弁66が開弁する。
【0033】
すなわち入口弁66は、アキュムレータ59側の液圧が倍力液圧室9側の液圧よりも前記弁ばね74のばね荷重に対応した設定差圧を超えて高くなるのに応じて開弁するとともに、ブレーキ操作初期にブレーキペダル5から機械的に作用する押圧力によっても開弁する。
【0034】
再び図1において、液圧発生源であるポンプ6はリザーバRの第3液溜め室27からブレーキ液をくみ上げるものであり、このポンプ6の吐出口は、少なくともポンプ6の非作動時には該ポンプ6側へのブレーキ液の流れを阻止する弁である第1一方向弁78と、第3オリフィス79と、ブレーキ操作初期を除くブレーキ操作状態で開弁する開閉弁である常開型電磁弁80とを介して、アキュムレータ59のアキュムレータ室61に接続される。
【0035】
また第2のケーシング48には、倍力液圧室9に通じる供給ポート81が設けられており、この供給ポート81に液圧路82が接続される。而して調圧弁手段7は、前記ポンプ6からのブレーキ液の流通だけを許容するようにして前記ポンプ6および前記液圧路82間に設けられる第2一方向弁83と、前記液圧路82および前記リザーバRの第3液溜め室27間に設けられるリニアソレノイド弁84とで構成されており、前記液圧路82には、倍力液圧室9の液圧を検出する液圧センサ109が接続される。
【0036】
また車両運転者の任意操作に応じて開弁する解放弁103が、前記倍力液圧室9に通じる液圧路82と、前記リザーバRの第3液溜め室27との間に、リニアソレノイド弁84と並列にして設けられており、該解放弁103は常閉型電磁弁である。
【0037】
シミュレータピストン51には、後方側に開放した有底の第3摺動孔85が同軸に設けられており、第3摺動孔85の内周に摺接する環状シール部材86が外周に装着されている前記入力ピストン52は第3摺動孔85に摺動可能に嵌合され、ブレーキペダル5に連なる入力ロッド87の前端部が入力ピストン52に首振り可能に連接される。すなわち入力ピストン52には、ブレーキペダル5の操作に応じたブレーキ操作力が入力ロッド87を介して入力され、そのブレーキ操作力の入力に応じて入力ピストン52は前進作動する。
【0038】
弾性体53は、外力の作用しない自然な状態では第3摺動孔85の内径よりも小径の外径を有するようにしてゴム等の弾性材料によって円筒状に形成されるものであり、弾性体53を貫通するガイド軸88の前端がシミュレータピストン51における第3摺動孔85の前端壁に嵌合される。また入力ピストン52には、前端を開放した有底の第4摺動孔89が設けられており、前記ガイド軸88の後部は第4摺動孔89に摺動可能に嵌合される。
【0039】
ところで前記弾性体53の外周および第3摺動孔85の内周間には環状液室90が形成されており、この環状液室90に通じる連通孔91がシミュレータピストン51に設けられる。しかもシミュレータピストン51の外周には、前記連通孔91を軸方向両側から挟むようにして一対の環状のシール部材92,93がスリーブ50の内周に摺接するようにして装着され、シミュレータピストン51の軸方向移動にかかわらずそれらのシール部材92,93間でスリーブ50の内面に内端を開口するとともに外端を外向き鍔部50aの外周に開口する連通孔94が、スリーブ50に設けられる。
【0040】
またスリーブ50における外向き鍔部50aの外周には、前記連通孔94を両側から挟む環状シール部材95,96が第2シリンダ孔47の内周に摺接するようにして装着され、第2のケーシング48には、前記連通孔94に通じる解放ポート97が設けられる。またバックアップピストン49の後部に装着される環状シール部材57と、前記外向き鍔部50aの外周に装着されている一対の環状シール部材95,96のうち前方側の環状シール部材95との間で、第2シリンダ孔47の内面に開口する解放孔98が第2のケーシング48に設けられており、この解放孔98は、バックアップピストン49と、スリーブ50およびシミュレータピストン51との間に生じる空間を常時外部に連通させている。
【0041】
前記リザーバRの第3液溜め室27と前記解放ポート97との間には、前記アキュムレータ60のアキュムレータ室61に第4オリフィス99を介して接続されるパイロット室100を有するパイロット作動型の開閉弁101が介設される。この開閉弁101は、パイロット室100の液圧が充分に高いときには、前記解放ポート97を第3液溜め室27に連通させるように開弁するものの、液圧発生源であるポンプ6が不調となってパイロット室100の液圧が低下したときには閉弁して前記解放ポート97および第3液溜め室27間を遮断し、ストロークシミュレータ8Aにおける環状液室90を液圧ロック状態に保持するものである。また前記開閉弁101には、前記環状液室90の液圧を検出する液圧センサ102が付設される。
【0042】
ところで調圧弁手段7におけるリニアソレノイド弁84の作動は、ブレーキペダル5のブレーキ操作量に応じて制御されるものであり、ブレーキ操作量を検出する検出手段104は、たとえば前記入力ピストン52に取付けられたブラシ105と、前記入力ピストン52の軸方向移動に応じて前記ブラシ105の摺接位置を変化させるようにして入力ピストン52の軸方向と平行に延びる一対の電気導体106…とを備え、該電気導体106…は、第2のケーシング48の後端に取付けられる支持部材107に取付けられる。
【0043】
次にこの第1実施例の作用について説明すると、非ブレーキ操作状態では、常開型電磁弁80は開弁状態にあり、アキュムレータ59は、入口弁66を開弁させるのに必要な設定差圧以下の液圧を保持した状態にある。この状態で、ブレーキペダル5を踏み込んでブレーキ操作すると、ポンプ6の作動が開始されるとともに、入力ピストン52が弾性体53を圧縮しつつ前進し、ブレーキペダル5の踏み込み操作に伴う機械的な押圧力がシミュレータピストン51から作用するのに応じて入口弁66が開弁する。それにより、倍力液圧室9に液圧が作用してマスタシリンダMAのブレーキ作動が開始されることになる。
【0044】
ところで、前記入力ピストン52の前進によって弾性体53の周囲の環状液室90の容積が減少するが、開閉弁101がアキュムレータ59からの液圧作用に応じて開弁しているので、環状液室90内の圧力が増大することはなく、ブレーキペダル5の踏み込み初期に該ブレーキペダル5に作用する反力は弾性体53からの弾発力だけである。
【0045】
而してポンプ6の作動に伴ってポンプ6の吐出圧が倍力液圧室9に作用することになり、ブレーキペダル5によるブレーキ操作量が検出手段104で検出されると、調圧弁手段7のリニアソレノイド弁84が、倍力液圧室9の液圧をブレーキ操作量に応じた液圧に調圧するように作動する。この際、常開型電磁弁80は閉弁され、倍力液圧室9の液圧増加に伴って入口弁66は閉弁する。
【0046】
倍力液圧室9の液圧増大に応じてタンデム型のマスタシリンダMAでは、後部および前部マスタピストン10,11が後部および前部戻しばね19,18のばね力に抗して前進し、後部および前部出力液圧室15,14で生じた液圧が後部および前部出力ポート33,34から出力される。すなわちマスタシリンダMAの後部および前部マスタピストン10,11を倍力作動せしめ、倍力されたブレーキ液圧を各車輪ブレーキBA〜BDに作用せしめることができる。
【0047】
しかも液圧発生源はポンプ6だけで構成され、肉厚の厚いハウジングが用いられるアキュムレータは使用しなくても良くなるので、車体へのレイアウト性を高めることができる。またポンプ6の非作動時には該ポンプ6側へのブレーキ液の流れを阻止する第1一方向弁78を介してポンプ6にアキュムレータ59が接続され、倍力液圧室9およびアキュムレータ59間に、アキュムレータ59側の液圧が倍力液圧室9側の液圧よりも設定差圧を超えて高くなるのに応じて開弁するとともにブレーキ操作初期にブレーキペダル5から機械的に作用する押圧力で開弁する入口弁66が介設されるので、ブレーキ作動後の非ブレーキ操作時には倍力液圧室9の液圧低下によって、入口弁66はアキュムレータ59に設定差圧以下の液圧を蓄圧した状態で閉弁しており、ブレーキ操作初期には、入口弁66がブレーキ操作部材から機械的に作用する押圧力で開弁することにより、前記アキュムレータ59からの前記設定差圧以下の液圧が入口弁66の開弁に応じて倍力液圧室9に作用することになる。そこでアキュムレータ59の容量ならびにアキュムレータ59の保持圧である前記前記差圧をマスタシリンダを初期作動せしめるのに充分な程度に小さく設定しておくことにより、車体へのレイアウト性を高める程度にアキュムレータ59の容量および重量を小さくしつつ、昇圧レスポンスの低下を回避することができる。
【0048】
またポンプ6が第3オリフィス79を介してアキュムレータ59に接続されるので、アキュムレータ59にポンプ6から作用する液圧に脈動が生じないようにすることができる。しかもポンプ6およびアキュムレータ59間に、ブレーキ操作初期を除くブレーキ操作状態で開弁する常開型電磁弁80が介設されるので、ブレーキ操作初期を除く通常のブレーキ作動時にポンプ6の吐出圧をアキュムレータ59に導いておき、ブレーキ操作終了後に倍力液圧室9の液圧低下に応じて入口弁66が開弁後に閉弁することで、アキュムレータ59に液圧を蓄圧せしめることができる。
【0049】
さらに調圧弁手段7が、ポンプ6側からのブレーキ液の流通だけを許容してポンプ6および倍力液圧室9間に設けられる第2一方向弁83と、倍力液圧室9およびリザーバRの第3液溜め室27間に介設されるリニアソレノイド弁84とで構成され、電気的に駆動されるものであるので、車種に応じて倍力比を自在に変化させることが可能であり、簡単な構成で仕様の異なる多くの種類の車両に適用することが可能であり、部品点数の増大を回避することができるとともに、調圧弁手段7を第2一方向弁83およびリニアソレノイド弁84で単純化して構成することができる。この際、ポンプ6から作用する液圧は第1一方向弁78およびオリフィス79を介してアキュムレータ95に蓄圧されることにより、第2一方向弁83を介して倍力液圧室9に優先的にブレーキ液を供給することができる。
【0050】
しかも車両運転者の任意操作に応じて開弁する解放弁103がリニアソレノイド弁84と並列に倍力液圧室9およびリザーバR間に設けられるので、調圧弁手段7の不調時に倍力液圧室9の液圧がロック状態となることを簡単な構成で回避することができる。
【0051】
さらにリニアソレノイド弁84が常閉型であり、前記解放弁103が常閉型電磁弁であることにより、通常のブレーキ作動時にあっては常閉型のリニアソレノイド弁84を励磁、開弁して倍力液圧室9の液圧を減圧すればよく、また解放弁103は消磁、閉弁状態を維持すればよいので、消費電力を抑えることができる。
【0052】
ところで、前記ポンプ6の不調時には、開閉弁101が閉弁し、弾性体53の周囲の環状液室90は液圧ロック状態となる。このためストロークシミュレータ8Aでは、ブレーキペダル5の踏み込み操作に応じて、バックアップピストン49が入力ピストン52とともにばね54のばね力に抗して前進し、バックアップピストン49の先端の嵌合突部49aが後部マスタピストン10に当接して該後部マスタピストン10を前進方向に押圧することになり、ポンプ6の不調時にもブレーキペダル5の踏み込み操作に応じてマスタシリンダMAを作動せしめることができる。
【0053】
図4〜図6は本発明の第2実施例を示すものであり、図4は車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図、図5はマスタシリンダの拡大縦断面図、図6はストロークシミュレータの縦断面図である。
【0054】
先ず図4において、四輪車両のブレーキ装置は、タンデム型であるマスタシリンダMBと、ブレーキペダル5から入力されるブレーキ操作力に応じて液圧発生源112の液圧を調圧して前記マスタシリンダMBに作用せしめる調圧弁手段113と、前記ブレーキペダル5の操作ストロークをシミュレートするストロークシミュレータ8Bとを備える。
【0055】
前記マスタシリンダMBは、倍力液圧室114に背面を臨ませるとともに後方側にばね付勢される後部マスタピストン115と、後方側にばね付勢されつつ後部マスタピストン115の前方に配置される前部マスタピストン116とを備え、前端が閉じられた有底円筒状に形成される第3のケーシング117に、後部マスタピストン115および前部マスタピストン116が摺動自在に嵌合される。
【0056】
図5を併せて参照して、前端に端壁117aを有する第3のケーシング117には、端壁117aで前端が閉じられた第3シリンダ孔118が設けられ、後部マスタピストン115は倍力液圧室114に背面を臨ませて第3シリンダ孔118に摺動可能に嵌合され、前部マスタピストン116は、後部マスタピストン115との間に後部出力液圧室119を形成するとともに前記端壁117aとの間に前部出力液圧室120を形成して第3シリンダ孔118に摺動可能に嵌合される。
【0057】
第3のケーシング117には、後部出力液圧室119に通じる後部出力ポート121と、前部出力液圧室120に通じる前部出力ポート122とが設けられる。さらに後部出力液圧室119内で後部マスタピストン115および前部マスタピストン116間には後部マスタピストン115を後方側に付勢する後部戻しばね123が縮設され、前部出力液圧室120内で端壁117aおよび前部マスタピストン116間には前部マスタピストン116を後方側に向けて付勢する前部戻しばね124が縮設される。
【0058】
第3のケーシング117の上部の軸線方向に間隔をあけた2箇所には、リザーバRの第2液溜め室26に通じる円筒状の後部接続筒部125ならびに第1液溜め室25に通じる円筒状の前部接続筒部126が、上方に突出するようにして一体に設けられる。
【0059】
後部マスタピストン115は、前方側および後方側ピストン部115a,115bが小径連結部115cを介して一体に連設されて成るものであり、前方側ピストン部115aには、後部出力液圧室119側への作動液の流入を許容して第3シリンダ孔118の内面に摺接するカップシール128が装着され、後方側ピストン部115bには第3シリンダ孔118の内面に摺接するカップシール129が装着される。
【0060】
後部マスタピストン115の外周および第3シリンダ孔118の内面間で前方側および後方側ピストン部115a,115b間には後部補給液室130が環状に形成されており、この後部補給液室130に常時通じて後部接続筒部125内に開口する補給ポート131が第3のケーシング117に穿設され、リザーバRの第2液溜め室26から補給されるブレーキ液が後部補給液室130に供給されることになる。
【0061】
後部マスタピストン115には、該後部マスタピストン115が後退限位置に戻ったときに後部出力液圧室119および後部補給液室130間を連通させるセンターバルブ132が装着される。
【0062】
このセンターバルブ132は、後部マスタピストン115の前端部に同軸に装着される弁函133と、後部補給液室130に通じて後部マスタピストン115の前方側ピストン部115aに同軸に穿設されるとともに弁函133内で前方側ピストン部115aの前端部に開口する軸方向通路134と、軸方向通路134の前端開口部を閉鎖可能として弁函133内に前後動可能に収納される弁体135と、弁体135を後方すなわち軸方向通路134の閉鎖方向に付勢するばね力を発揮して弁函133内に収納される弁ばね136と、後部マスタピストン115が後退限にあるときには弁体135を弁ばね136のばね付勢力に抗して前進位置に保持するものの後部マスタピストン115の前進時には弁ばね136による弁体135の後退動作すなわち閉弁動作を許容するストッパピン137とを備える。
【0063】
後部マスタピストン115の小径連結部115cには、該小径連結部115cの軸方向に長い長孔状の貫通孔138が小径連結部115cの一直径線に沿うようにして設けられ、該貫通孔138の両端は後部補給液室130に連通される。ストッパピン137は、第3のケーシング117に固定されて貫通孔138を貫通しており、弁体135に連設されて軸方向通路134に挿通されるバルブステム135aの後端がストッパピン137に当接される。
【0064】
このようなセンターバルブ132によれば、後部マスタピストン115が後退限にあるときにはストッパピン137でバルブステム135aが押圧されることにより弁体135が軸方向通路134を開放する位置となって開弁して後部出力液圧室119および貫通孔138間を連通し、後部補給液室130からの補給液を後部出力液圧室119に補給可能となる。また後部マスタピストン115が後退限から前進すると、ストッパピン137が貫通孔138内の後方に位置するように後部マスタピストン115に対して相対移動することにより、弁体135が弁ばね136のばね力により軸方向通路134を閉鎖する位置まで移動し、後部補給液室130および後部出力液圧室119間が遮断される。
【0065】
前部マスタピストン116は、前方側および後方側ピストン部116a,116bが小径連結部116cを介して一体に連設されて成るものであり、前方側ピストン部116aには、前部出力液圧室120側への作動液の流入を許容して第3シリンダ孔118の内面に摺接するカップシール140が装着され、後方側ピストン部116bには第3シリンダ孔118の内面に摺接するカップシール141が装着される。
【0066】
前部マスタピストン116の外周および第3シリンダ孔118の内面間で前方側および後方側ピストン部116a,116b間には前部補給液室142が環状に形成されており、この前部補給液室142に常時通じて前部接続筒部126内に開口する補給ポート143が第3のケーシング117に穿設され、リザーバRの第1液溜め室25から補給されるブレーキ液が前部補給液室142に供給されることになる。
【0067】
前部マスタピストン116には、該前部マスタピストン116が後退限位置に戻ったときに前部出力液圧室120および前部補給液室142間を連通させるセンターバルブ144が装着される。
【0068】
このセンターバルブ144は、前部マスタピストン116の前端部に同軸に装着される弁函145と、前部補給液室142に通じて前部マスタピストン116の前方側ピストン部116aに同軸に穿設されるとともに弁函145内で前方側ピストン部116aの前端部に開口する軸方向通路146と、軸方向通路146の前端開口部を閉鎖可能として弁函145内に前後動可能に収納される弁体147と、弁体147を後方すなわち軸方向通路146の閉鎖方向に付勢するばね力を発揮して弁函145内に収納される弁ばね148と、前部マスタピストン116が後退限にあるときには弁体147を弁ばね148のばね付勢力に抗して前進位置に保持するものの前部マスタピストン116の前進時には弁ばね148による弁体147の後退動作すなわち閉弁動作を許容するストッパピン149とを備える。
【0069】
前部マスタピストン116の小径連結部116cには、該小径連結部116cの軸方向に長い長孔状の貫通孔150が小径連結部116cの一直径線に沿うようにして設けられ、該貫通孔150の両端は前部補給液室142に連通される。ストッパピン149は、第3のケーシング117に固定されて貫通孔150を貫通しており、弁体147に連設されて軸方向通路146に挿通されるバルブステム147aの後端がストッパピン149に当接される。
【0070】
このようなセンターバルブ144によれば、前部マスタピストン116が後退限にあるときにはストッパピン149でバルブステム147aが押圧されることにより弁体147が軸方向通路146を開放する位置となって開弁して前部出力液圧室120および貫通孔150間を連通し、前部補給液室142からの補給液を前部出力液圧室120に補給可能となる。また前部マスタピストン116が後退限から前進すると、ストッパピン149が貫通孔150内の後方に位置するように前部マスタピストン116に対して相対移動することにより、弁体147が弁ばね148のばね力により軸方向通路146を閉鎖する位置まで移動し、前部補給液室142および前部出力液圧室120間が遮断される。
【0071】
すなわちマスタシリンダMBは、後部マスタピストン115および前部マスタピストン116に、それらのマスタピストン115,116の後退時には後部および前部出力液圧室119,120にリザーバRからのブレーキ液を補給するように開弁作動するセンターバルブ132,144が装着されたセンターバルブ型に構成されている。
【0072】
後部および前部マスタピストン115,116間には、それらのマスタピストン115,116間の最大間隔を規制する最大間隔規制手段151が設けられるものであり、この最大間隔規制手段151は、前部マスタピストン116における後方側ピストン部116bの背面に当接されるリテーナ152と、後部マスタピストン115に装着されたセンターバルブ132における弁函133の前端中央部に連設されて前方に延びるとともにリテーナ152の中央部に前部が移動可能に挿通されるロッド153と、前記リテーナ152に前方側から係合し得るようにして前記ロッド153の前端に螺着される係合部材154とを備える。しかも後部戻しばね123は、前記弁函133およびリテーナ152間に縮設されるものであり、リテーナ152は実質的には前部マスタピストン115に固定された状態にある。
【0073】
このような最大間隔規制手段151によれば、係合部材154がリテーナ152の中央部に前方側から係合することで後部および前部マスタピストン115,116間の最大間隔が規制されることになる。
【0074】
再び図4において、前記マスタシリンダMBの後部出力ポート121は、液圧モジュレータ35を介して右前輪用車輪ブレーキBAおよび左後輪用車輪ブレーキBBに接続されており、また前部出力ポート122は、液圧モジュレータ35を介して左前輪用車輪ブレーキBCおよび右後輪用車輪ブレーキBDに接続される。
【0075】
図6において、前記マスタシリンダMBが備える第3のケーシング117の後端には、内向き鍔部155aを後端に有して円筒状に形成される第4のケーシング155の前部が同軸に連設される。すなわち第3のケーシング117の後端は第4のケーシング155の前部に液密に嵌合されており、第3のケーシング117の後端および第4のケーシング155間には、第4のケーシング155に液密に嵌合されるセパレータ156およびスリーブ157が挟持される。
【0076】
第4のケーシング155には、前記第3のケーシング117の後端、セパレータ156およびスリーブ157を前端側から液密に嵌合せしめる大径孔158と、該大径孔158の後端との間に環状の段部159を形成して大径孔158の後端に同軸に連なるとともに大径孔158よりも小径に形成される中径孔160とが設けられ、中径孔160の後端を規定するようにして第4のケーシング155が後端に備える内向き鍔部155aは、前記中径孔160よりも小径である小径孔161を形成する。
【0077】
前記セパレータ156およびスリーブ157は、セパレータ156およびスリーブ157間に板ばね162を介装した状態でマスタシリンダMBにおける第3のケーシング117の後端および前記段部159間に挟まれるようにして大径孔158に液密に嵌合される。而して板ばね162が発揮するばね力により、セパレータ156および第2スリーブ157は、第3のケーシング117の後端および段部159間の距離に対する寸法公差を吸収しつつ第4のケーシング155の前部に確実に固定される。
【0078】
前記セパレータ156は、マスタシリンダMBにおける第3のケーシング117の第3シリンダ孔118よりもわずかに小径の第4シリンダ孔163を内周で形成する短円筒状のものである。またスリーブ157は、第4シリンダ孔163よりもわずかに大径の前部大径孔164と、前部大径孔164よりも小径かつ第4シリンダ孔163と同径の後部小径孔165とを同軸に形成して円筒状に形成される。而して第4のケーシング155内に液密に嵌合、固定されるセパレータ156およびスリーブ157により、第3シリンダ孔118と同軸である第4シリンダ孔163、第4シリンダ孔163よりも大径の前部大径孔164、ならびに第4シリンダ孔163と同径の後部小径孔165が、前方側から順に同軸に形成されることになる。
【0079】
ストロークシミュレータ8Bは、前端を倍力液圧室114に臨ませて第4シリンダ孔163および後部小径孔165に摺動可能に収容される円筒状のバックアップピストン168と、液圧発生源112の出力液圧が導入される液圧発生源液圧室169に前端を臨ませて前記バックアップピストン168に摺動可能に嵌合されるピストン170と、該ピストン170の後端に前端を当接させて前記バックアップピストン168の後部に軸方向相対移動を可能として挿入されるシミュレータピストン171と、該シミュレータピストン171に相対摺動可能に嵌合される入力ピストン172と、該入力ピストン172および前記シミュレータピストン171間に介装される弾発手段173とを備える。
【0080】
第4のケーシング155には、マスタシリンダMBの第3のケーシング117およびセパレータ156間に対応する位置で大径孔158の内面に開口する第1ポート174と、セパレータ156およびスリーブ157間に対応する位置で大径孔158の内面に開口する第2ポート175と、中径孔160の前部内面に開口する第3ポート176とが、前方から順に間隔をあけて設けられる。
【0081】
前記第2ポート175には、図4で示すように、液圧発生源112が接続されるものであり、この液圧発生源112は、リザーバRの第3液溜め室27から作動液をくみ上げるポンプ177と、該ポンプ177の吐出側に接続されるアキュムレータ178と、アキュムレータ178の液圧を検出して前記ポンプ177の作動を制御するための液圧センサ179とを備えるものであり、高圧の一定液圧が液圧発生源112から第2ポート175に供給される。また第3ポート176はリザーバRの第3液溜め室27に接続される。
【0082】
第4のケーシング155における大径孔158の内面には、第1ポート174の内端を開口せしめる環状凹部180と、第2ポート175の内端を開口せしめる環状凹部181とが設けられており、それらの環状凹部180,181をそれぞれ両側からシールする環状のシール部材182,183,184がマスタシリンダMBの第3のケーシング117、セパレータ156およびスリーブ157の外周に装着される。
【0083】
バックアップピストン168の前部は、セパレータ156の第4シリンダ孔163に液密にかつ摺動可能に嵌合され、バックアップピストン168の軸方向中間部はスリーブ157の後部小径孔165に液密にかつ摺動可能に嵌合されるものであり、スリーブ157の前部大径孔164に対応する部分でスリーブ157およびバックアップピストン168間には環状路185が形成され、この環状路185は、第2ポート175に通じる環状凹部181に連通する。
【0084】
しかも前記環状路185の前後両側は、セパレータ156の内周に装着されてバックアップピストン168の外周に摺接する環状のシール部材186と、スリーブ157の後部で後部小径孔165の内面に装着されてバックアップピストン168の外周に摺接する環状のシール部材187とでシールされる。
【0085】
バックアップピストン168の軸方向中間部には、半径方向内方に張り出す内向き鍔部168aが一体に設けられており、そのうち向き鍔部168aよりも前方側でバックアップピストン168内には、前方側の大径孔188と、該大径孔188よりも小径に形成されて大径孔188の後端に同軸に連なる小径孔189とが形成されており、前記ピストン170は、小径孔189に摺動可能にかつ液密に嵌合される。しかもバックアップピストン168の前端には端壁部材190が液密に嵌合されており、端壁部材190の外周縁部に前方から当接、係合する止め輪191がバックアップピストン168の前端部内周に装着される。而してマスタシリンダMBにおける後部マスタピストン115の背面を臨ませる倍力液圧室114が、後部マスタピストン115と、前記バックアップピストン168および端壁部材190間に形成される。
【0086】
前記端壁部材190およびピストン170間に液圧発生源液圧室169が形成されており、前記環状路185を液圧発生源液圧室169に通じさせる連通孔192が、前記大径孔188の内面に開口するようにしてバックアップピストン168に設けられる。また液圧発生源液圧室169内で端壁部材190およびピストン170間には、該ピストン170を後退方向に付勢するばね193が縮設される。
【0087】
一方、第4のケーシング155における内向き鍔部155aには、リング状のストッパ194が当接されており、バックアップピストン168の後端部外周に装着された止め輪195に内周を前方側から当接、係合せしめたリテーナ196と、スリーブ157との間に、バックアップピストン168の後半部を囲繞するコイル状のばね197が縮設され、このばね197のばね力によりバックアップピストン168は後方に向けてばね付勢される。而して内向き鍔部155aに当接したストッパ194に前記止め輪195が当接させた位置がバックアップピストン168の後退限であり、後退限にあるバックアップピストン168の前端は、倍力液圧室114に臨むとともに、非作動状態にある後部マスタピストン115の背面の外周縁部に全周にわたって当接し、その状態で後部マスタピストン115も後退限となる。
【0088】
マスタシリンダMBにおける第3のケーシング117の後端上部には環状凹部180に通じる溝199が設けられており、第1ポート174に通じる環状凹部180が溝199を介して倍力液圧室114に連通する。また後部マスタピストン115の後端には、倍力液圧をマスタピストン115の背面およびバックアップピストン168の前端間に導く溝200が設けられる。
【0089】
また第4のケーシング155内でスリーブ157および内向き鍔部155a間には、前記ばね197を収容するようにしてバックアップピストン168を囲むばね室201が形成されており、このばね室201は第3ポート176に連通する。
【0090】
バックアップピストン168の軸方向中間部内面に設けられた内向き鍔部168aは、挿通孔202を形成するものであり、前記ピストン170の後部に一体に設けられた当接突部170aが挿通孔202に摺動可能に嵌合され、前記内向き鍔部168aから後方に突出され、シミュレータピストン171の前端の端壁171aに当接する。
【0091】
入力ピストン172は、シミュレータピストン171の後端部に装着される止め輪205によって後退限位置が規制されるようにして、シミュレータピストン171の後部に摺動可能に嵌合され、シミュレータピストン171の前端の端壁171aおよび入力ピストン172間にはストローク液室214が形成され、ブレーキペダル5に連なる入力ロッド206の前端部が入力ピストン172に首振り可能に連接される。すなわち入力ピストン172には、ブレーキペダル5の操作に応じたブレーキ操作力が入力ロッド206を介して入力され、そのブレーキ操作力の入力に応じて入力ピストン172は前進作動する。しかも入力ピストン172の外周には、シミュレータピストン171の内周に摺接する環状のシール部材207が装着される。
【0092】
弾発手段173は、ゴム等の弾性材料によって筒状に形成される弾性体208と、弾性体208よりもばね荷重を小さく設定した金属製のコイルばね209とが、シミュレータピストン171にスライド可能に収容されるスライド部材210を介して直列に接続されて成るものであり、弾性体208がスライド部材210および入力ピストン172間に介設され、コイルばね209がシミュレータピストン171の前端の端壁171aおよびスライド部材210間に介設される。
【0093】
しかも弾性体208およびコイルばね209は、ブレーキペダル5のブレーキ操作初期にはコイルばね209が発揮するばね力がシミュレータピストン171に作用し、スライド部材210がシミュレータピストン171の前端の端壁171aに当接することでコイルばね209のばね力のシミュレータピストン171への作用が終了した後に弾性体208の弾性変形が開始されるようにして、入力ピストン172およびシミュレータピストン171間に直列に介装されるものである。
【0094】
またコイルばね209のセット荷重は、前後方向のばね力を発揮するようにしてコイルばね209と直列に接続される他のばね部材のセット荷重よりも小さく設定されるものであり、この実施例では、シミュレータピストン171の端壁171aおよびピストン170を介してコイルばね209に直列に接続されて液圧発生源液圧室169に収容されるばね193のセット荷重よりも小さく設定される。
【0095】
スライド部材210の中央部には、シミュレータピストン171と同軸にして弾性体208を貫通するガイド軸211の前端部が圧入されており、このガイド軸211の後端部は、入力ピストン172に摺動可能に嵌合される。すなわち入力ピストン172の中央部には、ガイド軸211の後端部を摺動可能に嵌合せしめる摺動孔212と、該摺動孔212よりも大径に形成されて摺動孔212の後部に前端を連ならせるとともに後端を閉じた有底孔213とが同軸に設けられており、ガイド軸211の後端部は入力ピストン172がガイド軸211に対して前方に相対移動するのに応じて有底孔213に突入される。
【0096】
シミュレータピストン171の前端の端壁171aには、その端壁171aの前面を臨ませた解放室215をストローク液室214に連通させる複数の貫通孔216…が、シミュレータピストン171の中心からの距離を同一として穿設されており、シミュレータピストン171内のストローク液室214には、それらの貫通孔216…を介して作動液が導入される。また各貫通孔216…は、シミュレータピストン171が所定の前進ストローク以上前進したときに、バックアップピストン168に固定されるシートストッパ217で閉じられる。
【0097】
シミュレータピストン171は、入力ピストン172よりも前方側でその内周面の一部を前方に向かうにつれて小径となるテーパ面220として有底円筒状に形成されており、この実施例では、シミュレータピストン171の前半寄りの部分が内周面をテーパ面220としたテーパ筒部168bとして形成される。
【0098】
スライド部材210は、前記テーパ面220よりも前方でシミュレータピストン171内にスライド可能に収容される。またスライド部材210および入力ピストン172間に介装される弾性体208は、入力ピストン172の前進作動に伴う軸方向圧縮力の作用に応じて弾性変形するとともに前記軸方向圧縮力の増大に応じて前記テーパ面220による拘束で前部から順次変形が阻止されるようにして筒状に形成されるものであり、荷重の非作用状態では外径を軸方向全長にわたって同一とした円筒状である。
【0099】
ところで、入力ピストン172に嵌合することで該入力ピストン172に後端部を支持せしめたガイド軸211は、その軸方向全長にわたる解放路221を同軸に有して円筒状に形成されるものであり、入力ピストン172において、シール部材207が装着される部分よりも前部には、解放路221に通じる有底孔213に内端を開口した複数の通路222…が入力ピストン172の半径方向に沿うようにして設けられる。而して各通路222…ならびに前記有底孔213は、ストローク液室214において弾性体208およびシミュレータピストン171間をガイド軸211の解放路221に連通させる。
【0100】
またスライド部材210には、前記解放路221の前端に同軸に連なる解放路223が設けられ、スライド部材210がシミュレータピストン171の前端の端壁171aに当接したときに解放路223が端壁171aで塞がれることを回避するための複数の溝224…が半径方向に沿ってスライド部材210の前端面に設けられる。
【0101】
このような構成により、シミュレータピストン171の前進時に貫通孔216…がシートストッパ217で閉じられてストローク液室214が液圧ロック状態となるまでは、シミュレータピストン171内の弾性体208およびシミュレータピストン171間は、通路222…、有底孔213、解放路221,223、溝224…および貫通孔216…を介して解放室215に連通している。すなわち弾性体208およびシミュレータピストン171間は、作動液をシミュレータピストン171内に密閉するまでのシミュレータピストン171の前進ストロークでは解放室215すなわちリザーバRに連通されることになる。
【0102】
而して液圧発生源112の不調により、ピストン170の前端が臨む液圧発生源液圧室169の液圧が低下すると、ブレーキペダル5のブレーキ操作に応じてシミュレータピストン171はその前端の端壁171aをバックアップピストン168の内向き鍔部168aに設けられたシートストッパ217に当接するまでピストン170を押圧しながら前進し、さらにバックアップピストン168を前進させ、バックアップピストン168から後部マスタピストン115に前進方向の押圧力を作用せしめることができる。
【0103】
再び図4において、ブレーキ操作量を検出する検出手段104の検出値に基づいて液圧発生源112の出力液圧を調圧して倍力液圧室114に作用せしめる調圧弁手段113は、ブレーキ操作初期に倍力液圧室114に導く液圧量を多くすべく液圧発生源112ならびに倍力液圧室114に通じる第1ポート174間に並列接続される一対の第1リニアソレノイド弁230,231と、前記第1ポート174およびリザーバRの第3液溜め室27間に設けられる第2リニアソレノイド弁232とから成り、第1ポート174の液圧は液圧センサ233で検出される。
【0104】
また調圧弁手段113の不調時に倍力液圧室114の液圧をリザーバR側に解放するための解放弁234が、第1ポート174およびリザーバRの第3液溜め室27間に設けられるものであり、解放弁234は常閉型電磁弁である。
【0105】
次にこの第2実施例の作用について説明すると、ストロークシミュレータ8Bは、ブレーキペダル5に入力ピストン172およびシミュレータピストン171間に、弾性材料から成る弾性体208と、該弾性体208よりもばね定数の小さな金属製のコイルばね209とが、ブレーキ操作初期にコイルばね209が発揮するばね力のシミュレータピストン171への作用終了後に弾性体208の弾性変形が開始されるようにして直列に介装されて成るものであり、コイルばね209のセット荷重は、前後方向のばね力を発揮するようにしてコイルばね209と直列に接続される他のばね193のセット荷重よりも小さく設定されている。
【0106】
したがって弾性体208にはコイルばね209からの荷重が予め作用した状態にあるので、弾性体208にへたりが生じたとしても、コイルばね209でそのへたりを吸収するようにして、通常ブレーキ時の無効ストローク感をなくし、弾性体208のへたりには関係なく、弾性体208およびコイルばね209による2段階の操作シミュレート特性を得ることができる。しかもブレーキ操作初期には、ストロークシミュレータ8Bのコイルばね209を変形させることで無効ストロークを得るようにし、ブレーキ操作初期のブレーキ操作入力を比較的小さなものとして、操作フィーリングを高めることができる。
【0107】
ところでシミュレータピストン171は、内周面の一部を前方に向かうにつれて小径となるテーパ面220として円筒状に形成され、ストロークシミュレータ8Bの弾性体208は、テーパ面220よりも後方側でシミュレータピストン171に軸方向スライド可能に収容されるとともにブレーキペダル5に連なる入力ピストン172と、シミュレータピストン171との間に介装されつつシミュレータピストン171に収容されるものであり、この弾性体208は、入力ピストン172の前進動作に伴う軸方向圧縮力の作用に応じて弾性変形するとともに軸方向圧縮力の増大に応じて前記テーパ面220による拘束で前部から順次変形が阻止されるようにして筒状に形成されている。
【0108】
すなわちブレーキペダル5のブレーキ操作に応じて入力ピストン172が前進するときには、前進ストロークが或る値に達するまではコイルばね209を圧縮することで入力荷重に応じてストロークが比例的に増加する。次いで、弾性体208を軸方向に圧縮しつつ入力ピストン172が前進するときには、その軸方向圧縮に応じて弾性体208が弾性変形するのであるが、前記軸方向圧縮力が増大するのに応じてシミュレータピストン171のテーパ面220による拘束で、弾性体208の弾性変形がその前部から順次阻止されるので、ブレーキペダル5の操作ストロークに対する入力荷重の変化量が大きくなる。それに対し、ブレーキペダル5によるブレーキ操作力を緩めるときには、テーパ面220による拘束で弾性体208の弾性変形が阻止されている状態では拘束に伴って増大した弾性エネルギーがブレーキ操作ペダル5にその戻し方向で作用するので、ストロークシミュレータ8Bでのブレーキ操作ストロークおよび操作荷重の関係に非線形の特性を持たせることができるとともにヒステリシス幅を大きくすることができ、ドライバの操作負担を軽減することができる。また、このことによって、マスタシリンダ、負圧ブースタおよび車輪ブレーキを組み合わせた一般的な車両用ブレーキ装置と同等の操作フィーリングを演出することができ、ドライバの違和感が少ない。
【0109】
また弾性体208が、荷重の非作用状態では外径を軸方向全長にわたって同一とした円筒状に形成されるものであるので、弾性体208の形状を単純として弾性体208の成形を容易とし、弾性体208に偏荷重が発生することを回避して弾性体208の耐久性を高めることができる。
【0110】
ところで、シミュレータピストン171内には作動液が導入されるものであり、弾性体208およびシミュレータピストン171間は、作動液をシミュレータピストン171内に密閉するまでのシミュレータピストン171の前進ストロークではリザーバRに連通されている。これによりシミュレータピストン171が所定の前進ストロークに達する前にシミュレータピストン171内の作動液が弾性体208およびシミュレータピストン171間に介在したままロックされてしまうことがなく、弾性体208をシミュレータピストン171の内周面に確実に当接させて所望のヒステリシスを得ることが可能であり、操作性を損ねることがない。
【0111】
また入力ピストン172には、弾性体208およびシミュレータピストン171間をRに通じさせる解放路221を同軸に有して弾性体208を貫通する円筒状のガイド軸211が支持されており、簡単な構成で解放路221を形成することができる。
【0112】
シミュレータピストン171は、リザーバRに通じてバックアップピストン168内に形成される解放室215に前面を臨ませるとともに貫通孔216が設けられる端壁171aを前端に有して有底円筒状に形成され、入力ピストン172は、端壁171aとの間にストローク液室214を形成してシミュレータピストン171に液密にかつ摺動可能に嵌合され、貫通孔216をシミュレータピストン171の所定以上の前進ストロークで閉じるシートストッパ217がバックアップピストン168に設けられるので、シミュレータピストン171の所定量以上の前進ストローク時にシミュレータピストン171の前端の貫通孔216が閉じられると、ストローク液室214が密閉状態となってシミュレータピストン171に対する入力ピストン172の前進方向の相対移動が阻止されるので、液圧発生源112の失陥時にはストロークシミュレータ8Bにより無効となるブレーキペダル5のストロークおよび反力の増大を抑えることができる。しかもシミュレータピストン171の所定以上の前進ストロークでシミュレータピストン171内に作動液を密閉するための構造が単純化される。
【0113】
また調圧弁手段113が、液圧発生源112ならびに倍力液圧室114に通じる第1ポート174間に並列接続される一対の第1リニアソレノイド弁230,231と、第1ポート174およびリザーバRの第3液溜め室27間に設けられる第2リニアソレノイド弁232とから成り、電気的に駆動されるものであるので、車種に応じて倍力比を自在に変化させることが可能であり、簡単な構成で仕様の異なる多くの種類の車両に適用することが可能であり、部品点数の増大を回避することができるとともに、調圧弁手段113を単純化して構成することができる。
【0114】
また調圧弁手段113の不調時に倍力液圧室114の液圧をリザーバR側に解放するための解放弁234が、倍力液圧室114およびリザーバR間に設けられるので、調圧弁手段113の不調時に倍力液圧室114の液圧がロック状態となることを簡単な構成で回避することができる。さらに解放弁234が常閉型電磁弁であることにより、通常のブレーキ作動時にあっては解放弁234は消磁、閉弁状態を維持すればよいので、消費電力を抑えることができる。
【0115】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0116】
たとえば上記実施例では、マスタシリンダMA,MBがタンデム型に構成されたが、単一のピストンがケーシングに摺動自在に嵌合されるタイプのマスタシリンダとしてもよい。
【0117】
また解放弁103,234を、常閉型電磁弁に代えて、手動操作型のブリーダや、機械式のリリーフ弁としてもよい。
【0118】
さらに上記実施例ではブレーキ操作量を検出する検出手段104が、入力ピストン52,172のストローク量を検出するように構成されているが、荷重センサ等による操作力の検出であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】第1実施例の車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図である。
【図2】液圧モジュレータの構成を示す液圧回路図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】第2実施例の車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図である。
【図5】マスタシリンダの拡大縦断面図である。
【図6】ストロークシミュレータの縦断面図である。
【符号の説明】
【0120】
5・・・ブレーキ操作部材であるブレーキペダル
6,112・・・液圧発生源
7,113・・・調圧弁手段
9,114・・・倍力液圧室
10,115・・・マスタピストン
12,117・・・ケーシング
83・・・一方向弁
84・・・リニアソレノイド弁
103,234・・・解放弁
230,231・・・第1リニアソレノイド弁
232・・・第2リニアソレノイド弁
MA,MB・・・マスタシリンダ
R・・・リザーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
倍力液圧室(9,114)に背面を臨ませたマスタピストン(10,115)がケーシング(12,117)に摺動可能に収容されるマスタシリンダ(MA,MB)と、液圧発生源(6,112)と、リザーバ(R)と、ブレーキ操作部材(5)からのブレーキ操作入力に応じて前記液圧発生源(6,112)の出力液圧を調圧して前記倍力液圧室(9,114)に作用せしめる調圧弁手段(7,113)とを備え、前記マスタシリンダ(MA,MB)が車輪ブレーキ(BA,BB,BC,BD)に接続される車両用ブレーキ装置において、前記調圧弁手段(7,113)が、電気的な制御によって前記液圧発生源(6,112)の出力液圧を調圧して前記倍力液圧室(9,114)に作用せしめるべく構成され、前記倍力液圧室(9,114)および前記リザーバ(R)間に、前記調圧弁手段(7,113)の不調時に前記倍力液圧室(9,114)の液圧を前記リザーバ(R)側に解放するための解放弁(103,234)が介設されることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記調圧弁手段(7)が、前記液圧発生源(6)側からのブレーキ液の流通だけを許容して前記液圧発生源(6)および前記倍力液圧室(9)間に設けられる一方向弁(83)と、前記倍力液圧室(9)および前記リザーバ(R)間に介設されるリニアソレノイド弁(84)とで構成されることを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記調圧弁手段(113)が、前記液圧発生源(112)および前記倍力液圧室(114)間に介設される第1リニアソレノイド弁(230,231)と、前記倍力液圧室(114)および前記リザーバ(R)間に介設される第2リニアソレノイド弁(232)とから成ることを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記解放弁(103,234)が常閉型電磁弁であることを特徴とする請求項1記載の車両用ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−254467(P2008−254467A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95597(P2007−95597)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】