説明

車両用ブレーキ装置

【課題】負圧検出手段の異常を簡易な構成で判定することが可能な車両用ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】車両用ブレーキ装置11は、マスタシリンダ圧又はホイールシリンダ圧を検出する液圧検出手段38と、液圧検出手段38が検出した前記マスタシリンダ圧又は前記ホイールシリンダ圧に基づき負圧式倍力装置20における負圧推定値PmpEを算出する負圧推定手段26と、負圧推定手段26の推定した負圧推定値PmpEと負圧検出手段40が検出した負圧検出値PmpSとを比較して負圧検出手段40の異常を検出する異常検出手段26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用ブレーキ装置に関し、より詳細には、負圧式倍力装置の負圧室に接続された負圧検出手段の異常を判定することが可能な車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキペダル等のブレーキ操作部材を備える車両用ブレーキ装置では、ブレーキ操作部材の操作を補助するため、油圧システムと負圧システムを用いることが広く行われている。油圧システムは、マスタシリンダとホイールシリンダを結ぶ配管中の油圧(ブレーキ液圧)を複数の弁などにより調整することでブレーキペダルの操作を補助する。また、負圧システムは、ブレーキ操作部材の操作に合わせてバキュームポンプ等により負圧を発生させることで、ブレーキ操作部材の操作を補助する(特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、エンジンの吸気管に接続されたブレーキブースタ(71)に設けられた圧力センサ(63)の出力値が、吸気管内の圧力を検知する吸気圧センサ(61)の出力値に基づいて定められた所定範囲外の値となった場合に、圧力センサ(63)に異常が生じたものと判定する(要約、請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−157613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1では、圧力センサ(負圧センサ、負圧検出手段)と吸気圧センサの出力値の比較により圧力センサの異常を判定する。しかしながら、ブレーキブースタ(負圧式倍力装置)における負圧として吸気管における負圧を用いる構成は、主として、ガソリンエンジンを搭載した車両で多く用いられるが、ディーゼルエンジンの中でもスロットルバルブを有さないものを搭載した車両やエンジンを有さない電気自動車では、吸気圧センサを用いることができない。また、特許文献1の構成では、吸気圧センサに異常が生じた場合も圧力センサに異常が生じたと判定する可能性がある。
【0006】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、吸気圧センサ(吸気圧検出手段)の出力を用いなくても、負圧検出手段の異常を簡易な構成で判定することが可能な車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車両用ブレーキ装置は、負圧式倍力装置の負圧室に接続された負圧検出手段と、ブレーキ操作部材への操作入力に対応して前記負圧式倍力装置によって倍力駆動されるマスタシリンダとを備え、前記マスタシリンダにより発生した液圧によってホイールシリンダを加圧して車輪を制動するものであって、マスタシリンダ圧又はホイールシリンダ圧を検出する液圧検出手段と、前記液圧検出手段が検出した前記マスタシリンダ圧又は前記ホイールシリンダ圧に基づき前記負圧式倍力装置における負圧推定値を算出する負圧推定手段と、前記負圧推定手段が推定した負圧推定値と前記負圧検出手段が検出した負圧検出値とを比較して前記負圧検出手段の異常を検出する異常検出手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、液圧検出手段が検出したマスタシリンダ圧又はホイールシリンダ圧に基づく負圧推定値と、負圧検出手段が検出した負圧検出値とを比較して負圧検出手段の異常を検出する。このため、吸気圧センサの出力を用いなくても負圧検出手段の異常を簡易な構成で判定することが可能となる。従って、車両の種類{ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車、電気自動車(ハイブリッド車及び燃料電池車を含む。)}に依存することなく、簡易な構成で負圧検出手段の異常を判定することができる。また、負圧式倍力装置における負圧を、マスタシリンダ圧又はホイールシリンダ圧により推定するため、他のセンサ(例えば、別の負圧検出手段、吸気圧センサ)と組み合わせればフェールセーフの観点で優れた構成を実現可能となる。
【0009】
前記負圧推定手段は、前記ブレーキ操作部材の操作入力の増加を判定する操作入力増加判定部と、前記ブレーキ操作部材の操作入力の減少を判定する操作入力減少判定部と、前記操作入力の増加及び減少に伴う負圧消費量を前記負圧推定値を示すものとして算出する負圧消費量算出手段とを備えてもよい。これにより、負圧推定値の算出に、ブレーキ操作部材の操作入力の増加と減少の両方を用いる。このため、ブレーキ操作部材の操作入力の増加又は減少の一方を用いるよりも推定精度を向上することが可能となる。
【0010】
前記異常検出手段は、前記負圧検出値の時間変化量が所定値に満たない場合、前記負圧推定値に基づく前記負圧検出手段の異常検出を行わなくてもよい。例えば、負圧検出値の時間変化量が小さい(すなわち、負圧の変動がわずかである)場合、負圧検出値を用いても誤判定が生じる可能性がある。このような場合、負圧検出手段の異常検出を行わないことで、異常検出の精度を高く維持することが可能となる。
【0011】
前記異常検出手段は、前記負圧検出値、前記負圧推定値、前記マスタシリンダ圧及び前記ホイールシリンダ圧の少なくとも1つが所定の基準値を満たす場合にのみ前記負圧検出手段の異常判定を実行するよう構成されてもよい。これにより、負圧検出手段の異常検出を好適な場合のみに実行することで、異常検出の精度を高く維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、液圧検出手段が検出したマスタシリンダ圧又はホイールシリンダ圧に基づく負圧推定値と、負圧検出手段が検出した負圧検出値とを比較して負圧検出手段の異常を検出する。このため、吸気圧センサの出力を用いずに負圧検出手段の異常を判定することが可能となる。従って、車両の種類{ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車、電気自動車(ハイブリッド車及び燃料電池車を含む。)}に依存することなく、負圧検出手段の異常を判定することができる。また、負圧式倍力装置における負圧を、マスタシリンダ圧又はホイールシリンダ圧により推定するため、他のセンサ(例えば、別の負圧検出手段、吸気圧センサ)と組み合わせればフェールセーフの観点で優れた構成を実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ装置を搭載した車両の概略構成図である。
【図2】前記車両に含まれる電子制御装置のハードウェア構成及び当該ハードウェア構成が備える機能を示す図である。
【図3】前記実施形態において負圧センサの異常を判定する異常判定処理のフローチャートである。
【図4】前記実施形態における異常判定のフローチャートである。
【図5】前記電子制御装置における異常判定時の処理(演算内容)に関する説明図である。
【図6】ブレーキペダル操作時におけるブレーキ液圧とマスタパワー圧変化量との関係の一例を示す図である。
【図7】前記実施形態においてM/P圧推定消費量を演算するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.一実施形態
1.車両10の構成
(1)全体構成
図1は、この実施形態に係るブレーキ装置11を搭載した車両10の概略構成図である。本実施形態の車両10は、ディーゼルエンジン車である。車両10は、ガソリンエンジン車又は電気自動車(ハイブリッド車及び燃料電池車を含む。)であってもよい。
【0015】
車両10は、エンジン12と、EGRバイパス流路14と、ターボチャージャ16と、ブレーキペダル18と、ブレーキブースタ20(負圧式倍力装置)と、油圧システム22と、負圧システム24と、電子制御装置26(以下「ECU26」という。)と、警告灯28とを有する。このうち、ブレーキペダル18、ブレーキブースタ20、油圧システム22、負圧システム24、ECU26及び、警告灯28がブレーキ装置11に含まれる。さらに、車両10は、エンジン回転数センサ30と、水温センサ32と、大気圧センサ34と、外気温センサ36と、液圧センサ38と、負圧センサ40と、ブレーキスイッチ42とを有する。
【0016】
(2)ブレーキブースタ20
ブレーキブースタ20は、負圧ポンプ60に接続され、ブレーキペダル18への操作入力を倍力(増大)する。ブレーキブースタ20は、ダイアフラム204を挟んで配置された負圧室200及び変圧室202を有する。
【0017】
(3)油圧システム22
油圧システム22は、ブレーキブースタ20に連結されたマスタシリンダ50と、図示しない複数の電磁弁が設けられた弁機構52と、弁機構52及び配管56を介してマスタシリンダ50に接続され、車輪58に制動力を付与するホイールシリンダ54とを有する。
【0018】
(4)負圧システム24
負圧システム24は、配管62を介してブレーキブースタ20の負圧室200に接続された負圧ポンプ60と、配管62に設けられたチェック弁64とを有する。配管62には、バキューム・スイッチング・バルブ66(以下「VSV66」という。)を介してEGRバイパス流路14が接続され、エレクトリック・バキューム・レギュレーティング・バルブ68(以下「EVRV68」という。)を介してターボチャージャ16が接続されている。
【0019】
本実施形態の負圧ポンプ60は、エンジン12の回転駆動力により駆動される方式(直動式)である。代わりに、エンジン12の回転駆動力に依存しない方式(例えば、電動式)であってもよい。EGRバイパス流路14は、排気ガス再循環装置(EGR)の一部を構成する。
【0020】
(5)各種センサ
エンジン回転数センサ30は、エンジン12の回転数(以下「エンジン回転数NE」という。)を検出する。水温センサ32は、エンジン12の冷却水の水温Twを検出する。大気圧センサ34は、大気圧Paを検出する。外気温センサ36は、外気温Taを検出する。液圧センサ38は、マスタシリンダ50におけるブレーキ液圧Pmcを検出する。負圧センサ40は、ブレーキブースタ20の負圧室200に接続され、負圧室200内の圧力(以下「マスタパワー圧PmpS」又は「M/P圧PmpS」という。)を検出する。
【0021】
(6)ECU26
ECU26は、各種センサの出力(検出値)に基づいて、通信線98等を介してエンジン12、ターボチャージャ16、油圧システム22、負圧システム24及び警告灯28を制御する。
【0022】
図2には、ECU26のハードウェア構成及び当該ハードウェア構成が備える機能が示されている。図2に示すように、ECU26は、ハードウェアとして、入出力部70、演算部72及び記憶部74を有する。
【0023】
演算部72は、記憶部74に記憶されているプログラムを実行することにより、エンジン制御機能80、アンチロックブレーキシステム制御機能82(以下「ABS制御機能82」という。)、車両挙動安定化システム制御機能84(以下「VSA制御機能84」という。)、ヒル・ホールド制御機能86、ターボチャージャ制御機能88(以下「T/C制御機能88」という。)及び負圧システム制御機能90を実現する。
【0024】
エンジン制御機能80は、図示しないアクセルペダルの操作量等に応じてエンジン12を制御する機能である。ABS制御機能82は、油圧システム22から車輪58に対して制動力が加えられている際(ブレーキ操作時)に車輪58のロックを防止する機能である。VSA制御機能84は、車両10の挙動を安定化する機能である。より具体的には、VSA制御機能84は、例えば、非ブレーキ操作時(加速時等)の車輪58の空転を防ぐトラクション制御機能と、車両10がカーブ等を旋回する際の横滑りを防止する横滑り防止機能と、運転者が車両10(自車)を障害物から回避させるために操向ハンドル(図示せず)を操作する際、当該操作を補助する回避操作支援機能とを含む。
【0025】
ヒル・ホールド制御機能86は、前後に傾斜した道路においてブレーキペダル18の操作がなくても所定の条件(例えば、ブレーキペダル18を離してから所定時間が経過していないこと)が満たされる場合、図示しない電動パーキングブレーキ又はホイールシリンダ54を作動させて車両10の移動を規制する機能である。T/C制御機能88は、ターボチャージャ16を制御する機能であり、ターボチャージャ故障検出機能92(以下「T/C故障検出機能92」という。)を含む。
【0026】
負圧システム制御機能90は、負圧システム24(例えば、負圧ポンプ60)を制御する機能であり、負圧センサ異常判定機能94を含む。本実施形態では、演算部72が、負圧センサ異常判定機能94を実行することにより、負圧センサ40の異常を判定することができる。
【0027】
2.本実施形態における負圧センサ40の異常判定処理の概要
図3は、負圧センサ40の異常を判定する異常判定処理のフローチャートである。ステップS1において、ECU26は、異常判定条件を判定する。本実施形態における異常判定条件としては、例えば、アイドル停止状態であること及びヒル・ホールド制御機能86を実行中であることの少なくとも一方を用いることができる。
【0028】
ステップS2において、ECU26は、ステップS1の判定結果に基づき、異常判定条件が満たされているか否かを判定する。異常判定条件が満たされていない場合(S2:NO)、今回の処理を終える。異常判定条件が満たされている場合(S2:YES)、ステップS3に進む。
【0029】
ステップS3において、ECU26は、負圧センサ40の異常判定を行う。異常判定の詳細は、図4を参照して後で述べる。そして、ステップS3の結果、負圧センサ40に異常がない場合(S4:NO)、ECU26は、今回の処理を終える。負圧センサ40に異常がある場合(S4:YES)、ステップS5において、ECU26は、運転者に対して警告を行う。具体的には、ECU26は、警告灯28を点灯させ、運転者に異常の発生を通知する。これに代えて又はこれに加えて、ECU26は、図示しないスピーカを用いて警告音を発するなどその他の方法で運転者に異常の発生を通知してもよい。
【0030】
3.異常判定(図3のS3)
(1)異常判定の概要
図4は、異常判定のフローチャート(図3のS3の詳細)である。なお、図4の処理の更なる詳細については、図5〜図7を用いて後述する。
【0031】
ステップS11において、ECU26は、負圧センサ40からマスタパワー圧PmpS(検出値)を取得する。
【0032】
ステップS12において、ECU26は、M/P圧PmpSを、後述する推定値との比較用に処理して、マスタパワー圧実測消費量ΔPmpS(以下「M/P圧実測消費量ΔPmpS」又は「実測消費量ΔPmpS」という。)を演算する。M/P圧実測消費量ΔPmpSは、ブレーキペダル18の操作により消費されたM/P圧PmpSの実測値(累積値)を示し、負圧センサ40からのM/P圧PmpSに基づいて求められる。
【0033】
ステップS13において、ECU26は、液圧センサ38からブレーキ液圧Pmcを取得する。ステップS14において、ECU26は、取得したブレーキ液圧Pmcに基づき、マスタパワー推定消費量ΔPmpE(以下「M/P圧推定消費量ΔPmpE」又は「推定消費量ΔPmpE」という。)を演算する。M/P圧推定消費量ΔPmpEは、ブレーキペダル18の操作により消費されたM/P圧PmpSの推測値(累積値)を示し、主として、ブレーキ液圧Pmcに基づいて求められる。
【0034】
ステップS15において、ECU26は、ステップS12で演算した実測消費量ΔPmpSとステップS14で演算した推定消費量ΔPmpEを比較して両者の相違を判定する。続くステップS16において、ECU26は、実測消費量ΔPmpSと推定消費量ΔPmpEの相違が大きいか否かを判定する。両者の相違が大きくない場合(S16:NO)、ステップS17において、ECU26は、負圧センサ40が正常であると判定する。両者の相違が大きい場合(S16:YES)、ステップS18において、ECU26は、負圧センサ40が異常であると判定する。
【0035】
(2)異常判定の詳細
図5は、異常判定時の処理(演算内容)に関する説明図である。図5に示す処理は、ECU26の演算部72により実施される。処理ブロック100は、図3のステップS1で判定した異常判定条件の判定に対応し、異常判定条件(演算許可条件)を満たす場合、異常判定許可フラグ(演算許可フラグF1)を処理ブロック106に出力する。処理ブロック102は、負圧センサ40からのM/P圧PmpSを処理ブロック106、108、110に出力する。ここでのM/P圧PmpSは、ノイズ成分の除去など所定のフィルタ処理を行ったものであってもよい。また、処理ブロック102から処理ブロック110に出力されるM/P圧PmpSは、初期値(以下「初期値PmpS1」という。)のみであってもよい。初期値PmpS1は、処理ブロック110が処理ブロック106から演算開始フラグF2を受けた直後のM/P圧PmpSである。処理ブロック104は、液圧センサ38からのブレーキ液圧Pmcを処理ブロック106、110に出力する。
【0036】
処理ブロック106は、処理ブロック100からの演算許可フラグF1と、処理ブロック102からのM/P圧PmpS(初期値PmpS1)と、処理ブロック104からのブレーキ液圧Pmcとに基づいて、M/P圧実測消費量ΔPmpSとM/P圧推定消費量ΔPmpEの演算開始タイミングを決定する。具体的には、演算許可フラグF1を受信した時点におけるM/P圧PmpS及びブレーキ液圧Pmcが正常の範囲内であるときは、処理ブロック108、110に対して演算開始フラグF2を出力する。
【0037】
処理ブロック108は、処理ブロック106から演算開始フラグF2を受けたら、処理ブロック102からのM/P圧PmpSに基づいてM/P圧実測消費量ΔPmpSを演算する。具体的には、処理ブロック108は、演算開始フラグF2を受信した時点のM/P圧PmpSを初期値PmpS1とする。次いで、ECU26は、その後に処理ブロック102から新たなM/P圧PmpSを順次受信すると、受信したM/P圧PmpSと初期値PmpS1との差を実測消費量ΔPmpSとして演算する{ΔPmpS=PmpS(n)−PmpS1}。そして、処理ブロック108は、演算した実測消費量ΔPmpSを、判定ブロック114及び処理ブロック120に出力する。
【0038】
処理ブロック110は、処理ブロック106から演算開始フラグF2を受けたら、処理ブロック102からのM/P圧PmpSの初期値PmpS1と処理ブロック104からのブレーキ圧Pmcとに基づいてM/P圧推定消費量ΔPmpEを演算する。推定消費量ΔPmpEの演算に際しては、ブレーキペダル18が踏み込まれた場合及び戻された場合のいずれにおいても、図6に示すように、M/P圧PmpSが消費される{M/P圧PmpSの変化量(以下「M/P圧変化量ΔPmp」又は「変化量ΔPmp」という。)が増加する)。
【0039】
すなわち、処理ブロック110が演算開始フラグF2を受信して演算を開始する時点におけるブレーキ液圧PmcとM/P圧PmpSの変化量(M/P圧変化量ΔPmp)との組合せが地点P1である場合、ブレーキペダル18が踏み込まれるとブレーキ液圧Pmcが増加し、これに伴って変化量ΔPmp(累計値)も増加する。その結果、地点P2に至る。
【0040】
その後、ブレーキペダル18が戻されるとブレーキ液圧Pmcが減少し、変化量ΔPmp(累計値)が増加する。その結果、地点P3に至る。再度、ブレーキペダル18が踏み込まれるとブレーキ液圧Pmcが増加し、これに伴って変化量ΔPmp(累計値)も増加する。そして、処理ブロック110の演算終了時点におけるブレーキ液圧PmcとM/P圧変化量ΔPmpとの組合せは地点P4となる。本実施形態では、地点P1から地点P4までを移動する間のM/P圧変化量ΔPmpをM/P圧推定消費量ΔPmpEとして用いる。
【0041】
なお、本実施形態において、M/P圧推定消費量ΔPmpEは、ブレーキブースタ20の負圧室200の圧力(負圧室圧力Pp)と比例関係にあることから負圧室圧力Ppから推定消費量ΔPmpEを求めることができる。また、本実施形態では、ブレーキペダル18が踏み込まれるときは、等温圧縮で変化する負圧室200の圧力変化から負圧室圧力Ppを演算する。さらに、ブレーキペダル18が戻されるときは、ブレーキブースタ20に基づく力のつり合いから負圧室圧力Ppを演算する。さらにまた、本実施形態では、ブレーキブースタ20の変圧室202の圧力(変圧室圧力Pr)も演算可能である。負圧室圧力Pp及び変圧室圧力Prの具体的な演算方法については後述する。
【0042】
処理ブロック110は、演算したM/P圧推定消費量ΔPmpEを、判定ブロック112、116及び処理ブロック120に出力する。
【0043】
判定ブロック112は、処理ブロック110からの推定消費量ΔPmpEが所定の閾値TH1(本実施形態では、100hPa)を上回るか否かを判定し、その判定結果を示す傾き演算トリガTr1を処理ブロック120に出力する。すなわち、傾き演算トリガTr1は、推定消費量ΔPmpEが閾値TH1より大きい場合にのみ処理ブロック120に出力される。
【0044】
判定ブロック114は、処理ブロック108からの実測消費量ΔPmpSが所定の閾値TH2(本実施形態では、100hPa)を上回るか否かを判定し、その判定結果を判定ブロック118に出力する。すなわち、傾き演算トリガTr2は、実測消費量ΔPmpSが閾値TH2より大きい場合にのみ判定ブロック118に出力される。
【0045】
判定ブロック116は、処理ブロック110からの推定消費量ΔPmpEが所定の閾値TH3(本実施形態では、10hPa)を上回るか否かを判定し、その判定結果を判定ブロック118に出力する。すなわち、傾き演算トリガTr3は、推定消費量ΔPmpEが閾値TH3より大きい場合にのみ判定ブロック118に出力される。これにより、処理ブロック120において傾きKpp(後述)を演算する際に、分母がゼロになることを防止することが可能となる。
【0046】
判定ブロック118は、判定ブロック114、116からの判定結果に基づくいわゆるAND型の論理回路と同様の機能を有する。具体的には、判定ブロック114からの判定結果が、実測消費量ΔPmpSが閾値TH2を上回るというものであり、且つ判定ブロック116からの判定結果が、推定消費量ΔPmpEが閾値TH3を上回るというものであるかを判定する。そして、判定ブロック118は、その判定結果を示す傾き演算トリガTr2を処理ブロック120に出力する。すなわち、傾き演算トリガTr2は、実測消費量ΔPmpSが閾値TH2を上回り且つ推定消費量ΔPmpEが閾値TH3を上回る場合にのみ処理ブロック120に出力される。
【0047】
処理ブロック120は、処理ブロック108からの実測消費量ΔPmpSと推定消費量ΔPmpEとの割合(傾きKpp)を演算し、フィルタ処理部122に出力する。なお、判定ブロック112から傾き演算トリガTr1が入力されない場合、判定ブロック118から傾き演算トリガTr2が入力されない場合、又は処理ブロック110から推定消費量ΔPmpEが入力されない場合、処理ブロック120は、実測消費量ΔPmpSと推定消費量ΔPmpEそれぞれに1を代入し、傾きKpp(=1)を出力する。
【0048】
フィルタ処理部122は、処理ブロック120からの傾きKppに対して所定のフィルタ処理を実行したものをフィルタ後の傾きKppfとする。具体的には、ゼロより大きく1より小さい係数αを設定し、係数αと前回のフィルタ後の傾きKppf(n−1)との積と、1と係数αとの差と今回の傾きKpp(n)との積とを足し合わせたものと今回のフィルタ後の傾きKppf(n)とする{Kppf(n)=α・Kppf(n−1)+(1−α)Kpp}。これにより、補正前の傾きKppの中から急激な変化をキャンセルし、安定した値を得ることができる。フィルタ処理部122で演算されたフィルタ後の傾きKppfは、記憶部74に記憶されると共に、判断ブロック126、128に出力される。
【0049】
判定ブロック126は、フィルタ後の傾きKppfが所定の閾値TH4(本実施形態では、0.50)を下回っているか否かを判定し、その結果を処理ブロック130に出力する。判定ブロック128は、フィルタ後の傾きKppfが所定の閾値TH5(本実施形態では、1.50)を上回っているか否かを判定し、その結果を処理ブロック130に出力する。
【0050】
処理ブロック130は、判定ブロック126、128からの出力に基づいて、負圧センサ40に異常が発生しているか否かを判定する。具体的には、判定ブロック126からの出力が、傾きKppfが閾値TH4を下回っていることを示すものである場合、又は判定ブロック128からの出力が、傾きKppfが閾値TH5を上回っていることを示すものである場合、処理ブロック130は、負圧センサ40に異常が発生していると判定する。そして、負圧センサ40に異常が発生している場合、処理ブロック130は、警告灯28に警告を表示すると共に、負圧センサ40に異常が発生したことを示す故障コードを記憶部74に記憶する。
【0051】
(3)M/P圧推定消費量ΔPmpEの演算の詳細な流れ
図7には、処理ブロック110においてM/P圧推定消費量ΔPmpEを演算するフローチャートが示されている。ステップS21において、処理ブロック110は、処理ブロック102からM/P圧PmpSの初期値PmpS1を取得する。ステップS22において、処理ブロック110は、処理ブロック104からブレーキ液圧Pmcを取得する。
【0052】
ステップS23において、処理ブロック110は、ブレーキ液圧Pmcの今回値{Pmc(n)}と前回値{Pmc(n−1)}との差であるブレーキ液圧変化量ΔPmcを演算する{ΔPmc=Pmc(n)−Pmc(n−1)}。
【0053】
ステップS24において、処理ブロック110は、ブレーキペダル18が踏込み中であるか否かを判定する。具体的には、ブレーキペダル18が踏込み中であるか否かを判定するための閾値(踏込み判定閾値TH_ΔPmcH)を事前に設定しておき、ステップS23で演算したブレーキ液圧変化量ΔPmcが、閾値TH_ΔPmcHを上回るか否かを判定する。ブレーキペダル18が踏込み中でない場合(S24:NO)、ステップS25に進む。
【0054】
ステップS25において、処理ブロック110は、ブレーキペダル18が戻し中であるか否かを判定する。具体的には、ブレーキペダル18が戻し中であるか否かを判定するための閾値(戻し判定閾値TH_ΔPmcL)を事前に設定しておき、ステップS23で演算したブレーキ液圧変化量ΔPmcが、閾値TH_ΔPmcLを下回るか否かを判定する。ブレーキペダル18が戻し中でない場合(S25:NO)、ステップS26に進む。
【0055】
ステップS26において、処理ブロック110は、負圧室圧力Ppの前回値{Pp(n−1)}をそのまま負圧室圧力Ppの今回値{Pp(n)}として保持すると共に、変圧室圧力Prの前回値{Pr(n−1)}をそのまま変圧室圧力Prの今回値{Pr(n)}として保持する。ステップS26の後は、ステップS30に進む。
【0056】
ステップS24に戻り、ブレーキペダル18を踏込み中である場合(S24:YES)、ステップS27において、処理ブロック110は、踏込み時に用いる負圧室圧力Pp及び変圧室圧力Prの演算式を選択し、ステップS29に進む。また、ステップS25において、ブレーキペダル18を戻し中である場合(S25:YES)、ステップS28において、処理ブロック110は、戻し時に用いる負圧室圧力Pp及び変圧室圧力Prの演算式を選択し、ステップS29に進む。
【0057】
ステップS29において、処理ブロック110は、ステップS27又はステップS28で選択した演算式を用いて負圧室圧力Pp及び変圧室圧力Prの今回値を演算する(具体的な演算については後述する。)。
【0058】
ステップS30において、処理ブロック110は、M/P圧推定消費量ΔPmpEを演算し、判定ブロック112、116及び処理ブロック120に出力する。推定消費量ΔPmpEは、次の式(1)で算出される。
ΔPmpE=PmpE−PmpS1 ・・・(1)
【0059】
ステップS31において、処理ブロック110は、処理ブロック106からの演算開始フラグF2を契機として開始された演算が終了したか否かを判定する。演算処理が終了していない場合(S31:NO)、ステップS22に戻る。演算処理が終了した場合(S31:YES)、今回の処理を終える。
【0060】
(4)具体的な演算方法
(a)定義
次に、負圧室圧力Pp及び変圧室圧力Prの具体的な演算方法について説明する。最初に、演算に用いる種々の数値を以下のように定義しておく。
(i)変数
Pp:負圧室圧力[Pa]
Pr:変圧室圧力[Pa]
x:ブレーキブースタ20におけるダイアフラム204の移動量[m]
(ii)定数
A:ダイアフラム204の面積[m
a:マスタシリンダ50の有効径[m
Lp:負圧室200のストローク量[m]
Lr:変圧室202のストローク量[m]
S:ブレーキブースタ20の定数{倍率(サーボ比)−1}[無単位]
mc0:マスタシリンダ50の起動荷重[N]
mc:マスタシリンダ50の効率[無単位]
(iii)センサ値
Pmp:マスタパワー圧[Pa]
Pb:配管62における吸気圧[Pa]
Pmc:ブレーキ液圧[Pa]
【0061】
(b)ブレーキペダル18の踏込み時
(i)負圧室圧力Pp
閉じられた空間中の気体を等温圧縮する場合、圧縮前の圧力P1及び体積V1と圧縮後の圧力P2及び体積V2は、ボイルの法則に基づき、次の式(2−1)のように表すことができる。
P1・V1=P2・V2 ・・・(2−1)
【0062】
式(2−1)を変形すると、式(2−2)を導くことができる。
P1=(P2・V2)/V1 ・・・(2−2)
【0063】
本実施形態の負圧室200中の空気も上記式(2−2)を適用可能である。
【0064】
また、負圧室200中の空気の場合、上記式(2−2)では、体積V1、V2の代わりに、負圧室200のストローク量Lp及びダイアフラム204の移動量xを用いて下記の式(2−3)とすることができる。
【数1】

【0065】
式(2−3)において「n−1」はブレーキペダル18の踏込み前の状態を示し、「n」はブレーキペダル18の踏込み後の状態を示す。
【0066】
また、ダイアフラム204の移動量xは、M/P圧PmpSの関数として以下の式(2−4)で示すことができる。
x=f(Pmc) ・・・(2−4)
【0067】
このため、上記式(2−3)及び式(2−4)より、次の式(2−5)を導くことができる。
【数2】

ここで、負圧室圧力Ppは、M/P圧PmpSの推定値(推定M/P圧PmpE)とみなすことができる。
【0068】
従って、上記式(2−5)によれば、ブレーキペダル18の踏込み前後のブレーキ液圧Pmcから負圧室圧力Pp(=推定M/P圧PmpE)を演算することができる。
【0069】
(ii)変圧室圧力Pr
負圧室200と変圧室202との間のダイアフラム204では力が釣り合うため、次の式(3−1)を導くことができる。
【数3】

【0070】
上記式(3−1)を変形すると式(3−2)を導くことができ、さらに式(3−2)から式(3−3)を導くことができる。
【数4】


【数5】

【0071】
ここで、上記式(2−5)及び式(3−3)より、次の式(3−4)を導くことができる。
【数6】

【0072】
ここで、上記のように、ダイアフラム204の移動量xは、M/P圧PmpSの関数として示すことができる{上記式(2−4)参照}。従って、変圧室圧力Prも、ブレーキペダル18の踏込み前後のブレーキ液圧Pmcから演算することができる。
【0073】
(c)ブレーキペダル18の戻し時
広く知られている気体の状態方程式は、下記の式(4−1)で示される。
PV=nRT ・・・(4−1)
【0074】
上記式(4−1)において、Pは気体の圧力、Vは気体が占める体積、nは気体の物質量(モル数)、Rは気体定数、Tは気体の熱力学温度である。
【0075】
ここで、負圧室200は、閉じられた空間であるため、気体の状態方程式{式(4−1)}より、次の式(4−2)が導かれる。
nR(n)+nP(n)=nR(n−1)+nP(n−1) ・・・(4−2)
【0076】
さらに、本実施形態の構成では、負圧室圧力Pp、変圧室圧力Pr、負圧室200のストローク量Lp、変圧室202のストローク量Lr、ダイアフラム204の移動量xを用いて、式(4−2)を式(4−3)のように変形することが可能である。
Pr(n)・{Lr+x(n)}+Pp(n)・{Lp−x(n)}=Pr(n−1)・{Lr+x(n−1)}+Pp(n−1)・{Lp−x(n−1)} ・・・(4−3)
【0077】
ここで、次のように定義をする。
a={Lr+x(n)}
β={Lp−x(n)}
γ=Pr(n−1)・{Lr+x(n−1)}
d=Pp(n−1)・{Lp−x(n−1)}
【0078】
そうすると、式(4−3)及び上記各定義より、次の式(4−4)を導くことができる。
【数7】

ここで、上記式(3−2)及び式(4−4)より、負圧室圧力Pp及び変圧室圧力Prを解くと、次の式(4−5)及び式(4−6)を導くことができる。
【数8】

【数9】

【0079】
ここで、上記のように、ダイアフラム204の移動量xは、M/P圧PmpSの関数として示すことができる{上記式(2−4)参照}。従って、負圧室圧力Pp及び変圧室圧力Pr、ブレーキペダル18の踏込み前後のブレーキ液圧Pmcから演算することができる。そして、負圧室圧力Ppは、M/P圧PmpSの推定値(推定M/P圧PmpE)とみなすことができる。
【0080】
4.本実施形態の効果
以上のように、本実施形態によれば、液圧センサ38が検出したブレーキ液圧Pmcに基づくM/P圧推定値PmpE(M/P圧推定消費量ΔPmpE)と、負圧センサ40が検出したM/P圧PmpS(M/P圧実測消費量ΔPmpS)とを比較して負圧センサ40の異常を検出する。このため、吸気圧センサの出力を用いなくても負圧センサ40の異常を簡易な構成で判定することが可能となる。従って、車両10(又は走行駆動源)の種類{ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車、電気自動車(ハイブリッド車及び燃料電池車を含む。)}に依存することなく、負圧センサ40の異常を判定することができる。また、ブレーキブースタ20における負圧をブレーキ液圧Pmcにより推定するため、他のセンサ(例えば、別の負圧センサ、吸気圧センサ)と組み合わせれば、フェールセーフの観点で優れた構成を実現可能となる。
【0081】
本実施形態では、M/P圧推定値PmpE(M/P圧推定消費量ΔPmpE)の算出に、ブレーキペダル18の操作入力の増加と減少の両方を用いる。このため、ブレーキペダル18の操作入力の増加又は減少の一方を用いるよりも推定精度を向上することが可能となる。
【0082】
本実施形態では、ECU26(負圧センサ異常判定機能94)は、M/P圧実測消費量ΔPmpSが閾値TH2に満たない場合、M/P圧推定値PmpEに基づく負圧センサ40の異常検出を行わない(図5の判定ブロック114)。例えば、実測消費量ΔPmpSが小さい(すなわち、負圧の変動がわずかである)場合、M/P圧PmpSを用いても誤判定が生じる可能性がある。このような場合、負圧センサ40の異常検出を行わないことで、異常検出の精度を高く維持することが可能となる。
【0083】
ECU26(負圧センサ異常判定機能94)は、実測消費量ΔPmpSが閾値H2を上回る場合(判定ブロック114)、又は推定消費量ΔPmpEが閾値TH1、TH3を上回る場合(判定ブロック112、116)にのみ負圧センサ40の異常判定を実行するよう構成される。これにより、負圧センサ40の異常検出を好適な場合のみに実行することで、異常検出の精度を高く維持することが可能となる。
【0084】
B.変形例
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0085】
1.車両10
上記実施形態では、車両10は、ディーゼルエンジン車であったが、これに限らず、例えば、電気自動車(ハイブリッド車及び燃料電池車を含む。)又はガソリンエンジン車であってもよい。
【0086】
2.負圧ポンプ60(負圧の発生手段及び方法)
上記実施形態では、負圧ポンプ60は、エンジン12により駆動される直動式であったが、これに限らない。例えば、負圧ポンプ60は、電動式であってもよい。
【0087】
上記実施形態では、負圧システム24における負圧(M/P圧PmpS)は、負圧ポンプ60、EGRバイパス流路14及びターボチャージャ16により発生可能とされたが、負圧を発生する手段及び方法は、これに限らない。例えば、負圧ポンプ60、EGRバイパス流路14及びターボチャージャ16のいずれか1つ又は2つで行うことも可能である。
【0088】
3.負圧センサ40の異常判定
上記実施形態では、異常判定を行うタイミングとして、アイドル停止時及びヒル・ホールド時を挙げたが、これに限らず、例えば、車両10の発進時(ブレーキペダル18を戻す時)又は走行時であってもよい。
【0089】
上記実施形態では、負圧センサ40の異常判定の条件として、M/P圧実測消費量ΔPmpSが閾値TH2を上回ること(判定ブロック114)、M/P圧推定消費量ΔPmpEが閾値TH1、TH3を上回ること(判定ブロック112、116)を挙げたが、これに限らない。例えば、ブレーキ液圧Pmcが所定の基準値を満たす場合にのみ負圧センサ40の異常判定を実行してもよい。
【0090】
4.推定M/P圧PmpE及びM/P圧推定消費量ΔPmpE
上記実施形態では、推定M/P圧PmpE及びM/P圧推定消費量ΔPmpEを、マスタシリンダ50におけるブレーキ液圧Pmc(マスタシリンダ圧)に基づいて演算したが、これに限らず、例えば、ホイールシリンダ54におけるブレーキ液圧(ホイールシリンダ圧)を用いてもよい。
【0091】
5.その他
上記実施形態では、液圧センサ38の検出値(ブレーキ液圧Pmc)に基づいて負圧センサ40の異常を判定したが、反対に、負圧センサ40の検出値から液圧センサ38の動作異常を判定することもできる。換言すると、液圧センサ38及び負圧センサ40以外に液圧センサ38又は負圧センサ40の異常を監視する手段(例えば、別の負圧センサ又は特許文献1のような吸気圧センサ)を設けておけば、フェールセーフの観点で優れた構成とすることができる。
【符号の説明】
【0092】
10…車両 11…車両用ブレーキ装置
18…ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)
20…ブレーキブースタ(負圧式倍力装置)
26…ECU(負圧推定手段、異常検出手段、操作入力増加判定部、操作入力減少判定部、負圧消費量算出手段、推定値算出手段)
38…液圧センサ(液圧検出手段) 40…負圧センサ(負圧検出手段)
50…マスタシリンダ 54…ホイールシリンダ
58…車輪 200…負圧室
Pmc…ブレーキ液圧 PmpS…M/P圧(負圧検出値)
PmpE…推定M/P圧(負圧推定値) ΔPmpE…M/P圧推定消費量
ΔPmpS…M/P圧実測消費量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧式倍力装置の負圧室に接続された負圧検出手段と、ブレーキ操作部材への操作入力に対応して前記負圧式倍力装置によって倍力駆動されるマスタシリンダとを備え、前記マスタシリンダにより発生した液圧によってホイールシリンダを加圧して車輪を制動する車両用ブレーキ装置であって、
マスタシリンダ圧又はホイールシリンダ圧を検出する液圧検出手段と、
前記液圧検出手段が検出した前記マスタシリンダ圧又は前記ホイールシリンダ圧に基づき前記負圧式倍力装置における負圧推定値を算出する負圧推定手段と、
前記負圧推定手段が推定した負圧推定値と前記負圧検出手段が検出した負圧検出値とを比較して前記負圧検出手段の異常を検出する異常検出手段と
をさらに備えることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ブレーキ装置において、
前記負圧推定手段は、
前記ブレーキ操作部材の操作入力の増加を判定する操作入力増加判定部と、
前記ブレーキ操作部材の操作入力の減少を判定する操作入力減少判定部と、
前記操作入力の増加及び減少に伴う負圧消費量を前記負圧推定値を示すものとして算出する負圧消費量算出手段と
を備えることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用ブレーキ装置において、
前記異常検出手段は、前記負圧検出値の時間変化量が所定値に満たない場合、前記負圧推定値に基づく前記負圧検出手段の異常検出を行わない
ことを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ装置において、
前記異常検出手段は、前記負圧検出値、前記負圧推定値、前記マスタシリンダ圧及び前記ホイールシリンダ圧の少なくとも1つが所定の基準値を満たす場合にのみ前記負圧検出手段の異常判定を実行するよう構成される
ことを特徴とする車両用ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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