説明

車両用メータ

【課題】スピーカを備える車両用メータにおいて、スピーカのサイズや位置の変更が生じた場合でも、メータ全体の部品変更が必要とならない技術を提供する。
【解決手段】車両用メータ10において、配線板30には、スピーカシステム70が配置されている。スピーカシステム70は、配線板30の背面側であって内機20の下側の所定の位置にスピーカ72が取り付けられる。配線板30には、スピーカ72が取り付けられた位置に前後方向を貫通する放音孔50が形成される。配線板30の背面には、スピーカ72を覆うように箱状のエンクロージャー80が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用メータに係り、特に、スピーカを搭載した車両用メータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車などの車両には、スピードメータやタコメータなどが搭載された車両用メータ(計器板)が運転席前方のインストルメントパネルの領域に設けられている。そして、警告音を出力するため、スピーカシステムが備えられている。
【0003】
そのようなメータにおいて、ドライバーに対する音響特性を良好にすることが可能な技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。図6は、そのようなスピーカシステムを備えるメータの例を示している。このメータでは、回路基板301とケース(カバー部材311)でエンクロージャーを形成している。回路基板301の背面に配置されたスピーカ223と、発せられる音を回路基板301側に導く導音部224とが備わる。導音部224は、底壁部313を有する枠体からなり、カバー部材311に一体に形成され、基板背面のスピーカ223の音をカバー部材311で導音する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−39886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、特許文献1に開示のように、ケースと基板とでエンクロージャーを形成する構造にしたり、インパネやケース、裏カバーで導音部材を一体化している為、スピーカのサイズ変更や位置変更が生じると、メータ全体の部品変更が必要となったりすることから、対策が求められていた。
【0006】
本発明の目的は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、車両用メータに関する。この車両用メータは、配線基板に取り付けられたスピーカと、前記配線基板において、前記スピーカが取り付けられた位置に、前記スピーカより小さく、貫通して設けられた放音孔と、前記配線基板の背面側に、前記放音孔を覆って形成されるエンクロージャーと、を備え、前記エンクロージャーは、少なくも一部が前記配線基板の背面に設けられた裏カバーとは別体に設けられるとともに、前記裏カバーより外側まで形成されている。
前記エンクロージャーは、側面部分の少なくとも一部が前記裏カバーと一体に構成された枠部と、前記枠部を背面側から覆うキャップ状の底面部とを備えてもよい。
また、前記エンクロージャーの底面部分に開口を備えてもよい。
また、前記エンクロージャーの側面部分が、底面方向に向かうにしたがって前記スピーカの外側に向かって開くように形成されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スピーカを備える車両用メータにおいて、スピーカのサイズや位置の変更が生じた場合でも、メータ全体の部品変更が必要とならない技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る、車両用メータの断面図である。
【図2】実施形態の第1の変形例に係る、車両用メータの断面図である。
【図3】実施形態の第2の変形例に係る、車両用メータの断面図である。
【図4】実施形態の第3の変形例に係る、車両用メータの断面図である。
【図5】実施形態の第4の変形例に係る、車両用メータの断面図である。
【図6】従来技術に係る、車両用メータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本実施形態における車両用メータ10の断面図を示している。図示のように、この車両用メータ10はひとつのケース26の中に複数の計器としてスピードメータ11やタコメータ、各種警告灯等を備えている。ここでは、スピードメータ11が配置される領域の断面図を示している。なお、本実施形態では、後述する指針16や表ガラス12が配置される図示左側を前側(表面)、裏カバー40が配置される図示右側を後側(背面)として説明する。
【0012】
スピードメータ11は、中央部の軸により支持されている回動可能な指針16と文字板18とを備えている。文字板18上には、指針16が指示する情報を読み取るために必要な可視情報が目盛り意匠や数字意匠等として形成されている。
【0013】
指針16を支持している軸は、文字板18の背後に配置された内機20と接続されている。内機20は、指針16を動かすための駆動機構を内蔵している。軸27の近傍、すなわち文字板18の背後の中央付近に光源22が固定されている。
【0014】
文字板18の背後には、ケース26の一部分として、曲面形状の光反射面13が形成されている。この光反射面13は、点状の光源22から出射される光を反射して照明光を導き、照明対象の各領域の照度分布を均一化する。さらに、視認性を向上のために、ケース26の上部には見返し14が形成されている。また、文字板18の前方側には透明な表ガラス12が配置されている。内機20へ配線するために用いられる配線板30は光反射面13背後に配置されている。また、内機20の背後は裏カバー40で覆われている。
【0015】
さらに、配線板30には、スピーカシステム70が配置されている。具体的には、スピーカシステム70は、スピーカ72とエンクロージャー80とを備える。スピーカシステム70は、配線板30の背面側であって内機20の下側の所定の位置にスピーカ72が取り付けられる。
【0016】
また、配線板30には、スピーカ72が取り付けられた位置に前後方向を貫通する放音孔50が形成される。この放音孔50は、スピーカ72の外形より小さく設定されている。さらに、配線板30の背面には、スピーカ72を覆うように箱状(筒状)のエンクロージャー80が設けられる。ここでは、エンクロージャー80の底面81が裏カバー40よりも後方側まで位置している。したがって、裏カバー40には、エンクロージャー80を配置可能とするために、エンクロージャー80の側面形状に対応したスピーカ配置孔48が形成されている。
【0017】
このような構造とすることで、スピーカ72の音圧を向上させることができる。さらに、スピーカ72から前方(表面)側及び後方(背面)側の両方に音が出ることを利用して、配線板30には放音孔50が設けられていることから、スピーカ72の実装面にかかわらず車両用メータ10の表面側(図示で左側)に音が向かうことになる。背面側に向かう音は、筒状のエンクロージャー80で遮断されるため、表面側に向かう音との干渉による減衰が防止される。
【0018】
別体の筐体(エンクロージャー80)とし、裏カバー40や配線板30に円錐や、三角錐、四角錐等のラッパ状の筐体を組み付け、ラッパやメガホンの様に、スピーカ72に対して横方向に逃げる音を鉛直方向に指向性をつけることで、音圧のロスを低減することができる。また、スピーカ72の種類別により、キャビティの容量によって、筐体を組み替えることで、適正な容量が確保可能となる。
【0019】
以上、本実施形態によると、裏カバー40に一体、又は別体で、エンクロージャー80を形成することで、配線板30、ケース26には関係無く、裏カバー40とエンクロージャー80だけで、簡易的に音圧調整が可能となる。また、エンクロージャー80を取り替えるだけで、スピーカ72が配線板30の表面・背面側のいずれに配置されても、適正に対応することができる。
【0020】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下に、そのような変形例について例示する。なお、上記の実施形態と異なる構成等について主に説明し、共通する部分については適宜同一符号を付して説明を省略する。
【0021】
図2は、第1の変形例に係る車両用メータ110の断面図である。ここでは、特にスピーカ72が配置される領域を図示している。この車両用メータ110は、スピーカシステム170が実施形態と異なっており、エンクロージャー180の側面部分が、裏カバー40と一体となって形成された裏カバー傾斜凹部42となっている。裏カバー傾斜凹部42は、前方側の端部は、配線板30に固定される。この固定に、合成ゴム等の弾性体が介装されてもよい。さらに、裏カバー傾斜凹部42は、背面方向に進むにしたがって外側に開くように傾斜している。特に、スピーカ72から出力した音が裏カバー傾斜凹部42で背面方向に反射するように角度が設定されることが好ましい。また、裏カバー傾斜凹部42を設けることで、後述のキャップ状の蓋体188の側面を垂直な立壁とすることができるため、蓋体188を樹脂成形等する際の金型の抜け工程等を効率的に行うことができる。
【0022】
また、裏カバー傾斜凹部42の背面側の端部には、開口部分を覆うようにキャップ状の蓋体188が取り付けられる。具体的には、蓋体188に設けられた係止部189が、裏カバー40において裏カバー傾斜凹部42近傍に形成された係止用孔43に係止することで、着脱可能に固定される。この蓋体188の大きさ等を変更することで、エンクロージャー180を変更することになり、スピーカシステム170の音量、音質等の調整が可能となる。
【0023】
なお、図2右側部分に示すように、各種のエンクロージャー180a〜180cを採用することができる。上側に例示するエンクロージャー180aは、底面181と、側面182とを備え、底面181と対抗する面側は開口となっている。この開口部分は、配線板30又は裏カバー40に固定される。さらに、底面181には放音用開口185aが設けられている。
【0024】
真中に例示するエンクロージャー180bは、底面181と、底面181から垂直前方に延出する側面垂直部183と、側面垂直部183から延出する側面傾斜部184とを備える。側面傾斜部184は、上記の裏カバー傾斜凹部42と同様に、外側(背面側)に向かうにつれて広がるように傾斜が設定されている。この開口部分は、配線板30又は裏カバー40に固定される。さらに、下側に例示するエンクロージャー180cは、エンクロージャー180bの底面181に放音用開口185cが設けられた構成となっている。
【0025】
図3は、第2の変形例に係る車両用メータ210の断面図である。このスピーカシステム270では、スピーカ272が、図2で示したスピーカシステム170のスピーカ72の位置を変更し、配線板30の前面側に取り付けられる。なお、エンクロージャー180については、上記のように各種のエンクロージャー180a〜180cを採用できる。
【0026】
図4は、第3の変形例に係る車両用メータ410の断面図である。このスピーカシステム470では、上述の第1の変形例のケース26と裏カバー40とを一体とした構造の一体ケース426としている。さらに、キャップ(蓋体188)の機能を裏カバー440が果たしている。具体的には、裏カバー傾斜凹部42に相当する傾斜凹部428が一体ケース426に設けられている。さらに、傾斜凹部428を覆うキャップ状凸部444を備えた裏カバー440が、一体ケース426の背面部分427に取り付けられている。このような構成において、音量等の調整を裏カバーのみで行えるので、設計変更等に容易に対応が可能となる。
【0027】
図5は、第4の変形例に係る車両用メータ510の断面図である。このスピーカシステム570では、エンクロージャー580のキャップ状の蓋体588に、音特性調整用穴590が設けられている。ここでは、3つの音特性調整用穴590が設けられており、メータ構造にすることで減衰した周波数成分を選択的に補うことができる。なお、3つの音特性調整用穴590のいずれかをゴム栓等で塞ぐことで、製造後であっても音質の調整を柔軟に行うことできる。
【符号の説明】
【0028】
10、110、210、410、510 車両用メータ
12 表ガラス
14 見返し
16 指針
20 内機
22 光源
26 ケース
30 配線板
40、440 裏カバー
42 裏カバー傾斜凹部
48 スピーカ配置孔
50 放音孔
70、170、270、470、570 スピーカシステム
72、272 スピーカ
80、180、180a、180b、180c、580 エンクロージャー
81、181 底面
182 側面
183 側面垂直部
184 側面傾斜部
185a、185c 放音用開口
188、588 蓋体
426 一体ケース
428 傾斜凹部
444 キャップ状凸部
590 音特性調整用穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板に取り付けられたスピーカと、
前記配線基板において、前記スピーカが取り付けられた位置に、前記スピーカより小さく、貫通して設けられた放音孔と、
前記配線基板の背面側に、前記放音孔を覆って形成されるエンクロージャーと、
を備え、
前記エンクロージャーは、少なくも一部が前記配線基板の背面に設けられた裏カバーとは別体に設けられるとともに、前記裏カバーより外側まで形成されている
ことを特徴とする車両用メータ。
【請求項2】
前記エンクロージャーは、側面部分の少なくとも一部が前記裏カバーと一体に構成された枠部と、
前記枠部を背面側から覆うキャップ状の底面部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用メータ。
【請求項3】
前記エンクロージャーの底面部分に開口を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用メータ。
【請求項4】
前記エンクロージャーの側面部分が、底面方向に向かうにしたがって前記スピーカの外側に向かって開くように形成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の車両用メータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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