説明

車両用ワイパ及びカバー部材

【課題】アームピースとリテーナとの境界部分の段差を無くすためのカバー部材を用いる車両用ワイパであって、そのカバー部材をアームピース先端のフック部と連結するための連結部材の一般的な構造のものに適用可能とし、適応性を向上させる。
【解決手段】リテーナ5との段差解消のためのカバー部材10には、アームピース6に対して装着するための装着部として、各側壁部10bの各係止突起10c、係止段差10d及び該カバー部材10の先端部のフック係合部10f(湾曲係合面19g)が設けられる。つまり、カバー部材10は、それら各係止突起10c、係止段差10d及びフック係合部10fにて、連結部材9とは独立してアームピース6の所定部位とそれぞれ係止して装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のウインドガラスを払拭するための車両用ワイパ及びその車両用ワイパに用いるカバー部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ワイパは、ワイパモータにて回動されるピボット軸に基端部が固定されるワイパアームと、該ワイパアームの先端部に回動可能に連結されるワイパブレードとからなり、ピボット軸の作動によりウインドシールドガラス(フロントガラス)の払拭面を払拭するものである。
【0003】
ところで、ワイパアームは、ピボット軸に固定されるアームヘッドに対し断面コ字状のリテーナの基端部が連結されそのリテーナの先端部に平板状のアームピースが結合されてなり、リテーナとアームピースとを別体とするのが一般的となっている。これは、一定基準のリテーナに対しアームピースの長さや形状の車種毎の設定を可能とするためである。これにより、様々な種類のワイパアームに対応させつつ、一定基準のリテーナを大量使用(標準化)することによる低コスト化を図ることができる。
【0004】
しかしながら、リテーナとアームピースとを別体とすると、その境界部分に段差が生じてしまう。近年の車両に搭載するワイパではデザイン性も重要視されているため、その段差がデザイン性を悪化させるという問題がある。
【0005】
そこで、リテーナとアームピースとの境界部分の段差を無くす対策として、例えば特許文献1では、アームピースをリテーナ側に向けて次第に太く形成し、境界部分におけるアームピースの外側面がリテーナの外側面と面一となるようにしている。
【0006】
ところが、このような構成では、アームピースに一般的に適用される均一な板厚の板材を用いて製造することが困難であるため、上記形状のアームピースを形成するための特別な板材を必要とし高価なものとなってしまう。そのため、アームピース自体の形状変更は得策ではなかった。
【0007】
そこで、アームピース自体の形状変更を伴わない対応策が例えば特許文献2にて示されている。因みに、特許文献2では、アームピースとワイパブレードとの連結を行うべく該ワイパブレードに取着される連結部材に、アームピース先端のU字状のフック部を連結した際の抜け止めを行うロック機能を備えたワイパが示されている。この連結部材にはフック部がスライド装着されるが、このような連結部材に対してロック部材が回動可能に軸連結されており、連結部材にフック部をスライド装着した後にロック部材をフック部の抜け方向で係止する位置まで回動させることで、該ロック部材にてフック部の抜け止めがなされる構成となっている。
【0008】
このようなロック部材の一部をアームピースとリテーナとの境界部分まで延長して該アームピースの外側面を覆うように構成し、その延長部分の外側面をリテーナの外側面と面一とすることで段差を無くすようにしている。
【特許文献1】特開2000−344057号公報
【特許文献2】特開2005−29060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2においては、回動可能に軸連結されたロック部材を有するタイプの連結部材でしか適用できないため、ロック部材を有しない最も一般的な構造(U字状のフック部に弾性係合する爪部によって抜け防止するタイプ)の連結部材を備えるワイパには適用できず、適応性が低かった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、アームピースとリテーナとの境界部分の段差を無くすためのカバー部材及びそのカバー部材を用いる車両用ワイパであって、そのカバー部材をアームピース先端のフック部と連結するための連結部材の一般的な構造のものに適用可能とし、適応性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ピボット軸に固定するためのアームヘッドと該アームヘッドに基端部が回動可能に連結されるリテーナと該リテーナの先端部にて包囲するように結合される平板状のアームピースとを備えてなるワイパアームを有し、払拭面を払拭するワイパブレードに回動可能に装着される連結部材に対し前記アームピースの先端部が装着されて前記アームピースの先端部に前記ワイパブレードが支持されてなる車両用ワイパであって、前記アームピースの先端部から前記アームピースと前記リテーナとの境界部分までの少なくとも上面を覆うとともにその境界部分において前記リテーナの外側面と面一とし、更に前記アームピースに対して装着するための装着部を有するカバー部材が用いられ、前記カバー部材が前記装着部にて前記アームピースに装着されて構成されたことをその要旨とする。
【0012】
この発明では、アームピースの先端部からリテーナとの境界部分までの少なくとも上面を覆い境界部分でリテーナの外側面と面一とするカバー部材に、アームピースに対して装着するための装着部が設けられる。そして、カバー部材は、その装着部にてアームピースに例えば着脱可能に装着される。つまり、カバー部材をアームピースに装着する構成とし、アームピースの先端部とワイパブレードとを連結するための連結部材とは独立させたため、一般的な構造の連結部材を備えるワイパに適用可能となり、適応性が向上する。
【0013】
請求項2に記載の発明は、ピボット軸に固定するためのアームヘッドと該アームヘッドに基端部が回動可能に連結されるリテーナと該リテーナの先端部にて包囲するように結合される平板状のアームピースとを備えてなるワイパアームを有し、払拭面を払拭するワイパブレードに回動可能に装着される連結部材に対し前記アームピースの先端部が装着されて前記アームピースの先端部に前記ワイパブレードが支持されてなり、更に前記払拭面に洗浄液を供給するウォッシャノズルが一体に備えられて構成される車両用ワイパであって、前記アームピースの先端部から前記アームピースと前記リテーナとの境界部分までの少なくとも上面を覆うとともにその境界部分において前記リテーナの外側面と面一とする本体部と、該本体部の幅方向両側からそれぞれ下方に延びる一対の側壁部と、前記アームピースに対して装着するための装着部と、前記各側壁部間に前記ウォッシャノズルを装着するためのノズル固定部とを有する前記カバー部材が用いられ、前記カバー部材が前記装着部にて前記アームピースに装着されて構成されたことをその要旨とする。
【0014】
この発明では、アームピースの先端部からリテーナとの境界部分までの少なくとも上面を覆い境界部分でリテーナの外側面と面一とする本体部と該本体部の幅方向両側に設けた一対の側壁部とを有するカバー部材に、アームピースに対して装着するための装着部が設けられ、また各側壁部間にはウォッシャノズルを装着するためのノズル固定部が設けられる。そして、カバー部材は、その装着部にてアームピースに例えば着脱可能に装着される。つまり、カバー部材をアームピースに装着する構成とし、アームピースの先端部とワイパブレードとを連結するための連結部材とは独立させたため、一般的な構造の連結部材を備えるワイパに適用可能となり、適応性が向上する。また、カバー部材の各側壁部間に設けたノズル固定部に例えば着脱可能にウォッシャノズルが装着されることから、払拭面の近傍位置にウォッシャノズルを配置でき、走行風等の影響を受け難く、所望の着水点にウォッシャノズルから洗浄液を的確に供給できる。また、ノズル固定部は各側壁部間に設けられるので、ウォッシャノズルを各側壁部にて隠すことができて見栄えの悪化を防止できる。特に、アームピースに着脱可能なカバー部材であれば、一般的なワイパアームに対して後からウォッシャノズル付きワイパとして容易に設定できる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用ワイパにおいて、前記アームピースは、先端部においてその先端部分が下方から基端部側へとU字状に曲げ戻されたフック部を有し、前記ワイパブレードは、前記連結部材を収容するとともに前記連結部材に前記フック部を装着するための開口部を有するホルダ部を有しており、前記カバー部材には、前記ホルダ部の開口部において前記フック部よりも先端側に開口する部分を閉塞する開口閉塞部が該カバー部材の先端部に設けられていることをその要旨とする。
【0016】
この発明では、カバー部材には、ホルダ部の開口部においてアームピースのフック部よりも先端側に開口する部分を閉塞する開口閉塞部が該カバー部材の先端部に設けられる。つまり、カバー部材の装着に伴って該カバー部材の開口閉塞部がホルダ部の開口部の無用な開口部分を閉塞するため、部品数を増やすことなく、その開口部を閉塞することによる見栄えの向上とともに、該開口部から内部への異物の侵入や付着を防止できる。これにより、例えば回動する連結部材に異物が係止することが防止されるため、連結部材の円滑な回動、即ちワイパアームに対するワイパブレードの円滑な回動が妨げられない。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ワイパにおいて、前記アームピースは、先端部においてその先端部分が下方から基端部側へとU字状に曲げ戻されたフック部を有するとともに、前記カバー部材の先端部方向への移動を規制する係止部とを有するものであり、前記カバー部材に設けられる装着部として、前記フック部の円弧状湾曲部分の外側面に倣った湾曲係合面を有して該円弧状湾曲部分と少なくとも基端部方向に係合するフック係合部と、前記アームピースの係止部と少なくとも先端部方向に係止する被係止部とが備えられていることをその要旨とする。
【0018】
この発明では、カバー部材に設けられる装着部として、フック部の円弧状湾曲部分の外側面に倣った湾曲係合面を有して該円弧状湾曲部分と少なくとも基端部方向に係合するフック係合部と、アームピースの係止部と少なくとも先端部方向に係止する被係止部とが備えられる。つまり、カバー部材に設けたフック係合部及び被係止部がアームピースの所定部位にそれぞれ係止することで、アームピースに対するカバー部材の先端及び基端側への移動がともに規制される。そのため、カバー部材がアームピースにがたつきなく、しかもカバー部材とリテーナとの間の隙間が装着後において拡大しないように装着できる。また、フック係合部の湾曲係合面は、当接するフック部の円弧状湾曲部分の外側面に倣った湾曲形状をなしているため、互いはより確実に係合される。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の車両用ワイパにおいて、前記ウォッシャノズルは、前記ノズル固定部への装着状態において、前記アームピースに係止固定される係止片を有することをその要旨とする。
【0020】
この発明では、ウォッシャノズルは、ノズル固定部への装着に加え、自身の係止片にてアームピースに係止固定される。これにより、ウォッシャノズルをより強固で安定して固定できる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項2又は5に記載の車両用ワイパにおいて、前記ウォッシャノズルは、前記アームピースと前記ノズル固定部に設けた係止突起とによって挟持されるように装着されることをその要旨とする。
【0022】
この発明では、ウォッシャノズルは、アームピースとノズル固定部に設けた係止突起とによって挟持されるように装着される。つまり、ウォッシャノズルを挟持する際、その一方をアームピースとしていることから、ウォッシャノズルを挟持固定する際の突起等を少なく構成でき、ノズル固定部の形状の簡素化及び小型化等に貢献できる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、ピボット軸に固定するためのアームヘッドと該アームヘッドに基端部が回動可能に連結されるリテーナと該リテーナの先端部にて包囲するように結合される平板状のアームピースとを備えてなるワイパアームを有し、払拭面を払拭するワイパブレードに回動可能に装着される連結部材に対し前記アームピースの先端部が装着されて前記アームピースの先端部に前記ワイパブレードが支持されてなる車両用ワイパに用いられるカバー部材であって、前記アームピースの先端部から前記アームピースと前記リテーナとの境界部分までの少なくとも上面を覆うとともにその境界部分において前記リテーナの外側面と面一とし、更に前記アームピースに対して装着するための装着部が設けられていることをその要旨とする。
【0024】
この発明のカバー部材を上記請求項1のようにワイパアームのアームピースに装着することで、上記請求項1と同様の作用効果を有する。
請求項8に記載の発明は、ピボット軸に固定するためのアームヘッドと該アームヘッドに基端部が回動可能に連結されるリテーナと該リテーナの先端部にて包囲するように結合される平板状のアームピースとを備えてなるワイパアームを有し、払拭面を払拭するワイパブレードに回動可能に装着される連結部材に対し前記アームピースの先端部が装着されて前記アームピースの先端部に前記ワイパブレードが支持されてなり、更に前記払拭面に洗浄液を供給するウォッシャノズルが一体に備えられて構成される車両用ワイパに用いられるカバー部材であって、
前記アームピースの先端部から前記アームピースと前記リテーナとの境界部分までの少なくとも上面を覆うとともにその境界部分において前記リテーナの外側面と面一とする本体部と、該本体部の幅方向両側からそれぞれ下方に延びる一対の側壁部と、前記アームピースに対して装着するための装着部と、前記各側壁部間に前記ウォッシャノズルを装着するためのノズル固定部とが設けられていることをその要旨とする。
【0025】
この発明のカバー部材を上記請求項2のようにワイパアームのアームピースに装着することで、上記請求項2と同様の作用効果を有する。
【発明の効果】
【0026】
従って、上記記載の発明によれば、アームピースとリテーナとの境界部分の段差を無くすためのカバー部材及びそのカバー部材を用いる車両用ワイパであって、そのカバー部材をアームピース先端のフック部と連結するための連結部材の一般的な構造のものに適用でき、適応性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施の形態の車両用ワイパ1を示す。車両用ワイパ1は、ワイパモータにて回動されるピボット軸(ともに図示略)に基端部が固定されるワイパアーム2と、該ワイパアーム2の先端部に回動可能に連結されて支持されるワイパブレード3とからなり、ピボット軸の作動により例えばウインドシールドガラス(フロントガラス)の払拭面を払拭するものである。
【0028】
ワイパアーム2において、ピボット軸に固定され該ピボット軸とともに回動されるアームヘッド4と、該アームヘッド4に対し払拭面と略平行な回動軸にて回動可能に基端部が連結される断面コ字状のリテーナ5と、該リテーナ5の先端部にて包囲するようにかしめられて結合される同幅平板状のアームピース6とを備えてなる。つまり、本実施の形態のワイパアーム2は、アームピース6とリテーナ5との境界部分Xには段差が生じる一般的な構成のものである。
【0029】
図2〜図4に示すように、アームピース6の先端部には、その先端部分が下方から基端部側へとU字状に曲げ戻されたフック部6aが形成されており、該フック部6aの曲げ戻し部分6b(アームピース6の本体部分と平行となる部分)には、四角形状の係止孔6cが貫通形成されている。フック部6aは、ワイパブレード3に装着される樹脂製の連結部材9に対して着脱可能に装着され、該フック部6aにてワイパブレード3が支持される。
【0030】
ワイパブレード3は、払拭面に当接し該払拭面を払拭する弾性材料よりなるブレードラバー(図示略)を例えば複数個のレバーをトーナメント状に連結して構成される(図1では簡略表示)保持部材7にて保持する構成をなしており、該保持部材7の長手方向中央部にワイパアーム2(フック部6a)と連結するためのホルダ部7aが設けられている。ホルダ部7aは、幅方向両側に一対の側壁部7bを有するとともに、上部に四角形状に開口する開口部7cを有している。開口部7c内の長手方向略中央部における側壁部7bには、円柱状の連結ピン8が跨るように取着されている。連結ピン8には、前記アームピース6先端のフック部6aと連結するための連結部材9が着脱可能に装着される。
【0031】
連結部材9は、前記フック部6aの内側面に倣った外側面を有するとともに該フック部と同幅に形成されるフック装着部9aと、該フック装着部9aの幅方向両側に一対の側壁部9bとを有している。フック装着部9aには連結ピン8と回転可能に嵌着するための断面円形状の連結孔9cが幅方向に貫通形成され、各側壁部9bにはその連結孔9cに連結ピン8を導入するための導入溝9dが下端から連結孔9cに向かって形成されている。また、各側壁部9bの外側面には上部から略中央部に向かって案内溝9eがそれぞれ形成されており、前記ホルダ部7aの各側壁部7bに設けられる突起7dが挿入されることで、連結ピン8周りに回動する連結部材9の回動範囲を規制している。このように連結ピン8に装着される連結部材9は前記ホルダ部7aの開口部7cにおいてその連結ピン8から長手方向一側を閉塞するように配置され、該開口部7cの残りの開口部分はフック部6aの曲げ戻し部分6bを挿入可能としている。
【0032】
連結部材9のフック装着部9aの下部は弾性片9fとなっており、該弾性片9fには前記フック部6aの曲げ戻し部分6bに設けた係止孔6cに挿入されて係止する係止突起9gが設けられている。つまり、連結部材9にフック部6aが装着される際、係止突起9gがフック部6aの係止孔6c内に挿入されるまで弾性片9fが撓んで係止突起9gの係止孔6c内への挿入を可能とし、係止突起9gが係止孔6c内に挿入されると、弾性片9fの弾性力にて互いの係止状態を維持するようになっている。
【0033】
連結部材9に装着されたアームピース6には、樹脂製又はゴム製のカバー部材10が上部から装着され該カバー部材10にて覆われる。カバー部材10の本体部10aは、略長方形板状をなし、アームピース6の上面に当接するように配置され、アームピース6の上面とリテーナ5との上面との段差L11に相当する厚さL1で形成される。また、カバー部材10の本体部10aは、その先端部側の幅L2が前記連結部材9の幅L12と同等に形成され、基端部に向かう途中で一旦幅広とされ、そこから基端部側の幅L3が前記リテーナ5の先端部の幅L13と同等に形成されている。更に、カバー部材10の本体部10a基端の幅広部分は、幅方向両側においてそれぞれ下方に延びアームピース6の幅方向各側面にそれぞれ当接する一対の側壁部10bを有し、下方が開口する断面略コ字状をなしている。各側壁部10bは、その下端からカバー部材10の本体部10a上面までの長さL4がリテーナ5の厚さL14に相当するように形成されている。つまり、アームピース6とリテーナ5との境界部分Xにおいて、カバー部材10の上部外側面及び側部外側面とリテーナ5の同外側面とがそれぞれ面一(平面視及び側面視のいずれにおいても面一)となり、境界部分Xで生じていた段差をカバー部材10にて解消させている。
【0034】
カバー部材10の各側壁部10bの内側面には、本体部10aがアームピース6の上面に当接して配置される際に、該アームピース6の下面に係止する係止突起10cがそれぞれの内側面に2箇所、合計4箇所に形成されている。つまり、カバー部材10の本体部10a下面と各側壁部10b内側面の各係止突起10cとでアームピース6を挟持することで、カバー部材10の基端部がアームピース6に装着される。因みに、この各側壁部10bは、各係止突起10cがアームピース6の下面側に至る前のアームピース6の側縁部を乗り越える際に外側に撓むようになっており、各係止突起10cがアームピース6の下面側に至ると弾性力にて復帰して各係止突起10cがアームピース6の下面と係止する状態となる。
【0035】
また、各側壁部10bの内側面には、アームピース6の幅方向両側においてそれぞれ設けられる各規制突起6dと係止する係止段差10dがそれぞれ形成されている。各係止段差10dとアームピース6の各規制突起6dとは、アームピース6に対してカバー部材10が先端側に移動する際に係止、即ちカバー部材10がリテーナ5と離間する側で係止するようになっており、カバー部材10とリテーナ5との間に隙間が生じることを防止している。
【0036】
一方、カバー部材10の先端部において、前記ホルダ部7aに連結部材9を装着した際の開口部7cの残りの開口部分を閉塞する開口閉塞部10eが延出形成されている。開口閉塞部10eは、開口部7cの残りの開口部分を閉塞することで、見栄えの向上とともに、該開口部7cから内部への異物の侵入や付着を防止し、例えば連結部材9の円滑な回動を妨げないようにしている。
【0037】
開口閉塞部10eの下部には、前記フック部6aにおける曲げ戻し部分6bの円弧状湾曲部分6eと係合するフック係合部10fが設けられ、該フック係合部10fはその円弧状湾曲部分6eの外側面に倣った湾曲係合面10gを有している。この湾曲係合面10gは、円弧状湾曲部分6eの頂部を含む略半円状の湾曲面をなしている。そして、このフック係合部10fの湾曲係合面10gがフック部6aの円弧状湾曲部分6eの外側面と当接して係合することで、カバー部材10の先端部がアームピース6に装着される。このとき、湾曲係合面10gが円弧状湾曲部分6eの頂部を含む略半円状をなすことから、反装着側に十分に係止するようになっている。更にこの場合、フック係合部10fとフック部6aの円弧状湾曲部分6eとの係合と、前記各側壁部10b内側面の係止段差10dとアームピース6の規制突起6dとの係止により、カバー部材10がアームピース6に対して先端及び基端側への移動がともに規制されるため、がたつきなく装着される。
【0038】
つまり、本実施の形態のカバー部材10は、ホルダ部7a内の連結部材9に装着されたアームピース6に対し各係止突起10c、係止段差10d及びフック係合部10f(湾曲係合面19g)にてアームピース6の所定部位とそれぞれ係止することで着脱可能に装着され、更にカバー部材10とリテーナ5との間の隙間が装着後において拡大しないようにがたつきなく装着される。そして、カバー部材10の基端部とリテーナ5との外側面が面一となってアームピース6とリテーナ5との境界部分Xの段差が解消され、またカバー部材10先端部の開口閉塞部10eにてホルダ部7aの開口部7cの無用な開口が閉塞されるようになっている。
【0039】
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施の形態のカバー部材10には、アームピース6に対して装着するための装着部として、各側壁部10bの各係止突起10c、係止段差10d及び該カバー部材10の先端部のフック係合部10f(湾曲係合面19g)が設けられている。そして、カバー部材10は、それら各係止突起10c、係止段差10d及びフック係合部10fにてアームピース6の所定部位とそれぞれ係止して装着される。つまり、本実施の形態では、カバー部材10をアームピース6に装着する構成とし、アームピース6の先端部とワイパブレード3とを連結するための連結部材9とは独立させたため、一般的な構造の連結部材9を備えるワイパ1に適用可能となり、適応性を向上することができる。
【0040】
(2)本実施の形態のカバー部材10には、ホルダ部7aの開口部7cにおいてアームピース6のフック部6aよりも先端側に開口する部分を閉塞する開口閉塞部10eが該カバー部材10の先端部に設けられている。つまり、カバー部材10の装着に伴って該カバー部材10の開口閉塞部10eがホルダ部7aの開口部7cの無用な開口部分を閉塞するため、部品数を増やすことなく、その開口部7cを閉塞することによる見栄えの向上とともに、該開口部7cから内部への異物の侵入や付着を防止することができる。これにより、例えば回動する連結部材9に異物が係止することを防止できるため、連結部材9の円滑な回動、即ちワイパアーム2に対するワイパブレード3の円滑な回動が妨げられない。
【0041】
(3)本実施の形態のカバー部材10に設けられる装着部として、フック部6aの円弧状湾曲部分6eの外側面に倣った湾曲係合面10gを有して該円弧状湾曲部分6eと少なくとも基端部方向に係合するフック係合部10fと、アームピース6の規制突起6dと先端部方向に係止する係止段差10dとが備えられている。つまり、カバー部材10に設けたフック係合部10f及び係止段差10dがアームピース6の所定部位にそれぞれ係止することで、アームピース6に対するカバー部材10の先端及び基端側への移動がともに規制される。そのため、カバー部材10がアームピース6にがたつきなく、しかもカバー部材10とリテーナ5との間の隙間が装着後において拡大しないように装着することができる。また、フック係合部10fの湾曲係合面10gは、当接するフック部6aの円弧状湾曲部分6eの外側面に倣った湾曲形状をなしており、しかも円弧状湾曲部分6eの頂部を含む略半円状をなすことから、カバー部材10の反装着方向にも係止することとなり、互いをより確実に係合することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施の形態を図面に従って説明する。
図5及び図6に示すように、本実施の形態のカバー部材10には、その側壁部10bのアームピース6が配置されるよりも下部において、フロントガラスに洗浄液Wを供給するための薄型四角形状のウォッシャノズル11が一体に装着されるノズル固定部10xが設けられている。因みに、ノズル固定部10xは、各側壁部10bの長手方向において前記アームピース6に係止するための各係止突起10c間に設けられている。各側壁部10bのノズル固定部10xには、ウォッシャノズル11の下面と係止する係止突起10yが各側壁部10bにて2箇所、合計4箇所に形成されている。つまり、アームピース6の下面とノズル固定部10xの各係止突起10yとでウォッシャノズル11が挟持され、該ウォッシャノズル11がノズル固定部10xに対して装着される。
【0043】
また、ウォッシャノズル11には4本の係止片11aが上方に向けて延出形成されており、係止片11aの先端部がアームピース6の上面に掛け止められる。つまり、ウォッシャノズル11は、前記ノズル固定部10xの各係止突起10yの係止に加え、自身の各係止片11aがアームピース6の上面に掛け止められることで、より安定して装着される。因みに、ウォッシャノズル11は、各係止突起10y及び各係止片11aにて着脱可能に装着される。尚、カバー部材10の内側面には、各係止片11aを収容するための収容凹部10zが形成される。
【0044】
このようなウォッシャノズル11には、斜め下方に突出するホース連結部11bに車体側から延びるホース12が装着され、該ホース12を通じて洗浄液Wが圧送される。これにより、ウォッシャノズル11に設けた噴射孔11cから洗浄液Wがフロントガラスの払拭面に噴射供給されるようになっている。
【0045】
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。尚、前記第1の実施の形態と同様の効果は割愛する。
(1)本実施の形態のカバー部材10には、各側壁部10bにノズル固定部10xを設け、各ノズル固定部10x間にウォッシャノズル11を装着するように構成したことから、払拭面の近傍位置にウォッシャノズル11を配置でき、走行風等の影響を受け難く、所望の着水点にウォッシャノズル11から洗浄液Wを的確に供給することができる。また、ノズル固定部10xは各側壁部10b間に設けられるので、ウォッシャノズル11を各側壁部10bにて隠すことができて見栄えの悪化を防止することができる。特に、本実施の形態のようにアームピース6に着脱可能なカバー部材10に適用すれば、一般的なワイパアーム2に対して後からウォッシャノズル付きワイパ1として容易に設定することができる。
【0046】
(2)本実施の形態のウォッシャノズル11は、ノズル固定部10xへの装着(アームピース6の下面と係止突起10yとの挟持)に加え、自身の係止片11aにてアームピース6に係止固定される。これにより、ウォッシャノズル11をより強固で安定して固定することができる。
【0047】
(3)本実施の形態のウォッシャノズル11は、アームピース6の下面とノズル固定部10xに設けた係止突起10yとによって挟持されるように装着される。つまり、ウォッシャノズル11を挟持する際、その一方をアームピース6としていることから、ウォッシャノズル11を挟持固定する際の突起等を少なく構成することができ、ノズル固定部10xの形状の簡素化及び小型化等に貢献することができる。
【0048】
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記各実施の形態のカバー部材10では、アームピース6とリテーナ5との境界部分Xにおいて平面視及び側面視のいずれにおいても段差を解消するように構成したが、少なくともアームピース6の上面を覆い、その上面での段差を少なくとも解消する構成としてもよい。
【0049】
・上記各実施の形態では、カバー部材10をアームピース6に対して装着するための装着部として、側壁部10bの係止突起10cや係止段差10d、フック係合部10fを設けたが、これらの形状や数、位置等はこれに限定されるものではなく、アームピース6に対して装着可能であれば、これらを適宜変更してもよい。
【0050】
・上記各実施の形態のカバー部材10では、ホルダ部7aの開口部7cを閉塞する開口閉塞部10eを設けていたが、この開口閉塞部10eを省略することもできる。この場合、フック係合部10fの最低限機能する部位のみ残してもよく、また省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施の形態における車両用ワイパの斜視図である。
【図2】(a)は第1の実施の形態におけるワイパアームの先端部分の平面図、(b)は第1の実施の形態におけるワイパアームの先端部分の側断面図である。
【図3】第1の実施の形態におけるワイパアームの先端部分の分解平面図である。
【図4】第1の実施の形態におけるワイパアームの先端部分の分解側断面図である。
【図5】(a)は第2の実施の形態におけるワイパアームの先端部分の平面図、(b)は第2の実施の形態におけるワイパアームの先端部分の側断面図である。
【図6】(a)は第2の実施の形態におけるウォッシャノズルの装着部分の拡大側断面図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)は(a)のC−C断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…車両用ワイパ、2…ワイパアーム、3…ワイパブレード、4…アームヘッド、5…リテーナ、6…アームピース、6a…フック部、6d…係止部としての規制突起、6e…円弧状湾曲部分、7a…ホルダ部、7c…開口部、9…連結部材、10…カバー部材、10a…本体部、10b…側壁部、10c…装着部としての係止突起、10d…装着部及び被係止部としての係止段差、10e…開口閉塞部、10f…装着部としてのフック係合部、10g…湾曲係合面、10x…ノズル固定部、10y…係止突起、11…ウォッシャノズル、11a…係止片、X…境界部分、W…洗浄液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピボット軸に固定するためのアームヘッドと該アームヘッドに基端部が回動可能に連結されるリテーナと該リテーナの先端部にて包囲するように結合される平板状のアームピースとを備えてなるワイパアームを有し、払拭面を払拭するワイパブレードに回動可能に装着される連結部材に対し前記アームピースの先端部が装着されて前記アームピースの先端部に前記ワイパブレードが支持されてなる車両用ワイパであって、
前記アームピースの先端部から前記アームピースと前記リテーナとの境界部分までの少なくとも上面を覆うとともにその境界部分において前記リテーナの外側面と面一とし、更に前記アームピースに対して装着するための装着部を有するカバー部材が用いられ、
前記カバー部材が前記装着部にて前記アームピースに装着されて構成されたことを特徴とする車両用ワイパ。
【請求項2】
ピボット軸に固定するためのアームヘッドと該アームヘッドに基端部が回動可能に連結されるリテーナと該リテーナの先端部にて包囲するように結合される平板状のアームピースとを備えてなるワイパアームを有し、払拭面を払拭するワイパブレードに回動可能に装着される連結部材に対し前記アームピースの先端部が装着されて前記アームピースの先端部に前記ワイパブレードが支持されてなり、更に前記払拭面に洗浄液を供給するウォッシャノズルが一体に備えられて構成される車両用ワイパであって、
前記アームピースの先端部から前記アームピースと前記リテーナとの境界部分までの少なくとも上面を覆うとともにその境界部分において前記リテーナの外側面と面一とする本体部と、該本体部の幅方向両側からそれぞれ下方に延びる一対の側壁部と、前記アームピースに対して装着するための装着部と、前記各側壁部間に前記ウォッシャノズルを装着するためのノズル固定部とを有するカバー部材が用いられ、
前記カバー部材が前記装着部にて前記アームピースに装着されて構成されたことを特徴とする車両用ワイパ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用ワイパにおいて、
前記アームピースは、先端部においてその先端部分が下方から基端部側へとU字状に曲げ戻されたフック部を有し、
前記ワイパブレードは、前記連結部材を収容するとともに前記連結部材に前記フック部を装着するための開口部を有するホルダ部を有しており、
前記カバー部材には、前記ホルダ部の開口部において前記フック部よりも先端側に開口する部分を閉塞する開口閉塞部が該カバー部材の先端部に設けられていることを特徴とする車両用ワイパ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ワイパにおいて、
前記アームピースは、先端部においてその先端部分が下方から基端部側へとU字状に曲げ戻されたフック部を有するとともに、前記カバー部材の先端部方向への移動を規制する係止部とを有するものであり、
前記カバー部材に設けられる装着部として、前記フック部の円弧状湾曲部分の外側面に倣った湾曲係合面を有して該円弧状湾曲部分と少なくとも基端部方向に係合するフック係合部と、前記アームピースの係止部と少なくとも先端部方向に係止する被係止部とが備えられていることを特徴とする車両用ワイパ。
【請求項5】
請求項2に記載の車両用ワイパにおいて、
前記ウォッシャノズルは、前記ノズル固定部への装着状態において、前記アームピースに係止固定される係止片を有することを特徴とする車両用ワイパ。
【請求項6】
請求項2又は5に記載の車両用ワイパにおいて、
前記ウォッシャノズルは、前記アームピースと前記ノズル固定部に設けた係止突起とによって挟持されるように装着されることを特徴とする車両用ワイパ。
【請求項7】
ピボット軸に固定するためのアームヘッドと該アームヘッドに基端部が回動可能に連結されるリテーナと該リテーナの先端部にて包囲するように結合される平板状のアームピースとを備えてなるワイパアームを有し、払拭面を払拭するワイパブレードに回動可能に装着される連結部材に対し前記アームピースの先端部が装着されて前記アームピースの先端部に前記ワイパブレードが支持されてなる車両用ワイパに用いられるカバー部材であって、
前記アームピースの先端部から前記アームピースと前記リテーナとの境界部分までの少なくとも上面を覆うとともにその境界部分において前記リテーナの外側面と面一とし、更に前記アームピースに対して装着するための装着部が設けられていることを特徴とするカバー部材。
【請求項8】
ピボット軸に固定するためのアームヘッドと該アームヘッドに基端部が回動可能に連結されるリテーナと該リテーナの先端部にて包囲するように結合される平板状のアームピースとを備えてなるワイパアームを有し、払拭面を払拭するワイパブレードに回動可能に装着される連結部材に対し前記アームピースの先端部が装着されて前記アームピースの先端部に前記ワイパブレードが支持されてなり、更に前記払拭面に洗浄液を供給するウォッシャノズルが一体に備えられて構成される車両用ワイパに用いられるカバー部材であって、
前記アームピースの先端部から前記アームピースと前記リテーナとの境界部分までの少なくとも上面を覆うとともにその境界部分において前記リテーナの外側面と面一とする本体部と、該本体部の幅方向両側からそれぞれ下方に延びる一対の側壁部と、前記アームピースに対して装着するための装着部と、前記各側壁部間に前記ウォッシャノズルを装着するためのノズル固定部とが設けられていることを特徴とするカバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−276669(P2007−276669A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106964(P2006−106964)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】