説明

車両用内装材およびその成形方法

【課題】成形性を改善できる熱線反射機能を有する車両用内装材の提供を図る。
【解決手段】金属蒸着フィルム8と不織布9と通気防止フィルム10とをこの順に積層して予めラミネート加工した熱線反射シート3が用いられ、その裏面側にトリム基材2を構成する第1補剛シート5,発泡シート4,第2補剛シート6,表皮材7がこの順に積層配置される。これにより、熱線反射シート3をトリム基材2の熱プレス成形と同時に一体に型成形することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフトリムに代表される合成樹脂製の車両用内装材およびその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車にあっては、夏期炎天下での駐車時には、車室内が約70℃にまで上昇してしまうことが良く知られている。
【0003】
このように車室内が高温度に上昇すると、乗車直後は非常に不快感を覚えるものであり、また、急速冷房を行うことにより過大なエアコン負荷による燃料消費の増大やCO排出量の増加につながる問題がある。
【0004】
このような事情から、従来、ルーフトリムとして特許文献1に示されているように、ルーフパネルと相対する面に熱線反射機能を有する層を設けたものが知られている。
【0005】
このルーフトリムは、合成樹脂製のトリム基材に熱線反射薄板を貼り付けて構成され、前記熱線反射薄板をルーフパネルに対向して配設される。これにより、ルーフパネルに太陽からの熱が伝わっても、該ルーフパネルからルーフトリムに放射される熱を前記熱線反射薄板で反射して遮蔽し、トリム基材側への伝熱を抑制させようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−158306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ルーフトリムのトリム基材は、適度のクッション性と断熱性および吸音性が要求される。このため、適宜の厚さの発泡シート、例えばウレタンフォームを主材として、その両側面にガラスマットとイソシアネートとの複合材料からなる補剛シートが積層され、更に、それらの一方の側面に表皮材と、他方の側面にラミネート加工により不織布で裏打ちして補剛された通気防止フィルムが積層され、これを一体に熱プレス成形したトリム基材を用いることが好ましい。

【0008】
一方、前記熱線反射薄板は、熱線反射性金属を蒸着したフィルム、例えば、アルミ蒸着フィルムを、ラミネート加工によりシンサレートで裏打ちしたものを用いると吸音・断熱機能が得られるので好ましいとされている。
【0009】
ルーフトリムの成形サイクルの上からは、本来、前記トリム基材の熱プレス成形と同時に、前記積層シートからなる熱線反射薄板を一体に型成形できれば良いのであるが、熱プレスにより前記シンサレートが圧縮されて高密度化し、吸音・断熱効果が失われて折角高価なシンサレートを用いた意味がなくなってしまう。
【0010】
従って、前述のように前記熱線反射薄板を、予め熱プレス成形されたトリム基材の表皮材と反対側の不織布面上に、適宜の接着材を用いて貼り付けてルーフトリムを構成せざるを得ず、高価なシンサレートを利用することに加えて成形工数が嵩むことによってコスト的に不利となってしまうことは否めない。
【0011】
そこで、本発明は成形性を改善できてコストダウンを図ることができる熱線反射機能を有する車両用内装材およびその成形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は車体パネルの内面側に近接配置される合成樹脂製の車両用内装材であって、前記車体パネルに相対するパネル対向面が、表面の金属蒸着フィルムと、不織布と、通気防止フィルムと、をこの順に積層してラミネート加工した熱線反射シートで構成され、前記熱線反射シートの前記金属蒸着フィルムと反対の裏面側に、トリム基材を構成する第1補剛シートと、発泡シートと、第2補剛シートと、表皮材と、がこの順に一体的に積層配置されていることを主要な特徴としている。
【0013】
また、本発明の合成樹脂製の車両用内装材の成形方法にあっては、金属蒸着フィルムと、不織布と、通気防止フィルムと、をこの順に積層してラミネート加工した熱線反射シートを用いて、その前記金属蒸着フィルムを表面側として、この熱線反射シートの裏面側に、トリム基材を構成する第1補剛シートと、発泡シートと、第2補剛シートと、表皮材と、をこの順に積層して、これを熱プレスして一体成形することを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両用内装材およびその成形方法によれば、何れも金属蒸着フィルムと、不織布と、通気防止フィルムと、をこの順に積層して予めラミネート加工した熱線反射シートが用いられ、その裏面側にトリム基材を構成する第1補剛シート,発泡シート,第2補剛シート,および表皮材が順次積層配置されるため、前記熱線反射シートをトリム基材の熱プレス成形と同時に該トリム基材と一体に型成形することが可能で、成形サイクルを短縮して成形性を改善することができ、熱線反射機能を有する車両用内装材をコスト的に有利に得ることができる。
【0015】
また、ラミネート加工された熱線反射シートは、その積層中間部の不織布の存在によって適度の腰があって取り扱い易く、前記熱プレス成形時におけるトリム基材の各構成材との積層作業時間を短縮できると共に、積層ずれをなくして積層精度,成形品質の高い車両用内装材を得ることができる。
【0016】
しかも、前記熱線反射シートにおける不織布およびトリム基材の各構成材が吸音・断熱性を保有しているため、合成樹脂製の車両用内装材本来の吸音・断熱効果を活かして熱線反射機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車両用内装材の一実施形態の配設状態を示す断面説明図。
【図2】図1に示した車両用内装材の各構成材の積層状態を分解して示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を車両用内装材としてルーフトリムを例に採って詳述する。
【0019】
図1に示すルーフトリム1は、車体パネルであるルーフパネルPの内面側に近接して配設されている。
【0020】
前記ルーフトリム1は、合成樹脂製のトリム基材2と、該トリム基材2の前記ルーフパネルPに相対する側の側面に積層された合成樹脂製の熱線反射シート3とで構成されている。
【0021】
前記熱線反射シート3は、後述するようにその表面、即ち、ルーフパネルPと相対する対向面が熱線反射が良好な金属で加工されている。これにより、太陽光の照射で熱せられたルーフパネルPからの放射熱をルーフトリム1が受けた場合でも、この放射熱を熱線反射シート3で反射して遮蔽し、トリム基材2側への伝熱を抑えて車室内の温度が高温化するのを抑制する機能を発揮する。
【0022】
前記トリム基材2は、適度のクッション性と断熱性および吸音性が要求されることから、図2に示すように適宜の厚さの発泡シート4を主材としてその両側面に積層された第1,第2の補剛シート5,6と、例えば第2の補剛シート6に積層されて車室内に露出する意匠面となる表皮材7とからなる積層体で構成される。
【0023】
前記発泡シート4としては、廉価で入手し易く、かつ、成形が容易なウレタンフォームが用いられる。これは、勿論、クッション性と吸音・断熱性を有するものであれば、他の発泡シートを用いることができる。
【0024】
前記第1,第2の補剛シート5,6は、ルーフトリム1全体の剛性を担保するものであり、そのため、該補剛シート5,6としてガラスマットと、前記発泡シート4と相溶性の良いイソシアネートとの複合材料からなる公知の薄いシート材が用いられる。
【0025】
前記表皮材7としては、これが積層される前記第2補剛シート6と相溶性のある適宜の軟質の合成樹脂シートが用いられる。
【0026】
一方、前記熱線反射シート3は、金属蒸着フィルム8と、不織布9と、通気防止フィルム10と、をこの順に積層してラミネート加工して構成されている。
【0027】
この熱線反射シート3は、前記金属蒸着フィルム8を前記ルーフパネルPに対向させて配置される。
【0028】
前記金属蒸着フィルム8は、適宜のフィルム基材、例えばポリエステルからなるフィルム基材にアルミニウム等の熱線反射性の良い金属を蒸着して構成される。
【0029】
また、前記不織布9は金属蒸着フィルム8の補剛と吸音・断熱効果をもたらすもので、前記金属蒸着フィルム8のフィルム基材と同質材もしくはこれと相溶性のある合成樹脂繊維が用いられる。
【0030】
前記通気防止フィルム10は、ルーフトリム1の上下方向の通気を遮断して前記表皮材7の表面の塵埃付着による汚損を防止するもので、ポリエチレン,ポリプロピレン等、前記不織布9と相溶性のある合成樹脂フィルムが用いられる。
【0031】
そして、ルーフトリム1は、前記熱線反射シート3の金属蒸着フィルム8を表面側として、この熱線反射シート3の裏面側に、前記トリム基材2を構成する第1補剛シート5,発泡シート4,第2補剛シート6,表皮材7をこの順に積層して、これを公知の熱プレス装置により所定の加熱温度下で熱プレスして一体成形される。
【0032】
以上の構成からなる本実施形態のルーフトリム1によれば、ルーフパネルPに相対する対向面が、表面の金属蒸着フィルム8と、不織布9と、通気防止フィルム10と、をこの順に積層して予めラミネート加工した熱線反射シート3で構成され、この熱線反射シート3の前記金属蒸着フィルム8と反対の裏面側に、トリム基材2を構成する第1補剛シート5,発泡シート4,第2補剛シート6,および表皮材7が順次積層配置されるため、前記熱線反射シート3をトリム基材2の熱プレス成形と同時に該トリム基材2と一体に型成形することが可能となる。
【0033】
この結果、ルーフトリム1の成形サイクルを短縮して成形性を改善することができて、熱線反射機能を有するルーフトリム1をコスト的に有利に得ることができる。
【0034】
また、前記予めラミネート加工された熱線反射シート3は、その積層中間部の不織布9の存在によって適度の腰があって取り扱い易く、前記熱プレス成形時におけるトリム基材2の各構成材4〜7との積層作業時間を短縮できると共に、積層ずれをなくして積層精度,成形品質の高いルーフトリム1を得ることができる。
【0035】
更に、前記熱線反射シート3における不織布9およびトリム基材2の各構成材4〜7が吸音・断熱性を保有しているため、合成樹脂製のルーフトリム1本来の吸音・断熱効果を活かして熱線反射機能を発揮させることができる。
【0036】
なお、前記実施形態では車両用内装材としてルーフトリムを例に挙げて説明したが、この他、ダッシュインシュレータやドアトリム,リヤサイドトリム等の車両用内装材に適用することができる。
【0037】
また、前記実施形態において、熱プレス成形時にトリム基材2に用いられる発泡シート4は、既発泡シート,未発泡シート材料の何れであってもよく、既発泡シートの場合は熱プレス成形時に隣接構成材と熱融着させ、未発泡シート材料の場合は熱プレス成形時に発泡させて隣接構成材と熱融着させることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…ルーフトリム(車両用内装材)
2…トリム基材
3…熱線反射シート
4…発泡シート
5…第1補剛シート
6…第2補剛シート
7…表皮材
8…金属蒸着フィルム
9…不織布
10…通気防止フィルム
P…ルーフパネル(車体パネル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルの内面側に近接配置される合成樹脂製の車両用内装材であって、
前記車体パネルに相対するパネル対向面が、表面の金属蒸着フィルムと、不織布と、通気防止フィルムと、をこの順に積層してラミネート加工した熱線反射シートで構成され、
前記熱線反射シートの前記金属蒸着フィルムと反対の裏面側に、トリム基材を構成する第1補剛シートと、発泡シートと、第2補剛シートと、表皮材と、がこの順に一体的に積層配置されていることを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
金属蒸着フィルムと、不織布と、通気防止フィルムと、をこの順に積層してラミネート加工した熱線反射シートを用いて、その前記金属蒸着フィルムを表面側として、この熱線反射シートの裏面側に、トリム基材を構成する第1補剛シートと、発泡シートと、第2補剛シートと、表皮材と、をこの順に積層して、これを熱プレスして一体成形することを特徴とする合成樹脂製の車両用内装材の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−152843(P2011−152843A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15017(P2010−15017)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】