車両用内装材の製造方法及び射出成形装置
【課題】別部品の十分な接合強度を確保して製品品質を向上させることができる車両用内装材の製造方法を提供する。
【解決手段】本方法は、内装基材(天井基材2)の表面に別部品(リテーナ3、サイドクリップ4)を射出成形にて形成してなる車両用内装材の製造方法であって、内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層7が設けられており、内装基材の表面の別部品を形成する範囲に対して射出成形装置22を設置する設置工程と、射出成形装置により内装基材の表面から通気止め用シート層を貫通して孔13、15を穿設する穿設工程と、射出成形装置により溶融樹脂を孔内に供給する溶融樹脂供給工程と、孔内に供給された溶融樹脂を冷却する冷却工程と、内装基材の表面に対して射出成形装置を取り外す脱型工程と、を備える。
【解決手段】本方法は、内装基材(天井基材2)の表面に別部品(リテーナ3、サイドクリップ4)を射出成形にて形成してなる車両用内装材の製造方法であって、内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層7が設けられており、内装基材の表面の別部品を形成する範囲に対して射出成形装置22を設置する設置工程と、射出成形装置により内装基材の表面から通気止め用シート層を貫通して孔13、15を穿設する穿設工程と、射出成形装置により溶融樹脂を孔内に供給する溶融樹脂供給工程と、孔内に供給された溶融樹脂を冷却する冷却工程と、内装基材の表面に対して射出成形装置を取り外す脱型工程と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装材の製造方法及び射出成形装置に関し、さらに詳しくは、別部品の十分な接合強度を確保して製品品質を向上させることができる車両用内装材の製造方法及びこれに用いられる射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、天井材等の車両用内装材の製造方法として、内装基材の裏面にクリップ座やサイドクリップ等の別部品を射出成形にて形成する方法が知られている(例えば、特許文献1及び2等参照)。これら特許文献1及び2には、内装基材として、ケナフ等の植物性繊維と熱可塑性樹脂とを混合し熱プレス成形にて形成されるボード材を採用し、このボード材の一方面に金型を押し当ててキャビティを形成し溶融樹脂を射出することで別部品を直接的に形成することが開示されている。そして、この射出成形では、溶融樹脂がボード材を構成する植物性繊維間に入り込み、冷却時に繊維との引っ掛かりを確保することで接合強度を高めている。なお、上記射出成形によれば、ホットメルト等の接着剤を用いて別部品を固定する方法に比べて、加工時間を大幅に短縮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−231181号公報
【特許文献2】特開2006−212824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記内装基材として、通気による汚れ防止等のために非通気性の通気止め用シート層を備えるものが知られている。しかしながら、この通気止め用シート層は、内装基材の一方面側に配置されているので、上記特許文献1及び2の技術を単純に利用して内装基材の一方面に射出成形により別部品を形成すると、別部品は通気止め用シートとの間で層間剥離し易く、十分な接合強度が得られない。その結果、別部材に反り等が生じて製品品質が低下してしまう。
【0005】
また、上記特許文献1の技術では、別部品の接合強度を高めるために内装基材に予め孔を形成しており、射出成形の前工程として内装基材に対して孔開け加工を施しておく必要がある。その結果、加工時間が長くなり加工設備も多くなり、生産性が低下してしまう。さらに、内装基材に対する別部品の接合位置と孔の穿設位置とを正確に位置決めし難い。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、別部品の十分な接合強度を確保して製品品質を向上させることができる車両用内装材の製造方法及びこれに用いられる射出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、内装基材の表面に別部品を射出成形にて形成してなる車両用内装材の製造方法であって、前記内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層が設けられており、前記内装基材の表面の前記別部品を形成する範囲に対して射出成形装置を設置する設置工程と、前記射出成形装置により前記内装基材の表面から前記通気止め用シート層を貫通して孔を穿設する穿設工程と、前記射出成形装置により溶融樹脂を前記孔内に供給する溶融樹脂供給工程と、前記孔内に供給された溶融樹脂を冷却する冷却工程と、前記内装基材の表面に対して前記射出成形装置を取り外す脱型工程と、を備えることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記穿設工程は、前記射出成形装置のキャビティ内に設けられたスライド針又はスライド刃により前記孔を穿設する工程であることを要旨とする。
上記問題を解決するために、請求項3に記載の発明は、内装基材の表面に別部品を射出成形にて形成するための射出成形装置であって、前記内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層が設けられており、前記内装基材の表面から前記通気止め用シート層を貫通して孔を穿設する穿設機構と、前記穿設機構により穿設された前記孔を含め該射出成形装置のキャビティ内に溶融樹脂を供給する溶融樹脂供給機構と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用内装材の製造方法によると、内装基材の表面の別部品を形成する範囲に対して射出成形装置が設置され、射出成形装置により内装基材の表面から通気止め用シート層を貫通して孔が穿設され、射出成形装置により溶融樹脂がキャビティから孔内に供給され、孔内に供給された溶融樹脂が冷却され、内装基材の表面に対して射出成形装置が取り外される。このように、通気止め用シート層を貫通する孔に溶融樹脂を供給するようにしたので、別部品を射出成形する際に溶融樹脂が孔を介して内装基材の内部に入り込む。よって、内装基材に対する別部材の十分な接合強度を確保して製品品質を向上させることができる。また、射出成形装置により孔を穿設するようにしたので、射出成形の前工程として内装基材に対して孔開け加工を施しておく必要がなく、加工時間を短縮し且つ加工設備も低減して生産性を向上させることができる。さらに、内装基材に対する別部品の接合位置と孔の穿設位置とを正確且つ容易に位置決めできる。
また、前記穿設工程が、前記射出成形装置のキャビティ内に設けられたスライド針又はスライド刃により前記孔を穿設する工程である場合は、内装基材に対する別部品の接合位置と孔の穿設位置とを更に正確且つ容易に位置決めできる。
本発明の射出成形装置によると、穿設機構により内装基材の表面から通気止め用シート層を貫通して孔が穿設され、溶融樹脂供給機構により穿設された孔を含め射出成形装置のキャビティ内に溶融樹脂が供給される。よって、上述の本発明に係る車両用内装材の製造方法に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係る車両用天井材の平面図である。
【図2】実施例に係るクリップ座を含む上記車両用天井材の要部斜視図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】実施例に係るサイドクリップを含む上記車両用天井材の要部分解斜視図である。
【図6】上記車両用天井材の縦断面図である。
【図7】実施例に係る車両用天井材の製造装置を模式的に示す斜視図である。
【図8】実施例に係る射出成形装置を模式的に示す縦断面図である。
【図9】上記車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【図10】上記車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【図11】上記車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【図12】上記車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【図13】上記車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【図14】上記車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【図15】その他の形態の車両用天井材の要部平面図であり、(a)はスリット状の複数の孔が形成された形態を示し、(b)スリット状の単一の孔が形成された形態を示し、(c)は接合部を備えない形態を示す。
【図16】更にその他の形態の車両用天井材の要部分解斜視図であり、(a)針状の複数の孔が形成された形態を示し、(b)はスリット状の複数の孔が形成された形態を示す。
【図17】その他の形態の車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
1.車両用内装材の製造方法
本実施形態1.に係る車両用内装材の製造方法は、内装基材(2)の表面に別部品(3、4)を射出成形にて形成してなる車両用内装材の製造方法であって、内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層(7)が設けられており、内装基材の表面の別部品を形成する範囲に対して射出成形装置(22)を設置する設置工程と、射出成形装置により内装基材の表面から通気止め用シート層を貫通して孔(13、15)を穿設する穿設工程と、射出成形装置により溶融樹脂(b)を孔内に供給する溶融樹脂供給工程と、孔内に供給された溶融樹脂を冷却する冷却工程と、内装基材の表面に対して射出成形装置を取り外す脱型工程と、を備えることを特徴とする(例えば、図9〜図12等参照)。
【0012】
本実施形態1.に係る車両用内装材の製造方法としては、例えば、上記穿設工程は、上記射出成形装置のキャビティ(25a)内に設けられたスライド針(26a)又はスライド刃により上記孔を穿設する工程である形態(例えば、図10等参照)を挙げることができる。この場合、通常、上記スライド針又はスライド刃は、キャビティ内を通ってスライドするように設けられている。
【0013】
本実施形態1.に係る車両用内装材の製造方法としては、例えば、上記内装基材は、繊維層(6)と、繊維層の表面に積層される上記通気止め用シート層と、を備えており、上記穿設工程は、射出成形装置により内装基材の表面から通気止め用シート層を貫通して繊維層に到る孔を穿設する工程である形態(例えば、図13等参照)を挙げることができる。これにより、溶融樹脂が孔を介して比較的低密度の繊維層内に入り込み易くなる。よって、強固なアンカー効果を発揮させて別部材の接合強度を更に高めることができる。この場合、孔内に入り込む溶融樹脂の先端側は、通気止め用シート層の孔の周囲側に係止するように膨出状に固まることが好ましい(例えば、図14等参照)。なお、上記繊維層は、例えば、繊維(例えば、植物繊維、ガラス繊維、カーボン繊維等)及び繊維を繋ぐ熱可塑性樹脂バインダーを用いてなることができる。
【0014】
本実施形態1.に係る車両用内装材の製造方法としては、例えば、上記設置工程は、内装基材の表面に対して射出成形装置(22)の成形型(25)を当接してキャビティ(25a)を形成する工程(例えば、図10等参照)であり、上記溶融樹脂供給工程は、射出成形装置によりキャビティ内に溶融樹脂(b)を供給することにより孔に溶融樹脂を供給する工程(例えば、図12等参照)である形態を挙げることができる。
【0015】
2.射出成形装置
本実施形態2.に係る射出成形装置は、内装基材(2)の表面に別部品(3,4)を射出成形にて形成するための射出成形装置(22)であって、内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層(7)が設けられており、内装基材の表面から通気止め用シート層を貫通して孔(13、15)を穿設する穿設機構(26)と、穿設機構により穿設された孔を含め射出成形装置のキャビティ(25a)内に溶融樹脂を供給する溶融樹脂供給機構(27)と、を備えることを特徴とする(例えば、図8等参照)。この射出成形装置は、例えば、上記孔に供給された溶融樹脂を冷却する冷却機構(28)を更に備えることができる。
【0016】
上記穿設機構は、例えば、射出成形装置(22)のキャビティ(25a)内に設けられたスライド針(26a)又はスライド刃と、スライド針又はスライド刃をスライド駆動させる駆動源(26b)と、を備えることができる。また、上記溶融樹脂供給機構は、例えば、樹脂材料(a)が供給される筒体(27a)と、この筒体の外周側に配置される加熱ヒータ(27b)と、この加熱ヒータで加熱された溶融樹脂(b)を供給ノズル(27c)からキャビティ内に射出するための押出部材(27d)と、を備えることができる。
【0017】
3.車両用内装材の製造装置
本実施形態3.に係る車両用内装材の製造装置は、内装基材(2)の表面に別部品(3、4)を射出成形にて形成してなる車両用内装材の製造装置であって、上記実施形態2.の射出成形装置(22)と、内装基材に対して射出成形装置を近接・離間させる移動機構(23)と、を備えることを特徴とする(例えば、図7等参照)。
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「車両用内装材」として車両用天井材を例示する。
【0019】
(1)車両用天井材の構成
本実施例に係る車両用天井材1は、図1に示すように、天井基材2(本発明に係る「内装基材」として例示する。)と、この天井基材2の表面(車両天井材を車両に設置した状態で車室外側を向く表面)に射出成形にて形成される複数のクリップ座3及びサイドクリップ4(本発明に係る「別部品」として例示する。)と、を備えている。
【0020】
上記天井基材2は、図4に示すように、ケナフ等の植物繊維及び植物繊維を繋ぐ熱可塑性樹脂バインダーを用いてなる繊維層6と、この繊維層6の一方の表面に積層される非通気性を有する通気止め用シート層7と、を備えている。この通気止め用シート層7は、天井基材2の表面側に配置されている。また、通気止め用シート層7の表面には、不織布製の滑り止め層8が積層されている。また、繊維層6の他方の表面には、接着層9を介して不織布からなる表皮層10が積層されている。なお、本実施例では、上記天井基材2として、上記の積層物をボード材とし、このボード材をプレス成形にて所定の天井形状に形成してなるものを採用する。また、上記通気止め用シート層7として、ナイロン製の一対の表層の間にポリプロピレン製の中間層を積層してなる3層構造のシート層を採用する。
【0021】
上記クリップ座3は、図2〜図4に示すように、車両のルーフパネル(図示省略)に係止されるクリップ12(図4中に仮想線で示す。)を保持する平面略U字状の座部本体3aと、この座部本体3aの外周側から外方に面状に延びる接合部3bと、を備えている。これら座部本体3a及び各接合部3bは、天井基材2の表面に接合されている。また、上記サイドクリップ4は、図5及び図6に示すように、車両のルーフパネル(図示省略)に係止されるクリップ本体4aを備えている。このクリップ本体4aは、天井基材2の表面に接合されている。
【0022】
ここで、上記天井基材2の表面側には、図3及び図4に示すように、クリップ座3の座部本体3a及び各接合部3bの接合面を含む表面から通気止め用シート層7を貫通して繊維層6に到る針状の複数の孔13が穿設されている。これら複数の孔13は、略等間隔p1で整列して穿設されている。これら各孔13内にはクリップ座3の一部14が入り込んでおり、このクリップ座3の一部14の先端側14aは、通気止め用シート層7の孔13の周囲側に係止するように繊維層6内で膨出状(すなわち肉溜り状)に形成されている。
【0023】
また、上記天井基材2の表面側には、図5及び図6に示すように、サイドクリップ4のクリップ本体4aの接合面を含む表面から通気止め用シート層7を貫通して繊維層6に到る針状の複数の孔15が穿設されている。これら複数の孔15は、略等間隔p2で整列して穿設されている。また、これら各孔15内にはサイドクリップ4の一部16が入り込んでおり、このサイドクリップ4の一部16の先端側16aは、通気止め用シート層7の孔15の周囲側に係止するように繊維層6内で膨出状(すなわち肉溜り状)に形成されている。なお、上記孔13、15の深さ(例えば、約2mm)は、天井基材2の厚さ(例えば、約4mm)の略1/2とされている。
【0024】
(2)車両用天井材の製造装置の構成
本実施例に係る車両用天井材の製造装置20は、図7に示すように、上記天井基材2を載置可能な載置台21と、この載置台21に対向して配置される複数の射出成形装置22と、この載置台21に対して各射出成形装置22を近接・離間させる移動機構23と、を備えている。この移動機構23は、載置台21に対して各射出成形装置22を昇降させる駆動シリンダ23aを備えている。
【0025】
上記各射出成形装置22は、図8に示すように、載置台21上の天井基材2の表面に当接して閉鎖状のキャビティ25aを形成する成形型25と、天井基材2の表面から通気止め用シート層7を貫通して繊維層6に到る上記孔13、15を穿設する穿設機構26と、この穿設機構26により穿設された孔13、15を含めキャビティ25a内に溶融樹脂を供給する溶融樹脂供給機構27と、を備えている。
【0026】
上記穿設機構26は、成形型25内にスライド可能に設けられキャビティ25a内を通ってスライドする複数のスライド針26aと、これら各スライド針26aをスライドさせる駆動シリンダ26bと、を備えている。また、上記溶融樹脂供給機構27は、樹脂ペレットaが供給される筒体27aと、この筒体27aの外周側に配置される加熱ヒータ27bと、この加熱ヒータ27bで加熱された溶融樹脂b(図11参照)を供給ノズル27cからキャビティ25a内に射出するためのプランジャー27dと、を備えている。また、上記各射出成形装置22は、キャビティ25a及び孔13、15内に供給された溶融樹脂bを冷却する冷却機構28を更に備えている。この冷却機構28は、冷却水等の適宜冷媒が供給される冷媒供給通路28aを有している。
【0027】
(3)車両用天井材の製造方法
次に、上記構成の車両用天井材の製造装置20を用いた車両用天井材の製造方法について説明する。先ず、図9に示すように、天井基材2の表面のクリップ座3及びサイドクリップ14を形成する範囲に対して各射出成形装置22の成形型25が対向するように載置台21上に天井基材2をセットする。このとき、駆動シリンダ26bの作動によりスライド針26aは成形型25内から突出した状態とされている。次に、図10に示すように、各射出成形装置22が下降され、天井基材2の表面に射出成形装置22の成形型25が当接して閉鎖状のキャビティ25aが形成されるとともに、突出状態のスライド針26aにより天井基材2の表面から通気止め用シート層7を貫通して繊維層6に到る孔13、15が穿設される(図13参照)。
【0028】
次いで、図11に示すように、駆動シリンダ26bの作動によりスライド針26aは成形型25内に没入した状態とされる。また、加熱ヒータ27bにより筒体27a内に投入された樹脂ペレットaが加熱されて溶融樹脂bとされる。その後、図12に示すように、プランジャー27dの作動により筒体27a内の溶融樹脂bが成形型25のキャビティ25a内に射出され、この射出により孔13、15内に溶融樹脂bが供給される。このとき、孔13、15内に供給される溶融樹脂bの一部は、繊維層6において各繊維間に入り込んで膨出状に拡がる(図14参照)。次に、冷却機構28によりキャビティ25a及び孔13、15内に供給された溶融樹脂bが冷却される。次いで、各射出成形装置22が上昇され、天井基材2の表面から成形型25が取り外され、上記車両用天井材1が得られることとなる。
【0029】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例の車両用天井材の製造方法によると、天井基材2の表面のクリップ座3及びサイドクリップ4を形成する範囲に対して射出成形装置22が設置され、射出成形装置22により天井基材2の表面から通気止め用シート層7を貫通して孔13、15が穿設され、射出成形装置22により溶融樹脂bがキャビティ25aから孔13、15内に供給され、孔13、15内に供給された溶融樹脂が冷却され、天井基材2の表面に対して射出成形装置22が取り外される。このように、通気止め用シート層7を貫通する孔13、15に溶融樹脂bを供給するようにしたので、クリップ座3及びサイドクリップ4を射出成形する際に溶融樹脂bが孔13、15を介して天井基材2の内部に入り込む。よって、天井基材2に対するクリップ座3及びサイドクリップ4の十分な接合強度を確保して製品品質を向上させることができる。また、射出成形装置22により孔13、15を穿設するようにしたので、射出成形の前工程として天井基材2に対して孔開け加工を施しておく必要がなく、加工時間を短縮し且つ加工設備も低減して生産性を向上させることができる。さらに、天井基材2に対するクリップ座3及びサイドクリップ4の接合位置と孔13、15の穿設位置とを正確且つ容易に位置決めできる。
【0030】
また、本実施例では、射出成形装置22のキャビティ25a内に設けられたスライド針26aにより孔13、15を穿設するようにしたので、天井基材2に対するクリップ座3及びサイドクリップ4の接合位置と孔13、15の穿設位置とを更に正確且つ容易に位置決めできる。
【0031】
また、本実施例では、天井基材2を、繊維及び繊維を繋ぐ熱可塑性樹脂バインダーを用いてなる繊維層6と、繊維層6の表面に積層される上記通気止め用シート層7と、を備えて構成し、射出成形装置22により天井基材2の表面から通気止め用シート層7を貫通して繊維層6に到る孔13、15を穿設するようにしたので、溶融樹脂bが孔13、15を介して比較的低密度の繊維層6内に入り込み易くなる。よって、強固なアンカー効果を発揮させてクリップ座3及びサイドクリップ4の接合強度を更に高めることができる。
【0032】
また、本実施例の射出成形装置22によると、穿設機構26により天井基材2の表面から通気止め用シート層7を貫通して孔13、15が穿設され、溶融樹脂供給機構27により穿設された孔13、15を含めキャビティ25a内に溶融樹脂bが供給される。よって、上述の車両用天井材の製造方法に好適に使用される。
【0033】
また、本実施例の車両用天井材1によると、天井基材2には、クリップ座3及びサイドクリップ4の接合面を含む表面から通気止め用シート層7を貫通して孔13、15が穿設され、孔13、15内にはクリップ座3及びサイドクリップ4の一部14、16が入り込んでいるので、天井基材2に対するクリップ座3及びサイドクリップ4の十分な接合強度を確保して製品品質を向上させることができる。
【0034】
また、本実施例では、複数の孔13、15を略等間隔で整列して穿設するようにしたので、クリップ座3及びサイドクリップ4の接合強度を更に高めることができる。
【0035】
また、本実施例では、クリップ座3及びサイドクリップ4の一部14、16の先端側14a、16aを、通気止め用シート層7の孔13、15の周囲側に係止するように膨出状に形成したので、強固なアンカー効果を発揮させてクリップ座3及びサイドクリップ4の接合強度を更に高めることができる。
【0036】
また、本実施例では、天井基材2を、繊維及び繊維を繋ぐ熱可塑性樹脂バインダーを用いてなる繊維層6と、繊維層6の表面に積層される通気止め用シート層7と、を備えて構成し、孔13、15の先端側を繊維層6内に到らせたので、クリップ座3及びサイドクリップ4を射出成形する際に、溶融樹脂bが孔13、15を介して比較的低密度の繊維層6内に入り込み易くなる。よって、更に強固なアンカー効果を発揮させることができる。
【0037】
さらに、本実施例では、クリップ座3を、座部本体3aと、座部本体3aの外周側から外方に延びて天井基材2の表面に接合する複数の接合部3bと、を備えて構成し、孔13、15を、天井基材2の座部本体3a及び各接合部3bの接合面を含む表面から通気止め用シート層7を貫通して穿設するようにしたので、クリップ座3の接合面積を必要最小限としてクリップ座3の反り等の製品品質の低下を抑制できるとともに、クリップ座3の十分な接合強度を確保できる。
【0038】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、天井基材2に対して射出成形置22を設置すると略同時に孔13、15を穿設するようにしたが、これに限定されず、例えば、内装基材に対して射出成形置を設置した後に孔を穿設したり、内装基材に対して射出成形装置を設置する前に孔を穿設したりしてもよい。すなわち、設置工程及び穿設工程は、略同時に実施されてもよいし、異なる順序で実施されてもよい。
【0039】
また、上記実施例では、穿設工程として、針状の孔13、15を形成する工程を例示したが、これに限定されず、例えば、図15(a)(b)及び図16(b)に示すように、スリット状の孔31、32、33を形成するようにしてもよい。この場合、通常、上記スライド針26aの代わりに板状のスライド刃が用いられる。また、上記実施例では、穿設工程として、複数の孔13、15を形成する工程を例示したが、これに限定されず、例えば、図15(b)に示すように、単一の連続する孔32を形成するようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施例では、冷却工程として、冷却機構28により孔13、15に供給された溶融樹脂bを積極的に冷却する工程を例示したが、これに限定されず、例えば、孔13、15に供給された溶融樹脂bを自然冷却したり、冷却フィンにより冷却したりしてもよい。
【0041】
また、上記実施例では、設置工程及び脱型工程として、載置台21上の天井基材2に対して射出成形装置22を昇降させる工程を例示したが、これに限定されず、例えば、固定状態の射出成形装置22に対して内装基材2を近接・離間させるようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施例では、射出成形装置22を駆動シリンダ23aで昇降させるようにしたが、これに限定されず、例えば、射出成形装置22を駆動モータにより昇降させたり、ロボットハンド35(図17参照)により昇降させたりしてもよい。
【0043】
また、上記実施例では、スライド針26aを駆動シリンダ26bでスライドさせるようにしたが、これに限定されず、例えば、スライド針26aを駆動モータによりスライドさせたり、射出成形装置22の昇降移動を動力伝達することによりスライドさせたりしてもよい。また、上記実施例では、溶融樹脂bをプランジャー27dによりキャビティ25a内に供給するようにしたが、これに限定されず、例えば、溶融樹脂bをスクリュウによりキャビティ25a内に供給してもよい。
【0044】
また、上記実施例において、射出成形装置22の成形型25を、例えば、主型と、主型に対してスライド可能に設けられる1又は2以上のスライド型と、を備えて構成することができる。これにより、更に複雑な形状の別部品を形成できる。
【0045】
また、上記実施例では、車両用内装材として天井材1を例示したが、これに限定されず、例えば、ドアトリム、フロアカーペット、フロアマット、ダッシュサイレンサ等を採用してもよい。また、上記実施例では、別部品として、車両側にクリップ固定するためのクリップ座3及びサイドクリップ4を例示したが、これに限定されず、例えば、各種機能部品を採用してもよい。
【0046】
また、上記実施例では、天井基材2において、車両に設置した状態で車室外側を向く表面にクリップ座3及びサイドクリップ4を形成してなる車両用天井材1を例示したが、これに限定されず、例えば、内装基材において、車両に設置した状態で車室内側を向く表面(すなわち意匠面)に別部品を形成してなる車両用内装材としてもよい。
【0047】
また、上記実施例では、車両用内装材として、天井基材2に複数の孔13、15が略等間隔で整列して穿設されたものを例示したが、これに限定されず、例えば、内装基材に複数の孔が不等間隔で穿設されたものを採用してもよい。
【0048】
また、上記実施例では、車両用内装材として、孔13、15内に入り込むクリップ座3及びサイドクリップ4の一部の先端側が膨出状に形成されたものを例示したが、これに限定されず、例えば、孔内に入り込む別部品の一部の先端側が先細り状に形成されたものを採用してもよい。
【0049】
また、上記実施例では、天井基材2として、通気止め用シート層7が積層される繊維層6を備えるものを例示したが、これに限定されず、例えば、繊維層6の代わりに発泡層を備えるものを採用してもよい。さらに、上記実施例では、通気止め用シート層7の表面に滑り止め層8を積層したものを例示したが、これに限定されず、例えば、滑り止め層8を止めて通気止め用シート層7が表面に露出するものを採用してもよい。
【0050】
また、上記実施例では、座部本体3aの外周側から面状に延びる接合部3bを例示したが、これに限定されず、例えば、図15(a)(b)に示すように、座部本体3aの外周側から放射状に延びる接合部3bとしてもよい。さらに、上記実施例では、座部本体3a及び接合部3bを備えるクリップ座3を例示したが、これに限定されず、例えば、図15(c)に示すように、接合部3bを備えずに座部本体3aのみからなるクリップ座3’としてもよい。また、上記実施例では、クリップ本体4aのみからなるサイドクリップ4を例示したが、これに限定されず、例えば、図16(a)に示すように、クリップ本体4aと、このクリップ本体4aの外周側から外方に延びる複数の接合部4bと、を備えるサイドクリップ4’としてもよい。
【0051】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0052】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
内装基材の表面に別部品を射出成形にて形成してなる車両用内装材を製造する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0054】
1;車両用天井材、2;天井基材、3;クリップ座、4;サイドクリップ、7;通気止め用シート層、13、15;孔、22;射出成形装置、25a;キャビティ、26;穿設機構、26a;スライド針、27;溶融樹脂供給機構。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装材の製造方法及び射出成形装置に関し、さらに詳しくは、別部品の十分な接合強度を確保して製品品質を向上させることができる車両用内装材の製造方法及びこれに用いられる射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、天井材等の車両用内装材の製造方法として、内装基材の裏面にクリップ座やサイドクリップ等の別部品を射出成形にて形成する方法が知られている(例えば、特許文献1及び2等参照)。これら特許文献1及び2には、内装基材として、ケナフ等の植物性繊維と熱可塑性樹脂とを混合し熱プレス成形にて形成されるボード材を採用し、このボード材の一方面に金型を押し当ててキャビティを形成し溶融樹脂を射出することで別部品を直接的に形成することが開示されている。そして、この射出成形では、溶融樹脂がボード材を構成する植物性繊維間に入り込み、冷却時に繊維との引っ掛かりを確保することで接合強度を高めている。なお、上記射出成形によれば、ホットメルト等の接着剤を用いて別部品を固定する方法に比べて、加工時間を大幅に短縮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−231181号公報
【特許文献2】特開2006−212824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記内装基材として、通気による汚れ防止等のために非通気性の通気止め用シート層を備えるものが知られている。しかしながら、この通気止め用シート層は、内装基材の一方面側に配置されているので、上記特許文献1及び2の技術を単純に利用して内装基材の一方面に射出成形により別部品を形成すると、別部品は通気止め用シートとの間で層間剥離し易く、十分な接合強度が得られない。その結果、別部材に反り等が生じて製品品質が低下してしまう。
【0005】
また、上記特許文献1の技術では、別部品の接合強度を高めるために内装基材に予め孔を形成しており、射出成形の前工程として内装基材に対して孔開け加工を施しておく必要がある。その結果、加工時間が長くなり加工設備も多くなり、生産性が低下してしまう。さらに、内装基材に対する別部品の接合位置と孔の穿設位置とを正確に位置決めし難い。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、別部品の十分な接合強度を確保して製品品質を向上させることができる車両用内装材の製造方法及びこれに用いられる射出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、内装基材の表面に別部品を射出成形にて形成してなる車両用内装材の製造方法であって、前記内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層が設けられており、前記内装基材の表面の前記別部品を形成する範囲に対して射出成形装置を設置する設置工程と、前記射出成形装置により前記内装基材の表面から前記通気止め用シート層を貫通して孔を穿設する穿設工程と、前記射出成形装置により溶融樹脂を前記孔内に供給する溶融樹脂供給工程と、前記孔内に供給された溶融樹脂を冷却する冷却工程と、前記内装基材の表面に対して前記射出成形装置を取り外す脱型工程と、を備えることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記穿設工程は、前記射出成形装置のキャビティ内に設けられたスライド針又はスライド刃により前記孔を穿設する工程であることを要旨とする。
上記問題を解決するために、請求項3に記載の発明は、内装基材の表面に別部品を射出成形にて形成するための射出成形装置であって、前記内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層が設けられており、前記内装基材の表面から前記通気止め用シート層を貫通して孔を穿設する穿設機構と、前記穿設機構により穿設された前記孔を含め該射出成形装置のキャビティ内に溶融樹脂を供給する溶融樹脂供給機構と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用内装材の製造方法によると、内装基材の表面の別部品を形成する範囲に対して射出成形装置が設置され、射出成形装置により内装基材の表面から通気止め用シート層を貫通して孔が穿設され、射出成形装置により溶融樹脂がキャビティから孔内に供給され、孔内に供給された溶融樹脂が冷却され、内装基材の表面に対して射出成形装置が取り外される。このように、通気止め用シート層を貫通する孔に溶融樹脂を供給するようにしたので、別部品を射出成形する際に溶融樹脂が孔を介して内装基材の内部に入り込む。よって、内装基材に対する別部材の十分な接合強度を確保して製品品質を向上させることができる。また、射出成形装置により孔を穿設するようにしたので、射出成形の前工程として内装基材に対して孔開け加工を施しておく必要がなく、加工時間を短縮し且つ加工設備も低減して生産性を向上させることができる。さらに、内装基材に対する別部品の接合位置と孔の穿設位置とを正確且つ容易に位置決めできる。
また、前記穿設工程が、前記射出成形装置のキャビティ内に設けられたスライド針又はスライド刃により前記孔を穿設する工程である場合は、内装基材に対する別部品の接合位置と孔の穿設位置とを更に正確且つ容易に位置決めできる。
本発明の射出成形装置によると、穿設機構により内装基材の表面から通気止め用シート層を貫通して孔が穿設され、溶融樹脂供給機構により穿設された孔を含め射出成形装置のキャビティ内に溶融樹脂が供給される。よって、上述の本発明に係る車両用内装材の製造方法に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係る車両用天井材の平面図である。
【図2】実施例に係るクリップ座を含む上記車両用天井材の要部斜視図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】実施例に係るサイドクリップを含む上記車両用天井材の要部分解斜視図である。
【図6】上記車両用天井材の縦断面図である。
【図7】実施例に係る車両用天井材の製造装置を模式的に示す斜視図である。
【図8】実施例に係る射出成形装置を模式的に示す縦断面図である。
【図9】上記車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【図10】上記車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【図11】上記車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【図12】上記車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【図13】上記車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【図14】上記車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【図15】その他の形態の車両用天井材の要部平面図であり、(a)はスリット状の複数の孔が形成された形態を示し、(b)スリット状の単一の孔が形成された形態を示し、(c)は接合部を備えない形態を示す。
【図16】更にその他の形態の車両用天井材の要部分解斜視図であり、(a)針状の複数の孔が形成された形態を示し、(b)はスリット状の複数の孔が形成された形態を示す。
【図17】その他の形態の車両用天井材の製造方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
1.車両用内装材の製造方法
本実施形態1.に係る車両用内装材の製造方法は、内装基材(2)の表面に別部品(3、4)を射出成形にて形成してなる車両用内装材の製造方法であって、内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層(7)が設けられており、内装基材の表面の別部品を形成する範囲に対して射出成形装置(22)を設置する設置工程と、射出成形装置により内装基材の表面から通気止め用シート層を貫通して孔(13、15)を穿設する穿設工程と、射出成形装置により溶融樹脂(b)を孔内に供給する溶融樹脂供給工程と、孔内に供給された溶融樹脂を冷却する冷却工程と、内装基材の表面に対して射出成形装置を取り外す脱型工程と、を備えることを特徴とする(例えば、図9〜図12等参照)。
【0012】
本実施形態1.に係る車両用内装材の製造方法としては、例えば、上記穿設工程は、上記射出成形装置のキャビティ(25a)内に設けられたスライド針(26a)又はスライド刃により上記孔を穿設する工程である形態(例えば、図10等参照)を挙げることができる。この場合、通常、上記スライド針又はスライド刃は、キャビティ内を通ってスライドするように設けられている。
【0013】
本実施形態1.に係る車両用内装材の製造方法としては、例えば、上記内装基材は、繊維層(6)と、繊維層の表面に積層される上記通気止め用シート層と、を備えており、上記穿設工程は、射出成形装置により内装基材の表面から通気止め用シート層を貫通して繊維層に到る孔を穿設する工程である形態(例えば、図13等参照)を挙げることができる。これにより、溶融樹脂が孔を介して比較的低密度の繊維層内に入り込み易くなる。よって、強固なアンカー効果を発揮させて別部材の接合強度を更に高めることができる。この場合、孔内に入り込む溶融樹脂の先端側は、通気止め用シート層の孔の周囲側に係止するように膨出状に固まることが好ましい(例えば、図14等参照)。なお、上記繊維層は、例えば、繊維(例えば、植物繊維、ガラス繊維、カーボン繊維等)及び繊維を繋ぐ熱可塑性樹脂バインダーを用いてなることができる。
【0014】
本実施形態1.に係る車両用内装材の製造方法としては、例えば、上記設置工程は、内装基材の表面に対して射出成形装置(22)の成形型(25)を当接してキャビティ(25a)を形成する工程(例えば、図10等参照)であり、上記溶融樹脂供給工程は、射出成形装置によりキャビティ内に溶融樹脂(b)を供給することにより孔に溶融樹脂を供給する工程(例えば、図12等参照)である形態を挙げることができる。
【0015】
2.射出成形装置
本実施形態2.に係る射出成形装置は、内装基材(2)の表面に別部品(3,4)を射出成形にて形成するための射出成形装置(22)であって、内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層(7)が設けられており、内装基材の表面から通気止め用シート層を貫通して孔(13、15)を穿設する穿設機構(26)と、穿設機構により穿設された孔を含め射出成形装置のキャビティ(25a)内に溶融樹脂を供給する溶融樹脂供給機構(27)と、を備えることを特徴とする(例えば、図8等参照)。この射出成形装置は、例えば、上記孔に供給された溶融樹脂を冷却する冷却機構(28)を更に備えることができる。
【0016】
上記穿設機構は、例えば、射出成形装置(22)のキャビティ(25a)内に設けられたスライド針(26a)又はスライド刃と、スライド針又はスライド刃をスライド駆動させる駆動源(26b)と、を備えることができる。また、上記溶融樹脂供給機構は、例えば、樹脂材料(a)が供給される筒体(27a)と、この筒体の外周側に配置される加熱ヒータ(27b)と、この加熱ヒータで加熱された溶融樹脂(b)を供給ノズル(27c)からキャビティ内に射出するための押出部材(27d)と、を備えることができる。
【0017】
3.車両用内装材の製造装置
本実施形態3.に係る車両用内装材の製造装置は、内装基材(2)の表面に別部品(3、4)を射出成形にて形成してなる車両用内装材の製造装置であって、上記実施形態2.の射出成形装置(22)と、内装基材に対して射出成形装置を近接・離間させる移動機構(23)と、を備えることを特徴とする(例えば、図7等参照)。
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「車両用内装材」として車両用天井材を例示する。
【0019】
(1)車両用天井材の構成
本実施例に係る車両用天井材1は、図1に示すように、天井基材2(本発明に係る「内装基材」として例示する。)と、この天井基材2の表面(車両天井材を車両に設置した状態で車室外側を向く表面)に射出成形にて形成される複数のクリップ座3及びサイドクリップ4(本発明に係る「別部品」として例示する。)と、を備えている。
【0020】
上記天井基材2は、図4に示すように、ケナフ等の植物繊維及び植物繊維を繋ぐ熱可塑性樹脂バインダーを用いてなる繊維層6と、この繊維層6の一方の表面に積層される非通気性を有する通気止め用シート層7と、を備えている。この通気止め用シート層7は、天井基材2の表面側に配置されている。また、通気止め用シート層7の表面には、不織布製の滑り止め層8が積層されている。また、繊維層6の他方の表面には、接着層9を介して不織布からなる表皮層10が積層されている。なお、本実施例では、上記天井基材2として、上記の積層物をボード材とし、このボード材をプレス成形にて所定の天井形状に形成してなるものを採用する。また、上記通気止め用シート層7として、ナイロン製の一対の表層の間にポリプロピレン製の中間層を積層してなる3層構造のシート層を採用する。
【0021】
上記クリップ座3は、図2〜図4に示すように、車両のルーフパネル(図示省略)に係止されるクリップ12(図4中に仮想線で示す。)を保持する平面略U字状の座部本体3aと、この座部本体3aの外周側から外方に面状に延びる接合部3bと、を備えている。これら座部本体3a及び各接合部3bは、天井基材2の表面に接合されている。また、上記サイドクリップ4は、図5及び図6に示すように、車両のルーフパネル(図示省略)に係止されるクリップ本体4aを備えている。このクリップ本体4aは、天井基材2の表面に接合されている。
【0022】
ここで、上記天井基材2の表面側には、図3及び図4に示すように、クリップ座3の座部本体3a及び各接合部3bの接合面を含む表面から通気止め用シート層7を貫通して繊維層6に到る針状の複数の孔13が穿設されている。これら複数の孔13は、略等間隔p1で整列して穿設されている。これら各孔13内にはクリップ座3の一部14が入り込んでおり、このクリップ座3の一部14の先端側14aは、通気止め用シート層7の孔13の周囲側に係止するように繊維層6内で膨出状(すなわち肉溜り状)に形成されている。
【0023】
また、上記天井基材2の表面側には、図5及び図6に示すように、サイドクリップ4のクリップ本体4aの接合面を含む表面から通気止め用シート層7を貫通して繊維層6に到る針状の複数の孔15が穿設されている。これら複数の孔15は、略等間隔p2で整列して穿設されている。また、これら各孔15内にはサイドクリップ4の一部16が入り込んでおり、このサイドクリップ4の一部16の先端側16aは、通気止め用シート層7の孔15の周囲側に係止するように繊維層6内で膨出状(すなわち肉溜り状)に形成されている。なお、上記孔13、15の深さ(例えば、約2mm)は、天井基材2の厚さ(例えば、約4mm)の略1/2とされている。
【0024】
(2)車両用天井材の製造装置の構成
本実施例に係る車両用天井材の製造装置20は、図7に示すように、上記天井基材2を載置可能な載置台21と、この載置台21に対向して配置される複数の射出成形装置22と、この載置台21に対して各射出成形装置22を近接・離間させる移動機構23と、を備えている。この移動機構23は、載置台21に対して各射出成形装置22を昇降させる駆動シリンダ23aを備えている。
【0025】
上記各射出成形装置22は、図8に示すように、載置台21上の天井基材2の表面に当接して閉鎖状のキャビティ25aを形成する成形型25と、天井基材2の表面から通気止め用シート層7を貫通して繊維層6に到る上記孔13、15を穿設する穿設機構26と、この穿設機構26により穿設された孔13、15を含めキャビティ25a内に溶融樹脂を供給する溶融樹脂供給機構27と、を備えている。
【0026】
上記穿設機構26は、成形型25内にスライド可能に設けられキャビティ25a内を通ってスライドする複数のスライド針26aと、これら各スライド針26aをスライドさせる駆動シリンダ26bと、を備えている。また、上記溶融樹脂供給機構27は、樹脂ペレットaが供給される筒体27aと、この筒体27aの外周側に配置される加熱ヒータ27bと、この加熱ヒータ27bで加熱された溶融樹脂b(図11参照)を供給ノズル27cからキャビティ25a内に射出するためのプランジャー27dと、を備えている。また、上記各射出成形装置22は、キャビティ25a及び孔13、15内に供給された溶融樹脂bを冷却する冷却機構28を更に備えている。この冷却機構28は、冷却水等の適宜冷媒が供給される冷媒供給通路28aを有している。
【0027】
(3)車両用天井材の製造方法
次に、上記構成の車両用天井材の製造装置20を用いた車両用天井材の製造方法について説明する。先ず、図9に示すように、天井基材2の表面のクリップ座3及びサイドクリップ14を形成する範囲に対して各射出成形装置22の成形型25が対向するように載置台21上に天井基材2をセットする。このとき、駆動シリンダ26bの作動によりスライド針26aは成形型25内から突出した状態とされている。次に、図10に示すように、各射出成形装置22が下降され、天井基材2の表面に射出成形装置22の成形型25が当接して閉鎖状のキャビティ25aが形成されるとともに、突出状態のスライド針26aにより天井基材2の表面から通気止め用シート層7を貫通して繊維層6に到る孔13、15が穿設される(図13参照)。
【0028】
次いで、図11に示すように、駆動シリンダ26bの作動によりスライド針26aは成形型25内に没入した状態とされる。また、加熱ヒータ27bにより筒体27a内に投入された樹脂ペレットaが加熱されて溶融樹脂bとされる。その後、図12に示すように、プランジャー27dの作動により筒体27a内の溶融樹脂bが成形型25のキャビティ25a内に射出され、この射出により孔13、15内に溶融樹脂bが供給される。このとき、孔13、15内に供給される溶融樹脂bの一部は、繊維層6において各繊維間に入り込んで膨出状に拡がる(図14参照)。次に、冷却機構28によりキャビティ25a及び孔13、15内に供給された溶融樹脂bが冷却される。次いで、各射出成形装置22が上昇され、天井基材2の表面から成形型25が取り外され、上記車両用天井材1が得られることとなる。
【0029】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例の車両用天井材の製造方法によると、天井基材2の表面のクリップ座3及びサイドクリップ4を形成する範囲に対して射出成形装置22が設置され、射出成形装置22により天井基材2の表面から通気止め用シート層7を貫通して孔13、15が穿設され、射出成形装置22により溶融樹脂bがキャビティ25aから孔13、15内に供給され、孔13、15内に供給された溶融樹脂が冷却され、天井基材2の表面に対して射出成形装置22が取り外される。このように、通気止め用シート層7を貫通する孔13、15に溶融樹脂bを供給するようにしたので、クリップ座3及びサイドクリップ4を射出成形する際に溶融樹脂bが孔13、15を介して天井基材2の内部に入り込む。よって、天井基材2に対するクリップ座3及びサイドクリップ4の十分な接合強度を確保して製品品質を向上させることができる。また、射出成形装置22により孔13、15を穿設するようにしたので、射出成形の前工程として天井基材2に対して孔開け加工を施しておく必要がなく、加工時間を短縮し且つ加工設備も低減して生産性を向上させることができる。さらに、天井基材2に対するクリップ座3及びサイドクリップ4の接合位置と孔13、15の穿設位置とを正確且つ容易に位置決めできる。
【0030】
また、本実施例では、射出成形装置22のキャビティ25a内に設けられたスライド針26aにより孔13、15を穿設するようにしたので、天井基材2に対するクリップ座3及びサイドクリップ4の接合位置と孔13、15の穿設位置とを更に正確且つ容易に位置決めできる。
【0031】
また、本実施例では、天井基材2を、繊維及び繊維を繋ぐ熱可塑性樹脂バインダーを用いてなる繊維層6と、繊維層6の表面に積層される上記通気止め用シート層7と、を備えて構成し、射出成形装置22により天井基材2の表面から通気止め用シート層7を貫通して繊維層6に到る孔13、15を穿設するようにしたので、溶融樹脂bが孔13、15を介して比較的低密度の繊維層6内に入り込み易くなる。よって、強固なアンカー効果を発揮させてクリップ座3及びサイドクリップ4の接合強度を更に高めることができる。
【0032】
また、本実施例の射出成形装置22によると、穿設機構26により天井基材2の表面から通気止め用シート層7を貫通して孔13、15が穿設され、溶融樹脂供給機構27により穿設された孔13、15を含めキャビティ25a内に溶融樹脂bが供給される。よって、上述の車両用天井材の製造方法に好適に使用される。
【0033】
また、本実施例の車両用天井材1によると、天井基材2には、クリップ座3及びサイドクリップ4の接合面を含む表面から通気止め用シート層7を貫通して孔13、15が穿設され、孔13、15内にはクリップ座3及びサイドクリップ4の一部14、16が入り込んでいるので、天井基材2に対するクリップ座3及びサイドクリップ4の十分な接合強度を確保して製品品質を向上させることができる。
【0034】
また、本実施例では、複数の孔13、15を略等間隔で整列して穿設するようにしたので、クリップ座3及びサイドクリップ4の接合強度を更に高めることができる。
【0035】
また、本実施例では、クリップ座3及びサイドクリップ4の一部14、16の先端側14a、16aを、通気止め用シート層7の孔13、15の周囲側に係止するように膨出状に形成したので、強固なアンカー効果を発揮させてクリップ座3及びサイドクリップ4の接合強度を更に高めることができる。
【0036】
また、本実施例では、天井基材2を、繊維及び繊維を繋ぐ熱可塑性樹脂バインダーを用いてなる繊維層6と、繊維層6の表面に積層される通気止め用シート層7と、を備えて構成し、孔13、15の先端側を繊維層6内に到らせたので、クリップ座3及びサイドクリップ4を射出成形する際に、溶融樹脂bが孔13、15を介して比較的低密度の繊維層6内に入り込み易くなる。よって、更に強固なアンカー効果を発揮させることができる。
【0037】
さらに、本実施例では、クリップ座3を、座部本体3aと、座部本体3aの外周側から外方に延びて天井基材2の表面に接合する複数の接合部3bと、を備えて構成し、孔13、15を、天井基材2の座部本体3a及び各接合部3bの接合面を含む表面から通気止め用シート層7を貫通して穿設するようにしたので、クリップ座3の接合面積を必要最小限としてクリップ座3の反り等の製品品質の低下を抑制できるとともに、クリップ座3の十分な接合強度を確保できる。
【0038】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、天井基材2に対して射出成形置22を設置すると略同時に孔13、15を穿設するようにしたが、これに限定されず、例えば、内装基材に対して射出成形置を設置した後に孔を穿設したり、内装基材に対して射出成形装置を設置する前に孔を穿設したりしてもよい。すなわち、設置工程及び穿設工程は、略同時に実施されてもよいし、異なる順序で実施されてもよい。
【0039】
また、上記実施例では、穿設工程として、針状の孔13、15を形成する工程を例示したが、これに限定されず、例えば、図15(a)(b)及び図16(b)に示すように、スリット状の孔31、32、33を形成するようにしてもよい。この場合、通常、上記スライド針26aの代わりに板状のスライド刃が用いられる。また、上記実施例では、穿設工程として、複数の孔13、15を形成する工程を例示したが、これに限定されず、例えば、図15(b)に示すように、単一の連続する孔32を形成するようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施例では、冷却工程として、冷却機構28により孔13、15に供給された溶融樹脂bを積極的に冷却する工程を例示したが、これに限定されず、例えば、孔13、15に供給された溶融樹脂bを自然冷却したり、冷却フィンにより冷却したりしてもよい。
【0041】
また、上記実施例では、設置工程及び脱型工程として、載置台21上の天井基材2に対して射出成形装置22を昇降させる工程を例示したが、これに限定されず、例えば、固定状態の射出成形装置22に対して内装基材2を近接・離間させるようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施例では、射出成形装置22を駆動シリンダ23aで昇降させるようにしたが、これに限定されず、例えば、射出成形装置22を駆動モータにより昇降させたり、ロボットハンド35(図17参照)により昇降させたりしてもよい。
【0043】
また、上記実施例では、スライド針26aを駆動シリンダ26bでスライドさせるようにしたが、これに限定されず、例えば、スライド針26aを駆動モータによりスライドさせたり、射出成形装置22の昇降移動を動力伝達することによりスライドさせたりしてもよい。また、上記実施例では、溶融樹脂bをプランジャー27dによりキャビティ25a内に供給するようにしたが、これに限定されず、例えば、溶融樹脂bをスクリュウによりキャビティ25a内に供給してもよい。
【0044】
また、上記実施例において、射出成形装置22の成形型25を、例えば、主型と、主型に対してスライド可能に設けられる1又は2以上のスライド型と、を備えて構成することができる。これにより、更に複雑な形状の別部品を形成できる。
【0045】
また、上記実施例では、車両用内装材として天井材1を例示したが、これに限定されず、例えば、ドアトリム、フロアカーペット、フロアマット、ダッシュサイレンサ等を採用してもよい。また、上記実施例では、別部品として、車両側にクリップ固定するためのクリップ座3及びサイドクリップ4を例示したが、これに限定されず、例えば、各種機能部品を採用してもよい。
【0046】
また、上記実施例では、天井基材2において、車両に設置した状態で車室外側を向く表面にクリップ座3及びサイドクリップ4を形成してなる車両用天井材1を例示したが、これに限定されず、例えば、内装基材において、車両に設置した状態で車室内側を向く表面(すなわち意匠面)に別部品を形成してなる車両用内装材としてもよい。
【0047】
また、上記実施例では、車両用内装材として、天井基材2に複数の孔13、15が略等間隔で整列して穿設されたものを例示したが、これに限定されず、例えば、内装基材に複数の孔が不等間隔で穿設されたものを採用してもよい。
【0048】
また、上記実施例では、車両用内装材として、孔13、15内に入り込むクリップ座3及びサイドクリップ4の一部の先端側が膨出状に形成されたものを例示したが、これに限定されず、例えば、孔内に入り込む別部品の一部の先端側が先細り状に形成されたものを採用してもよい。
【0049】
また、上記実施例では、天井基材2として、通気止め用シート層7が積層される繊維層6を備えるものを例示したが、これに限定されず、例えば、繊維層6の代わりに発泡層を備えるものを採用してもよい。さらに、上記実施例では、通気止め用シート層7の表面に滑り止め層8を積層したものを例示したが、これに限定されず、例えば、滑り止め層8を止めて通気止め用シート層7が表面に露出するものを採用してもよい。
【0050】
また、上記実施例では、座部本体3aの外周側から面状に延びる接合部3bを例示したが、これに限定されず、例えば、図15(a)(b)に示すように、座部本体3aの外周側から放射状に延びる接合部3bとしてもよい。さらに、上記実施例では、座部本体3a及び接合部3bを備えるクリップ座3を例示したが、これに限定されず、例えば、図15(c)に示すように、接合部3bを備えずに座部本体3aのみからなるクリップ座3’としてもよい。また、上記実施例では、クリップ本体4aのみからなるサイドクリップ4を例示したが、これに限定されず、例えば、図16(a)に示すように、クリップ本体4aと、このクリップ本体4aの外周側から外方に延びる複数の接合部4bと、を備えるサイドクリップ4’としてもよい。
【0051】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0052】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
内装基材の表面に別部品を射出成形にて形成してなる車両用内装材を製造する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0054】
1;車両用天井材、2;天井基材、3;クリップ座、4;サイドクリップ、7;通気止め用シート層、13、15;孔、22;射出成形装置、25a;キャビティ、26;穿設機構、26a;スライド針、27;溶融樹脂供給機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装基材の表面に別部品を射出成形にて形成してなる車両用内装材の製造方法であって、
前記内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層が設けられており、
前記内装基材の表面の前記別部品を形成する範囲に対して射出成形装置を設置する設置工程と、
前記射出成形装置により前記内装基材の表面から前記通気止め用シート層を貫通して孔を穿設する穿設工程と、
前記射出成形装置により溶融樹脂を前記孔内に供給する溶融樹脂供給工程と、
前記孔内に供給された溶融樹脂を冷却する冷却工程と、
前記内装基材の表面に対して前記射出成形装置を取り外す脱型工程と、を備えることを特徴とする車両用内装材の製造方法。
【請求項2】
前記穿設工程は、前記射出成形装置のキャビティ内に設けられたスライド針又はスライド刃により前記孔を穿設する工程である請求項1記載の車両用内装材の製造方法。
【請求項3】
内装基材の表面に別部品を射出成形にて形成するための射出成形装置であって、
前記内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層が設けられており、
前記内装基材の表面から前記通気止め用シート層を貫通して孔を穿設する穿設機構と、
前記穿設機構により穿設された前記孔を含め該射出成形装置のキャビティ内に溶融樹脂を供給する溶融樹脂供給機構と、を備えることを特徴とする射出成形装置。
【請求項1】
内装基材の表面に別部品を射出成形にて形成してなる車両用内装材の製造方法であって、
前記内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層が設けられており、
前記内装基材の表面の前記別部品を形成する範囲に対して射出成形装置を設置する設置工程と、
前記射出成形装置により前記内装基材の表面から前記通気止め用シート層を貫通して孔を穿設する穿設工程と、
前記射出成形装置により溶融樹脂を前記孔内に供給する溶融樹脂供給工程と、
前記孔内に供給された溶融樹脂を冷却する冷却工程と、
前記内装基材の表面に対して前記射出成形装置を取り外す脱型工程と、を備えることを特徴とする車両用内装材の製造方法。
【請求項2】
前記穿設工程は、前記射出成形装置のキャビティ内に設けられたスライド針又はスライド刃により前記孔を穿設する工程である請求項1記載の車両用内装材の製造方法。
【請求項3】
内装基材の表面に別部品を射出成形にて形成するための射出成形装置であって、
前記内装基材の表面側には、非通気性を有する通気止め用シート層が設けられており、
前記内装基材の表面から前記通気止め用シート層を貫通して孔を穿設する穿設機構と、
前記穿設機構により穿設された前記孔を含め該射出成形装置のキャビティ内に溶融樹脂を供給する溶融樹脂供給機構と、を備えることを特徴とする射出成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−200897(P2012−200897A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64889(P2011−64889)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]