説明

車両用制御装置

【課題】適正に車両の惰性走行を実現することができる車両用制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車両用制御装置7は、駆動源4で発生する動力によって走行する車両2の走行中に、車両2の走行方向前方の信号機の信号変化タイミングを含む情報に基づいて、駆動源4を作動状態とし車両2を加速させる加速走行と駆動源4を非作動状態とし車両2を惰性で走行させる惰性走行とを行う制御、あるいは、加速走行の操作又は惰性走行の操作を促す制御を実行することを特徴とする。したがって、車両用制御装置7は、適正に車両2の惰性走行を実現することができる、という効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用制御装置による車両の惰性走行に関する技術として、例えば、特許文献1には、交差点を青信号・無停止で通過するための交差点到達最適時刻を算出し、この交差点到達最適時刻を用いて、車両の現在地点から惰性走行を開始した場合に交差点到達最適時刻までに停止地点に到達可能であるか否かを判定する車両走行制御方法が開示されている。この車両走行制御方法では、この判定において到達可能であればその現在地点から惰性走行を開始し、到達不可であればこの判定を繰り返し、到達可能となった時点で惰性走行を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−064576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような特許文献1に記載の車両走行制御方法は、例えば、燃費の向上と青信号・無停止通過との両立の点で、さらなる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、適正に車両の惰性走行を実現することができる車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用制御装置は、駆動源で発生する動力によって走行する車両の走行中に、前記車両の走行方向前方の信号機の信号変化タイミングを含む情報に基づいて、前記駆動源を作動状態とし前記車両を加速させる加速走行と前記駆動源を非作動状態とし前記車両を惰性で走行させる惰性走行とを行う制御、あるいは、前記加速走行の操作又は前記惰性走行の操作を促す制御を実行することを特徴とする。
【0007】
また、上記車両用制御装置では、前記信号変化タイミングより早いタイミングで前記制御を実行するものとすることができる。
【0008】
また、上記車両用制御装置では、前記車両が前記信号機を通過する際に前記駆動源を作動状態とするものとすることができる。
【0009】
また、上記車両用制御装置では、前記加速走行で前記車両の上限速度に達した後に前記惰性走行を行った場合に、当該惰性走行を継続すると前記信号変化タイミングまでに前記車両が前記信号機を通過できない場合には、前記加速走行を行う制御、あるいは、前記加速走行の操作を促す制御を行うものとすることができる。
【0010】
また、上記車両用制御装置では、前記惰性走行を行うことで前記駆動源の再始動時に消費される燃料量に相当する燃料消費を削減可能な期間が確保される場合に、当該惰性走行を行うものとすることができる。
【0011】
また、上記車両用制御装置では、前記惰性走行を行うことで前記駆動源の再始動時に消費される燃料量に相当する燃料消費を削減可能な期間が確保されない場合に、前記惰性走行を禁止するものとすることができる。
【0012】
また、上記車両用制御装置では、前記信号変化タイミングまでの時間内に前記車両が前記惰性走行を行って前記信号機を通過できる車速まで前記駆動源によって加速制御するものとすることができる。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用制御装置は、車両の走行方向前方の信号機の信号変化タイミングまでの時間内に前記車両が当該車両の駆動源を非作動状態とした惰性走行を行って前記信号機を通過できる車速まで前記駆動源によって加速制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両用制御装置は、適正に車両の惰性走行を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施形態に係る車両制御システムの概略構成図である。
【図2】図2は、信号変化タイミングと車速との関係の一例を表す線図である。
【図3】図3は、ECUによる制御の一例を説明する線図である。
【図4】図4は、ECUによる制御の一例を説明する線図である。
【図5】図5は、変形例に係る車両制御システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る車両制御システムの概略構成図、図2は、信号変化タイミングと車速との関係の一例を表す線図、図3、図4は、ECUによる制御の一例を説明する線図、図5は、変形例に係る車両制御システムの概略構成図である。
【0018】
本実施形態の車両制御システム1は、図1に示すように、車両2に搭載され、この車両2を制御するためのシステムである。ここでは、車両制御システム1は、信号情報を利用して車両2の走行を制御する信号情報利用システムを構成する。車両制御システム1は、駆動輪(TIRE)3を駆動するための動力を発生させる走行用駆動源である内燃機関としてのエンジン4と、エンジン4が発生した動力を駆動輪3に伝達する動力伝達系をなす動力伝達装置5と、インフラ(インフラストラクチャー)情報を取得するインフラ情報取得装置6と、車両2の各部を制御する車両用制御装置としてのECU7とを備える。
【0019】
動力伝達装置5は、エンジン4からの動力を変速して出力する変速機(T/M)51、変速機51に連結されるデファレンシャルギヤ(DIFF)52等を含んで構成される。エンジン4等の車両2の各部は、制御装置としてのECU7によって制御される。変速機51は、いわゆる手動変速機(MT)であってもよいし、有段自動変速機(AT)、無段自動変速機(CVT)、マルチモードマニュアルトランスミッション(MMT)、シーケンシャルマニュアルトランスミッション(SMT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)などのいわゆる自動変速機であってもよい。ここでは、変速機51は、自動変速機であるものとして説明する。変速機51は、ECU7によって動作が制御される。
【0020】
したがって、車両2は、エンジン4のクランクシャフト41が回転駆動すると、その駆動力が動力伝達装置5の変速機51、デファレンシャルギヤ52等を介して駆動輪3に伝達され、これにより、駆動輪3が回転することで前進走行または後退走行することができる。
【0021】
インフラ情報取得装置6は、インフラストラクチャーと協調することで取得可能な車両2の周囲のインフラ情報を取得するものである。インフラ情報取得装置6は、例えば、路側に設置された光ビーコン等の送受信機器から車両2の路車間通信機に各種情報を送受信する装置、GPS装置、ナビゲーション装置、車車間通信機器、VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)センタなどからの情報を受信する装置など、種々の装置によって構成される。インフラ情報取得装置6は、インフラ情報として、例えば、車両2が走行する道路の道路情報や車両2の走行方向前方の信号機に関する信号情報等を取得する。道路情報は、典型的には、車両2が走行する道路の制限速度情報、交差点の停止線位置情報等を含む。信号情報は、典型的には、信号機の青信号、黄信号、赤信号の点灯サイクルや信号変化タイミング等の信号サイクル情報を含む。
【0022】
ECU7は、車両2の各部の駆動を制御するものであり、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。ECU7は、車両2の車輪速度を検出する車輪速度センサ8、アクセルペダルの操作量に相当するアクセル開度を検出するアクセル開度センサ9等の種々のセンサやインフラ情報取得装置6から検出結果や取得情報に対応した電気信号が入力され、入力された検出結果、取得情報等に応じて、エンジン4、変速機51等を制御する。ECU7は、例えば、車輪速度センサ8による検出結果に基づいて車両2の走行速度である車速を算出することができ、また、アクセル開度センサ9による検出結果に基づいて、運転者による車両2に対する加速要求操作であるアクセル操作のON/OFFを検出することができる。
【0023】
ここでは、ECU7は、機能概念的に、エンジン4を制御するエンジンECU71、変速機51を制御するT/MECU72、後述するフリーランS&S(ストップ&スタート)に関する制御を実行するS&SECU73等を含んで構成され、これらが互いに電気的に接続されており、相互に検出信号や駆動信号、制御指令等の情報の授受を行うことができる。
【0024】
ECU7は、車両2の走行中において、エンジンECU71による制御によってエンジン4を始動し、又は作動を停止して、エンジン4の作動状態と非作動状態とを切り替えることが可能となっている。ここで、エンジン4の作動状態(エンジン4を作動させた状態)とは、車両2の駆動輪3に作用させる動力を発生する状態であり、燃焼室で燃料を燃焼して生じる熱エネルギをトルクなどの機械的エネルギの形で出力する状態である。一方、エンジン4の非作動状態、すなわち、エンジン4の作動を停止させた状態とは、動力の発生を停止する状態であり、燃焼室への燃料の供給を停止し(フューエルカット)、燃焼室で燃料を燃焼させずトルクなどの機械的エネルギを出力しない状態である。
【0025】
ECU7は、典型的には、車両2の走行中に、フリーランS&Sに関する制御として、S&SECU73が所定の条件下でエンジンECU71にエンジン停止指令を送信し、エンジンECU71がエンジン4の燃焼室への燃料の供給を停止するフューエルカット制御を実行する。これにより、ECU7は、エンジン4の作動を停止した状態とし、この車両2を惰性走行(コーストダウン)させる状態、いわゆるフリーラン状態とする制御に移行可能である。車両2は、典型的には、フリーラン状態では、動力伝達装置5に含まれる種々の係合装置において駆動輪3とエンジン4との連結が解除された状態となる。この結果、この車両制御システム1は、車両2の走行中にエンジン4での燃料の消費を停止しこの車両2を惰性走行させるいわゆるフリーランを行うことができ、燃費の向上を図ることが可能となる。また、ECU7は、車両2の惰性走行中に、フリーランS&Sに関する制御として、S&SECU73が所定の条件下でエンジンECU71にエンジン始動指令を送信し、エンジンECU71がエンジン4の燃焼室への燃料の供給を開始しエンジン4を再始動することで、再び車両2をエンジン4が発生する動力によって走行する通常の加速走行に復帰させることができる。また、ECU7は、車両2の加速走行と惰性走行とを繰り返す制御を行うことで、走行全体として車両2の定常走行区間を実現することもできる。
【0026】
ここで、ECU7は、運転者による所定のフリーラン操作に応じてエンジン4の作動を停止し車両2を惰性走行させてもよいし、運転者による操作にかかわらず所定の条件で自動的にエンジン4の作動を停止し車両2を惰性走行させてもよい。また、ECU7は、運転者による所定のフリーラン解除操作に応じてエンジン4を再始動し車両2を加速走行させてもよいし、運転者による操作にかかわらず所定の条件で自動的にエンジン4を再始動し車両2を加速走行させてもよい。
【0027】
ECU7は、本実施形態のように変速機51が自動変速機である場合、運転者による所定のフリーラン操作として、例えば、車両2の走行中に、運転者によって、アクセル操作をOFFにすると共にフリーランスイッチ10をONとする一連の操作、あるいは、フリーランスイッチ10をONとした状態でアクセル操作をOFFにする操作がなされた際に、エンジン4の作動を停止し車両2を惰性走行させる。また、ECU7は、本実施形態のように変速機51が自動変速機である場合、運転者による所定のフリーラン解除操作として、例えば、車両2の惰性走行中に、運転者によって、アクセル操作をONとする操作、あるいは、フリーランスイッチ10をOFFにする操作がなされた際に、エンジン4を再始動し車両2を加速走行させる。
【0028】
そして、本実施形態のECU7は、エンジン4で発生する動力によって走行する車両2の走行中に、車両2の走行方向前方の信号機の信号変化タイミングを含む情報に基づいて、加速走行と惰性走行とを行う制御、あるいは、加速走行の操作又は惰性走行の操作を促す制御を実行することで、燃費(単位燃料量で走行できる距離)の向上と青信号・無停止通過とを両立し、適正に車両2の惰性走行を実現している。ここで、車両2の加速走行とは、エンジン4を作動状態とし車両2を加速させる走行であり、車両2の惰性走行とは、エンジン4を非作動状態とし車両2を惰性で走行させる走行である。
【0029】
本実施形態のECU7は、車両2の走行方向前方の信号機の信号変化タイミングより早いタイミング、典型的には、信号機が青信号から赤信号に変る信号変化タイミングより早いタイミングで加速走行と惰性走行とを自動的に行う制御を実行する。
【0030】
具体的には、ECU7のS&SECU73は、インフラ情報取得装置6が取得した情報に基づいて、車両2の走行方向前方の信号機の信号変化タイミングに関する情報や道路情報等を取得する。そして、ECU7は、この信号変化タイミングに応じて、車両2が一定の車速で定常走行した場合に、信号機の黄信号の終了までにこの信号機に応じた停止線位置を通過することが可能な車両2の最低車速を算出する。
【0031】
ここで、図2は、横軸を信号変化タイミング、縦軸を車速としている。車両2の走行距離は、車速×走行時間で表すことができる。このため、車両2は、図2中に示す信号変化タイミングT1と、停止線位置を通過することが可能な車両2の最低車速V1とで定まる基準面積S1(停止線位置を通過するための基準の走行距離に相当)を基準として、車両2の実際の走行に応じた実際の車速と信号変化タイミングT1とで定まる面積(実際の走行距離に相当)がこの面積S1より大きくなれば、走行方向前方の信号機の停止線位置で停止することなく、この信号機を通過することができることとなる。
【0032】
S&SECU73は、このことを利用して、車両2が信号変化タイミングT1までに信号機で停止することなく通過できると共に可能な限り燃料消費を抑制できるように、最適な加速走行と惰性走行との配分を決定する。例えば、S&SECU73は、取得した信号変化タイミングT1と、算出した最低車速V1とから基準面積S1を算出する。そして、S&SECU73は、図3に示すように、信号変化タイミングT1と実際の車速とで定まる面積Sが基準面積S1以上となるように、加速走行の期間と惰性走行の期間とを設定する。
【0033】
ここで、S&SECU73は、例えば、車両2が惰性走行を行うことでエンジン4の再始動時に消費される燃料量に相当する燃料消費を削減可能な期間である惰性走行有効期間X(図3参照)が確保される場合に、車両2の惰性走行を行うように設定する。言い換えれば、S&SECU73は、例えば、信号変化タイミングT1までに、惰性走行有効期間Xが確保されない場合には、車両2の惰性走行を禁止する。惰性走行有効期間Xは、エンジン4の始動時の燃料増量分を差し引いても、惰性走行による燃料削減効果が十分に得られる期間(例えば5秒程度)として、予め実験等に応じて設定される。すなわち、S&SECU73は、惰性走行の期間を設定する際には、当該惰性走行の期間がこの惰性走行有効期間X以上となるように設定する。
【0034】
そして、エンジンECU71、T/MECU72は、S&SECU73が設定した加速走行の期間と惰性走行の期間とに応じて、エンジン4や変速機51を制御して加速走行と惰性走行とを自動的に行う制御を実行する。典型的には、ECU7は、信号変化タイミングまでの時間内に車両2が惰性走行を行って信号機を通過できる車速までエンジン4によって加速制御する。図3の例では、車両2は、時刻t1以前の期間で加速走行を行い、時刻t1から信号変化タイミング(信号変化時刻)T1までの期間で惰性走行を行う。
【0035】
また、ECU7は、法定制限速度など、車両2の上減速度VLが定められており、車両2の加速走行時に車速がこの上減速度VLに達した場合には、例えば、図4に例示するような制御を行う。すなわち、ECU7は、加速走行で車速が車両2の上限速度VLに達した後に惰性走行を行った場合に、この惰性走行を継続すると信号変化タイミングT1までに車両2が信号機を通過できない場合には、エンジン4を再始動して作動状態とし、加速走行を行う制御を実行する。この場合、S&SECU73は、惰性走行有効期間X以上の惰性走行後に加速走行の期間を設定する。そして、エンジンECU71は、惰性走行有効期間X以上の惰性走行後にエンジン4を自動的に再始動する制御を実行する。車両2は、図4の例では、時刻t1以前の期間で加速走行を行い、時刻t1から時刻t2までの期間で惰性走行を行う。そして、車両2は、時刻t2にてエンジン4が再始動され時刻t2から信号変化タイミング(信号変化時刻)T1までの期間で加速走行を行う。
【0036】
この結果、車両2は、ECU7が信号変化タイミングの前に車両2を加速走行と惰性走行とを組み合わせて走行させる制御を実行することで、例えば、惰性走行時に車速が低下しても、これを見込んで加速走行で車速を上げておくことができるから、信号機で停止することなく当該信号機を通過できる可能性を高めることができると共に、燃料消費を低減して燃費の向上を図ることができる。例えば、車両2は、加速走行時に車両2の車速が制限された後に惰性走行に移行したような場合であっても、惰性走行後に加速走行を行って補うことで、信号変化タイミングまでに確実に信号機を通過することができる。したがって、ECU7は、車両2の青信号・無停止通過と燃費の向上とを両立することができる。また、このECU7は、信号変化タイミングの前に車両2を加速走行と惰性走行とを組み合わせて走行させる制御を実行することで、車両2が交差点に進入する際に、車両2の惰性走行に伴った減速によって運転者の注意行動を促すことができる。
【0037】
さらにここでは、ECU7は、惰性走行有効期間Xが確保される場合に車両2の惰性走行を行い、言い換えれば、惰性走行有効期間Xが確保されない場合には、車両2の惰性走行を禁止することから、車両2の惰性走行による燃料削減効果をより確実なものとすることができる。
【0038】
なお、ECU7は、車両2が信号機を通過する際、典型的には車両2が交差点に進入する際にエンジン4を作動状態とするとよい。例えば、図3、図4の例でS=S1であれば、ECU7のエンジンECU71は、車両2が信号機に応じた停止線位置を通過する信号変化タイミングT1にて、エンジン4が非作動状態であれば自動で再始動し作動状態とする。車両2は、惰性走行の状態では、基本的には駆動輪3にエンジン4による駆動トルク(駆動力)やエンジンブレーキトルク(制動力)が作用せず、慣性力によって惰性で走行する状態となるため、挙動の安定性が相対的に低下する傾向にあるが、上記のように車両2が信号機を通過する際にエンジン4が作動状態となることで、十分に挙動の安定性が確保され、緊急操舵や急減速等に適正に対応することができる。
【0039】
また、ECU7は、上記の説明では、信号変化タイミングより早いタイミングで加速走行と惰性走行とを自動的に行う制御を実行するものとして説明したが、自動で走行制御するかわりに、通知装置11(図1参照)を介して、運転者に対して加速走行の操作又は惰性走行の操作を促す制御を実行するようにしてもよい。ここで、加速走行の操作とは、典型的には、アクセル操作のONなどのフリーラン解除操作であり、惰性走行の操作とは、典型的には、アクセル操作のOFFなどのフリーラン操作である。
【0040】
通知装置11は、例えば、ナビゲーション装置に付属しているLCD画面やインジケータ等の視覚情報表示装置、音声、ブザー等の聴覚情報を発するスピーカなどの音出力装置、ハンドル振動、座席振動、ペダル反力などの触覚情報を出力する触覚情報出力装置など、運転者に対してフリーラン操作やフリーラン解除操作を推奨する情報を通知することができるものであればなんでもよい。
【0041】
この場合、ECU7は、図4で例示したように、加速走行で車速が車両2の上限速度VLに達した後に惰性走行を行った場合に、この惰性走行を継続すると信号変化タイミングT1までに車両2が信号機を通過できない場合には、通知装置11を介して、加速走行の操作であるフリーラン解除操作を促す制御を行うようにするとよい。
【0042】
この結果、車両2は、ECU7が信号変化タイミングの前にフリーラン操作あるいはフリーラン解除操作を促す情報通知を行い、通知された情報に促されて運転者が適正なタイミングでフリーラン操作やフリーラン解除操作を行うことで、信号機で停止することなく当該信号機を通過できる可能性を高めることができると共に、燃料消費を低減して燃費の向上を図ることができる。
【0043】
以上で説明した実施形態に係るECU7によれば、エンジン4で発生する動力によって走行する車両2の走行中に、車両2の走行方向前方の信号機の信号変化タイミングを含む情報に基づいて、エンジン4を作動状態とし車両2を加速させる加速走行とエンジン4を非作動状態とし車両2を惰性で走行させる惰性走行とを行う制御、あるいは、加速走行の操作又は惰性走行の操作を促す制御を実行する。したがって、ECU7は、例えば、車両2の青信号・無停止通過と燃費の向上とを両立することができ、適正に車両2の惰性走行を実現することができる。
【0044】
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両用制御装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
以上の説明では、動力伝達装置5は、ECU7によって動作が制御される自動変速機としての変速機51を備えるものとして説明したが、これに限らず、図5の変形例に示すように、手動変速機としての変速機51Aを備えるものであってもよい。つまり、図5に示すように、本実施形態のECU7を含む車両制御システム1Aは、手動変速機としての変速機51Aが搭載された車両2に適用されてもよい。
【0046】
この場合、車両制御システム1Aは、動力伝達装置5が変速機51Aに加えて、エンジン4と変速機51Aとの間の動力伝達経路中にクラッチ53Aを含んで構成される。クラッチ53Aは、種々の係合装置を用いることができ、運転者によるクラッチペダルのクラッチ操作に応じて、エンジン4側の回転部材と駆動輪3側の回転部材とを動力伝達可能に係合した係合状態と、この係合を解除しエンジン4と駆動輪3とを動力伝達不能に切り離した解放状態とに切り替え可能である。手動変速機としての変速機51Aは、運転者によるシフトレバーのシフト操作に応じて、複数のギヤ段のうちの任意の1つ、あるいは動力を伝達しないニュートラルポジションが選択される。
【0047】
そして、車両制御システム1Aは、フリーランスイッチ10、T/MECU72等にかえて、クラッチペダルの操作量に相当するクラッチストロークを検出するクラッチストロークセンサ12A、クラッチペダルが踏み込まれていないことを検出するクラッチアッパースイッチ13A、クラッチペダルが完全に踏み込まれていることを検出するクラッチロワースイッチ14A等を備える。ECU7は、クラッチストロークセンサ12A、クラッチアッパースイッチ13A、クラッチロワースイッチ14Aによる検出結果に基づいて、運転者によるフリーラン操作やフリーラン解除操作を検出する。
【0048】
ECU7は、変速機51Aが手動変速機である場合、運転者による所定のフリーラン操作として、例えば、車両2の走行中に、運転者によって、クラッチペダルを踏み込んでクラッチ53Aを解放状態としシフト操作によりニュートラルポジションを選択した後、クラッチペダルをはなしてクラッチ53Aを再び係合状態とする一連の操作がなされた際に、エンジン4の作動を停止し車両2を惰性走行させる。また、ECU7は、変速機51Aが手動変速機である場合、運転者による所定のフリーラン解除操作として、例えば、車両2の惰性走行中に、運転者によって、クラッチペダルを踏み込んでクラッチ53Aを解放状態とする操作、あるいは、アクセル操作をONとする操作がなされた際に、エンジン4を再始動し車両2を加速走行させる。
【0049】
この場合であっても、ECU7は、エンジン4で発生する動力によって走行する車両2の走行中に、車両2の走行方向前方の信号機の信号変化タイミングを含む情報に基づいて、エンジン4を作動状態とし車両2を加速させる加速走行とエンジン4を非作動状態とし車両2を惰性で走行させる惰性走行とを行う制御、あるいは、加速走行の操作又は惰性走行の操作を促す制御を実行することで、適正に車両2の惰性走行を実現することができる。
【0050】
また、以上で説明した車両は、走行用駆動源として、エンジン4に加えてさらに、発電可能な電動機としてのモータジェネレータなどを備えたいわゆる「ハイブリッド車両」であってもよい。
【0051】
また、以上で説明したフリーラン操作、フリーラン解除操作は、上記で説明した操作に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように本発明に係る車両用制御装置は、種々の車両に搭載される車両用制御装置に適用して好適である。
【符号の説明】
【0053】
1、1A 車両制御システム
2 車両
3 駆動輪
4 エンジン(駆動源)
5 動力伝達装置
6 インフラ情報取得装置
7 ECU(車両用制御装置)
11 通知装置
51、51A 変速機
53A クラッチ
71 エンジンECU
72 T/MECU
73 S&SECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源で発生する動力によって走行する車両の走行中に、前記車両の走行方向前方の信号機の信号変化タイミングを含む情報に基づいて、前記駆動源を作動状態とし前記車両を加速させる加速走行と前記駆動源を非作動状態とし前記車両を惰性で走行させる惰性走行とを行う制御、あるいは、前記加速走行の操作又は前記惰性走行の操作を促す制御を実行することを特徴とする、
車両用制御装置。
【請求項2】
前記信号変化タイミングより早いタイミングで前記制御を実行する、
請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記車両が前記信号機を通過する際に前記駆動源を作動状態とする、
請求項1又は請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記加速走行で前記車両の上限速度に達した後に前記惰性走行を行った場合に、当該惰性走行を継続すると前記信号変化タイミングまでに前記車両が前記信号機を通過できない場合には、前記加速走行を行う制御、あるいは、前記加速走行の操作を促す制御を行う、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記惰性走行を行うことで前記駆動源の再始動時に消費される燃料量に相当する燃料消費を削減可能な期間が確保される場合に、当該惰性走行を行う、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記惰性走行を行うことで前記駆動源の再始動時に消費される燃料量に相当する燃料消費を削減可能な期間が確保されない場合に、前記惰性走行を禁止する、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記信号変化タイミングまでの時間内に前記車両が前記惰性走行を行って前記信号機を通過できる車速まで前記駆動源によって加速制御する、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項8】
車両の走行方向前方の信号機の信号変化タイミングまでの時間内に前記車両が当該車両の駆動源を非作動状態とした惰性走行を行って前記信号機を通過できる車速まで前記駆動源によって加速制御することを特徴とする、
車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−116356(P2012−116356A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268462(P2010−268462)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】