説明

車両用前照灯の灯具ユニット

【課題】前後サイズの薄型化が可能な車両用前照灯の灯具ユニットを提供する。
【解決手段】LED7を本来の焦点Fの位置でなく、平面ミラー8の後方の疑似焦点fに配置するため、灯具ユニット1の前後サイズeは、反射面M1、M2、M3の焦点Fの位置で規定されるのはなく、その後側の平面ミラー8の位置で規定される。つまり、本来ならば焦点Fで規定された前後サイズEになるところであるが、平面ミラー8の位置で規定されるため、その分だけ灯具ユニット1の前後サイズeの薄型化を図ることができる。従って、車体前部における灯具ユニット1の設置スペースの確保が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを光源とした車両用前照灯の灯具ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用前照灯はLEDを光源とした灯具ユニットから構成されている。灯具ユニットは1つでも良いし、複数の灯具ユニットを上下又は左右に列べて構成しても良い。複数の灯具ユニットを列べて用いた方が、明るさを増大させやすく且つ所望の配光パターンが得やすい。
【0003】
灯具ユニットは一般にハウジングと前面レンズで構成された灯室内に、光源としてのLEDと、LEDからの光を前方へ反射する反射面が形成されたリフレクタを収納した構造をしている。リフレクタは上下又は左右方向に延びる形状を有し、そのリフレクタに複数の反射面が階段状に形成されている。リフレクタの前方には各反射面の共通の焦点が存在し、その焦点にLEDが反射面側を向いた状態で配置されている。そして、LEDから発せられた光が各反射面で反射されて車両前方へ照射されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−257220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、複数の反射面が形成されたリフレクタの前方に存在する焦点位置にLEDを配置する必要があったため、灯具ユニットの前後サイズはLEDの位置(焦点位置)に規定され、それ以上に前後サイズの薄型化を図ることができなかった。反射面の焦点位置は、反射面の配列方向での長さサイズ(上下サイズ又は左右サイズ)を大きくするほど、より前方に位置することとなるため、特に配列方向で長さのある灯具ユニットを形成する場合は、前後サイズも大きくなり、車体前部における設置スペースの確保が困難であった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、前後サイズの薄型化が可能な車両用前照灯の灯具ユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、光源としてのLEDと、LEDからの光を車両前方へ向けて反射させる反射面と、を備えた車両用前照灯の灯具ユニットにおいて、前記反射面は前方にその焦点を有し、該焦点の後側に後向きの平面ミラーを立設し、前記焦点の平面ミラーを中心とした後側称対位置にに前向きのLEDを配置し、該LEDの光を平面ミラーで後ろ向きに一度反射してから反射面へ導き、反射面から車両前方へ向けて照射することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、車両前後方向とは交差する方向へ沿って複数の反射面が配列され、各反射面が共通の焦点を有していることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、複数の反射面が上方に向けて順次後方へオフセットした階段状に配列されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、上記LEDが反射面側へ傾いた斜め前向き角度で配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、反射面の前方に位置する反射面の焦点の後側に、後向きの平面ミラーを立設し、そして、その焦点の平面ミラーを中心とした後側称対位置にに前向きのLEDを配置したため、LEDからの光は平面ミラーで反射されてあたかも焦点位置から照射されたように反射面側へ導かれ、反射面から車両前方へ向けて照射される。灯具ユニットの前後サイズは反射面の焦点位置で規定されるのはなく、その後側の平面ミラーの位置で規定されるため、その分、灯具ユニットの前後サイズの薄型化を図ることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、反射面が複数あるため、配光パターンの自由度が高まる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、複数の反射面が上方へ向けて順次後方へオフセットした階段状に形成されているため、灯具ユニットを車体前部のスラント形状に対応した形状にすることができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、LEDが斜め前向き角度で配置されているため、光度の高い照射範囲を平面ミラーを介して反射面側へ向けることができ、LEDの照射光の利用効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用前照灯の灯具ユニットを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。図面において、符号「A」は、車両の前方側(車両の前進方向側)を示す。符号「B」は、車両の後方側を示す。符号「U」は上側、「D」は下側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前方側を見た場合の左側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前方側を見た場合の右側を示す。符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。
【0015】
以下、この実施形態における灯具ユニットの構成について説明する。図中、符号1が灯具ユニットである。そして、この灯具ユニット1が、車両前面部の左右両側に複数個(この例では4個)ずつ配置されて左右両側の前照灯2をそれぞれ構成している。この実施形態では、その1つを代表して説明する。
【0016】
4個の灯具ユニット1は、ハウジング3と前面レンズ4で形成された灯室内に隔壁5を介して区画された状態で収納されている。前面レンズ4は素通しの透明ガラス製で、上側が全体的に後方へ傾斜している。ハウジング3は光不透過性の樹脂などから成形されている。
【0017】
各灯具ユニット1は、内部に、リフレクタ6と、光源としてのLED7と、平面ミラー8を備えている。
【0018】
リフレクタ6は、光不透過性の樹脂などから成形され、上下に長い形状を有している。従って、灯具ユニット1の全体の上下サイズhも、このリフレクタ6に規定される。リフレクタ6には、下側から上側に向けて、順次後方へオフセットした第1反射面M1、第2反射面M2、第3反射面M3が階段状に形成されている。各反射面M1、M2、M3は、アルミ蒸着もしくは銀色塗装などにより、鏡面加工されている。
【0019】
リフレクタ6の最下部には斜面9が形成され、この斜面9に光源としてLED7が配置されている。LED7は斜面9に配置されることにより、斜め上向き角度θの前向き状態となる。
【0020】
LED7の前方には、ハウジング3の端部から平面ミラー8が一体的に立設されている。平面ミラー8は前記リフレクタ6の斜面9と略同じ高さで、該平面ミラー8により斜面9及びLED7が前方から見えないようにされている。また、平面ミラー8の後面にはアルミ蒸着もしくは銀色塗装などによる鏡面加工が施されている。
【0021】
この平面ミラー8よりも前方の外部空間には1つの焦点Fが存在する。この焦点Fは、前記各反射面M1、M2、M3の共通のものである。すなわち、前記第1反射面M1、第2反射面M2、第3反射面M3は、基本的に、それぞれ共通の焦点Fから離れるにしたがって焦点距離が長い回転放物面の一部から形成されている。これらの反射面M1、M2、M3が、基本的に回転放物面とは、垂直断面では放物面だが、水平断面では上方にいくにつれて各反射面M1、M2、M3の離心率が順次小さくなっている(楕円に近づいている)。
【0022】
この焦点Fの平面ミラー8を挟んだ後側対称位置には前記LED7の発光部が合致している。従って、LED7から斜め前方へ発せられた光Sは、平面ミラー8で斜め後方へ反射される。この時の反射光はあたかも焦点Fから発せられた光Sのようにして各反射面M1、M2、M3へ導かれる。
【0023】
LED7が斜め上向き角度θで配置されているため、LED7における光度の高い照射範囲が、平面ミラー8を介して各反射面M1、M2、M3側へ向けられた状態になっている。つまり、LED7から出射される光の配光曲線は、一般にLED7の正面方向(光軸方向)が最大で、正面方向からの角度が大きくなるほど光度が減少する。この実施形態では、そのLED7の正面方向を反射面M1、M2、M3側へ向けるべく斜め上方へ傾けたので、多くの光を反射面M1、M2、M3側へ導くことができ、LED7の照射光の利用効率を高めることができる
各反射面M1、M2、M3で反射された光Sは、図3に示すような合成された配光パターンHP1、HP2、HP3で車両前方に照射される。各反射面M1、M2、M3は上にいくほどLED7から遠くなり、光が弱まるため、前述のように反射面M1、M2、M3は上側にいくほど離心率を小さくして、水平方向での拡散度合いを小さくしている(水平方向で多少収束するようにしている)。つまり、図4が第1反射面M1の配光パターンHP1で、図5が第2反射面M2の配光パターンHP2で、図6が第3反射面M3の配光パターンHP3を示している。
【0024】
このように、配光パターンHP1、HP2、HP3が上にいくほど小さくなるため、小さくても明るさが維持されると共に、合成された配光パターンHP1、HP2、HP3では中心部をホットゾーンとして特に明るくすることができる。複数の反射面M1、M2、M3があり、それを合成することにより、配光パターンHP1、HP2、HP3の自由度が高まる。
【0025】
この実施形態によれが、以上説明したように、LED7を本来の焦点Fの位置でなく、平面ミラー8の後方の疑似焦点fに配置するため、灯具ユニット1の前後サイズeは、反射面M1、M2、M3の焦点Fの位置で規定されるのはなく、その後側の平面ミラー8の位置で規定される。つまり、本来ならば焦点Fで規定された前後サイズEになるところであるが、平面ミラー8の位置で規定されるため、その分だけ灯具ユニット1の前後サイズeの薄型化を図ることができる。従って、車体前部における灯具ユニット1の設置スペースの確保が容易となる。
【0026】
また、リフレクタ6の反射面M1、M2、M3が上方へ向けて順次後方へオフセットした階段状に形成されているため、前述ように、灯具ユニット1の前面レンズ4を車体前部のスラント形状(車体上部が少しずつ後方へ傾斜した形状)に合わせた形状にすることができる。従って、車体前部のデザイン的自由度が向上する。
【0027】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、リフレクタ6に複数の反射面M1、M2、M3を形成する例を示したが、反射面は1つでも良い。また、反射面M1、M2、M3を上下方向に列べる例を示したが、左右方向に列べても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る灯具ユニットを示す側断面図。
【図2】前照灯を示す正面図。
【図3】全ての反射面を合成した配光パターンを示す図。
【図4】第1反射面の配光パターンを示す図。
【図5】第2反射面の配光パターンを示す図。
【図6】第3反射面の配光パターンを示す図。
【符号の説明】
【0029】
1 灯具ユニット
2 前照灯
3 ハウジング
4 前面レンズ
5 隔壁
6 リフレクタ
7 LED(光源)
8 平面ミラー
9 斜面
h 灯具ユニットの上下方向サイズ
e 灯具ユニットの前後方向サイズ
E 灯具ユニットの前後方向サイズ(従来)
F 焦点
f 疑似焦点
S 光
M1 第1反射面
M2 第2反射面
M3 第3反射面
HP1 第1反射面の配光パターン
HP2 第2反射面の配光パターン
HP3 第3反射面の配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源としてのLEDと、LEDからの光を車両前方へ向けて反射させる反射面と、を備える車両用前照灯の灯具ユニットにおいて、
前記反射面は前方にその焦点を有し、該焦点の後側に後向きの平面ミラーを立設し、前記焦点の平面ミラーを中心とした後側称対位置に前向きのLEDを配置し、該LEDの光を平面ミラーで後ろ向きに一度反射してから反射面へ導き、反射面から車両前方へ向けて照射することを特徴とする車両用前照灯の灯具ユニット。
【請求項2】
車両前後方向とは交差する方向へ沿って複数の反射面が配列され、各反射面が共通の焦点を有していることを特徴とする車両用前照灯の灯具ユニット。
【請求項3】
複数の反射面が上方に向けて順次後方へオフセットした階段状に配列されていることを特徴とする請求項2記載の車両用前照灯の灯具ユニット。
【請求項4】
LEDが斜め前向き角度で配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用前照灯の灯具ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−147003(P2008−147003A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332439(P2006−332439)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】