説明

車両用前照灯

【課題】ヒートシンクによる十分な放熱効果を得ることができる車両用前照灯を提供する。
【解決手段】点灯中の発光ダイオード8から発生する熱は、発光ダイオード8が支持されているヒートシンク7側へ伝熱させ、表面積の大きい放熱フィン12から周囲に放熱させる。ヒートシンク7が、発光ダイオード8及びリフレクタ9、10の車幅方向内側に位置しているため、ヒートシンク7から放熱される熱気は、発光ダイオード8及びリフレクタ9、10に邪魔されることなくそのまま上昇して効率良く放出され、十分な放熱効果を得ることができる。特に、ヒートシンク7の放熱フィン12間に形成される空気流路13が上下方向に延在しているため、放熱フィン12から放熱される熱気は、空気流路13に沿ってそのまま上方に流れやすくなり、効率的な放熱を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード等の半導体発光素子を光源としたランプユニットが車両用前照灯に採用されている。この種の発光素子は高輝度で発熱量が大きいため、放熱手段としてヒートシンクと一体化する必要がある。
【0003】
このようなランプユニットの一般的構造としては、ヒートシンクの上部に光源とリフレクタを配置し、光源からの光をリフレクタで反射して前方へ照射すると共に、光源で発生した熱はヒートシンク側に伝えて放熱するようにしている。
【特許文献1】特開2004−311224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、ヒートシンクの上部に光源とリフレクタが設けられているため、ヒートシンクから放熱されるべき熱気が上方へ効率良く放出されず、一部がヒートシンクの下部に溜まって、ヒートシンクによる十分な放熱効果を得ることができなった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、ヒートシンクによる十分な放熱効果を得ることができる車両用前照灯を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ランプボディの前端開口部にアウタレンズを取付けて区画した灯室内にランプユニットを備えた車両用前照灯であって、前記ランプユニットは、半導体発光素子からなる光源と、前記光源を支持すると共に前記光源の熱を放熱するヒートシンクと、前記光源の光を車両前方に反射するリフレクタと、を備えて構成され、前記ヒートシンクが、前記光源及び前記リフレクタの車幅方向側に配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記ヒートシンクは放熱フィンを備えて構成され、前記放熱フィン間に形成される空気流路が、縦方向に向けて延在していることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記ランプユニットは、車幅方向に向けて複数列べられており、互いに車幅方向で隣接する2つのランプユニットは、車幅方向内側のランプユニットのリフレクタの後方に、車幅方向外側のランプユニットのヒートシンクが配置されていることを特徴する。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記リフレクタの前方には、リフレクタからの光を車幅方向に拡散する拡散プリズムレンズ型のインナレンズが配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、ヒートシンクが光源及びリフレクタの車幅方向内側に配置されているため、ヒートシンクから放熱される熱気は、光源及びリフレクタに邪魔されることなくそのまま上昇して効率良く放出され、ヒートシンクによる十分な放熱効果を得ることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、ヒートシンクの放熱フィン間に形成される空気流路が縦方向に向けて延在しているため、放熱フィンから放熱される熱気は、縦方向に延在する空気流路に沿ってそのまま上方に流れやすく、放熱性が更に向上する。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、車幅方向に複数のランプユニットが配置された前照灯の構造において、車幅方向内側のランプユニットのリフレクタの後方に、車幅方向外側のランプユニットのヒートシンクが配置されるため、前照灯全体の車幅方向サイズをコンパクト化することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、リフレクタの前方に拡散プリズムレンズ型のインナレンズを配置したため、リフレクタとインナレンズとの間隔が狭くても、光を確実に車幅方向へ拡散させることができる。そのため、ランプユニット自体の前後方向サイズが小さくなり、その結果として、前照灯全体の前後方向サイズをコンパクト化することが可能で、フロントノーズの短い車体構造にも採用することができる。また、前照灯の車幅方向サイズを前項のように小さくしても、インナレンズにより、光を車幅方向に確実に拡散させることができるため、配光上の問題は生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ヒートシンクによる十分な放熱効果を得ることができる車両用前照灯を提供するという目的を、ランプボディの前端開口部にアウタレンズを取付けて区画した灯室内にランプユニットを備えた車両用前照灯であって、前記ランプユニットは、半導体発光素子からなる光源と、前記光源を支持すると共に前記光源の熱を放熱するヒートシンクと、前記光源の光を車両前方に反射するリフレクタと、を備えて構成され、前記ヒートシンクが、前記光源及び前記リフレクタの車幅方向側に配置されていることで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0015】
以下、本発明に係る車両用前照灯の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。図面において、符号「F」は、車両の前方側(車両の前進方向側)を示す。符号「B」は、車両の後方側を示す。符号「U」は上側、「D」は下側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前方側を見た場合の左側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前方側を見た場合の右側を示す。車幅方向とは「L−R」の方向である。
【0016】
以下、この実施例における車両用前照灯構成について説明する。図1は自動車の前部を示しており、左右両側に前照灯1が配置されている。この自動車の前部は、前照灯1を含む左右両側が車体の側面まで湾曲して回り込んだスラント形状になっている。以下、左側の前照灯1を代表して説明する。
【0017】
前照灯1は、ランプボディ2の前端開口部3に素通しのアウタレンズ4を取付けて区画した灯室5内に、3つのランプユニット6A、6B、6Cを配置した構造をしている。前照灯1のアウタレンズ4は車体外表面と同一表面をなす湾曲形状をしているため、その車幅方向内側は前向きだが、車幅方向外側は横向きになっている。灯室5は上下に開放部(図示せず)を有し、通気性が確保されている。
【0018】
ランプユニット6A、6B、6Cは、ヒートシンク7と、光源である半導体発光素子としての発光ダイオード8と、リフレクタ9、10と、インナレンズ11とから構成される。
【0019】
ヒートシンク7は熱伝導性に優れた銅、アルミニウム等の金属製で、図示せぬブラケットを介してランプボディ2に支持されている。ヒートシンク7は車幅方向内側へ向けて板状の放熱フィン12を複数形成した構造をしている。この放熱フィン12は上下方向(縦方向)に延在しており、各放熱フィン12の間には空気流路13が形成されている。
【0020】
このヒートシンク7の車幅方向外側の側面部に、発光ダイオード8がホルダ14により支持されている。半導体発光素子8のヒートシンク7に対して支持されている位置は、ランプユニット6B、6Cでは、ほぼヒートシンク7の前後方向中央位置だが、車幅方向内側のランプユニット6Aは、リフレクタ9、10及びインナレンズ11がアウタレンズ4と干渉するのを回避するために、ヒートシンク7の後端に支持されている。各発光ダイオード8はヒートシンク7に接した状態で支持され、発光ダイオード8で発生した熱はヒートシンク7に伝わるようになっている。
【0021】
リフレクタ9、10は、発光ダイオード8を車幅方向外側から覆う状態で、図示せぬブラケットにより、ヒートシンク7に対して支持されている。リフレクタ9、10の上下で形状が異なっており、それぞれ異なる反射面をもつ。各リフレクタ9、10は四分の一のドーム形状で、それぞれ放物面を基調とする自由曲面から形成され、異なった配光パターンが得られるようになっている。これらのリフレクタ9、10の焦点に発光ダイオード8が配置されている。そして、発光ダイオード8からの光をリフレクタ9、10により反射して前方へ照射することができる。
【0022】
インナレンズ11はリフレクタ9、10の直前位置に配置されている。インナレンズ11とリフレクタ9、10の間隔は非常に小さい。インナレンズ11は、軸が上下方向のシリンドリカルレンズ部11aを車幅方向に連続させた拡散プリズムレンズ型で、光を車幅方向に拡散させることができる。
【0023】
以上のような構造をした3つのランプユニット6A、6B、6Cは、灯室5内において、車幅方向に列んでいるが、アウタレンズ4のスラント形状に沿って、車幅方向内側から車幅方向外側に向けて徐々に後退する斜め状態で配置されている。しかも、最も車幅方向内側に位置するランプユニット6Aのリフレクタ9、10の後方に、その車幅方向外側に位置するランプユニット6Bのヒートシンク7が配置され、更にそのランプユニット6Bのリフレクタ9、10の後方に、更にその車幅方向外側に位置するランプユニット6Cのヒートシンク7が配置された状態になっている。
【0024】
このように、3つのランプユニット6A、6B、6Cのヒートシンク7とリフレクタ9、10とが互いに重なった状態で配置されるため、前照灯1全体の車幅方向サイズWをコンパクトにすることができる。
【0025】
また、ランプユニット6A、6B、6Cにおいて、インナレンズ11とリフレクタ9、10との前後方向での間隔が小さく設定されているため、ランプユニット6A、6B、6C自体の前後方向サイズが小さくなり、その結果として、前照灯1全体の前後方向サイズSをコンパクト化することが可能となる。更に、車幅方向内側のランプユニット6Aにおいて、半導体発光素子8がヒートシンク7の後端位置に支持されていることも、前照灯1全体の前後方向サイズSコンパクト化に寄与している。このように、前照灯1の車幅方向サイズW及び前後方向サイズSをコンパクト化することができるため、車体への組込みが容易で、且つ前後方向サイズSが小さいため、フロントノーズの短い車体構造にも採用することができる。
【0026】
以下、この実施例における前照灯1の作用効果について説明する。発光ダイオード8が点灯発光されると、発光ダイオード8の光は上下のリフレクタ9、10で前方へ反射され、インナレンズ11及びアウタレンズ4を経て車両前方へ照射される。上下のリフレクタ9、10は異なった配光パターンで光を反射し、且つ反射された光がインナレンズ11を透過することにより、車幅方向に拡散されるため、全体的に車幅方向に長く且つ中央部分に高輝度のホットスポットを有する合成された配光パターンが得られる。
【0027】
リフレクタ9、10とインナレンズ11との前後方向での間隔が小さくても、拡散プリズムレンズ型のインナレンズ11により光を確実に車幅方向へ拡散させるため、好適な配光パターンが得られる。また、前照灯1の車幅方向サイズWが小さくても、インナレンズ11で光を車幅方向に確実に拡散させることができるため、配光上の問題は生じない。
【0028】
そして、点灯中の発光ダイオード8から発生する熱は、発光ダイオード8が支持されているヒートシンク7側へ伝熱させ、表面積の大きい放熱フィン12から周囲に放熱させる。この実施例によれば、ヒートシンク7が、発光ダイオード8及びリフレクタ9、10の車幅方向内側に位置しているため、ヒートシンク7から放熱される熱気は、発光ダイオード8及びリフレクタ9、10に邪魔されることなくそのまま上昇して効率良く放出され、十分な放熱効果を得ることができる。
【0029】
特に、ヒートシンク7の放熱フィン12間に形成される空気流路13が上下方向に延在しているため、放熱フィン12から放熱される熱気は、空気流路13に沿ってそのまま上方に流れやすくなり、効率的な放熱を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上の実施例では、3つのランプユニット6A、6B、6Cを灯室5内に車幅方向に沿って斜めに配置する例を示したが、4つ以上のランプユニット6A、6B、6Cを配置しても良く、更に車幅方向に列べられた複数のランプユニット6A、6B、6Cを上下方向で複数段に配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例に係る前照灯を有する自動車前部構造を示す斜視図。
【図2】図1中矢示SA−SA線に沿う前照灯の断面図。
【図3】ランプユニットの断面図。
【図4】ランプユニットを斜視図外側から見た斜視図。
【図5】ヒートシンクを除くランプユニットを斜視図内側から見た斜視図。
【符号の説明】
【0032】
1 前照灯
2 ランプボディ
3 前端開口部
4 アウタレンズ
5 灯室
6A、6B、6C ランプユニット
7 ヒートシンク
8 発光ダイオード(半導体発光素子)
9、10 リフレクタ
11 インナレンズ
12 放熱フィン
13 空気流路
14 ホルダ
F 前方側
B 後方側
U 上側
D 下側
L 左側
R 右側
W 前照灯の車幅方向サイズ
S 前照灯の前後方向サイズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプボディの前端開口部にアウタレンズを取付けて区画した灯室内にランプユニットを備えた車両用前照灯であって、
前記ランプユニットは、半導体発光素子からなる光源と、前記光源を支持すると共に前記光源の熱を放熱するヒートシンクと、前記光源の光を車両前方に反射するリフレクタと、を備えて構成され、
前記ヒートシンクが、前記光源及び前記リフレクタの車幅方向側に配置されていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用前照灯であって、
前記ヒートシンクは放熱フィンを備えて構成され、前記放熱フィン間に形成される空気流路が、縦方向に向けて延在していることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用前照灯であって、
前記ランプユニットは、車幅方向に向けて複数列べられており、
互いに車幅方向で隣接する2つのランプユニットは、車幅方向内側のランプユニットのリフレクタの後方に、車幅方向外側のランプユニットのヒートシンクが配置されていることを特徴する車両用前照灯。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用前照灯であって、
前記リフレクタの前方には、リフレクタからの光を車幅方向に拡散する拡散プリズムレンズ型のインナレンズが配置されていることを特徴とする車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−41558(P2008−41558A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217208(P2006−217208)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】