説明

車両用前照灯

【課題】低速時の接触における前照灯の移動量(光軸の角度の変化量)を抑制し、軽量化した車両用前照灯を提供する。
【解決手段】車両用前照灯11は、灯体ハウジング42の上部(上側部16)に設けた灯体取付部(ヘッドライトステー)47と、灯体取付部47に連なる当接延出部57と、灯体取付部47より下位に設けた灯体押さえ部48と、を有する。灯体取付部47とともに車体の車体固定部に一端部61を取付け、一端部61に連なる他端部62を灯体押さえ部48に取付けた第1ブラケット52と、灯体取付部47及び一端部61とともに車体固定部に一方部63を取付け、一方部63に連なる他方部64を当接延出部57に近接させた第2ブラケット53と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低速時の接触で入力された衝撃(荷重)に対し移動を抑制した車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前照灯(ヘッドランプ)には、接触による衝撃力が加わったときに、取付け用のステーが傾動して衝撃を吸収するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、ヘッドランプを支持するステーを含む構造が複雑で、製造コストが高くなる。
また、低速時の接触で、ヘッドランプ(の光軸の角度)が移動してしまう心配がある。
低速時の接触では移動し難く、且つ、構造を簡単(軽量化)にすることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3597606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低速時の接触における前照灯の移動量(光軸の角度の変化量)を抑制し、軽量化した車両用前照灯を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の前方へ光を投光し、光を通すレンズを支持している灯体ハウジングが車体に支持されている車両用前照灯において、灯体ハウジングの上部に設けた灯体取付部と、灯体取付部に連なる当接延出部と、灯体取付部より下位に設けた灯体押さえ部と、を有し、灯体取付部とともに車体の車体固定部に一端部を取付け、一端部に連なる他端部を灯体押さえ部に取付けた第1ブラケットと、灯体取付部及び一端部とともに車体固定部に一方部を取付け、一方部に連なる他方部を当接延出部に近接させた第2ブラケットと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明では、灯体取付部は車体固定部の前方に配置され、第2ブラケットの他方部及び当接延出部は車体固定部の後方に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、灯体ハウジングの上部に設けた灯体取付部と、灯体取付部に連なる当接延出部と、灯体取付部より下位に設けた灯体押さえ部と、を有し、灯体取付部とともに車体の車体固定部に一端部を取付け、一端部に連なる他端部を灯体押さえ部に取付けた第1ブラケットと、灯体取付部及び一端部とともに車体固定部に一方部を取付け、一方部に連なる他方部を当接延出部に近接させた第2ブラケットと、を備えたので、前照灯の正面に低速時の接触で荷重(衝撃)が入力されると、荷重は灯体ハウジングから第1ブラケットを介して車体に伝わり、前照灯の後退を抑制することができる。
【0009】
一方、荷重(衝撃)で前照灯が上向きに回動し始めると、灯体ハウジングに設けた当接延出部が回動して第2ブラケットの他方部に当接し、前照灯の上向き方向の回動を規制することができる。
【0010】
このように、前照灯の移動量(光軸の角度の変化量)を抑制する一方、正面方向からの荷重を受ける第1ブラケットと回動方向の荷重を受ける第2ブラケットとを個別に設けたため、入力される荷重に対して適切な板厚を採用することができ、結果的に軽量化を図ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、灯体取付部は車体固定部の前方に配置され、第2ブラケットの他方部及び当接延出部は車体固定部の後方に配置されているので、車体固定部を基準にして、車両の前側に灯体取付部が配置され、後に第2ブラケットの他方部及び当接延出部が配置される。
その結果、前照灯の正面に接触したときの荷重のうち回動方向の荷重を、回動する当接延出部が第2ブラケットの他方部に当接することによって伝える。
従って、第2ブラケットは効率よく荷重を受ける(伝達、分散させる)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る車両用前照灯の概要を説明する斜視図である。
【図2】実施例に係る車両用前照灯の取付け状態を示す斜視図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】実施例に係る車両用前照灯を裏側から見た斜視図で、(a)は全体、(b)は(a)のb部詳細図、(c)は灯体取付部の詳細図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】実施例に係る車両用前照灯の回動を規制する機構を説明する図である。
【図8】実施例に係る車両用前照灯の後退、回動を規制する機構を説明する図である。
【図9】車両用前照灯の回動、後退を規制する機構を説明する詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
実施例に係る車両用前照灯11、12は、図1〜図3に示すように、車体14のバルクヘッドアッパーサイド15に上側部16を取付けている。
さらに、車両用前照灯11、12の内側部17、外側部18、下側部21を車体14に取付けている。以降で具体的に説明していく。
【0015】
車体14は、車室23の前のフロントボデー24を有し、フロントボデー24は前述のバルクヘッドアッパーサイド15と、バルクヘッドアッパーセンター25を備える。
これらのバルクヘッドアッパーサイド15及びバルクヘッドアッパーセンター25は車両27の中央(基準線C)を基準に左右がほぼ対称である。以降、車体14の左側を説明していく。
【0016】
バルクヘッドアッパーサイド15は、図2、図3、図5に示すように、溝形状に形成され、開口28を車両27の下方へ向けている。
【0017】
そして、バルクヘッドアッパーサイド15の溝形状が外側壁部31、内側壁部32、アッパー天部33で形成されている。
バルクヘッドアッパーサイド15の長手方向の中央に車体固定部35を設け、車体固定部35にはボルト36を通すアッパー孔37を開けた。ボルト36で前照灯11の上側部16の一部を固定する。
【0018】
前照灯11は左の前照灯であり、前照灯12は右の前照灯である。
前照灯11、12は車両27の中央(基準線C)を基準に対称である。
前照灯11を主体に図2〜図6で説明していく。
【0019】
前照灯11は、レンズ41、レンズ41を支持している灯体ハウジング42、灯体ハウジング42に設けた電球43を備える。
前照灯11の光軸をEとする(図5)。光軸Eは製造工場で所定の角度に設定されている。
【0020】
前照灯11は、上部(上側部16)を支持する灯上部支持機構46を有する。
この灯上部支持機構46は、灯体取付部(ヘッドライトステー)47と、ヘッドライトステー47の下で近接した灯体押さえ部48(図6も参照)と、灯支持部材(第1ブラケット52と第2ブラケット53からなる)51と、からなる。
【0021】
これらの灯体取付部(ヘッドライトステー)47、第1ブラケット52、第2ブラケット53の3枚を重ねてボルト36で締結した部位を前照灯11の取付け締結部55(図5)とする。
【0022】
次に、前照灯11の主要構成を図1〜図6で説明する。
車両用前照灯11、12は、車両27の前方へ光を投光し、光を通すレンズ41を支持している灯体ハウジング42が車体14に支持されている。
【0023】
灯体ハウジング42の上部(上側部16)に設けた灯体取付部(ヘッドライトステー)47と、灯体取付部47に連なる当接延出部57と、灯体取付部47より下位に設けた灯体押さえ部48と、を有する。
【0024】
車両用前照灯11、12は、灯体取付部(ヘッドライトステー)47とともに車体14の車体固定部35に一端部(バルクヘッド締結板部)61(図5参照)を取付け、一端部(バルクヘッド締結板部)61に連なる他端部(灯体締結板部)62を灯体押さえ部48に取付けた第1ブラケット52と、灯体取付部(ヘッドライトステー)47及び一端部(バルクヘッド締結板部)61とともに車体固定部35に一方部(挟持板部)63を取付け、一方部(挟持板部)63に連なる他方部64を当接延出部57に近接させた第2ブラケット53と、を備える。
【0025】
灯体取付部(ヘッドライトステー)47は、図4、図5に示す通り、車体固定部35の前方(矢印a1の方向)に配置されている。
第2ブラケット53の他方部64及び当接延出部57は車体固定部35の後方(矢印a2の方向)に配置されている。
【0026】
次に、前照灯11を詳しく説明する。
灯体取付部(ヘッドライトステー)47は、図4に示す通り、灯体ハウジング42に内脚部71を一体に立設し、内脚部71に直交するように灯体ハウジング42に前脚部72を立設している。
そして、内脚部71の上縁、前脚部72の上縁に連ねて締結天部73を形成している。この締結天部73に挟持部74を形成した。
【0027】
挟持部74は、締結天部73の上面に第2ブラケット53の板厚t2に一致する深さだけ彫り込んだ上係止凹部75を形成している。
また、下面に、少なくとも第1ブラケット52の板厚t1に一致する深さだけ彫り込んだ下係止凹部76を形成した。
【0028】
挟持部74の中央にボルト36を通す挟持孔77をアッパー孔37(図5)と同心に開けた。なお、挟持孔77を真円に開けたが、真円以外でもよい。例えば、スリットを車両後方へ向けて形成することも可能である。
挟持部74は、図4、図5に示す通り、第1ブラケット52と第2ブラケット53で挟持されている。
【0029】
第1ブラケット52は、鋼板を塑性加工したもので、板厚がt1である。
第1ブラケット52は、下係止凹部76を押圧する一端部(バルクヘッド締結板部)61が形成され、このバルクヘッド締結板部61に連ね直交し下方へ延ばした第1縦本体部81が形成されている。
【0030】
第1縦本体部81に連ね車両27前方へ延ばした横水平本体部82が形成されている。この横水平本体部82に連ね直交し下方へ延ばした他端部(灯体締結板部)62が形成されている。
【0031】
一端部(バルクヘッド締結板部)61には一端第1孔83を灯体取付部(ヘッドライトステー)47の挟持孔77と同心に開けた。
他端部(灯体締結板部)62には他端第1孔83aを開けた。
【0032】
第2ブラケット53は、鋼板を塑性加工したもので、板厚がt2である。板厚t2は第1ブラケット52の板厚t1より薄い(t1の約60%)。
【0033】
第2ブラケット53は、上係止凹部75を押圧するとともにバルクヘッドアッパーサイド15の車体固定部35に押圧される一方部(挟持板部)63が形成されている。
この挟持板部63に連ね直交し下方へ延ばした第2縦本体部84が形成され第1縦本体部81に重なり接合されている(溶接部を×印で示している)。
一方部(挟持板部)63には第2孔85を灯体取付部(ヘッドライトステー)47の挟持孔77と同心に開けた。
【0034】
さらに、第2縦本体部84に連ね直交して車両27後方へ向かって張り出した他方部64が形成されている。
この他方部64は、回動規制部87を有する。
回動規制部87は、車両27平面視、車両27外方へ突出している。
回動規制部87は第2縦本体部84の外縁91及び第1縦本体部81の外縁92に対し、車両27外方へ張り出している。この回動規制部87に当接延出部57が必要に応じて当接する。
【0035】
当接延出部57は、第2縦本体部84の外縁91及び第1縦本体部81の外縁92に近接して、灯体取付部(ヘッドライトステー)47から車両27後方へ延びている。
また、板状で、灯体取付部(ヘッドライトステー)47の内脚部71に対向している。
【0036】
より詳しくは、図4(c)に示す通り、後端94と下端95が交差する角を当接部96として形成し、この当接部96に連続してU字状の係止部97を設けた。この係止部97を下方へ向け、且つ第2ブラケット53の回動規制部87の前縁98に必要に応じて係止するように形成した。
【0037】
次に、車両用前照灯11の第1ブラケット52、第2ブラケット53の取付け要領を図4、図5、図6で簡単に説明する。
予め、第1ブラケット52と第2ブラケット53を溶接部で接合することで、灯支持部材51を完成させる。その際、一端第1孔83と第2孔85を同心にする。
【0038】
その次に、灯支持部材51を灯体ハウジング42に次のように取付ける。
第1ブラケット52の一端部(バルクヘッド締結板部)61と第2ブラケット53の一方部(挟持板部)63との間に灯体取付部(ヘッドライトステー)47の挟持部74を入れる。挟持孔77に第2孔85を同心にする。
【0039】
そして、第1ブラケット52の他端部(灯体締結板部)62を灯体押さえ部48に締結する。他端第1孔83aにボルト101を通して灯体押さえ部48のめねじ部48aにねじ込む。
これで灯体ハウジング42に第1ブラケット52、第2ブラケット53を取付ける作業は完了する。
【0040】
次に、車両用前照灯11、12の作用を図1、図7〜図9で説明する。
車両用前照灯11、12は、低速走行中に車両27正面に障害物104が接触すると、衝撃(荷重)に抗して、車両用前照灯11、12の移動を抑制する。障害物104は図1の二点鎖線で示す他車などの物である。
【0041】
具体的には、図7に示す通り、前照灯11に荷重が矢印a3のように入力されると、条件によって前照灯11は上向きに矢印a4のように回動し始める。回動の支点はボルト36で締結した取付け締結部55、詳しくは、第1ブラケット52と第2ブラケット53とで挟まれていない灯体取付部(ヘッドライトステー)47の締結天部73で、ここを支点に回動すると、当接延出部57が矢印a5のように回動して、当接延出部57の当接部96が第2ブラケット53の他方部64に設けた回動規制部87に当接するので、前照灯11は回動を抑制される。
従って、前照灯11の光軸Eの上向きに変化する角度を抑制することができる。
【0042】
一方、図8に示す通り、接触時の荷重が灯体ハウジング42に矢印a6のように伝わると、灯体ハウジング42から下位の灯体押さえ部48に伝わり、さらに第1ブラケット52の他端部(灯体締結板部)62に伝わる。
その結果、前照灯11は後退や回動を抑制されるので、前照灯11の光軸Eの上向きに変化する角度を抑制することができる。
【0043】
このように、前照灯11では、低速時の接触で前照灯11に荷重が入力されても光軸Eの移動を抑制することができ、且つ第1ブラケット52の板厚t1に比べ、第2ブラケット53の板厚t2を薄くすることができ、軽量化を図ることができる。
【0044】
また、当接延出部57が回動(矢印a5の方向)しながら車両27後方へ移動したときに、U字状の係止部97が第2ブラケット53の回動規制部87の前縁98(図4(b)参照)に係止するので、より確実に光軸Eの移動を抑制することができる。
【0045】
灯体取付部(ヘッドライトステー)47は、第1ブラケット52を嵌める下係止凹部76を形成し、第2ブラケット53を嵌める上係止凹部75を形成しているので、低速走行時の接触で衝撃(荷重)が入力されると、荷重を下係止凹部76からを第1ブラケット52に伝え、上係止凹部75から第2ブラケット53に伝えることができる。その結果、光軸Eの車幅方向の角度の移動を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の車両用前照灯は、車両に好適である。
【符号の説明】
【0047】
11、12…車両用前照灯、14…車体、16…灯体ハウジングの上部(上側部)、27…車両、35…車体固定部、41…レンズ、42…灯体ハウジング、47…灯体取付部(ヘッドライトステー)、48…灯体押さえ部、52…第1ブラケット、53…第2ブラケット、57…当接延出部、61…一端部(バルクヘッド締結板部)、62…他端部(灯体締結板部)、63…一方部(挟持板部)、64…他方部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方へ光を投光し、該光を通すレンズを支持している灯体ハウジングが車体に支持されている車両用前照灯において、
前記灯体ハウジングの上部に設けた灯体取付部と、該灯体取付部に連なる当接延出部と、前記灯体取付部より下位に設けた灯体押さえ部と、を有し、
前記灯体取付部とともに前記車体の車体固定部に一端部を取付け、該一端部に連なる他端部を前記灯体押さえ部に取付けた第1ブラケットと、
前記灯体取付部及び前記一端部とともに前記車体固定部に一方部を取付け、該一方部に連なる他方部を前記当接延出部に近接させた第2ブラケットと、を備えたことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記灯体取付部は前記車体固定部の前方に配置され、
前記第2ブラケットの他方部及び前記当接延出部は前記車体固定部の後方に配置されていることを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−198711(P2011−198711A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66923(P2010−66923)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】