説明

車両用収納ボックス

【課題】収納ボックス内の空調時に、シートバックを倒伏し、既存の空調装置を利用して、収納ボックスの収納部内を空調でき、乗員が着座しない非使用時のシートも、既存の空調装置も共に有効活用する車両用収納ボックスを提供する。
【解決手段】シート13の前方には空調風を室内に送風する第1の吹出し口27bが設けられ、シートバック13bの背面には収納ボックス14を備え、収納ボックス14は物品を収納可能な収納部31と、シートバック13bの折畳み時に第1の吹出し口27bと収納部31とを連通される連通部39とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室の底面を形成するフロアパネル上に、シートクッションとシートバックとを備えると共に、シートバックがシートクッション上に倒伏して折畳み可能に構成されたシートが配設されたような車両の車両用収納ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に複数人乗車または多人数乗車が可能なシートを備えた車両において、乗車人数やシートアレンジにより使用しないシートが存在する場合、この非使用シートをそのままにしておくと無駄である。
【0003】
そこで、本出願人は、シートバックがシートクッション上に倒伏可能なシートを備えた車両において、シートバックの背部に収納ボックスを設け、当該シートに乗員が着座しないシートの非使用時に、シートバックをシートクッション上に倒伏し、シートバック背部の収納ボックスを使用できるように構成し、最大乗車人数の確保と収納ボックスの使い勝手の向上とを両立させ、シートおよび収納ボックスを有効利用することができる車両用収納ボックスを既に発明した。
この車両用収納ボックスにおいて、該ボックスの収納部に収納する物品によっては、収納部を空調することが要請されるものである。
【0004】
一方、車両用収納ボックスとしては、特許文献1および特許文献2に開示されたものがある。特許文献1に開示された構造は、インストルメントパネルのセンタコンソール部に設けた小物入れボックスの開口部の下縁にリッドを開閉自在に装着し、該リッドにカップホルダを側方より引き出し、格納自在に設け、小物入れボックスの側部に、リッドより引き出したカップホルダで保持したカップに指向して空調用空気を吹出すダクト部を設けたものであって、物品の収納性を確保しつつ、カップの保温と冷却が可能なカップホルダを備えたものである。
【0005】
また、特許文献2に開示された構造は、運転席シートおよび助手席シートの間の床部と、その後方側の2列目のシート列を構成する左右一対のシート間の床部と、さらにその後方側の3列目のシート列を構成する左右一対のシート間の床部とに、それぞれストライカを設け、車室床部の前後方向3箇所に、収納ボックスが選択的に取付けられるように構成したものである。
しかしながら、これら各特許文献1、2に開示された構造は、その何れもが、シートバックの背部に収納ボックスを備えたものではない。
【特許文献1】特開平7−179121号公報
【特許文献2】特開2006−21608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、シートの前方には空調風を室内に送風する第1の吹出し口が設けられ、シートバックの背面には収納ボックスを備え、該収納ボックスは物品を収納可能な収納部と、シートバックの折畳み時に上記第1の吹出し口と収納部とを連通させる連通部とを備えることで、上記収納ボックス内の空調が要求される時は、シートバックをシートクッション上に倒伏することにより、既存の空調装置を利用して、上記収納ボックスの収納部内を空調することができ、乗員が着座しない非使用時のシートも、既存の空調装置も共に有効活用することができる車両用収納ボックスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による車両用収納ボックスは、車室の底面を形成するフロアパネル上に、座面を形成するシートクッションと、該シートクッションの後部に設けられて背もたれ部を形成するシートバックとを備えると共に、該シートバックが上記シートクッション上に倒伏して折畳み可能に構成されたシートが配設された車両において、上記シートの前方には空調風を室内に送風する第1の吹出し口が設けられ、上記シートバックの背面には収納ボックスを備え、該収納ボックスは物品を収納可能な収納部と、上記シートバックの折畳み時に上記第1の吹出し口と収納部とを連通される連通部とを備えたものである。
【0008】
上記構成によれば、収納ボックス内の空調が要求される時には、シートバックをシートクッション上に倒伏して折畳むと、連通部にて、第1の吹出し口と収納部とが連通可能となるので、シート前方の既存の空調装置を利用して、収納ボックスの収納部内を空調することができる。
この結果、乗員が着座しない非使用時のシートも、既存の空調装置も共に有効活用することができる。また、上記収納ボックスはシートバック背面に備えられたものであるから、シートの使用時にあっては、最大乗車人数の確保を阻害しない。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記シートは少なくとも前列シートと後列シートとの複数列で構成され、上記第1の吹出し口は上記前列シート付近に設けられると共に、上記収納ボックスは後列シートのシートバック背面に設けられた
ものである。
【0010】
上記構成によれば、後列シートのシートバックの倒伏時に、後席乗員空調用の第1の吹出し口を有効利用して、上記シートバック背面の収納ボックスの収納部内を空調(温度調節)することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記前列シート付近にはアームレスト機能を有する物品載置部材が設けられ、上記第1の吹出し口は上記物品載置部材に設けられ、上記収納ボックスはその一部が前後に摺動して上記物品載置部材と連設した時、該物品載置部材と略連続するテーブル面を形成する可動部を有し、該可動部が第1の吹出し口からの空調風を上記収納ボックス内へ送風する送風ダクトを兼ねるものである。
上述の物品載置部材は、既存のセンタコンソールを有効活用してもよい。
【0012】
上記構成によれば、収納ボックスの一部を、物品載置部材と略連続するテーブル面を形成するところの可動部と成したので、この可動部の前方への摺動時にテーブル面を拡大することができ、しかも、該可動部で第1の吹出し口からの空調風を収納ボックス内へ送風する送風ダクトを兼ねることができる。
つまり、前列シートと後列シートとが前後方向に離間したレイアウトを保持した状態下において、上記動部を、拡大テーブルおよび送風ダクトとして有効利用することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記前列シート付近にはアームレスト機能を有する物品載置部材が設けられ、上記第1の吹出し口は上記物品載置部材に設けられると共に、該物品載置部材はその一部が可動して収納ボックスと当接される可動部を有し、該可動部が上記第1の吹出し口からの空調風を収納ボックス内へ送風する送風ダクトを兼ねるものである。
上述の物品載置部材は、既存のセンタコンソールを用いてもよく、また、上述の可動部は、回動部と成してもよい。
【0014】
上記構成によれば、前列シートと後列シートとが前後方向に離間したレイアウトを保持しつつ、別途ダクトを設ける必要がなく、上記可動部を収納ボックスと当接させることにより、空調風を収納ボックス内に導びくことができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記収納ボックスはドリンクホルダを有すると共に、上記シートバックの折畳み時に、第1の吹出し口とドリンクホルダ内とを連通させるドリンクホルダ用連通部を備えたものである。
上記構成によれば、収納ボックスにドリンクホルダとドリンクホルダ用連通部とを設けたので、第1の吹出し口からの空調風を用いて、ドリンクホルダ内を効果的に保温、冷却することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記収納ボックスの後方に他のシートを備え、上記収納ボックスが上記他のシートへ空調風を導出する第2の吹出し口を備えたものである。
上記構成によれば、収納ボックスの後方の上記他のシートに対して第2の吹出し口から空調風を送ることができるので、他のシートの乗員の快適性向上を図ることができ、また、別途ダクトを配設する必要がないので、低コスト化を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記連通部は出口部を有し、該出口部に、上記収納部内と上記第2の吹出し口とに空調風を選択的に案内する風向き調節装置を備えたものである。
上記構成によれば、使用目的に対応して上記風向き調節装置の操作にて、空調風を収納部内と第2の吹出し口とに選択的に送風案内することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記収納ボックスは第1の吹出し口から流入する空調風を、上記連通部の出口部と上記ドリンクホルダ用連通部とに選択的に切換える切換え手段を備えたものである。
上記構成によれば、使用目的に対応して上記切換え手段の切換え操作にて、空調風を連通部の出口部と、ドリンクホルダ用連通部とに選択的に送風案内することができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記第2の吹出し口には空調風の風向きを変更するルーバが設けられたものである。
上記構成によれば、収納ボックス後方の他のシートに着座する後席乗員の快適性をさらに向上することができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記物品載置部材は前列シート中央に設けられたセンタコンソールであり、上記収納ボックスを備えた後列シートは左右シート間に配設されたセンタシートであることを特徴とする。
上記構成によれば、既存のセンタコンソールを利用して物品載置部材を構成することができると共に、センタシートのシートバック背面に収納ボックスを備えるので、収納ボックス後方の他のシートに着座する乗員空間を阻害することなく、該収納ボックスを配設することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、シートの前方には空調風を室内に送風する第1の吹出し口が設けられ、シートバックの背面には収納ボックスを備え、該収納ボックスは物品を収納可能な収納部と、シートバックの折畳み時に上記第1の吹出し口と収納部とを連通させる連通部とを備えたので、上記収納ボックス内の空調が要求される時は、シートバックをシートクッション上に倒伏することにより、既存の空調装置を利用して、上記収納ボックスの収納部内を空調することができ、乗員が着座しない非使用時のシートも、既存の空調装置も共に有効活用することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
シート使用時の最大乗車人数の確保を阻害することなく、シートの非使用時にそのシートバック背面に設けられた収納ボックス内を既存の空調装置を有効利用して空調するという目的を、車室の底面を形成するフロアパネル上に、座面を形成するシートクッションと、該シートクッションの後部に設けられて背もたれ部を形成するシートバックとを備えると共に、該シートバックが上記シートクッション上に倒伏して折畳み可能に構成されたシートが配設された車両において、上記シートの前方には空調風を室内に送風する第1の吹出し口が設けられ、上記シートバックの背面には収納ボックスを備え、該収納ボックスは物品を収納可能な収納部と、上記シートバックの折畳み時に上記第1の吹出し口と収納部とを連通される連通部とを備えるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両用収納ボックスを示すが、まず、図1、図2を参照してシート配設構造について説明する。
【0024】
図1、図2において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル3(ダッシュパネル)を設け、このダッシュロアパネル3の下部には、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル4を設け、このフロアパネル4で車室2の底面を形成している。
【0025】
図1に示すように、上述のフロアパネル4上には、前列シート5と、2列目となる後列シート6と、3列目となる後列シート7とを配設している。
【0026】
1列目シートとしての前列シート5は左シート8と右シート9とからなり、これら左右のシート8,9間の中央には、アームレスト機能を有する物品載置部材としてのセンタコンソール10が設けられている。
また、上述の左シート8、右シート9はそれぞれ座面を形成するシートクッション8c,9cと、該シートクッション8c,9cの後部に設けられて背もたれ部を形成するシートバック8b,9bと、ヘッドレスト8h,9hとを備えており、左右の各シート8,9の何れか一方が運転席シートに、何れか他方が助手席シートに設定される。
【0027】
前列シート5の後方に設けられた2列目の後列シート6は、左シート11と右シート12と、これら左右のシート11,12間の中央に配設されたセンタシート13(図2参照)とから構成されている。
これら左シート11、右シート12、センタシート13は、図1、図2に示すように、それぞれ座面を形成するシートクッション11c,12c,13cと、該シートクッション11c,12c,13cの後部に設けられて背もたれ部を形成するシートバック11b,12b,13bと、ヘッドレスト11h,12h,13hとを備えている。
【0028】
また、これら各シート11,12,13のシートバック11b,12b,13bはそのシートクッション11c,12c,13c上に倒伏して折畳み可能に構成されている。
さらに、上述のセンタシート13のシートバック13bの背面には収納ボックス14が取付け、取外し可能に設けられている。
【0029】
2列目の後列シート6のさらに後方に設けられた他のシートとしての3列目の後列シート7は、シートクッション7cと、シートバック7bと、ヘッドレスト7h,7hとを備えている。
ここで上述の各左シート8,11、右シート9,12、センタシート13はバケットシートで構成されており、3列目の後列シート7はベンチシートで構成されている。なお、3列目の後列シート7はベンチシートに代えて、バケットシートで構成してもよい。
【0030】
図2〜図4に示すように、2列目の中央に位置するセンタシート13は、フロアパネル4の隆起部4aにシートベース部材15を介して取付けられたもので、シートベース部材15とセンタシート13のシートクッション13cとの間に前部リンク16を設け、センタシート13のシートクッション13cとシートバック13bとの間に中間リンク17を設け、センタシート13のシートバック13bとシートベース部材15との間に後部リンク18を設け、これら各リンク16,17,18の作用により、センタシート13の使用時(図3参照)には、その非使用時(図4参照)に対してシートクッション13cの上面(着座面)が高くなり、逆に、センタシート13の折畳み時(図4参照)には、その使用時(図3参照)に対してシートクッション13cの上面(着座面)が低くなって、コンパクトに折畳むことができるように構成している。また、シートバック13bの折畳み時には、その背面に設けた収納ボックス14が水平状態になるように構成されている。
【0031】
次に、車両用収納ボックスの構造について説明する。
図2に示すように、インストルメントパネル20の下部と、センタコンソール10の前部との間には、空調風の送風手段としてのブロア21を設け、このブロア21の吐出部21aにはダクト22を連通接続している。
【0032】
一方、前列シート5の中央に設けられたセンタコンソール10は、支点23を中心として前後方向に回動し、収納部24を開閉するコンソールリッド25と、このコンソールリッド25の前部に設けられた少なくとも1つ(この実施例では2つ)のカップホルダ26と、センタコンソール本体10aの内部に設けられ、前後方向に延びる後席空調用の通路27とを備えている。
そして、上述の通路27のインレット部27aをダクト22に連通接続すると共に、通路27のアウトレット部27bを、空調風を車室2内に送風する第1の吹出し口に設定している。
【0033】
上述の収納ボックス14は、図5〜図11に示すように構成している。
すなわち、この収納ボックス14は、図5、図6に示すように、ボックス本体30の内部上側に形成され、物品を収納可能な収納部31と、支点32(図5参照)を中心として回動し、収納部31を開閉するリッド33と、収納部31の前部に設けられた少なくとも1つ(この実施例では2つ)のドリンクホルダ34,34と、ボックス本体30内に設けられて内部に通路35を備えたガイド筒36と、このガイド筒36の外面に沿って車両前後方向に出し入れ可能に構成された引出しタイプのテーブル37と、このテーブル37の内部に形成され、ガイド筒36の通路35と常時連通するダクト部38とを備えている。
【0034】
そして、上述のガイド筒36の通路35と、テーブル37のダクト部38との両者により、シートバック13bの折畳み時に第1の吹出し口としてのアウトレット部27bと、収納部31とを連通させる連通部39を構成している。
【0035】
図2は、収納ボックス14の一部としての引き出しタイプのテーブル37が前方に摺動してセンタコンソール10と連設した時の側面図、図7は図2の要部拡大断面図であって、図2、図7に示すように、テーブル37を前方へ引出して、そのダクト部38をセンタコンソール10のアウトレット部27bと連設させると、このテーブル37は該センタコンソール10と略連続するテーブル面(拡大テーブル)を形成する。つまり、上記テーブル37は可動部であり、このテーブル37(可動部)はアウトレット部27b(つまり、第1の吹出し口)からの空調風を上述の収納ボックス14内へ送風する送風ダクト(ダクト部38参照)を兼ねるものである。
【0036】
ここで、上述のテーブル37内のダクト部38は、図5、図6、図7に示すように、ドリンクホルダ34の数量に対応して2経路に分割形成されており、ガイド筒36はこれら2経路のダクト部38を案内すべく対応数設けられているが、上述のドリンクホルダ34、ダクト部38、ガイド筒36は1つのみであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0037】
また、図6に示すように、上述の収納ボックス14は、シートバック13bの折畳み時に、第1の吹出し口としてのアウトレット部27bとドリンクホルダ34の内部とを連通させるドリンクホルダ34対応数のドリンクホルダ用連通部40を備えている。
【0038】
さらに、図6に示すように、収納部31のリヤ側におけるボックス本体30には、他のシートとしての3列目の後列シート7(図1参照)に対して、空調風を導出する第2の吹出し口としてのアウトレット部41を備え、このアウトレット部41には、空調風の風向きを変更するルーバ42を設けている。
上述のガイド筒36のリヤ側上部には連通孔43を形成し、この連通孔43には出口部としての出口筒44を取付けると共に、この出口筒44には、空調風を収納部31内とアウトレット部41とに選択的に案内する風向き調節部材45を設けている。
【0039】
図8に示すように、この風向き調節部材45は、そのトップデッキ部45aにツマミ45bを有する円筒部材45cにて形成しており、この円筒部材45cに開口部45dを形成すると共に、円筒部材45c下端の折返しフランジ部45eを、出口筒44上端の折返しフランジ部44aに回転可能に係止させたものである。
【0040】
そして、図7に示すように、風向き調節部材45の開口部45dを収納部31に対向させると、連通部39からの空調風を、出口筒44を介して、収納部31へ案内し、図9に示すように、風向き調節部材45の開口部45dを第2の吹出し口としてのアウトレット部41に対向させると、連通部39からの空調風を、出口筒44を介して、アウトレット部41へ案内すべく構成している。
なお、上述の風向き調節部材45の外周部と、アウトレット部41が形成された収納部31の後壁内面との間には、連通孔46を有するラバー部材47が介設されており、空調風の漏れを防止するように構成している。
【0041】
ところで、上述のテーブル37には、該テーブル37を引出して、ダクト部38前端をセンタコンソール10のアウトレット部27bと気密状に連通接続した時、図7、図9に示すように、ドリンクホルダ用連通部40と上下方向に一致する開口部48が形成されている。
【0042】
しかも、図7、図9〜図11に示すように、上述の収納ボックス14は、第1の吹出し口としてのアウトレット部27bから流入する空調風を、上述の連通部39の出口筒44と、ドリンクホルダ用連通部40とに選択的に切換える切換え手段としてのスライダ50を備えている。
このスライダ50は、図11に示すように、平板状部材にて形成され、該スライダ50の前部にはドリンクホルダ34の数量と対応する前部開口51,51を形成し、該スライダ50の後部には出口筒44の数量と対応する後部開口52,52を形成すると共に、操作部53を備えており、この操作部53を、図7、図9、図10に示すように、ボックス本体30の長孔形状の中央開口30aから収納部31内へ突出し、操作部53を介して、スライダ50を前後方向に摺動すべく構成している。
【0043】
そして、図7、図9に示すように、切換え手段としてのスライダ50を後方スライドさせた時には、該スライダ50前部にて開口部48とドリンクホルダ用連通部40との連通をしゃ断すると共に、後部開口52を出口筒44内の通路と一致させて、アウトレット部27bから流入する空調風を出口筒44に案内し、図10に示すように、切換え手段としてのスライダ50を前方スライドさせた時には、該スライダ50後部にて出口筒44内の通路をしゃ断すると共に、前部開口51を開口部48およびドリンクホルダ用連通部40と一致させて、アウトレット部27bから流入する空調風を、ドリンクホルダ用連通部40に案内するように構成している。
なお、図中、54は前輪、55は後輪、56はステアリングホイールである。
【0044】
このように構成した車両用収納ボックスの作用を以下に説明する。
センタシート13のシートバック13bを、図3に示すようにシートクッション13c後部に立設すると、最大乗車人数の確保を図ることができる。
【0045】
図3に示す状態から図4に示すように、センタシート13のシートバック13bをシートクッション13c上に倒伏して折畳むと、シートバック13b背面に備えた収納ボックス14は、同図に示すように水平状態となり、2列目の後列シート6の左右シート11,12に着座する後席乗員が、該収納ボックス14をアームレストとして使用することができる。
【0046】
図4の状態下における収納ボックス14の断面構造は、図6に示す通りであり、この図6に示す状態から図9に示すようにテーブル37を前方へ引出して、そのダクト部38前端を、センタコンソール10のアウトレット部27bに気密状に接続すると、テーブル37を拡大テーブルとして利用することができると共に、ブロア21からの空調風が各要素27a,27,27b,38,35,43,52,44,45d,46,41を介して3列目の後列シート7側へ吹出される。
【0047】
図9に示す状態から図7に示すように風向き調節部材45を操作して、その開口部45dを、収納ボックス14の収納部31と対向させると、空調風は出口筒44から収納部31内へ送風されるので、該収納部31内に収納させた物品(図示せず)を空調(温度調節)することができる。
【0048】
一方、図9に示す状態から図10に示すように、スライダ50を前方スライドさせると、このスライダ50の後部で出口筒44内の通路がしゃ断される一方で、スライダ50の前部開口51がドリンクホルダ用連通部40およびテーブル37の開口部48と上下方向に一致するので、第1の吹出し口としてのアウトレット部27bからテーブル37のダクト部38に流入する空調風は、開口部48および前部開口51を介してドリンクホルダ用連通部40に送風され、ドリンクホルダ34に配置したドリンク(図示せず)を冷却、または保温することができる。
【0049】
このように、図1〜図11で示した実施例の車両用収納ボックスは、車室2の底面を形成するフロアパネル4上に、座面を形成するシートクッション13cと、該シートクッション13cの後部に設けられて背もたれ部を形成するシートバック13bとを備えると共に、該シートバック13bが上記シートクッション13c上に倒伏して折畳み可能に構成されたシート(センタシート13参照)が配設された車両において、上記シート13の前方には空調風を車室2内に送風する第1の吹出し口(アウトレット部27b参照)が設けられ、上記シートバック13bの背面には収納ボックス14を備え、該収納ボックス14は物品を収納可能な収納部31と、上記シートバック13bの折畳み時に上記第1の吹出し口(アウトレット部27b参照)と収納部31とを連通される連通部39とを備えたものである(図1、図2参照)。
【0050】
この構成によれば、収納ボックス14内の空調が要求される時には、シートバック13bをシートクッション13c上に倒伏して折畳むと、連通部39にて、第1の吹出し口(アウトレット部27b参照)と収納部31とが連通可能となるので、シート13前方の既存の空調装置(ブロア21参照)を利用して、収納ボックス14の収納部31内を空調することができる。
【0051】
この結果、乗員が着座しない非使用時のシート13も、既存の空調装置(ブロア21参照)も共に有効活用することができる。また、上記収納ボックス14はシートバック13b背面に備えられたものであるから、シート13の使用時にあっては、最大乗車人数の確保を阻害しない。
【0052】
また、上記シートは少なくとも前列シート5と後列シート6との複数列で構成され、上記第1の吹出し口(アウトレット部27b参照)は上記前列シート5付近に設けられると共に、上記収納ボックス14は後列シート6のシートバック13b背面に設けられたものである(図1、図2参照)。
【0053】
この構成によれば、後列シート6のシートバック13bの倒伏時に、後席乗員空調用の第1の吹出し口(アウトレット部27b参照)を有効利用して、上記シートバック13b背面の収納ボックス14の収納部31内を空調(温度調節)することができる。
【0054】
さらに、上記前列シート5付近にはアームレスト機能を有する物品載置部材(センタコンソール10参照)が設けられ、上記第1の吹出し口(アウトレット部27b参照)は上記物品載置部材(センタコンソール10参照)に設けられ、上記収納ボックス14はその一部(テーブル37参照)が前後に摺動して上記物品載置部材(センタコンソール10参照)と連設した時、該物品載置部材(センタコンソール10参照)と略連続するテーブル面を形成する可動部(テーブル37参照)を有し、該可動部(テーブル37参照)が第1の吹出し口(アウトレット部27b参照)からの空調風を上記収納ボックス14内へ送風する送風ダクト(ダクト部38参照)を兼ねるものである(図2参照)。
【0055】
この構成によれば、収納ボックス14の一部(テーブル37参照)を、物品載置部材(センタコンソール10参照)と略連続するテーブル面を形成するところの可動部(テーブル37参照)と成したので、この可動部(テーブル37参照)の前方への摺動時にテーブル面を拡大することができ、しかも、該可動部(テーブル37参照)で第1の吹出し口からの空調風を収納ボックス14内へ送風する送風ダクト(ダクト部38参照)を兼ねることができる。
つまり、前列シート5と後列シート6とが前後方向に離間したレイアウトを保持した状態下において、上記可動部(テーブル37参照)を、拡大テーブルおよび送風ダクトとして有効利用することができる。
【0056】
加えて、上記収納ボックス14はドリンクホルダ34を有すると共に、上記シートバック13bの折畳み時に、第1の吹出し口(アウトレット部27b参照)とドリンクホルダ34内とを連通させるドリンクホルダ用連通部40を備えたものである(図10参照)。
この構成によれば、収納ボックス14にドリンクホルダ34とドリンクホルダ用連通部40とを設けたので、第1の吹出し口(アウトレット部27b参照)からの空調風を用いて、ドリンクホルダ34内を効果的に保温、冷却することができる。
【0057】
また、上記収納ボックス14の後方に他のシート(3列目の後列シート7参照)を備え、上記収納ボックス14が上記他のシート7へ空調風を導出する第2の吹出し口(アウトレット部41参照)を備えたものである(図1、図2参照)。
この構成によれば、収納ボックス14の後方の上記他のシート7に対して第2の吹出し口(アウトレット部41参照)から空調風を送ることができるので、他のシート7の乗員の快適性向上を図ることができ、また、別途ダクトを配設する必要がないので、低コスト化を図ることができる。
【0058】
さらに、上記連通部39は出口部(出口筒44参照)を有し、該出口部(出口筒44参照)に、上記収納部31内と上記第2の吹出し口(アウトレット部41参照)とに空調風を選択的に案内する風向き調節装置(風向き調節部材45参照)を備えたものである(図7、図9参照)。
この構成によれば、使用目的に対応して上記風向き調節装置(風向き調節部材45参照)の操作にて、空調風を収納部31内と第2の吹出し口(アウトレット部41参照)とに選択的に送風案内することができる。
【0059】
さらにまた、上記収納ボックス14は第1の吹出し口(アウトレット部27b参照)から流入する空調風を、上記連通部39の出口部(出口筒44参照)と上記ドリンクホルダ用連通部40とに選択的に切換える切換え手段(スライダ50参照)を備えたものである(図7、図9、図10参照)。
この構成によれば、使用目的に対応して上記切換え手段(スライダ50参照)の切換え操作にて、空調風を連通部39の出口部(出口筒44参照)と、ドリンクホルダ用連通部40とに選択的に送風案内することができる。
【0060】
また、上記第2の吹出し口(アウトレット部41参照)には空調風の風向きを変更するルーバ42が設けられたものである(図9参照)。
この構成によれば、収納ボックス14後方の他のシート7に着座にする後席乗員の快適性をさらに向上することができる。
【0061】
さらに、上記物品載置部材は前列シート5中央に設けられたセンタコンソール10であり、上記収納ボックス14を備えた後列シート6は左右シート11,12間に配設されたセンタシート13であることを特徴とする(図1、図2参照)。
この構成によれば、既存のセンタコンソール10を利用して物品載置部材を構成することができると共に、センタシート13のシートバック13b背面に収納ボックス14を備えるので、収納ボックス14後方の他のシート7に着座する乗員空間を阻害することなく、該収納ボックス14を配設することができる。
【実施例2】
【0062】
図12、図13、図14は車両用収納ボックスの他の実施例を示すものである。
図12〜図14において前図と同一の部分には同一符号を付している。図1〜図11で示した先の実施例においては、引出しタイプのテーブル37を前方へ引き出して、アウトレット部27bからの空調風を収納ボックス14内へ案内するように構成したが、図12〜図14で示すこの実施例においては、コンソールリッド25を後方に回動して、アウトレット部27bからの空調風を収納ボックス14内へ案内すべく構成したものである。
【0063】
すなわち、図12、図13、図14に示すように、前列シート5における左右シート8,9間の中央には、アームレスト機能を有する物品載置部材としてのセンタコンソール10を設け、このセンタコンソール10に第1の吹出し口としてのアウトレット部27bを設けると共に、このセンタコンソール10は、その一部が回動して後方の収納ボックス14と当接される可動部としてのコンソールリッド25を備え、このコンソールリッド25がアウトレット部27bからの空調風を収納ボックス14内へ送風する送風ダクトを兼ねるように構成したものである。
【0064】
このため、上述のコンソールリッド25を内部中空に形成すると共に、該コンソールリッド25には、その後方への回動時に、センタコンソール10のアウトレット部27bと気密状に連通接続される入口ポート25aと、回動時に収納ボックス14側のテーブル37におけるダクト部38前端と気密状に連通接続される出口ポート25bとを形成し、図13、図14に示すように、コンソールリッド25を後方に回動して、該コンソールリッド25を収納ボックス14前面と当接させた時、アウトレット部27bからの空調風を各要素25a,25bを介して収納ボックス14内、詳しくはダクト部38へ送風するように構成している。
但し、この実施例においては、テーブル37を収納ボックス14内に収納させた状態下(図14で示す状態下)において、ドリンクホルダ用連通部40と開口部48とが上下方向に一致するように構成されている。
【0065】
このように、図12〜図14で示した実施例においては、上記前列シート5付近にはアームレスト機能を有する物品載置部材(センタコンソール10参照)が設けられ、上記第1の吹出し口(アウトレット部27b参照)は上記物品載置部材(センタコンソール10参照)に設けられると共に、該物品載置部材(センタコンソール10参照)はその一部が可動(実施例では回動)して収納ボックス14と当接される可動部(コンソールリッド25参照)を有し、該可動部(コンソールリッド25参照)が上記第1の吹出し口(アウトレット部27b参照)からの空調風を収納ボックス14内へ送風する送風ダクトを兼ねるものである(図13、図14参照)。
【0066】
この構成によれば、前列シート5と後列シート6とが前後方向に離間したレイアウトを保持しつつ、別途ダクトを設ける必要がなく、上記可動部(コンソールリッド25参照)を収納ボックス14と当接させることにより、空調風を収納ボックス14内に導びくことができる。
なお、図12〜図14で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様である。
【0067】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
収納ボックスを備えたシートは、2列目の後列シート6におけるセンタシート13に対応し、
以下同様に、
第1の吹出し口は、アウトレット部27bに対応し、
物品載置部材は、センタコンソール10に対応し、
可動部(請求項3)は、テーブル37に対応し、
可動部(請求項4)は、コンソールリッド25に対応し、
送風ダクトは、ダクト部38に対応し、
他のシートは、3列目の後列シート7に対応し、
第2の吹出し口は、アウトレット部41に対応し、
出口部は、出口筒44に対応し、
風向き調節装置は、風向き調節部材45に対応し、
切換え手段は、スライダ50に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】車両用収納ボックスを備えた車両の平面図
【図2】図1の要部側面図
【図3】センタシート使用時の側面図
【図4】センタシート折畳み時の側面図
【図5】収納ボックスの斜視図
【図6】収納ボックスの断面図
【図7】テーブル引き出し時の断面図
【図8】風向き調節部材の説明図
【図9】他のシートへ空調風を導出する時の断面図
【図10】ドリンクホルダへ空調風を導出する時の断面図
【図11】スライダの平面図
【図12】他の実施例の車両用収納ボックスを備えた車両の平面図
【図13】図12の要部側面図
【図14】図13の要部拡大断面図
【符号の説明】
【0069】
2…車室
4…フロアパネル
5…前列シート
6…後列シート
7…他のシート
10…センタコンソール(物品載置部材)
13…センタシート(シート)
13b…シートバック
13c…シートクッション
14…収納ボックス
25…コンソールリッド(可動部)
27b…アウトレット部(第1の吹出し口)
31…収納部
34…ドリンクホルダ
37…テーブル(可動部)
38…ダクト部(送風ダクト)
39…連通部
40…ドリンクホルダ用連通部
41…アウトレット部(第2の吹出し口)
42…ルーバ
44…出口筒(出口部)
45…風向き調節部材(風向き調節装置)
50…スライダ(切換え手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底面を形成するフロアパネル上に、座面を形成するシートクッションと、該シートクッションの後部に設けられて背もたれ部を形成するシートバックとを備えると共に、該シートバックが上記シートクッション上に倒伏して折畳み可能に構成されたシートが配設された車両において、
上記シートの前方には空調風を室内に送風する第1の吹出し口が設けられ、
上記シートバックの背面には収納ボックスを備え、
該収納ボックスは物品を収納可能な収納部と、上記シートバックの折畳み時に上記第1の吹出し口と収納部とを連通される連通部とを備えた
車両用収納ボックス。
【請求項2】
上記シートは少なくとも前列シートと後列シートとの複数列で構成され、
上記第1の吹出し口は上記前列シート付近に設けられると共に、上記収納ボックスは後列シートのシートバック背面に設けられた
請求項1記載の車両用収納ボックス。
【請求項3】
上記前列シート付近にはアームレスト機能を有する物品載置部材が設けられ、
上記第1の吹出し口は上記物品載置部材に設けられ、
上記収納ボックスはその一部が前後に摺動して上記物品載置部材と連設した時、
該物品載置部材と略連続するテーブル面を形成する可動部を有し、
該可動部が第1の吹出し口からの空調風を上記収納ボックス内へ送風する送風ダクトを兼ねる
請求項2記載の車両用収納ボックス。
【請求項4】
上記前列シート付近にはアームレスト機能を有する物品載置部材が設けられ、
上記第1の吹出し口は上記物品載置部材に設けられると共に、該物品載置部材はその一部が可動して収納ボックスと当接される可動部を有し、
該可動部が上記第1の吹出し口からの空調風を収納ボックス内へ送風する送風ダクトを兼ねる
請求項2記載の車両用収納ボックス。
【請求項5】
上記収納ボックスはドリンクホルダを有すると共に、上記シートバックの折畳み時に、第1の吹出し口とドリンクホルダ内とを連通させるドリンクホルダ用連通部を備えた
請求項1〜4の何れか1に記載の車両用収納ボックス。
【請求項6】
上記収納ボックスの後方に他のシートを備え、
上記収納ボックスが上記他のシートへ空調風を導出する第2の吹出し口を備えた
請求項1〜5の何れか1に記載の車両用収納ボックス。
【請求項7】
上記連通部は出口部を有し、該出口部に、上記収納部内と上記第2の吹出し口とに空調風を選択的に案内する風向き調節装置を備えた
請求項6記載の車両用収納ボックス。
【請求項8】
上記収納ボックスは第1の吹出し口から流入する空調風を、上記連通部の出口部と上記ドリンクホルダ用連通部とに選択的に切換える切換え手段を備えた
請求項7記載の車両用収納ボックス。
【請求項9】
上記第2の吹出し口には空調風の風向きを変更するルーバが設けられた
請求項6〜8の何れか1に記載の車両用収納ボックス。
【請求項10】
上記物品載置部材は前列シート中央に設けられたセンタコンソールであり、上記収納ボックスを備えた後列シートは左右シート間に配設されたセンタシートである
請求項2記載の車両用収納ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−132345(P2009−132345A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311927(P2007−311927)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】