説明

車両用天井内装材及びその製造方法

【課題】車室内の騒音を効果的に低減して乗員の乗り心地感を向上させ、断熱性を高めて無駄な電力の消費を無くし、低コストで組付工数の低減を達成する。
【解決手段】車両VのルーフパネルR車室内側にパネル状の基材3が車室内に面するように配設されている。基材3の車室外側に配索部材20が配索されている。基材3の車室外側には、発泡成形体9がその車室外側の形状をルーフパネルRの車室内側の形状と略等しくするように一体に成形されている。発泡成形体9は、ルーフパネルRに取り付けた状態で、車室外側がルーフパネルR車室内側に圧接するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両の車室内に設けられる車両用天井内装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両には、ルーフパネルの車室内側に車両用天井内装材が配設されている。例えば、特許文献1の車両用天井内装材には、車室内に面する基材のルーフパネル側において、ハーネス線、アンテナ線及びウォッシャーパイプ等が取り付け可能となっていて、上記ハーネス線等によりモジュール化した車両用天井内装材が組立ラインへ搬送されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−67847公報(段落0012,0013欄、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の車両においては、車室内の騒音をできるだけ排除して乗員の不快感を低減することが要求されている。このことに対し、車両の走行中においてルーフパネルと基材との間に形成された隙間を流れる空気の風切音や、ルーフパネル上に落ちたときに発生する雨音、さらには、走行中にルーフパネルが振動することにより発生する振動音は、車室内にいる乗員の不快感を増加させる原因となっている。
【0005】
また、電気自動車やハイブリッド車等の増加に伴い、車両の動力源に多くの電力を供給できるように、特に面積の広いルーフパネル周辺の断熱性を高めて空調装置に係る電力を必要最小限に留めることが求められている。
【0006】
これらの要求を達成するために、一定の厚みで形成された吸音性、遮音性及び断熱性の高い発泡成形体をルーフパネルと基材との間に配設する方法が考えられる。しかし、厚みの小さい発泡成形体を配設すると、該発泡成形体とルーフパネルとの間の所々に隙間が形成されてしまい、風切音や振動音に対応できないばかりか十分な断熱性を得ることができない。反対に、ルーフパネルと基材との間で最も間隔の広い箇所を基準に厚みの大きい発泡成形体を用意して、上記ルーフパネルと基材とで発泡成形体で挟み込むようにすると、ルーフパネルや基材の起伏の大きな箇所では、発泡成形体の圧縮変形が大きくなってしまい、当該圧縮変形により基材に大きな力が掛かり該基材を局部的に変形させてしまう。
【0007】
一方、基材のルーフパネル側にハーネス線等を配索する際、所定の位置からずれることがないように、一般的に粘着テープを用いて複数箇所を基材に貼り付けるようにしていて、材料コスト並びに組付工数の増加を引き起こすこととなっている。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車室内の騒音を効果的に低減して、乗員の乗り心地感を向上させるとともに断熱性を高めて無駄な電力の消費を無くすことができ、さらには、低コストで組付工数を低減できる車両用天井内装材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、ルーフパネル車室外側の形状と上記基材の車室内側の形状とに沿う発泡成形体を基材の車室外側に設け、該発泡成形体により、配索部材を固定するようにしたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、車両のルーフパネル車室内側においてパネル状の基材が車室内に面するように配設され、該基材の車室外側に配索部材が配索された車両用天井内装材において、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明では、上記基材の車室外側には、発泡成形体がその車室外側の形状を上記ルーフパネルの車室内側の形状と略等しくするように一体に成形され、上記ルーフパネルに取り付けた状態で、車室外側が該ルーフパネル車室内側に圧接するようになっていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、上記発泡成形体は、低反発弾性材からなることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記ルーフパネルと基材との上下幅が、車両前後両端部及び車両左右両端部の少なくとも一カ所と中央部とで異なり、上記発泡成形体の厚さが、上記ルーフパネルと基材との上下幅に対応するように、車両前後両端部及び車両左右両端部の少なくとも一カ所と中央部とで異なることを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、車両のルーフパネル車室内側においてパネル状の基材が車室内に面するように配設され、該基材の車室外側に配索部材が配索された車両用天井内装材の製造方法であって、上記基材がセットされる第1型と、該第1型に対向配置され、上記ルーフパネルの車室内側の形状に対応する成形面を有する第2型とを備えた成形型を用意し、上記成形型を型開きした状態で、上記配索部材が仮止めされた基材を上記第1型に配索部材が上記第2型側に向くようにセットするか、基材を第1型にセットした後配索部材を基材上に仮止めし、次いで、上記成形型を型閉じして上記第1型にセットされた基材と上記第2型の成形面との間に形成されたキャビティに発泡樹脂原料を注入して発泡させることにより、車室外側の形状が上記ルーフパネルの車室内側の形状と略等しくなるように、且つ、上記ルーフパネルに取り付けた状態で、該ルーフパネル車室内側に車室外側が圧接する発泡成形体を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、発泡成形体及び基材の間と上記発泡成形体及びルーフパネルの間とに非接触箇所が形成され難くなるので、断熱性が高まるとともに、車両の走行中に基材とルーフパネルとの間を空気が流れなくなり、風切音の発生を防止できる。また、基材とルーフパネルとの間に設けられた発泡成形体が車室内側へ進む雨音を遮るようになるので、車室内で聞こえる雨音を小さくすることができる。さらには、発泡成形体がルーフパネルに圧接するので、発泡成形体が車両の走行中のルーフパネルの振動を抑えるようになり、ルーフパネルの振動から発生する騒音を低減できる。それに加え、成形型内で発泡成形体を成形すると同時に、配索部材全体を基材に固定することができるので、従来のように配索部材の多くの箇所を粘着テープ等で貼り付ける必要が無くなり、粘着テープ等の数を配索部材が成形型内でずれない程度の必要最小限に減らしてコストを低減できるとともに、これら配索部材を基材に貼り付ける作業を簡略化して組付工数を低減できる。これらにより、車室内の騒音を効果的に低減して、乗員の乗り心地感を向上させるとともに断熱性を高めて無駄な電力の消費を無くすことができ、さらには、低コストで組付工数を低減することができる。
【0016】
第2の発明では、天井内装材をルーフパネルに取り付けたときに、発泡成形体が起伏の大きな箇所にうまく馴染むようになって、第1の発明に比べて発泡成形体とルーフパネルとの間の非接触箇所がさらに形成され難くなる。また、発泡成形体とルーフパネルとの接触部分の圧力が分散するようになるので、基材に局所的な力が加わって変形してしまうのを防ぐことができる。さらに、ルーフパネルが複数のバリエーションを有していて、該ルーフパネルの形状が部分的に異なるような場合であっても、発泡成形体がそれぞれの形状に合わせてうまく馴染むようになるので、汎用性のある天井内装材とすることができる。それに加え、高い制振性を保有する低反発弾性材を発泡成形体に用いているので、第1の発明に比べてさらに車両の走行中のルーフパネルの振動を抑えることができ、ルーフパネルの振動により発生する騒音を防ぐことができる。
【0017】
第3の発明では、ルーフパネルと基材との間の上下幅に発泡成形体の厚さが対応するようになり、天井内装材をルーフパネルに取り付けたときに、発泡成形体の車室外側がルーフパネルの車室内側に略均一に接触するようになる。したがって、発泡成形体の車室外側が略均一に圧縮変形するようになり、基材に局所的な大きな力が掛かって変形してしまうのを防ぐことができる。
【0018】
第4の発明では、基材の車室外側に沿うとともにルーフパネルの車室内側に沿う発泡成形体を成形型で成形できるようになるとともに、上記発泡成形体で配索部材の全体を成形型内で固定できるようになるので、第1の発明と同様に、車室内の騒音を効果的に低減して、乗員の乗り心地感を向上させるとともに断熱性を高めて無駄な電力の消費を無くすことができ、さらには、低コストで組付工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両を簡略化した斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る天井内装材の基材をルーフパネル側から見た平面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】図1のC−C線断面図である。
【図6】発泡成形体を成形する成形型に基材をセットした状態の断面図である。
【図7】発泡成形体を成形する成形型を型閉じし、発泡樹脂原料を注入した状態の断面図である。
【図8】発泡樹脂原料を発泡させ、車両用天井内装材を成形した状態の断面図である。
【図9】成形型から車両用天井内装材を脱型した状態の断面図である。
【図10】本発明の実施形態における車両用天井内装材の発泡成形体について、遮音性能を評価したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る車両Vを示す。該車両Vの上方にはルーフパネルRが位置していて、図3及び図4に示すように、該ルーフパネルRは、車両Vの外板部分となる略矩形状のルーフパネルアウターR1と、該ルーフパネルアウターR1の左右両縁部において車両前後方向に延びる一対のルーフサイドレールR2と、上記ルーフパネルアウターR1の下面に沿って車幅方向に延びるルーフレインフォースメントR3とを備えていて、該ルーフレインフォースメントR3は、断面略ハット形状をなし、車両前後方向に複数並列配置されている。上記ルーフパネルRの車室内側には、図2に示す車室内天井の意匠面となる車両用天井内装材1が配設されていて、該天井内装材1は、車両前後方向に延びる略矩形状をなしていて、車室内側に面するパネル状の基材3と、該基材3の車室外側に配索される配索部材20と、上記基材3の車室外側に一体に成形された発泡成形体9とを備え、中央部分が上方に位置する緩やかな湾曲形状をなしている。
【0022】
上記基材3は、図示しないが、例えば、硬質発泡ウレタンからなる基材本体層にガラス繊維等の補強層を介して表面材及び裏面材を積層した構造をなしていて、図示しない成形型を用いて従来周知の方法にて成形されたものである。
【0023】
上記配索部材20は、配線5及び配管7からなっている。上記配線5は、図2に示すように、ハーネス線5a及びアンテナ線5bを備えている。上記ハーネス線5aは、車幅方向右側の前方から基材3の外周縁に沿って後方に延び、上記基材3の車両前後方向中央部分及び後方部分から車幅方向左側に向かってそれぞれ延びていて、車両前後方向中央部の車幅方向両側及び車両後方の車幅方向左側にそれぞれ位置するルーフランプ5cに繋がっている。また、上記アンテナ線5bは、車幅方向左側の前方から基材3の外周縁に沿って後方に延びている。
【0024】
上記配管7は、図示しないがウォッシャー液を車両前方のエンジンルーム内からリアウインドガラスまで届けるウォッシャーパイプであり、図2に示すように、車幅方向左側の前方から上記アンテナ線5bに沿って後方に延びている。
【0025】
そして、上記配線5及び配管7は、複数の粘着テープTで上記基材3の車室外側に仮止めされていて、その仮止めの位置は、基材3の四隅や大きく湾曲した箇所、さらには、配線5及び配管7が交差した箇所といった必要最小限の箇所となっている。
【0026】
上記発泡成形体9は、発泡ウレタンからなる低反発弾性材(図10に示す発泡ウレタンU1、例えば、SBU社製軟質ウレタンNo.5)であり、上記基材3の車室外側に一体成形されていて、上記発泡成形体9の車室内側の形状は、基材3の車室外側の形状と略等しくなっていて、車室外側の形状はルーフパネルRの車室内側の形状と略等しくなっている。上記発泡成形体9は、上記基材3に仮止めされた配線5及び配管7を基材3との間で挟み込んで固定するようになっている。また、図3及び図4に示すように、ルーフパネルRと基材3との上下幅が、車両前後両端部より中央部の方が幅広で、且つ、車両左右両端部より中央部の方が幅狭となっていて、上記発泡成形体9の厚さは、上記ルーフパネルR及び基材3の上下幅に対応するようになっている。そして、上記発泡成形体9は、ルーフパネルRに取り付けた状態で、車室内側がルーフパネルR車室内側に圧接するようになっている。
【0027】
上記低反発弾性材は、一般的に弾性と粘性とを兼ね備えた性質を有していて、起伏の大きな箇所にあてがったときに、当該箇所に隙間無く沿わせることができるとともに接触部分の圧力を分散させることができるので、上記ルーフパネルRに上記車両用天井内装材1を取り付けたときに、起伏の大きなルーフレインフォースメントR3の部位に発泡成形体9を沿わせることができ、しかも、接触部分の圧力を分散させて基材3を局部的に変形させないようになっている。
【0028】
上記発泡成形体9は、その内部の気泡同士が壁で仕切られていて繋がっていない、いわゆる独立気泡構造であって断熱性が高く、その比重は0.07g/cmとなっている。尚、上記発泡成形体9の比重は、車両Vの重量を増加させないように0.02〜0.07g/cmが好ましい。
【0029】
また、上記発泡成形体9の車両前方に位置する端部は、図5に示すように、ルーフパネルRに連なるフロントピラーFpの上部に位置するようになっていて、上記フロントピラーFpに対応する位置の基材3が、上記発泡成形体9によってフロントピラーFp側に撓まないようになっている。したがって、フロントピラーFpと基材3との間にチップウレタン等の部材を追加で配設しなくても上記基材3はフロントピラーFp側に撓まなくなり、フロントピラーFpの内方に位置するピラートリムPtと上記基材3との間に隙間が形成されず、コストを抑えて車室内の意匠性を高めることができる。尚、フロントピラーFpだけでなく、図示しないがセンターピラーやリアピラー部分においても上記と同様に発泡成形体9によってトリムと基材3との間に隙間が形成されないようになっていて車室内の意匠性を高めることができる。
【0030】
次に、車両用天井内装材1の製造方法について説明する。製造に際し、図6乃至図9に示すような、上下に対向配置された固定型(第1型)11及び可動型(第2型)13を備えた成形型10を用意する。上記固定型11の上面には、上記基材3の車室内側の形状に対応した下側成形面11aが形成されていて、上記基材3の車室内側を固定型11側にして上記基材3を上記固定型11にセットすると、基材3の車室内側の形状面3aと上記下側成形面11aとが隙間無く当接するようになっている。また、上記可動型13の下面には、ルーフパネルRの車室内側の形状面Raに沿うような形状の上側成形面13aが形成されている。
【0031】
まず初めに、図示しない成形型を用いて従来周知の方法にて成形した基材3を用意する。そして、図6に示すように、上記成形型10を型開きした状態で、上記配線5及び配管7が粘着テープTによって仮止めされた基材3を上記固定型11の下側成形面11aに配線5及び配管7が上記可動型13側に向くようにセットする。尚、上記基材3を固定型11にセットした後、配線5及び配管7を基材3に粘着テープTを用いて仮止めしてもよい。
【0032】
次いで、図7に示すように、成形型10を型閉じし、基材3の車室外側の形状面3bと可動型13の上側成形面13aとの間に形成されたキャビティ10a内に上記発泡成形体9の発泡樹脂原料90を射出機(図示せず)で射出注入した後、加熱装置(図示せず)にて発泡樹脂原料90を加熱して発泡させる。そして、図8に示すように、発泡した発泡成形体9が上記キャビティ10a内を埋めるとともに上記配線5及び配管7を上記基材3に挟んで固定する。尚、加熱装置によって加熱された成形型10の温度は、配線5の被覆を溶かさない温度となっている。
【0033】
その後、図9に示すように、可動型13を固定型11から後退させて成形型10を型開きし、車両用天井内装材1を成形型10から脱型する。
【0034】
次に、本発明の実施形態に係る車両用天井内装材1の遮音性能についての評価結果について説明する。
【0035】
図10は、横軸を周波数、縦軸を音響透過損失としたグラフであり、各周波数において音響透過損失が高いほど遮音性能が高いことを示している。D1は、ルーフパネルRと基材3との間に発泡成形体9が無い状態で取得したデータを示し、D2は、発泡成形体9に発泡ウレタンU1を用いて取得したデータを示し、D3は、発泡成形体9に発泡ウレタンU2(例えば、BS社製スラブウレタン:比重0.02g/cm3)を用いて取得したデータを示す。
【0036】
近年では、周波数の中でも可聴範囲とされる1.0kHz〜2.5kHzにおいて遮音性能を高めることは勿論のこと、自動車の高性能化に伴って3.0kHz〜5.0kHzの高周波領域においても遮音性能を高めたいという要求がある。このことに対し、図10に示すように、発泡ウレタンU1及びU2をルーフパネルRと基材3との間に配設した車両用天井内装材1は、上記ルーフパネルRと基材3との間に発泡成形体9が無い車両用天井内装材1に比べて高い遮音性能を有していて、さらに発泡ウレタンU1は、3.0kHz〜5.0kHzの高周波領域において発泡ウレタンU2より高い遮音性能を有している。したがって、発泡成形体9に発泡ウレタンU1及びU2を用いることによって高い遮音性能を有する車両用天井内装材1とすることができ、さらに、発泡成形体9に発泡ウレタンU1を用いることによって、高周波領域において高い遮音性能を有する車両用天井内装材1とすることができる。
【0037】
以上より、本発明の実施形態によれば、発泡成形体9及び基材3との間と上記発泡成形体9及びルーフパネルRとの間とに非接触箇所が形成され難くなるので、断熱性が高まるとともに、車両Vの走行中に基材3とルーフパネルRとの間に空気が流れなくなり、風切音の発生を防止できる。また、基材3とルーフパネルRとの間に設けられた発泡成形体9が車室内側へ進む雨音を遮るようになるので、車室内で聞こえる雨音を小さくすることができる。さらには、発泡成形体9がルーフパネルRに圧接するので、発泡成形体9が車両Vの走行中のルーフパネルRの振動を抑えるようになり、ルーフパネルRの振動から発生する騒音を低減できる。それに加え、成形型10内で発泡成形体9を成形すると同時に、配線5や配管7全体を基材3に固定することができるので、従来のように配線5や配管7の多くの箇所を粘着テープT等で貼り付ける必要が無くなり、粘着テープT等の数を配線5や配管7が成形型10内でずれない程度の必要最小限に減らしてコストを低減できるとともに、これら配線5や配管7を基材3に貼り付ける作業を簡略化して組付工数を低減できる。また、基材3の車室外側に沿うとともにルーフパネルRの車室内側に沿う発泡成形体9を成形型10で成形できるようになるとともに、上記発泡成形体9で配線5及び配管7の全体を成形型10内で固定できるようになる。これらにより、車室内の騒音を効果的に低減して、乗員の乗り心地感を向上させるとともに断熱性を高めて無駄な電力の消費を無くすことができ、さらには、低コストで組付工数を低減することができる。
【0038】
また、天井内装材1をルーフパネルRに取り付けたときに、発泡成形体9が起伏の大きな箇所にうまく馴染むようになって、発泡成形体9とルーフパネルRとの間に非接触箇所がさらに形成され難くなる。また、発泡成形体9とルーフパネルRとの接触部分の圧力が分散するようになるので、基材3に局所的な力が加わって変形してしまうのを防ぐことができる。さらに、ルーフパネルRが複数のバリエーションを有していて、該ルーフパネルRの形状が部分的に異なるような場合であっても、発泡成形体9がそれぞれの形状に合わせてうまく馴染むようになるので、共通の天井内装材1を異なるルーフパネルRに適用することができ、汎用性のある天井内装材1とすることができる。それに加え、高い制振性を保有する低反発弾性材を発泡成形体9に用いているので、さらに車両Vの走行中のルーフパネルRの振動を抑えることができ、ルーフパネルRの振動により発生する騒音を防ぐことができる。
【0039】
さらに、ルーフパネルRと基材3との間の上下幅に発泡成形体9の厚さが対応するようになり、天井内装材1をルーフパネルRに取り付けたときに、発泡成形体9の車室外側がルーフパネルRの車室内側に略均一に接触するようになる。したがって、発泡成形体9の車室外側が略均一に圧縮変形するようになり、基材3に局所的な大きな力が掛かって変形してしまうのを防ぐことができる。
【0040】
尚、本発明の実施形態では、基材3への配線5及び配管7の仮止めを粘着テープTで行っているが、これに限らず、例えば、基材3の車室外側に凹部が形成された係合部を数カ所設け、上記凹部に上記配線5や配管7を仮止めするようにしてもよい。
【0041】
また、本発明の実施形態では、基材3の車室外側に配線5と配管7とを配索しているが、配線5及び配管7の少なくとも一方を配索していればよい。
【0042】
また、配線5はハーネス線5aやアンテナ線5bに限らず、他の配線であってもよく、配管7においてもウォータパイプに限らず、他の配管であってもよい。
【0043】
また、本発明の実施形態では、発泡成形体9は、ルーフパネルRと基材3との上下幅に対応するように、車両前後両端部より中央部の方が厚みが大きく、且つ、車両左右両端部より中央部の方が厚みが小さくなっているが、ルーフパネルRと基材3との上下幅に対応する形状であればよく、例えば、車両前後両端部より中央部の方が厚みが小さく、車両左右両端部より中央部の方が厚みが大きくなっていてもよい。すなわち、ルーフパネルRと基材3との上下幅が、車両前後両端部及び車両左右両端部の少なくとも一カ所と中央部とで異なっている場合に、上記ルーフパネルRと基材3との上下幅に対応するように、発泡成形体9の前後両端部及び左右両端部の少なくとも一カ所の幅が中央部の幅と異なっていればよい。
【0044】
また、本発明の発泡成形体9は、ルーフパネルRの車室内側と基材3の車室外側とに完全に隙間無く接触するのが好ましいが、仮に一部に非接触部が発生しても特に問題とならない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば、車両の車室内に設けられる車両用天井内装材及びその製造方法に適している。
【符号の説明】
【0046】
1 車両用天井内装材
3 基材
5 配線
7 配管
9 発泡成形体
10 成形型
10a キャビティ
11 固定型(第1型)
13 可動型(第2型)
20 配索部材
90 発泡樹脂原料
C 車両
U1 発泡ウレタン
U2 発泡ウレタン
R ルーフパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフパネル車室内側においてパネル状の基材が車室内に面するように配設され、該基材の車室外側に配索部材が配索された車両用天井内装材であって、
上記基材の車室外側には、発泡成形体がその車室外側の形状を上記ルーフパネルの車室内側の形状と略等しくするように一体に成形され、上記ルーフパネルに取り付けた状態で、車室外側が該ルーフパネル車室内側に圧接するようになっていることを特徴とする車両用天井成形材。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用天井成形材において、
上記発泡成形体は、低反発弾性材からなることを特徴とする車両用天井成形材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用天井成型材において、
上記ルーフパネルと基材との上下幅が、車両前後両端部及び車両左右両端部の少なくとも一カ所と中央部とで異なり、
上記発泡成形体の厚さが、上記ルーフパネルと基材との上下幅に対応するように、車両前後両端部及び車両左右両端部の少なくとも一カ所と中央部とで異なることを特徴とする車両用天井成形材。
【請求項4】
車両のルーフパネル車室内側においてパネル状の基材が車室内に面するように配設され、該基材の車室外側に配索部材が配索された車両用天井内装材の製造方法であって、
上記基材がセットされる第1型と、該第1型に対向配置され、上記ルーフパネルの車室内側の形状に対応する成形面を有する第2型とを備えた成形型を用意し、
上記成形型を型開きした状態で、上記配索部材が仮止めされた基材を上記第1型に配索部材が上記第2型側に向くようにセットするか、基材を第1型にセットした後配索部材を基材上に仮止めし、
次いで、上記成形型を型閉じして上記第1型にセットされた基材と上記第2型の成形面との間に形成されたキャビティに発泡樹脂原料を注入して発泡させることにより、車室外側の形状が上記ルーフパネルの車室内側の形状と略等しくなるように、且つ、上記ルーフパネルに取り付けた状態で、該ルーフパネル車室内側に車室外側が圧接する発泡成形体を得ることを特徴とする車両用天井内装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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