説明

車両用成形天井材及びその製造方法

【課題】芯材層、補強層及び表皮層が積層された成形天井材において、芯材と表皮とを接着剤を用いることなく接着して接着剤を不要とすることによって製造コスト及び生産性に優れるとともに成形天井としての吸音性にも優れたものを得る。
【解決手段】芯材層2の両側にポリプロピレンフイルムやポリエチレンフイルムからなる補強層としてフィルム層3,4を積層し、このフイルム層を加熱して流動性を付与することによって、フイルム層が芯材層2表面に浸透して硬化した熱可塑性シートとし、一方のフイルム層の外側に表皮層5と、他方のフイルム層の外側に裏面紙層6を積層してなり、かつ、少なくとも表皮側のフイルム層3に多数の貫通孔7が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造性に優れた軽量の車両用成形天井材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用成形天井を成形するものとして、ウレタン等を芯材として、その両側に補強層を設け、その外側に表皮層を設けて加圧成形するものが知られている。この場合、補強層としては、芯材の補強と表皮/裏面紙との接着強度を得るために、樹脂性接着剤を塗布(含浸)させたガラスマットや植物繊維を芯材の両面にサンドイッチ状に設けたものが多い。また、表皮層としては、不織布、織布、編物、プラスチックシート等が用いられている。
【0003】
例えば、ウレタン等を芯材として、その両側にガラス繊維の補強層を設け、その外側に表皮層を設けたものであって、表皮布として不織布、織布、プラスチックシートと、その内側にアクリル系発泡層をラミネートしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、ウレタン等を芯材として、その両側に補強層を設け、その外側に表皮層を設けたものであって、補強層としては、ガラス繊維の代わりに、天然素材であってリサイクル性に優れた植物繊維を用いたものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
また、ドアトリム、ルーフトリム等の車両内装材であるが、半硬質ウレタン樹脂の発泡体からなる芯材と、この芯材の少なくとも一方の面に固着された補強用のフィルムと、繊維状組織又はフォームを有する裏面が上記フィルムを介して上記芯材に固着された表皮とを備えた車両内装用トリム材において、上記フィルムをサーモプラスチックオレフィンとポリプロピレンとの混合材から形成した車両内装用トリム材が知られている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−301539号公報
【特許文献2】特開2001−47544号公報
【特許文献3】特開平07−195578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、ポリウレタン発泡層の両側にガラス繊維層を設け、ガラス繊維層の外側に表皮層を有するものであって、ガラス繊維層と表皮層との間に不織布或いはガラスマットからなる吸音性能向上材を配設したものを開示している。
【0007】
しかし、ガラス繊維を用いるため、製品成形時に発生する成形端末を処分する際や、使用済み製品を処理するために焼却した際に、溶融したガラスが焼却炉壁面に付着することにより焼却炉寿命を著しく阻害するという問題を抱えている。
【0008】
また、特許文献2では、補強層が植物繊維であるので、焼却炉寿命の点に関してはガラス繊維に比べて優れている。
【0009】
しかし、天然繊維は焼却時に微量ではあるが主としてホルムアルデヒド等のVOCが発生するという環境上の問題を生じる。さらには、植物繊維の吸湿時の伸縮或いは剛性低下により、成形内装材が使用中に変形する問題を生じる。特に、成形天井材のように3次元的に立体成形したものでは、伸縮・剛性低下等の要因で大きく変形して製品として使用できない。すなわち、ガラス繊維を植物繊維に置き換え、植物繊維単独で使用するものでは補強層としての機能で不十分であり、実用化できない。
【0010】
さらに、特許文献3では、補強層としてガラス繊維でもなく、植物繊維でもないので、特許文献1や2等における不具合はない。
【0011】
しかし、このものを成形天井として使用した場合には、ポリプロピレンフイルムで発泡ウレタン芯材を完全に覆うので、吸音機能が不十分となり、成形天井として商品性が著しく低下する問題があった。
【0012】
本発明の目的は、ガラス繊維や植物繊維に代わる補強材を使用し、かつ成形天井としての吸音性にも優れたものを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的の達成のため、本発明では、ガラス繊維や植物繊維に代わる補強材としてポリプロピレンフイルムやポリエチレンフイルムを使用することとし、そのフィルムに多数の貫通孔を形成して成形天井としての吸音性に優れるようにした。
【0014】
具体的には、請求項1の発明は、車両用成形天井材が、ウレタン発泡体からなる芯材層と、該芯材層の両側に接合されたポリプロピレンフイルム層と、一方のポリプロピレンフイルム層の外側に接合された表皮層と、他方のポリプロピレンフイルム層の外側に必要に応じて積層してなる裏面材層とからなり、少なくとも表皮側のポリプロピレンフイルム層に多数の貫通孔が形成されている構成である。
【0015】
請求項2の発明は、車両用成形天井材が、ウレタン発泡体からなる芯材層と、該芯材層の両側に接合されたポリエチレンフイルム層と、一方のポリエチレンフイルム層の外側に接合された表皮層と、他方のポリエチレンフイルム層の外側に必要に応じて積層してなる裏面材層とからなり、少なくとも表皮側のポリエチレンフイルム層に多数の貫通孔が形成されている構成である。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の車両用成形天井材において、上記貫通孔の開孔面積率は、1〜65%である構成である。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の車両用成形天井材において、上記貫通孔の大きさは、0.05mm〜5mmの直径である構成である。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用成形天井材において、上記フイルム層の厚さが15μm〜200μmであることを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用成形天井材において、上記フィルム層の片側又は両方に補強用の繊維からなる繊維層が積層されて補強層が形成されてなる構成である。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用成形天井材において、補強用繊維がフイルム層に混合されて補強層が一体に形成されている構成である。
【0021】
請求項8の発明は、請求項7に記載の車両用成形天井材において、補強用の繊維が、15g/m2〜300g/m2の目付け範囲である構成である。
【0022】
請求項9の発明は、請求項6ないし8のいずれかに記載の車両用成形天井材において、補強用の繊維はケナフ、サイザル、麻、サボテン、竹、木を含む天然植物繊維の少なくとも1種を組み合わせてなる構成である。
【0023】
請求項10の発明は、請求項6ないし9のいずれかに記載の車両用成形天井材において、補強用の繊維はカーボン、バサルト等の無機質繊維を含む構成である。
【0024】
請求項11の発明は、請求項6ないし10のいずれかに記載の車両用成形天井材において、補強用の繊維の繊維長が10〜100mmで、繊維太さは1.0mm以下である構成である。
【0025】
請求項12の発明は、請求項7ないし11のいずれかに記載の車両用成形天井材において、補強層の厚さが0.1mm〜3mmである構成である。
【0026】
請求項13の発明は、ウレタン発泡体からなる芯材層と、該芯材層の両側に接合されたポリプロピレンフイルム層又はポリエチレンフイルム層と、一方側のフイルム層の外側に接合された表皮層と、他方側のフイルム層の外側に必要に応じて積層してなる不織布や紙等の裏面材層とからなり、少なくとも表皮側のフイルム層には多数の貫通孔が形成されている成形天井材の製造方法であって、少なくとも上記表皮側のフイルム層に多数の貫通孔が形成されているものを用意する。次に、ウレタン発泡体のシート状芯材の両面に上記フイルム層を重ねたものを150〜250℃に加熱することで、上記フイルム層に流動性を付与してシート状芯材の表面内に浸透させて、両表面が硬化された熱可塑性のシート状芯材を作製する。その後、成形前に、上記熱可塑性のシート状芯材を150〜250℃に再加熱して成形可能な状態とし、この加熱されたシート状芯材の一方側に表皮材を重ね、他方側に必要に応じて裏面材を重ねた状態で、成形天井用のコールド金型内にセットして加圧成形することを特徴とする。
【0027】
請求項14の発明は、ウレタン発泡体からなる芯材層と、該芯材層の両側に接合されたポリプロピレンフイルム層又はポリエチレンフイルム層と、一方側のフイルム層の外側に接合された表皮層と、他方側のフイルム層の外側に必要に応じて積層してなる不織布や紙等の裏面材層とからなり、少なくとも表皮側のフイルム層には多数の貫通孔が形成されている成形天井材の製造方法であって、少なくとも上記表皮側のフイルム層に多数の貫通孔が形成されているものを用意する。次に、ウレタン発泡体のシート状芯材の両面に上記フイルム層を重ねるとともに、その一方側のフイルム層の外側に表皮材を、また他方側のフイルム層の外側に必要に応じて裏面材をそれぞれ重ねたものを150〜250℃に加熱することで、上記フイルム層に流動性を付与してシート状芯材の表面内に浸透させるとともに表皮層との接着性を付与し、その後、この加熱されたものを成形天井用のコールド金型内にセットして加圧成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明によれば、ウレタン芯材の両側にポリプロピレンフイルムを配設し、このフイルムが加熱されて流動性を付与されることで芯材の表面に浸透することとなり、芯材の両側を成形可能な硬さにすることができるとともに、芯材と表皮とを接着剤を用いることなくフィルムを介して固着することができる。したがって、接着剤が不要であり、その分だけ、材料費及び加工の手間を低減することができ、生産性に優れる。また、特に、フイルムには多数の貫通孔が形成されているので、発泡性ウレタン芯材と相俟って吸音・消音性能に優れた成形天井材を得ることができる。
【0029】
請求項2の発明によれば、請求項1と同様に吸音・消音性能に優れた成形天井材を得ることができる。
【0030】
請求項3の発明によれば、吸音・消音性能に優れると同時に成形時の形状追従性、使用時の形状保持性に優れた成形天井材が得られる。
【0031】
請求項4の発明によれば、さらに吸音・消音性能に優れると同時に成形時の形状追従性、使用時の形状保持性に優れた成形天井を得られる。
【0032】
請求項5の発明によれば、薄いフイルムでよいので、成形天井材を軽量化でき、作業時や搬送時等の取扱いが容易となる。
【0033】
請求項6の発明によれば、補強機能及び接着機能に優れたものが得られる。特に、形状保持性が良いので、立体的な成形天井や面積の大きな成形天井に対して好適である。また、フイルムが表皮側に染み出ることも無く、表面側の見映えも非常に良い。
【0034】
請求項7の発明によれば、成形天井が温度変化や湿度変化等の環境履歴を受けた際、形状変化に対する耐変形性に極めて優れる。特に、形状保持性が良いので、立体的な成形天井や面積の大きな成形天井に対して好適である。
【0035】
請求項8の発明によれば、高強度で成形時の変形に追従できる伸びを備えるものが得られる。
【0036】
請求項9の発明によれば、植物繊維は処分時に公害問題に対して有利であり、処分やリサイクルが容易である。
【0037】
請求項10の発明によれば、さらに補強機能及び接着機能に優れたものが得られる。
【0038】
請求項11の発明によれば、繊維同士の混合を確実にでき、繊維が十分に絡んだ繊維体が得られる。
【0039】
請求項12の発明によれば、補強層を薄いシートとして得られるので、軽量化でき、形状追従性の良いものが得られる。
【0040】
請求項13の発明によれば、接着剤が不要であり、加工の手間を低減することができ、生産性に優れる。また、特に、フイルムによって形状保持性の良い成形天井を得られ、かつフイルムには多数の貫通孔が形成されているので、吸音・消音性能に優れた成形天井材を得ることができる。
【0041】
請求項14の発明によれば、簡単な成形方法で形状保持性の良い成形天井を得られ、かつフイルムには多数の貫通孔が形成されているので、吸音・消音性能に優れた成形天井材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に本発明の実施形態を示し、本発明を具体的に説明する。図1は本発明の実施形態に係る自動車用の成形天井材の斜視図を示し、図2は図1の部分断面図を示す。図1に示すように、成形天井材1は、中央が凹んだ立体形状に形成される。図1のA部及びB部は、成形天井材材のフロントのサンバイザー(図示せず)が設けられるために立体的に大きく変形される部分を示す。成形天井材1の断面は、図2に示すように、発泡ウレタン芯材層2の両側にそれぞれポリプロピレンフイルム又はポリエチレンフイルムからなるフイルム層3,4が配設され、その一方の外側フイルム層3に表皮層5が、また他方側に裏面紙層6(裏面材層)がそれぞれ接着されている。そして、図3に示すように、上記フイルム層3,4には多数の貫通孔7が設けられている。尚、自動車以外の車両用天井材に適用できるのは勿論である。
【0043】
本発明の実施形態では、貫通孔7を設けたポリプロピレンフイルムやポリエチレンフイルムを発泡ウレタンの表面に浸透させて、表面が硬化した熱可塑性発泡ウレタンシートを得ることを特徴とするものであり、ポリプロピレンフイルムやポリエチレンフイルムの貫通孔7の開孔面積率が大きいと、剛性が弱く、成形時に割れたり裂けたりする。一方、開口面積率が少ないと吸音性能が無く、成形天井として使用できない。そのために、貫通孔7の開孔面積率は1〜65%であることが好ましく、特に5〜50%であることが望ましい。これらの貫通孔7は成形天井1の全面に均等に開孔してもよく、又は、成形時の追従変形性の大きい部分は貫通孔7の数や大きさを少なくし、その他の部分では貫通孔7の数を多くすることも可能である。又は、吸音性能が要求される部分の貫通孔7の数を多くし、それ以外を少なくすることも可能である。
【0044】
また、この貫通孔7を設けることによって、さらにフイルムを加熱して流動性を持たせた際に、素早く発泡ウレタン芯材2の凸凹表面に浸透していくとともに、発泡ウレタン芯材2の凸凹表面との密着性が強固になるメリットを有する。
【0045】
本実施形態において、貫通孔7の大きさは、大きすぎると剛性が弱くなり、小さすぎると吸音性能が不足するので、0.05mm〜5mmの直径であることが好ましく、さらには0.1mm〜1mmの直径であることが望ましい。尚、この貫通孔7の形状は断面丸形状に限らず、楕円形等でも良い。
【0046】
本実施形態において、フイルム層3,4の厚さが厚くなると流動性が悪くなり、芯材2との密着性が劣り、逆に薄過ぎると芯材2表面に浸透した際にその表面部分の強度が不十分となるので、15μm〜200μmであることが好まく、特に30μm〜150μmであることが望ましい。
【0047】
本実施形態では、表皮側のみか裏面側を含む両側のフィルム層3,4に補強用繊維によって補強層を形成することができる。この補強層は、フイルム層の外側に繊維層を積層するように設けても良く、また、フイルム形成時に混入して一体に設けても良い。又は、補強用繊維を一部混入して、さらに外側に繊維層を積層するようにしても良い。この補強層の厚さは0.1mm〜3mmであることが好ましい。この範囲にすると、混合シートを薄くでき、軽量化できるとともに、成形時の形状変化にも追従し易い。特に、0.2mm〜1mmの範囲が望ましい。
【0048】
上記補強用繊維として使用する各繊維束は直径1.0mm以下で、長さが10〜100mmであることが好ましい。この繊維束の直径とは、断面円形以外の場合には径の短い方の長さである。直径1.0mmを超えると、成形品表面に繊維の凹凸が現れ外観を著しく損なうので、好ましくない。直径0.5mm以下のものがさらに好ましい。
【0049】
繊維束の長さは10mm未満では要求される補強効果が得られず、逆に繊維が100mmよりも長過ぎると、互いに絡まって均一に分散できない。さらには、30mm〜50mmのものが好ましい。尚、長さは全て均一な長さのものに揃える必要はなく、上記範囲の長さのものであれば、異なった長さのものでも良い。
【0050】
カーボン繊維等のように1本の繊維が非常の細いものでは、繊維を束にして用いる。また、植物繊維でも細い場合に繊維束にするが、太くて1本で繊維径が0.5mm程度のものはそのまま使用することもあり、上記繊維束とはこれらを含めたものをいうこととする。
【0051】
上記補強用繊維は、カーボン繊維、バサルト、植物繊維、合成繊維の少なくとも2種類の繊維束を混合したシートとしても良く、その場合の補強層では、その各繊維束の線径(太さ)が直径1.0mm以下で、長さが10〜100mmの短繊維からなるものが好ましい。線径が大きいと、繊維同士が滑り易く、充填繊維との接着強度が不足する結果となる。また、成形品表面に繊維の凹凸が現れて外観を著しく損なうことがあるが、上記範囲とすることで、この凹凸が表面に現れることを防止できる。
【0052】
また、長さが長いと取り扱いが難しく、充填繊維との混合つまり絡めることが十分にできないが、上記範囲とすることで、充填繊維との混合が十分にできる。
【0053】
カーボン繊維と植物繊維・合成繊維との重量割合は、カーボン繊維30〜70%に対して、植物繊維・合成繊維70〜30%であることが好ましい。この範囲にすることで、適切な引張強度を有し、両者の接合状態を良好にすることができる。カーボン繊維と植物繊維・合成繊維との混合シートの製造は、これらの繊維を混在させた混合液状体から、紙抄きの要領で抄いて、薄膜を形成する。
【0054】
上記植物繊維としては、セルロースを主体とした植物を分岐切断又は粉砕したものであって、麻、ケナフ、サイザル繊維、竹繊維、サボテン、木質繊維等の植物繊維が挙げられる。木質繊維は木から得られる。この木としては、杉、松、けやき、ひのき、ひば、桜、ポプラ、樅等が挙げられる。この植物繊維は、カーボン繊維と同様に補強の機能を有し、カーボン繊維に比較して伸び易く、接合性に優れるので、カーボン繊維に対して適切量混合することが好ましい。
【0055】
また、合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂が使用される。この合成繊維は、カーボン繊維と植物繊維とのバインダ機能を備えるので、この合成繊維を含める場合には、バインダを無くし或いは少なくすることができる。
【0056】
本発明における成形天井の製造方法について説明する。1つの製造方法としては、発泡ウレタン芯材と、貫通孔を多数開孔したフィルムとを重ね合わせた状態にし、これを例えば150°〜250℃程度に加熱した金型で15〜60秒間加熱プレスして、板状のシートを製造する。この場合、加熱温度が高いか或いは加熱時間が長いと、フイルムが芯材表面に残らなくて芯材の内部に浸透していくので良くない。逆に、加熱温度が低いか或いは加熱時間が短いと、フイルムの溶け方が不足して十分な流動性が得られない。特に、加熱温度は、さらには、170°〜220℃の範囲で、加熱時間は25〜45秒間とすることが好ましい。
【0057】
このようにして一旦、発泡ウレタン芯材の両面にフイルム層が密着して固くなった板状の熱可塑性シートを製造する。両面が固くなった単純な板状シートであり、取扱いが容易であり、搬送や積層も容易である。尚、金型との付着を防止するために、テフロン(登録商標)のコート等をフイルム層や金型に被覆しても良い。
【0058】
成形天井に成形する際には、再度上記温度及び時間の範囲で、上記温度よりも相対的に低い温度又は短い時間で加熱し、板状シートに成形性を持たせるとともにフイルムに表皮層との接着性を持たせる。この加熱した板状シートの一方の外側に表皮材を重ね、他方の外側には必要に応じて不織布や紙等の裏面材を重ね、成形天井用のコールド金型(図示せず)内にセットし、加圧成形して、成形天井を成形する。尚、不織布や紙等の裏面材を重ねるのは、フィルムが成形金型に付着するのを防止するためと、成形天井裏面にワイヤーハーネス等を組み付けた際のタタキ音防止や成形天井そのものがボディ部材と当りコスレ・異音等を発しないようにするためである。この方法では、金型を加熱する必要がないので、金型設備をコンパクトで低コスト化できる。
【0059】
別の製造方法について説明する。発泡ウレタン芯材の両側に貫通孔を多数開孔したフィルムを重ね合わせた状態にし、さらにその外側に一方側では表皮材を、他方側では裏面紙をそれぞれ重ねたものを用意する。この積層ものを例えば150°〜250℃程度に加熱して15〜60秒間保持して、フイルムに流動性を与えて、成形性を付与するとともに芯材や表皮材、裏面紙がと密着可能な状態とし、その後、加熱状態になっているものを成形天井用のコールド金型内にセットし、一度に加圧成形する。この方法では加熱工程が一度でよく、生産性に優れる。
【0060】
尚、表皮材としてトリコットを使用する場合には、フイルムが軟化する温度まで再加熱すると、毛倒れが起こったり発光したりすることがある。そのために、この表皮の場合には、ウレタン発泡芯材、フイルム、表皮、裏面紙を一回で加熱して成形する後者の成形方法でなく、前者の成形方法を採用することが好ましい。
【0061】
上記表皮シートとしては、トリコット、成形性ニット、ファブリック、不織布、スウェード調合成皮革、PVC(ポリ塩化ビニル)レザー、TPE(熱可塑性エラストマー)シート等が使用される。裏面紙としては、単なるフイルム層としたものであっても良く、また、このフイルムの内側に25g/m2程度の不織布を設けたものであっても良い。
【実施例】
【0062】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0063】
(実施例1)
上記実施形態に係る芯材層2として、CS硬度32で単位面積重量200g/m2の連続気泡を有する熱成形可能な硬質ウレタンフォームシート(1200mm×1600mm×厚さ5.5mm)を用意した。また、表皮層5としてトリコット製表皮を、また離型層6として離面紙をそれぞれ用意した。さらに、フイルム層3,4としては、孔径0.5mmの貫通孔7が開口面積率5%で開口された厚さ50μmのポリプロピレンフイルムを用意した。
【0064】
このフイルムを上記芯材の両面に重ね、180℃に加熱したシート成形用金型にセットして、30秒加圧してシート状に成形した。このシートを1日放置した後、再度180℃に加熱したシート成形用金型にセットして、20秒加圧して成形可能な状態とした。この加熱したシートをコールド成形金型にセットして、成形天井材を成形した。
【0065】
尚、比較のための比較例として、貫通孔7を設けてないポリプロピレンフイルムのものも同様に成形した。
【0066】
その結果、本実施例1のものは、図1のA部やB部であっても、十分に伸びて追従しており、薄くなったり破れたりすることなく成形できた。それに対して、比較例のものは成形できたが、図1のA部やB部で厚さが少し薄くなっていた。
【0067】
成形天井としての吸音性能を比較するために、実施例1のサンプルa,b,cとして、貫通孔の開口面積が5%、20%、60%のものを作製し、比較例とで比較した。その結果を図4に示す。本実施例1のサンプルa,b,cは曲げ強度15N/50mm以上であり、成形時の強度を十分に有するとともに、吸音性能は、38%/2kHz以上であり、十分な吸音性を発揮している。それに対して、比較例では、曲げ強度は十分であるが、吸音性が全くなく、成形天井としては性能的に不十分なものであった。
【0068】
(実施例2)
尚、実施例2として、上記実施例1のフイルムと補強用繊維層を積層したものを用意した。この補強用繊維層は繊維長さが50mmで繊維束太さが0.5mmのカーボン繊維とサイザル繊維との混合繊維を80g/m2相当の目付けで、フィルムと繊維の積層したものの厚さ0.4mmのものとした。
【0069】
そして、上記実施例1と同様に成形天井を作製した。この実施例2のものでは、図1のA部やB部であっても、十分に伸びて追従しており、薄くなったり破れたりすることなく成形できた。特に、補強用繊維層を有するので剛性に優れており、成形時の変形に追従する追従性に優れるだけでなく、成形後においても中央が垂れたりすることもなく、面積の大きい成形天井や深い成形天井としても十分な実用性を備えていた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、芯材層、補強層及び表皮層が積層された成形天井材において、芯材と表皮とを接着剤を用いることなく接着して製造コスト及び生産性に優れ、成形天井としての吸音性にも優れたものが得られるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る成形天井材を示す斜視図である。
【図2】図2は、成形天井材の部分断面図である。
【図3】図3は、フイルムの部分拡大平面図である。
【図4】図4は、実施例の曲げ剛性と吸音性とを示すグラフである。
【符号の説明】
【0072】
1 成形天井材
2 発泡ウレタン芯材層
3 フイルム層
4 フイルム層
5 表皮層
6 裏面紙層(裏面材層)
7 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン発泡体からなる芯材層と、該芯材層の両側に接合されたポリプロピレンフイルム層と、一方のポリプロピレンフイルム層の外側に接合された表皮層と、他方のポリプロピレンフイルム層の外側に必要に応じて積層してなる裏面材層とからなり、
少なくとも表皮側のポリプロピレンフイルム層に多数の貫通孔が形成されていることを特徴とする車両用成形天井材。
【請求項2】
ウレタン発泡体からなる芯材層と、該芯材層の両側に接合されたポリエチレンフイルム層と、一方のポリエチレンフイルム層の外側に接合された表皮層と、他方のポリエチレンフイルム層の外側に必要に応じて積層してなる裏面材層とからなり、
少なくとも表皮側のポリエチレンフイルム層に多数の貫通孔が形成されていることを特徴とする車両用成形天井材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用成形天井材において、
貫通孔の開孔面積率は、1〜65%であることを特徴とする車両用成形天井材。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車両用成形天井材において、
貫通孔の大きさは、0.05mm〜5mmの直径であることを特徴とする車両用成形天井材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用成形天井材において、
フイルム層の厚さが15μm〜200μmであることを特徴とする車両用成形天井材。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用成形天井材において、
フィルム層の片側又は両方に補強用の繊維からなる繊維層が積層されて補強層が形成されてなることを特徴とする車両用成形天井材。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用成形天井材において、
補強用の繊維がフイルム層に混合されて補強層が一体に形成されていることを特徴とする車両用成形天井材。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用成形天井材において、
補強用の繊維が、15g/m2〜300g/m2の目付け範囲であることを特徴とする車両用成形天井材。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれかに記載の車両用成形天井材において、
補強用の繊維はケナフ、サイザル、麻、サボテン、竹、木を含む天然植物繊維の少なくとも1種を組み合わせてなることを特徴とする車両用成形天井材。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかに記載の車両用成形天井材において、
補強用の繊維はカーボン、バサルト等の無機質繊維を含むことを特徴とする車両用成形天井材。
【請求項11】
請求項6ないし10のいずれかに記載の車両用成形天井材において、
補強用の繊維の繊維長が10〜100mmで、繊維太さは1.0mm以下であることを特徴とする車両用成形天井材。
【請求項12】
請求項7ないし11のいずれかに記載の車両用成形天井材において、
補強層の厚さが0.1mm〜3mmであることを特徴とする車両用成形天井材。
【請求項13】
ウレタン発泡体からなる芯材層と、該芯材層の両側に接合されたポリプロピレンフイルム層又はポリエチレンフイルム層と、一方側のフイルム層の外側に接合された表皮層と、他方側のフイルム層の外側に必要に応じて積層してなる不織布や紙等の裏面材層とからなり、少なくとも表皮側のフイルム層に多数の貫通孔が形成されている車両用成形天井材の製造方法であって、
少なくとも上記表皮側のフイルム層に多数の貫通孔が形成されているものを用意し、
ウレタン発泡体のシート状芯材の両面に上記フイルム層を重ねたものを150〜250℃に加熱することで、上記フイルム層に流動性を付与してシート状芯材の表面内に浸透させて、両表面が硬化された熱可塑性のシート状芯材を作製し、
その後、成形前に、上記熱可塑性のシート状芯材を150〜250℃に再加熱して成形可能な状態とし、
この加熱されたシート状芯材の一方側に表皮材を重ね、他方側に必要に応じて裏面材を重ねた状態で、成形天井用のコールド金型内にセットして加圧成形することを特徴とする車両用成形天井材の製造方法。
【請求項14】
ウレタン発泡体からなる芯材層と、該芯材層の両側に接合されたポリプロピレンフイルム層又はポリエチレンフイルム層と、一方側のフイルム層の外側に接合された表皮層と、他方側のフイルム層の外側に必要に応じて積層してなる不織布や紙等の裏面材層とからなり、少なくとも表皮側のフイルム層に多数の貫通孔が形成されている車両用成形天井材の製造方法であって、
少なくとも上記表皮側のフイルム層に多数の貫通孔が形成されているものを用意し、
ウレタン発泡体のシート状芯材の両面に上記フイルム層を重ねるとともに、その一方側のフイルム層の外側に表皮材を、また他方側のフイルム層の外側に必要に応じて裏面材をそれぞれ重ねたものを150〜250℃に加熱することで、上記フイルム層に流動性を付与してシート状芯材の表面内に浸透させるとともに表皮層との接着性を付与し、
その後、この加熱されたものを成形天井用のコールド金型内にセットして加圧成形することを特徴とする車両用成形天井材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−198964(P2006−198964A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14620(P2005−14620)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【出願人】(000177461)三和工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】