説明

車両用歩行者検知装置、車両用歩行者保護システム

【課題】歩行者をより確実に追尾することが可能な車両用歩行者検知装置等を提供すること。
【解決手段】車両に搭載される車両用歩行者検知装置であって、車両周辺に放射した電磁波が障害物で反射されて前記車両に帰還した反射波を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した反射波のデータを格納する記憶手段と、前記記憶手段に格納された反射波のデータを参照して前記反射波の強度の分散を算出し、該算出した反射波の強度の分散が基準値以上である場合に前記障害物が歩行者であると判別し、前記障害物が歩行者であると判別した後、同一の障害物を歩行者とみなして該歩行者の位置に関する情報を出力する制御手段と、を備える車両用歩行者検知装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用歩行者検知装置、及び当該車両用歩行者検知装置の出力を利用して歩行者保護装置を作動させる車両用歩行者保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両にレーダー装置を搭載し、その出力を解析して障害物の種類(車両、歩行者等)を検知する技術について研究が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、受信手段で受信される目標物からの反射波の受信強度に関する情報を参照し、目標物からの反射波の受信強度が所定の周期で増減を繰り返している場合に、目標物が人間であると判別する目標物判別装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−361154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置では、所定の周期で増減を繰り返しているか否かを判定するのが困難である。また、歩行者が静止している場合には反射波の受信強度の変動が低下するため、歩行者を見失うおそれがある。
【0006】
本発明の1側面は、歩行者をより確実に追尾することが可能な車両用歩行者検知装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、
車両に搭載される車両用歩行者検知装置であって、
車両周辺に放射した電磁波が障害物で反射されて前記車両に帰還した反射波を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した反射波のデータを格納する記憶手段と、
前記記憶手段に格納された反射波のデータを参照して前記反射波の強度の分散を算出し、該算出した反射波の強度の分散が基準値以上である場合に前記障害物が歩行者であると判別し、前記障害物が歩行者であると判別した後、同一の障害物を歩行者とみなして該歩行者の位置に関する情報を出力する制御手段と、
を備える車両用歩行者検知装置である。
【0008】
この本発明の第1の態様によれば、記憶手段に格納された反射波のデータを参照して反射波の強度の分散を算出し、算出した反射波の強度の分散が基準値以上である場合に障害物が歩行者であると判別し、障害物が歩行者であると判別した後、同一の障害物を歩行者とみなして歩行者の位置に関する情報を出力するため、歩行者をより確実に追尾することができる。
【0009】
上記目的を達成するための本発明の第2の態様は、
車両に搭載される車両用歩行者検知装置であって、
車両周辺に放射した電磁波が障害物で反射されて前記車両に帰還した反射波を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した反射波のデータを格納する記憶手段と、
前記記憶手段に格納された反射波のデータを参照して前記反射波の強度の分散を算出し、該算出した反射波の強度の分散の一定期間における変化が基準値以上である場合に前記障害物が歩行者であると判定し、前記障害物が歩行者であると判別した後、同一の障害物を歩行者とみなして該歩行者の位置に関する情報を出力する制御手段と、
を備える車両用歩行者検知装置である。
【0010】
この本発明の第2の態様によれば、記憶手段に格納された反射波のデータを参照して反射波の強度の分散を算出し、算出した反射波の強度の分散の一定期間における変化が基準値以上である場合に障害物が歩行者であると判定し、障害物が歩行者であると判別した後、同一の障害物を歩行者とみなして歩行者の位置に関する情報を出力するため、歩行者をより確実に追尾することができる。
【0011】
また、本発明の第1又は第2の態様において、
前記制御手段は、前記障害物が歩行者であると判別してから一定時間、同一の障害物を歩行者とみなして該歩行者の位置に関する情報を出力する手段であるものとしてもよい。
【0012】
また、本発明の第1又は第2の態様において、
前記制御手段は、前記反射波の強度が閾値以上である場合に障害物の存在を認識する手段であり、前記障害物が歩行者であると判定した以降、同一の障害物に適用する前記閾値を低下させる手段であるものとしてもよい。
【0013】
また、本発明の第1又は第2の態様において、
前記車両周辺に放射される電磁波は、例えば24GHz帯ナローバンドである、
車両用歩行者検知装置。
【0014】
本発明の第3の態様は、
本発明の第1又は第2の態様の車両用歩行者検知装置と、
前記車両用歩行者検知装置により出力された歩行者の位置に関する情報に基づいて作動する歩行者保護装置と、
を備える車両用歩行者保護システムである。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、歩行者をより確実に追尾し、歩行者保護装置を適切に作動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の1側面によれば、歩行者をより確実に追尾することが可能な車両用歩行者検知装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例に係る車両用歩行者保護システム1のシステム構成例である。
【図2】24GHz帯NBレーダーが電磁波を放射した際に、歩行者が反射した反射波による受信アンテナ26の受信電力の時間的変化を示す図である。
【図3】24GHz帯NBレーダーが電磁波を放射した際に、歩行者が反射した反射波による受信アンテナ26の受信電力の時間的変化を示す図である。
【図4】自車両に徐々に接近する他車両が反射した反射波による受信アンテナ26の受信電力の時間的変化を示す図である。
【図5】第1実施例に係る歩行者判別用ECU30により実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第1実施例に係る歩行者判別用ECU30により実行される処理の流れを示すフローチャートの他の例である。
【図7】第2実施例に係る歩行者判別用ECU30により実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0019】
<第1実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第1実施例に係る車両用歩行者検知装置、及びこれを利用した車両用歩行者保護システムについて説明する。
【0020】
[基本構成]
図1は、本発明の第1実施例に係る車両用歩行者保護システム1のシステム構成例である。車両用歩行者保護システム1は、主要な構成として、車両用歩行者検知装置10と、歩行者保護装置40と、を備える。また、車両用歩行者検知装置10は、レーダー装置20と、歩行者判別用ECU(Electronic Control Unit)30と、を備える。
【0021】
レーダー装置20は、例えば24GHz帯の電磁波をNB(ナローバンド)レーダーである。レーダー装置20は、電磁波を車両前方(又は後方、側方、前側方等)に放射する送信アンテナ22と、送信アンテナに供給する送信信号を生成する信号生成部24と、電磁波が障害物により反射されて帰還する反射波を受信する受信アンテナ26と、を備える。送信アンテナ22は、受信アンテナ26と一体型のものが用いられてもよい。本発明の適用上、レーダー装置20の方式は如何なるものでもよいが、例えばFM−CW方式等が採用される。
【0022】
FM−CW方式とは、周波数が漸次増減する送信信号と受信信号をミキシングすることによりビート信号を発生させ、ビート信号の周波数(ビート周波数)を、送信信号の周波数が増加する上昇部と周波数が減少する下降部の区間毎に特定し、上昇部のビート周波数と下降部のビート周波数に基づいてDBM(Digital Beam Forming)等を適用することにより、測定対象物(障害物)との距離、方位、相対速度を測定する方式である。
【0023】
レーダー装置20は、このように測定される障害物との距離、相対速度、及び受信アンテナ26が受信した反射波の強度を示す受信アンテナ26の受信電力等のデータを歩行者判別用ECU30に出力する。
【0024】
歩行者判別用ECU30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を中心としてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置32がバスを介して相互に接続されたマイクロコンピュータであり、その他、HDD(Hard Disc Drive)やDVD−R(Digital Versatile Disk-Recordable)ドライブ、CD−R(Compact Disc-Recordable)ドライブ、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の補助記憶装置やI/Oポート、タイマー、カウンター等を備える。補助記憶装置には、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
【0025】
歩行者判別用ECU30は、レーダー装置20から入力される障害物との距離、相対速度、受信アンテナ26の受信電力のデータを、例えば時系列データとしてメモリ装置32に格納する。そして、特に受信アンテナ26の受信電力のデータの履歴に基づき、レーダー装置20が検知した障害物が歩行者か否かを判別する。歩行者判別用ECU30は、歩行者であると判別した障害物のうち、受信アンテナ26の受信電力が閾値以上のものについての距離、方位、相対速度のデータを、歩行者保護装置40に出力する。すなわち、受信アンテナ26の受信電力が閾値以上である障害物を、実際に存在する障害物と認識し、認識した障害物のうち歩行者であると判別された障害物のデータを歩行者保護装置40に出力する。歩行者判別の具体的手法については後述する。
【0026】
歩行者保護装置40は、例えば、ボンネット上に展開するエアバッグシステムやボンネットの後部を持ち上げるアクチュエーター、可動バンパー等の歩行者保護デバイス42と、歩行者判別用ECU30から入力された歩行者との距離、方位、相対速度に応じて歩行者保護デバイス42を作動させる制御装置44と、を備える。一例として、制御装置44は、例えば歩行者との距離、及び方位から把握される歩行者の位置が車両を中心とする所定領域以内であり、相対速度が接近方向である場合に歩行者保護デバイス42を作動させる。制御装置44の機能は歩行者判別用ECU30に統合されてもよい。ここで、ボンネットの後部を持ち上げるのは、通常エンジンルーム内の部品等に比して柔らかい材質で構成されるボンネットにより歩行者の頭部に与える衝撃を抑制すると共に、歩行者の頭部が上記エンジンルーム内の部品等に打ち付けられるのを防止するためである。
【0027】
[歩行者判別]
以下、歩行者判別用ECU30による歩行者判別処理について説明する。
【0028】
図2、3は、24GHz帯NBレーダーが電磁波を放射した際に、歩行者が反射した反射波による受信アンテナ26の受信電力の時間的変化を示す図である。図2は、歩行者が車両から10[m]程度の位置で静止している場合の受信アンテナ26の受信電力の時間的変化を示し、図3は、歩行者が歩行しており、車両から徐々に遠ざかっている(例えば0[m]→10[m])場合の受信アンテナ26の受信電力の時間的変化を示す。
【0029】
図2に示すように、歩行者が静止している場合、受信アンテナ26の受信電力はある程度の周期的変化を示すものの、短期間における変動は小さいものとなっている。また、図3に示すように、歩行者が歩行している場合、受信アンテナ26の受信電力は短期間において大きい変動を示す。
【0030】
これに対し、図4は、自車両に徐々に接近する(例えば60[m]→0[m])他車両が反射した反射波による受信アンテナ26の受信電力の時間的変化を示す図である。図示するように、車両による反射波は、静止している歩行者による反射波よりは変動が大きいが、歩行している歩行者による反射波よりは変動が小さいものとなる。
【0031】
すなわち、受信アンテナ26の受信電力の変動は、「歩行している歩行者>移動している車両>静止している車両≧静止している歩行者」という関係を示す。本実施例の歩行者判別用ECU30は、係る関係を利用して障害物が歩行者であるか否かを判別する。
【0032】
なお、NBレーダーとは異なり、UWB(ウルトラワイドバンド)レーダーの場合、歩行者が静止している場合でも、受信アンテナ26の受信電力は短期間において大きい変動を示す。
【0033】
[処理フロー]
図5は、第1実施例に係る歩行者判別用ECU30により実行される処理の流れを示すフローチャートである。本フローは、新たな障害物が認識されたときに開始される。また、本フローは、複数の障害物が認識されている場合、例えば障害物毎に実行される。
【0034】
まず、歩行者判別用ECU30は、対象となる障害物についてのフラグ値*_Pdstが0であるか1であるかを判定する(S100)。フラグ値*_Pdstは、1である場合に、対象となる障害物が過去に歩行者であると判別されたことを示す値である。フラグ値*_Pdstは、例えばメモリ装置32の所定領域に格納される。フラグ値*_Pdstの初期値は0に設定される。
【0035】
フラグ値*_Pdstが0である場合、歩行者判別用ECU30は、過去のnサンプル分の受信アンテナ26の受信電力をメモリ装置32から取得する(S102)。
【0036】
次に、歩行者判別用ECU30は、過去のnサンプル分の受信アンテナ26の受信電力の分散Vを算出する(S104)。
【0037】
次に、歩行者判別用ECU30は、算出した分散Vが基準値V1以上であるか否かを判定する(S106)。基準値V1は、障害物が車両である場合に計測される受信アンテナ26の受信電力の分散の上限値を予め実験等で求めておき、その上限値よりも若干大きい値に設定される。
【0038】
分散Vが基準値V1以上である場合、歩行者判別用ECU30は、対象となる障害物が歩行者であると判別し、フラグ値*_Pdstを0から1に変更する(S108)。
【0039】
S100において対象となる障害物についてのフラグ値*_Pdstが0であると判定された場合、及びS108においてフラグ値*_Pdstが0から1に変更された場合、歩行者判別用ECU30は、前述した障害物を認識するための閾値をRLowに設定する(S110)。閾値Rlowは、静止している歩行者を継続的に認識できる程度の低い値に、予め設定されている。
【0040】
そして、歩行者判別用ECU30は、対象となる障害物についての距離、方位、相対速度のデータを、歩行者保護装置40に出力する(S112)。
【0041】
一方、S106において分散Vが基準値V1未満であると判定された場合、歩行者判別用ECU30は、フラグ値*_Pdstを0に維持し、障害物を認識するための閾値RHighに設定する(S114)。閾値RHighは、閾値Rlowよりも大きい値である。このように、障害物が歩行者でないと判別した場合には、障害物を認識するための閾値を高く維持するため、障害物の誤検出による処理負荷の増大や歩行者保護装置40の誤作動を抑制することができる。
【0042】
なお、障害物が歩行者であると判別された場合にのみ距離、方位、相対速度のデータを歩行者保護装置40に出力するものとして説明したが、いずれの場合にも距離、方位、相対速度のデータをフラグ値*_Pdstと共に歩行者保護装置40に出力する等、制御の具体的態様については種々の変形が可能である。
【0043】
そして、対象となる障害物をロストするまで(受信アンテナ26の受信電力が閾値未満となるまで;以下同じ)、S100〜S114の処理を繰り返し実行する(S116)。
【0044】
また、図5で説明した処理フローは、以下のように変更してもよい。図6は、第1実施例に係る歩行者判別用ECU30により実行される処理の流れを示すフローチャートの他の例である。本フローは、新たな障害物が認識されたときに開始される。また、本フローは、複数の障害物が認識されている場合、例えば障害物毎に実行される。
【0045】
まず、歩行者判別用ECU30は、対象となる障害物についてのフラグ値*_Pdstが0であるか1であるかを判定する(S200)。フラグ値*_Pdstは、1である場合に、対象となる障害物が過去に歩行者であると判別されたことを示す値である。フラグ値*_Pdstは、例えばメモリ装置32の所定領域に格納される。フラグ値*_Pdstの初期値は0に設定される。
【0046】
フラグ値*_Pdstが0である場合、歩行者判別用ECU30は、過去のnサンプル分の受信アンテナ26の受信電力をメモリ装置32から取得する(S202)。
【0047】
次に、歩行者判別用ECU30は、過去のnサンプル分の受信アンテナ26の受信電力の分散Vを算出する(S204)。
【0048】
次に、歩行者判別用ECU30は、算出した分散Vが基準値V1以上であるか否かを判定する(S206)。基準値V1は、障害物が車両である場合に計測される受信アンテナ26の受信電力の分散の上限値を予め実験等で求めておき、その上限値よりも若干大きい値に設定される。
【0049】
分散Vが基準値V1以上である場合、歩行者判別用ECU30は、対象となる障害物が歩行者であると判別し、フラグ値*_Pdstを0から1に変更する(S208)。この際に、フラグ値*_Pdstを変更した時刻Tをメモリ装置32等に格納しておく。
【0050】
S200において対象となる障害物についてのフラグ値*_Pdstが0であると判定された場合、及びS108においてフラグ値*_Pdstが0から1に変更された場合、歩行者判別用ECU30は、前述した障害物を認識するための閾値をRLowに設定する(S210)。閾値Rlowは、静止している歩行者を継続的に認識できる程度の低い値に、予め設定されている。
【0051】
そして、歩行者判別用ECU30は、対象となる障害物についての距離、方位、相対速度のデータを、歩行者保護装置40に出力する(S212)。
【0052】
次に、歩行者判別用ECU30は、現在の時刻を読み込み、S208において格納された時刻Tから一定時間経過したか否かを判定する(S213)。時刻Tから一定時間経過した場合、S214に進む。なお、「一定時間経過したか否か」に代えて「所定距離走行したか否か」判定してもよい。この場合、S208の処理を行ったときに車両の走行距離の計測を開始する。
【0053】
一方、S206において分散Vが基準値V1未満であると判定された場合、歩行者判別用ECU30は、フラグ値*_Pdstを0に維持し(S213で一定時間経過したと判定された場合は1から0に変更し)、障害物を認識するための閾値RHighに設定する(S214)。閾値RHighは、閾値Rlowよりも大きい値である。このように、障害物が歩行者でないと判別した場合には、障害物を認識するための閾値を高く維持するため、障害物の誤検出による処理負荷の増大や歩行者保護装置40の誤作動を抑制することができる。
【0054】
なお、障害物が歩行者であると判別された場合にのみ距離、方位、相対速度のデータを歩行者保護装置40に出力するものとして説明したが、いずれの場合にも距離、方位、相対速度のデータをフラグ値*_Pdstと共に歩行者保護装置40に出力する等、制御の具体的態様については種々の変形が可能である。
【0055】
そして、対象となる障害物をロストするまで、S200〜S214の処理を繰り返し実行する(S216)。
【0056】
以上説明した本実施例の車両用歩行者検知装置10によれば、受信アンテナ26の受信電力の分散Vが基準値V1以上であるか否かにより、障害物が歩行者であると判別した後は、当該障害物をロストするまで(或いは一定時間経過するまで)、当該障害物を歩行者と認識するため、静止状態となった歩行者を継続して追尾することができ、歩行者をより確実に追尾することができる。
【0057】
また、障害物を歩行者として認識した後は、閾値を低下させて障害物の認識を行うため、歩行者と判別された障害物をロストしてしまうという不都合が生じるのを抑制することができる。
【0058】
また、本実施例の車両用歩行者保護システム1によれば、車両用歩行者検知装置10の出力を利用して歩行者を認識するため、歩行者保護装置40を、より適切に作動させることができる。
【0059】
<第2実施例>
以下、図面を参照し、本発明の第2実施例に係る車両用歩行者検知装置、及びこれを利用した車両用歩行者保護システムについて説明する。
【0060】
[基本構成]については、第1実施例と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
[歩行者判別]
第1実施例では、受信アンテナ26の受信電力の分散Vが基準値V1以上である場合に、対象となる障害物が歩行者であると判別するものとしたが、第2実施例では、一定期間における受信アンテナ26の受信電力の分散Vの変化ΔVが基準値V2以上である場合に、対象となる障害物が歩行者であると判別する。
【0062】
[処理フロー]
図7は、第2実施例に係る歩行者判別用ECU30により実行される処理の流れを示すフローチャートである。本フローは、新たな障害物が認識されたときに開始される。また、本フローは、複数の障害物が認識されている場合、例えば障害物毎に実行される。
【0063】
まず、歩行者判別用ECU30は、対象となる障害物についてのフラグ値*_Pdstが0であるか1であるかを判定する(S300)。フラグ値*_Pdstは、1である場合に、対象となる障害物が過去に歩行者であると判別されたことを示す値である。フラグ値*_Pdstは、例えばメモリ装置32の所定領域に格納される。フラグ値*_Pdstの初期値は0に設定される。
【0064】
フラグ値*_Pdstが0である場合、歩行者判別用ECU30は、過去のnサンプル分の受信アンテナ26の受信電力をメモリ装置32から取得する(S302)。
【0065】
次に、歩行者判別用ECU30は、過去のnサンプル分の受信アンテナ26の受信電力の分散Vを算出し(S304)、メモリ装置32に格納する(S305)。
【0066】
次に、歩行者判別用ECU30は、算出した分散Vと、過去に算出されてメモリ装置32に格納された分散Vとの差分ΔVが基準値V2以上であるか否かを判定する(S306)。基準値V2は、障害物が歩行している歩行者である場合に計測される受信アンテナ26の受信電力の分散と、障害物が静止している歩行者である場合に計測される受信アンテナ26の受信電力の分散との平均的な差分を予め実験等で求めておき、その差分よりも若干小さい値に設定される。
【0067】
また、過去に算出された分散Vは、直前に算出された値であってもよいし、数ステップ前に算出された値であってもよい。
【0068】
分散Vの差分ΔVが基準値V2以上である場合、歩行者判別用ECU30は、対象となる障害物が歩行者であると判別し、フラグ値*_Pdstを0から1に変更する(S308)。
【0069】
S300において対象となる障害物についてのフラグ値*_Pdstが0であると判定された場合、及びS308においてフラグ値*_Pdstが0から1に変更された場合、歩行者判別用ECU30は、前述した障害物を認識するための閾値をRLowに設定する(S310)。閾値Rlowは、静止している歩行者を継続的に認識できる程度の低い値に、予め設定されている。
【0070】
そして、歩行者判別用ECU30は、対象となる障害物についての距離、方位、相対速度のデータを、歩行者保護装置40に出力する(S312)。
【0071】
一方、S306において分散Vの差分ΔVが基準値V2未満であると判定された場合、歩行者判別用ECU30は、フラグ値*_Pdstを0に維持し、障害物を認識するための閾値RHighに設定する(S314)。閾値RHighは、閾値Rlowよりも大きい値である。このように、障害物が歩行者でないと判別した場合には、障害物を認識するための閾値を高く維持するため、障害物の誤検出による処理負荷の増大や歩行者保護装置40の誤作動を抑制することができる。
【0072】
なお、障害物が歩行者であると判別された場合にのみ距離、方位、相対速度のデータを歩行者保護装置40に出力するものとして説明したが、いずれの場合にも距離、方位、相対速度のデータをフラグ値*_Pdstと共に歩行者保護装置40に出力する等、制御の具体的態様については種々の変形が可能である。
【0073】
そして、対象となる障害物をロストするまで、S300〜S314の処理を繰り返し実行する(S316)。
【0074】
なお、第2実施例の場合も、第1実施例と同様、障害物が歩行者であると判別した後は、一定時間経過(或いは所定距離走行)するまで当該障害物を歩行者と認識するように処理の内容を変更してもよい(図6を参照)。
【0075】
以上説明した本実施例の車両用歩行者検知装置10によれば、受信アンテナ26の受信電力の分散Vの一定期間における変化が基準値V2以上であるか否かにより、障害物が歩行者であると判別した後は、当該障害物をロストするまで(或いは一定時間経過するまで)、当該障害物を歩行者と認識するため、静止状態となった歩行者を継続して追尾することができ、歩行者をより確実に追尾することができる。
【0076】
また、障害物を歩行者として認識した後は、閾値を低下させて障害物の認識を行うため、歩行者と判別された障害物をロストしてしまうという不都合が生じるのを抑制することができる。
【0077】
また、本実施例の車両用歩行者保護システム1によれば、車両用歩行者検知装置10の出力を利用して歩行者を認識するため、歩行者保護装置40を、より適切に作動させることができる。
【0078】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 車両用歩行者保護システム
10 車両用歩行者検知装置
20 レーダー装置
22 送信アンテナ
24 信号生成部
26 受信アンテナ
30 歩行者判別用ECU
32 メモリ装置
40 歩行者保護装置
42 歩行者保護デバイス
44 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両用歩行者検知装置であって、
車両周辺に放射した電磁波が障害物で反射されて前記車両に帰還した反射波を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した反射波のデータを格納する記憶手段と、
前記記憶手段に格納された反射波のデータを参照して前記反射波の強度の分散を算出し、該算出した反射波の強度の分散が基準値以上である場合に前記障害物が歩行者であると判別し、前記障害物が歩行者であると判別した後、同一の障害物を歩行者とみなして該歩行者の位置に関する情報を出力する制御手段と、
を備える車両用歩行者検知装置。
【請求項2】
車両に搭載される車両用歩行者検知装置であって、
車両周辺に放射した電磁波が障害物で反射されて前記車両に帰還した反射波を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した反射波のデータを格納する記憶手段と、
前記記憶手段に格納された反射波のデータを参照して前記反射波の強度の分散を算出し、該算出した反射波の強度の分散の一定期間における変化が基準値以上である場合に前記障害物が歩行者であると判定し、前記障害物が歩行者であると判別した後、同一の障害物を歩行者とみなして該歩行者の位置に関する情報を出力する制御手段と、
を備える車両用歩行者検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用歩行者検知装置であって、
前記制御手段は、前記障害物が歩行者であると判別してから一定時間、同一の障害物を歩行者とみなして該歩行者の位置に関する情報を出力する手段である、
車両用歩行者検知装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用歩行者検知装置であって、
前記制御手段は、前記反射波の強度が閾値以上である場合に障害物の存在を認識する手段であり、前記障害物が歩行者であると判定した以降、同一の障害物に適用する前記閾値を低下させる手段である、
車両用歩行者検知装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用歩行者検知装置であって、
前記車両周辺に放射される電磁波は、24GHz帯ナローバンドである、
車両用歩行者検知装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用歩行者検知装置と、
前記車両用歩行者検知装置により出力された歩行者の位置に関する情報に基づいて作動する歩行者保護装置と、
を備える車両用歩行者保護システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96915(P2013−96915A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241595(P2011−241595)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】