説明

車両用灯具の点灯制御装置及びその点灯制御システム

【課題】複数の発光素子を有する光源の一部が異常となったとき、車両のユーザーに目に見える形でどの光源が故障したかを認識させることのできる。
【解決手段】車両に用いられるヘッドランプECU1において、光源に異常があるか否かを検知する異常検知手段(S2、S8)と、車両状態に関する情報を取得する車両状態取得手段(S4、S10)とを備え、異常検知手段により、光源が異常と検知された場合は、取得した車両状態に基づいて、光源を制御することによって異常を報知する(S5、S11)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の点灯制御装置及びその点灯制御システムに関し、特に複数の発光素子を光源として用いた灯具の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具、例えばヘッドランプやフォグランプ、テールランプ等に光源としてLED(Light Emitting Diode)を用いたものが知られており、その灯具にはLEDの点灯を制御する点灯制御装置が備えられている。また、このLED光源は、複数のLEDを並べた方式や、複数のLEDチップを並べたマルチチップLED方式が一般的に採用されている。
【0003】
このような複数のLEDまたはマルチチップLEDの一部において、例えば短絡故障や、LEDがあるインピーダンスをもつリーク故障や、LEDの周囲温度(環境)の変化に伴う故障が発生する場合がある。
【0004】
上述のような故障に対し、点灯制御装置において各LED光源のフォワード電圧の変化に伴う異常の有無を判定することで、各LED光源のフォワード電圧の変化に伴う異常の有無を精度良く検出できる方法が知られている。また、異常と判定された場合、点灯制御装置は運転席に設置されたLEDを発光させることで、車両のユーザーに異常が生じたことを知らせるようにしている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−112237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この運転席に設置されたLEDを発光させることで、ユーザーに異常が生じたこと(つまり故障)を知らせる従来の方法には、次のような問題がある。
【0007】
従来の方法はLEDを発光させること以外に何ら開示・示唆されておらず、単なるLEDの発光だけではユーザーが何の装置を対象とした異常警告かわからない。そのためユーザーは、マニュアルやサービスセンターへの問い合わせで警告内容を確認しなければ、異常を正確に認識できないという煩わしさを生じる問題がある。
【0008】
また、光源にマルチチップLEDのような複数のLEDチップを用いた場合、例えば、1つのLEDチップが短絡故障によって不灯になると、当初予定されていた配光が満たされないにも関わらず、灯具全体としては発光しているため、ユーザーが異常に気付かない恐れがある。具体的には車両前方の左右にマルチチップLEDの光源を供えるヘッドランプ装置において、光源のLEDチップの一部が短絡などで故障した(不灯となった)とき、故障していないLEDチップは発光している。そのため左右どちらの光源が故障しているのか、ユーザーは目視では認識しにくく、運転席に設置された異常を知らせるLEDの方が誤作動をしたと勘違いする恐れもある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みたもので、複数の発光素子を有する光源の一部が異常となったとき、車両のユーザーに目に見える形でどの光源が故障したかを認識させることのできる車両用灯具の点灯制御装置及びその点灯制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するために、請求項1の車両用灯具の点灯制御装置は、車両に搭載され、車室外に光を照射する複数の発光素子を有する光源の点灯又は消灯を制御するものであって、光源に異常があるか否かを検知する異常検知手段と、車両状態に関する情報を取得する車両状態取得手段とを備え、異常検知手段により光源に異常があると検知された場合は、取得した車両状態に応じて、異常と検知された光源を制御することによって異常を報知することを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、ヘッドランプや、テールランプ等の様々な種類の灯具の中で、ある灯具の光源に異常があると検知した場合に、その異常のあった灯具の光源を制御する(例えば異常のあった光源を点滅させたり、減光させたりする又は点灯する光源の光の照射方向を変更する)ことで、ユーザーにどの種類の灯具の光源が故障したかを認識させることができる。さらに異常と検知された光源の制御を車両状態に応じて変えることで、ユーザーが目視で故障を気づきやすい状況を細かく設定できるため、より早期にユーザーへ異常を認識させやすくすることが可能となる。
【0012】
また、請求項2の点灯制御装置における車両状態取得手段が取得する車両状態は、走行中又は停車中の状態を含む車両の走行状態であることを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、車両の走行状態、即ち運転に集中しなければならない走行中や、周囲の交通状況や他車両を考慮しなければならない停車中の車両状態に応じて光源の制御方法を変えることで、ユーザーの安全性や車両の周囲状況に配慮しつつ自車両のユーザーが光源の異常を認識しやすい最適な報知をすることができる。
【0014】
また、請求項3の点灯制御装置の制御手段は、車両状態取得手段が取得した車両状態が走行中である場合は、異常を報知するための光源の制御を行わないことを特徴としている。
【0015】
この構成によれば、車両が走行中には、異常を報知するために光源の制御をしないことにより、ユーザーは異常と判定された光源の異常用動作に注意を削がれることなくより安全に走行することができる。
【0016】
また、請求項4の点灯制御装置における車両状態取得手段が取得する車両状態は、ユーザーの乗降車中の状態であることを特徴としている。
【0017】
この構成によれば、乗降車中の車両状態に応じて光源の制御方法を変えることで、自車両のユーザーが光源の光量の頻繁な変化を車両の内外で注視することができ、光源の異常を認識しやすい最適な報知をすることができる。
【0018】
また、請求項5の点灯制御装置の制御手段は、異常検知手段で異常と検知された光源のみ、異常を報知するための光源を制御することを特徴としている。
【0019】
この構成によれば、複数の光源を有する灯具においては、その複数の光源のうち、何れかの光源が異常となった場合に、その異常となった光源のみを制御することで、ユーザーはその灯具の中でどの光源が異常となったのかを目視で認識することができる。
【0020】
また、請求項6の点灯制御装置は、光源の光の照射方向に他車両が存在するか否かを検知する他車両検知手段を備え、制御手段は、他車両検知手段により、他車両が存在しないと検知された場合は、点灯する光源の光の照射方向を制御することを特徴としている。
【0021】
この構成によれば、対向車や先行車等の他車両が存在しない場合に、異常と検知された点灯する光源の光の照射方向を変更する(例えばレベリング又はスイブルする)ことで、よりはっきりと車両のユーザーに異常を認識させることができる。さらに他車両を検知したときは、照射方向の制御によって異常を報知しないため、他車両のユーザーへ直接光源の光を照射して眩しさによる不快感を与えないように配慮することができる。
【0022】
また、請求項7の点灯制御装置の光源はヘッドランプに用いられることを特徴としている。
【0023】
この構成によれば、車両に搭載される灯具の中で、点灯時に最も高い輝度を必要とするヘッドランプに用いることが特に好ましい。つまりヘッドランプは光源の異常が発生したときであっても、光源が眩しすぎてユーザーは故障箇所を目視しにくく、どの光源が異常となっているか気づかない恐れがある。本発明は異常となった光源に対し、点滅や減光等で制御することにより、異常の有無を目視で気づかせることができる。
【0024】
また、請求項8の車両用灯具の点灯制御システムは、車室外に光を照射する複数の発光素子を有する光源と、光源の点灯及び消灯を制御する点灯制御装置と、光源に異常の有無を検知するためのデータを点灯制御装置に送信する異常検知装置とを備えた車両用灯具の点灯制御システムにおいて、車両状態を取得して点灯制御装置に送信する車両状態取得装置をさらに備え、点灯制御装置は、異常検知装置より受信したデータに基づき光源に異常があると検知した場合は、車両状態取得装置より受信した車両状態に応じて、異常と検知された光源を制御することによって異常を報知することを特徴としている。
【0025】
この構成によれば、どの光源に異常があるかを、光源を用いて車両のユーザーに認識させることができるため、車両内に光源の異常を通知する音声装置や表示装置などの装置を別途備える必要がない。従って、光源の異常を通知する装置を別途設ける場合に比べ、コストを低減することができる。また、もし光源の異常を通知する装置を車両内に別途設け、その別途設けた装置が異常を通知した場合でも、そのユーザーは異常のあった光源の異常による報知を直接目視して認識できることで、光源の異常を通知する装置の通知が誤作動ではないことを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態におけるヘッドランプの点灯制御システムの全体図である。
【図2】実施形態に係り、図1の車両左側のヘッドランプ装置11(LEFT)をより詳細に説明した点灯制御システム10のブロック図である。
【図3】本実施形態に係り、図2の光源内のLEDチップを並列に配置した場合の構成例である。
【図4】本発明の実施形態におけるヘッドランプECUの全体の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態に係り、図2のステップS4、ステップS10の詳細な制御処理を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係り、図2のステップS5の詳細な制御処理を示すフローチャートである。
【図7】本実施形態に係り、図2のステップS11の詳細な制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る車両に用いられる灯具の点灯制御装置及びその点灯制御システムの実施形態を、図面に基づき説明する。図1は車室外に光を照射する灯具としてヘッドランプを用いた点灯制御システム10の全体図を示す。以下、各構成要素の接続関係については、ヘッドランプECU(ECU:Electronic Control Unit)1を中心に説明する。尚、本実施形態では灯具としてヘッドランプを用いているが、点灯制御装置及びその点灯制御システムに用いられる灯具は、ヘッドランプに限らず車室外に光を照射する灯具であればよく、テールランプ、フォグランプ、ターンシグナルランプなどにも適用することができる。ところでヘッドランプは車両に搭載される灯具の中で、最も光源の輝度が高い。そのため一部ランプの不点灯があっても、ユーザー(運転者の他、乗員など車両を使用する人)は残りの正常なランプが眩し過ぎて目視では光源の異常(つまり故障)による特に気づきにくい恐れがある。従ってヘッドランプは、本実施形態に特に好適に用いることができる。
【0028】
ヘッドランプECU1は、イグニッションスイッチ(以下、IGSWと称す)20、ヘッドランプスイッチ21、及び車載カメラ22と電気配線を介して通信可能に接続されている。また、ボデーECU23と車速センサー24と、車載ネットワークを介して通信可能に接続されている。さらにヘッドランプECU1は、車両の前部左側に設けられた左側のヘッドランプ装置11(LEFT)と、車両の前部右側に設けられた右側のヘッドランプ装置11(RIGHT)と、後述の種々の電気配線を介して接続されている。またIGSW20がオフの状態でも、ヘッドランプの点灯制御システム10における各装置及び各回路は、バッテリ電源からの電源供給を受けて動作するよう図示しない電源回路が構成されている。尚、IGSW20は本実施形態ではヘッドランプECU1と直接電気配線を介して通信可能に接続しているが、これに限ることは無い。例えばIGSW20は、車載ネットワークと接続されたエンジンECU(非図示)と通信可能に接続され、IGSW20のスイッチの信号は、エンジンECU及び車載ネットワークを介してヘッドランプECU1に送信できるように接続されていてもよい。
【0029】
図2は、図1における車両の左側のヘッドランプ装置11(LEFT)をより詳細に説明した点灯制御システム10のブロック図を示している。尚、本実施形態に係る左側のヘッドランプ装置11(LEFT)と右側のヘッドランプ装置11(RIGHT)の回路及び接続の構成は基本的に同じため、これらの構成説明については、右側のヘッドランプ装置11(RIGHT)を説明から省略し、左側のヘッドランプ装置11(LEFT)を用いて以後説明する。まず、点灯制御システム10の各構成要素及びその接続関係について説明する。また図2では、説明をわかりやすくするために、図1に記載した車載ネットワークの配線を省略している。
【0030】
左側のヘッドランプ装置11(LEFT)には、光源30のマルチチップLED31、32をそれぞれレベリング(上下方向に動かす)及びスイブル(左右方向に動かす)するためのモータ53、54を駆動するドライバ51、52が備えられている。
【0031】
ヘッドランプECU1は、左側のヘッドランプ装置11(LEFT)内のドライバ51、52に電気配線を介して通信可能に接続されており、ドライバ51、52はモータ53、54とそれぞれ電気配線を介して接続されている。またモータ53、54は光源30のマルチチップLED31、32をレベリング又はスイブルすることができるようギアを介して接続されている。
【0032】
ヘッドランプECU1は、スイッチングレギュレータ2と電気配線を介して通信可能に接続されている。さらにスイッチングレギュレータ2は、車載バッテリ電源3とヘッドランプの光源30すなわちマルチチップLED31、32に電気配線を介して接続されている。
【0033】
ヘッドランプECU1は、フォワード電圧(以下、Vfと称する)検出回路5と電気配線を介して接続されている。
【0034】
ヘッドランプECU1は、マルチチップLED31、32それぞれの直近に備えられたフォトセンサー41、42と電気配線を介して通信可能に接続されている。
【0035】
さらに、半導体スイッチ素子4が、光源30と車載バッテリ電源3との配線間に設けられており、ヘッドランプECU1は、そのスイッチ素子のオン又はオフを制御するために電気配線を介して半導体スイッチ素子4と通信可能に接続されている。
【0036】
次に、図1、図2の各装置及び各回路の構成について説明する。
【0037】
IGSW20は、エンジンやモータなどの原動機を始動可能な状態としたり、原動機の動作を切ったりするスイッチであり、IGSW20がオン操作又はオフ操作されたときにそのオン・オフ情報を、ヘッドランプECU1に送信する。
【0038】
ヘッドランプスイッチ21は、車両内の運転席のハンドル付近に設けられたスイッチである。運転者はオン操作することで、ヘッドランプの光源30を点灯させる、又はオフ操作することで光源30を消灯させるための指示信号をヘッドランプECU1に送信する。
【0039】
車載カメラ22は、自車両の前方(ここではヘッドランプの光の照射方向)を撮像できる位置に備えられており、先行車や対向車等の他車両の存在を検知するために、先行車や対向車のライトを撮像する。撮像したアナログデータはカメラ内部の信号変換回路(非図示)でデジタルデータ(以下、画像データと称する)に変換され、この画像データをヘッドランプECU1へ送信する。尚、先行車や対向車を検知する方法はこれに限らず、例えば先行車や対向車の存在を示す情報を、車車間通信の通信装置(非図示)から車載ネットワーク通信線を介して送信するように構成してもよい。また、本実施形態では、車載カメラ22によって先行車や対向車を検知するようにしているが、これに限ることは無い。例えば車載カメラ22の画像処理によって輪郭等から人の存在を検知し、その人に関する画像データをヘッドランプECU1へ送信してもよい。
【0040】
ボデーECU23は、各ドアの開閉、ドアロック、パワーウィンド等を管理しており、手動又はキーレスエントリよりドアの開閉が行われたときに、ドアの開閉情報を、車載ネットワークを介してヘッドランプECU1へ送信する。
【0041】
車速センサー24は、車速情報を得るために備えられており、車輪の回転速度を測定し、その回転に対応するパルス信号を車速情報として、車載ネットワークを介してヘッドランプECU1へ送信する。尚、車速情報を取得する方法はこれに限らず、ミリ波(波長数mmの電波を意味する)を地面に向けて照射し、地面に対する自動車の絶対速度を計測することで取得してもよい。
【0042】
スイッチングレギュレータ2は、マルチチップLED31、32に規定の電流を流す制御をすることができるよう構成されている。またスイッチングレギュレータ2は、ヘッドランプの光源30に流れる電流量を指定する命令信号をヘッドランプECU1より受信すると、ヘッドランプの光源30を点灯させるために、その命令信号に基づき車載バッテリ電源(直流電源)3から電源供給を受けて光源30に規定量の定電流を供給する。またスイッチングレギュレータ2は、光源30を消灯させる命令信号をヘッドランプECU1より受けると、光源30への電流供給を停止するように構成されている。尚、スイッチングレギュレータ2は、通常の駆動では、ヘッドランプスイッチ21のユーザーの操作に従って点灯(又は消灯)の命令信号をヘッドランプECU1より受信すると、マルチチップLED31、32への電流供給を即時開始(又は停止)する。またここで言う即時とは、ユーザーがヘッドランプスイッチ21を操作してから、ユーザーが光源30の点灯又は消灯の反応が遅いと感じない程度の時間を指し、例えば1秒を指す。
【0043】
マルチチップLED31、32は、各パッケージ内に複数個のLEDチップが収納されたものである。実施形態では1つのマルチチップLED内に4個のLEDチップが互いに直列になって収納され、スイッチングレギュレータ2の出力側に互いに直列になって接続されている。この光源30内で用いられるマルチチップLED31、32は、この実施形態に限らず、例えば単一のマルチチップLEDを用いたり、単一または複数のマルチチップLEDの代わりに、シングルチップ(パッケージ内に1個のチップが収納されたもの)LEDを複数個用いたりすることもできる。その他、マルチチップLEDや複数のシングルチップLEDを、後述の図3に示すように並列接続したものを用いることもできる。
【0044】
Vf検出回路5は、マルチチップLED31、32それぞれの両端に並列に接続されており、マルチチップLED31、32それぞれの両端に生じるVf(つまり、4個のLEDチップ合計のフォワード電圧)を検出する。この検出したVfをA/D変換器(非図示)でA/D変換することで、マルチチップLED31、32の両端に生じるVf(Vf1、Vf2)をデジタルデータとして求めている。このマルチチップLED31のフォワード電圧となるVf1と、マルチチップLED32のフォワード電圧となるVf2の電圧データをヘッドランプECU1に送信する。
【0045】
フォトセンサー41、42は、光源30の内部に設けられ、マルチチップLED31、32に備わる4個のLEDチップの総発光量を測定可能な位置(LEDチップ直近)に設けられている。このフォトセンサー41、42は、光源30が点灯している間、そのマルチチップ31、32のそれぞれの発光量を測定し、測定の結果得られたそれぞれの輝度データ(L1、L2)をヘッドランプECU1に送信する。
【0046】
ヘッドランプECU1は、周知の通常のマイクロコンピュータ(以下、マイコンと称す)として構成されており、図示しないが処理内容を記述したプログラムを記憶するメモリであるROM、一時的にデータを保存するメモリであるRAM、電源を供給しなくても記憶を保持する不揮発性メモリ、及びそのROMに記憶されたプログラムを実行するCPUを備えている。さらに図示しないが、車両を制御するECUや各種センサーと車載ネットワークを介して通信を行うための通信I/F(通信インターフェース)及び車載ネットワークを介さずに直接ヘッドランプECU1と通信を行うためのI/O(入出力部)といったインターフェース部や、光源を点滅させる際などに用いられる時間を計測するタイマカウンタを主要とする構成部品を備えている。
【0047】
そのROMには、受信した各種信号を処理するプログラムや、スイッチングレギュレータ2や光源30へ処理命令を行うためのプログラム、また光源30の異常を検知した際に所定の処理命令を実行するためのプログラムなどが保存されている。RAMには、CPUで演算処理された結果や、車速情報や画像情報などのインターフェース部を介して受信した情報などを記憶する機能を備えている。また不揮発性メモリには、各マルチチップLED31、32を車両に取り付けたときのそれぞれの初期Vf電圧データ(初期Vf1、初期Vf2)や、初期輝度データ(初期L1、初期L2)、異常用制御処理の可否情報が記憶されている。この異常用制御処理とは、光源の異常を検知したとき、走行中にその光源の異常を報知するための制御をする処理をいう。この異常用制御処理ついては、車両出荷時点で予めその実行の可否を決めてその可否情報を不揮発性メモリに保存しておいても、又は図示しない入力装置から運転者が実行の可否を入力して、その可否情報を不揮発性メモリに保存しておいてもよい。
【0048】
ヘッドランプECU1は、車載バッテリ3が充電可能状態か否かを知るため、IGSW20よりオン/オフ情報を受信する。
【0049】
ヘッドランプECU1は、ヘッドランプスイッチ21からスイッチオンで光源30を点灯させる、又はスイッチオフで消灯させるための指示信号を受信し、その指示信号に基づき、スイッチングレギュレータ2にヘッドランプの光源を点灯又は消灯させる命令信号を送信する。また、ヘッドランプECU1は、その制御処理中に所定の条件となった場合には、スイッチングレギュレータ2に光源30に流れる電流量を制御するための情報を含んだ命令信号も送信する。
【0050】
ヘッドランプECU1は、車載カメラ22から画像データを受信し、その画像データから、車両のライトのペアを抽出し、対向車や先行車などの他車両の存在を判定する。尚、上述したように、車載カメラ22から受信した画像データを用いて、対向車や先行車だけでなく、輪郭等から歩行者などの人の存在を判定してもよい。
【0051】
ヘッドランプECU1は、ボデーECU23から車両ドアの開閉情報を受信することで、現在の車両ドアの開閉状態(車両状態)を決定する。ここでは車両ドアが開放状態の場合は、車両の運転者が乗降車中であるとみなしているが、本実施形態はこの限りではなく例えばドアがロック解除されたときや、IGSW20がオフされたときに乗降車中とみなしても良い。
【0052】
また、ヘッドランプECU1は、車速センサー24より車速情報を随時受信し、車両が走行中か停車中かの走行状態(車両状態)を判定する。尚、本実施形態では走行中か停車中かを判定するために車速情報を取得しているが、この判定に用いる情報についてはこれに限ることは無い。例えば、ヘッドランプECU1が車載ネットワークを介してブレーキECU(非図示)からシフトレバー(非図示)の入力情報を取得する。そしてシフトレバーがパーキングレンジに入力されている場合は走行中でないと判定しても良い。
【0053】
さらにヘッドランプECU1は、一定の電流が流れて光源30が点灯しているときに、Vf検出回路5から検出されたマルチチップLED31のフォワード電圧Vf1と、マルチチップLED32のフォワード電圧Vf2の電圧データを定期的に受信し、その電圧データ(現在値)とそれぞれの初期Vfデータ(初期値)を比較することで、光源30である各マルチチップLED31、32の異常の有無を検知する異常検知手段として機能している。このフォワード電圧Vfを比較して異常を検知する方法の実現手段については、特許文献1や特開平02−015597等にも記載されているため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0054】
また、本実施形態における光源の異常の有無を検知する方法(異常検知手段)はこれに限ることはない。例えばヘッドランプECU1は、初期輝度データ(初期値)とフォトセンサー41、42から定期的に受信したそれぞれの輝度データ(現在値)とを比較し、その差である「初期輝度−輝度データ(現在値)」の値が所定値(予め測定しておいたLEDチップ1個分の初期輝度)より大きくなったとき(つまりLEDチップ1個分の故障に相当する輝度を失ったとき)に、光源に異常有りとして検知しても良い。
【0055】
その他、ヘッドランプECU1は、半導体スイッチ素子4にそのスイッチ素子のオン及びオフを制御するための信号を送信する。半導体スイッチ素子4は通常時オン(導通状態)が入力されているが、ヘッドランプECU1の制御処理で所定の条件が満たされた場合、光源30を所定のタイミング(例えば2秒周期)で点滅させるための点滅信号を半導体スイッチ素子4に送信する。尚、半導体スイッチ素子として例えば、MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタが挙げられる。
【0056】
また、ヘッドランプECU1は、光源30(マルチチップLED31、32それぞれ)をレベリング(上下方向に動かす)及びスイブル(左右方向に動かす)することが可能なモータを駆動するドライバに駆動信号を送信する。
【0057】
尚、レベリングは通常、乗車するユーザーや積載する荷物等が原因で車体に傾きが生じることによって変化する左及び右側のヘッドランプ装置11の光軸(上下方向)を、マイコン制御によって自動でモータ調整することを行う。また、スイブルは通常、広い範囲を見やすく照らすために、車両が曲がる方向にヘッドランプ装置11の光軸(左右方向)を合わせるよう、マイコン制御によって自動でモータ調整することを行う。
【0058】
ここで、図3に図2の光源30内のマルチチップLED31、32の各LEDチップを並列に配置した場合の構成例を示す。尚、図3において図2の各構成要素と同様の構成及び制御をするものについては、同じ符号を付与し、説明を省略する。
【0059】
図3のように光源30内のマルチチップLED31a、32a内の各LEDチップを並列に配置接続した場合は、各LEDチップの電流値をそれぞれ検出することで、異常を確認するように構成されており、以下に具体的に説明する。
【0060】
ヘッドランプECU1は、電流検出回路6と電気配線を介して接続されている。
【0061】
電流検出回路6は、マルチチップLED31a、32a内の各LEDチップのカソード側に個々に設けられた電流検出素子とそれぞれ接続されている。この電流検出素子はLEDチップの電流値を検出する素子であり、図3ではマルチチップLED31a、32aそれぞれに設けられた4つの電流検出素子をまとめて電流検出素子群61、62と称する。
【0062】
電流検出回路6は、電流検出素子群61、62内のそれぞれの電流検出素子から検出された電流値をA/D変換器(非図示)でA/D変換することで、マルチチップLED31a、32aの各LEDチップの電流値をデジタルデータとして求めている。このマルチチップLED31a、32aの各LEDチップの電流データをヘッドランプECU1に送信する。
【0063】
さらにヘッドランプECU1は、一定の電流が流れて光源30が点灯しているときに、電流検出回路6から電流データを定期的に受信し、その各LEDチップの電流データ(現在値)と、予め不揮発性メモリに記憶しておいた各LEDチップの初期電流データ(初期値)をそれぞれ比較することで、光源30である各マルチチップLED31、32の異常の有無を検知する異常検知手段として機能している。この電流値を比較して異常を検知する方法の実現手段については、特開2006−103477等にも記載されているため、ここでは詳細な説明を省略する。尚、図3の実施形態においても図2と同様に、上述したフォトセンサー41、42を用いることによって光源30の異常を検出してもよい。
【0064】
また、このような光源30内のマルチチップLED31a、32a内の各LEDチップを並列に配置接続した場合は、LEDチップが短絡やリークによる故障したときの他、断線故障したときでも正常なLEDチップを発光させることができる。
【0065】
次に上述したように構成されたヘッドランプの点灯制御システム10において、ヘッドランプスイッチがオン操作された際、ヘッドランプECU1が行う制御処理について、図4〜図7のフォローチャートを参照して説明する。
【0066】
図4は、ヘッドランプECU1における全体の制御処理を示すフローチャートである。
【0067】
まずヘッドランプスイッチ21がユーザーによってオン操作されるとフロー処理を開始する。
【0068】
ステップS1では、まず光源30(マルチチップLED31、32)を通常通り点灯(つまりヘッドランプスイッチ21のオン操作によって即時点灯すること)させる。
【0069】
ステップS2では、上述したようにフォワード電圧(Vf)の比較若しくは各LEDチップに流れる電流値の比較、又は輝度値の比較をすることで、光源30の異常(つまり故障)の有無を検知する。光源30に異常が無い(NO)場合はステップS6に進む。また、異常がある(YES)場合はステップS3に進む。
【0070】
ステップS3では異常があると検知された光源の情報(ここでは左側のヘッドランプ装置11(LEFT)の光源であるマルチチップLED31が異常有りとする情報)を、メモリ(RAM)に記憶する。
【0071】
ステップS4では、車両状態を設定する。この詳細は図5を用いて後述するが、処理によって車両状態を「走行中」、「停車中」、「乗降車中」と設定する。
【0072】
ステップS5では、ステップS4で設定された車両状態に基づき点灯時の光源を制御する。詳細は図6を用いて後述するが、異常と検知された左側のヘッドランプ装置11(LEFT)の光源の点灯方法などを車両状態に応じて変化させている。
【0073】
ステップS6では、光源の異常が無い場合の処理として、ステップS3でメモリに記憶した異常と検知された光源の情報をリセットする。このようにリセットすることで、異常を検知された光源の部品を正常な部品と交換した後でも、後述するステップS8に誤った情報(古い情報)を与えることを防ぐことが出来る。
【0074】
ステップS7では、ヘッドランプスイッチ21がオフ操作をされたか否かを確認する。まだヘッドランプスイッチ21がオフ操作されていない(NO)場合は、ステップS3に戻る。また、ヘッドランプスイッチ21がオフ操作された(YES)場合は、ステップS8に進む。
【0075】
ステップS8では、ステップS3でメモリ(RAM)に記憶した異常と検知された光源の情報を基に、光源30に異常の有無を判定する。光源30に異常と検知された情報が無い(NO)場合はステップS9に進む。また、異常と検知された情報がある(YES)場合はステップS10に進む。
【0076】
ステップS9では、ヘッドランプスイッチ21のオフ操作に基づき、光源を通常通りの方法で消灯(つまりヘッドランプスイッチ21のオフ操作によって即時消灯すること)させ、図4の全体処理を終了する。
【0077】
ステップS10では、ステップS4と同じ処理を行う。詳細は図5を用いて後述する。
【0078】
ステップS11では、詳細は図7を用いて後述するが、ステップS10で設定された車両状態に基づき消灯時の光源を制御する。ステップS10の処理が終了したときは、再度ステップS10に戻り、ヘッドランプスイッチ21がオン操作されるまで、ステップS10及びステップS11の処理を繰り返し実行する。
【0079】
但し、本実施形態はこれに限ることはなく、例えばステップS11の処理後、そのまま図4の全体処理を終了してもよい。
【0080】
次に図5を用いて、図4のステップS4、又はステップS10における車両状態の設定処理について詳述する。
【0081】
ステップS101では、IGSW20がオンされているか否かを確認する。IGSW20がオフ(NO)の場合は、ステップS102に移行し、IGSW20がオンである(YES)の場合は、ステップS105に移行する。尚、このIGSW20による判定処理は、IGSW20の操作により車載バッテリ電源3に発電機(非図示)から充電がされる状態となったか否かを知るために、IGSW20を参照している。従って、例えば外部からの電源供給以外に車載バッテリへの充電機能のない電気自動車などでは、ステップS101〜ステップS104を省略して処理する。
【0082】
ステップS102では、ユーザーが乗降車中(ここでは車両のドアが開閉された時)であるか否かを判定する。ユーザーが乗降車中である(YES)場合は、ステップS103に進み、車両状態を乗降車中(IGSW=オフ)と設定し、図5の処理を終了する。また、人が乗降車する時でない(NO)場合は、ステップS104に進み、車両状態を停車中(IGSW=オフ)と設定し、図5の処理を終了する。
【0083】
また、ステップS101からステップS105に進んだ場合、ステップS105では、ステップ102と同様、乗降車中であるか否かを判定する。つまり、判定の結果、ユーザーが乗降車中である(YES)場合は、ステップS106に進み、車両状態を乗降車中(IGSW=オン)と設定し、図5の処理を終了する。また、人が乗降車する時でない(NO)場合は、ステップS107に進む。
【0084】
ステップS107では、取得した車両の車速情報又はシフトレバーの入力情報に基づき、車両が走行中か否かを判定する。走行中でない(NO)と判定された場合は、ステップS108に進み、車両状態を停車中(IGSW=オン)と設定し、図5の処理を終了する。また、車両が走行中と判定された(YES)場合は、ステップS109に進み、車両状態を走行中と設定し、図5の処理を終了する。
【0085】
上述のように、本実施形態では、車両状態として、走行中、停車中の走行状態に加え、IGSWのオン・オフ状態及びユーザーの乗降車状態を車両状態の設定条件としている。ただし、設定条件はこれに限ることは無く、ユーザーがヘッドランプを目視することのできる環境が変わるようなときを条件に加えれば良い。例えば、図示しない時刻表示装置で当日の日出・日没時刻と、現在時刻の情報を比較して、昼夜か否かの判定を行い、その昼夜の判定情報をヘッドランプECU1が車載ネットワークを介して受信し、車両状態の判定処理の追加条件(例えば交通法規を満たしているかなど)として加えても良い。
【0086】
このように車両状態を複数設けることにより、ユーザーが異常と判定された光源を目視する条件をより詳細に定めることができる。従って光源の制御方法も車両状態に応じて細かく設けることができるため、ユーザーにより早期に目視で異常を認識させ易くできる。
【0087】
次に図6を用いて、上述のステップS4で得られた車両状態に基づき、光源(点灯時)を制御するステップS5の処理について説明する。
【0088】
ステップS201では、車両状態が乗降車中と判定された(YES)場合は、ステップS202に進む。また、車両状態が乗降車中でないと判定された(NO)場合は、ステップS203に進む。
【0089】
ステップS202では、異常と判定された光源30を一定時間点滅させる。一定時間経過後は、通常の点灯制御に戻し、図6の処理を終了する。尚、点滅させる時間を一定時間とする理由は、ユーザーが乗車する時間、降車する時間は何十分もかからず、通常数十秒から数分のためである。従って、このステップS202は乗降車時の制御処理であるため特に何十分も行う必要はなく、本実施形態では点滅する一定時間をIGSW=オンのときは60秒、IGSW=オフのときは30秒としている。このようにオルタネータから車載バッテリ3に充電されない状態であるIGSW=オフのときは、点滅する一定時間をIGSW=オンのときよりも短くすることで、車載バッテリ3の過度の電力消耗を避けることができる。
【0090】
このように、ユーザーは車両から乗降車するときに、ヘッドランプ装置11(LEFT)の光源30が点滅することによって光源30の光量の頻繁な変化を特に車両の外側で注視することができる。そのため、乗降車中のユーザーは、ヘッドランプ装置11に異常が発生したことに気づき、またその異常が車両の左側のヘッドランプ装置11(LEFT)で発生したことを認識することができる。
【0091】
ステップS203では、車両状態が走行中か否かを判定する。車両状態が走行中と判定された(YES)場合は、ステップS204に進む。また、車両状態が走行中でないと判定された(NO)場合は、ステップS206に進む。
【0092】
ステップS204では、ヘッドランプの光源30に異常があった場合に、走行中における異常用の制御をするか否かを上述した異常用制御処理の実行の可否情報から判定する。実行許可が有る(YES)場合は、ステップS205に進み、実行許可が無い(NO)場合は、図6の処理を終了する。
【0093】
ステップS205では、異常と判定された光源の輝度を一定時間変え、通常の点灯制御に戻した後に図6の処理を終了する。具体的には異常と判定されたヘッドランプ装置11(LEFT)の光源30に流れる電流値を通常より低い値(例えば通常時に使用する所定値の半分の値)で流すようヘッドランプECU1からスイッチングレギュレータ2に指示している。
【0094】
従って光源30には減光して通常の半分以下の輝度しか発生しないため、走行中のユーザーは、ヘッドランプ装置11の光源に異常が発生したことに気づき、またその異常が車両の左側のヘッドランプ装置11(LEFT)で発生したことを目視で認識することができる。尚、この減光させる制御を一定時間(例えば30秒)に留める(一定時間後に通常制御に戻す)ことで通常の点灯制御に戻すときにも光量の変化をユーザーに注視させることができ、ユーザーは異常に気づく機会を増やすことができる。また、減光制御から通常の点灯制御に戻すときに即時ではなく、ゆっくりと(例えば10秒ほどかけて)輝度(つまり光源30に流れる電流値)を戻すように制御してもよい。このようにステップS205では、異常と判定された光源に対し、走行中はできる限りユーザーが走行中に前方が見づらくなったり、運転の目障りになったりしないように、点灯時は強制消灯制御や点滅制御など光量を急激に変化させるような制御をせず、光源の光量を通常の点灯からその半減程度までの範囲で変化させたり、光源の光量をゆっくり変化させたりする制御を採用している。
【0095】
また、ステップS204のような判定処理を行うことで、光源30に異常が発生したときでも走行中は通常の点灯制御することができる。すなわち光源30に異常が発生したときでも走行中は通常の点灯制御をすることにより、ユーザーである運転者に、異常時に制御される光源を目視することで生じる運転の目障りを感じさせることを最初から確実に防止することができる。
【0096】
一方ステップS206では、ステップS203で車両状態が走行中でない(すなわち車両状態が停車中)と判定された(NO)後、対向車が来ているか否かを判定する。対向車が存在すると判定した(YES)場合は、ステップS207に進み、対向車が存在しないと判定された場合はS208に進む。尚、ここでは直接車両の光源を見る可能性の高い対向車の有無を判定しているが、これに限らず先行車の有無も判定対象にしてもよい。さらに、判定についてはステップS206では対向車だけでなく、光源の制御によって眩しさを与える恐れのある歩行者など人の存在の有無を判定しても良い。
【0097】
ステップS207では、ステップS205と同様の制御を行う。つまり異常と判定された光源の輝度を一定時間変え、さらに通常の点灯制御に戻した後に図6の処理を終了する。またユーザーが停車する時間は、信号待ちの一時停止、路肩へ一時停止など、状況に応じて数秒から数十時間と様々である。そのため個別の状況に応じて光源の輝度を変える一定時間を定めても良いが、本実施形態ではわかり易く説明するために停車中の光源の輝度を変える一定時間は、IGSW=オンのときは30秒、IGSW=オフのときは10秒としている。
【0098】
このように、車両が停車中のときに、ユーザーはヘッドランプ装置11(LEFT)の光源30の輝度が通常と異なった変化をすることを特に車両内で注視することができる。そのため、停車中のユーザーは、ヘッドランプ装置11に異常が発生したことに気づき、さらにその異常が車両の左側のヘッドランプ装置11(LEFT)で発生したことを認識することができる。
【0099】
ステップS208では、異常と判定された光源30(マルチチップLED31、32)を点灯させながら一定時間レベリングする若しくはスイブルする、又はその両方を併用した後、さらに通常の点灯制御に戻した後に図6の処理を終了する。このように上下左右にヘッドランプ装置11(LEFT)の光源30を振ることで、停車中のユーザーは、ヘッドランプ装置11に異常が発生したことに気づき、さらにその異常が車両の左側のヘッドランプ装置11(LEFT)で発生したことを認識することができる。また、ユーザーは光源30の光の照射方向が大きく変化するために、より迅速に異常に気づくことができる。尚、実施形態では点灯させながらレベリング等を行っているが、これに限らず点滅させながらレベリング等を行っても良い。
【0100】
また、対向車が存在するときに光源30を点灯状態でレベリングやスイブルを行うと、対向車のユーザー(特に運転者)に光源30の光を直接射光してしまう可能性があり、眩しさによって車両前方が見えづらくなるなどの不快感を与えてしまう恐れがある。そのため対向車が存在するときの処理であるステップS207は、輝度を変化させることによって光源30の異常を報知するようにしている。
【0101】
次に図7を用いて、上述のステップS10で得られた車両状態に基づき、光源(消灯時)を制御するステップS11の処理について、図6と同様に説明する。
【0102】
ステップS301では、車両状態が乗降車中と判定された(YES)場合は、ステップS302に進む。また、車両状態が乗降車中でないと判定された(NO)場合は、ステップS303に進む。
【0103】
ステップS302では、異常と判定された光源30を一定時間点滅させ、さらに一定時間経過後は、通常の消灯制御(つまりヘッドランプスイッチ21のオフ操作に対して即時光源を消灯すること)を行い、図7の処理を終了する。尚、点滅させる時間を一定時間に限定する理由は、ユーザーが乗車する時間、降車する時間は何十分もかからず、通常数十秒から数分のためである。従って、このステップS302は乗降車時の制御処理であるため特に何十分も行う必要はなく、本実施形態では点滅する一定時間を、IGSW=オンのときは60秒としている。また、オルタネータから車載バッテリ3に充電されない状態であるIGSW=オフのときは、点滅する一定時間をIGSW=オンのときよりも短い30秒とすることで、車載バッテリ3の過度の電力消耗を避けることができる。
【0104】
このように、ユーザーは車両から乗降車するときに、ヘッドランプ装置11(LEFT)の光源30が点滅することによって光源30の光量の頻繁な変化を特に車両の外側で注視することができる。そのため、乗降車中のユーザーは、ヘッドランプ装置11に異常が発生したことに気づき、またその異常が車両の左側のヘッドランプ装置11(LEFT)で発生したことを認識することができる。
【0105】
ステップS303では、車両状態が走行中と判定された(YES)場合は、ステップS304に進む。また、車両状態が走行中でない(すなわち車両状態が停車中)と判定された(NO)場合は、ステップS307に進む。
【0106】
ステップS304では、ヘッドランプの光源30に異常があった場合に、走行中における異常用の制御をするか否かを上述した異常用制御処理の実行の可否情報から判定する。実行許可が有る(YES)場合は、ステップS305に進み、実行許可が無い(NO)場合は、ステップS306に進む。
【0107】
ステップS305では、異常と判定された光源30を通常よりもゆっくり消灯させた後に図7の処理を終了する。具体的にはヘッドランプECU1は、異常と判定された左側のヘッドランプ装置11(LEFT)の光源30に流れる電流値を、通常の消灯制御(電流の導通を即時遮断する)よりもゆっくり(例えば10秒ほどかけて)電流値が0になるように低下させてから電流の導通を遮断するようスイッチングレギュレータ2に指示している。
【0108】
従って正常な車両の右側のヘッドランプ装置11(RIGHT)の光源が通常に消灯する(即時消灯する)ことと比較して、異常と判定されたヘッドランプ装置(LEFT)の光源30はゆっくり減光しながら消灯するため、走行中のユーザーは、ヘッドランプ装置11に異常が発生したことに気づき、かつその異常が車両の左側のヘッドランプ装置11(LEFT)で発生したことを認識することができる。
【0109】
このようにステップS305では、異常と判定された光源に対し、走行中はできる限りユーザーが走行中に前方が見づらくなったり、運転の目障りになったりしないように、消灯時は点滅制御など光量を急激に変化させるような制御をせず、光源の光量をゆっくり変化させる制御を採用している。
【0110】
また一方、ステップS306に進んだ場合は、光源30を通常通りに消灯した後に図7の処理を終了する。
【0111】
尚、ステップS305、及びステップS306の処理は、光源が点灯している場合に行う処理であり、再度図4のステップS11(すなわち図7の処理)を繰り返し実行する場合は、光源は既に消灯している。従って光源が既に消灯している場合は、ステップS305、及びステップS306の処理はそのまま処理を終了させている。
【0112】
以上、上述したようにステップS304の判定処理を行うことで、光源30に異常が発生したときでも走行中は通常に消灯制御することができる。すなわち光源30が異常と判定されたときでも、走行中は通常の消灯制御をすることにより、ユーザーである運転者に異常時に制御される光源を目視することで生じる運転の目障りを感じさせることを最初から確実に防止することができる。
【0113】
一方ステップS307では、ステップS303で車両状態が走行中でない(すなわち車両状態が停車中)と判定した後、対向車が来ているか否かを判定する。対向車が存在すると判定した(YES)場合は、ステップS308に進み、対向車が存在しないと判定した(NO)場合はS309に進む。尚、判定についてはステップS307では対向車だけでなく、ステップS206と同様に人の存在の有無を判定しても良い。
【0114】
ステップS308では、ステップS305と同様にゆっくり消灯する制御を行う。つまり異常と判定された光源30を通常よりもゆっくり消灯させた後に図7の処理を終了する。尚、ステップS308では、光源が既に消灯している場合は何もしない処理をしても良いが、光源が既に消灯している場合は一旦光源を点灯させてからゆっくり消灯してもよい。またユーザーが停車する時間は、信号待ちの一時停止、路肩へ一時停止など、状況に応じて数秒から数十時間と様々である。そのため個別の状況に応じて消灯する一定時間を定めても良いが、本実施形態ではわかり易く説明するために停車中の消灯する一定時間は、IGSW=オンのときは30秒、IGSW=オフのときは10秒で統一している。
【0115】
このように、車両が停車中のときに、ユーザーはヘッドランプ装置11(LEFT)の光源30がゆっくり消灯することによって光源30の光量が通常と異なる変化をすることを特に車両内で注視することができる。そのため、停車中のユーザーは、ヘッドランプ装置11に異常が発生したことに気づき、さらにその異常が車両の左側のヘッドランプ装置11(LEFT)で発生したことを認識することができる。
【0116】
ステップS309では、異常と判定された光源30を通常で使用する電流値を供給して点灯させながら一定時間レベリングする若しくはスイブルする、又はその両方を併用した後、さらに通常の消灯制御を行った後に図7の処理を終了する。このように上下左右にヘッドランプ装置11(LEFT)の光源30を振ることで、停車中のユーザーは、ヘッドランプ装置11に異常が発生したことに気づき、さらにその異常が車両の左側のヘッドランプ装置11(LEFT)で発生したことを認識することができる。また、ユーザーは光源30の光の照射方向が大きく変化するために、より迅速に異常に気づくことができる。
【0117】
尚、実施形態では点灯させながらレベリング等を行っているが、これに限らず点滅させながらレベリング等を行っても良い。
【0118】
また、対向車が存在するときに光源30を点灯状態でレベリングやスイブルを行うと、対向車のユーザー(特に運転者)に光源30の光を直接射光してしまう可能性があり、眩しさによって車両前方が見えづらくなるなどの不快感を与えてしまう恐れがある。そのため対向車が存在するときの処理であるステップS308は、輝度を変化させることによって光源30の異常を報知するようにしている。
【0119】
上述したように本実施形態は、複数のLEDチップを有するマルチチップLEDを用いたヘッドランプ装置の光源のLEDチップが一部異常と検知されたとき、走行状態や乗降車状態などの車両状態に応じて、通常と異なるように光源の点灯状態や消灯状態を制御する、又は光源の光軸状態を制御する。ユーザーの運転時の視界をサポートするヘッドランプや車両外に注意などを促すテールランプやハザードランプのような車室外に光を照射する車両用灯具においては、故障時には早期修理が特に必要である。本実施形態では灯具が故障した際に、どの灯具が故障したかを車両状態に応じてユーザーに目に見える形ではっきりと認識させることができるため、故障部位の交換・修理を早期に促すことができる。また故障した灯具が例えばヘッドランプ装置であった場合に、左右どちらのヘッドランプの光源が故障したかを認識させることができる。
【0120】
また本実施形態におけるヘッドランプの点灯制御システムは、運転席付近に表示装置や音声装置を設けてどの光源が故障したかを報知する方法も組み合わせることも可能である。ただし別途装置を新たに設けなければならず、コスト的には好ましくない。また、光源の一部に異常が発生した場合は、目視ではその光源の異常を認識しにくいため、ユーザーは例え表示装置や音声装置から報知を受けたとしても、異常が無いとして放置する恐れがある。本実施形態では、異常と判定された光源を制御することで、ユーザーに異常をよりはっきりと認識させることができるため、故障部位の交換・修理を早期に促すことができる。
【0121】
以上、説明してきたように本発明の車両に用いられる灯具の点灯制御装置及び点灯制御システムにおける実施形態を説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り適用できる。
【0122】
例えば、図4の制御処理を用いる「異常報知設定」と、図4の制御処理を用いずにヘッドランプスイッチ21のオン・オフ操作に従って光源を通常通り即時にオン・オフする「通常設定」をユーザーが選択できるような選択スイッチ(非図示)がヘッドランプスイッチ21に組み込まれ、ヘッドランプECU1と電気的に接続されて構成されていてもよい。このように構成することで、異常報知設定によってどの光源が異常かを確認できたユーザーが、その後に通常設定スイッチに切り替えることにより、これ以上余分な通知(つまり同じ異常個所を繰り返し報知されること)を受けずに済むことができる。
【0123】
最後に、上記実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との関係を説明する。
【0124】
上記実施形態におけるヘッドランプの点灯制御システム10が、本発明の車両用灯具の点灯制御システムに相当する。また、上記実施形態におけるヘッドランプECU1が、本発明の車両用灯具の点灯制御装置に相当する。上記実施形態における光源30(マルチチップLED31、32、31a、32a)が、本発明の光源に相当する。上記実施形態におけるLEDチップは、本発明の発光素子に相当する。上記実施形態におけるIGSW20、ボデーECU23と車速センサー24が本発明の車両状態取得装置に相当する。上記実施形態における車載カメラ22は、本発明の他車両検知手段に相当する。上記実施形態におけるフォワード電圧検出回路5、電流検出回路6及び電流検出素子群61、62、フォトセンサー41、42は本発明の異常検出装置に相当する。
【0125】
そして上記実施形態における光源に異常かあるか否かをチェックする機能(ステップS2)が、本発明の異常検知手段に相当する。上記実施形態における車両状態を確認する機能(ステップS4、ステップS10)が、本発明の車両状態取得手段に相当する。上記実施形態における車両状態に基づき光源を制御する機能(ステップS5、ステップS11)が、本発明の制御手段に相当する。
【符号の説明】
【0126】
1 ヘッドランプECU
2 スイッチングレギュレータ
3 車載バッテリ
4 半導体スイッチ素子
5 フォワード電圧(Vf)検出回路
6 電流検出回路
10 ヘッドランプの点灯制御システム
11(LEFT) ヘッドランプ装置(車両の左側に装備)
11(RIGHT) ヘッドランプ装置(車両の右側に装備)
20 イグニッションスイッチ
21 ヘッドランプスイッチ
22 車載カメラ
23 ボデーECU
24 車速センサー
30 光源
31、32、31a、32a マルチチップLED
41、42 フォトセンサー
51、52 ドライバ
53、54 モータ
61、62 電流検出素子群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車室外に光を照射する複数の発光素子を有する光源の、点灯又は消灯を制御する車両用灯具の点灯制御装置において、
前記光源に異常があるか否かを検知する異常検知手段と、
車両状態に関する情報を取得する車両状態取得手段と、
前記異常検知手段により、前記光源に異常があると検知された場合は、前記車両状態取得手段により取得した車両状態に応じて、前記異常と検知された光源を制御することによって異常を報知する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項2】
前記車両状態取得手段が取得する車両状態は、走行中又は停車中の状態を含む車両の走行状態であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記車両状態取得手段が取得した車両状態が走行中である場合は、前記異常を報知するための前記光源の制御を行わないことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項4】
前記車両状態取得手段が取得する車両状態は、乗員の乗降車中の状態であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記異常検知手段で異常と検知された光源のみ、異常を報知するための前記光源を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項6】
前記光源の光の照射方向に他車両が存在するか否かを検知する他車両検知手段を備え、
前記制御手段は、前記他車両検知手段により、前記他車両が存在しないと検知された場合は、前記光源の光の照射方向を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項7】
前記光源はヘッドランプに用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項8】
車室外に光を照射する複数の発光素子を有する光源と、前記光源の点灯及び消灯を制御する請求項1乃至7の何れか一項に記載の点灯制御装置と、前記光源に異常の有無を判定するためのデータを検出して前記点灯制御装置に送信する異常検出装置とを備えた車両用灯具の点灯制御システムにおいて、
車両状態を取得して前記点灯制御装置に送信する車両状態取得装置をさらに備え、
前記点灯制御装置は、前記異常検出装置より受信した前記データに基づき前記光源に異常があると検知した場合は、前記車両状態取得装置より受信した車両状態に応じて、前記異常と検知された光源を制御することによって異常を報知することを特徴とする車両用灯具の点灯制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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