説明

車両用灯具

【課題】 限られた灯具配置スペースを有効に利用してデイタイムランニングランプを含む各種灯具を配置することが可能な車両用灯具を提供する。
【解決手段】 投影レンズを備えた投影型の前照灯と、投影レンズ面の周囲を囲むように設けられた周囲灯室と、周囲発光部と、これらをハウジング内に備えアウターカバーで覆った車両用灯具を形成する。投影レンズには、凸レンズ部に入光部と出光部と反射入光部を備える。入光部と反射入光部を臨む位置に、周囲灯室の光源を設置する。当該光源の発光の一部の光が入光部から投影レンズ内に入射し、出光部から出て出光部側反射面にて反射する。これにより、前照灯周囲の全面から照射するデイタイムランニングランプを含む車両用灯具を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昼間常時点灯を行なうための前照灯とは別の車両用灯具として、いわゆるデイタイムランニングランプと称される灯具が知られている。
【0003】
このようなデイタイムランニングランプを備えた車両用灯具として、メインランプ(ヘッドランプ)とは別のランプ(サブランプ)の一つとして備えたもの(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開2005−88856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら従来のデイタイムランニングランプを備えた車両用灯具は、以下のような問題があった。
【0005】
すなわち、従来の車両用灯具のようにヘッドランプとは離れた位置に個別の灯具としてデイタイムランニングランプを備えようとする場合には、車両における灯具の配置スペースとして与えられた限られた空間に配置することが困難であった。
【0006】
具体的には、将来的にデイタイムランニングランプの装備が義務付けられた場合には、AFS(Adaptive Front-Lighting System)用の可動式灯具を取り付けるスペースを設けること、前照灯を走行用ビームとすれ違い配光用とで分ける4灯式前照灯とすることなどが困難になることが予想される。
【0007】
特に、世界各国に供給される車両において、車両用灯具のハウジングや外観(エクステンションなど)を共通の部品とした場合、必要な灯具に合わせて灯具取り付け箇所を予め設定する必要がある。その結果、デイタイムランニングランプの義務化が進めば上記スペースの問題がさらに顕著になることが予想される。
【0008】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、本発明は、限られた灯具配置スペースを有効に利用してデイタイムランニングランプを含む各種灯具を配置することが可能な車両用灯具を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段とした。
すなわち、本発明の車両用灯具は、投影レンズを備えた投影型の前照灯と、投影レンズ面の周囲を囲むように設けられた周囲灯室とを備えた車両用灯具において、前記投影レンズには、平面を有する入光部と、出光部とを備え、前記周囲灯室には、前記入光部を臨む位置に設けた少なくとも一つの光源と、当該光源の光を反射して、入光部から投影レンズ内に進入して出光部に向かう略平行光線を形成する回転放物面系反射面および出光部側反射面を備えた複合反射鏡とを備える。
【0010】
本発明は、例えばデイタイムランニングランプや車幅灯として機能する灯具を、従来有効に利用できなかった前照灯の周囲に配置し、前照灯の投影レンズ内に当該レンズ側方から入射して他方側方に向かって光を導き、この光も利用して車両前方等の所定方向を照射する。
【0011】
これにより、本発明は、限られた灯具配置スペースを有効に利用してデイタイムランニングランプを含む各種灯具を配置することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【0012】
また、好適には、前記投影レンズには、入光部と出光部の間に反射入光部が設けられ、前記光源は、入光部および反射入光部の両者を臨む位置に配置されている、車両用灯具である。
これにより、本発明は、入光部と出光部の間の位置にも光源からの光を効率よく提供することが可能となり、前照灯周囲をより一層取り囲むようにして照射することができ得る。
【0013】
また、より好適には、さらに前記周囲灯室には、前記回転放物面系反射面を有する光源近傍反射面と、出光側反射面と、両者の間の狭隘部とを備え、出光側反射面には光源を設置していない、車両用灯具を提供することができる。。
これにより、本発明は、従来であれば有効に利用できなかった光を用いて、これまでにない新規な見栄えを効率よく提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両用灯具によれば、限られた灯具配置スペースを有効に利用してデイタイムランニングランプを含む各種灯具を配置することが可能な車両用灯具を提供する、という優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して説明する。
[第一の実施の形態]
図1は、本発明の第一の実施の形態にかかる車両用灯具を正面方向(灯具の照射方向に正対する方向)から見た図である。また、図2は、図1の車両用灯具の横断面図である。
【0016】
本実施の形態にかかる車両用灯具1は、前方が開口したハウジング2内に走行用ビームまたはすれ違い用ビームを形成する前照灯10と、常時発光して他車からの被視認性を確保するデイタイムランニングランプ20と、前照灯10の車両側面側のレンズ面の周囲に設けられる周囲発光部30が組み付けられている。ハウジング2の開口部には透光性のアウターカバー3が開口部周縁にホットメルト接着剤等を介して取り付けられる。アウターカバー3は車両の意匠に適合する形状とされ素通しもしくはその一部にレンズカットを設けている。
【0017】
前照灯10は、本実施の形態ではプロジェクタ型の前照灯を用いている。前照灯10は、例えばHIDやハロゲンバルブあるいはLEDなどの光源11、第一焦点近傍にある光源11の光を第二焦点に反射する楕円系反射面を備えた楕円系反射鏡12、楕円系反射面12からの光を投影する凸レンズからなる投影レンズ13を有する。
【0018】
投影レンズ13は、後述するデイタイミングランプ20の光源21からの光の一部を通過するべく入光部14と、入光部14に入射した光を投影レンズ13の外部に出す出光部15をレンズ側面に備え、周縁のフランジ部17にて前照灯10に固定されている。
入光部14は、凸レンズの一部を前照灯10の光軸とほぼ平行な平面にて切断した平面とする。出光部15は、同様に前照灯10の光軸とほぼ平行な面を備えた円柱面形状としている。これにより後述する光L1を効率よく投影レンズ13から取り出すことができる。また、入光部14と出光部15の間には、前照灯10の光軸とほぼ平行な平面を形成した反射入光部16も形成している。
【0019】
デイタイムランニングランプ20は、前照灯10の投影レンズ13に隣接した位置に灯室を形成し、投影レンズ13を囲むように配置され、光源21、反射鏡22およびインナーレンズ23を有する。光源21は投影レンズ13の入光部14を臨む位置に、例えばHIDやハロゲンバルブあるいはLEDなどの光源を反射鏡22の光源取付け孔に設ける。反射鏡22は、光源21からの光を反射して予め定められた灯具の照射方向(車両の前方)に反射する反射面、投影レンズ13側に反射する反射面などを備えた複合反射鏡として一体に形成される。これにより、光源21からの直射光および反射光を低損失にて投影レンズ13の出光部15側に導くことができる。また、インナーレンズ23には、所定の配光を成すレンズカットを設けて、照射特性を向上させたり視認性を向上させてもよい。
【0020】
光源21が発光すると、その直射光と反射鏡22からの反射光がインナーレンズ23およびアウターカバー3を透過して、予め定められた灯具の照射方向(車両の前方)に照射される。このとき一部の光は、投影レンズ13の入光部14から入って光源21が設けられた位置とは反対側の位置に向かって進む光L1となり、L1光は投影レンズ13を通って出光部15から出て、反射鏡22の出光側反射面24に達し、予め定められた灯具の照射方向(車両の前方)に向かって照射する。
【0021】
また、他の一部の光は、投影レンズ13の反射入光部16に向かって進む光L2となる。光L2の反射入光部16に対する入射角が臨界角近傍もしくはそれ以上になるように設定する。こうすると反射入光部16にて屈折率差に起因して反射された光は、投影レンズ13の光源21が設けられた位置から斜めの方向、すなわち図1における狭隘部25に達し、予め定められた灯具の照射方向(車両の前方)を照射する。
【0022】
また、更に他の一部の光は、光源21近傍の反射面26にて反射され、インナーレンズ23およびアウターカバー3を透過して、予め定められた灯具の照射方向(車両の前方)を照射する。光源近傍反射面26の所定位置には入光部14に向かって反射する反射面として、光源22の位置を焦点位置とした回転放物面系反射面を設けて出光部14側に向かって平行光を形成すると、光源光の利用効率を高めることができ得る。なお、平行光とは図2に示したように凸レンズ13の平面部に平行との意味であり、車両用灯具1の正面方向から観視した場合を説明するものではない。
反射鏡22には、これらの出光側反射面24、狭隘部25および光源近傍反射面26を一体に形成すると良い。
【0023】
周囲発光部30は、デイタイムランニングランプ20の外方で車両側面側から前照灯10の下方側にかけて位置するように設けられている。周囲発光部30は、光源31と、光源31からの光を反射する反射面32aおよび立壁32bを備えた反射鏡32と、反射鏡32を覆い所定の配光を成すレンズカットを設けたインナーレンズ33を有する。
光源21が発光することにより、その直射光と反射面31からの反射光がインナーレンズ33およびアウターカバー3を透過して、予め定められた車幅灯としての配光に適した照射方向に照射される。これにより、周囲発光部30は、車幅灯として機能し、他の車両などからの被視認性を高めることができる。
【0024】
なお、本実施の形態において、前照灯10の周囲にはデイタイムランニングランプ20を配置しているが、この部分を車幅灯、ポジションランプとして用いることも可能である。また、デイタイムランニングランプ10の周囲に周囲発光部30を配置しているが、この部分をデイタイムランニングランプとして用いたり、ターンランプとして用いることも可能である。
【0025】
以上のような構成により、車両用灯具1は、車両における限られた灯具配置スペースにおいて、前照灯とデイタイムランニングランプとを一体で配置することが可能となる。このため、車両用灯具1では、不図示のスペースに例えばAFS用の可変配光を形成できる灯具や、あるいは、前照灯10を走行用ビームまたはすれ違い用ビームのみの灯具として他方の配光用の前照灯を配置して4灯式のヘッドランプとすることも可能となる。
【0026】
[第二の実施の形態]
本発明の第二の実施の形態について説明する。なお、第二の実施の形態については、上述の第一の実施の形態と異なる箇所についてのみ説明する。
【0027】
図3は、第二の実施の形態にかかる車両用灯具40の正面図である。第一の実施の形態の車両用灯具1ではデイタイムランニングランプ20の光源21を入光部14を臨む位置に一箇所のみ延在していたのに対し、第二の実施の形態の車両用灯具2では、入光部14および反射入光部16を臨む位置、すなわち入光部14と反射入光部16の各々の平面の交差部である頂点に対向する位置に光源21aと光源21bの2箇所を設けて形成されている。
【0028】
以上のように構成することにより、車両用灯具40は、第一の実施の形態にかかる車両用灯具1と比較して、デイタイムランニングランプ20の光源21a,21bの光を効率よく反射32全体を行き渡らせることができ、より均一な発光をさせることができ得る。
【0029】
尚、本発明の車両用灯具は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、例えばインナーレンズをなくして反射面のみで所望の配光を成す等、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一の実施の形態にかかる車両用灯具を正面方向(灯具の照射方向に正対する方向)から見た図である。
【図2】図1の車両用灯具の断面図である。
【図3】第二の実施の形態にかかる車両用灯具の正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 車両用灯具
2 ハウジング
3 アウターカバー
10 前照灯
11 光源
12 楕円系反射鏡
13 投影レンズ
14 入光部
15 出光部
16 反射入光部
20 デイタイムランニングランプ
21 光源
22 反射鏡
23 インナーレンズ
24 出光側反射面
25 狭隘部
30 周囲発光部
31 光源
32 反射鏡
33 インナーレンズ
L1,L2 光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズを備えた投影型の前照灯と、投影レンズ面の周囲を囲むように設けられた周囲灯室とを備えた車両用灯具において、
前記投影レンズには、平面を有する入光部と、出光部とを備え、
前記周囲灯室には、前記入光部を臨む位置に設けた少なくとも一つの光源と、当該光源の光を反射して、入光部から投影レンズ内に進入して出光部に向かう略平行光線を形成する回転放物面系反射面および出光部側反射面を備えた複合反射鏡とを備える、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記投影レンズには、入光部と出光部の間に反射入光部が設けられ、
前記光源は、入光部および反射入光部の両者を臨む位置に配置されている、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記周囲灯室には、前記回転放物面系反射面を有する光源近傍反射面と、出光側反射面と、両者の間の狭隘部とを備え、出光側反射面には光源を設置していない、ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記周囲灯室からの発光が、デイタイムランニングランプとして機能する、請求項1から請求項3の何れかに記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−152057(P2009−152057A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328802(P2007−328802)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】