説明

車両用灯具

【課題】 車両用灯具において、法規領域以外の部分に光を照射して、歩行者及び他の車両からの視認性を向上させることを簡単な構成で実現することである。
【解決手段】 自動車Cのサイドターンランプ1のリフレクタ7に、全長に亘って外径が同一な棒形状の光ファイバ8を取り付ける。このとき、光ファイバ8の軸方向の一方側の端面部8aを、自動車Cの前後方向に対して所定角度で斜め後方に形成される第1領域R1に対向させるとともに、光ファイバ8の外周面部を、自動車Cの前後方向に対してドアミラー装置100の前方に形成される第2領域R2に対向させる。光ファイバ8の軸方向の他方側の端面部8bにLED4の光を入射させ、その光を光ファイバ8の一方側の端面部8a及び外周面部から出射して、第1及び第2の領域R1,R2を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具(例えば、自動車のドアミラー装置に取り付けられるサイドターンランプ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両(自動車)では、右左折又は進路の変更をすることを他の交通(車両又は歩行者)に示す必要がある。そして、照射した光が他の交通を妨げないものとして、灯光の色、明るさ等に関し、法規上の基準(定められた範囲において、すべての位置から見通すことができるものであること)が規定されている。
【0003】
例えば、車両の両側面に設けられたサイドターンランプ(方向指示器)にあっては、30mの距離から昼間において点灯を確認できるものであり、かつ、その照射光が他の交通を妨げないものであることとされている。即ち、図10の(a)に示されるように、サイドターンランプ200の中心を通り、車両の進行方向に直交する水平線O1を含む、水平面より上方15度(θ1)の平面及び下方15度(θ1)の平面、及び図10の(b)に示されるように、サイドターンランプ200の中心を含む車両の進行方向に平行な鉛直面O2であって、サイドターンランプ200の中心より後方にあるものよりサイドターンランプ200の外側方向5度(θ2)の平面と、サイドターンランプ200の更に外側方向55度(θ3)の平面とで囲まれる範囲において、すべての位置から見通すことができるものであるとされている。
【0004】
ところで、車両の両側面に設けられたドアミラー装置は路面から程よい高さにあるため、対向車や歩行者などの他の交通からも見易い。この高い視認性の利点に着目して、車両が右左折又は進路の変更をするときに発光する機能を取り付けたドアミラー装置が知られており、本出願人もサイドターンランプの出願を行っている(特許文献1を参照)。
【0005】
上述したように、サイドターンランプは、車両の前後方向に対して斜め後方に形成される法規領域(第1領域R1)に、所定の光量で照射する必要がある。近時、他の交通の視認性の向上及び車両のデザイン性の向上の観点から、サイドターンランプ200の前方部分(法規領域以外の部分で、図10の(b)に示される第2領域R2)を発光させたいという要請が生じている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
特許文献2に開示された技術では、サイドターンランプのハウジングの全体に亘って導光体(光ファイバ)を配し、車両のボディ側に設けられた発光体から照射される光を導光体の端面部に入射させる。これによって導光体の全体から、法規領域(第1領域R1)とそれ以外の前方領域(第2領域R2)に光を照射している。
【0007】
上記した技術では、射出成形で所定の形状に加工(型成形)した導光体を使用している。このため、導光体の汎用性が低く、同一形状の導光体を他の車両に流用することは困難である。また、導光体を所定の形状に加工するために成形型(金型)を必要とし、高価である。更に、第1及び第2の領域R1,R2に対して別々に光を照射しているため、複数個の発光体を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−331610号公報
【特許文献2】特開2008−226755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、車両用灯具において、法規領域以外の部分に光を照射して、他の交通からの視認性を向上させることを簡単な構成で実現することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、
車両のドアミラー装置に取り付けられる車両用灯具であって、
長手方向に湾曲し、前記ドアミラー装置の装置本体部に設けられた灯具取付部に装着されるベース部材と、
光を透過可能な材質よりなり、前記ベース部材を覆うレンズ部と、
全長に亘って外径が一定の棒形状で、前記ベース部材と前記レンズ部との間の空間部に配置され、その軸方向の一方側の端面部を車両の前後方向に対して所定角度で斜め後方に形成される第1領域に対向させるとともに、その外周面部を車両の前後方向に対して前記ドアミラー装置の前方に形成される第2領域に対向させる導光体と、
前記導光体における軸方向の他方側の端面部と対向配置され、前記導光体に光を入射させる発光体と、を備え、
前記発光体から入射した光を軸方向の一方側の端面部から出射させて前記第1領域を照射するとともに、その光を外周面部から出射させて前記第2領域を照射することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両用灯具は上記した構成であり、発光体から導光体の他方側の端面部に入射した光が、導光体の一方側の端面部から出射して、車両の前後方向に対して所定角度で斜め後方に形成される第1領域(法規領域)を照射すると同時に、その光が導光体の外周面部から出射して、ドアミラー装置の前方に形成される第2領域を照射する。導光体は、全長に亘って外径が一定の棒形状である。このため、市販されている導光体(例えば、少なくとも外周面部が発光する光ファイバ)を使用することができ、その入手が容易である。従来技術のように、複雑形状の導光体を、専用の成形型で製作する必要はない。そして、その導光体を所定長さに切断し、ベース部材の長手方向に沿って取り付けるだけで済むため、その構成が簡単なものになる。また、導光体を所定長さに切断するだけで済むため、灯具の大きさに関係なく、各種の車両に対して使用できる。上記した結果、簡単な構成で車両用灯具の視認性を向上させることができる。
【0012】
しかも、本発明の車両用灯具の場合、1つの導光体から第1及び第2の領域に光が照射されるため、発光体が1つで済み、その構成を更に簡単なものとすることができる。
【0013】
前記導光体における前記第1領域と対向する側の端面部には、前記導光体から前記第1領域に出射する光を制御するための光制御部を設けてもよい。この光制御部は、導光体の端面部を直接的に加工した四角錐形状のレンズカット部や、円形窪み形状のディンプル部とすることができる。また、導光体の端面部に、別体の光制御部(例えば、半球状のレンズ体)を取り付けてもよい。これらにより、導光体から第1領域に照射される光の光量を増大させたり、その方向を調整したりすることができる。
【0014】
前記導光体は、光を透過可能な材質よりなり、軸心部分を構成するコアと、
光を透過可能で前記コアより屈折率が小さい材質よりなり、前記コアの外周面を覆うように配置され、光を散乱させる散乱材が添加されたクラッドと、を備える光ファイバであり、
軸方向の一端部に入射した光のうち、前記コアと前記クラッドとの境界面で全反射して軸方向の他端部から出射した光が前記第1領域を照射し、前記コアと前記クラッドとの境界面で屈折して前記クラッドに入射し、前記散乱材に当たって側面部から出射した光が前記第2領域を照射する。
【0015】
また、前記導光体は、光を透過可能な材質よりなり、外周面が粗面とされた軸部と、前記軸部の外周面にコーティングされたフッ素を含む被覆部と、を備え、
軸方向の一端部に照射された光のうち、前記軸部と前記被覆部との境界面で全反射して軸方向の他端部から出射した光が前記第1領域を照射し、前記粗面とされた軸部で乱反射して前記被覆部に進入し、その外周面部から出射した光が前記第2領域を照射する。
【0016】
導光体が「側面発光型」と称される光ファイバの場合、発光体から入射された光が端面部から出射されるとともに、側面部(外周面部)からも出射される。この種の光ファイバは、容易に入手できる。
【0017】
そして、導光体の外周面部が粗面となっている場合、導光体の外周面部にコーティングを施して、外周面部を平滑面とすることが望ましい。これにより、車両用灯具の非作動時(発光体の消灯時)における見栄えが良好となり、車両用灯具の装飾性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】自動車Cの斜視図である。
【図2】ミラー本体部102の正面図である。
【図3】第1実施例のサイドターンランプ1をミラー本体部102のハウジング2に取り付ける状態を示す図である。
【図4】サイドターンランプ1の分解斜視図である。
【図5】同じく断面図である。
【図6】光ファイバ8の断面図である。
【図7】別実施例の光ファイバ31の断面図である。
【図8】図5のX方向矢視図である。
【図9】第2実施例のサイドターンランプ41の断面図である。
【図10】(a)は自動車Cの正面図、(b)は同じく平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本明細書では、主として自動車CのドアDに装着される車両用のドアミラー装置100及びドアミラー装置100に取り付けられるサイドターンランプ1(車両用灯具)について例示しているが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0020】
本発明において、図1は自動車Cの斜視図、図2はミラー本体部102の正面図、図3は第1実施例のサイドターンランプ1をミラー本体部102のハウジング2に取り付ける状態を示す図、図4はサイドターンランプ1の分解斜視図、図5は同じく断面図である。
【実施例1】
【0021】
図1ないし図3に示されるように、車両用のドアミラー装置100は、自動車Cの両側に設けられたドアDにそれぞれ装着されている。ドアミラー装置100は、ドアDに取り付けられるミラーベース部101と、そのミラーベース部101に支持されるミラー本体部102とを備えている。ミラー本体部102は、自動車Cの後方に向けて取り付けられ、運転者又は搭乗者が後方を確認するためのミラー(図示せず)と、このミラーを保持するミラーホルダ(図示せず)と、ミラーの角度調整を行なうアクチュエータ(図示せず)と、方向指示器などの役割を担うサイドターンランプ1(車両用灯具の一例である。)と、それらの収納及び保護を図るハウジング2(装置本体部)と、アクチュエータの取り付けられるフレームの役目を果たすものであって、これらミラー、アクチュエータ、及びサイドターンランプ1をハウジング2に連結する役目を担う取付け基盤(図示せず)と、その取付け基盤の一方の端部に取り付けられて、ミラー本体部102を、ミラーベース部101に対する使用状態と格納状態との間の位置で回転駆動させる電動格納装置103とを含み構成される。なお、ハウジング2は、その全体がベッセル形状(すり鉢状の容器形状)を呈するものであり、例えばプラスチック材にて一体的に成形することができ、予め定められた場所に窓部3(灯具取付部)が形成されている。この窓部3に対応してサイドターンランプ1が外部に露出するように装着され、この状態でサイドターンランプ1の発光体(後述)が点滅、点灯等することにより方向指示器等として機能し、他の交通に右左折又は進路変更などを示すこととなる。
【0022】
本発明の第1実施例のサイドターンランプ1について説明する。図4及び図5に示されるように、サイドターンランプ1は、1個のLED4(発光体)が取り付けられた基板5と、その基板5を取り付けて保持するベース部材6と、ベース部材6に取り付けられた基板5を覆う形で該基板5を収納するリフレクタ7と、リフレクタ7に収容される光ファイバ8(導光体)と、リフレクタ7を覆うレンズ部9とを備えている。
【0023】
図4に示されるように、基板5の表側の面にはLED4が取り付けられている。基板5は、例えばポリイミド、ポリエステルなどをベースフィルムとした屈曲性に優れた銅張板よりなる。また、LED4は表面実装型LEDである。基板5の後端部から、LED4に電源を供給する2本のリード線11が延設されている。2本のリード線11は、コネクタ12に挿通されている。そして、基板5の裏側の面で、LED4と対応する部分にはバックプレート13が固着されている。
【0024】
次に、ベース部材6について説明する。図4及び図5に示されるように、ベース部材6はABS樹脂やASA樹脂等の熱可塑性樹脂で形成され、ドアミラー装置100を構成するハウジング2(図2参照)の形状に倣って、長手方向に湾曲した形状をなす。そして、ベース部材6のほぼ全領域に亘って基板5を収納する収納凹部14が形成されている。収納凹部14には、基板5のバックプレート13を取り付けるための取付部15が、収納凹部14の底面部から隆起する形で設けられている。この取付部15に、基板5のバックプレート13が差し込まれる。これにより、基板5が、ベース部材6に対してずれないように保持される。
【0025】
ベース部材6における収納凹部14の後端部には、基板5のリード線11を通し、コネクタ16を取り付けるための貫通孔16が設けられている。また、ベース部材6における収納凹部14の内壁面部には、リフレクタ7の係止爪17(後述)を係止する係止孔18が設けられている。更に、ベース部材6の外壁面部には、ベース部材6をハウジング2にねじ固定するねじ(図示せず)を通すための通し孔が設けられたブラケット19,21が設けられている。
【0026】
次に、リフレクタ7について説明する。リフレクタ7は、金属、樹脂、セラミック等よりなる。そして、サイドターンランプ1の装飾性を考慮して、例えば蒸着、光沢塗装又はメッキ等を施した樹脂材料や、鏡面仕上げを施したアルミニウム等の金属材料とすることができる。図4及び図5に示されるように、リフレクタ7は、ベース部材6の湾曲状態に対応して長手方向に湾曲されている。リフレクタ7の両外壁面部には、弾性変形可能な係止爪17が設けられている。リフレクタ7は、係止爪17が、対応するベース部材6の係止孔18に係止されることにより固定される。リフレクタ7において、基板5のLED4と対応する位置、及び光ファイバ8の一方側の端面部7aと対応する位置には、それらを外部(第1領域R1)に露出させるための開口部22,23が設けられている。また、リフレクタ7の表面部で、前述した第2領域R2に対応する部分には、棒状の光ファイバ8を取り付けるための凹部24が設けられている。
【0027】
リフレクタ7は、基板5が取り付けられたベース部材6の収納凹部14を覆うようにして取り付けられる。そして、ベース部材6の収納凹部14の内壁面部に当接して弾性変形したリフレクタ7の係止爪17が、対応するベース部材6の係止孔18に入って弾性復元する。これにより、リフレクタ7の抜止めが図られる。
【0028】
次に、レンズ部9について説明する。図4及び図5に示されるように、リフレクタ7にレンズ部9が取り付けられる。レンズ部9は、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂等の透明又は半透明の熱可塑性樹脂で形成され、ドアミラー装置100のハウジング2の形状に倣って湾曲した形状をなす。レンズ部9の裏面側で、光ファイバ8の一方側の端面部8aと対向する部分には、多数の鋸刃状の突条を有するレンズカット部25が設けられている。LED4から照射された光は、レンズ部9のレンズカット部25で屈折し、クリアな光となって第1領域R1に照射される。レンズ部9により、リフレクタ7の開口部22,23が覆われ、露出状態のLED4が保護されるとともに、サイドターンランプ1の装飾性が向上する。
【0029】
次に、第1実施例のサイドターンランプ1に使用される光ファイバ8について説明する。図4及び図5に示されるように、この光ファイバ8は、全長に亘って一定の外径(6〜10mm)を有する棒形状で、光を透過可能な材質(例えば、アクリル、ポリカーボネート等の樹脂材)よりなる。この光ファイバ8は、軸方向に可撓性を有する。光ファイバ8は、ハウジング2の湾曲形状に倣って湾曲してリフレクタ7に取り付けられるとともに、取付け状態でリフレクタ7の凹部24の底面部からほぼ等距離だけ離れて配置される。このとき、光ファイバ8の軸方向の両端面部8a,8bがリフレクタの開口部23,24に挿入されて保持される。光ファイバ8の一方側の端面部7a(リフレクタ7の開口部23に挿入される側の端面部)は軸方向に対してほぼ直角に切断されている。また、光ファイバ8の他方側の端面部8b(リフレクタ7の開口部22に挿入される側の端面部)は、リフレクタ7に取り付けられた状態でLED4と対向配置されるように斜めに切断されている。
【0030】
図6に示されるように、光ファイバ8は透明なアクリル樹脂材よりなり、軸心部分を構成するコア26と、その周囲に配置されるクラッド27とを備えている。クラッド27における光の屈折率は、コア26における光の屈折率よりも僅かに小さい。しかも、クラッド27には、入射した光を散乱させるための散乱材28が添加されている。この散乱材28として、例えば酸化アルミニウムや二酸化ケイ素等の金属酸化物粒子、ガラス微粉末等の無機化合物粒子が挙げられる。また、散乱材28の外径は、10〜100μmであることが望ましい。
【0031】
クラッド27に散乱材28を添加したときの作用について説明する。コア26の屈折率がクラッド27の屈折率よりも大きいので、光ファイバ8の他方側の端面部8bに入射角α1で入射し(一点鎖線で示す光L1a)、コア26とクラッド27との境界面で屈折した光(屈折光L1b)の屈折角β1は、入射角α1よりも大きくなる(α1<β1)。このときの屈折角β1が90度よりも小さい場合、屈折光L1bはクラッド27に進入する。そして、クラッド27内に存する散乱材28に衝突して乱反射し、出射光L1cとなって光ファイバ8の外周面部から出射する。これにより、光ファイバ8の外周面部から、第2領域R2に向かう光が照射される。
【0032】
入射光L2a(二点鎖線で示す。)の入射角α2が臨界角であれば、屈折光L2bの屈折角は90度となり、屈折光L2bは光ファイバ8の軸方向に沿って進む。また、入射光L3a(実線で示す。)の入射角α3が臨界角(α2)より大きければ、その屈折光L3bは、コア26とクラッド27との境界面で反射する(全反射)。そして、全反射を繰り返しながら光ファイバ8のコア26内を進み、一方側の端面部8aから出射する。これにより、光ファイバ8の端面部から、第1領域R1に向かう光が照射される。
【0033】
第1実施例のサイドターンランプ1の作用について説明する。図5及び図6に示されるように、車両の運転者がサイドターンランプ1のスイッチ(図示せず)を操作すると、LED4が発光する。LED4から照射された光は、光ファイバ8の他方側の端面部8b(LED4と対向する端面部)に入射する。この光のうち、臨界角(α2)よりも大きい角度(α3)で入射した光(L3a)は、コア26とクラッド27との境界面で全反射しながらコア26内を進み、光ファイバ8の一方側の端面部8aから出射する。これにより、第1領域R1(法規領域)に光H1が照射される。また、臨界角(α2)よりも小さい角度(α1)で入射した光(L1a)は、コア26とクラッド27との境界面で屈折し、クラッド27内に進入し、散乱材28によって乱反射して光ファイバ8の外周面部から出射する。
【0034】
光ファイバ8の外周面部から第2領域R2に向かって出射した光、及び光ファイバ8の外周面部からリフレクタ7の側に向かって出射し、リフレクタ7で反射した光は、光H2となって第2領域R2を照射する。これにより、他の交通からの視認性が良好になる。
【0035】
上記したように、本実施例のサイドターンランプ1では、1つの発光体(LED4)から照射され、1本の光ファイバ8を介して照射された光H1,H2により、法規領域である車両の斜め後方領域R1と、ドアミラー装置100の前方である第2領域R2が照射される。
【0036】
本実施例のサイドターンランプ1において、光ファイバ8は単純な棒形状である。このため、従来技術のように複雑形状の光ファイバを使用しなくても済むとともに、リフレクタ7に対する光ファイバ8の取付け位置を調整することも容易である。これにより、光ファイバ8から照射される光H1,H2の照射方向を容易に調整することができる。また、発光体(LED4)も1つで済む。この結果、サイドターンランプ1の構成が簡単なものになる。
【0037】
次に、別実施例の光ファイバ31について説明する。上記した光ファイバ8は、クラッド27に添加された散乱材28により、その外周面部から光を出射する形態である。これに対して、図7に示される光ファイバ31は、光を透過可能な棒状の樹脂材(例えば、アクリル樹脂)の軸部32(コア)の外周面部を粗面とし、凹凸部33を設け、更に凹凸部33の外周面を、例えばフッ素を含む被覆部34(クラッド)でコーティングしたものである。フッ素には、屈折率を低下させる働きがある。
【0038】
光ファイバ31の他方側の端面部31bから、臨界角より大きな角度で入射した光Laは、軸部32と被覆部34との境界面で全反射を繰り返しながら光ファイバ8の軸部32内を進み、一方側の端面部31aから出射する。また、臨界角より小さな角度で入射した光Lbは、凹凸部33で乱反射することにより、光Lcとなって外周面部から出射する。軸部32の外周面部を粗面とするためには、軸部32の外周面部に表面処理(例えば、ショットブラスト)、凹凸面の転写、切削等を施す。
【0039】
軸部32の外周面部(凹凸部33)をコーティングして、その外周面部を平滑面とすることにより、凹凸部33が目立たなくなり、光ファイバ31の見栄えが良好になるという効果が奏される。
【0040】
そして、図8に示されるように、光ファイバ8における一方側の端面部8a(第1領域R1に対向する端面部)に凹凸部(光制御部)を設け、光ファイバ8における一方側の端面部8aから第1領域R1に向かって出射する光H1を乱反射させてもよい。この凹凸部は、図8の(a)に示されるように多数の四角錐形状のレンズカット部35としたり、図8の(b)に示されるように多数の円形窪み形状のディンプル部36とすることができる。これらにより、第1領域R1を照射する光H1の光量を増大することができる。
【実施例2】
【0041】
また、図9に示される第2実施例のサイドターンランプ37のように、光ファイバ8における両端面部8a,8bに光学部材38(光制御部)を取り付けてもよい。この光学部材38は透明な樹脂材(例えば、アクリル樹脂)よりなり、一方側が閉塞された筒状である。そして、閉塞された側の端面部に半球状のレンズ体39が突出している。LED4から照射された光は、光学部材38のレンズ体39によって集光されて光ファイバ8内に進入し、再び光学部材38のレンズ体39によって集光されて光ファイバ8の端面部8aから出射し、第1領域R1を照射する。光学部材38のレンズ体39の形状、向きを調整することにより、第1領域R1を照射する光H1の光量や方向を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る車両用灯具は、自動車のサイドターンランプとして使用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1,37 サイドターンランプ(車両用灯具)
2 ハウジング(装置本体部)
3 窓部(灯具取付部)
4 LED(発光体)
5 ベース部材
8,31 光ファイバ(導光体)
8a,8b 端面部
9 レンズ部
26 コア
27 クラッド
28 散乱材
32 軸部
33 凹凸部(粗面)
34 被覆部
35 レンズカット部(光制御部)
36 ディンプル部(光制御部)
38 光学部材(光制御部)
100 ドアミラー装置
C 自動車(車両)
H1,H2 光
R1 第1領域
R2 第2領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアミラー装置に取り付けられる車両用灯具であって、
長手方向に湾曲し、前記ドアミラー装置の装置本体部に設けられた灯具取付部に装着されるベース部材と、
光を透過可能な材質よりなり、前記ベース部材を覆うレンズ部と、
全長に亘って外径が一定の棒形状で、前記ベース部材と前記レンズ部との間の空間部に配置され、その軸方向の一方側の端面部を車両の前後方向に対して所定角度で斜め後方に形成される第1領域に対向させるとともに、その外周面部を車両の前後方向に対して前記ドアミラー装置の前方に形成される第2領域に対向させる導光体と、
前記導光体における軸方向の他方側の端面部と対向配置され、前記導光体に光を入射させる発光体と、を備え、
前記発光体から入射した光を軸方向の一方側の端面部から出射させて前記第1領域を照射するとともに、その光を外周面部から出射させて前記第2領域を照射することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記導光体における前記第1領域と対向する側の端面部には、前記導光体から前記第1領域に出射する光を制御するための光制御部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記導光体は、光を透過可能な材質よりなり、軸心部分を構成するコアと、
光を透過可能で前記コアより屈折率が小さい材質よりなり、前記コアの外周面を覆うように配置され、光を散乱させる散乱材が添加されたクラッドと、を備える光ファイバであり、
軸方向の一端部に入射した光のうち、前記コアと前記クラッドとの境界面で全反射して軸方向の他端部から出射した光が前記第1領域を照射し、前記コアと前記クラッドとの境界面で屈折して前記クラッドに入射し、前記散乱材に当たって側面部から出射した光が前記第2領域を照射することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記導光体は、光を透過可能な材質よりなり、外周面が粗面とされた軸部と、前記軸部の外周面にコーティングされたフッ素を含む被覆部と、を備え、
軸方向の一端部に照射された光のうち、前記軸部と前記被覆部との境界面で全反射して軸方向の他端部から出射した光が前記第1領域を照射し、前記粗面とされた軸部で乱反射して前記被覆部に進入し、その外周面部から出射した光が前記第2領域を照射することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−44396(P2011−44396A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193312(P2009−193312)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000105925)サカエ理研工業株式会社 (110)
【Fターム(参考)】