説明

車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造

【課題】 部品点数の削減により、コストの低減化と、組み付け作業性の向上が可能な車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造の提供。
【解決手段】 アッパセンタ11a側とラジエータ3の上端縁部側からそれぞれフランジ7a、5aを突出させ、ラジエータ3側のフランジ5aの方が上になるように両フランジ7a、5aの先端部が所定長さ互いに非接触状態で上下方向に重なるように配置され、フランジ7aがアッパセンタ11aの樹脂モールド部7から車両後方へ向けて延長する状態に一体に形成され、フランジ5aがモータファンシュラウド5におけるラジエータ3側の開口上縁部をラジエータ3の上面を超えて車両前方へ延長する状態で一体に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用熱交換器(コンデンサ、ラジエータ等)を通過した空気は、熱交換器の外周と電動ファンの外周との間の隙間を塞ぐファンシュラウドの車両後方側開口部を経由してエンジンルーム内に流れ込み、その後、アンダーカバー等の穴から排気される。ところが、アイドリング中や、極低速走行中には、熱交換器を通過して熱交換された熱気が、車体パネル(ラジエータコアサポート等)と熱交換器との隙間等から流出し、再び熱交換器に導かれる、いわゆる吹き返しと呼ばれる現象が発生することがあり、この吹き返しが多く発生した場合、熱交換器は吹き返し熱気で熱交換することとなるため、冷却性能が低下し、熱交換器の性能を十分に利用できなくなる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そこで、従来では、熱交換器で熱交換された熱気がエンジンルームから車両前方へ流出することを防ぐために、熱交換器と車体パネル(ラジエータコアサポート等)との間をウレタンシール等で塞ぐようにしていた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−104235号公報 (明細書 頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ウレタンシールは結構高価であり、コストアップを招くと共に、部品点数の増加により組み付け作業工程が増加して作業性を悪くするという問題点があった。
【0006】
本発明の解決しようとする課題は、部品点数の削減により、コストの低減化と、組み付け作業性の向上が可能な車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造は、熱交換器が組み付けられるラジエータコアサポートにおけるラジエータコアサポートアッパ側と前記熱交換器の上端縁部側からそれぞれフランジを突出させ、前記熱交換器側のフランジの方が上になるように両フランジの先端部が所定長さ互いに非接触状態で上下方向に重なるように配置されていることを特徴とする手段とした。
【0008】
請求項2記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造は、請求項1に記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造において、前記ラジエータコアサポートアッパが金属製角パイプの少なくとも一部外周に樹脂がモールドされた構成とされ、前記ラジエータコアサポートアッパ側のフランジが前記樹脂と一体に形成されていることを特徴とする手段とした。
【0009】
請求項3記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造は、請求項1または2に記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造において、前記熱交換器の車両後方には該熱交換器の外周と電動ファンの外周との間の隙間を塞ぐファンシュラウドが組み付けられ、前記熱交換器側のフランジが前記ファンシュラウドと一体に樹脂で構成されていることを特徴とする手段とした。
【0010】
請求項4記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造は、請求項1または2に記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造において、前記熱交換器はその上下両側縁部にタンクが備えられ、前記熱交換器側のフランジが前記タンクと一体に樹脂で構成されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造では、上述のように、熱交換器が組み付けられるラジエータコアサポートにおけるラジエータコアサポートアッパ側と前記熱交換器の上端縁部側からそれぞれフランジを突出させ、熱交換器側のフランジの方が上になるように両フランジの先端部が所定長さ互いに非接触状態で上下方向に重なるように配置されている構成としたことにより、熱交換器上方からの吹き返しを抑制することができるようになる。
また、従来用いられていた別部品としてのウレタンシールが不要になるため、部品点数の削減によるコストの低減化と、組み付け作業性の向上が可能になるという効果が得られる。
【0012】
請求項2記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造では、前記ラジエータコアサポートアッパが金属製角パイプの少なくとも一部外周に樹脂がモールドされた構成とされ、ラジエータコアサポートアッパ側のフランジが樹脂と一体に形成されている構成としたことにより、ラジエータコアサポートアッパが金属製角パイプの一部外周に樹脂がモールドされた構成のものに適用する場合には、別体に形成したフランジをラジエータコアサポートアッパに対し取り付ける作業が不要になるもので、これにより、さらにコストの低減化と、組み付け作業性の向上が可能になる。
【0013】
請求項3記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造では、前記熱交換器の車両後方には該熱交換器の外周と電動ファンの外周との間の隙間を塞ぐファンシュラウドが組み付けられ、熱交換器側のフランジがファンシュラウドと一体に樹脂で構成されることにより、別体に形成したフランジを熱交換器側に取り付ける作業が不要になるもので、これにより、さらにコストの低減化と、組み付け作業性の向上が可能になる。
【0014】
請求項4記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造では、前記熱交換器はその上下両側縁部にタンクが備えられ、熱交換器側のフランジがタンクと一体に樹脂で構成されることにより、熱交換器のタンクが樹脂で構成された構造のものに適用する場合には、別体に形成したフランジを熱交換器側に取り付ける作業が不要になるもので、これにより、さらにコストの低減化と、組み付け作業性の向上が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
この実施例1の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造は、請求項1〜3に記載の発明に対応する。
まず、この実施例1の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1はこの実施例1の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造が適用された熱交換器部分を示す車両後方からの斜視図、図2は図1のII−II線における拡大縦断面図である。
この車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造が適用された熱交換器部分は、ラジエータコアサポート1と、空調用コンデンサ(熱交換器)2と、ラジエータ(熱交換器)3と、電動ファン4と、モータファンシュラウド5と、エアーガイド6と、を主な構成として備えている。
【0018】
さらに詳述すると、前記ラジエータコアサポート1は、ラジエータコアサポートアッパ11と、ラジエータコアサポートロア12と、左右両サイドステー13、13と、サイドメンバ取付けプレート14、14と、図示を省略したセンタステーと、を主な構成として備えている。
【0019】
前記ラジエータコアサポートアッパ11は、金属製薄肉閉断面の角パイプで構成されるアッパセンタ11aと金属製のアッパサイド11b、11bとで構成され、前記ラジエータコアサポートロア12は断面略コ字状の金属板で一体に構成されている。
【0020】
また、前記ラジエータコアサポートアッパ11の他には、サイドメンバ取付けプレート14、14が金属で構成され、センタステーおよびサイドステー13、13は樹脂で構成されている。
【0021】
そして、前記センタステーと、サイドステー13、13の上端部と下端部は、前記ラジエータコアサポートアッパ11におけるアッパセンタ11aとラジエータコアサポートロア12に対し、射出成形によりその外周面を包み込む状態で樹脂をオーバーモールドすることにより結合一体化されている。
【0022】
前記両サイドメンバ取付けプレート14、14は、サイドステー13、13の後面側と、該サイドステー13、13より外側に突出するラジエータコアサポートロア12の両端部後面に対しボルトで締結固定されている。
【0023】
前記空調用コンデンサ2およびラジエータ3は、左右両端部にそれぞれタンク部21、21,31、31を備えていて、それぞれ前記ラジエータコアサポートアッパ11とラジエータコアサポートロア12に対し図示を省略したインシュレータを介して取り付けられるようになっている。
【0024】
なお、この実施例では、空調用コンデンサ2およびラジエータ3の車幅方向の長さが両サイドステー13、13相互間の間隔に比べて短かく、このため、空調用コンデンサ2およびラジエータ3を車両左側のサイドステー13方向に寄せた状態で取り付けられることにより、車両右側のサイドステー13との間に大きな隙間が形成されるようになっている。
【0025】
そこで、この隙間を閉塞するものとしてエアーガイド6が組み付けられている。
【0026】
また、前記アッパセンタ11aは、図2に示すように、その下面側に沿って樹脂がモールドされ、該樹脂モールド部7から車両後方へ向けて延長するフランジ7aが一体に形成されている。
【0027】
また、前記モータファンシュラウド5は、前記電動ファン4をラジエータ3の後方に取り付けると共に、ラジエータ3の外周と電動ファン4の外周との間の隙間を塞ぐ役目をなすもので、ラジエータ3の後面外周縁部に対し取り付けられている。
このモータファンシュラウド5は、ラジエータ3側の開口上縁部がラジエータ3の上面を超えて車両前方へ延長するフランジ5aが一体に形成されている。
【0028】
そして、前記アッパセンタ11a側のフランジ7aに対しフランジ5aの方が上になるように両フランジ7a、5aの先端部が所定長さ互いに非接触状態で上下方向に重なるように配置されている。
また、前記モータファンシュラウド5は、ラジエータ3側の開口下縁部を一端車両後方へ延長させた後、ラジエータコアサポートロア12の後面に対し非接触状態で重なる垂下部を有するフランジ5bが一体に形成されている。
【0029】
次に、この実施例1の作用・効果を説明する。
この実施例1では上述のように、ラジエータコアサポートアッパ11のアッパセンタ11a側とラジエータ3の上端縁部側からそれぞれフランジ7a、5aを突出させ、ラジエータ3側のフランジ5aの方が上になるように両フランジ7a、5aの先端部が所定長さ互いに非接触状態で上下方向に重なるように配置されている構成としたことにより、ラジエータ3の上方からの熱風の吹き返しを抑制することができるようになるという効果が得られる。
また、従来用いられていた別部品としてのウレタンシールが不要になるため、部品点数の削減によるコストの低減化と、組み付け作業性の向上が可能になるという効果が得られる。
【0030】
また、前記アッパセンタ11aは、その下面側に沿って樹脂がモールドされ、該樹脂モールド部7から車両後方へ向けて延長するフランジ7aが一体に形成されている構成としたことにより、アッパセンタ11aが金属製角パイプの一部外周に樹脂がモールドされた構成のものに適用する場合には、別体に形成したフランジをアッパセンタ11aに対し取り付ける作業が不要になるもので、これにより、さらにコストの低減化と、組み付け作業性の向上が可能になる。
【0031】
また、前記モータファンシュラウド5におけるラジエータ3側の開口上縁部をラジエータ3の上面を超えて車両前方へ延長させてフランジ5aを一体に形成した構成としたことにより、別体に形成したフランジをラジエータ3側に取り付ける作業が不要になるもので、これにより、さらにコストの低減化と、組み付け作業性の向上が可能になる。
【0032】
また、前記モータファンシュラウド5におけるラジエータ3側の開口下縁部を一端車両後方へ延長させた後、ラジエータコアサポートロア12の後面に対し非接触状態で重なる垂下部を有するフランジ5bが一体に形成されている構成としたことにより、別体のフランジを準備することなしに、ラジエータ3の下方からの熱風の吹き返しを抑制することができるようになる。
【0033】
次に、他の実施例について説明する。この他の実施例の説明にあたっては、前記実施例1と同様の構成部分については図示を省略し、もしくは同一の符号を付けてその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【実施例2】
【0034】
この実施例2の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造は、請求項1、2、4に記載の発明に対応する。
この実施例2は、前記実施例1における車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造の変形例を示すものであり、図3の要部断面図に示すように、前記空調用コンデンサ2およびラジエータ3のタンク21、21,31、31が、それぞれ上下に備えられていると共に、該タンク21、21,31、31が樹脂で形成されていて、前記フランジ5aがラジエータ3の上側のタンク31から突出する状態で該上側のタンク31と一体に形成されている点が前記実施例1とは相違したものである。
【0035】
従って、この実施例2では、ラジエータ3のタンク31が樹脂で構成された構造のものに適用する場合には、別体に形成したフランジをラジエータ3側に取り付ける作業が不要になるもので、これにより、コストの低減化と、組み付け作業性の向上が可能になる。
【0036】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、実施例では、アッパセンタ11a側のフランジを樹脂モールド部7と一体に形成したフランジ7aで構成したが、別体に形成したフランジをアッパセンタ11a側に取り付けるようにしてもよい。
【0037】
また、実施例では、ラジエータ3側のフランジをモータファンシュラウド5におけるラジエータ3側の開口上縁部をラジエータ3の上面を超えて車両前方へ延長させたフランジ5aで構成させたが、別体に形成したフランジをラジエータ3側に取り付けるようにしてもよい。
また、ラジエータコアサポートアッパ11である金属製角パイプの一部外周に樹脂がモールドされた構成を示したが、全部の外周に樹脂をモールドしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造が適用された熱交換器部分を示す車両後方からの斜視図である。
【図2】図1のII−II線における拡大縦断面図である。
【図3】実施例2の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ラジエータコアサポート
11 ラジエータコアサポートアッパ
11a アッパセンタ
11b アッパサイド
12 ラジエータコアサポートロア
13 サイドステー
14 サイドメンバ取付けプレート
2 空調用コンデンサ(熱交換器)
21 タンク
3 ラジエータ(熱交換器)
31 タンク
4 電動ファン
5 モータファンシュラウド
5a フランジ
6 エアーガイド
6a 直角に交わる一方の面
6b 傾斜面
7 樹脂モールド部
7a フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器が組み付けられるラジエータコアサポートにおけるラジエータコアサポートアッパ側と前記熱交換器の上端縁部側からそれぞれフランジを突出させ、
前記熱交換器側のフランジの方が上になるように両フランジの先端部が所定長さ互いに非接触状態で上下方向に重なるように配置されていることを特徴とする車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造において、前記ラジエータコアサポートアッパが金属製角パイプの少なくとも一部外周に樹脂がモールドされた構成とされ、
前記ラジエータコアサポートアッパ側のフランジが前記樹脂と一体に形成されていることを特徴とする車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造において、前記熱交換器の車両後方には該熱交換器の外周と電動ファンの外周との間の隙間を塞ぐファンシュラウドが組み付けられ、
前記熱交換器側のフランジが前記ファンシュラウドと一体に樹脂で構成されていることを特徴とする車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造。
【請求項4】
請求項1または2に記載の車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造において、前記熱交換器はその上下両側縁部にタンクが備えられ、
前記熱交換器側のフランジが前記タンクと一体に樹脂で構成されていることを特徴とする車両用熱交換器における熱風吹き返し防止構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate