説明

車両用熱交換器

【課題】 過大な応力負荷を抑制することで、亀裂や破損の発生を防止した車両用熱交換器を提供する。
【解決手段】 ラジエータアセンブリは、冷却風が流れる経路上に配置され、内部に冷却水が供給されるラジエータ21のラジエータチューブと、そのラジエータチューブに対して経路の上流側に配置され、冷却風の流れを妨げる防風パッキン41および42とを備える。ラジエータチューブの、経路の上流側に面する側には、平面20が規定されている。平面20は、防風パッキン41および42が存在しない状態で、冷却風が相対的に大きい流量で導入される領域23および25と、冷却風が相対的に小さい流量で導入される領域22および24とを有する。防風パッキン41および42は、領域23および25上の空間の少なくとも一部に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、車両用熱交換器に関し、より特定的には、冷却風の流れる経路上に配置され、その冷却風との間で熱交換を行なう車両用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用熱交換器に関して、たとえば、特開平7−318291号公報には、偏平チューブのロウ付け部またははんだ付け部近傍に亀裂が生じることを防止するとともに、熱交換を促進させることを目的とした熱交換器が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された熱交換器では、偏平チューブが、その長手方向に分散または連続して形成された部分変形部を備える。部分変形部では、偏平チューブの向い合う内面が互いに接触するように塑性変形されている。偏平チューブの端部は、部分変形部の断面形状が、チューブプレートとのロウ付け部またははんだ付け部を略起点としてV字状をなすように成形されている。
【特許文献1】特開平7−318291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
冷却風の流れる経路上に配置され、その冷却風との間で熱交換を行なう車両用熱交換器として、たとえば、ラジエータがある。ラジエータには、冷却水が循環されるチューブが設けられており、そのチューブは、風を受ける所定の範囲に渡って延びている。しかし、ラジエータが搭載される車両の構造上の理由などにより、チューブへの風当たりが特定の位置で強くなる場合がある。この場合、その位置でチューブがより冷やされるため、他の位置との間で、チューブの熱収縮量に差が生じてしまう。このため、過大な応力がチューブに負荷し、チューブのロウ付け部に亀裂が入るなどの懸念が生じる。
【0004】
また、上述の特許文献1では、偏平チューブに部分変形部を設けることで、偏平チューブとチューブプレートとの接合部を補強し、その接合部で亀裂が発生することを防止している。しかしながら、このような部分変形部を偏平チューブに設けると、偏平チューブ内の通路面積が縮小する。このため、偏平チューブ内に流れる流体の循環流量が小さくなり、熱交換器の冷却性能が著しく低下するという問題が発生する。
【0005】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、過大な応力負荷を抑制することで、亀裂や破損の発生を防止した車両用熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った車両用熱交換器は、冷却風が流れる経路上に配置され、内部に熱流体が供給されるチューブ状の第1の放熱部材と、第1の放熱部材に対して経路の上流側に配置され、冷却風の流れを妨げる防風体とを備える。第1の放熱部材の、経路の上流側に面する側には、平面が規定されている。その平面は、防風体が存在しない状態で、冷却風が相対的に大きい流量で導入される第1の領域と、冷却風が相対的に小さい流量で導入される第2の領域とを有する。防風体は、第1の領域上の空間の少なくとも一部に配置されている。なお、防風体には、冷却風の流れる方向を変えることによって、冷却風の流れを妨げるものと、冷却風の流れ自体を抑えることによって、冷却風の流れを妨げるものとが含まれる。
【0007】
このように構成された車両用熱交換器によれば、第1の領域上の空間の少なくとも一部に設けられた防風体によって、第1の領域に導入される冷却風の流量が小さく抑えられる。このため、第1および第2の領域にそれぞれ導入される冷却風の流量差が小さくなり、またはゼロとなり、これらの領域間で第1の放熱部材の熱収縮量に差が生じることを抑制できる。これにより、第1の放熱部材に過大な応力が負荷することを防止し、この応力に起因した亀裂や破損の発生を回避することができる。
【0008】
また、上記経路の上流側であって、平面から距離を隔てた位置には、開口部を有するフロントボディーが配置されている。車両用熱交換器を搭載した車両が地面上を走行している場合に、平面に対して開口部を地面に略平行方向に投影すると、開口部は、第1の領域内に投影される。このように構成された車両用熱交換器によれば、冷却風は、フロントボディーの開口部から第1の領域に集中して流れ込む。このため、防風体により、その第1の領域に流れ込む冷却風の流れを妨げることによって、上述の効果を得ることができる。
【0009】
また好ましくは、防風体は、スポンジ状であり、そのスポンジ状の防風体は、経路の上流側に面する第1の放熱部材の表面に固着されている。このように構成された車両用熱交換器によれば、スポンジ状の防風体は、軽く、変形しやすい。このため、防風体の形状を第1の放熱部材の表面の形状に倣わせながら、容易かつ確実に固着することができる。また、防風体をスポンジ状とすることで、防風体を安価に生産することができる。
【0010】
また、第1の放熱部材は、ラジエータおよびエアコンディショナのコンデンサのいずれか一方に設けられている。このように構成された車両用熱交換器によれば、第1の放熱部材の亀裂や破損に起因して、ラジエータまたはコンデンサで液漏れが生じることを防止できる。これにより、これらの機器の信頼性を向上させることができる。
【0011】
また好ましくは、車両用熱交換器は、内部に熱流体が供給される第2の放熱部材をさらに備える。第2の放熱部材は、第1の放熱部材と第2の放熱部材との間に防風体が位置するように設けられている。このように構成された車両用熱交換器によれば、冷却風は、まず、その流れの最も上流に配置された第2の放熱部材を通過するため、冷却風が防風体に直接、当たるということがない。これにより、防風体の変形や損傷を防止するともに、冷却風に混入する異物から防風体を保護することができる。また、防風体は、第1の放熱部材と第2の放熱部材との間に位置するため、防風体を外側から見えないように配置することができる。これにより、車両用熱交換器の外観が煩雑になることを防止できる。
【0012】
また好ましくは、防風体は、経路の上流側に面する第1の放熱部材の表面に固着されている。第2の放熱部材と防風体との間には、空間が形成されている。このように構成された車両用熱交換器によれば、冷却風によって、防風体には、第1の放熱部材の表面に押圧されるように力が負荷する。このため、防風体を、経路の下流側に面する第2の放熱部材の表面に固着する場合と比較して、防風体を表面に固着した状態を長期間に渡って保持することができる。また、防風体を第1の放熱部材の表面に固着することにより、第2の放熱部材に導入される冷却風の流れが防風体によって妨げられない。このため、第2の放熱部材の放熱性能が低下することを防止できる。さらに、第1の放熱部材と第2の放熱部材との間には、空間が形成されているため、冷却風に混入する異物を溜め込むことなく、その空間から外部に放出することができる。
【0013】
また、第2の放熱部材は、ラジエータおよびエアコンディショナのコンデンサのいずれか一方に設けられている。このように構成された車両用熱交換器によれば、これらの機器をさらに備える車両用熱交換器において、上述の効果を得ることができる。
【0014】
また、車両用熱交換器は、第1の放熱部材の内部との間で熱流体が出入りするタンクをさらに備える。タンクは、プレート部材と、タンク形成部材とを有する。プレート部材は、第1の放熱部材の端部が差し込まれる差し込み口を有し、その差し込み口において第1の放熱部材と接合される。タンク形成部材は、溶接によりプレート部材に固定され、プレート部材とともに熱流体が流れる空間を形成する。
【0015】
このように構成された車両用熱交換器では、タンク形成部材とプレート部材との固定に溶接が用いられている。このため、ゴム部材を介在させ、両者をかしめて固定する場合と比較して、第1の放熱部材の熱収縮に起因して、第1の放熱部材とプレート部材との接合位置に応力集中が生じやすくなる。しかしながら、本発明では、防風体を設けることによって、第1の放熱部材が局所的に大きく熱収縮することがない。このため、第1の放熱部材とプレート部材との接合位置に生じる応力集中を、効果的に緩和することができる。これにより、その接合位置で、亀裂が発生することを防止するか、亀裂が発生する時期を大幅に遅らせることができる。
【0016】
また好ましくは、防風体は、第1の領域の、第1の放熱部材内に流れる熱流体流れの上流側となる部位上の空間に配置されている。このように構成された車両用熱交換器によれば、冷却風と熱流体との温度差が大きく、第1の放熱部材に負荷する応力が過大となる熱流体流れの上流側において、第1および第2の領域間に生じる第1の放熱部材の熱収縮差を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、この発明に従えば、過大な応力負荷を抑制することで、亀裂や破損の発生を防止した車両用熱交換器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1におけるラジエータアセンブリが搭載された車両の冷却システムを示す構成図である。図1を参照して、ラジエータアセンブリ10は、電動ファンシュラウド11に設けられた電動ファン12と、電動ファンシュラウド11に組み付けられたラジエータ21およびエアコンコンデンサ50とから構成されている。
【0020】
ラジエータ21は、エンジン6の冷却系統に配置されており、エンジン6のシリンダヘッドやシリンダブロックに形成されたウォータジャケットにホースを介して接続されている。ラジエータ21とエンジン6との間では、エンジン6を冷却するための冷却水がウォータポンプにより強制循環される。ラジエータ21は、エンジン6から回収された冷却水の温度を下げる役割を果たす。
【0021】
エアコンコンデンサ50は、車両のエアコンディショナシステムの一部を構成し、エキスパンションバルブ2、エバポレータ3およびコンプレッサ5を含んで形成された冷媒の循環経路上に配置されている。冷媒の流れについて説明すると、エアコンコンデンサ50から供給された高温、高圧の液状冷媒は、エキスパンションバルブ2で急激に膨張されて、低温、低圧の霧状の冷媒になり、エバポレータ3に流れ込む。その冷媒は、エバポレータ3の周りの空気から熱を奪い、回転するブロワファン4によって冷風が車両の室内に導入される。熱を吸収した冷媒は、ガス状に変化し、コンプレッサ5に吸い込まれる。低温、低圧のガス状の冷媒は、コンプレッサ5で圧縮され、高温、高圧となる。エアコンコンデンサ50は、その高温、高圧のガス状冷媒を冷却し、高温、高圧の液状冷媒としてエキスパンションバルブ2へ再び送る。
【0022】
図2は、図1中のラジエータアセンブリを搭載した車両フロント部分を示す断面図である。図2を参照して、車両前方に設けられたグリル51およびバンパ52と、これらの上下に配置されたフード53およびアンダーカバー54とに囲まれた位置には、ラジエータアセンブリ10およびエンジン55が収容されている。ラジエータアセンブリ10は、グリル51およびバンパ52とエンジン55との間に、配置されている。グリル51とバンパ52との間には、開口部61が形成されており、バンパ52とアンダーカバー54との間には、開口部62が形成されている。
【0023】
ラジエータアセンブリ10を構成するエアコンコンデンサ50、ラジエータ21および電動ファン12は、この挙げた順に、グリル51およびバンパ52に近い側から並んで設けられている。エアコンコンデンサ50およびラジエータ21は、両者の間に空間46が形成されるように、電動ファンシュラウド11に組み付けられている。車両が走行し、また場合によっては電動ファン12が回転することによって、冷却風が、開口部61および62から流れ込み、ラジエータアセンブリ10へと向かう。冷却風は、エアコンコンデンサ50およびラジエータ21を順に冷却した後、エンジン55が設けられた車両後方へと流れる。つまり、冷却風は、グリル51およびバンパ52、エアコンコンデンサ50ならびにラジエータ21と順にたどる経路を流れる。
【0024】
ラジエータ21の、冷却風が流れる上記経路の上流側、つまり、エアコンコンデンサ50に向い合う側には、平面20が規定されている。ラジエータ21には、その平面20上に位置して、防風パッキン41および42が貼り付けられている。防風パッキン41および42は、エアコンコンデンサ50とラジエータ21との間に形成された空間46に配置されている。
【0025】
図3は、図2中のラジエータを示す斜視図である。図4は、図3中のIV−IV線上に沿ったラジエータの断面図である。図5は、図3中の2点鎖線Vで囲まれた範囲を拡大して示す斜視図である。
【0026】
図3から図5を参照して、ラジエータ21は、アルミニウムから形成され、冷却水の放熱が行なわれるコア部27と、コア部27の両側に配置されたタンク28および29とを備える。コア部27は、内部に冷却水を流すためのチューブ形状を有し、互いに間隔を隔てた位置でタンク28からタンク29に向かって延びる複数のラジエータチューブ31と、隣り合うラジエータチューブ31の間に配置され、波状に湾曲しながらタンク28からタンク29に向かって延びる複数のフィン32とから構成されている。冷却水は、ラジエータチューブ31を介して、タンク28からタンク29へと流れる。なお、エアコンコンデンサ50に関しても、ラジエータ21とほぼ同様の構造を有し、内部に冷媒が流される第2の放熱部材としてのコンデンサチューブと、コンデンサチューブの両側に配置されたタンクとを備える。
【0027】
図2および図3を参照して、平面20は、エアコンコンデンサ50に向い合うコア部27の全面に渡って規定されている。平面20には、互いに距離を隔てた位置で、タンク28からタンク29に向けて帯状に延在する領域23および25が存在する。平面20には、さらに、領域23と領域25との間で、タンク28からタンク29に向けて帯状に延在する領域24と、領域23を挟んで領域24の反対側で、同様に延在する領域22とが存在する。領域23は、開口部61と同じ高さで延在しており、領域25は、開口部62と同じ高さで延在している。つまり、ラジエータアセンブリ10を搭載した車両が走行する地面に対して略平行方向に(以下たんに、地面に略平行方向に、と表現する)、開口部61および62を平面20上に投影すると、開口部61および62は、それぞれ、領域23および25内に投影される。
【0028】
このような構成により、開口部61および62から流れ込んだ冷却風は、それぞれ、領域23および25を中心にした範囲に吹き付ける。このため、防風パッキン41および42が設けられていない状態で、領域23および25に導入される冷却風の流量は、領域22および24に導入される冷却風の流量よりも大きくなる。
【0029】
領域22から25を有する平面20を規定する際に、冷却風の流量は、たとえば、以下に説明する方法によって測定する。まず、領域22から25のそれぞれに、マトリクス状に配置された複数の測定地点を設定する。設定された測定地点に流量計を設置し、順に冷却風の流量を測定する。この際、車両の走行速度や電動ファン12の回転条件は、全ての測定で同一とする。測定された流量の平均値を各領域ごとに算出し、得られた値をその領域での冷却風の流量とする。また別の方法として、図2中に示す構造をコンピューターに入力してモデル化し、そのモデルを用いたシミュレーションによって各領域での冷却風の流量を求めても良い。
【0030】
図2から図4を参照して、防風パッキン41および42は、領域23および25のうち冷却水流れの上流側となるタンク28に近い部位を覆うようにして、コア部27に固着されている。防風パッキン41および42は、ラジエータチューブ31が延びる方向(矢印101に示す方向)の長さが、ラジエータチューブ31が延びる方向の直交方向(矢印102に示す方向)に沿って変化するように形成されている。具体的には、防風パッキン41は、ラジエータチューブ31が延びる方向の長さL1が、開口部61が平面20上に地面に略平行方向に投影される位置の中心から、ラジエータチューブ31が延びる方向の直交方向へ離れるに従って小さくなるように形成されている。防風パッキン42は、ラジエータチューブ31が延びる方向の長さL2が、開口部62が平面20上に地面に略平行方向に投影される位置の中心から、ラジエータチューブ31が延びる方向の直交方向へ離れるに従って小さくなるように形成されている。
【0031】
防風パッキン41および42は、たとえば、ウレタンスポンジやエチレンプロピレンゴム(EPDMスポンジ)から形成されている。防風パッキン41および42は、単泡体(内部に形成された気泡が、互いに繋がっていないもの)に形成されていても良く、連泡体(内部に形成された気泡が、互いに繋がっているもの)に形成されていても良い。
【0032】
また、防風パッキン41および42は、スポンジにかえて、アルミニウム板、アルミニウムテープまたはガムテープなどの遮蔽部材から形成されていても良い。しかしながら、防風パッキン41および42をスポンジから形成した場合、両面テープなどを用いて、コア部27に容易に固定することができる。また、スポンジから形成された防風パッキン41および42は、形状の自由度が高いため、その形状をラジエータチューブ31やフィン32の凸凹形状に倣わせることができる。これにより、防風パッキン41および42をコア部27に確実に固定することができる。
【0033】
図6は、図1中のラジエータアセンブリに冷却風が流れ込む様子を示す模式図である。図6を参照して、本実施の形態では、領域23および25に吹き付ける冷却風の流れが、防風パッキン41および42によって妨げられる。具体的には、防風パッキン41および42を連泡体のスポンジから形成した場合、冷却風の勢いが、防風パッキン41および42が設けられた位置で弱められる。また、防風パッキン41および42を、単泡体のスポンジまたはアルミニウム板などの遮蔽部材により形成した場合、冷却風の流れが、防風パッキン41および42が設けられた位置で遮断される。これにより、領域23および25に吹き付ける冷却風の流量を、領域22および24に吹き付ける冷却風の流量に近づけることができる。
【0034】
また、ラジエータ21は、エアコンコンデンサ50の背後に配置されている。このため、開口部61および62から流れ込んだ冷却風が、防風パッキン41および42に直接、吹き付けるということがない。加えて、ラジエータ21に貼り付けられた防風パッキン41および42は、冷却風を受けることによって、その貼り付けられたラジエータ21の表面に押圧される。これにより、防風パッキン41および42の破損や変形を防止するとともに、防風パッキン41および42がラジエータ21から剥落することを防止できる。また、ラジエータ21とエアコンコンデンサ50との間には、空間46が形成されている。これにより、冷却風に混入した砂粒等の異物66を、空間46から外部へと放出し、異物66によってラジエータアセンブリ10の性能が損なわれることを防止できる。
【0035】
この発明の実施の形態1における車両用熱交換器としてのラジエータアセンブリ10は、冷却風が流れる経路上に配置され、内部に熱流体としての冷却水が供給されるチューブ状の第1の放熱部材としてのラジエータチューブ31と、ラジエータチューブ31に対して経路の上流側に配置され、冷却風の流れを妨げる防風体としての防風パッキン41および42とを備える。ラジエータチューブ31の、経路の上流側に面する側には、平面20が規定されている。平面20は、防風パッキン41および42が存在しない状態で、冷却風が相対的に大きい流量で導入される第1の領域としての領域23および25と、冷却風が相対的に小さい流量で導入される第2の領域としての領域22および24とを有する。防風パッキン41および42は、領域23および25上の空間の少なくとも一部に配置されている。
【0036】
上記経路の上流側であって、平面20から距離を隔てた位置には、開口部61および62を有するフロントボディーとしてのグリル51、バンパ52およびアンダーカバー54が配置されている。ラジエータアセンブリ10を搭載した車両が地面上を走行している場合に、平面20に対して開口部61および62を地面に略平行方向に投影すると、開口部61および62は、領域23および25内に投影される。
【0037】
なお、本実施の形態では、グリル51およびバンパ52の後方に、エアコンコンデンサ50およびラジエータ21を並べて設けたが、ラジエータ21のみが設けられていても良い。また、防風パッキン41および42が貼り付けられる第1の放熱部材は、ラジエータのみならず、エアコンコンデンサであっても良い。
【0038】
このように構成された、この発明の実施の形態1におけるラジエータアセンブリ10によれば、防風パッキン41および42を設けることによって、領域23および25と領域22および24との間で、ラジエータチューブ31の熱収縮量に差が生じることを抑制できる。最も好ましくは、いずれのラジエータチューブ31でも、熱収縮量が等しくなるように、防風パッキン41および42が設けられる。これにより、ラジエータチューブ31に生じる歪みを低減させ、ラジエータチューブ31に亀裂や破損が発生することを防止できる。
【0039】
また、防風パッキン41および42は、ラジエータチューブ31が延びる方向の長さが、開口部61および62が平面20上に地面に略平行方向に投影される位置の中心を最大にして、その方向の直交方向に離れるに従って減少するように形成されている。開口部61および62が平面20上に投影される位置の中心は、領域23および25の中でも、冷却風の流量が最も大きくなる位置である。このため、本実施の形態によれば、領域23および24内で生じるラジエータチューブ31の熱収縮差も小さく抑えることができ、ラジエータチューブ31の亀裂や破損をより効果的に防止することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、以下に説明する効果を得ることができる。その効果を説明するため、まずラジエータが備えるタンクの構造について、説明を行なう。
【0041】
図7は、図3中のVII−VII線上に沿ったラジエータの断面図である。図7を参照して、タンク28は、プレート部材としてのチューブプレート37と、溶接によりチューブプレート37に固定された、タンク形成部材としてのL型プレート36とから構成されている。チューブプレート37には、ラジエータチューブ31の断面形状に合わせて、差し込み口37hが所定の形状で形成されている。ラジエータチューブ31の端部が差し込み口37hに差し込まれた状態で、ラジエータチューブ31の外周面31bと差し込み口37hの周縁とが、ロウ付けにより接合されている。なお、タンク28の構造について説明したが、タンク29についても、タンク28と同様の構造を備える。
【0042】
このような構成により、ラジエータチューブ31が過大に熱収縮すると、外周面31bと差し込み口37hの周縁とのロウ付け部分に亀裂が発生する。しかしながら、本実施の形態では、防風パッキン41および42を設けることによって、ラジエータチューブ31が局所的に大きく熱収縮することを防止している。このため、冷却水の漏れるおそれのない信頼性の高いラジエータ21を実現することができる。
【0043】
なお、ラジエータチューブ31の熱収縮は、冷却風の温度が低い時に大きくなるため、車両が気温の低い場所を走行する時に、上述の効果を特に有効に得ることができる。
【0044】
(実施の形態2)
図8は、この発明の実施の形態2におけるラジエータに冷却風が流れ込む様子を示す模式図である。図中では、実施の形態1で説明した部材と比較して、同一またはそれに相当する部材には、同一の参照番号が付されている。なお、重複する構造については、説明を繰り返さない。
【0045】
図8を参照して、本実施の形態では、ラジエータ21の前方に、開口部77を有するフロントボディー76が配置されている。フロントボディー76とラジエータ21との間には、たとえばアルミニウムから形成された防風プレート78が設けられている。ラジエータ21の、フロントボディー76に向い合う側に規定された平面20には、防風プレート78が設けられていない状態で、相対的に小さい流量で冷却風が導入される領域71および73と、相対的に大きい流量で冷却風が導入される領域72とが存在する。防風プレート78は、領域72上の空間の一部に位置して、ラジエータ21から離れて設けられている。
【0046】
このように構成された、この発明の実施の形態2におけるラジエータ21によれば、防風プレート78によって、開口部77から流れ込んだ冷却風は、領域71および73側に向かうように案内される。これにより、領域72と領域71および73との間で、ラジエータチューブ31の熱収縮量に差が生じることを抑制でき、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0047】
(実施の形態3)
図9は、この発明の実施の形態3におけるラジエータアセンブリに冷却風が流れ込む様子を示す模式図である。図中では、実施の形態1および2で説明した部材と比較して、同一またはそれに相当する部材には、同一の参照番号が付されている。なお、重複する構造については、説明を繰り返さない。
【0048】
図9を参照して、本実施の形態では、エアコンコンデンサ50とラジエータ21との間に、防風プレート81が設けられている。防風プレート81は、領域72上の空間の一部に位置して、エアコンコンデンサ50およびラジエータ21の双方に接触して設けられている。
【0049】
このように構成された、この発明の実施の形態3におけるラジエータアセンブリによれば、実施の形態2に記載の効果と同様の効果を得ることができる。加えて、防風プレート81を、エアコンコンデンサ50とラジエータ21との間に配置することによって、開口部77から流れ込んだ冷却風が、防風プレート81に直接、吹き付けるということがない。これにより、防風プレート81の変形や破損を防止できる。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の実施の形態1におけるラジエータアセンブリが搭載された車両の冷却システムを示す構成図である。
【図2】図1中のラジエータアセンブリを搭載した車両フロント部分を示す断面図である。
【図3】図2中のラジエータを示す斜視図である。
【図4】図3中のIV−IV線上に沿ったラジエータの断面図である。
【図5】図3中の2点鎖線Vで囲まれた範囲を拡大して示す斜視図である。
【図6】図1中のラジエータアセンブリに冷却風が流れ込む様子を示す模式図である。
【図7】図3中のVII−VII線上に沿ったラジエータの断面図である。
【図8】この発明の実施の形態2におけるラジエータに冷却風が流れ込む様子を示す模式図である。
【図9】この発明の実施の形態3におけるラジエータアセンブリに冷却風が流れ込む様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0052】
10 ラジエータアセンブリ、20 平面、21 ラジエータ、22,23,24,25,71,72,73 領域、28,29 タンク、31 ラジエータチューブ、36 L字プレート、37 チューブプレート、37h 差し込み口、41,42 防風パッキン、46 空間、50 エアコンコンデンサ、51 グリル、52 バンパ、54 アンダーカバー、61,62,77 開口部、76 フロントボディー、78,81 防風プレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却風が流れる経路上に配置され、内部に熱流体が供給されるチューブ状の第1の放熱部材と、
前記第1の放熱部材に対して前記経路の上流側に配置され、冷却風の流れを妨げる防風体とを備え、
前記第1の放熱部材の前記経路の上流側に面する側には、前記防風体が存在しない状態で、冷却風が相対的に大きい流量で導入される第1の領域と、冷却風が相対的に小さい流量で導入される第2の領域とを有する平面が規定されており、
前記防風体は、前記第1の領域上の空間の少なくとも一部に配置されている、車両用熱交換器。
【請求項2】
前記経路の上流側であって、前記平面から距離を隔てた位置には、開口部を有するフロントボディーが配置されており、
車両用熱交換器を搭載した車両が地面上を走行している場合に、前記平面に対して前記開口部を前記地面に略平行方向に投影すると、前記開口部は、前記第1の領域内に投影される、請求項1に記載の車両用熱交換器。
【請求項3】
前記防風体は、スポンジ状であり、前記経路の上流側に面する前記第1の放熱部材の表面に固着されている、請求項1または2に記載の車両用熱交換器。
【請求項4】
前記第1の放熱部材は、ラジエータおよびエアコンディショナのコンデンサのいずれか一方に設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用熱交換器。
【請求項5】
内部に熱流体が供給される第2の放熱部材をさらに備え、
前記第2の放熱部材は、前記第1の放熱部材と前記第2の放熱部材との間に前記防風体が位置するように設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用熱交換器。
【請求項6】
前記防風体は、前記経路の上流側に面する前記第1の放熱部材の表面に固着されており、
前記第2の放熱部材と前記防風体との間には、空間が形成されている、請求項5に記載の車両用熱交換器。
【請求項7】
前記第2の放熱部材は、ラジエータおよびエアコンディショナのコンデンサのいずれか一方に設けられている、請求項5または6に記載の車両用熱交換器。
【請求項8】
前記第1の放熱部材の内部との間で熱流体が出入りするタンクをさらに備え、
前記タンクは、
前記第1の放熱部材の端部が差し込まれる差し込み口を有し、前記差し込み口において前記第1の放熱部材と接合されるプレート部材と、
溶接により前記プレート部材に固定され、前記プレート部材とともに熱流体が流れる空間を形成するタンク形成部材とを有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用熱交換器。
【請求項9】
前記防風体は、前記第1の領域の、前記第1の放熱部材内に流れる前記熱流体流れの上流側となる部位上の空間に配置されている、請求項1から8のいずれか1項に記載の車両用熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−56421(P2006−56421A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241283(P2004−241283)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】