説明

車両用燃料タンク

【課題】 燃料タンクのタンク本体の内部に配置されたキャニスタのパージ性能を高める。
【解決手段】 鞍型のタンク本体11の第1タンク室14にポンプモジュール25を配置して第2タンク室15にキャニスタ31を配置し、タンク本体11の下面の凹部11aを通過するようにエンジンの排気管13L,13Rを配置したので、排気管13L,13Rを通過する排ガスの熱をキャニスタ31に効率よく伝達して温度を上昇させ、キャニスタ31にチャージされた蒸発燃料のパージ性能を高めることができる。また第1、第2タンク室14,15をサイホン管29で接続したので、第2タンク室15から第1タンク室14に燃料を供給するサブポンプを第2タンク室15に設ける必要がなくなり、そのサブポンプの設置スペースを利用してキャニスタ31を配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク本体の内部にキャニスタを配置した車両用燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
下面中央の凹部を挟んで第1タンク室および第2タンク室が形成された、いわゆる鞍型の燃料タンクにおいて、第1タンク室および第2タンク室をサイホン管で連通させ、燃料ポンプから供給される燃料の流れにより発生する負圧で前記サイホン管の内部を燃料で満たすことで、第1タンク室の燃料液面および第2タンク室の燃料液面を均一化するものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
また通常は燃料タンクの外部に設けられるキャニスタを、燃料タンクの内部に設けたものが、下記特許文献2により公知である。
【特許文献1】特開平10−61515号公報
【特許文献2】特開平9−195861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キャニスタを燃料タンクの内部に配置する場合、燃料タンクの内部にキャニスタに設置スペースを確保するのが難しい場合がある。またキャニスタの吸着剤にチャージされた蒸発燃料をエンジンの吸気系にパージするとき、キャニスタの温度を上昇させるとパージ効率が高まることが知られているが、キャニスタに特別の加熱手段を設けるとコストアップの要因となる問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、燃料タンクのタンク本体の内部に配置されたキャニスタのパージ性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、第1タンク室および第2タンク室を連通させる連通部の下面に凹部が形成された鞍型のタンク本体と、前記タンク本体の内部に配置されて燃料をエンジンに供給するポンプモジュールと、前記タンク本体の内部に配置されて蒸発燃料をチャージおよびパージするキャニスタとを備え、前記タンク本体の凹部を通過するようにエンジンの排気管が配置されることを特徴とする車両用燃料タンクが提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記第1、第2タンク室はサイホン管で接続されており、前記第1タンク室に前記ポンプモジュールが配置されるとともに、前記第2タンク室に前記キャニスタが配置されることを特徴とする車両用燃料タンクが提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記キャニスタは、前記第1、第2タンク室のうち、前記排気管に近い側のタンク室に配置されることを特徴とする車両用燃料タンクが提案される。
【0009】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記排気管は2本であることを特徴とする車両用燃料タンクが提案される。
【0010】
また請求項5に記載された発明によれば、タンク本体と、前記タンク本体の内部に配置されて燃料をエンジンに供給するポンプモジュールと、前記タンク本体の内部に配置されて蒸発燃料をチャージおよびパージするキャニスタとを備え、前記タンク本体の周囲を通過するエンジンの排気管は、前記タンク本体の車幅方向中央に対して前記キャニスタと同じ側に配置されることを特徴とする車両用燃料タンクが提案される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の構成によれば、第1、第2タンク室を連通させる連通部の下面に凹部が形成された鞍型のタンク本体の内部にポンプモジュールおよびキャニスタを配置し、かつ前記凹部を通過するようにエンジンの排気管を配置したので、排気管を通過する排ガスの熱をタンク本体の内部のキャニスタに効率よく伝達して温度を上昇させ、キャニスタにチャージされた蒸発燃料のパージ性能を高めることができる。
【0012】
また請求項2の構成によれば、第1、第2タンク室をサイホン管で接続し、第1タンク室にポンプモジュールを配置して第2タンク室にキャニスタを配置したので、第2タンク室から第1タンク室に燃料を供給するサブポンプを第2タンク室に設ける必要がなくなり、そのサブポンプの設置スペースを利用してキャニスタを配置することができる。
【0013】
また請求項3の構成によれば、第1、第2タンク室のうち、排気管に近い側のタンク室にキャニスタを配置したので、排気管を通過する排ガスの熱をタンク本体の内部のキャニスタに充分に伝達してパージ性能を高めることができる。
【0014】
また請求項4の構成によれば、タンク本体の凹部に2本の排気管を配置したので、排気管を通過する排ガスの熱をタンク本体の内部のキャニスタに充分に伝達することができ、キャニスタのレイアウトの自由度を確保しながらパージ性能を高めることができる。
【0015】
また請求項5の構成によれば、タンク本体の内部にポンプモジュールおよびキャニスタを配置し、かつタンク本体の外部の排気管およびタンク本体の内部のキャニスタをタンク本体の車幅方向中央に対して車幅方向の同じ側に配置したので、排気管を通過する排ガスの熱をタンク本体の内部のキャニスタに効率よく伝達して温度を上昇させ、キャニスタにチャージされた蒸発燃料のパージ性能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0017】
図1および図2は本発明の第1の実施の形態を示すもので、図1は車両用燃料タンクの斜視図、図2は図1の2−2線断面図である。
【0018】
図1および図2に示すように、自動車の車体後部のフロアパネルの下面に搭載される燃料タンクTは、樹脂をブロー成形したタンク本体11を備えており、その下面の左右方向中央部を前後方向に延びる溝状の凹部11aには、エンジンの駆動力を後輪に伝達するプロペラシャフト12と、エンジンの排ガスを車体後部に導く左右2本の排気管13L,13Rとが配置される。タンク本体11は、凹部11aによって左側の第1タンク室14と右側の第2タンク室15とに区画され、第1、第2タンク室14,15は凹部11aの上方の連通部11bを介して相互に連通する。
【0019】
第1タンク室14の上壁11cには外周に雄ねじを有する第1開口11dが形成され、第1開口11dを閉塞する蓋体16が、前記雄ねじに螺合する雌ねじを有するキャップ17により気密性を維持しながら固定される。蓋体16の下面に上下摺動自在に支持された複数本のガイドロツド18…に、上面が解放したチャンバー19の上部が固定され、ガイドロツド18…の外周に設けたコイルスプリング20…の弾発力で下向きに付勢されたチャンバー19の下面が第1タンク室14の底壁上面に当接する。
【0020】
チヤンバー19には、燃料ポンプ21と、サクションフィルタ22と、プレッシャレギュレータ23と、ジェットポンプ24とで構成されるポンプモジュール25が設けられる。燃料ポンプ21は、チャンバー19の底部に配置したサクションフィルタ22を介して吸い上げた燃料を、蓋体16を貫通してタンク本体11の外部に延びる燃料供給パイプ26を介してエンジンに供給する。燃料供給パイプ26の途中から分岐する燃料戻しパイプ27の途中にプレッシャレギュレータ23が設けられ、先端にジェットポンプ24が設けられる。プレッシャレギュレータ23はエンジンに供給する燃料の圧力を一定に保持し、余剰となった燃料をジェットポンプ24を介してチャンバー19の内部に戻すことで、チヤンバー19の内部を常に燃料で満たされた状態に維持する。
【0021】
一方、第2タンク室15の上壁11eには雄ねじを有する第2開口11fが形成され、第2開口11fから第2タンク室15に挿入されたキャニスタ31の上部フランジ31aが、前記雄ねじに螺合する雌ねじを有するキャップ32により気密性を維持しながら固定される。キャニスタ31の上部フランジ31aをチャージ通路33、パージ通路34およびドレン通路35が貫通しており、チャージ通路33は連通部11bに設けた継ぎ手36を介してタンク本体11の上部空間に連通し、パージ通路34はエンジンの吸気系に連通し、ドレン通路35は大気に開放される。
【0022】
第1タンク室14の底部に配置した吸い込み口37と第2タンク室15の底部に配置した吸い込み口38とが連通部11bを通るサイホン管39で連通しており、サイホン管39の中間部がチェックバルブ40および負圧管41を介してジェットポンプ24に接続される。
【0023】
左右の排気管13L,13Rの後部にはメインマフラ42L,42Rが設けられ、その上流側に設けられた左右のサブマフラ43L,43Rがタンク本体11の凹部11aに位置している
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用について説明する。
【0024】
エンジンの運転中、ポンプモジュール25の燃料ポンプ21が作動すると、第1タンク室14のチャンバー19内の燃料がサクションフィルタ22を介して汲み上げられて燃料供給パイプ26からエンジンに供給され、余剰となった燃料は燃料戻しパイプ27のプレッシャレギュレ一タ23およびジェットポンプ24を介してチャンバー19に戻される。ジェットポンプ24において発生する負庄により、第1タンク室14内の燃料が吸い込み口37、サイホン管39、チェックバルブ40および負圧管41を介して汲み上げられ、ジェットポンプ24を通過してチヤンバー19内に吸引される。
【0025】
これと同時に、ジェットポンプ24において発生する負庄により、第2タンク室15内の燃料が吸い込み口38、サイホン管39、チェックバルブ40および負圧管41を介して汲み上げられ、ジェットポンプ24を通過してチヤンバー19内に吸引される。よって、チヤンバー19の内部は常に燃料によって満たされ、ポンプモジュール25の燃料ポンプ21による燃料の供給が途切れることが防止される。
【0026】
ところで、上述したようにジェットポンプ24で第2タンク室15の燃料を第1タンク室14に供給しても、第1タンク室14の燃料はポンプモジュール25の燃料ポンプ21でエンジンに供給されるため、タンク本体11内の残留燃料量が減少してきたときに、第1、第2タンク室14,15の燃料液面が一致するとは限らない。しかしながら、第1、第2タンク室14,15はサイホン管39によって連通しているため、第1、第2タンク室14,15の燃料液面が高い側から低い側へとサイホン管39を介して自動的に燃料が移動することで、第1、第2タンク室14,15の燃料液面を常に同一に維持することができる。
【0027】
またエンジンが停止して暫く時間が経過すると、サイホン管39の高い部分に燃料蒸気が溜まってサイホン機能が発揮されなくなる可能性があるが、ポンプモジュール25が作動するとジェットポンプ24によってサイホン管39の内部が必ず燃料で満たされるため、サイホン機能が支障なく発揮させることができる。
【0028】
上述したようなサイホン管39を用いない場合、第2タンク室15に配置したサブポンプで第2タンク室15から第1タンク室14に燃料を供給する必要があるが、本実施の形態ではサイホン管39を用いたことで第2タンク室15からサブポンプを廃止することが可能となり、そのサブポンプの設置スペースを利用してインタンク型のキャニスタ31を第2タンク室15に配置することができる。
【0029】
ところで、エンジンの停止中や給油中にタンク本体11の内部に発生した蒸発燃料は、チャージ通路33を介してキャニスタ31に供給されて吸着剤にチャージされ、大気への放散が防止される。そして吸着剤にチャージされた蒸発燃料はエンジンの運転中にパージ通路34を介してエンジンの吸気系にパージされ、吸気と混合されてエンジンにおいて燃焼される。
【0030】
エンジンの運転中にキャニスタ31から蒸発燃料をパージするとき、キャニスタ31の温度が高いほどパージ効率が高まることが知られている。本実施の形態では、鞍型のタンク本体11の凹部11aに2本の排気管13L,13Rを配置したことで、排気管13L,13Rを通過する排ガスの熱を効率的にタンク本体11の内部のキャニスタ31に伝達して温度を上昇させ、そのパージ効率を高めることができる。特に、タンク本体11の凹部11aには排気管13L,13Rよりも大径で放熱量が大きいサブマフラ43L,43Rが位置するため、キャニスタ31をより効率的に加熱することができる。
【0031】
次に、図3に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0032】
第1の実施の形態ではタンク本体11の凹部11aに2本の排気管13L,13Rが配置されているが、第2の実施の形態では1本の排気管13だけが配置されている。排気管13は第1タンク室14よりも第2タンク室15に近い位置にあり、排気管13に近い側の第2タンク室15にキャニスタ31が配置される。これにより、排気管13の熱を効率的にキャニスタ31に伝達してパージ効率を高めることができる。
【0033】
次に、図4に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0034】
第1、第2の実施の形態のタンク本体11は、下面に凹部11aが形成された鞍型のものであるが、第3の実施の形態のタンク本体11は前記凹部11aを備えていない一般的なものであり、よってサイホン管39は不必要である。ポンプモジュール25はタンク本体11の内部の車幅方向中央部に配置されているが、キャニスタ31はタンク本体11の内部の車幅方向中央部よりも右側に配置され、また排気管36はタンク本体11の外部の車幅方向中央部よりも右側の下面に接近して配置されている。このように、キャニスタ31および排気管36をタンク本体11の車幅方向中央部に対して同じ側に配置したことで、排気管13を通過する排ガスの熱を効率的にタンク本体11の内部のキャニスタ31に伝達して温度を上昇させ、そのパージ効率を高めることができる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0036】
例えば、実施の形態では第1タンク室14にポンプモジュール25を配置し、第2タンク室15にキャニスタ31を配置しているが、一方のタンク室にポンプモジュール25およびキャニスタ31の両方を配置しても良い。
【0037】
またサイホン管39の太さは図示したものに限定されず、更に太いものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施の形態に係る車両用燃料タンクの斜視図
【図2】図1の2−2線断面図
【図3】第2の実施の形態に係る、前記図2に対応する図
【図4】第3の実施の形態に係る、前記図2に対応する図
【符号の説明】
【0039】
11 タンク本体
11a 凹部
11b 連通部
13 排気管
13L 排気管
13R 排気管
14 第1タンク室
15 第2タンク室
25 ポンプモジュール
31 キャニスタ
39 サイホン管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1タンク室および第2タンク室を連通させる連通部の下面に凹部が形成された鞍型のタンク本体と、
前記タンク本体の内部に配置されて燃料をエンジンに供給するポンプモジュールと、
前記タンク本体の内部に配置されて蒸発燃料をチャージおよびパージするキャニスタとを備え、
前記タンク本体の凹部を通過するようにエンジンの排気管が配置されることを特徴とする車両用燃料タンク。
【請求項2】
前記第1、第2タンク室はサイホン管で接続されており、前記第1タンク室に前記ポンプモジュールが配置されるとともに、前記第2タンク室に前記キャニスタが配置されることを特徴とする、請求項1に記載の車両用燃料タンク。
【請求項3】
前記キャニスタは、前記第1、第2タンク室のうち、前記排気管に近い側のタンク室に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の車両用燃料タンク。
【請求項4】
前記排気管は2本であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用燃料タンク。
【請求項5】
タンク本体と、
前記タンク本体の内部に配置されて燃料をエンジンに供給するポンプモジュールと、
前記タンク本体の内部に配置されて蒸発燃料をチャージおよびパージするキャニスタとを備え、
前記タンク本体の周囲を通過するエンジンの排気管は、前記タンク本体の車幅方向中央に対して前記キャニスタと同じ側に配置されることを特徴とする車両用燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−132066(P2010−132066A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308320(P2008−308320)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】