説明

車両用物体認識装置

【課題】指向性の低い超音波センサを用いても、複雑な形状を有する物体の形状認識の精度を高めることができる車両用物体形状認識装置を提供する。
【解決手段】車両用物体形状認識装置1の物体形状推定部8により、物体の位置を示す距離点を超音波センサ2,3による検出距離で、照射範囲を横断した扇状の水平面の自車両の前方側臨界線近辺の対象線上の検出点および後方側臨界線近辺の対象線上の検出点のうち少なくともいずれかに設定し、自車両の移動に伴い繰り返し検出される検出距離のうち、超音波センサ2,3による自車両からの距離を検出する時刻およびその所定時間だけ前後の時刻における検出距離に基づき、各時刻の検出距離が自車両に近づくときは距離点を前方側の検出点に設定し、遠ざかるときは後方側の検出点に設定し、設定された距離点を繋ぎ合わせた形状を物体の形状と認識する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波センサを用いて物体の形状を認識する車両用物体認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界のドライバの運転を支援する運転支援システムが普及しており、特に、駐車時の運転支援システムにおいては自動運転化に向けた開発が進められている。この種のシステムでは、障害物の位置を正確に特定する必要があり、特に、周囲に複数の障害物がある狭いスペースしかない駐車環境下で走行する場合は、周囲の障害物の位置を高精度に検出する必要がある。そのため、障害物の位置特定手段には位置検出精度の高いレーザーレーダを用いることが適しているが、高価であるため安価な超音波センサで高精度に位置を特定する技術が求められている。
【0003】
超音波センサは、主に圧電素子に電圧を加えることにより超音波を発生させ、その超音波を物体に照射するとともに、その物体から帰ってくる反射波を受信して、その照射から反射までの時間に基づいて物体から超音波センサまでの距離を検出し、その距離を自車両から物体までの距離としている。
【0004】
超音波は音波であるため、拡散することにより指向性が低く検知範囲角が大きくなるという特徴を有する。そのため、超音波センサは、通常、超音波センサの所定の照射範囲内に物体が存在する場合に、超音波センサから物体までの最短距離を自車両から物体までの距離として検出するが、物体が超音波センサの照射範囲内のどの位置に存在するのか、つまり、自車両位置を基準とした物体の方向を検出することができない。
【0005】
そこで、超音波センサを用いて照射範囲内の物体の位置を推定するにあたり、自車両を基準とした物体の方向は、略円錐形を有する超音波照射範囲の中心の方向(超音波照射方向)にあると仮定して、検出された距離に基づき物体の位置を推定することが一般的に行われている。
【0006】
特に、超音波センサを用いた障害物の形状の推定は、上記した位置の推定を自車両の移動に伴い繰り返し、それらの推定した位置を繋ぎ合わせることにより行われる。
【0007】
しかし、このような方法の場合、実際には超音波照射方向に障害物がない場合であったとしても超音波センサの照射範囲内に障害物の一部でも入っていれば、当該障害物の一部からの超音波の反射波を検出してしまい、その反射波に基づく距離が超音波照射方向における自車両から障害物までの距離として認識される。したがって、検出された距離から推定される障害物の形状は、実際の障害物の形状と比較し、自車両進行方向と平行方向に伸びた形状となり、障害物の形状を正確に認識できない。
【0008】
そこで、従来では、上記した障害物の位置の推定を自車両の移動に伴い繰り返し行い、それらの位置を繋ぎ合わせた線に基づき駐車車両の形状を再推定する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−34297(段落0051〜0063、図8参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、推定した位置を繋ぎ合わせた線に基づき、駐車車両の前方位置を推定し、その位置に一般的な車両の形状を適用させることにより駐車車両の形状ならびに自車両との位置関係を再推定しているため、駐車車両間の駐車スペースの探索しかできず、障害物の形状が凸凹状になっているような複雑な駐車環境下には対応できない。また、駐車車両が斜めに位置する場合の位置推定が困難であるため、複雑な駐車環境下で精度よく障害物の位置を検出することが求められる駐車用の自動運転システムに上記特許文献1の技術を適用することは、精度的に実用性に欠ける。
【0011】
また、位置の推定を自車両の移動に伴い繰り返し行い、それらの点を繋ぎ合わせた線からさらに複雑な演算処理を施すことにより駐車車両の形状を再推定しているため、演算処理負荷が高く、高価な演算装置が必要となり、その分、車両コストが高くなる。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複雑な障害物の形状を精度よく検出するとともに、これに伴うコストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、本発明の車両用物体形状認識装置では、自車両側方に向けて円錐状に広がる照射範囲内の物体から前記自車両までの距離を検出する超音波センサを有し、前記自車両の移動に伴い前記物体から前記自車両までの距離の検出を繰り返すことにより前記物体の形状を認識する車両用物体認識装置において、前記物体の位置を示す距離点を、前記超音波センサによる自車両からの検出距離で、前記照射範囲を横断した扇状の水平面の前記自車両の前方側臨界線近辺の前方側対象線上の前方側検出点および後方側臨界線近辺の後方側対象線上の後方側検出点のうち少なくともいずれかに設定する設定手段と、前記設定された前記距離点を繋ぎ合わせた形状を前記物体の形状と認識する認識手段とを備え、前記設定手段は、前記自車両の移動に伴い繰り返し検出される検出距離のうち、前記超音波センサによる自車両からの距離を検出する検出時刻およびその所定時間だけ前後の時刻におけるそれぞれの検出距離に基づき、前記自車両の移動に伴い前記各時刻の検出距離が前記自車両に近づくときは前記距離点を前記前方側検出点に設定し、遠ざかるときは前記後方側検出点に設定することを特徴とする(請求項1)。
【発明の効果】
【0014】
請求項1にかかる発明によれば、物体の位置を示す距離点が、超音波センサによる自車両からの検出距離で、照射範囲を横断した扇状の水平面の自車両の前方側臨界線近辺の前方側対象線上の前方側検出点および後方側臨界線近辺の後方側対象線上の後方側検出点のうち少なくともいずれかに設定される。
【0015】
そして、上記した設定手段において、自車両の移動に伴い繰り返し検出される検出距離のうち、超音波センサによる自車両からの距離を検出する検出時刻およびその所定時間だけ前後の時刻におけるそれぞれの検出距離に基づき、自車両の移動に伴い各時刻の検出距離が自車両に近づくときは上記した距離点が前方側検出点に設定され、遠ざかるときは後方側検出点に設定される。
【0016】
上記各時刻における検出距離が自車両に近づく場合、そのとき(検出時刻)の超音波センサの照射範囲内にある物体の形状は自車両進行方向に対して右斜めに傾いた位置をしている可能性が高い。このような場合、超音波センサから物体までの最短距離を表す点は前方側検出点となるため、物体の位置を示す距離点を前方側検出点に設定することで正確に物体の位置を認識できる。
【0017】
また、上記各時刻における検出距離が自車両から遠ざかる場合は、物体の形状は自車両進行方向に対して左斜めに傾いた位置をしている可能性が高い。このような場合、超音波センサから物体までの最短距離を表す点は後方側検出点となるため、物体の位置を示す距離点を後方側検出点に設定することで正確に物体の位置を認識できる。
【0018】
そして、自車両の移動に伴い設定されたこれらの距離点を繋ぎ合わせた形状が障害物の形状と認識される。
【0019】
このように、各時刻における検出距離の関係から障害物の位置を正確に示す距離点を設定し、自車両の移動に伴いこの設定を繰り返し、設定したこれらの距離点を繋ぎ合わせた形状を障害物の形状と認識するため、複雑な障害物の形状を精度良く認識することができる。
【0020】
また、従来のように複雑な演算を行わなくとも、正確な障害物の形状認識ができるため、高価な演算装置を必要とせず、低コストな構成で物体の形状を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の車両用物体認識装置のブロック図である。
【図2】図1の動作説明図である。
【図3】図1の動作説明図である。
【図4】図1の動作説明図である。
【図5】図1の動作説明図である。
【図6】図1の動作説明図である。
【図7】図1の動作説明図である。
【図8】図1の動作説明図である。
【図9】障害物マップ生成の説明図である。
【図10】図1の車両用物体認識装置の動作説明用フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。なお、図1は本発明にかかる一実施形態の車両用物体認識装置のブロック図、図2〜7は各検出点設定の説明図、図8は物体形状認識の説明図、図9は、障害物マップ生成の説明図、図10は図1の動作説明用のフローチャートである。
【0023】
(構成)
本発明にかかる一実施形態の車両用物体形状認識装置1の構成について、図1を参照して説明する。
【0024】
左側面超音波センサ2および右側面超音波センサ3は、自車両10から物体までの距離を測定するためのセンサであり、自車両10の左右側面にそれぞれ設置される。これらの超音波センサ2,3は、自車両10の側方の物体に向けて超音波を照射し、当該物体からの反射波を検出して自車両10から物体までの距離を検出する。このとき、超音波は、略円錐状に照射されるため、その照射範囲が物体までの距離を検出する検出範囲となるが、地面からの反射波の影響を極力抑えるために、超音波の照射範囲は円錐を偏平させて水平方向に広がる楔形状になっている。また、距離の検出は、一定時間間隔で継続的に行われ、自車両10の移動に伴い自車両10から物体までの距離を検出し続けることで、物体の形状を推定することが可能になる。
【0025】
車速センサ4は、自車両10の速度を検出するために用いられ、舵角センサ5は、自車両10のハンドル操舵角を検出するために用いられる。
【0026】
車両移動量管理部6は、車速センサ4と舵角センサ5により検出された自車両10の車速および操舵角に関する情報に基づき自車両10の移動量を算出し、算出した自車両10の移動量(移動方向を含む)を測距データ管理部7に送る。この移動量の算出は、自車両10の移動に伴い、一定時間間隔で行われる。
【0027】
測距データ管理部7は、車両移動量管理部6から送られた自車両10の移動量データに基づいて、後述するマップ上の自車両10の位置を推定し、その位置データ(x、y座標,自車両10の向き)とその位置における左右側面超音波センサ2,3から取得した超音波センサ2,3それぞれから物体までの検出距離に関する測距データを記憶し、それらの測距データを物体形状推定部8に送る。
【0028】
物体形状推定部8は、自車両10の移動に伴い繰り返し検出される測距データ管理部7から取得した測距データに基づく検出距離のうち、超音波センサ2,3による自車両10からの距離を検出する検出時刻およびその所定時間だけ前後の時刻におけるそれぞれの検出距離に基づき、物体の位置を示す距離点を設定する。このような物体形状推定部8の設定機能が本発明における設定手段に相当するが、この設定機能については、以下に説明する。
【0029】
上記したように、超音波センサ2,3は、超音波センサから物体までの最短距離を自車両10から物体までの距離として検出するが、物体が超音波センサの照射範囲内のどの位置に存在するのか、つまり、自車両10の位置を基準とした物体の方向は検出することができない。そこで、図2に示すように、左側面超音波センサ2を例にとると、物体形状推定部8は、障害物11の位置を示す距離点を、超音波センサ2,3による自車両からの検出距離で、超音波照射範囲を横断した扇状の水平面の自車両10の前方側臨界線近辺の前方側対象線12上の前方側検出点12aおよび後方側臨界近辺の後方側対象線13上の後方側検出点13aのうち少なくともいずれかに設定する。
【0030】
例えば、図3に示すように、超音波センサ2により自車両10から障害物11までの距離が検出された場合、物体形状推定部8は、その測距データとその検出時刻の所定時間Δtだけ前の時刻(前時刻)の測距データを測距データ管理部7より取得するとともに、上記検出時刻より所定時間Δtだけ後の時刻(後時刻)の測距データを測距データ管理部7から取得する。図3の場合、前時刻の測距データにより得られた検出距離に対して検出時刻における検出距離は短く、検出時刻における検出距離に対して後時刻の検出距離は短くなっており、障害物11が自車両10に対して近づいていることが分かる。
【0031】
このような場合、検出時刻の超音波センサ2の超音波照射範囲における障害物の形状は自車両10に対して右斜めに傾いた形状をしている可能性が高いため、物体形状推定部8は、障害物11の形状を右斜めに傾いた形状であると推定する。
【0032】
ところで、超音波センサ2は上記のように、超音波センサ2から障害物までの最短距離を自車両10から障害物11の距離として検出するが、検出時刻における超音波センサ2から障害物11までの最短距離を示す点は前方側検出点12aであるため、前方側検出点12aは障害物11の位置を正確に示す。したがって、このように検出時刻およびその所定の時刻だけ前後の時刻の検出距離が自車両10に近づくときは、物体形状推移部8は障害物11の位置を示す距離点を前方側検出点12aに設定する。
【0033】
図4に示すように、検出時刻、前時刻および後時刻の検出距離の比較の結果により、障害物11が自車両10に対して遠ざかっていることが分かった場合、検出時刻の超音波センサ2の照射範囲における障害物11の形状は、自車両10に対して左斜めに傾いた形状をしている可能性が高いため、物体形状推定部8は、障害物11の形状を左斜めに傾いた形状であると推定する。
【0034】
このような場合、検出時刻における超音波センサ2から障害物11までの最短距離を示す点は後方側検出点13aであるため、前方側検出点13aは障害物11の位置を正確に示す。したがって、検出時刻およびその所定の時刻だけ前後の時刻の検出距離が自車両10よりも遠ざかるときは、物体形状推移部8は、障害物11の位置を示す距離点を後方側検出点13aに設定する。
【0035】
図5に示すように、前時刻の検出距離に対して検出時刻の検出距離が長く、検出時刻の距離に対して後時刻の検出距離が短くなる場合、検出時刻の超音波センサ2の照射範囲内の障害物11の屈曲点α部分における形状を推定することが困難である。また、図6に示すように、前時刻の検出距離に対して検出時刻の検出距離が短く、検出時刻の検出距離に対して後時刻の検出距離が長くなる場合も、検出時刻の超音波センサ2の照射範囲内の障害物11の屈曲点β部分における形状を推定することが困難である。したがって、これらの場合に、物体形状推定部8は、障害物11の位置を示す距離点を前方側12aおよび後方側検出点13aそれぞれに設定する。
【0036】
さらに、図7に示すように、上記した各検出時刻におけるそれぞれの検出距離が、全て同じ距離である場合、検出時刻の超音波センサ2の照射範囲における障害物11の形状は、自車両10の進行方向と平行であると推定できる。しかし、このときの超音波センサ2から障害物11までの最短距離を示す点は、超音波照射方向にあるため、障害物11の位置を示す距離を前方側12aおよび後方側検出点13aのいずれかに設定するのは適当でない。したがって、各検出時刻におけるそれぞれの検出距離が変わらない場合、物体形状推定部8は、障害物11の位置を示す距離点を前方側検出点12aおよび後方側検出点13aそれぞれに設定する。
【0037】
以上のように、物体形状推定部8は、各検出時刻におけるそれぞれの検出距離に基づき、自車両10の移動に伴い各時刻の検出距離が自車両10側に近づくときおよび遠ざかるときを除いて、障害物11の位置を示す距離点を前方側検出点12aおよび後方側検出点13aそれぞれに設定する。
【0038】
次に、物体形状推定部8は、上記設定された距離点12a、13aを繋ぎ合わせた形状を障害物11の形状と認識する(本発明における認識手段)。例えば、図8に示すような、自車両進行方向の左側に点線で表すジグザグ形状をした障害物がある場合、物体形状推定部8は、自車両10の移動に伴い障害物11の自車両10の進行方向に対して右斜めに傾いた部分の位置を示すそれぞれの距離点を前方側検出点12aに設定し、障害物11の凸部の位置を示す距離点を前方側検出点12aおよび後方側検出点13aそれぞれに設定し、左斜めに傾いた部分の位置を示す距離点を後方側検出点13aに設定し、これらの各検出点12a、13aそれぞれを繋ぎ合わせた形状を障害物11の形状と認識する。このように、右斜めや左斜めに傾いた複雑な形状を有する障害物11の形状を正確に認識することができる。
【0039】
障害物マップ生成部9は、物体形状推定部8により認識された物体形状に基づいて自車両10周辺のマップを生成する。例えば、本実施形態の車両用物体認識装置1を用いて駐車空間を認識する場合、図9に示すように、ドライバのボタン操作などを契機に、その時の自車両10の位置を原点14として、自車両10の進行方向をY軸、これとは垂直の方向をX軸とする座標平面を設定する。
【0040】
そして、自車両10の移動に伴い超音波センサ2,3により自車両10から駐車車両15までの距離を検出し続け、それらのデータに基づいて物体形状推定部8で駐車車両15の形状を推定する。このとき、自車両10の位置は、車速センサ4と舵角センサ5から検出した自車両10の速度と操舵角に関する情報に基づき推定し、その時の超音波センサ2、3の測距データをもとに駐車車両15の大きさと位置に対応する駐車車両15をマップ上に生成し、この生成を繰り返すことで駐車空間を認識する。
【0041】
次に、本実施形態の車両用物体認識装置1の動作について、図10のフローチャートを参照して説明する。
【0042】
まず、ドライバのボタン操作などを契機として、そのときの自車両10の位置を示す原点14およびX−Y座標平面が設定される。そして、車速センサ4と舵角センサ5により検出された自車両10の速度と操舵角に関する情報をもとに車両移動量推定部6で自車両10の移動量(移動方向を含む)を算出し、設定された座標平面における自車両10の位置を推定する(ステップS2)とともに、超音波センサ2,3から測距データを取得する(ステップS1)。
【0043】
次に、ステップS2にて、取得した測距データの検出時刻および2Δt時間前の時刻までのそれぞれの測距データが測距データ管理部7に存在するか否かを物体形状推定部8で判断し、測距データが存在する場合は、物体形状推定部8は、それら3つの時刻におけるそれぞれの検出距離に基づき(ステップS3)、自車両10の移動に伴いこれらの各時刻の検出距離が自車両10に近づくときは、上記検出時刻のΔt時間前の時刻の障害物11の位置を示す距離点を前方側検出点12aに設定し(ステップS4)、自車両10から遠ざかるときは後方側検出点13aに設定し(ステップS5)、その他の場合は前方側検出点12aおよび後方側検出点13aそれぞれに設定する(ステップS6)。測距データの検出時刻から2Δt時間前までの測距データが存在しない場合は、ステップ2をNOで通過し、2Δt時間前までのデータが測距データ管理部7に記憶されるまで距離検出が繰り返される。
【0044】
次に、設定された検出点12a,13aを前回設定された検出点とを線で結び(ステップS7)、その線を周辺マップ上に追加し(ステップS8)、ステップS9にて周辺マップ上に駐車スペースがあるかどうかを判断し、ある場合は、駐車スペースの存在を自車両10に設けられた液晶ディスプレイの表示画面に表示するなどしてドライバに通知して(ステップS10)物体形状認識を終了する。また、駐車スペースがない場合は、スペースが見つかるまで障害物11の形状認識を繰り返す。
【0045】
したがって、上記実施形態によれば、物体形状推定部8は、物体の位置を示す距離点を超音波センサ2,3による自車両10からの検出距離で、照射範囲を横断した扇状の水平面の自車両10の前方側臨界線近辺の前方側対象線12上の前方側検出点12aおよび後方側臨界線近辺の後方側対象線13上の後方側検出点13aのうち少なくともいずれかに設定し、当該物体形状推定部8の設定手段は、自車両10の移動に伴い繰り返し検出される検出距離のうち、前記超音波センサ2,3による自車両10からの距離を検出する検出時刻およびその所定時間Δtだけ前、後の時刻におけるそれぞれの検出距離に基づき、自車両10の移動に伴い各時刻の検出距離が自車両10に近づくときは距離点を前方側検出点12aに設定し、遠ざかるときは後方側検出点13aに設定し、その他の場合は前方側検出点12aおよび後方側検出点13aのそれぞれに設定し、設定された距離点12a,13aそれぞれを繋ぎ合わせた形状を物体の形状と認識するため、自車両10の進行方向に対して右斜めや左斜めに傾いた複雑な形状を有する障害物11の形状を正確に認識することができる。
【0046】
また、従来のように複雑な演算を行わなくとも、単に3つの検出時刻におけるそれぞれの検出距離から障害物11の位置を示す距離点を、前方側検出点12aおよび後方側検出点13aのうち少なくともいずれかに設定し、自車両10の移動に伴い設定が繰り返されるこれらの距離点12a,13aを繋ぎ合わせた形状で、正確な障害物11の形状認識ができるため、高価な演算装置を必要とせず、低コストな構成で物体の形状を認識することができる。
【0047】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0048】
例えば、上記した実施形態では、検出点を、前方側、後方側の2点で設定したが、図5〜7に示す例において、これらに加えて超音波照射範囲を横断した扇状の水平面の中心近辺の中心対象線上に中心検出点を設定し、自車両10の移動に伴い繰り返し検出される検出距離のうち、超音波センサ2,3による自車両10からの距離を検出する検出時刻およびその所定時間だけ前後の時刻におけるそれぞれの検出距離に基づき、自車両10の移動に伴い上記各時刻の検出距離が自車両10に近づくときおよび遠ざかるとき以外の場合(その他の場合)は、中心検出点に設定してもよい。これにより、図5〜7に示す例においては障害物11の形状をより一層精度よく認識することができる。具体的には、図5、6に示す例では、障害物11の屈曲点α,βまでの検出距離の精度がよくなり、また、図7に示す例のように、障害物11の形状が自車両10の進行方向と平行である場合、超音波センサ2,3から障害物11までの最短距離は、超音波センサ2,3から中心検出点までの距離であるため、中心検出点は障害物11の位置を正確に示す。したがって、このような中心検出点を設定することにより、自車両10の移動に伴い繰り返し設定される距離点を繋ぎ合わせた形状は、前方側および後方側にのみ距離点を設定する上記実施形態により認識される形状より正確な障害物11の形状を表すため、形状認識の精度をさらに向上させることができる。
【0049】
なお、上記実施形態においては、検出点を超音波照射範囲を横断した扇状の水平面の前方側および後方側臨界線近辺の前方側対象線12および後方側対象線13上に設定したが、これらの対象線12,13は後方側臨界線および後方側臨界線それぞれと一致しても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1… 車両用物体形状認識装置
2… 左側面超音波センサ
3… 右側面超音波センサ
7… 測距データ管理部
8… 物体形状推定部(設定手段、認識手段)
12… 前方側対象線
12a… 前方側検出点
13… 後方側対象線
13a… 後方側検出点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両側方に向けて円錐状に広がる照射範囲内の物体から前記自車両までの距離を検出する超音波センサを有し、前記自車両の移動に伴い前記物体から前記自車両までの距離の検出を繰り返すことにより前記物体の形状を認識する車両用物体認識装置において、
前記物体の位置を示す距離点を、前記超音波センサによる自車両からの検出距離で、前記照射範囲を横断した扇状の水平面の前記自車両の前方側臨界線近辺の前方側対象線上の前方側検出点および後方側臨界線近辺の後方側対象線上の後方側検出点のうち少なくともいずれかに設定する設定手段と、
前記設定された前記距離点を繋ぎ合わせた形状を前記物体の形状と認識する認識手段とを備え、
前記設定手段は、前記自車両の移動に伴い繰り返し検出される検出距離のうち、前記超音波センサによる自車両からの距離を検出する検出時刻およびその所定時間だけ前後の時刻におけるそれぞれの検出距離に基づき、前記自車両の移動に伴い前記各時刻の検出距離が前記自車両に近づくときは前記距離点を前記前方側検出点に設定し、遠ざかるときは前記後方側検出点に設定することを特徴とする車両用物体認識装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−16052(P2013−16052A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148782(P2011−148782)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】