説明

車両用物入装置のロック部構造

【課題】緊急時に蓋体が開いてしまうことを防止し得るようにする。
【解決手段】物入装置本体の開口部に、ストライカ31を取付けると共に、開口部に対して開閉自在に取付けられた蓋体25に、ストライカ31に対して係合離脱可能なロック用レバー機構32を取付けた車両用物入装置のロック部構造であって、ロック用レバー機構32が、乗員によって操作可能な操作ノブ部材35と、ストライカ31に対して係合離脱可能なフック部材36とに分離され、フック部材36が、ストライカ31に対し上側から係合離脱自在に構成され、操作ノブ部材35が、手前側へ引くことにより、フック部材36を係合離脱動可能に構成されるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用物入装置のロック部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設けられている。このインストルメントパネルの助手席側の部分には、グローブボックスなどの車両用物入装置が設置されている。このグローブボックスは、物入装置本体と、この物入装置本体の開口部に開閉自在に取付けられた蓋体とを備えており、開口部と蓋体との間には、ロック部が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このロック部は、図9に示すように、物入装置本体の開口部に取付けられたストライカ2と、蓋体に取付けられたロック用レバー部材3とを備えている。このロック用レバー部材3は、その手前側に、乗員によって操作可能なノブ部4を有し、その奥側に、ストライカ2に下側から係合離脱可能なフック部5を有すると共に、その中間部に、蓋体に軸支される回転中心軸部6を有している。
【0004】
このような構成によれば、図11(a)(b)(c)に順に示すように、ノブ部4を手前側へ引くことにより、回転中心軸部6を中心としてロック用レバー部材3が図中反時計廻りに回動され、フック部5が下降されてストライカ2から下側に離脱され、以て、図10に示すように、ロックが解除されるようになっている。
【特許文献1】特開2000−8673
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の車両用物入装置のロック部構造では、ロックがかかった状態で緊急時に乗員の頭部などが蓋体へ接触した場合に、図9、図10に示すように、蓋体と共にロック用レバー部材3が、頭部などの入力方向8へ下降されるため、フック部5がストライカ2から外れて蓋体が開いてしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、物入装置本体の開口部に、ストライカを取付けると共に、前記開口部に対して開閉自在に取付けられた蓋体に、前記ストライカに対して係合離脱可能なロック用レバー機構を取付けた車両用物入装置のロック部構造において、前記ロック用レバー機構が、乗員によって操作可能な操作ノブ部材と、ストライカに対して係合離脱可能なフック部材とに分離され、該フック部材が、ストライカに対し上側から係合離脱自在に構成され、前記操作ノブ部材が、手前側へ引くことにより、フック部材を係合離脱動可能に構成された車両用物入装置のロック部構造を特徴としている。
【0007】
請求項2に記載された発明では、蓋体に、ロック用レバー機構を設置収容可能な設置用凹部が形成され、該設置用凹部に対して、フック部材が奥面側から取付けられると共に、操作ノブ部材が手前面側から取付けられるよう構成された請求項1記載の車両用物入装置のロック部構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、物入装置本体の開口部に、ストライカを取付けると共に、前記開口部に対して開閉自在に取付けられた蓋体に、前記ストライカに対して係合離脱可能なロック用レバー機構を取付けた車両用物入装置のロック部構造において、前記ロック用レバー機構が、乗員によって操作可能な操作ノブ部材と、ストライカに対して係合離脱可能なフック部材とに分離され、該フック部材が、ストライカに対し上側から係合離脱自在に構成され、前記操作ノブ部材が、手前側へ引くことにより、フック部材を係合離脱動可能に構成されたことにより、以下の作用効果を得ることができる。即ち、緊急時に乗員の頭部などが蓋体へ接触した場合に、蓋体と共にフック部材が、頭部などの入力方向へ下降されたとしても、フック部材がストライカから外れることがなくなるため(或いは、外れ難くなるため)、蓋体が開いてしまうことが防止できる。
【0009】
請求項2の発明によれば、蓋体に、ロック用レバー機構を設置収容可能な設置用凹部が形成され、該設置用凹部に対して、フック部材が奥面側から取付けられると共に、操作ノブ部材が手前面側から取付けられるよう構成されたことにより、別部品に分離されたフック部材と操作ノブ部材とを、蓋体の設置用凹部に対して、異なる方向からそれぞれワンタッチで取付けられるようにすることが可能となるため、部品数の増加に伴う組付性の悪化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図8は、この発明の実施例を示すものである。
【0012】
まず、構成について説明する。
【0013】
自動車などの車両には、車室内の前部に、図1、図2に示すようなインストルメントパネル21が設けられている。このインストルメントパネル21の助手席側の部分には、グローブボックス22などの車両用物入装置が設置されている。このグローブボックス22は、物入装置本体(図示せず)と、この物入装置本体の開口部(図示せず)に開閉自在に取付けられた蓋体25とを備えている。そして、開口部と蓋体25との間には、ロック部26が設けられる。
【0014】
この場合、グローブボックス22は、上下に二段に設けられたうちの上側のもの(いわゆるアッパグローブボックス)とされている。このアッパグローブボックスの場合、開口部は、物入装置本体の手前面から上面にかけて形成されている。蓋体25は、上縁部近傍の両側部に設けられてほぼ車幅方向27へ延びる開閉中心軸(図示せず)を中心として、下縁部が手前側で且つ上方へ回動することにより、開閉されるようになっている。ロック部26は、開口部および蓋体25の下縁部における、車幅方向27のほぼ中央の位置に設置されている。
【0015】
このロック部26は、図3〜図8に示すようなものであり、物入装置本体の開口部に取付けられたストライカ31(図6参照。以下、同様)と、蓋体25に取付けられたロック用レバー機構32(図4参照。以下同様)とを備えている。
【0016】
ストライカ31は、物入装置本体の開口部からほぼ車両前後方向33の後方へ向けて延びる両腕部と、この両腕部の後端部間をほぼ車幅方向27に連結する連結部とを有する、平面視ほぼコ字状を呈している。この平面視ほぼコ字状のストライカ31は、金属製の棒状部材を曲げ加工することなどによって構成されている。
【0017】
以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、ロック用レバー機構32が、乗員によって操作可能な操作ノブ部材35と、ストライカ31に対して係合離脱可能なフック部材36とに分離されている(即ち、別体部品とされている)。この場合、操作ノブ部材35とフック部材36とは、それぞれが樹脂部品によって構成されている。
【0018】
そして、図6、図7に示すように、フック部材36は、ストライカ31に対し上側から係合離脱自在に構成されている。
【0019】
また、図8に示すように、操作ノブ部材35は、手前側へ引くことにより、フック部材36を係合離脱動可能に構成されている。
【0020】
ここで、図4に示すように、蓋体25には、ロック用レバー機構32を設置収容可能な設置用凹部41が形成されている。そして、設置用凹部41に対して、フック部材36が奥面側(蓋体25の裏面側または車両前後方向33の前面側)から取付けられるように構成されている。また、操作ノブ部材35が手前面側(蓋体25の表面側または車両前後方向33の後面側)から取付けられるよう構成されている。
【0021】
より具体的には、図5に示すように、フック部材36は、車両前後方向33について見た場合、その奥側に、ストライカ31に上側から係合離脱可能なフック部45を有し、その手前側に、操作ノブ部材35によって操作される被操作部46を有し、その中間部に、蓋体25に軸支される回転中心軸部47を有している。フック部45は、下向きに形成されている。回転中心軸部47は、ほぼ車幅方向27の両側へ向け軸心を同一にして一対突設されている。なお、フック部45と被操作部46と回転中心軸部47とは、一体成形されている。
【0022】
また、フック部45は、上下方向について見た場合、回転中心軸部47の軸心よりも若干低い位置にてストライカ31に係合されるように構成されている。被操作部46は、回転中心軸部47の軸心と同じかそれよりも若干高い位置にて操作ノブ部材35によって操作されるように構成されている。
【0023】
一方、操作ノブ部材35は、乗員によって操作可能なノブ部51を有すると共に、ノブ部51の裏面側の上縁部に、フック部材36の被操作部46を上側から操作可能な操作部52と、蓋体25に軸支される回転中心軸部53とを有している。ノブ部51と操作部52と回転中心軸部53とは、一体成形されている。
【0024】
ノブ部51は、手前側から見て、ほぼ横長の長方形状を呈していると共に、側方から見て、蓋体25とほぼ面一となる湾曲形状を呈している。操作部52は、ノブ部51の上縁部における車幅方向27のほぼ中央部から奥側へ向けて突設されている。回転中心軸部53は、ノブ部51の上縁部における車幅方向27のほぼ両側部近傍に一対形成されている。一対の回転中心軸部53は、ほぼ車幅方向27の外方へ向け軸心を同一にして突設されている。一対の回転中心軸部53は、背面視でノブ部51の両側縁部から外方へはみださない程度の長さとされている。操作部52は、回転中心軸部53の軸心に対し、若干奥側で且つ若干高い位置にて被操作部46を操作するように構成されている。そして、操作部52と、一対の回転中心軸部53との間には、フック部材36の手前側部分(被操作部46および回転中心軸部47の周辺)との干渉を防止可能な切欠部54がそれぞれ形成されている。よって、フック部材36の回転中心軸部47は、切欠部54に納まるように構成される。また、フック部材36の回転中心軸部47は、操作ノブ部材35の回転中心軸部53に対し、奥側で且つ低い位置に配置される。
【0025】
そして、フック部材36手前側の被操作部46と、操作ノブ部材35奥側の操作部52とによって、操作力伝達部56が構成される。即ち、被操作部46には、ほぼ水平な押圧面が形成され、操作部52は、その先端部および下面が、押圧面を下方へ押下げつつ、押圧面に沿って車両前後方向33へ若干スライド可能な押圧部とされている。なお、被操作部46に対し、押圧面は、若干位置が低くなるように段差形成されている。
【0026】
更に、図4に示すように、設置用凹部41は、その上部に操作ノブ部材35のノブ部51を設置・収容可能なノブ収容部61を有すると共に、その下部に、乗員が操作のために指を差込可能な指差込部62を有している。指差込部62は、ノブ収容部61よりも深く形成されている。
【0027】
ノブ収容部61は、車幅方向27の両側部に、ノブ部51の両側部を受けるストッパ面部64を有している。また、ノブ収容部61は、車幅方向27の中央部に、操作部52やフック部材36を挿通配置可能な挿通孔部65を有している。更に、ノブ収容部61は、車幅方向27における、ストッパ面部64と挿通孔部65との間の位置に、一対の軸受壁部66を有している。各軸受壁部66は、奥側へ張出す内側壁部67と外側壁部68とを有する二重構造を備えている。内側壁部67には、回転中心軸部47を軸支可能な軸支部が形成され、外側壁部68には、回転中心軸部47を軸支可能な軸支部が形成されている。対応する内側壁部67と外側壁部68とは、所要の間隔を有してほぼ平行に設置されると共に、奥側の縁部間が連結されることにより、平面視ほぼコ字状に構成されている。また、上記したフック部材36の回転中心軸部47と操作ノブ部材35の回転中心軸部53との配置に伴って、内側壁部67の軸支部は、外側壁部68の軸支部に対して、奥側で且つ低い位置に形成される。
【0028】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0029】
組付けに際しては、図4に示すように、別部品に分離されたフック部材36と操作ノブ部材35とは、蓋体25の設置用凹部41に対して、異なる方向からそれぞれ取付けるようにする。
【0030】
図6に示すように、ロックがかかった状態から、図8(a)(b)(c)に順に示すように、操作ノブ部材35のノブ部51を手前側へ引くと、回転中心軸部53を中心として操作部52が図中反時計廻りに回動して、フック部材36の被操作部46を下方へ押すため、フック部材36が回転中心軸部47を中心として図中時計廻りに回動し、フック部45が上昇してストライカ31から上側へ離脱し、以て、図7に示すように、ロックが解除される。
【0031】
そして、図6に示すように、ロックがかかった状態で緊急時に乗員の頭部などが蓋体25へ接触した場合、蓋体25と共にフック部材36が、頭部などの入力方向71へ下降されるが、フック部5は上側からストライカ31に係合離脱するものとなっているため、フック部5がストライカ31から外れることがなく、蓋体25に対するロック状態を確実に保持することができる。
【0032】
このように、この実施例によれば、物入装置本体の開口部に、ストライカ31を取付けると共に、開口部に対して開閉自在に取付けられた蓋体25に、ストライカ31に対して係合離脱可能なロック用レバー機構32を取付けた車両用物入装置のロック部構造において、ロック用レバー機構32が、乗員によって操作可能な操作ノブ部材35と、ストライカ31に対して係合離脱可能なフック部材36とに分離され、フック部材36が、ストライカ31に対し上側から係合離脱自在に構成され、操作ノブ部材35が、手前側へ引くことにより、フック部材36を係合離脱動可能に構成されたことにより、以下の作用効果を得ることができる。
【0033】
即ち、緊急時に乗員の頭部などが蓋体25へ接触した場合に、蓋体25と共にフック部材36が、頭部などの入力方向へ下降されたとしても、フック部材36がストライカ31から外れることがなくなるため(或いは、外れ難くなるため)、蓋体25が開いてしまうことが防止できる。
【0034】
また、蓋体25に、ロック用レバー機構32を設置収容可能な設置用凹部41が形成され、設置用凹部41に対して、フック部材36が奥面側から取付けられると共に、操作ノブ部材35が手前面側から取付けられるよう構成されたことにより、別部品に分離されたフック部材36と操作ノブ部材35とを、蓋体25の設置用凹部41に対して、異なる方向からそれぞれワンタッチで取付けられるようにすることが可能となるため、部品数の増加に伴う組付性の悪化を防止することができる。
【0035】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例にかかるインストルメントパネルの斜視図である。
【図2】図1のインストルメントパネルを車両後方から見た図である。
【図3】図2のロック部(蓋体側)の部分拡大図である。
【図4】図3の分解斜視図である。
【図5】図4のロック用レバー機構の分解斜視図である。
【図6】係合状態のロック部の斜視図である。
【図7】離脱状態のロック部の斜視図である。
【図8】(a)(b)(c)はロック部の離脱過程を順に示す側断面図である。
【図9】従来例にかかるロック部の斜視図(係合状態)である。
【図10】離脱状態の図9のロック部の斜視図である。
【図11】(a)(b)(c)は図9のロック部の離脱過程を順に示す側断面図である。
【符号の説明】
【0037】
25 蓋体
31 ストライカ
32 ロック用レバー機構
35 操作ノブ部材
36 フック部材
41 設置用凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物入装置本体の開口部に、ストライカを取付けると共に、
前記開口部に対して開閉自在に取付けられた蓋体に、前記ストライカに対して係合離脱可能なロック用レバー機構を取付けた車両用物入装置のロック部構造において、
前記ロック用レバー機構が、乗員によって操作可能な操作ノブ部材と、ストライカに対して係合離脱可能なフック部材とに分離され、
該フック部材が、ストライカに対し上側から係合離脱自在に構成され、
前記操作ノブ部材が、手前側へ引くことにより、フック部材を係合離脱動可能に構成されたことを特徴とする車両用物入装置のロック部構造。
【請求項2】
蓋体に、ロック用レバー機構を設置収容可能な設置用凹部が形成され、
該設置用凹部に対して、フック部材が奥面側から取付けられると共に、
操作ノブ部材が手前面側から取付けられるよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の車両用物入装置のロック部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−230413(P2008−230413A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73144(P2007−73144)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】