説明

車両用異常事態報知装置及び車両用異常事態処理装置

【課題】 簡単かつ安価な構成としながら、痴漢行為等の異常事態が発生したときに周囲にいる人に異常事態の発生を報知して認知させることができる車両用異常事態報知装置を提供する。
【解決手段】 痴漢行為などの異常事態が発生した場合に、被害を受けている者が押ボタン10、携帯電話機11、専用発信器12などを操作すると、異常事態発生信号が制御装置20へ送られ、制御装置20ではスピーカ31、警告灯32、表示パネル33などを介して、痴漢行為などの異常事態が付近で発生している旨を報知する。これにより、異常事態が発生していることを付近の人々に認知させることができるため、例えば、痴漢行為等の被害から迅速に被害者を救済することができる。また、急病人の発生等に対しても付近に医者などが乗車している場合には、迅速な救済措置が図られることを期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の異常事態報知装置及び異常事態処理装置に関する。詳しくは、例えば異常事態が生じたときに、制御装置が異常情報を受信して、異常事態が発生したこと報知するようにした車両用異常事態報知装置、及び当該装置を含んで構成される異常事態処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電車、バス等の車両において、女性等が痴漢被害等を受けることがあっても、被害者は声を上げて助けを求め難いものであり、何らかの手段を介して、被害者が他人に被害を受けている旨等を伝えることができれば、被害者を救済できるのは勿論、痴漢行為者を検挙等できる可能性が高まると共に、当該手段の存在により痴漢行為等の犯罪行為に対する抑止力も働くこととなる。
【0003】
このようなことから、従来においては、この種の手段として、例えば、特許文献1などでは、ボタンを押すと警報ベルの代わりに、女性の声で助けを求める音声が再生されるバッチが提案されている。
【特許文献1】特開2002−279557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものは、音声を発しているだけなので、周囲にいる人に痴漢行為等の被害を受けている旨を知らせることしかできなかった。このため、被害者の救済が十分に行なえない可能性があると共に、痴漢行為者の逃亡等も容易で、痴漢行為等の犯罪行為に対する抑止力が十分に働かないといった実情がある。
【0005】
なお、痴漢行為に限らず、スリその他の犯罪行為が発生した場合、急病人が発生した場合、災害が発生した場合などの異常事態(或いは緊急事態、以下、異常事態で代表して記す)が発生した場合において、迅速な救済措置などを行えるようにすることにも強い要請がある。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、痴漢行為等の異常事態が発生したときに、周囲にいる人に異常事態の発生を確実かつ迅速に報知して認知させることができる車両用異常事態報知装置を提供することを目的とする。また、当該車両用異常事態報知装置を含んで構成され、発生した異常事態に応じた所定の処理を施すことができるようにした車両用異常事態処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明に係る車両用異常事態報知装置は、図1に示すように、
通知者の操作に応じて異常事態の発生を知らせる情報を含む異常情報を通知する異常事態通知手段と、
異常事態が発生したことを報知する異常事態報知手段と、
前記異常事態通知手段から異常情報を受信すると、前記異常事態報知手段に情報を送信して異常事態が発生したことを報知させる制御手段と、
を含んで構成する。
【0008】
前記異常事態通知手段には、誤作動或いはいたずらを防止するための機能が備えられることを特徴とすることができる。
【0009】
前記異常情報は、発生した異常事態の種類に関する情報を含むことを特徴とすることができる。
【0010】
本発明に係る車両用異常事態処理装置は、
上記車両用異常事態報知装置を含んで構成されると共に、
前記制御手段が、
受信した異常情報を所定の人或いは装置の少なくとも一つに通報する異常事態通報手段と、
受信した異常情報に従って所定の処理を施させるための処理情報を車両設備或いは車両の運行に供される設備の少なくとも一つに送信し所定の処理を施させる異常事態処理手段と、
を含んで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単かつ安価な構成でありながら、痴漢行為等の異常事態が発生したときに、周囲にいる人に異常事態の発生を確実かつ迅速に報知して認知させることができる車両用異常事態報知装置を提供することができる。また、発生した異常事態に応じた所定の処理を施すことができる車両用異常事態処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係る車両用異常事態報知装置を含む車両用異常事態処理装置の一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0013】
本実施の形態に係る車両用異常事態処理装置は、図3に示すように、バス、電車、モノレールなどの車両1等のつり革付近や座席付近に、異常事態通知手段としての押ボタン10が複数配設されており、痴漢被害やスリ等の犯罪行為が発生した場合や急病人が発生した場合などに、その異常事態の発生を通知する者がこの押しボタン10を押すことで、異常事態発生信号が制御装置20へ送られる。なお、発生した異常事態の種類に応じて、複数種の押ボタン10を配設することができ、或いは押しボタン10の長押し、押す回数などによって異常事態発生信号の種類を区別できるように構成することもできる。
【0014】
前記押ボタン10に限らず、例えば携帯電話機11から所定の操作を行って異常事態発生信号を送信し、車両1の室内に所定間隔で配置された受信器13を介して制御装置20へ異常事態発生信号を送るように構成することもできる。なお、発生した異常事態の種類に応じて前記所定の操作を異ならせることで、異常事態発生信号の種類を区別できるように構成することができる。ここで、前記異常事態発生信号が、本発明に係る異常情報に相当する。
【0015】
更に、携帯電話機11に限らず、専用の発信器12を各人が購入或いはレンタル等して乗車時に所持しておくことも可能である。
【0016】
制御装置20では、異常事態通知手段からの異常事態発生信号を受けると、異常事態発生信号に基づいて異常事態の種類を特定して報知すべき内容を判断し、音声によって報知するスピーカ31、視覚に訴えて報知する警告灯32、例えば車両1内に情報表示のために備えられている表示パネル(例えば、液晶、LEDなどで構成されるスクリーン)33などの少なくとも一つに指示(情報を送信)して、異常事態が付近で発生している旨を異常事態が発生している周辺の人々に確実に報知して認知させる。
【0017】
痴漢やスリ等の犯罪行為の場合は、その旨を周囲に確実に報知して認知させ注意を喚起するだけでも、痴漢やスリ等の犯罪行為が停止され、十分に痴漢やスリ等の犯罪行為を抑止する効果が期待できる。また、急病人の発生等に対しても付近に医者などが乗車している場合には、迅速な救済措置が図られることを期待できる。
【0018】
なお、制御装置20は、図示しないCPU、ROM、RAM、A/D、D/A変換器、各種インターフェースなどを備えて構成され、ROM等のメモリに予め格納されているプログラムに従って、所定の機能を奏するように動作するものである。
【0019】
ここで、スピーカ31、警告灯32、表示パネル33等が、本発明に係る異常事態報知手段に相当し、前記制御装置20が本発明に係る制御手段に相当する。なお、車両用異常事態報知装置は、上記の異常事態通知手段、異常事態報知手段、制御手段を含んで構成される。
【0020】
また、制御装置20では、車両1に乗車している車掌、車両管理センタ、鉄道警察の管理センタなどに異常事態が発生した旨を通報する。これにより、通報を受けた車掌、車両管理センタ、鉄道警察の管理センタなどでは、異常状態の種類に応じた措置を迅速に採ることができることになる。例えば、痴漢やスリなどの被害が発生した場合には、鉄道警察の署員を該当車両付近に待機させたり、急病人が発生した場合には、医者、救急車等を配置させることができる。
かかる制御装置20の機能が、本発明に係る異常事態通報手段に相当する。
【0021】
更に、制御装置20は、発生した異常事態の種類に応じて、車両1を緊急停止させるか否か、停車駅において特定の扉のみを開かせるべきか否か、或いは停車駅において該当車両1の扉或いは全ての扉を開けないようにするか否かなどの処理内容を判断し、車両の運行や扉の開閉制御を行う車両制御設備や、駅のホームゲートの開閉制御を行なうホームゲート制御設備等に、施すべき処理内容についての情報を有する処理信号(処理情報)を送る。
かかる制御装置20の機能が、本発明に係る異常事態処理手段に相当する。
なお、前記車両制御設備やホームゲート制御設備等が、本発明に係る車両設備或いは車両の運行に供される設備に相当する。
【0022】
そして、制御装置20からの処理信号を受けた車両制御設備やホームゲート制御設備などでは、処理信号に応じた処理を実行する。
このように構成することで、例えば、火災等が発生した場合には、車両1を緊急停止させて、車両1の全扉の施錠を解除するなどして、乗車している人々を迅速に避難させることができることになる。
【0023】
また、例えば、停車駅において特定の扉のみを開かせるようにすることで、他の扉から降車した人々が見物などして異常事態に対する迅速な処置の妨げとなることなどを防止することができる。
【0024】
そして、例えば、急病人が発生した場合などは、その場で救命措置等を行う必要がある場合があるが、このような措置を人垣等で妨げられることなく実行することが可能となる。
【0025】
更に、例えば、痴漢被害やスリの被害が発生した場合には、停車駅において扉を開けないようにすることで、犯人の逃亡等を防止することができることになる。
【0026】
また、例えば、異臭等が発生し、全員を緊急避難させることが必要な異常事態が発生した場合などには、全扉を開かせることで、乗車している人々を迅速に避難させることができることになる。
【0027】
このように、本実施の形態によれば、異常事態が発生した場合には、異常事態通知手段としての押ボタン10、携帯電話機11、専用発信器12などを介して、その異常事態の発生を通知する者がこれらを操作することで、異常事態発生信号が制御装置20へ送られ、制御装置20では、スピーカ31、警告灯32、表示パネル33などの異常事態報知手段を介して、異常事態が付近で発生している旨を確実な方法で報知するようにしたので、異常事態が発生していることを付近の人々に確実に認知させることができる。このため、例えば、痴漢行為やスリ等の被害から迅速に被害者を救済することができる。また、急病人の発生等に対しても付近に医者などが乗車している場合には、迅速な救済措置が図られることを期待できる。
【0028】
また、本実施の形態では、制御装置20から車掌、車両管理センタ、鉄道警察の管理センタなどに異常事態が発生した旨が通報されるため、異常状態の種類に応じた措置(例えば、痴漢やスリなどの被害が発生した場合には鉄道警察の署員を該当車両付近に待機させたり、急病人が発生した場合には医者、救急車等を配置させるといった措置)を迅速に採ることができることになる。
【0029】
更に、本実施の形態では、制御装置20が、車両制御設備やホームゲート制御設備等に対して異常事態の種類に応じた適切な処理を施すように指示する構成としたので、異常事態に応じた適切な処理が施されることになり、以って異常事態に対する迅速な救済措置等を採ることができることになる。
【0030】
そして、かかる作用効果を奏する本実施の形態に係る車両用異常事態報知装置や車両用異常事態処理装置によれば、当該装置が備えられていることで、痴漢、スリ等の犯罪行為に対する抑止力を高めることができるため、犯罪行為の発生を未然に防止することができるという効果を奏することができる。
【0031】
ところで、車両1等のつり革付近或いは座席付近に押ボタン10を配設した場合には、いたずらや意図しない誤操作に対する予防策を講じる必要もある。このため、例えば、押ボタン10の2重押しや、本人を特定できるICカード、例えばSuica(登録商標)等を用いて押ボタン10を押圧し本人を特定できたときだけ正常な作動要求であると認識するような構成とすることができる。また、予め登録した指紋により認証が行えたときだけ、正常な作動要求であると認識するような構成とすることもできる。
【0032】
更には、携帯電話機のキー(個人を特定可能な信号を発するキーなど)を押しながら押ボタン10を押さなければ正常な作動要求として認識されないような構成とすることができる。
【0033】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る異常事態報知装置を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明に係る異常事態処理装置を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態を説明するための概略的な全体構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1 鉄道車両
10 押ボタン
11 携帯電話機
12 専用発信器
13 受信器
20 制御装置
31 スピーカ
32 警告灯
33 表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通知者の操作に応じて異常事態の発生を知らせる情報を含む異常情報を通知する異常事態通知手段と、
異常事態が発生したことを報知する異常事態報知手段と、
前記異常事態通知手段から異常情報を受信すると、前記異常事態報知手段に情報を送信して異常事態が発生したことを報知させる制御手段と、
を含んで構成されることを特徴とする車両用異常事態報知装置。
【請求項2】
前記異常事態通知手段には、誤作動或いはいたずらを防止するための機能が備えられることを特徴とする請求項1に記載の車両用異常事態報知装置。
【請求項3】
前記異常情報が、発生した異常事態の種類に関する情報を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用異常事態報知装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一つに記載の車両用異常事態報知装置を含んで構成されると共に、
前記制御手段が、
受信した異常情報を所定の人或いは装置の少なくとも一つに通報する異常事態通報手段と、
受信した異常情報に従って所定の処理を施させるための処理情報を車両設備或いは車両の運行に供される設備の少なくとも一つに送信し所定の処理を施させる異常事態処理手段と、
を含んで構成されることを特徴とする車両用異常事態処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−250966(P2008−250966A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95241(P2007−95241)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】