説明

車両用空気清浄制御装置

【課題】乗員ごとの嗜好に合った芳香を発生させる。
【解決手段】所定の調合比で芳香を生成する芳香発生手段10と、乗員の着座状態を検出する着座状態検出手段SNと、車室内の脱臭・消臭処理を行う脱臭・消臭手段20と、前記乗員の着座状態に基づいて、前記芳香発生手段と前記脱臭・消臭手段を制御する制御手段5と、前記芳香の調合比が登録された調合テーブルを記憶するサーバ40と通信する通信手段7dと、を有し、前記制御手段は、前記通信手段を介して前記サーバの調合テーブルに登録された着座乗員ごとの調合比を取得し、当該調合比に基づいて前記芳香発生手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の脱臭・消臭及び芳香を発生させる車両用空気清浄制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内を空気清浄する技術として、特許文献1には、覚醒用の香りを含む複数の香りを送出可能な芳香装置を備え、香りの使用目的に応じて風の吹き出し状態を変えることで、居眠り運転等を防止する技術が記載されている。また、特許文献2には、香りを車室内に放出する芳香発生手段と、ドライバの注意が前方対象物に集中している注意過多状態と、周辺環境に向いている漫然状態との何れであるかを判定するドライバ状態判定手段と、を備え、ドライバ状態が上記漫然状態を維持又は上記注意過多状態から上記漫然状態に移行するよう、上記ドライバ判定手段によって判定されたドライバの状態に応じて上記芳香発生手段による車室内への香り放出を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−255358号公報
【特許文献2】特開2008−013004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、居眠り運転防止のために、ドライバを覚醒させることを目的として香りを発生させているが、覚醒状態であってもドライバの状態は異なっているため、例えば、先行車等の前方対象物だけに集中している状態よりも、周辺環境にも注意を向けている状態に維持させることが望ましい。しかしながら、このための芳香の発生は行っておらず、ドライバの状態を走行環境に適応した状態に維持されていない。
【0005】
また、上記特許文献2では、ドライバごとに香りに嗜好があるため、その効果にバラツキがある。特に、不特定多数のドライバが使用するレンタカーやカーシェアリング用車両においては、顕著である。また、芳香発生後、残香が滞留したり、他の匂いと混ざって悪臭となる場合もある。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされ、その目的は、乗員ごとの嗜好に合った芳香を発生させることができる技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る第1の形態は、所定の調合比で芳香を生成する芳香発生手段と、乗員の着座状態を検出する着座状態検出手段と、車室内の脱臭・消臭処理を行う脱臭・消臭手段と、前記乗員の着座状態に基づいて、前記芳香発生手段と前記脱臭・消臭手段を制御する制御手段と、前記芳香の調合比が登録された調合テーブルを記憶するサーバと通信する通信手段と、を有し、前記制御手段は、前記通信手段を介して前記サーバの調合テーブルに登録された着座乗員ごとの調合比を取得し、当該調合比に基づいて前記芳香発生手段を制御する。この形態によれば、乗員ごとの嗜好に合った芳香を発生させることができる。
【0008】
また、本発明に係る第2の形態では、前記制御手段は、前記芳香発生手段により芳香を発生する前に、前記脱臭・消臭処理を行うように前記脱臭・消臭手段を制御する。この形態によれば、残香や悪臭を除去し、芳香効果をより一層高めることができる。
【0009】
本発明に係る第3の形態では、前記脱臭・消臭手段は、車室内の除菌度を検出するセンサを用いた除菌モードと、車室内の脱臭度を検出するセンサを用いた脱臭モードとを有し、前記制御手段は、所定のイオン又はオゾン濃度を維持する目標時間を算出し、当該目標時間となるように前記センサの検出結果に基づいて前記脱臭・消臭手段をフィードバック制御する。この形態によれば、脱臭・消臭の程度に応じた適切な処理を行うことができる。
【0010】
本発明に係る第4の形態では、前記着座状態検出手段は、着座の有無を検出するセンサ部と、前記センサ部による検出値を記憶するメモリ部と、前記検出値を演算処理する演算処理部と、前記検出値を送信する通信部とを有するセンサノードを構成し、複数の前記センサノードが車室内の異なる位置に配置される。この形態によれば、乗員の着座位置を精度良く検出し、乗員ごとの嗜好に合った芳香を発生させることができる。
【0011】
本発明に係る第5の形態では、前記センサノードは、着座乗員が所持する通信端末と通信することにより乗員ごとの識別情報を取得し、前記制御手段は、前記通信手段を介して前記サーバから取得した乗員ごとの識別情報に対応する調合比に基づいて芳香を発生するように前記芳香発生手段を制御する。この形態によれば、乗員の識別を精度良く行い、乗員ごとの嗜好に合った芳香を発生させることができる。
【0012】
本発明に係る第6の形態では、前記調合テーブルの調合比が視認可能な図柄で登録されており、乗員が前記図柄を選択することで前記調合テーブルの調合比を登録する登録手段を更に有する。この形態によれば、イメージしにくい芳香の調合比を容易に編集・更新できる。
【0013】
本発明に係る第7の形態では、前記制御手段は、前記着座検出手段により乗員が非着座状態であることを検出した場合に前記脱臭・消臭処理を行うように前記消臭・脱臭手段を制御する。この形態によれば、乗員不在時に消臭・脱臭処理を行うことができる。
【0014】
本発明に係る第8の形態は、前記調合テーブルが前記サーバから前記通信端末へ送信され、当該通信端末により編集・更新が可能である。この形態によれば、時間的又は場所的な都合に縛られずに、データの編集及び更新を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、乗員ごとの嗜好に合った芳香を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施形態の車両用空気清浄制御装置を搭載した車両を模式的に示す平面図である。
【図2】本発明に係る実施形態の車両用空気清浄制御装置を搭載した車両を模式的に示す側面図である。
【図3】センサノードの機能ブロック図である。
【図4】ゲートウェイポイントの機能ブロック図である。
【図5】芳香発生装置と脱臭・消臭装置を説明する図である。
【図6】他の形態の芳香発生装置と脱臭・消臭装置を説明する図である。
【図7】乗員用芳香データベースを例示する図である。
【図8】ペット用芳香データベースを例示する図である。
【図9】オゾン濃度データベースを例示する図である。
【図10】実施形態1の関連付けテーブルを例示する図である。
【図11】実施形態1のゲートウェイポイント及びセンサノードの各処理を示すフローチャートである。
【図12】乗員が所持している通信端末の機能ブロック図である。
【図13】実施形態2のゲートウェイポイント、センサノード及び通信端末の各処理を示すフローチャートである。
【図14】実施形態2の関連付けテーブルを例示する図である。
【図15】実施形態2のサーバ及び通信端末によるデータ更新処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。また、後述する各実施形態の制御に対応するコンピュータプログラムや当該コンピュータプログラムが格納された記憶媒体を、車両に搭載されたコンピュータに供給して、当該コンピュータが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしてもよい。
【0018】
[実施形態1]
先ず、実施形態1について説明する。
【0019】
<システム構成>
図1及び図2は本発明に係る実施形態の車両用空気清浄制御装置を搭載した車両を模式的に示す平面図及び側面図、図3はセンサノードの機能ブロック図、図4はゲートウェイポイントの機能ブロック図である。
【0020】
図1乃至図4に示すように、車両1には、複数のセンサノードSN及びゲートウェイポイントGが配置されている。センサノードSNは車室内の各座席の着座位置に対応するシートクッション部2、ルーフ部3及びフロア部4に配置されている。また、車室内のインパネ部の空調ダクト付近並びに1,2列目のシートバック部背面には芳香発生装置10及び脱臭・消臭装置20が配置されている。センサノードSNはコイン大の大きさで比較的薄いものであり、車室内の様々な部位に取り付け可能である。これらセンサノードSNは、互いに無線通信によるセンサネットワーク(図1の符号N)を形成する。
【0021】
ゲートウェイポイントGは、例えばカーナビゲーションシステムに搭載される制御ユニットであり、CPU5、メモリ6及び通信IF(インタフェース)7a〜7f等を有する。通信インタフェース7a〜7cは、ゲートウェイポイントGと芳香発生装置10、脱臭・消臭装置20及び空調装置30との有線又は無線による通信を制御する。通信インタフェース7dはサーバ40との通信ネットワーク8を介した通信を制御する。更に、通信インタフェース7eは、無線通信により各センサノードSNと情報(信号)の送受信を行う。また、通信インタフェース7fは、犬や猫などのペットや首輪等に埋め込まれたICタグ9を無線により読み取り、ペット固有の個体識別番号等を取得する。
【0022】
CPU5は、各通信インタフェース7a〜7fを介して受信した情報に基づき、後述する芳香発生装置10及び脱臭・消臭装置20の目標制御量を算出し、着座する乗員ごとの嗜好に合うように芳香発生装置10及び脱臭・消臭装置20を制御する。メモリ6には、各車載機器の制御プログラムや図10や図14に示す関連付けテーブル6aが記憶されている。
【0023】
図3に示すように、各センサノードSNには、例えばボタン電池のような電源101、CPUであるプロセッサ102、及びセンサノードSNに内蔵され又はその外部に取り付けられる複数のセンサ103a〜103dを有する。センサは、例えば湿度センサ103a、温度センサ103b、圧力センサ103c、オゾンセンサ103dを含む。圧力センサ103cは、乗員の着座を検知する着座センサとして機能する。また、センサノードSNは、他のセンサノードSN、携帯電話等の通信端末M及びゲートウェイポイントGと通信する無線通信インタフェース104を有する。
【0024】
また、センサノードSNには、メモリ105が搭載されており、各センサ103a〜103dの検出値を処理したり、通信端末Mや他のセンサノードSNとの信号の入出力を行うためのプログラムが内蔵されたソフトウェア105aが記憶されている。ソフトウェア105aは、オペレーティングソフトウェア105bと、アプリケーションソフトウェア105cとからなり、オペレーティングソフトウェア105bには、オペレーティングシステム105dが含まれ、アプリケーションソフトウェア105cにはプログラムモジュール105eが含まれる。また、メモリ105には、アプリケーションデータ105fが記憶されている。
【0025】
センサノードSNのメモリ105は、各センサノードSNごとのセンサ103a〜103dによる検出値を記憶し、プロセッサ102は、各センサ103a〜103dの検出値を読み出して演算処理する。
【0026】
ゲートウェイポイントGのCPU5は、各センサノードSNから受信した情報やサーバ40に記憶されたデータベース(以下、DB)41〜43に基づいて芳香発生装置10及び脱臭・消臭装置20を制御するための目標制御量を算出する。なお、上記DB41〜43の一部を、センサノードSNのメモリ105やゲートウェイポイントGのメモリ6に格納してもよい。
【0027】
上記ゲートウェイポイントGのCPU5は、算出された目標制御量が得られるように芳香発生装置10、脱臭・消臭装置20及び空調装置30を制御する。また、算出された目標制御量は、センサノードSNのメモリ又は、ゲートウェイポイントGのメモリ6に記憶される。
【0028】
センサノードSNの通信方式として、例えば、「ZigBee」といわれるものがある。これは、規格が「IEEE802.15.4」、伝送速度(bps)が「250K」、利用周波数帯が「2.4GHz(全世界)、868MHz(欧州)、915MHz(米国)」、伝送距離が「最大10-75m」、消費電力(通信)が「<60mW」のものである。これ以外にも、方式として、「微弱無線」、「特定小電力無線」、「Bluetooth」、「UWB」などの他の方式もある。
【0029】
ゲートウェイポイントGのメモリ6には、センサノードSNや実施形態2で後述する通信端末Mとの信号の入出力を行うためのプログラムが内蔵されたソフトウェアが記憶されている。ソフトウェアは、図3に示したセンサノードSNと同様に、オペレーティングソフトウェアと、アプリケーションソフトウェアとからなり、オペレーティングソフトウェアには、オペレーティングシステムが含まれ、アプリケーションソフトウェアにはプログラムモジュールが含まれる。また、メモリには、アプリケーションデータが記憶されている。
【0030】
ゲートウェイポイントGは、各センサノードSN及び通信ネットワーク8から得られる情報を集中管理すると共に車載機器、例えば、上記装置10〜30のほか、カーナビゲーションシステム、電動シート装置、パワーウィンドウなどを制御する。また、ゲートウェイポイントGで使用する情報を、PC201や通信端末202を介して車外のサーバ40に情報を蓄積することも可能である。
【0031】
次に、上述したセンサネットワークの概念について説明する。
【0032】
上述したように、センサノードSNには、プロセッサ、センサ、メモリ、通信インタフェースが内蔵されており、各センサにより得られた情報を保持できるほか、無線により他のセンサノードSNに送信することができる。そのような機能により、あるセンサノードSNは、他のセンサノードSNの情報、即ち、他のセンサノードSNが有するセンサにより得られた情報や記憶されている情報を得る。このようにして、複数のセンサノードSNがネットワークでつながっており(図4参照)、仮に1つのセンサノードSNが故障しても、他のセンサノードSNでネットワークを形成することができる。これにより、配線でつながっている車内LANとは異なり、配線の不要なネットワークを形成する。また、ある位置のセンサノードSNの情報を他のセンサノードSNの情報と共に多角的に得ることができる。このセンサネットワークによれば、例えば、センサノードSNにより各シートごとに着座乗員を検出し、芳香発生装置10や脱臭・消臭装置20を着座乗員ごとの嗜好に合わせて制御することができる。
【0033】
次に、芳香発生装置10及び脱臭・消臭装置20について説明する。
【0034】
図5(a)に示すように、芳香発生装置10と脱臭・消臭装置20とは一体化されて、空調ダクトの経路途中に配置される。芳香発生装置10は、複数の香料噴霧ノズル11から複数種類の香料を所定の調合比で噴射することにより、空調ダクトを介して車室内へ芳香を放出する。各香料噴射ノズル11は、ピエゾ素子を用いたインクジェット方式と同様の原理を適用して、香料ごとにノズルから所定量の香料を噴射する。また、芳香発生装置10は、通信ネットワーク8を介してサーバ40から取得した芳香DBに登録された着座乗員ごとの調合比に基づいて各香料噴射ノズル11を駆動して、所望の芳香を生成する。
【0035】
脱臭・消臭装置20は、イオン/オゾン発生部21からイオン/オゾンを発生させて、車室内を脱臭/消臭する機能を有し、芳香発生装置10の近傍に設けられて、芳香発生前の悪臭や残香を除去する脱臭・消臭処理を行う。脱臭・消臭装置20は、除菌度を検出するセンサを用いた除菌モードと、脱臭度を検出するセンサを用いた脱臭モードとを有し、図5(b)に示すように、ゲートウェイポイントGのCPU5が所定のオゾン濃度を維持する目標時間を算出し、当該目標時間となるように上記各センサノードSNのオゾンセンサ103dの検出値に基づいてフィードバック制御される。これにより、脱臭・消臭の程度に応じた適切な処理を行うことができる。
【0036】
なお、図6に示すように、芳香発生装置10と脱臭・消臭装置20と制御ユニット50とを持ち運び可能な単体の機器とし、ゲートウェイポイントGやセンサノードSNと無線で通信可能に構成することで、車室内の任意の場所(例えば、各シートバック部背面)に設置して着座乗員ごとに芳香発生処理や脱臭・消臭処理を行うことができる。なお、制御ユニット50は、図3と類似する構成を有し、プロセッサ、操作部、メモリ、無線通信インタフェースが搭載されている。
【0037】
サーバ40は、通信ネットワーク8を介してゲートウェイポイントGや他のPC201や通信端末(スマートキー、携帯電話、PDAなど)202と通信する。ここで、サーバ40は、香料の調合比が登録された調合テーブルを記憶する乗員用芳香DB41(図7)及びペット用芳香DB42(図8)と、フィードバック制御用のオゾン濃度目標値が登録されたオゾン濃度DB43(図9)を有する。
【0038】
乗員用芳香DB41には、図7に示すように、乗員固有の識別番号としての香りNo.ごとに、効用、濃さ、人気度、香料の調合比が登録されている。
【0039】
ペット用芳香DB42には、図8に示すように、ペット固有の識別番号としての香りNo.ごとに、効用、種別、人気度、香料の調合比が登録されている。
【0040】
オゾン濃度DB43には、図9に示すように、脱臭・消臭処理の目的ごとに、必要なオゾン濃度や条件が登録されている。
【0041】
また、ゲートウェイポイントGのメモリ6には、図10に示すように、乗員の体重と香りNo.とを関連付けたテーブル6a及びペット固有の個体識別番号としてのICタグ9と香りNo.とを関連付けたテーブルとが記憶されている。ゲートウェイポイントGは、センサノードSNにより検出される着座乗員の体重に対応する香りNo.をサーバ40に送信して該当する調合比を取得し、以下の制御を実行する。
【0042】
<処理フロー>
図11は実施形態1のゲートウェイポイント及びセンサノードの各処理を示すフローチャートである。
【0043】
(センサノードSN)
図11において、S21では、各センサノードSNは上述したセンサネットワークを形成する。ここでは、各センサノードSNが他のセンサノードSNを認識して、自律的にネットワークを形成する。このセンサネットワークにおいて、新たなセンサノードSNが設置された場合、自律的にそのセンサノードSNをセンサネットワーク内に追加したり、また、あるセンサノードSNがセンサネットワークから無くなった場合、自律的にそのセンサノードSNをセンサネットワークから削除するというアドホック機能を有する。
【0044】
次に、S22では、後述する「受信したビーコンノードの重心計算」又は「受信したビーコンノードのホップ数計算」により、各センサノードSNの位置検出処理を行う。なお、予め位置が分かっているような場合、例えば、位置が固定されているシートやルーフにセンサノードSNが設置されている場合には、その設置位置を予めセンサノードSNのメモリ等に登録しておいてもよい。また、位置検出処理を一度行った後に、メモリに位置を記憶させておき、再度位置検出処理を行うときには、そのメモリに記憶された位置を設定するようにしてもよい。
【0045】
次に、S23、S24では、各センサノードSNの位置データ、及び、各センサノードSNの各センサ103a〜103dによる検出値を複数のセンサノード間で送受信し且つそれらのデータをメモリ105に記憶する。送受信は各ノードの無線通信インタフェース104で行う。
【0046】
次に、S25では、他のセンサノードSNの中継処理を行う。ここでは、各センサノードSNは、他のセンサノードSNへの通信経路(ルーティング)を自律的に確立し、他のセンサノードSNから送信されてきたデータを他のセンサノードSNに中継する。これは、マルチホップ機能という機能である。
【0047】
ここで、S23におけるセンサノードSN(又は、実施形態2で述べる通信端末M)の位置を検出する方法について説明する。
【0048】
これは、通信端末Mを所持するユーザが乗車した場合やセンサノードSNがシートに取り付けられている場合、シート自体が多様なアレンジで位置が変更される場合に、シート位置の変更されたセンサノードSNの位置を正確に検出するものである。
【0049】
先ず、第1の方法である、「受信したビーコンノードの重心計算」について説明する。
【0050】
ここで、ビーコンノードとは、所定の位置情報を送受信することができるセンサノードSN又は通信端末Mであり、ノードとは、位置の分かっていないセンサノードSNや通信端末Mであり、ランドマークとは、位置が分かっていて所定の位置情報を送受信することができるセンサノードSNや通信端末Mである。ビーコンとは、位置情報を含む電波信号である。
【0051】
この重心計算によるCentroid(重心)測定では、位置を予め分かっているランドマークが、定期的に自らの位置情報を含んだビーコンをブロードキャストで近隣のノードに送信する。ランドマークからのビーコンは、球状に送信されると仮定しており、受信電波強度を考慮しないものになっている。さらに、ランドマークが多く存在していることを想定している。位置が分かっていないノードは、ビーコンに含まれる位置情報から周りに存在するランドマークの位置を知ることができる。N台のランドマークの位置(Xi,Yi)が取得できた場合、下記の式1で重心(Xest,Yest)を計算する。
【0052】
【数1】

【0053】

次に、第2の方法である、「受信したビーコンノードのホップ数計算」について説明する。
【0054】
ここで、ノードとは、位置の分かっていないセンサノードSNや通信端末Mであり、ランドマークとは、位置が分かっていて所定の位置情報を送受信することができるセンサノードSNや通信端末Mである。
【0055】
このDV-Hop測定では、ランドマークからのホップ数と1ホップの平均距離の情報から、各ノードからランドマークまでの距離を見積もる。3台以上のランドマークからの距離を見積り、多角測定により自らの位置を算出する仕組みになっている。
【0056】
先ず、第1ステップとして、各ノードは、センサネットワーク内のランドマークからのホップ数を知る(ホップカウンタを参照する)。ランドマークは自分の位置情報を含んだバケットをフラッディングする。また、このバケットには、中継する度にカウントされるホップカウンタが含まれている。
【0057】
次に、第2ステップとして、ランドマークは1ホップの平均距離を近隣ノードに知らせる。一度しか“1ホップの平均距離”バケットを中継しない制御フラッディングを利用する。第1ステップで得られたホップ数と1ホップの平均距離を掛け合わせることによりランドマークまでの距離を算出する。
【0058】
次に、第3ステップとして、3台以上のランドマークとの距離を算出して多角測定により位置測定する。1ホップの平均距離の算出方法を説明する。あるランドマークがフラッディングしたバケットは、他のランドマークにも到着している。ランドマークは、自分の座標と他のランドマークの座標から、2地点間の物理的な距離を計算することができる。さらに、そのランドマークまでのホップ数(h)が分かっているため、物理的な距離をホップ数で割った値が1ホップの平均距離のサンプルとして計算する。このサンプル取得処理を他の全てのランドマークに対して行うことにより、最終的にサンプルを平均化して1ホップの距離が計算できる。これは、以下の式2により計算できる。
【0059】
【数2】

【0060】

(ゲートウェイポイントG)
ゲートウェイポイントGでは、S1において、S24において各センサノードSNから送信された各ノードSNの位置データ、及び、各センサによる検出値を受信しメモリ6に記憶する。
【0061】
次に、S2では、各センサノードSNの圧力センサ103cによる検出値により着座した乗員の有無を判定する。
【0062】
そして、着座乗員有りと判定された場合、S3では、各センサノードSNの圧力センサ103cによる検出値により着座した乗員の着座シート位置を推定する。
【0063】
次に、S4では、ゲートウェイポイントGは、メモリ6に登録された関連付けテーブル6aから着座乗員の体重(圧力)に応じた香りNo.を割り出し、サーバ40にアクセスし、乗員用芳香DB41(図7)から着座乗員の香りNo.に応じた調合比を取得する。なお、圧力センサ103cによる検出値に代えて、乗員が所持している通信端末Mや車内に設けられた操作部から着座している乗員固有の識別番号を直接入力してもよい。
【0064】
次に、S5では、芳香制御中又は芳香の変更があるか判定する。そして、S5で芳香制御中又は芳香に変更がないならば、S6で脱臭・消臭制御を実行する。その後、S7では、S4で取得した調合比に基づき芳香制御を実行する。このように、芳香を発生させる前に消臭・脱臭制御を行うことにより、残香や悪臭を除去し、芳香効果をより一層高めることができる。
【0065】
一方、S5で芳香制御中又は芳香に変更があるならば、S6をスキップし、S7で芳香制御を実行する。この脱臭・消臭制御は、図5(b)で述べたようにオゾンセンサ103dによるフィードバック制御を実行する。
【0066】
次に、S2で着座乗員なしと判定された場合、S8ではICタグ9からペット固有の個体識別番号を受信したか判定する。
【0067】
そして、ペット固有の個体識別番号を受信した場合、S9では、サーバ40にアクセスし、オゾン濃度DB43(図9)からペット有り且つ無人条件における目標オゾン濃度を取得する。
【0068】
次に、S10、S11では、各センサノードSNのオゾンセンサ103dによる検出値に基づいて、S9で取得した目標オゾン濃度に到達するまでフィードバック制御を実行する。その後、S12では、ゲートウェイポイントGは、メモリ6に登録された関連付けテーブル6aからICタグ9の個体識別番号に応じた香りNo.を割り出し、サーバ40にアクセスし、ペット用芳香DB42(図8)からペットの香りNo.に応じた調合比を取得し、芳香制御を実行する。
【0069】
なお、S8でペット固有の個体識別番号を受信しない場合、S13では、サーバ40にアクセスし、オゾン濃度DB43(図9)からペット無し且つ無人条件における目標オゾン濃度を取得する。
【0070】
次に、S14では、各センサノードSNのオゾンセンサ103dによる検出値に基づいて、S13で取得した目標オゾン濃度に到達するまでフィードバック制御を実行する。
【0071】
上記実施形態によれば、乗員ごとの嗜好に合った芳香を発生させることができる。
【0072】
[実施形態2]
次に、実施形態2として、乗員が所持する通信端末Mから取得したユーザID及び位置データに基づく処理について説明する。
【0073】
図12は乗員が所持している通信端末Mの機能ブロック図である。
【0074】
図12に示すように、通信端末Mとしての携帯電話には、携帯電話基盤ミドルウェア301、CPUであるプロセッサ302、複数のセンサノードSNと無線通信可能な無線通信インタフェース303、及びメモリ304を有する。メモリ304には、センサノードSNとの信号の入出力を行うためのプログラムが内蔵されたソフトウェアが記憶されている。ソフトウェアは、オペレーティングソフトウェアと、アプリケーションソフトウェアとからなり、オペレーティングソフトウェアには、オペレーティングシステムが含まれ、アプリケーションソフトウェアにはプログラムモジュールが含まれる。また、メモリには、アプリケーションデータ、ユーザIDが記憶されている。この通信端末Mも、上述した複数のセンサノードSNと無線通信によりセンサネットワークを形成する。
【0075】
なお、本実施形態のセンサノードSNは、図3の構成から圧力センサ103cを省略した構成とする。
【0076】
また、ゲートウェイポイントGのメモリ6には、図14に示すように、ユーザIDと香りNo.とを関連付けたテーブルやICタグ9と香りNo.とを関連付けたテーブルとが記憶されている。
【0077】
<処理フロー>
図13は実施形態2のゲートウェイポイント、センサノード及び通信端末の各処理を示すフローチャートである。
【0078】
(センサノードSN)
センサノードSNでの処理は、通信端末Mの中継処理のほか、図11のS21〜S25での処理と同様であるので説明を省略する。
【0079】
(通信端末M)
図13において、S31で通信端末Mを所持するユーザが乗車し、S32でセンサネットワークに接続されると、先ずセンサノードSNによる中継処理によりゲートウェイポイントGへユーザIDを送信する(S33)。
【0080】
次に、S34、S35では、ゲートウェイポイントGからユーザIDの照合結果を受信し、ユーザIDがゲートウェイポイントGのメモリ6に未登録ならば、S36で仮ユーザIDアドレスの自動割当を行った後、登録済みならば、S36を行わずに、S37で送受信テスト&経路設定を行い、S38では、通信端末Mの位置検出処理を実行する。この位置検出処理は、図11で述べた「受信したビーコンノードの重心計算」又は「受信したビーコンノードのホップ数計算」による。
【0081】
次に、S39では、通信端末Mの位置データを各センサノードSNの中継によりゲートウェイポイントGに送信する。なお、通信端末Mにも芳香DBに関するデータを登録しておき、位置データと共に送信するようにしてもよい。
【0082】
(ゲートウェイポイントG)
以下では、図11と同様の処理には同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
ゲートウェイポイントGは、S1で各センサノードSNの位置データ及び各センサによる検出値を受信しメモリ6に記憶した後、S41で、通信端末MからユーザIDを受信する。
【0084】
次に、S2で着座乗員有りと判定された場合、S42では、S41で受信したユーザIDが、ゲートウェイポイントGのメモリ6に登録されたユーザIDと香りNo.の関連付けテーブルに登録済みのIDと照合し、照合結果を通信端末Mに送信する。
【0085】
次に、S43では、通信端末Mから位置データを受信する。S44では、ユーザIDと位置データから着座した乗員の着座シート位置を推定する。
【0086】
その後、S4では、ユーザIDに応じた香りNo.を割り出し、サーバ40にアクセスし、乗員用芳香DB41(図7)から着座乗員ごとの香りNo.に応じた調合比を取得する。
【0087】
<データの更新処理>
ユーザは上記通信端末Mを使用してサーバ40に登録された各DBの編集や更新を行うことができる。以下、上記通信端末Mによるデータの編集・更新処理について説明する。図15は、通信端末によるデータの編集・更新処理を示すフローチャートである。
【0088】
(通信端末M)
図15において、通信端末Mは、S51でサーバ40に対して送信要求を行い、S52で所望のDBを受信する。次に、S53で受信したDBについてデータを編集・更新して、S54でサーバ40へ送信する。ここで、DBの調合比が絵や色等の視認可能な図柄で登録されており、ユーザは図柄を選択する等して編集・更新を行うことができる。これにより、イメージしにくい芳香の調合比等を容易に編集・更新できる。
【0089】
(サーバ40)
サーバ40は、S61で通信端末Mからデータの送信要求を受信すると、S62で指定されたデータを送信する。次に、S63で通信端末Mからデータの更新要求と更新されたデータを受信すると、S64で受信したデータにDBを更新する。
【0090】
これにより、時間的又は場所的な都合に縛られずに、データの編集及び更新を行うことができる。
【0091】
なお、上記通信端末Mを用いてゲートウェイポイントGのメモリ6に記憶されたデータを更新してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の調合比で芳香を生成する芳香発生手段と、
乗員の着座状態を検出する着座状態検出手段と、
車室内の脱臭・消臭処理を行う脱臭・消臭手段と、
前記乗員の着座状態に基づいて、前記芳香発生手段と前記脱臭・消臭手段を制御する制御手段と、
前記芳香の調合比が登録された調合テーブルを記憶するサーバと通信する通信手段と、を有し、
前記制御手段は、前記通信手段を介して前記サーバの調合テーブルに登録された着座乗員ごとの調合比を取得し、当該調合比に基づいて前記芳香発生手段を制御することを特徴とする車両用空気清浄制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記芳香発生手段により芳香を発生する前に、前記脱臭・消臭処理を行うように前記脱臭・消臭手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用空気清浄制御装置。
【請求項3】
前記脱臭・消臭手段は、車室内の除菌度を検出するセンサを用いた除菌モードと、車室内の脱臭度を検出するセンサを用いた脱臭モードとを有し、
前記制御手段は、所定のイオン又はオゾン濃度を維持する目標時間を算出し、当該目標時間となるように前記センサの検出結果に基づいて前記脱臭・消臭手段をフィードバック制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空気清浄制御装置。
【請求項4】
前記着座状態検出手段は、着座の有無を検出するセンサ部と、前記センサ部による検出値を記憶するメモリ部と、前記検出値を演算処理する演算処理部と、前記検出値を送信する通信部とを有するセンサノードを構成し、
複数の前記センサノードが車室内の異なる位置に配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用空気清浄制御装置。
【請求項5】
前記センサノードは、着座乗員が所持する通信端末と通信することにより乗員ごとの識別情報を取得し、
前記制御手段は、前記通信手段を介して前記サーバから取得した乗員ごとの識別情報に対応する調合比に基づいて芳香を発生するように前記芳香発生手段を制御することを特徴とする請求項4に記載の車両用空気清浄制御装置。
【請求項6】
前記調合テーブルの調合比が視認可能な図柄で登録されており、
乗員が前記図柄を選択することで前記調合テーブルの調合比を登録する登録手段を更に有することを特徴とする請求項4に記載の車両用空気清浄制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記着座検出手段により乗員が非着座状態であることを検出した場合に前記脱臭・消臭処理を行うように前記消臭・脱臭手段を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の車両用空気清浄制御装置。
【請求項8】
前記調合テーブルが前記サーバから前記通信端末へ送信され、当該通信端末により編集・更新が可能であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空気清浄制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−235041(P2010−235041A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87470(P2009−87470)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.Bluetooth
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】