説明

車両用空気調和装置におけるサクション装置

車両用空気調和装置のサクション装置であって、外気のための吸込み口(18)を有する空気流管(16)を備えるとともに、空気入口(29)と空気出口(31)とを有するファンハウジング(28)を備えている。水分離チャンバ(42)の空気出口端部(33)は、ファンハウジング(28)の上流に配置された空気フィルタ(34)により、直接に境界が定められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空気調和装置におけるサクション装置に関する。この装置は、外気の吸込み口を有する空気流管を備えるとともに、空気入口及び空気出口を有するファンハウジングを備えている。空気流管は、吸込み口から空気入口まで延びている。空気流管は、管壁により境界が定められており、水分離チャンバにより包囲されている。水分離チャンバ内には、装置を通って流れる水分を含む空気に起因して形成される水滴が集められる。この水分離チャンバは、その上に凝結が収集される管壁セグメントにより、境界が形成されている。
【背景技術】
【0002】
車両用空気調和装置のサクション装置は、一般に、内蔵型で、部分的に組み立て済みの装置であり、これを介して、大気中の空気が吸い込まれ、濾過され、その後、ファンを用いた空気調和装置へ搬送される。しかしながら、高湿度の場合、水分がファンモータ内に入ることを避けるため、湿度を低下させることが有益であり、望ましいことである。
【0003】
特許文献1(EP1642755A1)は、ファンハウジングの上流に、湿度低減のための水分離チャンバを備えることが重要であることを開示している。水分離チャンバは、空間の頂部からほぼ底部まで延びる壁によって仕切られた、空間の半分からなっている。これは、U字形の管を形成しており、U字形の管の半分が、その中で凝結が収集される水分離チャンバとなっている。残りの半分を介して、乾燥した空気が、ファンに向かって流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願EP1642755A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の装置を、その水分除去特性を弱めることなく、より簡素化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、水分離チャンバの出口終端が、ファンの上流に配置された空気フィルタによって直接に形成されているサクション装置により達成される。このサクション装置の発明は、空気フィルタと水分離チャンバとの間の中間管路を無くすことにより、換言すれば、空気フィルタを水分離チャンバに近づけることができる。したがって、本発明によれば、サクション装置を取り付ける空間の節減という効果が得られる。
【0007】
好ましい形態によれば、車両内でのサクション装置の組み立て条件にしたがって、フィルタは、おおむね垂直に、又はおおむね水平に組み付けられる。
【0008】
他の重要な選択肢は、サクション装置の更にコンパクトなバージョンの提供である。この選択肢の利点は、請求項1の特徴部分及び前提部分に示す通り、サクション装置は、ファンに直接隣接するか、又はファンに対してセグメント内で形成された空気流管の壁のために、追加的に設計されたものである。この特徴は、もちろん、空間を節減する実施形態とするために、前述及び後述のものと組み合わせて適用することができる。
【0009】
水分を含む空気からの水滴の凝結のための望ましい手段は、もっぱら、空気流管のセグメントを構成する外壁である。
【0010】
凝結した水の収集に用いられる、このセグメントの表面は、管壁における隣接した表面よりも、きめの粗く、そのため結果として、水滴は、このセグメントに、容易に集積することができる。
【0011】
水滴が管壁の特定部分に集積するための他の選択肢は、セグメントがリブ状のパターンを有することである。
【0012】
水の凝結のための管壁セグメントは、また、ワイヤグリッド又はワイヤ網目を備えていることもある。このようにすると、水滴の形成は助長される。
【0013】
空気流管は、導入された周辺空気の流れの方向を、吸込み口と空気入口との間で、少なくとも90°、好ましくは150°以上そらせて、「U」形としてある。このようにすると、本サクション装置の占守空間は節減される。
【0014】
空気流管は、空気を再循環させるための吸込み口を有し、この吸込み口は、サクション装置の組み立て条件にしたがって、空気流管の最も高位の個所、又は重力に逆らう方向を向く空気流成分を示す空気流管の近傍に配置するのが好ましい。このような実施形態によると、凝結した水が、吸込み口を通って移動することにより、取り付けられた再循環空気管内へ入ってしまうのが防止される。
【0015】
フィルタ自体は、できるだけ少ない水分が空気フィルタに到達するように、流れに関してサクション装置の最も低い地点の後ろの部分である上流部分内に位置していることが望ましい。
【0016】
特に、サクション装置は、完全に前もって組み立てて、そのまま、車両内に組み付けることができる。水分離チャンバは、最も低い地点に排水口を有する構成を有している。
【0017】
本発明のサクション装置の他の特別な特徴は、例えば、吸込み口から空気フィルタに至る空気流管の、好ましくは30%以上、特に50%以上が、重力に対して下方に向いていることである。これは、重力(及び可能であれば遠心力)を用いて、外気内に含まれる水分の確実な分離を確保するためである。
【0018】
サクション装置を組み立て、組み付けたとき、如何なる液体もファンモータに入ることが阻止されるように、モータは、装置の吸込み口と同じ高さに配置するのが望ましい。そのため空気流管は、流れの進行方向において、U形となる。
【0019】
更に、開口時にサクション装置に再循環空気が再び導入されるようになっている空気再循環フラップを、空気流管の上流に設けると有利である。
【0020】
本発明の第2実施形態は、空気流管を、吸込み口の下方に配置されたファンハウジングを有するU形状とするものである。この実施形態では、フィルタは、垂直に組み付けられ、水分離チャンバは、水平方向を向いたU形状の中央ジャーナル(垂直ジャーナル)を形作っている。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明、及び添付図面により、明らかになると思う。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車両に取り付けられた本発明の第1実施形態のサクション装置の断面図である。
【図2】車両に取り付けられた本発明の第2実施形態のサクション装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1では、車両を破線で示しており、10は、いわゆる防火壁を示している。車両は、空気調和装置12を備えている。空気調和装置12は、HVACユニットとも呼ばれるもので、車両の換気、暖房、及び空気調節を行うものである。いわゆるサクション装置14は、車両内へ外気を供給するもので、完全に前もって組み立てられた状態で利用されるものである。
【0024】
サクション装置14は、再循環された空気である外気のための吸込み口18を有する空気流管16を取り囲んでいる。この空気流管16は、サクション装置の外側ハウジング20により形成されている。
【0025】
図示の実施形態において、空気流管16は、数個のセグメント、すなわち吸込み口18から鉛直下方に延びる第1セグメント22と、空気流管16の水平部分を形作る中央セグメント24と、上方に延びて、空気入口29を有するファンハウジング28内の終端部へ至る第3セグメント26とを有している。ファンハウジング28には、ファンモータ30と、ファンモータ30により駆動されるファンホイール32とが収容されている。これらの構成要素は、外気を吸い込み、これを、空気出口31を介して、車両の空気調和装置12へ運ぶようになっている(矢印を参照)。
【0026】
空気流管16における水平の中央セグメント24の後側に、空気フィルタ34が設けられている。空気フィルタ34は、おおよそ水平方向に配置されている。
【0027】
空気再循環フラップ36が、空気フィルタ34の上流に配置され、循環空気が車両内部に流入しうるようになっている。
【0028】
空気流管16の境界を定める管壁38の大部分は、完全に外側ハウジング20により形成されている。
【0029】
外側が実線により示され、かつ内側が破線により示されている管壁セグメント40は、いわゆる水分離チャンバ42の境界をなすセグメントを形作っている。この水分離チャンバ42は、導入された外気から発生する水滴が管壁セグメント40上に集積することによって集められる空気流管16の一部分である。この管壁セグメント40は、凝結を引き起こさせ、凝結水は、排水出口を有する空気流管16の最下点に集められる。
【0030】
空気フィルタ34は、水分離チャンバ42の直ぐ上流で、水分離チャンバ42の空気出口33の真上に配置されている。したがって、空気フィルタ34は、水分離チャンバ42の下流側の境界を形成している。
【0031】
このサクション装置の他の特徴は、空気流管16の管壁38が、ファンハウジング28に直接隣接しているか、又は所望により、46で示す領域内のセグメントにおいて、ファンハウジング28を貫通していることである。
【0032】
水滴の集積を容易とするため、水分離チャンバ42の管壁セグメント40は、例えば、水分離チャンバ42の外側の管壁38の隣接する表面よりもきめの粗い表面、又は裂け目状のパターンを有している。
【0033】
更に、管壁セグメント40は、内側にワイヤグリッド又はワイヤ網目を備えていてもよい。
【0034】
図示の実施形態では、吸込み口18は、空気流管16の最も高い個処に位置しており、ほぼファンハウジング28の高さ、より正確には、モータ30の高さに位置している。
【0035】
空気フィルタ34の下方であって、空気流管16の垂直方向の最も低い地点には、吸込み口43が設けられている。吸込み口43は、車両内への外気の供給又は非供給のために、フラップ36で開閉可能となっている。
【0036】
空気流管16の内面における、空気再循環フラップ36の直ぐ上流には、空気再循環フラップ36の蓋フラップ50が設けられている。このフラップは、空気の再循環が要求されるときに、閉じられることとなっている。
【0037】
図2に示す実施形態は、空気流管16の組み立て、又は配置と、空気フィルタ34及びファンの組み立てにおいて、図1のものとは異なっている。
【0038】
不必要な繰り返しを避けるため、前記したのと類似又は同一の構成要素には、同じ符号を付してある。
【0039】
図2に示す実施形態では、サクション装置14の最も高い地点に、吸込み口18が設けられている。空気流管16の第1セグメント22は、ほぼ水平方向に延びている。これは、蓋フラップ50を備えている。セグメント22の後ろでは、空気流管16が垂直に垂れ下がっており、水分離チャンバ42を形成している。管壁セグメント40を備える管壁38は、水の凝結のための壁を形成している。水平セグメント22の後ろでは、空気が下方に流れるとき、水分を含む外気が管壁38のこの外側セグメントにぶつかり、排水を加速することとなる。
【0040】
垂直空気フィルタ34は、水分離チャンバ42の境界を直接に形成している。乾燥した空気は、空気フィルタ34を通って流れ、ファンハウジング28に達し、その後、空気調和装置12に流れ込む。図では、空気調和装置12は、記号的にのみ示してある。
【0041】
ちなみに、実施形態では、領域46内の管壁は、ファンハウジング28からなるか、またはファンハウジング28に隣接している。
【0042】
上述のサクション装置14は、特にコンパクトに設計されており、重力及び遠心力により、導入された空気中の水分を、確実に除去しうるようになっている。もちろん、この水分除去は、外気が氷結した水を含む場合でも機能する。この場合、重力又は/及び遠心力により支持されている雪及び氷の結晶は、水分離チャンバ42の管壁セグメント40内に打ち付けられ、溶けて、液体の形態で排水出口44を通って排出される。
【符号の説明】
【0043】
12 空気調和装置
14 サクション装置
16 空気流管
18 吸込み口
28 ファンハウジング
29 ファンハウジングの空気入口
31 ファンハウジングの空気出口
33 水分離チャンバの空気出口
34 空気フィルタ
36 空気再循環フラップ
38 管壁
40 管壁セグメント
42 水分離チャンバ
44 排水出口
46 領域
50 蓋フラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空気調和装置のサクション装置において、
外気のための吸込み口(18)を有する空気流管(16)と、
空気入口(29)と空気出口(31)とを有するファンハウジング(28)とを備え、
前記空気流管(16)は、前記吸込み口(16)から前記空気入口(29)まで延びている一方、管壁(38)により境界が形成され、かつ水分離チャンバ(42)を包み込んでおり、前記水分離チャンバ(42)内において、前記水分離チャンバ(42)を通って流れる水分を含む空気に起因して形成される水滴を収集し、
前記水分離チャンバ(42)は、凝結が収集される管壁セグメント(40)により境界が定められ、
前記水分離チャンバ(42)の空気出口(33)は、前記ファンハウジング(28)の上流に配置された空気フィルタ(34)によって、境界が定められているサクション装置。
【請求項2】
車両内での前記サクション装置の組み立て条件にしたがって、前記空気フィルタ(34)は、おおよそ垂直方向、又はおおよそ水平方向に組み付けられている、請求項1に記載のサクション装置。
【請求項3】
前記空気流管(16)の管壁(38)は、前記ファンハウジング(28)に直接隣接しているか、又は前記ファンハウジング(28)に対してセグメント内で形成されるように設計されている請求項1の前提部分、或いは請求項1又は2に記載のサクション装置。
【請求項4】
前記水分を含む空気中の水滴の凝結が、前記空気流管の管セグメント(40)を形作る外壁上にのみ集積するように設計されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のサクション装置。
【請求項5】
凝結した水の収集のための管壁セグメント(40)は、前記管壁(38)の隣接する表面よりも、きめの粗い表面を有しているように設計されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のサクション装置。
【請求項6】
凝結した水の収集のための前記管壁セグメント(40)は、裂け目状のパターンを有するように設計されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のサクション装置。
【請求項7】
凝結した水の収集のための前記管壁セグメント(40)は、ワイヤグリッド又はワイヤ網目を有するように設計されている請求項1〜6のいずれか1項に記載のサクション装置。
【請求項8】
前記空気流管(16)は、前記吸込み口(18)と前記空気入口(33)との間で、導入された周辺の空気の方向を、少くとも90度、望ましくは少くとも150度そらせるように設計されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のサクション装置。
【請求項9】
前記空気流管(16)は、再循環空気のための封止可能な吸込み口(43)を有する空気再循環フラップ(36)を備え、前記空気再循環フラップ(36)は、前記サクション装置の組み立て条件にしたがって、前記空気流管(16)の最も高い個処、又は、重力に逆らう方向に向かう空気流成分を示す前記空気流管(16)の近傍に位置するように設計されている請求項1〜8のいずれか1項に記載のサクション装置。
【請求項10】
完全に前もって組み立てられるように設計されている請求項1〜9のいずれか1項に記載のサクション装置。
【請求項11】
前記水分離チャンバ(42)の最も低い個処に、排水出口(44)は位置するように設計されている請求項1〜10のいずれか1項に記載のサクション装置。
【請求項12】
前記空気流管(16)内の空気フィルタ(34)の上流に、蓋フラップ(50)を備えるように設計されている請求項1〜11のいずれか1項に記載のサクション装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−506591(P2013−506591A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531443(P2012−531443)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064633
【国際公開番号】WO2011/039346
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(599120831)ヴァレオ クリマシステメ ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】