説明

車両用空調制御装置

【課題】ガラスの曇り防止と省動力化の両立を図ることを目的とする。
【解決手段】外気温センサの検出結果を取得し(100)、取得した外気温センサの検出結果からガラス曇りのエンジン停止時間、臭い防止のエンジン停止時間、及び快適性のエンジン停止時間をそれぞれ算出する(108〜112)。このとき、日射量が多いほど、日射量が少ないときに比べてガラス温度が高くなり、車室内湿度が同じであれば、ガラス曇りが発生し難くなるため、日射量が多いほどエンジン停止時間が長くなるように設定したガラス曇りの停止時間を算出するための関数またはマップを用いてエンジン停止時間を算出する。そして、エンジンが停止されてから算出したエンジン停止時間の中から最小のエンジン停止時間が経過したところでエンジン始動要求を行なう(114〜126)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調制御装置にかかり、特に、信号待ちなどの停車中にエンジンを停止して省動力化を図る車両に搭載された車両用空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
信号待ちなどの停車中にエンジンを停止して省動力化を図る車両に搭載された車両用空調装置としては、特許文献1〜3に記載の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1、2に記載の技術では、エバポレータをバイパスして空気を流すバイパス通路を形成して、エアミックスドアを最大冷房位置に固定したままで、バイパス通路を流れる空気量を調整することにより、エバポレータに冷気を蓄冷して、エンジン停止時にエバポレータの冷気を放冷することにより、エンジン停止時間を長くして省動力化を図ることが提案されている。また、日射量が多いほど低く設定された臭い発生及び曇り発生を感じさせない知覚限界点の温度より吹出し温度が高くなった場合にエンジンを再始動してコンプレッサを駆動することが記載されている。
【0004】
また、特許文献3に記載の技術では、吹出しモードに応じて、エンジン停止時間を設定することが提案されており、暖房の場合には日射量が多いほどエンジン停止時間を長く設定し、冷房の場合には日射量が多いほど暑く感じるため日射量が多いほどエンジン停止時間を短く設定している。
【特許文献1】特開2001−71734号公報
【特許文献2】特開2008−81121号公報
【特許文献3】特開2008−138622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術では、冷房の際には日射量が多いほどエンジン停止時間を短くしており、ガラス曇り防止と省動力化の観点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、ガラスの曇り防止と省動力化の両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、日射量を検出する日射量検出手段の検出結果を取得する取得手段と、エンジンを駆動源として作動して冷媒を圧縮するコンプレッサを備えた空調手段によって車室内が空調されているときのエンジン停止からガラスの曇りが発生するまでのエンジン停止時間が、日射量が多いほど長くなるように予め設定された、関数またはマップを記憶する記憶手段と、前記取得手段によって取得された日射量、及び前記記憶手段に記憶された前記関数またはマップに基づいて、前記エンジン停止時間を算出する算出手段と、前記空調手段によって車室内が空調されているときに、車両の運転状態に応じてエンジンの始動及び停止を制御するエンジン制御手段によってエンジンが停止され、前記算出手段によって算出された前記エンジン停止時間が経過した場合に、エンジンを始動するように前記エンジン制御手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、取得手段では、日射量を検出する日射量検出手段の検出結果が取得される。
【0009】
記憶手段には、車室内が空調手段によって空調されているときのエンジン停止からガラスの曇りが発生するまでのエンジン停止時間が、日射量が多いほど長くなるように予め設定された関数またはマップが記憶されている。すなわち、コンプレッサを作動して空調しているときに、エンジンが停止されると、コンプレッサが停止するので、ガラスが曇り易くなる。そこで、ガラス曇りが発生するまでのエンジン停止時間が、予め設定された関数またはマップを記憶する。このとき、日射量が多いとガラスが曇り難いので、日射量が多いほどエンジン停止時間が長く設定された関数またはマップを記憶手段に記憶する。
【0010】
また、算出手段では、取得手段によって取得された日射量、及び記憶手段に記憶された関数またはマップに基づいて、エンジン停止時間が算出される。
【0011】
そして、制御手段では、空調手段によって車室内が空調されているときに、車両の運転状態に応じてエンジンの始動及び停止を制御するエンジン制御手段によってエンジンが停止され、前記算出手段によって算出されたエンジン停止時間が経過した場合に、エンジンを始動するようにエンジン制御手段が制御される。
【0012】
すなわち、ガラスの曇りが発生するまでのエンジン停止時間が日射量が多いほど長く設定された関数またはマップを用いて、エンジン停止時間を算出するので、ガラスの曇りを防止しながら、エンジン停止時間を長くすることができる。従って、冷房であってもガラスの曇り防止と省動力化の両立を図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、日射量を検出する日射量検出手段、及び外気温を検出する外気温検出手段の検出結果を取得する取得手段と、エンジンを駆動源として作動して冷媒を圧縮するコンプレッサを備えた空調手段によって車室内が空調されているときのエンジン停止からガラスの曇りが発生するまでのエンジン停止時間が日射量が多いほど長くなるように外気温に応じて予め設定されたガラス曇り防止に関する関数またはマップ、前記エンジン停止から臭いが発生するまでのエンジン停止時間が外気温に応じて予め設定された臭い防止に関する関数またはマップ、及び前記エンジン停止から快適性が損なわれるまでのエンジン停止時間が外気温に応じて予め設定された快適性に関する関数またはマップをそれぞれ記憶する記憶手段と、前記取得手段によって取得された日射量及び外気温、並びに前記記憶手段に記憶された前記ガラス曇り防止に関する関数またはマップに基づいて、ガラス曇りを防止する前記エンジン停止時間を算出する第1算出手段と、前記取得手段によって取得された外気温、及び前記記憶手段に記憶された前記臭い防止に関する関数またはマップに基づいて、臭いを防止する前記エンジン停止時間を算出する第2算出手段と、前記取得手段によって取得された外気温、及び前記記憶手段に記憶された前記快適性に関する関数またはマップに基づいて、快適性を維持する前記エンジン停止時間を算出する第3算出手段と、前記第1乃至第3算出手段の算出結果のうち、最小となる前記エンジン停止時間を選択する選択手段と、前記空調手段によって車室内が空調されているときに、車両の運転状態に応じてエンジンの始動及び停止を制御するエンジン制御手段によってエンジンが停止され、前記選択手段によって選択された前記エンジン停止時間が経過した場合に、エンジンを始動するように前記エンジン制御手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、取得手段では、日射量を検出する日射量検出手段、及び外気温を検出する外気温検出手段の検出結果が取得される。
【0015】
記憶手段には、エンジンを駆動源として作動して冷媒を圧縮するコンプレッサを備えた空調手段によって車室内が空調されているときのエンジン停止からガラスの曇りが発生するまでのエンジン停止時間が日射量が多いほど長くなるように外気温に応じて予め設定されたガラス曇り防止に関する関数またはマップ、エンジン停止から臭いが発生するまでのエンジン停止時間が外気温に応じて予め設定された臭い防止に関する関数またはマップ、及びエンジン停止から快適性が損なわれるまでのエンジン停止時間が外気温に応じて予め設定された快適性に関する関数またはマップがそれぞれ記憶されている。
【0016】
すなわち、コンプレッサを作動して空調しているときに、エンジンが停止されると、コンプレッサが停止するので、ガラスが曇り易くなる。そこで、ガラス曇りが発生するまでのエンジン停止時間が、予め設定された関数またはマップを記憶する。このとき、日射量が多いとガラスが曇り難いので、日射量が多いほどエンジン停止時間が長くなるように外気温に応じて設定された関数またはマップを記憶手段に記憶する。また、コンプレッサが停止することにより臭いが発生すると共に、快適性が損なわれる。そこで、臭いが発生するまでのエンジン停止時間が予め設定された関数またはマップを記憶すると共に、快適性が損なわれるまでのエンジン停止時間が予め設定された関数またはマップを記憶する。
【0017】
また、第1算出手段では、取得手段によって取得された日射量及び外気温、並びに記憶手段に記憶された関数またはマップに基づいて、エンジン停止時間が算出され、第2算出手段では、取得手段によって取得された外気温、及び記憶手段に記憶された臭い防止に関する関数またはマップに基づいて、臭いを防止するエンジン停止時間が算出され、第3算出手段では、取得手段によって取得された外気温、及び記憶手段に記憶された快適性に関する関数またはマップに基づいて、快適性を維持するエンジン停止時間が算出される。
【0018】
そして、選択手段では、第1乃至第3算出手段の算出結果のうち、最小となるエンジン停止時間が選択され、制御手段では、空調手段によって車室内が空調されているときに、車両の運転状態に応じてエンジンの始動及び停止を制御するエンジン制御手段によってエンジンが停止され、前記選択手段によって選択されたエンジン停止時間が経過した場合に、エンジンを始動するようにエンジン制御手段が制御される。
【0019】
すなわち、ガラスの曇りが発生するまでのエンジン停止時間が日射量が多いほど長く設定された関数またはマップを用いて、エンジン停止時間を算出するので、ガラスの曇りを防止しながら、エンジン停止時間を長くすることができる。また、臭い防止と快適性の観点からもエンジン停止時間を定めているので、ガラスの曇り防止と省動力化の両立だけではなく、臭い防止や快適性の維持も可能となる。
【0020】
なお、請求項3に記載の発明のように、空調手段の目標吹出し温度を演算する演算手段を更に備え、記憶手段が、外気温に応じて予め設定された快適性に関する関数またまマップの代りに、エンジン停止から快適性が損なわれるまでのエンジン停止時間が目標吹出し温度に応じて予め設定された快適性に関する関数またはマップを記憶し、第3算出手段が、演算手段によって演算された目標吹出し温度、及び記憶手段に記憶された快適性に関する関数またはマップに基づいて、快適性を維持するエンジン停止時間を算出するようにしてもよい。これによってもガラスの曇り防止と省動力化の両立だけではなく、臭い防止や快適性の維持も可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、日射量が多いとガラスが曇り難いことから、日射量が多いほどエンジン停止時間が長く設定された関数またはマップを用いてエンジン停止時間を算出して、エンジン停止時間を制御することで、ガラスの曇りを防止しながらエンジン停止時間を長くすることができるので、ガラスの曇り防止と省動力化の両立を図ることができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる車両用空調装置の概略構成を示すブロック図である。なお、本発明の実施の形態に係わる車両用空調装置10は、エンジン等の内燃機関の動力で走行する車両や、エンジンとモータを備えたハイブリッド車両等に搭載される車両用空調装置に適用することができる。
【0023】
車両用空調装置10は、コンプレッサ14、コンデンサ16、エキスパンションバルブ18、及びエバポレータ20を含む冷媒の循環路によって冷凍サイクルが構成されている。
【0024】
エバポレータ20は、圧縮されて液化している冷媒を気化することにより、このエバポレータ20を通過する空気(以下、エバポレータ後の空気という)を冷却する。この時、エバポレータ20では、通過する空気を冷却することにより、空気中の水分を結露させるようになっており、これにより、エバポレータ20後の空気が除湿される。
【0025】
エバポレータ20の上流側に設けられているエキスパンションバルブ18は、液化している冷媒を急激に減圧することにより、冷媒を霧状にしてエバポレータへ供給するようになっており、これによってエバポレータ20での冷媒の気化効率を向上させている。
【0026】
本実施の形態では、車両用空調装置10のコンプレッサ14は、車両の動力を使用して機械的に駆動するコンプレッサによって冷媒を圧縮して冷媒サイクルを循環させる。
【0027】
車両用空調装置10のエバポレータ20は、空調ダクト38の内部に設けられている。この空調ダクト38は、両端が開口しており、一方の開口端には、空気取入口40、42が形成されている。また他方の開口端には、車室内へ向けて開口された複数の空気吹出口44(本実施の形態では一例として44A、44B、44Cを図示)が形成されている。
【0028】
空気取入口42は、車両外部と連通し、空調ダクト38内に外気を導入可能となっている。また、空気取入口40は、車室内と連通しており車室内の空気(内気)を空調ダクト38内に導入可能となっている。なお、空気吹出し口44は、一例としてウインドシールドガラスへ向けて空気を吹き出すデフロスタ吹出し口44A、サイド及びセンタレジスタ吹出し口44B、足下吹出し口44Cとなっている。
【0029】
空調ダクト38内には、エバポレータ20と空気取入口40、42との間にブロアファン46が設けられている。また、空気取入口40、42の近傍には、モード切換ダンパ48が設けられている。モード切換ダンパ48は、モード切換ダンパ用モータ24等のアクチュエータの作動によって、空気取入口40、42の開閉を行う。
【0030】
ブロアファン46は、ブロアモータ22の駆動によって回転して、空気取入口40乃至空気取入口42から空調ダクト38内に吸引し、さらにこの空気をエバポレータ20へ向けて送出する。この時、モード切換ダンパ48による空気取入口40、42の開閉状態に応じて、空調ダクト38内に外気又は内気が導入されるようになっている。すなわち、モード切換ダンパ48によって内気循環モードと外気導入モードが切換えられる。
【0031】
エバポレータ20の下流には、エアミックスダンパ50及びヒータコア52が設けられている。エアミックスダンパ50は、エアミックスダンパ用モータ36の駆動によって回動してエバポレータ20後の空気の、ヒータコア52を通過する量とヒータコア52をバイパスする量を調整する。ヒータコア52は、エンジン冷却水が循環し、該エンジン冷却水によってエアミックスダンパ50によって案内された空気を加熱する。
【0032】
エバポレータ20後の空気は、エアミックスダンパ50の開度に応じてヒータコア52へ案内されて加熱され、さらに、ヒータコア52によって加熱されていない空気と混合された後に、空気吹出し口44へ向けて送出される。車両用空調装置10では、エアミックスダンパ50をコントロールしてヒータコア52により加熱される空気の量を調節することで、空気吹出し口44から車室内へ向けて吹き出す空気の温度調整を行う。
【0033】
各空気吹出し口44の近傍には、それぞれに対応して吹出し口切換ダンパ54が設けられている。車両用空調装置10では、これらの吹出し口切換ダンパ54によって空気吹出し口44A、44B、44Cを開閉することにより、温度調整した空気を所望の位置から車室内へ吹き出すことができる。
【0034】
また、車両用空調装置10は、車両用空調装置10の各種制御を行うためのエアコンECU(Electronic Control Unit)11を備えている。エアコンECU11には、上述のブロアモータ22、モード切換ダンパ用モータ24、エアミックスダンパ用モータ36、吹出し口切換ダンパ用モータ34、コンプレッサ14、外気温センサ32、内気温センサ30、及び日射センサ28が接続されていると共に、車両用空調装置10の温度設定や吹出し口の選択等の車両用空調装置10の各種操作を行うための操作部15が接続されており、外気温センサ32、内気温センサ30、及び日射センサ28の検出値がエアコンECU11に入力され、各センサの検出結果に基づいて操作部15の設定等に応じて車室内の空調制御を行うようになっている。
【0035】
さらに、エアコンECU11には、エコランECU(Electronic Control Unit)17を介してエンジンECU12が接続されており、エアコンECU11からエコランECU17を介してエンジンECU12に対してエンジン始動要求や停止要求等を行うことが可能とされている。なお、本実施の形態では、エコランECU17を備える構成として説明するが、エコランECU17を省略して、エアコンECU11にエンジンECUを直接接続するようにしてもよい。
【0036】
エコランECU17は、車両の走行状態に応じて、エンジンECU12に対してエンジン停止要求やエンジン始動要求等を行うことにより、不要な排気ガスや燃料消費を抑制する制御を行う。例えば、車両が停車してサイドブレーキ等が操作された場合に、エンジン停止要求をエンジンECU12に対して行うことによってアイドリングをストップさせ、その後サイドブレーキが解除された場合に、エンジン始動要求をエンジンECU12に対して行うことによってエンジンを自動的に始動する等の制御を行う。また、本実施の形態では、エアコンECU11からの要求に応じたエンジン停止要求や始動要求等の要求をエンジンECU12に出力するようになっている。
【0037】
エアコンECU11が行う各種制御の一例としては、例えば、イグニッションスイッチがオンの際に、各センサの検出結果及び操作部15の設定内容に基づいて目標吹出し温度を算出して目標吹出し温度になるように空調制御を行う。また、エアコンECU11は空調制御を行う際には、目標吹出し温度等に応じて、コンプレッサ14のオンオフ制御や、エアミックスダンパ用モータ36の駆動制御、空気吹出し口44の切換制御、空気取入口40、42の切換制御(内気循環モードや外気導入モードのモード切換制御)等の制御もを行う。なお、空気取入口40、42の切換制御は、乗員が操作部15を操作して手動で行うようにしてもよい。
【0038】
ところで、本実施の形態では、コンプレッサ14をオンして車室内を空調している際に、エコランECU17によってエンジン停止要求が行われてエンジンが停止(以下、エコランという。)されると、コンプレッサ14による冷媒の圧縮循環が停止して、エバポレータ20の温度が上昇してしまう。これによって、冷房時にはエバポレータ20の温度が上がってしまい快適性を損なう恐れがあると共に、エバポレータ20の除湿性能が損なわれて臭いが発生する可能性がある。また、空気吹出し口44から吹き出される温度が上がった空気により車室内空気の露点温度がガラスの露点温度を超えてガラスに曇りが発生する可能性がある。
【0039】
そこで、本実施の形態では、種々の環境条件下で、その条件に合わせた問題が起こらない最大の時間(エンジン停止時間)を見出して、その環境条件下で、最大のエンジン停止時間を予め設定しておくことで、エンジン停止時間を延ばし、燃費の向上を図る。
【0040】
また、本実施の形態では、日射量が多いほど、日射量が少ないときに比べて、ガラス温度が高くなり、車室内湿度が同じであれば、ガラス曇りが発生し難くなるため、日射量が多いほど、エンジン停止時間が長くなるように設定している。
【0041】
本実施の形態では、ガラス曇り防止の観点から観たエンジン停止時間の関数またはマップが予め設定されている。ガラス曇り防止のエンジン停止時間の関数またはマップは、例えば、図2(A)に示すように、外気温が高くなるほどエンジン停止時間が長くなるように設定され、かつ日射量が多くなるほどエンジン停止時間が長く設定されたものをエアコンECU11に予め記憶する。
【0042】
また、臭い防止の観点から観たエンジン停止時間の関数またはマップが予め定められている。臭い防止のエンジン停止時間の関数またはマップは、例えば、図2(B)に示すように、外気温が所定温度までは略一定のエンジン停止時間とし、所定温度以上になると外気温が高くなるほどエンジン停止時間が長くなり、予め定められた温度以上で略一定のエンジン停止時間に設定されたものをエアコンECU11に予め記憶する。
【0043】
また、快適性の観点から観たエンジン停止時間の関数またはマップが予め定められている。快適性のエンジン停止時間の関数またはマップは、例えば、図3(A)に示すように、外気温が高くになるほどエンジン停止時間が短くなるように設定されたものをエアコンECU11に予め記憶する。
【0044】
なお、快適性のエンジン停止時間の関数またはマップは、図3(B)に示すように、目標吹出し温度が高くなるほどエンジン停止時間が長くなるように設定したものを適用するようにしてもよい。目標吹出し温度はTaoは、以下の式を用いて演算することができる。
【0045】
Tao=k1・Tset−k2・Ta−k3・Tr−k4・ST+C
ここで、k1、k2、k3、k4はそれぞれ定数を表し、Tsetは設定温度、Trは車室内温度、Taは外気温、STは日射量を表す。また、目標吹出し温度Taoは、冷房負荷を表すので、図3(B)に示すように、目標吹出し温度Taoが小さいほど冷房負荷が大きくなり、快適性のエンジン停止時間としては、図3(B)に示すように、目標吹出し温度Taoが大きいほどエンジン停止時間が長くなる。
【0046】
すなわち、上述の各関数またはマップによってエンジン停止時間が予め設定されているので、エアコンECU11は、エコランECU17によってエンジンが停止された場合に、外気温センサ32の検出結果から以下の各式によってガラス曇りのエンジン停止時間、臭い防止のエンジン停止時間、快適性のエンジン停止時間をそれぞれ算出する。
【0047】
TIME=f1(Ta,ST)
TIME=f2(Ta)
TIME=f3(Ta)
ここで、f1はガラス曇りのエンジン停止時間の関数またはマップ(図2(A))、Taは外気温、STは日射量、f2は臭い防止のエンジン停止時間の関数またはマップ(図2(B))、f3は快適性のエンジン停止時間の関数またはマップ(図3(A))を表す。
【0048】
そして、算出した各エンジン停止時間の中から最も短いエンジン停止時間を選択し、エンジン始動要求を行なう。
【0049】
続いて、上述のように構成された本発明の実施の形態に係わる車両用空調装置10のエアコンECU11で行なわれる処理について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係わる車両用空調装置10のエアコンECU11で行なわれるエコランに関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0050】
まず、ステップ100では、外気温センサ32、内気温センサ30、及び日射センサ28等の各種センサの検出結果がエアコンECU11によって取得されてステップ102へ移行する。
【0051】
ステップ102では、ステップ100で取得された各種センサの検出結果から目標吹出し温度TaoがエアコンECU11によって演算されてステップ104へ移行する。
【0052】
ステップ104では、エコラン制御か否かエアコンECU11によって判定される。該判定は、エコランECU17に接続されたスイッチ等によってエコランが指示されているか否かをエアコンECU11がエコランECU17と通信することにより判定し、該判定が肯定された場合にはステップ106へ移行し、否定され場合には当該処理をリターンして、他の処理を実行またはステップ100からの処理を再開する。
【0053】
ステップ106では、停車したか否かエアコンECU11によって判定される。該判定は、例えば、エコランECU17がエンジンECU12から停車を表す信号を受信したか否かをエアコンECU11がエコランECU17と通信することによって判定し、該判定が肯定された場合にはステップ108へ移行し、否定された場合には当該処理をリターンして、他の処理を実行またはステップ100からの処理を再開する。
【0054】
ステップ108では、ガラス曇りのエンジン停止時間(f1)が上述の式からエアコンECU11によって演算されてステップ110へ移行する。すなわち、外気温センサ32の検出結果に対応するエンジン停止時間が図2(A)を表す関数またはマップから算出される。
【0055】
ステップ110では、臭い防止のエンジン停止時間(f2)が上述の式からエアコンECU11によって算出されてステップ112へ移行する。すなわち、外気温センサ32の検出結果に対応するエンジン停止時間が図2(B)を表す関数またはマップから算出される。
【0056】
ステップ112では、快適性のエンジン停止時間(f3)が上述の式からエアコンECU11によって算出されてステップ114へ移行する。すなわち、外気温センサ32の検出結果に対応するエンジン停止時間が図3(A)を表す関数またはマップから算出される。なお、図3(B)を表す関数またはマップを用いる場合には、ステップ102で算出した目標吹出し温度Taoに対応するエンジン停止時間を算出する。
【0057】
続いて、ステップ114では、算出した各エンジン停止時間のうち最小値がエアコンECU11によって選択されてステップ116へ移行する。
【0058】
ステップ116では、エアコンECU11からエンジン停止要求がエコランECU17に出力されてステップ118へ移行する。
【0059】
ステップ118では、タイマー作動中か否かエアコンECU11によって判定される。該判定は、エコランECU17がエンジンECU12を制御することによってエンジンを停止してからの時間を計測するためのタイマーが作動されているか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ120へ移行し、肯定された場合にはステップ122へ移行する。なお、タイマーは車両の電源がオンのときに、エアコンECU11のパワーがオンされ、この時、タイマーは処理のリセットがなされる。所謂、パワーオンリセットである。また、タイマーはエコランECU17によってエンジンが始動された場合にリセットするものとする。
【0060】
ステップ120では、エコランECU17がエンジンECU12を制御することによってエンジンを停止してからの時間を計測するためのタイマーがスタートされて、当該処理をリターンして、他の処理を実行またはステップ100からの処理を再開する。
【0061】
一方、ステップ122では、エンジンが停止されてからのタイマー時間が読み取られてステップ124へ移行する。
【0062】
ステップ124では、エンジンを停止してから選択したエンジン停止時間が経過したか否かエアコンECU11によって判定される。すなわち、エコランECU17がエンジンECU12を制御することによってエンジンを停止してからの時間がステップ114で選択されたエンジン停止時間になったか否かをエアコンECU11が判定し、該判定が肯定された場合にはステップ126へ移行し、否定された場合には当該処理をリターンして、他の処理を実行またはステップ100からの処理を再開する。
【0063】
ステップ126では、エアコンECU11の制御によってエンジン始動要求がエアコンECU11からエコランECU17に出力されてステップ128へ移行する。これによって、エコランECU17では、エンジンECU12に対してエンジン始動要求を行なうことによりエンジンが始動され、コンプレッサ14が始動される。
【0064】
そして、ステップ128では、タイマーがリセットされ、当該処理をリターンして、他の処理を実行またはステップ100からの処理を再開する。
【0065】
このように本実施の形態に係わる車両用空調装置10では、ガラス曇りのエンジン停止時間、臭い防止のエンジン停止時間、及び快適性のエンジン停止時間のそれぞれについて算出して最小のエンジン停止時間を選択することで、ガラス曇りと臭いをそれぞれ防止し、かつ快適性を確保することができる。
【0066】
そして、ガラス曇りの観点からは日射量が多いほどエンジン停止時間を長く設定しているので、冷房であってもガラス曇り防止と省動力化の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態に係わる車両用空調装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】(A)はガラス曇りのエンジン停止時間の一例を示す図であり、(B)は臭い防止のエンジン停止時間の一例を示す図である。
【図3】(A)は快適性のエンジン停止時間の一例を示す図であり、(B)は快適性のエンジン停止時間のその他の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わる車両用空調装置のエアコンECUで行なわれるエコランに関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
10 車両用空調装置
11 エアコンECU
12 エンジンECU
14 コンプレッサ
16 コンデンサ
17 エコランECU
18 エキスパンションバルブ
20 エバポレータ
28 日射センサ
30 内気温センサ
32 外気温センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日射量を検出する日射量検出手段の検出結果を取得する取得手段と、
エンジンを駆動源として作動して冷媒を圧縮するコンプレッサを備えた空調手段によって車室内が空調されているときのエンジン停止からガラスの曇りが発生するまでのエンジン停止時間が、日射量が多いほど長くなるように予め設定された、ガラス曇り防止の関数またはマップを記憶する記憶手段と、
前記取得手段によって取得された日射量、及び前記記憶手段に記憶された前記関数またはマップに基づいて、前記エンジン停止時間を算出する算出手段と、
前記空調手段によって車室内が空調されているときに、車両の運転状態に応じてエンジンの始動及び停止を制御するエンジン制御手段によってエンジンが停止され、前記算出手段によって算出された前記エンジン停止時間が経過した場合に、エンジンを始動するように前記エンジン制御手段を制御する制御手段と、
を備えた車両用空調制御装置。
【請求項2】
日射量を検出する日射量検出手段、及び外気温を検出する外気温検出手段の検出結果を取得する取得手段と、
エンジンを駆動源として作動して冷媒を圧縮するコンプレッサを備えた空調手段によって車室内が空調されているときのエンジン停止からガラスの曇りが発生するまでのエンジン停止時間が日射量が多いほど長くなるように外気温に応じて予め設定されたガラス曇り防止に関する関数またはマップ、前記エンジン停止から臭いが発生するまでのエンジン停止時間が外気温に応じて予め設定された臭い防止に関する関数またはマップ、及び前記エンジン停止から快適性が損なわれるまでのエンジン停止時間が外気温に応じて予め設定された快適性に関する関数またはマップをそれぞれ記憶する記憶手段と、
前記取得手段によって取得された日射量及び外気温、並びに前記記憶手段に記憶された前記ガラス曇り防止に関する関数またはマップに基づいて、ガラス曇りを防止する前記エンジン停止時間を算出する第1算出手段と、
前記取得手段によって取得された外気温、及び前記記憶手段に記憶された前記臭い防止に関する関数またはマップに基づいて、臭いを防止する前記エンジン停止時間を算出する第2算出手段と、
前記取得手段によって取得された外気温、及び前記記憶手段に記憶された前記快適性に関する関数またはマップに基づいて、快適性を維持する前記エンジン停止時間を算出する第3算出手段と、
前記第1乃至第3算出手段の算出結果のうち、最小となる前記エンジン停止時間を選択する選択手段と、
前記空調手段によって車室内が空調されているときに、車両の運転状態に応じてエンジンの始動及び停止を制御するエンジン制御手段によってエンジンが停止され、前記選択手段によって選択された前記エンジン停止時間が経過した場合に、エンジンを始動するように前記エンジン制御手段を制御する制御手段と、
を備えた車両用空調制御装置。
【請求項3】
前記空調手段の目標吹出し温度を演算する演算手段を更に備え、
前記記憶手段が、外気温に応じて予め設定された快適性に関する関数またまマップの代りに、前記エンジン停止から快適性が損なわれるまでのエンジン停止時間が目標吹出し温度に応じて予め設定された快適性に関する関数またはマップを記憶し、
前記第3算出手段が、前記演算手段によって演算された目標吹出し温度、及び前記記憶手段に記憶された前記快適性に関する関数またはマップに基づいて、快適性を維持する前記エンジン停止時間を算出する請求項2に記載の車両用空調制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−100144(P2010−100144A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272415(P2008−272415)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】