車両用空調装置
【課題】冷房能力を確保しつつ蒸発器の凍結を防止する車両用空調装置を提供する。
【解決手段】本実施形態の車両用空調装置は、圧縮機1の駆動出力を制御する空調制御装置20を備え、空調制御装置20は、圧縮機1を起動させるときに、冷凍サイクル内の冷媒の圧力に基づいて決定する制御値で圧縮機1を駆動させる。この制御によれば、起動時の蒸発器9に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して、蒸発器9の凍結を低減することができ、これにより、車室内への異臭の漏れを低減する効果とともに、冷房能力を過剰に低下させない空調を実施できる。
【解決手段】本実施形態の車両用空調装置は、圧縮機1の駆動出力を制御する空調制御装置20を備え、空調制御装置20は、圧縮機1を起動させるときに、冷凍サイクル内の冷媒の圧力に基づいて決定する制御値で圧縮機1を駆動させる。この制御によれば、起動時の蒸発器9に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して、蒸発器9の凍結を低減することができ、これにより、車室内への異臭の漏れを低減する効果とともに、冷房能力を過剰に低下させない空調を実施できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルの蒸発器の凍結を防止するため、圧縮機を制御する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置は、冷凍サイクルの蒸発器の出口部分における実際の蒸発器下流の空気温度と、その目標温度に基づいてPID制御を実行し、演算された制御値によって圧縮機の容量を可変制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−85142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の車両用空調装置のPID制御では、図11に示すように、エアコンのスイッチがオンされると、圧縮機に所定の制御値G(0)の制御信号が送られて圧縮機を所定の出力で駆動することになる。この制御値G(0)は夏期等に必要とされる冷房能力を重視した制御信号である(図11の一点鎖線参照)。そして、蒸発器はエアコンのスイッチオンとともに冷えて蒸発器温度は低下していく(図11の一点鎖線参照)。このとき、熱的負荷が低負荷である場合には、冷凍サイクル内の冷媒流量が多くなりすぎて目標とする蒸発器温度TEOを下回ってしまうことになる。
【0004】
つまり、夏期などの車室内の温度が高い場合には、空調開始時の実際の蒸発器下流の空気温度とその目標温度TEOとの差が大きくなり、圧縮機の容量を大きく可変させることになるので、目標温度TEOに到達してからの蒸発器下流の空気温度が行き過ぎる(オーバーシュート)ことがある(以上、図11参照)。このとき、蒸発器の温度が冷えすぎて蒸発器の凍結が発生することになり、蒸発器に付着していた臭気成分が蒸発器から遊離して空調風とともに車室内に吹き出されるため、乗員に対して不快感を与えてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、冷房能力を確保しつつ蒸発器の凍結を低減する車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、車両用空調装置の第1の発明は、圧縮機(1)から吐出された冷媒を蒸発器(9)内で蒸発させるとともに、蒸発器(9)を通過して車室内へ送風される空気を冷却する冷凍サイクル装置(21)と、圧縮機(1)の駆動出力を決める制御値を演算して圧縮機の運転を制御する制御手段(20)と、を備え、制御手段(20)は、圧縮機(1)を起動させるときに、冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力に基づいて決定する制御値によって圧縮機(1)を駆動することを特徴とする。ここでいう制御値とは、圧縮機の最大能力に対する駆動出力の比率であり、例えば、制御手段が圧縮機に対して入力する駆動信号としてのデューティ比である。
【0007】
第1の発明によれば、圧縮機を起動するときに、冷凍サイクル内の圧力に基づいて圧縮機の制御値を決定してその駆動出力を制御するので、起動時の蒸発器に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して蒸発器の過冷却による蒸発器下流の空気温度のオーバーシュートを低減し、蒸発器の凍結を低減することができる。また、凍結の低減により、車室内への異臭の漏れを低減することができる。
【0008】
第2の発明は、さらに第1の発明において、制御手段(20)は、圧縮機(1)を起動させるときの制御値を、冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力および車室外の外気温度に基づいて決定することが好ましい。この発明によれば、冷媒の圧力バランス点は外気温度に応じて異なるため、起動時の蒸発器に及ぼされる熱的負荷をより確実に検出することができるので、蒸発器の凍結を防止する効果が高い車両用空調装置を提供できる。
【0009】
さらに第1の発明または第2の発明において、制御手段(20)は、冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力に基づいて制御値を決定するための制御特性データを、特定の外気温度に対応するように複数記憶し、圧縮機(1)を起動させるときの外気温度に応じて、演算に用いる制御特性データを複数の制御特性データの中から選択して制御値を決定することが好ましい。
【0010】
この発明によれば、複数の制御特性データから適切なデータを選択して、圧縮機の制御値の決定に用いることにより、効率的な制御手順でかつ幅広い環境条件に対応可能な制御を実施できる。
【0011】
さらに、第1の発明において、制御手段(20)は、圧縮機(1)を起動させるときの制御値を、冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力および蒸発器の下流側温度または蒸発器下流の空気温度に基づいて決定することが好ましい。
【0012】
この発明によれば、冷媒の圧力および蒸発器の下流側温度または蒸発器下流の空気温度の制御値を決定するためのパラメータとして用いることにより、起動時の蒸発器に及ぼされる熱的負荷をより高い精度で検出することができるので、蒸発器の凍結防止効果が高い車両用空調装置を提供できる。
【0013】
また、第1の発明において、蒸発器(9)の下流側温度が所定温度に安定するときの冷凍サイクル(21)を流れる冷媒流量をあらかじめ記憶する記憶装置を備え、制御手段(20)は冷媒の圧力と記憶装置に記憶されている安定時の冷媒流量とから制御値を決定することが好ましい。この発明によれば、蒸発器が過冷却にならない適切な所定温度の実現を、例えば実験等から求められてあらかじめ記憶させた冷媒流量を用いることによりさらに確実に保証することができるので、蒸発器の凍結を防止する効果が高い車両用空調装置を提供できる。
【0014】
また、第1の発明において、圧縮機(1)は冷媒流量と吸入圧に相関関係がある吸入圧制御式で構成されており、蒸発器(9)の下流側温度が所定温度に安定するときの冷媒流量に相当する吸入圧をあらかじめ記憶する記憶装置を備え、制御手段は冷媒の圧力と記憶装置に記憶されている安定時の吸入圧とから制御値を決定することが好ましい。
【0015】
この発明によれば、吸入圧制御式の圧縮機における吸入圧は冷媒の高圧側の圧力に関係するという特性を活用して蒸発器が過冷却にならない適切な所定温度の実現を冷媒流量に基づき、あらかじめ記憶させた吸入圧を用いることによりさらに確実に保証することができるので、蒸発器の凍結を防止する効果が高い車両用空調装置を提供できる。
【0016】
車両用空調装置の第3の発明は、圧縮機(1)から吐出された冷媒を蒸発器(9)内で蒸発させるとともに、蒸発器(9)を通過して車室内へ送風される空気を冷却する冷凍サイクル装置(21)と、圧縮機(1)の駆動出力を決める制御値を演算して前記圧縮機の運転を制御する制御手段(20)と、を備え、制御手段(20)は、圧縮機(1)を起動させるときに、車室外の外気温度に基づいて決定する制御値によって圧縮機(1)を駆動することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、圧縮機を起動するときに、車室外の外気温度に基づいて圧縮機の制御値を決定してその駆動出力を制御するので、起動時の蒸発器に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して蒸発器の過冷却による蒸発器下流の空気温度のオーバーシュートを低減し、蒸発器の凍結を低減することができる。
【0018】
さらに、第3の発明において、制御手段(20)は、圧縮機(1)を起動させるときの制御値を、現在のモードが車室内の空気を取り入れる内気モード、または車室外の空気を取り入れる外気モード、のいずれのモードであるかに応じて決定することが好ましい。
【0019】
この発明によれば、蒸発器に送風する空気が、外気または内気のいずれであるかに応じて圧縮機の制御値を決定することにより、蒸発器の送風による熱的負荷に応じた適切な制御値を決定することができる。特に、内気モードである場合には、蒸発器の凍結の低減に加えて、窓の曇り防止効果が高い制御値で圧縮機を駆動させる制御を実施できる。
【0020】
さらに、上記すべての発明のいずれかにおいて、制御手段(20)は、車室外の外気温度が所定温度以下の場合に、上記制御値を決定する制御を実行することが好ましい。この発明によれば、蒸発器の凍結の可能性が低い外気温度条件においては、通常の制御を実施することができるので、蒸発器の凍結の低減、および冷房能力の確保の両面に優れた車両用空調装置を提供できる。
【0021】
車両用空調装置の第4の発明は、圧縮機(1)から吐出された冷媒を蒸発器(9)内で蒸発させるとともに、蒸発器(9)を通過して車室内へ送風される空気を冷却する冷凍サイクル装置(21)と、圧縮機(1)の駆動出力を決める制御値を演算して前記圧縮機の運転を制御する制御手段(20)と、を備えている。さらに、制御手段(20)は、圧縮機(1)の起動後、圧縮機(1)の駆動出力を設定する制御値設定条件が検出されたときに、冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力、または車室外の外気温度に基づいて決定する制御値によって圧縮機(1)を駆動することを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、圧縮機を起動後に制御値設定条件を検出したときに、冷媒の圧力、および車室外の外気温度の少なくともいずれか一方に基づいて制御値を決定するので、起動時の蒸発器に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して蒸発器の凍結を低減するとともに、圧縮機の能力を過剰に低下させないで効率的に発揮させる制御を実施することができる。
【0023】
さらに、第4の発明において、制御値設定条件は、前記制御手段(20)が前記圧縮機(1)を起動しようと制御値を決定する制御を開始してから所定時間が経過したこととするのが好ましい。この発明によれば、圧縮機の起動時における制御の遅れ(タイムラグ)に対応可能な制御、あるいは、時間によって凍結の可能性が低い状態であることを判断する制御を実施できる。
【0024】
さらに、第4の発明において、制御値設定条件は、制御手段(20)が圧縮機(1)を起動しようと制御値を決定する制御を開始した後における蒸発器(9)の温度が所定温度以下であることとするのが好ましい。この発明によれば、圧縮機の起動時に、凍結の可能性が低いと考えられる所定温度付近に蒸発器が冷えるまでは、高い制御値で圧縮機を駆動する制御を実行できるので、起動時の冷房能力不足を抑えた空調を実施できる。
【0025】
さらに、上記すべての発明のいずれかにおいて、制御手段(20)によって制御値を可変される圧縮機(1)は、圧縮容量を可変できる容量可変型圧縮機で構成することが好ましい。この発明によれば、圧縮容量を可変できる容量可変型圧縮機を採用することにより、オン・オフ式の固定容量型圧縮機に比べて、蒸発器下流の空気温度をなだらかに変化させることができるので、実際の蒸発器下流の空気温度が行き過ぎる(オーバーシュート)のをより低減することができる。
【0026】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態における車両用空調装置の概略構成を図1および図2を用いて説明する。図1は本実施形態の車両用空調装置の概略構成を示した模式図である。図2は、制御手段としての空調制御装置20による基本の制御ステップを示したフローチャートである。図3は、基本の制御ステップにおける圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。
【0028】
本実施形態の車両用空調装置は、空調機能部品が内蔵された空調ユニットケース6と、空調ユニットケース6の内部に収納された蒸発器9内を流れ、送風空気から吸熱して冷却する冷媒が流動する冷凍サイクル装置21と、蒸発器9側に冷媒を吐出する圧縮機1の駆動出力をその制御値を可変することにより能力制御する空調制御装置20と、を備えている。なお、空調ユニットケース6は、車両前方のインストルメントパネル内に設けられて車室内前席側の領域を空調する前席用空調ユニットとして使用してもよいし、車室内後席側の領域を空調するように、トランクルーム内やサイドトリムなどに設けられる後席用空調ユニットとして使用してもよい。
【0029】
冷凍サイクル装置21は、圧縮機1の吐出側から、凝縮器3、レシーバ4、および減圧手段である膨張弁5を介して蒸発器9に冷媒が循環するように形成されたサイクルを構成している。なお、圧縮機1の吐出側の冷媒流路には、冷凍サイクル内の冷媒の圧力を検出する圧力センサ14が設けられている。
【0030】
圧縮機1は、車両に搭載されたエンジン15によって駆動されるものであり、容量可変機構2を備え、空調制御装置20からの指令によりその吐出容量が可変制御されるように構成されている。容量可変機構2は、例えば電磁弁機構によって構成される場合には、供給された制御電流により圧縮機1の吐出容量を可変する。この吐出容量は、容量可変機構に2に供給される制御電流に比例し、制御電流が小さくなるほど容量は大きくなり、冷媒吐出流量も大きくなる。これにより、圧縮機1は、吐出容量を略0%から100%の範囲で連続的に変化させることができるように構成されている。
【0031】
冷凍サイクル装置10における冷媒は、圧縮機1により高温高圧に圧縮され、この圧縮機1から吐出された高圧ガス冷媒は凝縮器3に導入され、この凝縮器3においてガス冷媒は冷却用電動ファン(図示しない)により送風される外気と熱交換して放熱され、凝縮される。凝縮器3を通過した冷媒は、レシーバ4において液相冷媒と気相冷媒とに分離されるとともに、液相冷媒がレシーバ4内に貯留される。
【0032】
そして、レシーバ4からの高圧液冷媒は、膨張弁5にて低圧の気液二相状態に減圧され、この減圧後の低圧冷媒は蒸発器9において送風空気から吸熱して蒸発させられる。蒸発器9において蒸発した後のガス冷媒は再度圧縮機1に吸入され、圧縮されることになる。
【0033】
なお、膨張弁5は蒸発器9の出口の冷媒過熱度が所定値に維持されるように弁開度が自動調節されるものでもよい。なお、冷凍サイクル装置21のうち、圧縮機1、凝縮器3、レシーバ4などは、図示しないエンジンルーム内に配置されている。
【0034】
空調ユニットケース6は、内部に車室内の乗員に向けて空気が送風される空気通路を有し、この空気通路の最上流部には内気導入口および外気導入口を有する内外気切替箱(図示しない)を備えている。この内外気切替箱内には、内外気切替ドア(図示せず)が回転自在に配置されている。この内外気切替ドアは、サーボモータにより駆動されるものであり、内気導入口より内気(車室内空気)を導入する内気モードと、外気導入口より外気(車室外空気)を導入する外気モードとを切り替えることができる。
【0035】
この内外気切替箱の下流側には車室内に向かう空気流れを発生させるブロワ8が配置されている。ブロワ8は、遠心式の送風ファンをモータ7により駆動するように構成されている。ブロワ8の下流側には空気通路内を流れる空気を冷却する蒸発器9が配置されている。この蒸発器9はブロワ8による送風空気を冷却する冷房用熱交換器である。
【0036】
蒸発器9の下流側には、蒸発器9によって冷却された空気を加熱するヒータコア11が配置されている。このヒータコア11は、エンジン15の冷却水などを熱源として、蒸発器9を通過後の空気を加熱する暖房用熱交換器であり、その側方にはヒータコア11を迂回する空気が流れるバイパス通路が形成されている。エンジン15の冷却水の温度は、水温センサ16によって検出される。
【0037】
実際の蒸発器9の温度は、フィンセンサなどで構成される蒸発器温度センサ12によって検出される。また、実際の蒸発器9の下流の空気温度は、蒸発器後温度センサ13によって検出される。
【0038】
蒸発器9とヒータコア11との間には、エアミックスドア10が回転自在に配置されている。このエアミックスドア10はサーボモータにより駆動されて、その回転位置や開度が連続的に調節可能に構成されている。エアミックスドア10の開度を調整することにより、ヒータコア11を通る空気量(温風量)と、バイパス通路を通過してヒータコア11を迂回する空気量(冷風量)とを調節することができる。このようにして車室内に吹き出す空気の吹出温度を調整する。
【0039】
また、空調ユニットケース6内の空気通路の最下流部には、車両の窓ガラスに向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(図示せず)、乗員の上半身に向けて空調風吹き出すフェイス吹出口(図示せず)、および乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口(図示せず)が設けられている。
【0040】
次に、車両用空調装置の制御手段である空調制御装置20を説明する。空調制御装置20は、CPU、ROMおよびRAMなどを含むマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、かつそのROM内に空調制御のための制御プログラムが設けられ、その制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行なう電気制御部である。
【0041】
空調制御装置20には、内気センサ17、外気センサ18、日射センサ19、圧力センサ14、蒸発器温度センサ12、蒸発器後温度センサ13、および水温センサ16からの各種センサ検出信号、および空調コントロールパネルからの操作信号が入力される。空調コントロールパネルは、車室内の運転席前方のインストルメントパネル(図示せず)近傍に配置され、運転手をはじめとする乗員により操作される複数のスイッチを有している。
【0042】
この複数のスイッチは、車室内の設定温度の信号を出力する温度設定スイッチや、内気モードと外気モードとをマニュアル設定する信号を出力するスイッチや、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、およびデフロスタモードをマニュアル設定する信号を出力する吹出モードスイッチや、ブロワ8のオン・オフ、およびブロワ8の風量切替えをマニュアル設定する信号を出力する風量設定スイッチや、圧縮機1の作動状態と停止状態を切り替えるエアコンスイッチなどである。
【0043】
空調制御装置20は、各機器の電気駆動手段をなすサーボモータおよびモータ8などが接続され、これらの機器の動作が空調制御装置20の出力信号により制御される。
【0044】
空調制御装置20は、後述する図3のステップS340およびS350に示すように、検出された蒸発器下流の空気温度(または蒸発器後温度)と、設定温度スイッチによる設定温度から求められた蒸発器下流の目標空気温度(目標蒸発器後温度)とに基づいて、PID制御によって圧縮機1の容量可変機構2に供給される制御電流を求め、圧縮機1の制御値を決定して能力制御する。すなわち、蒸発器9の出力側の空気温度が、目標空気温度となるようにフィードバック制御するものであり、車室内に送風される空調空気温度が適正な温度となるように制御するものである。
【0045】
次に、空調制御装置20による基本の空調制御ステップについて図2を用いて説明する。まず、イグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されると、あらかじめ記憶されている制御プログラムの実行を開始し、RAMなどのデータ処理メモリの記憶内容の一部を初期化する(ステップS100)。
【0046】
次に、空調制御装置20は、各種データをデータ処理用メモリに読み込む。すなわち、空調コントロールパネル上の各種スイッチからの操作信号や各種センサからの検出信号を入力する(ステップS110)。次に、上記のような各信号や制御プログラムに記憶されている演算式に基づいて、目標吹出温度TAOを演算する(ステップS120)。
【0047】
次に、空調制御装置20は、ステップS120で求めた目標吹出温度TAOに基づいてブロワ8のモータ7に印加するブロワ制御電圧を演算し、ブロワ8の風量を決定する(ステップS130)。ブロワ制御電圧は、あらかじめ定めた制御特性パターンに基づいて目標吹出温度TAOのそれぞれに適合したブロワ制御電圧を求めることにより得られる。次に、空調制御装置20は、上記のような記憶データや制御プログラムに記憶されている演算式に基づいて、エアミックスドア10の開度(%)を演算する(ステップS140)。
【0048】
次に、空調制御装置20は、ウインドウ防曇制御を実行する(ステップS150)。ウインドウ防曇制御は、吸込口モードが内気モードであり、かつ吹出口モードがフットモードであるときに、フットモードとして乗員の足下の暖房を行いつつ、デフロスタモードの風量を時間経過に応じて変化させる制御である。
【0049】
次に、空調制御装置20は、圧縮機1の駆動出力を制御するステップを実行する(ステップS160)。このステップS160のサブルーチンは、図3に示したものであり、その詳細は後述する。
【0050】
空調制御装置20は、ステップS160を実行した後、ステップS130で決定されたブロワ制御電流となるように制御信号を出力し(ステップS170)、さらに、ステップS140で決定されたエアミックスドアの開度となるようにエアミックスドア10のサーボモータに制御信号を出力する(ステップS180)。そして、空調制御装置20は、設定された吹出口モードとなるように各吹出口切替ドア(図示せず)のサーボモータに制御信号を出力する(ステップS190)。その後にステップS100の制御処理に戻り、一連の制御ステップを繰り返し実行する。
【0051】
次に、圧縮機1の駆動出力ステップ(ステップS160)のサブルーチンについて図3を用いて説明する。まず、空調制御装置20は、今回の圧縮機の駆動が、イグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されてからの最初の駆動であるか否かを判断する(ステップS300)。空調制御装置20は、今回の圧縮機の駆動が最初の駆動であると判断すると、次に圧縮機1の駆動出力を決定する制御値G1を演算する処理を実行する(ステップS310)。ここでいう制御値は、圧縮機1の最大能力に対する駆動出力の比率であり、例えば、圧縮機1に入力される駆動信号としてのデューティ比である。
【0052】
ステップS310の処理は、冷凍サイクル装置21内の冷媒の圧力値に基づいて制御値G1を演算する処理であり、検出された冷媒の圧力と制御値の関係を表した制御特性データを用いて実行される。このときの冷媒の圧力は、冷凍サイクル装置21内の冷媒の圧力であれば、その検出する部位は限定するものではないが、本実施形態では、圧力センサ14で検出される高圧部位の冷媒の圧力値Ph[MPa]とする。また、制御特性データは、あらかじめマイクロコンピュータに記憶されているマップタイプの特性データである。
【0053】
次に、制御値G1を演算するときに用いる各パラメータについて図4から図6にしたがって説明する。図4は外気温度TAMに基づいて冷媒流量Fを算出するときに用いられる制御マップである。図5は冷媒の密度と比例関係にある冷媒圧力Phと冷媒流量Fとの関係を示し、制御値Gを算出するときに用いられる制御マップである。図6は冷媒圧力Phに基づいて制御値Gを算出するときに用いられる制御マップである。
【0054】
車両用空調装置は、熱的負荷を表す外気温度TAMと冷媒流量Fとの間に図4に示すような制御特性を有する制御マップを備えており、これは外気温度T1に対して一の冷媒流量Aが決まる1対1の関数であり、外気温度の増加(熱的負荷の増加)とともに対応する冷媒流量が増加するものである。車両用空調装置は、このように検出された外気温度によってそのレベルを認識することができる熱的負荷に対して、図11に示すように蒸発器温度がオーバーシュートしないで目標蒸発器温度TEOに早く到達する冷媒流量を算出することができる。
【0055】
そして、車両用空調装置は、外気温度T1に基づいて算出された冷媒流量Aを満たす制御値を図5の制御マップを用いて算出する。この制御マップは確保したい冷媒流量Aに対して冷媒の圧力Phの値に基づいて一の制御値が決まる1対1の関数であり、確保すべき冷媒流量の増加とともに対応する制御値が大きくなる(圧縮機の駆動出力が大きくなる)ものである。
【0056】
図5に示す冷媒の圧力Phの各曲線は、冷媒の密度と比例関係にあり、図5のP3、P2、P1は高い圧力の順番であり、対応する冷媒の密度もP3が最も大きくP1が最も小さい。つまり、冷媒流量Aに対して、PhがP1であるときは制御値は曲線P1とF=Aとの交点にあるB1と算出され、PhがP2であるときは制御値は曲線P2とF=Aとの交点にあるB2と算出され、PhがP3であるときは制御値は曲線P3とF=Aとの交点にあるB3と算出される。また、PhがP3以上であるときは冷媒流量Aに対して制御値はB3と算出され、PhがP1以下であるときは冷媒流量Aに対して制御値はB1と算出される。さらに、PhがP2からP3の間の値であるときやP1からP2の間の値であるときは各曲線間について補間法により制御値を算出することとする。
【0057】
また、車両用空調装置は、図6の制御マップを用い、冷媒の圧力Phに基づいて所望の冷媒流量Aを満たす制御値Gを算出することもできる。この制御マップは熱的負荷を表す冷媒の圧力Phの値に基づいて一の制御値が決まる1対1の関数であり、冷媒圧力の増加とともに対応する制御値が大きくなる(圧縮機の駆動出力が大きくなる)ものである。このように車両用空調装置は、検出された冷媒圧力という熱的負荷に対して、図11に示すように蒸発器温度がオーバーシュートしないで目標蒸発器温度TEOに早く到達する制御値を算出することができる。この図6は空調制御装置20に記憶されている。
【0058】
また、車両用空調装置は、蒸発器の下流側温度が所定温度に安定するときの冷凍サイクル装置を流れる冷媒流量をあらかじめ記憶するように構成してもよい。この場合、車両用空調装置はこの情報を記憶する記憶装置を備えている。そして、空調制御装置20は、検出された冷媒の圧力と記憶装置に記憶されている上記安定時の冷媒流量とから制御値Gを決定することができる。上記所定の温度は、蒸発器温度がオーバーシュートしない(冷えすぎない)適切な温度である。
【0059】
可変容量圧縮機において流量制御式の圧縮機では所定の流量となる制御値は冷媒の圧力によって変わるという特性のため、冷媒圧力を検出すれば、所定の冷媒流量となる制御値が決まり、圧縮機をこの制御値で起動すると、冷凍サイクル内の冷媒が流れすぎて過冷却とならないので、オーバーシュートすることがない。この所定の冷媒流量Fは、実験等により求められた制御マップにより算出され、あらかじめ蒸発器の下流側温度が所定温度に安定するときの流量である。
【0060】
また、冷媒流量と吸入圧に相関関係がある吸入圧制御式では、圧縮機の吸入圧は冷媒の高圧側の圧力に関係するものであるため、所定の吸入圧となる制御値は高圧側の圧力を基に決められる。圧縮機をこの制御値で起動すると、冷凍サイクル内の冷媒が流れすぎて過冷却とはならず、オーバーシュートすることがない。この所定の吸入圧は、実験等により求められた制御マップにより算出され、あらかじめ蒸発器の下流側温度が所定温度に安定するときの吸入圧である。
【0061】
そして、車両用空調装置は、蒸発器9の下流側温度が所定温度に安定するときの冷媒流量に相当する吸入圧をあらかじめ記憶するように構成することができる。この場合、車両用空調装置はこの吸入圧を記憶する記憶装置を備えている。空調制御装置20は検出された冷媒の圧力と記憶装置に記憶されている上記安定時の吸入圧とから制御値Gを決定することができる。
【0062】
次に、空調制御装置20は、検出された圧力値Phに基づいて制御値G1を演算し、このG1を今回の圧縮機1の制御に用いる制御値として決定する(ステップS320)。そして、空調制御装置20は、このように決定されたG1を圧縮機1を作動させる初期駆動出力のデューティ比として実行し、圧縮機1の吐出流量が制御される(ステップS330)。
【0063】
この後、空調制御装置20は、サブルーチン内の処理においては、ステップS300に戻り、そのときの圧縮機1の駆動が何回目であるかを判断する。つまり、ステップS330の処理を実行した後は、空調制御装置20への電源の供給が停止するまでのステップS300の判断においては、圧縮機1の駆動は最初でないと判断されることになり、ステッップS340、S350およびS330の処理が繰り返し実行されることになる。
【0064】
空調制御装置20は、ステップS300の処理において、今回の圧縮機の駆動が最初の駆動でない、つまり2回目以降であると判断すると、フィードバック制御の一種であるPID制御を実行する。具体的には、空調制御装置20は、目標蒸発器後温度と蒸発器後温度センサ13の検出値である実際の蒸発器後温度との差を演算し(ステップS340)、さらに、今回の制御に用いる制御値を次の数式1により演算する(ステップS350)。
【0065】
今回の制御に用いる制御値
=前回の制御値+KP×(E(今回)−E(前回))+E(前回)/10 …(数式1)
KPは比例ゲインであり、例えば2.0である。E(今回)は、ステップS340で演算した目標蒸発器後温度と実際の蒸発器後温度との差であり、E(前回)は、圧縮機1を前回駆動した時に演算された値である。前回の制御値およびE(前回)は、RAMなどのデータ処理メモリに記憶されていた実績データであり、データ処理メモリから読み取られる。
【0066】
なお、イグニッションスイッチがオンからオフに移行した場合や、乗員がエアコンスイッチを操作してオフ状態にした場合や、圧縮機のみの駆動を停止するスイッチ、例えば風量設定スイッチを操作して圧縮機1を停止状態にした場合には、圧縮機1の駆動回数のカウントが一旦リセットされる。このため、次にイグニッションスイッチがオンされたり、エアコンスイッチや風量設定スイッチがオンされたりして、空調制御装置20に電源が供給された後のステップS300における判断は、最初の駆動であると判断され、ステップS310、S320およびS330の処理が実行されることになる。
【0067】
空調制御装置20は、このようにして演算された制御値を、圧縮機1を作動させる初期駆動出力のデューティ比として実行し、圧縮機1の吐出流量が制御される(ステップS330)。なお、このサブルーチンにおける制御値の演算は、1秒に1回更新されることとする。
【0068】
なお、空調制御装置20は、ステップS310の処理における制御値G1の演算において、冷媒の圧力と制御値の関係を表した制御特性データを特定の外気温度TAMdispに対応するように複数記憶し、外気センサ18で検出された外気温度に応じて、演算に用いる制御特性データを記憶している複数の中から選択して制御値の演算を行うこととしてもよい。
【0069】
例えば、図3のステップS310に記載しているように、TAMdisp=5℃に対応する制御特性データと、TAMdisp=30℃に対応する制御特性データとを記憶している場合である。このような複数の制御特性データを記憶している場合には、空調制御装置20は、5℃から30℃の間に所定の閾値を有し、検出された外気温度がこの閾値より低い温度である場合は、5℃に対応する制御特性データを使用して検出された圧力値Phに基づいて制御値G1を演算することとする。逆に、検出された外気温度がこの閾値以上の温度である場合は、30℃に対応する制御特性データを使用して、検出された圧力値Phに基づいて制御値G1を演算することとする。
【0070】
また、他の制御値G1の演算方法としては、空調制御装置20は、検出された外気温度が5℃以下の温度である場合は、5℃に対応する制御特性データを使用して検出圧力値Phに基づいて制御値G1を演算し、検出された外気温度が30℃以上の温度である場合は、30℃に対応する制御特性データを使用して検出圧力値Phに基づいて制御値G1を演算することとする。さらに、検出された外気温度が5℃と30℃の間の温度である場合は、30℃に対応する制御特性データと5℃に対応する制御特性データとの間で補間法を用いて検出圧力値Phに基づいた制御値G1を演算することとする。
【0071】
このように本実施形態の車両用空調装置における空調制御装置20は、圧縮機1を起動させるときに、冷凍サイクル内の冷媒の圧力に基づいて決定される制御値で圧縮機1を駆動させる。この制御によれば、起動時の蒸発器9に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して、蒸発器9の一時的な冷えすぎによる凍結を低減することができ、これにより、車室内への異臭の漏れを低減することができる。また、圧縮機1の起動時に、冷凍サイクル内の冷媒の圧力に基づいて制御値を決定することにより、凍結を低減する効果とともに、冷房能力を過剰に低下させない空調を実施できる。
【0072】
また、空調制御装置20は、圧縮機1を起動させるときの制御値を冷凍サイクル内の冷媒の圧力および車室外の外気温度に基づいて決定することが好ましい。この制御を採用した場合には、冷媒の圧力バランス点は外気温度に依存することから、起動時の蒸発器9に及ぼされる熱的負荷をより確実に検出することができる。
【0073】
また、空調制御装置20は、冷凍サイクル内の冷媒の圧力に基づいて制御値を決定するための制御特性データを、特定の外気温度に対応するように複数記憶し、圧縮機1を起動させるときの外気温度に応じて、演算に用いる制御特性データを複数の制御特性データの中から選択して制御値を決定することが好ましい。
【0074】
この制御を採用した場合には、より効率的な制御手順でかつ幅広い外気温度条件に対応可能な制御を実施できる。
【0075】
また、圧縮機1は、圧縮容量を可変できる容量可変型圧縮機で構成することにより、オン・オフ式の固定容量型圧縮機に比べて、蒸発器下流の空気温度または蒸発器の下流側温度をなだらかに変化させることができるので、実際の蒸発器下流の空気温度がオーバーシュートするのをより低減することができる。
【0076】
(第2実施形態)
第2実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップ(ステップS160)のサブルーチンについて図7を用いて説明する。図7は、本実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順における制御値G2の演算処理を示した図である。本実施形態の車両用空調装置は、各部の構成や、図2に示す基本制御ステップにおいて、ステップS160を除く各ステップの処理については、第1実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0077】
本実施形態の圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順は、図3に示すサブルーチンに対して、図3のステップS310をステップS410に置き換えたものであり、このステップS410について以下に説明する。
【0078】
空調制御装置20は、ステップS300において、今回の圧縮機の駆動が、イグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されてからの最初の駆動であるか否かを判断し、この判断において、最初の駆動であると判断すると、ステップS410の処理を実行する。
【0079】
ステップS410の処理は、圧縮機1の駆動出力を決定する制御値G2を演算する処理である。ステップS410の処理は、蒸発器9の熱的負荷にかかわりの大きい車室外の外気温度に基づいて制御値G2を演算する処理であり、外気センサ18によって検出された外気温度、検出された冷媒の圧力値Phおよび制御値G2の関係を表した制御特性データ(制御マップ)を用いて実行される。この制御特性データは、あらかじめマイクロコンピュータに記憶されているマップタイプの特性データである。
【0080】
空調制御装置20は、ステップS410の処理における制御値G2の演算において、外気温度、冷媒圧力値および制御値の関係を表した制御特性データを、内気モード用、外気モード用のそれぞれについて記憶している。空調制御装置20は、現在のモードが内気モード、外気モードのいずれであるかに応じて、当該モードに該当する制御特性データを選択して制御値G2の演算を行う。
【0081】
空調制御装置20は、各モードの制御マップにおいて、冷媒圧力Phと制御値G2の関係を表した制御特性データを特定の外気温度TAMdispに対応するように複数記憶しており、検出された外気温度に応じて演算に用いる制御特性データを複数の中から選択して制御値G2の演算を行う。
【0082】
そして、空調制御装置20は、現在のモードが外気モードであると判断した場合には、あらかじめ記憶している外気モードに対応する制御特性データを採用し、検出された外気温度に基づいて制御値G2を演算する。一方、空調制御装置20は、現在のモードが内気モードであると判断した場合には、あらかじめ記憶している内気モードに対応する制御特性データを採用し、検出された外気温度に基づいて制御値G2を演算する。
【0083】
内気モードに対応する制御特性データは、外気モードに対応する制御特性データに比べて、外気温度に対する制御値を15%程度高く設定するようにしてもよい。これは、内気モードにおいては車室内の比較的湿度の高い空気を空調用空気として取り込むことになるので、空調の除湿能力を高くして窓曇りを低減するためである。
【0084】
次に、空調制御装置20は、演算された制御値G2を今回の圧縮機1の制御に用いる制御値として決定する(ステップS320に相当する)。そして、空調制御装置20は、このように決定されたG2を圧縮機1を作動させる初期駆動出力のデューティ比として実行し、圧縮機1の吐出流量が制御される(ステップS330に相当する)。
【0085】
また、内気モード、外気モードのそれぞれで制御値G2の演算において、用いられる各パラメータの関係は、図4から図6を用いて説明した第1実施形態の記載と同様である。
【0086】
このように本実施形態の車両用空調装置における空調制御装置20は、圧縮機1を起動させるときに、車室外の外気温度に基づいて決定する制御値G2によって圧縮機1を駆動させる。この制御によれば、起動時の蒸発器9に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して蒸発器9の一時的な冷えすぎによる蒸発器下流の空気温度のオーバーシュートを低減することができる。また、圧縮機1の起動時に、外気温度に基づいて制御値を決定することにより、凍結の低減の効果とともに、冷房能力を過剰に低下させない空調を実施できる。
【0087】
また、空調制御装置20は、圧縮機1を起動させるときの制御値を、現在のモードが車室内の空気を取り入れる内気モードまたは車室外の空気を取り入れる外気モード、のいずれのモードであるかに応じて決定することが好ましい。
【0088】
この制御を採用した場合には、蒸発器9に送風する空気が外気または内気のいずれであるかに応じて圧縮機1の制御値を決定することにより、蒸発器9に送風される熱的負荷に対して、より緻密な制御値を決定することができる。特に、内気モードである場合には、窓の曇り防止効果が高い制御値で圧縮機1を駆動させる制御も実施できる。
【0089】
(第3実施形態)
第3実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップ(ステップS160)のサブルーチンについて図8を用いて説明する。図8は、本実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。なお、本実施形態の車両用空調装置は、各部の構成や、図2に示す基本制御ステップにおいて、ステップS160を除く各ステップの処理については、第1実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0090】
本実施形態の圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順は、図3に示すサブルーチンに対して、ステップS510、S520、S530、S540のみが異なっており、ステップS500、S550、S560、S570のそれぞれは、図3に示すサブルーチンのステップS300、S330、S340、S350と同様の処理が実行されるものである。このステップS510〜S540について以下に説明する。
【0091】
空調制御装置20は、ステップS500において、今回の圧縮機の駆動が、イグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されてからの最初の駆動であると判断すると、ステップS510の処理を実行する。
【0092】
ステップS510の処理は、さらに、外気センサ18によって検出された外気温度TAMが所定温度以下であるか否かを判断する処理である。ステップS510の処理は、蒸発器9の熱的負荷にかかわりの大きい外気温度が、所定温度より高いと判断されると、蒸発器9が凍結する可能性が低いと判断してステップS560およびS570の前述したPID制御を実行し、逆に、外気温度が所定温度以下であると判断すると、蒸発器9が凍結する可能性があるとしてステップS520、S530、およびS540で決定される制御値を用いて圧縮機1の駆動出力を制御する処理である。
【0093】
なお、この所定温度は、外気温度がこの所定温度以下であるときに、PID制御による制御値で圧縮機1を駆動した場合には蒸発器9の凍結が起こる、もしくはその可能性があると考えられる温度であり、あらかじめマイクロコンピュータに記憶されている閾値であり、本実施形態では22℃としている。
【0094】
空調制御装置20は、外気温度TAMが所定温度以下であると判断すると、まず、冷凍サイクル装置21内の冷媒の圧力値に基づいて制御値因子G3Phを演算する処理を実行する(ステップS520)。この処理は、検出された冷媒の圧力Phと制御値因子G3Phの関係を表したあらかじめマイクロコンピュータに記憶されているマップタイプの制御特性データを用いて実行される。このときの冷媒の圧力は、冷凍サイクル装置21内の冷媒の圧力であれば、これを検出する部位は限定するものではないが、本実施形態では、圧力センサ14で検出される高圧部位の冷媒の圧力値Ph[MPa]とする。
【0095】
次に、空調制御装置20は、ステップS530において、蒸発器後温度センサ13によって検出される蒸発器の下流側温度TE(蒸発器後温度)に基づいてもう一つの制御値因子G3TEを演算する処理を実行する(ステップS530)。この処理は、検出された蒸発器の下流側温度TEと制御値因子G3TEの関係を表しており、あらかじめマイクロコンピュータに記憶されているマップタイプの制御特性データを用いて実行される。
【0096】
次に、空調制御装置20は、演算された制御値因子G3PhおよびG3TEを足し合わせることで、今回の制御に用いる制御値G3を演算し、このG3を今回の圧縮機1の制御に用いる制御値として決定する(ステップS540)。この制御値因子G3TEを最終的な制御値G3の演算に用いることは、冷媒の圧力Phに基づいて求めた制御値因子G3Phに対して、さらに冷凍サイクルを冷やして除湿することになるので、内気モードのときの窓曇り対策として有効である。そして、空調制御装置20は、このように決定されたG3を圧縮機1を作動させる初期駆動出力のデューティ比として実行し、圧縮機1の吐出流量が制御される(ステップS550)。
【0097】
このように本実施形態の車両用空調装置における空調制御装置20は、圧縮機1を起動させるときの制御値を、冷凍サイクル内の冷媒の圧力および蒸発器の下流側温度または蒸発器下流の空気温度に基づいて決定することが好ましい。この制御を採用した場合には、起動時の蒸発器9に及ぼされる熱的負荷をさらに高い精度で検出することができる。
【0098】
また、空調制御装置20は、車室外の外気温度が所定温度以下の場合に、上記制御値を決定する制御を実行することが好ましい。この制御を採用した場合には、蒸発器9の凍結の可能性が低い外気温度条件においては、PID制御を実施することができるので、蒸発器9の凍結の低減、および冷房能力の確保を実現できる。
【0099】
(第4実施形態)
第4実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップ(ステップS160)のサブルーチンについて図9を用いて説明する。図9は、本実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。なお、本実施形態の車両用空調装置は、各部の構成や、図2に示す基本制御ステップにおいて、ステップS160を除く各ステップの処理については、第1実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0100】
本実施形態の圧縮機1における駆動出力ステップの制御処理手順は、図3に示すサブルーチンに対して、ステップS600、S610、S620のみが異なっており、ステップS630、S640、S650、S660、S670のそれぞれは、図3に示すサブルーチンのステップS310、S320、S330、S340、S350と同様の処理が実行されるものである。このステップS600、S610およびS620について以下に説明する。
【0101】
空調制御装置20は、まずステップS600において、イグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されてから所定時間、例えば5秒が経過したか否かを判断する。空調制御装置20は、まだ所定時間が経過していないと判断した場合には、所定の制御値、例えば最大能力に対して50%の制御値を設定し(ステップS610)、設定された所定の制御値を圧縮機1を作動させる初期駆動出力のデューティ比として実行し、圧縮機1の吐出流量を制御する(ステップS650)。
【0102】
上記のイグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されてから所定時間が経過することは、圧縮機1の起動後、圧縮機1の駆動出力を設定する制御値設定条件が検出されたことと、言い換えることができる。
【0103】
なお、この所定時間の始期は、言い換えれば、空調制御装置20が圧縮機1を起動しようと制御値を決定する制御を開始した時、でもある。また、この所定時間の始期は、イグニッションスイッチがオンされた時、エアコンスイッチがオンされた時、または風量設定スイッチがオンされた時、としてもよい。
【0104】
一方、空調制御装置20は、ステップS600において、所定時間が経過したと判断すると、今回の制御値の演算が所定時間経過後の1回目の演算であるか否かを判断する(ステップS620)。空調制御装置20は、2回目以降の演算であると判断すると、蒸発器9が凍結する可能性が低いと判断してステップS660およびS670の前述したPID制御を実行し、逆に、1回目の演算であると判断すると、蒸発器9が凍結する可能性があるとしてステップS630およびS640で決定される制御値を用いて圧縮機1の駆動出力を制御する(ステップS650)。
【0105】
このように図9に示すサブルーチンでは、圧縮機1の起動後、圧縮機1の駆動出力を設定する制御値設定条件が検出された場合、冷凍サイクル装置21内の冷媒の圧力、および外気温度の少なくともいずれか一方に基づいて決定する制御値で圧縮機1を駆動させる制御を実行している。
【0106】
この制御により、起動時の蒸発器9に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して蒸発器9の一時的な冷えすぎによる凍結を低減することに加えて、さらに圧縮機1の能力を過剰に低下させない効率的な制御を実施する車両用空調装置が得られる。
【0107】
また、制御値設定条件として、空調制御装置20が圧縮機1を起動しようと制御値を決定する制御を開始してから所定時間が経過したことを採用することにより、圧縮機1の起動時における制御の遅れ、いわゆるタイムラグに対応可能となり、または、時間によって凍結の可能性が低い状態であることを判断することができる。
【0108】
(第5実施形態)
第5実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップ(ステップS160)のサブルーチンについて図10を用いて説明する。図10は、本実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。なお、本実施形態の車両用空調装置は、各部の構成や、図2に示す基本制御ステップにおいて、ステップS160を除く各ステップの処理については、第1実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0109】
本実施形態の圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順は、図9に示すサブルーチンに対して、ステップS700のみが異なっており、ステップS700以降のステップは、図9に示すサブルーチンの各ステップと同様の処理が実行されるものである。このステップS700について以下に説明する。
【0110】
空調制御装置20は、最初のステップS700において、イグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給された後に、蒸発器温度センサ12によって検出された蒸発器9の温度が所定温度以下であるか否かを判断する(ステップS700)。この判断において、蒸発器9の温度が所定温度以下であると判断された場合は、空調制御装置20は、圧縮機1の起動後、圧縮機1の駆動出力を設定する制御値設定条件が検出したことになる。
【0111】
なお、この所定温度は、実際の蒸発器9の温度がこの所定温度以下であるときに、PID制御による制御値で圧縮機1を駆動した場合には蒸発器9の凍結が起こる、もしくはその可能性があると考えられる温度であり、あらかじめマイクロコンピュータに記憶されている閾値であり、本実施形態では10℃としている。
【0112】
空調制御装置20が、ステップS700において蒸発器9の温度が所定温度より高いと判断した場合には、所定の制御値、例えばほぼ最大能力の制御値を設定し(ステップS710)、設定された所定の制御値を圧縮機1を作動させる初期駆動出力のデューティ比として実行し、圧縮機1の吐出流量を制御する(ステップS750)。
【0113】
一方、空調制御装置20は、ステップS700において、蒸発器9の温度が所定温度以下であると判断すると、今回の制御値の演算が、第4実施形態と同様にイグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されてから所定時間が経過後の1回目の演算であるか否かを判断する(ステップS720)。空調制御装置20は、2回目以降の演算であると判断すると、ステップS660およびS670の前述したPID制御を実行し、逆に、1回目の演算であると判断すると、蒸発器9が凍結する可能性があるとしてステップS730およびS740で決定される制御値G1を用いて圧縮機1の駆動出力を制御する(ステップS750)。
【0114】
本実施形態車両用空調装置は、圧縮機1の起動後、圧縮機1の駆動出力を設定する制御値設定条件として、空調制御装置20が圧縮機1を起動しようと制御値を決定する制御を開始した後において蒸発器9の温度が所定温度以下である条件を採用する。
【0115】
この条件を採用したことにより、圧縮機1の起動時における、凍結の可能性が低いと考えられる所定温度付近に蒸発器が冷えるまでは、高い制御値で圧縮機を駆動する制御を実行できるので、起動時の冷房能力不足を抑えた空調を実施できる。
【0116】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0117】
例えば、上記実施形態における冷凍サイクル内の冷媒圧力の検出は、高圧領域に設けられた圧力検知器14によって行われているが、冷凍サイクル内の冷媒が流れる部位であれば、これに限定するものではない。例えば、冷凍サイクル内の低圧領域において、冷媒の圧力を検出する構成でもよい。
【0118】
また、上記実施形態における圧縮機は可変容量型の圧縮機であるが、これに限らず、固定容量型の圧縮機で構成してもよい。
【0119】
また、上記実施形態における圧縮機は、エンジンの回転による駆動力を利用する構成の他、バッテリなどの電力を利用する電動式圧縮機で構成してもよい。
【0120】
また、冷凍サイクル装置21を流れる冷媒としては、二酸化炭素の他、例えば、エチレン、エタン、酸化窒素などの冷媒を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の各実施形態に共通した車両用空調装置の概略構成を示した模式図である。
【図2】車両用空調装置の空調制御装置による、各実施形態に共通した基本の制御ステップを示したフローチャートである。
【図3】第1実施形態の圧縮機駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。
【図4】外気温度TAMに基づいて冷媒流量Fを算出するときに用いられる制御マップである。
【図5】冷媒の密度と比例関係にある冷媒圧力Phと冷媒流量Fとの関係を示し、制御値Gを算出するときに用いられる制御マップである。
【図6】冷媒圧力Phに基づいて制御値Gを算出するときに用いられる制御マップである。
【図7】第2実施形態の圧縮機駆動出力ステップの制御処理手順における制御値G2の演算処理を示した図である。
【図8】第3実施形態の圧縮機駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。
【図9】第4実施形態の圧縮機駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。
【図10】第5実施形態の車両用空調装置における圧縮機の制御を示したフローチャートである。
【図11】圧縮機起動後の制御値および蒸発器温度の推移について、本願記載の発明と従来技術の比較を示したタイムチャートである。
【符号の説明】
【0122】
1 圧縮機
9 蒸発器
20 空調制御装置(制御手段)
21 冷凍サイクル装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルの蒸発器の凍結を防止するため、圧縮機を制御する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置は、冷凍サイクルの蒸発器の出口部分における実際の蒸発器下流の空気温度と、その目標温度に基づいてPID制御を実行し、演算された制御値によって圧縮機の容量を可変制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−85142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の車両用空調装置のPID制御では、図11に示すように、エアコンのスイッチがオンされると、圧縮機に所定の制御値G(0)の制御信号が送られて圧縮機を所定の出力で駆動することになる。この制御値G(0)は夏期等に必要とされる冷房能力を重視した制御信号である(図11の一点鎖線参照)。そして、蒸発器はエアコンのスイッチオンとともに冷えて蒸発器温度は低下していく(図11の一点鎖線参照)。このとき、熱的負荷が低負荷である場合には、冷凍サイクル内の冷媒流量が多くなりすぎて目標とする蒸発器温度TEOを下回ってしまうことになる。
【0004】
つまり、夏期などの車室内の温度が高い場合には、空調開始時の実際の蒸発器下流の空気温度とその目標温度TEOとの差が大きくなり、圧縮機の容量を大きく可変させることになるので、目標温度TEOに到達してからの蒸発器下流の空気温度が行き過ぎる(オーバーシュート)ことがある(以上、図11参照)。このとき、蒸発器の温度が冷えすぎて蒸発器の凍結が発生することになり、蒸発器に付着していた臭気成分が蒸発器から遊離して空調風とともに車室内に吹き出されるため、乗員に対して不快感を与えてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、冷房能力を確保しつつ蒸発器の凍結を低減する車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、車両用空調装置の第1の発明は、圧縮機(1)から吐出された冷媒を蒸発器(9)内で蒸発させるとともに、蒸発器(9)を通過して車室内へ送風される空気を冷却する冷凍サイクル装置(21)と、圧縮機(1)の駆動出力を決める制御値を演算して圧縮機の運転を制御する制御手段(20)と、を備え、制御手段(20)は、圧縮機(1)を起動させるときに、冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力に基づいて決定する制御値によって圧縮機(1)を駆動することを特徴とする。ここでいう制御値とは、圧縮機の最大能力に対する駆動出力の比率であり、例えば、制御手段が圧縮機に対して入力する駆動信号としてのデューティ比である。
【0007】
第1の発明によれば、圧縮機を起動するときに、冷凍サイクル内の圧力に基づいて圧縮機の制御値を決定してその駆動出力を制御するので、起動時の蒸発器に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して蒸発器の過冷却による蒸発器下流の空気温度のオーバーシュートを低減し、蒸発器の凍結を低減することができる。また、凍結の低減により、車室内への異臭の漏れを低減することができる。
【0008】
第2の発明は、さらに第1の発明において、制御手段(20)は、圧縮機(1)を起動させるときの制御値を、冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力および車室外の外気温度に基づいて決定することが好ましい。この発明によれば、冷媒の圧力バランス点は外気温度に応じて異なるため、起動時の蒸発器に及ぼされる熱的負荷をより確実に検出することができるので、蒸発器の凍結を防止する効果が高い車両用空調装置を提供できる。
【0009】
さらに第1の発明または第2の発明において、制御手段(20)は、冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力に基づいて制御値を決定するための制御特性データを、特定の外気温度に対応するように複数記憶し、圧縮機(1)を起動させるときの外気温度に応じて、演算に用いる制御特性データを複数の制御特性データの中から選択して制御値を決定することが好ましい。
【0010】
この発明によれば、複数の制御特性データから適切なデータを選択して、圧縮機の制御値の決定に用いることにより、効率的な制御手順でかつ幅広い環境条件に対応可能な制御を実施できる。
【0011】
さらに、第1の発明において、制御手段(20)は、圧縮機(1)を起動させるときの制御値を、冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力および蒸発器の下流側温度または蒸発器下流の空気温度に基づいて決定することが好ましい。
【0012】
この発明によれば、冷媒の圧力および蒸発器の下流側温度または蒸発器下流の空気温度の制御値を決定するためのパラメータとして用いることにより、起動時の蒸発器に及ぼされる熱的負荷をより高い精度で検出することができるので、蒸発器の凍結防止効果が高い車両用空調装置を提供できる。
【0013】
また、第1の発明において、蒸発器(9)の下流側温度が所定温度に安定するときの冷凍サイクル(21)を流れる冷媒流量をあらかじめ記憶する記憶装置を備え、制御手段(20)は冷媒の圧力と記憶装置に記憶されている安定時の冷媒流量とから制御値を決定することが好ましい。この発明によれば、蒸発器が過冷却にならない適切な所定温度の実現を、例えば実験等から求められてあらかじめ記憶させた冷媒流量を用いることによりさらに確実に保証することができるので、蒸発器の凍結を防止する効果が高い車両用空調装置を提供できる。
【0014】
また、第1の発明において、圧縮機(1)は冷媒流量と吸入圧に相関関係がある吸入圧制御式で構成されており、蒸発器(9)の下流側温度が所定温度に安定するときの冷媒流量に相当する吸入圧をあらかじめ記憶する記憶装置を備え、制御手段は冷媒の圧力と記憶装置に記憶されている安定時の吸入圧とから制御値を決定することが好ましい。
【0015】
この発明によれば、吸入圧制御式の圧縮機における吸入圧は冷媒の高圧側の圧力に関係するという特性を活用して蒸発器が過冷却にならない適切な所定温度の実現を冷媒流量に基づき、あらかじめ記憶させた吸入圧を用いることによりさらに確実に保証することができるので、蒸発器の凍結を防止する効果が高い車両用空調装置を提供できる。
【0016】
車両用空調装置の第3の発明は、圧縮機(1)から吐出された冷媒を蒸発器(9)内で蒸発させるとともに、蒸発器(9)を通過して車室内へ送風される空気を冷却する冷凍サイクル装置(21)と、圧縮機(1)の駆動出力を決める制御値を演算して前記圧縮機の運転を制御する制御手段(20)と、を備え、制御手段(20)は、圧縮機(1)を起動させるときに、車室外の外気温度に基づいて決定する制御値によって圧縮機(1)を駆動することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、圧縮機を起動するときに、車室外の外気温度に基づいて圧縮機の制御値を決定してその駆動出力を制御するので、起動時の蒸発器に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して蒸発器の過冷却による蒸発器下流の空気温度のオーバーシュートを低減し、蒸発器の凍結を低減することができる。
【0018】
さらに、第3の発明において、制御手段(20)は、圧縮機(1)を起動させるときの制御値を、現在のモードが車室内の空気を取り入れる内気モード、または車室外の空気を取り入れる外気モード、のいずれのモードであるかに応じて決定することが好ましい。
【0019】
この発明によれば、蒸発器に送風する空気が、外気または内気のいずれであるかに応じて圧縮機の制御値を決定することにより、蒸発器の送風による熱的負荷に応じた適切な制御値を決定することができる。特に、内気モードである場合には、蒸発器の凍結の低減に加えて、窓の曇り防止効果が高い制御値で圧縮機を駆動させる制御を実施できる。
【0020】
さらに、上記すべての発明のいずれかにおいて、制御手段(20)は、車室外の外気温度が所定温度以下の場合に、上記制御値を決定する制御を実行することが好ましい。この発明によれば、蒸発器の凍結の可能性が低い外気温度条件においては、通常の制御を実施することができるので、蒸発器の凍結の低減、および冷房能力の確保の両面に優れた車両用空調装置を提供できる。
【0021】
車両用空調装置の第4の発明は、圧縮機(1)から吐出された冷媒を蒸発器(9)内で蒸発させるとともに、蒸発器(9)を通過して車室内へ送風される空気を冷却する冷凍サイクル装置(21)と、圧縮機(1)の駆動出力を決める制御値を演算して前記圧縮機の運転を制御する制御手段(20)と、を備えている。さらに、制御手段(20)は、圧縮機(1)の起動後、圧縮機(1)の駆動出力を設定する制御値設定条件が検出されたときに、冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力、または車室外の外気温度に基づいて決定する制御値によって圧縮機(1)を駆動することを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、圧縮機を起動後に制御値設定条件を検出したときに、冷媒の圧力、および車室外の外気温度の少なくともいずれか一方に基づいて制御値を決定するので、起動時の蒸発器に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して蒸発器の凍結を低減するとともに、圧縮機の能力を過剰に低下させないで効率的に発揮させる制御を実施することができる。
【0023】
さらに、第4の発明において、制御値設定条件は、前記制御手段(20)が前記圧縮機(1)を起動しようと制御値を決定する制御を開始してから所定時間が経過したこととするのが好ましい。この発明によれば、圧縮機の起動時における制御の遅れ(タイムラグ)に対応可能な制御、あるいは、時間によって凍結の可能性が低い状態であることを判断する制御を実施できる。
【0024】
さらに、第4の発明において、制御値設定条件は、制御手段(20)が圧縮機(1)を起動しようと制御値を決定する制御を開始した後における蒸発器(9)の温度が所定温度以下であることとするのが好ましい。この発明によれば、圧縮機の起動時に、凍結の可能性が低いと考えられる所定温度付近に蒸発器が冷えるまでは、高い制御値で圧縮機を駆動する制御を実行できるので、起動時の冷房能力不足を抑えた空調を実施できる。
【0025】
さらに、上記すべての発明のいずれかにおいて、制御手段(20)によって制御値を可変される圧縮機(1)は、圧縮容量を可変できる容量可変型圧縮機で構成することが好ましい。この発明によれば、圧縮容量を可変できる容量可変型圧縮機を採用することにより、オン・オフ式の固定容量型圧縮機に比べて、蒸発器下流の空気温度をなだらかに変化させることができるので、実際の蒸発器下流の空気温度が行き過ぎる(オーバーシュート)のをより低減することができる。
【0026】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態における車両用空調装置の概略構成を図1および図2を用いて説明する。図1は本実施形態の車両用空調装置の概略構成を示した模式図である。図2は、制御手段としての空調制御装置20による基本の制御ステップを示したフローチャートである。図3は、基本の制御ステップにおける圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。
【0028】
本実施形態の車両用空調装置は、空調機能部品が内蔵された空調ユニットケース6と、空調ユニットケース6の内部に収納された蒸発器9内を流れ、送風空気から吸熱して冷却する冷媒が流動する冷凍サイクル装置21と、蒸発器9側に冷媒を吐出する圧縮機1の駆動出力をその制御値を可変することにより能力制御する空調制御装置20と、を備えている。なお、空調ユニットケース6は、車両前方のインストルメントパネル内に設けられて車室内前席側の領域を空調する前席用空調ユニットとして使用してもよいし、車室内後席側の領域を空調するように、トランクルーム内やサイドトリムなどに設けられる後席用空調ユニットとして使用してもよい。
【0029】
冷凍サイクル装置21は、圧縮機1の吐出側から、凝縮器3、レシーバ4、および減圧手段である膨張弁5を介して蒸発器9に冷媒が循環するように形成されたサイクルを構成している。なお、圧縮機1の吐出側の冷媒流路には、冷凍サイクル内の冷媒の圧力を検出する圧力センサ14が設けられている。
【0030】
圧縮機1は、車両に搭載されたエンジン15によって駆動されるものであり、容量可変機構2を備え、空調制御装置20からの指令によりその吐出容量が可変制御されるように構成されている。容量可変機構2は、例えば電磁弁機構によって構成される場合には、供給された制御電流により圧縮機1の吐出容量を可変する。この吐出容量は、容量可変機構に2に供給される制御電流に比例し、制御電流が小さくなるほど容量は大きくなり、冷媒吐出流量も大きくなる。これにより、圧縮機1は、吐出容量を略0%から100%の範囲で連続的に変化させることができるように構成されている。
【0031】
冷凍サイクル装置10における冷媒は、圧縮機1により高温高圧に圧縮され、この圧縮機1から吐出された高圧ガス冷媒は凝縮器3に導入され、この凝縮器3においてガス冷媒は冷却用電動ファン(図示しない)により送風される外気と熱交換して放熱され、凝縮される。凝縮器3を通過した冷媒は、レシーバ4において液相冷媒と気相冷媒とに分離されるとともに、液相冷媒がレシーバ4内に貯留される。
【0032】
そして、レシーバ4からの高圧液冷媒は、膨張弁5にて低圧の気液二相状態に減圧され、この減圧後の低圧冷媒は蒸発器9において送風空気から吸熱して蒸発させられる。蒸発器9において蒸発した後のガス冷媒は再度圧縮機1に吸入され、圧縮されることになる。
【0033】
なお、膨張弁5は蒸発器9の出口の冷媒過熱度が所定値に維持されるように弁開度が自動調節されるものでもよい。なお、冷凍サイクル装置21のうち、圧縮機1、凝縮器3、レシーバ4などは、図示しないエンジンルーム内に配置されている。
【0034】
空調ユニットケース6は、内部に車室内の乗員に向けて空気が送風される空気通路を有し、この空気通路の最上流部には内気導入口および外気導入口を有する内外気切替箱(図示しない)を備えている。この内外気切替箱内には、内外気切替ドア(図示せず)が回転自在に配置されている。この内外気切替ドアは、サーボモータにより駆動されるものであり、内気導入口より内気(車室内空気)を導入する内気モードと、外気導入口より外気(車室外空気)を導入する外気モードとを切り替えることができる。
【0035】
この内外気切替箱の下流側には車室内に向かう空気流れを発生させるブロワ8が配置されている。ブロワ8は、遠心式の送風ファンをモータ7により駆動するように構成されている。ブロワ8の下流側には空気通路内を流れる空気を冷却する蒸発器9が配置されている。この蒸発器9はブロワ8による送風空気を冷却する冷房用熱交換器である。
【0036】
蒸発器9の下流側には、蒸発器9によって冷却された空気を加熱するヒータコア11が配置されている。このヒータコア11は、エンジン15の冷却水などを熱源として、蒸発器9を通過後の空気を加熱する暖房用熱交換器であり、その側方にはヒータコア11を迂回する空気が流れるバイパス通路が形成されている。エンジン15の冷却水の温度は、水温センサ16によって検出される。
【0037】
実際の蒸発器9の温度は、フィンセンサなどで構成される蒸発器温度センサ12によって検出される。また、実際の蒸発器9の下流の空気温度は、蒸発器後温度センサ13によって検出される。
【0038】
蒸発器9とヒータコア11との間には、エアミックスドア10が回転自在に配置されている。このエアミックスドア10はサーボモータにより駆動されて、その回転位置や開度が連続的に調節可能に構成されている。エアミックスドア10の開度を調整することにより、ヒータコア11を通る空気量(温風量)と、バイパス通路を通過してヒータコア11を迂回する空気量(冷風量)とを調節することができる。このようにして車室内に吹き出す空気の吹出温度を調整する。
【0039】
また、空調ユニットケース6内の空気通路の最下流部には、車両の窓ガラスに向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(図示せず)、乗員の上半身に向けて空調風吹き出すフェイス吹出口(図示せず)、および乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口(図示せず)が設けられている。
【0040】
次に、車両用空調装置の制御手段である空調制御装置20を説明する。空調制御装置20は、CPU、ROMおよびRAMなどを含むマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、かつそのROM内に空調制御のための制御プログラムが設けられ、その制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行なう電気制御部である。
【0041】
空調制御装置20には、内気センサ17、外気センサ18、日射センサ19、圧力センサ14、蒸発器温度センサ12、蒸発器後温度センサ13、および水温センサ16からの各種センサ検出信号、および空調コントロールパネルからの操作信号が入力される。空調コントロールパネルは、車室内の運転席前方のインストルメントパネル(図示せず)近傍に配置され、運転手をはじめとする乗員により操作される複数のスイッチを有している。
【0042】
この複数のスイッチは、車室内の設定温度の信号を出力する温度設定スイッチや、内気モードと外気モードとをマニュアル設定する信号を出力するスイッチや、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、およびデフロスタモードをマニュアル設定する信号を出力する吹出モードスイッチや、ブロワ8のオン・オフ、およびブロワ8の風量切替えをマニュアル設定する信号を出力する風量設定スイッチや、圧縮機1の作動状態と停止状態を切り替えるエアコンスイッチなどである。
【0043】
空調制御装置20は、各機器の電気駆動手段をなすサーボモータおよびモータ8などが接続され、これらの機器の動作が空調制御装置20の出力信号により制御される。
【0044】
空調制御装置20は、後述する図3のステップS340およびS350に示すように、検出された蒸発器下流の空気温度(または蒸発器後温度)と、設定温度スイッチによる設定温度から求められた蒸発器下流の目標空気温度(目標蒸発器後温度)とに基づいて、PID制御によって圧縮機1の容量可変機構2に供給される制御電流を求め、圧縮機1の制御値を決定して能力制御する。すなわち、蒸発器9の出力側の空気温度が、目標空気温度となるようにフィードバック制御するものであり、車室内に送風される空調空気温度が適正な温度となるように制御するものである。
【0045】
次に、空調制御装置20による基本の空調制御ステップについて図2を用いて説明する。まず、イグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されると、あらかじめ記憶されている制御プログラムの実行を開始し、RAMなどのデータ処理メモリの記憶内容の一部を初期化する(ステップS100)。
【0046】
次に、空調制御装置20は、各種データをデータ処理用メモリに読み込む。すなわち、空調コントロールパネル上の各種スイッチからの操作信号や各種センサからの検出信号を入力する(ステップS110)。次に、上記のような各信号や制御プログラムに記憶されている演算式に基づいて、目標吹出温度TAOを演算する(ステップS120)。
【0047】
次に、空調制御装置20は、ステップS120で求めた目標吹出温度TAOに基づいてブロワ8のモータ7に印加するブロワ制御電圧を演算し、ブロワ8の風量を決定する(ステップS130)。ブロワ制御電圧は、あらかじめ定めた制御特性パターンに基づいて目標吹出温度TAOのそれぞれに適合したブロワ制御電圧を求めることにより得られる。次に、空調制御装置20は、上記のような記憶データや制御プログラムに記憶されている演算式に基づいて、エアミックスドア10の開度(%)を演算する(ステップS140)。
【0048】
次に、空調制御装置20は、ウインドウ防曇制御を実行する(ステップS150)。ウインドウ防曇制御は、吸込口モードが内気モードであり、かつ吹出口モードがフットモードであるときに、フットモードとして乗員の足下の暖房を行いつつ、デフロスタモードの風量を時間経過に応じて変化させる制御である。
【0049】
次に、空調制御装置20は、圧縮機1の駆動出力を制御するステップを実行する(ステップS160)。このステップS160のサブルーチンは、図3に示したものであり、その詳細は後述する。
【0050】
空調制御装置20は、ステップS160を実行した後、ステップS130で決定されたブロワ制御電流となるように制御信号を出力し(ステップS170)、さらに、ステップS140で決定されたエアミックスドアの開度となるようにエアミックスドア10のサーボモータに制御信号を出力する(ステップS180)。そして、空調制御装置20は、設定された吹出口モードとなるように各吹出口切替ドア(図示せず)のサーボモータに制御信号を出力する(ステップS190)。その後にステップS100の制御処理に戻り、一連の制御ステップを繰り返し実行する。
【0051】
次に、圧縮機1の駆動出力ステップ(ステップS160)のサブルーチンについて図3を用いて説明する。まず、空調制御装置20は、今回の圧縮機の駆動が、イグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されてからの最初の駆動であるか否かを判断する(ステップS300)。空調制御装置20は、今回の圧縮機の駆動が最初の駆動であると判断すると、次に圧縮機1の駆動出力を決定する制御値G1を演算する処理を実行する(ステップS310)。ここでいう制御値は、圧縮機1の最大能力に対する駆動出力の比率であり、例えば、圧縮機1に入力される駆動信号としてのデューティ比である。
【0052】
ステップS310の処理は、冷凍サイクル装置21内の冷媒の圧力値に基づいて制御値G1を演算する処理であり、検出された冷媒の圧力と制御値の関係を表した制御特性データを用いて実行される。このときの冷媒の圧力は、冷凍サイクル装置21内の冷媒の圧力であれば、その検出する部位は限定するものではないが、本実施形態では、圧力センサ14で検出される高圧部位の冷媒の圧力値Ph[MPa]とする。また、制御特性データは、あらかじめマイクロコンピュータに記憶されているマップタイプの特性データである。
【0053】
次に、制御値G1を演算するときに用いる各パラメータについて図4から図6にしたがって説明する。図4は外気温度TAMに基づいて冷媒流量Fを算出するときに用いられる制御マップである。図5は冷媒の密度と比例関係にある冷媒圧力Phと冷媒流量Fとの関係を示し、制御値Gを算出するときに用いられる制御マップである。図6は冷媒圧力Phに基づいて制御値Gを算出するときに用いられる制御マップである。
【0054】
車両用空調装置は、熱的負荷を表す外気温度TAMと冷媒流量Fとの間に図4に示すような制御特性を有する制御マップを備えており、これは外気温度T1に対して一の冷媒流量Aが決まる1対1の関数であり、外気温度の増加(熱的負荷の増加)とともに対応する冷媒流量が増加するものである。車両用空調装置は、このように検出された外気温度によってそのレベルを認識することができる熱的負荷に対して、図11に示すように蒸発器温度がオーバーシュートしないで目標蒸発器温度TEOに早く到達する冷媒流量を算出することができる。
【0055】
そして、車両用空調装置は、外気温度T1に基づいて算出された冷媒流量Aを満たす制御値を図5の制御マップを用いて算出する。この制御マップは確保したい冷媒流量Aに対して冷媒の圧力Phの値に基づいて一の制御値が決まる1対1の関数であり、確保すべき冷媒流量の増加とともに対応する制御値が大きくなる(圧縮機の駆動出力が大きくなる)ものである。
【0056】
図5に示す冷媒の圧力Phの各曲線は、冷媒の密度と比例関係にあり、図5のP3、P2、P1は高い圧力の順番であり、対応する冷媒の密度もP3が最も大きくP1が最も小さい。つまり、冷媒流量Aに対して、PhがP1であるときは制御値は曲線P1とF=Aとの交点にあるB1と算出され、PhがP2であるときは制御値は曲線P2とF=Aとの交点にあるB2と算出され、PhがP3であるときは制御値は曲線P3とF=Aとの交点にあるB3と算出される。また、PhがP3以上であるときは冷媒流量Aに対して制御値はB3と算出され、PhがP1以下であるときは冷媒流量Aに対して制御値はB1と算出される。さらに、PhがP2からP3の間の値であるときやP1からP2の間の値であるときは各曲線間について補間法により制御値を算出することとする。
【0057】
また、車両用空調装置は、図6の制御マップを用い、冷媒の圧力Phに基づいて所望の冷媒流量Aを満たす制御値Gを算出することもできる。この制御マップは熱的負荷を表す冷媒の圧力Phの値に基づいて一の制御値が決まる1対1の関数であり、冷媒圧力の増加とともに対応する制御値が大きくなる(圧縮機の駆動出力が大きくなる)ものである。このように車両用空調装置は、検出された冷媒圧力という熱的負荷に対して、図11に示すように蒸発器温度がオーバーシュートしないで目標蒸発器温度TEOに早く到達する制御値を算出することができる。この図6は空調制御装置20に記憶されている。
【0058】
また、車両用空調装置は、蒸発器の下流側温度が所定温度に安定するときの冷凍サイクル装置を流れる冷媒流量をあらかじめ記憶するように構成してもよい。この場合、車両用空調装置はこの情報を記憶する記憶装置を備えている。そして、空調制御装置20は、検出された冷媒の圧力と記憶装置に記憶されている上記安定時の冷媒流量とから制御値Gを決定することができる。上記所定の温度は、蒸発器温度がオーバーシュートしない(冷えすぎない)適切な温度である。
【0059】
可変容量圧縮機において流量制御式の圧縮機では所定の流量となる制御値は冷媒の圧力によって変わるという特性のため、冷媒圧力を検出すれば、所定の冷媒流量となる制御値が決まり、圧縮機をこの制御値で起動すると、冷凍サイクル内の冷媒が流れすぎて過冷却とならないので、オーバーシュートすることがない。この所定の冷媒流量Fは、実験等により求められた制御マップにより算出され、あらかじめ蒸発器の下流側温度が所定温度に安定するときの流量である。
【0060】
また、冷媒流量と吸入圧に相関関係がある吸入圧制御式では、圧縮機の吸入圧は冷媒の高圧側の圧力に関係するものであるため、所定の吸入圧となる制御値は高圧側の圧力を基に決められる。圧縮機をこの制御値で起動すると、冷凍サイクル内の冷媒が流れすぎて過冷却とはならず、オーバーシュートすることがない。この所定の吸入圧は、実験等により求められた制御マップにより算出され、あらかじめ蒸発器の下流側温度が所定温度に安定するときの吸入圧である。
【0061】
そして、車両用空調装置は、蒸発器9の下流側温度が所定温度に安定するときの冷媒流量に相当する吸入圧をあらかじめ記憶するように構成することができる。この場合、車両用空調装置はこの吸入圧を記憶する記憶装置を備えている。空調制御装置20は検出された冷媒の圧力と記憶装置に記憶されている上記安定時の吸入圧とから制御値Gを決定することができる。
【0062】
次に、空調制御装置20は、検出された圧力値Phに基づいて制御値G1を演算し、このG1を今回の圧縮機1の制御に用いる制御値として決定する(ステップS320)。そして、空調制御装置20は、このように決定されたG1を圧縮機1を作動させる初期駆動出力のデューティ比として実行し、圧縮機1の吐出流量が制御される(ステップS330)。
【0063】
この後、空調制御装置20は、サブルーチン内の処理においては、ステップS300に戻り、そのときの圧縮機1の駆動が何回目であるかを判断する。つまり、ステップS330の処理を実行した後は、空調制御装置20への電源の供給が停止するまでのステップS300の判断においては、圧縮機1の駆動は最初でないと判断されることになり、ステッップS340、S350およびS330の処理が繰り返し実行されることになる。
【0064】
空調制御装置20は、ステップS300の処理において、今回の圧縮機の駆動が最初の駆動でない、つまり2回目以降であると判断すると、フィードバック制御の一種であるPID制御を実行する。具体的には、空調制御装置20は、目標蒸発器後温度と蒸発器後温度センサ13の検出値である実際の蒸発器後温度との差を演算し(ステップS340)、さらに、今回の制御に用いる制御値を次の数式1により演算する(ステップS350)。
【0065】
今回の制御に用いる制御値
=前回の制御値+KP×(E(今回)−E(前回))+E(前回)/10 …(数式1)
KPは比例ゲインであり、例えば2.0である。E(今回)は、ステップS340で演算した目標蒸発器後温度と実際の蒸発器後温度との差であり、E(前回)は、圧縮機1を前回駆動した時に演算された値である。前回の制御値およびE(前回)は、RAMなどのデータ処理メモリに記憶されていた実績データであり、データ処理メモリから読み取られる。
【0066】
なお、イグニッションスイッチがオンからオフに移行した場合や、乗員がエアコンスイッチを操作してオフ状態にした場合や、圧縮機のみの駆動を停止するスイッチ、例えば風量設定スイッチを操作して圧縮機1を停止状態にした場合には、圧縮機1の駆動回数のカウントが一旦リセットされる。このため、次にイグニッションスイッチがオンされたり、エアコンスイッチや風量設定スイッチがオンされたりして、空調制御装置20に電源が供給された後のステップS300における判断は、最初の駆動であると判断され、ステップS310、S320およびS330の処理が実行されることになる。
【0067】
空調制御装置20は、このようにして演算された制御値を、圧縮機1を作動させる初期駆動出力のデューティ比として実行し、圧縮機1の吐出流量が制御される(ステップS330)。なお、このサブルーチンにおける制御値の演算は、1秒に1回更新されることとする。
【0068】
なお、空調制御装置20は、ステップS310の処理における制御値G1の演算において、冷媒の圧力と制御値の関係を表した制御特性データを特定の外気温度TAMdispに対応するように複数記憶し、外気センサ18で検出された外気温度に応じて、演算に用いる制御特性データを記憶している複数の中から選択して制御値の演算を行うこととしてもよい。
【0069】
例えば、図3のステップS310に記載しているように、TAMdisp=5℃に対応する制御特性データと、TAMdisp=30℃に対応する制御特性データとを記憶している場合である。このような複数の制御特性データを記憶している場合には、空調制御装置20は、5℃から30℃の間に所定の閾値を有し、検出された外気温度がこの閾値より低い温度である場合は、5℃に対応する制御特性データを使用して検出された圧力値Phに基づいて制御値G1を演算することとする。逆に、検出された外気温度がこの閾値以上の温度である場合は、30℃に対応する制御特性データを使用して、検出された圧力値Phに基づいて制御値G1を演算することとする。
【0070】
また、他の制御値G1の演算方法としては、空調制御装置20は、検出された外気温度が5℃以下の温度である場合は、5℃に対応する制御特性データを使用して検出圧力値Phに基づいて制御値G1を演算し、検出された外気温度が30℃以上の温度である場合は、30℃に対応する制御特性データを使用して検出圧力値Phに基づいて制御値G1を演算することとする。さらに、検出された外気温度が5℃と30℃の間の温度である場合は、30℃に対応する制御特性データと5℃に対応する制御特性データとの間で補間法を用いて検出圧力値Phに基づいた制御値G1を演算することとする。
【0071】
このように本実施形態の車両用空調装置における空調制御装置20は、圧縮機1を起動させるときに、冷凍サイクル内の冷媒の圧力に基づいて決定される制御値で圧縮機1を駆動させる。この制御によれば、起動時の蒸発器9に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して、蒸発器9の一時的な冷えすぎによる凍結を低減することができ、これにより、車室内への異臭の漏れを低減することができる。また、圧縮機1の起動時に、冷凍サイクル内の冷媒の圧力に基づいて制御値を決定することにより、凍結を低減する効果とともに、冷房能力を過剰に低下させない空調を実施できる。
【0072】
また、空調制御装置20は、圧縮機1を起動させるときの制御値を冷凍サイクル内の冷媒の圧力および車室外の外気温度に基づいて決定することが好ましい。この制御を採用した場合には、冷媒の圧力バランス点は外気温度に依存することから、起動時の蒸発器9に及ぼされる熱的負荷をより確実に検出することができる。
【0073】
また、空調制御装置20は、冷凍サイクル内の冷媒の圧力に基づいて制御値を決定するための制御特性データを、特定の外気温度に対応するように複数記憶し、圧縮機1を起動させるときの外気温度に応じて、演算に用いる制御特性データを複数の制御特性データの中から選択して制御値を決定することが好ましい。
【0074】
この制御を採用した場合には、より効率的な制御手順でかつ幅広い外気温度条件に対応可能な制御を実施できる。
【0075】
また、圧縮機1は、圧縮容量を可変できる容量可変型圧縮機で構成することにより、オン・オフ式の固定容量型圧縮機に比べて、蒸発器下流の空気温度または蒸発器の下流側温度をなだらかに変化させることができるので、実際の蒸発器下流の空気温度がオーバーシュートするのをより低減することができる。
【0076】
(第2実施形態)
第2実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップ(ステップS160)のサブルーチンについて図7を用いて説明する。図7は、本実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順における制御値G2の演算処理を示した図である。本実施形態の車両用空調装置は、各部の構成や、図2に示す基本制御ステップにおいて、ステップS160を除く各ステップの処理については、第1実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0077】
本実施形態の圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順は、図3に示すサブルーチンに対して、図3のステップS310をステップS410に置き換えたものであり、このステップS410について以下に説明する。
【0078】
空調制御装置20は、ステップS300において、今回の圧縮機の駆動が、イグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されてからの最初の駆動であるか否かを判断し、この判断において、最初の駆動であると判断すると、ステップS410の処理を実行する。
【0079】
ステップS410の処理は、圧縮機1の駆動出力を決定する制御値G2を演算する処理である。ステップS410の処理は、蒸発器9の熱的負荷にかかわりの大きい車室外の外気温度に基づいて制御値G2を演算する処理であり、外気センサ18によって検出された外気温度、検出された冷媒の圧力値Phおよび制御値G2の関係を表した制御特性データ(制御マップ)を用いて実行される。この制御特性データは、あらかじめマイクロコンピュータに記憶されているマップタイプの特性データである。
【0080】
空調制御装置20は、ステップS410の処理における制御値G2の演算において、外気温度、冷媒圧力値および制御値の関係を表した制御特性データを、内気モード用、外気モード用のそれぞれについて記憶している。空調制御装置20は、現在のモードが内気モード、外気モードのいずれであるかに応じて、当該モードに該当する制御特性データを選択して制御値G2の演算を行う。
【0081】
空調制御装置20は、各モードの制御マップにおいて、冷媒圧力Phと制御値G2の関係を表した制御特性データを特定の外気温度TAMdispに対応するように複数記憶しており、検出された外気温度に応じて演算に用いる制御特性データを複数の中から選択して制御値G2の演算を行う。
【0082】
そして、空調制御装置20は、現在のモードが外気モードであると判断した場合には、あらかじめ記憶している外気モードに対応する制御特性データを採用し、検出された外気温度に基づいて制御値G2を演算する。一方、空調制御装置20は、現在のモードが内気モードであると判断した場合には、あらかじめ記憶している内気モードに対応する制御特性データを採用し、検出された外気温度に基づいて制御値G2を演算する。
【0083】
内気モードに対応する制御特性データは、外気モードに対応する制御特性データに比べて、外気温度に対する制御値を15%程度高く設定するようにしてもよい。これは、内気モードにおいては車室内の比較的湿度の高い空気を空調用空気として取り込むことになるので、空調の除湿能力を高くして窓曇りを低減するためである。
【0084】
次に、空調制御装置20は、演算された制御値G2を今回の圧縮機1の制御に用いる制御値として決定する(ステップS320に相当する)。そして、空調制御装置20は、このように決定されたG2を圧縮機1を作動させる初期駆動出力のデューティ比として実行し、圧縮機1の吐出流量が制御される(ステップS330に相当する)。
【0085】
また、内気モード、外気モードのそれぞれで制御値G2の演算において、用いられる各パラメータの関係は、図4から図6を用いて説明した第1実施形態の記載と同様である。
【0086】
このように本実施形態の車両用空調装置における空調制御装置20は、圧縮機1を起動させるときに、車室外の外気温度に基づいて決定する制御値G2によって圧縮機1を駆動させる。この制御によれば、起動時の蒸発器9に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して蒸発器9の一時的な冷えすぎによる蒸発器下流の空気温度のオーバーシュートを低減することができる。また、圧縮機1の起動時に、外気温度に基づいて制御値を決定することにより、凍結の低減の効果とともに、冷房能力を過剰に低下させない空調を実施できる。
【0087】
また、空調制御装置20は、圧縮機1を起動させるときの制御値を、現在のモードが車室内の空気を取り入れる内気モードまたは車室外の空気を取り入れる外気モード、のいずれのモードであるかに応じて決定することが好ましい。
【0088】
この制御を採用した場合には、蒸発器9に送風する空気が外気または内気のいずれであるかに応じて圧縮機1の制御値を決定することにより、蒸発器9に送風される熱的負荷に対して、より緻密な制御値を決定することができる。特に、内気モードである場合には、窓の曇り防止効果が高い制御値で圧縮機1を駆動させる制御も実施できる。
【0089】
(第3実施形態)
第3実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップ(ステップS160)のサブルーチンについて図8を用いて説明する。図8は、本実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。なお、本実施形態の車両用空調装置は、各部の構成や、図2に示す基本制御ステップにおいて、ステップS160を除く各ステップの処理については、第1実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0090】
本実施形態の圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順は、図3に示すサブルーチンに対して、ステップS510、S520、S530、S540のみが異なっており、ステップS500、S550、S560、S570のそれぞれは、図3に示すサブルーチンのステップS300、S330、S340、S350と同様の処理が実行されるものである。このステップS510〜S540について以下に説明する。
【0091】
空調制御装置20は、ステップS500において、今回の圧縮機の駆動が、イグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されてからの最初の駆動であると判断すると、ステップS510の処理を実行する。
【0092】
ステップS510の処理は、さらに、外気センサ18によって検出された外気温度TAMが所定温度以下であるか否かを判断する処理である。ステップS510の処理は、蒸発器9の熱的負荷にかかわりの大きい外気温度が、所定温度より高いと判断されると、蒸発器9が凍結する可能性が低いと判断してステップS560およびS570の前述したPID制御を実行し、逆に、外気温度が所定温度以下であると判断すると、蒸発器9が凍結する可能性があるとしてステップS520、S530、およびS540で決定される制御値を用いて圧縮機1の駆動出力を制御する処理である。
【0093】
なお、この所定温度は、外気温度がこの所定温度以下であるときに、PID制御による制御値で圧縮機1を駆動した場合には蒸発器9の凍結が起こる、もしくはその可能性があると考えられる温度であり、あらかじめマイクロコンピュータに記憶されている閾値であり、本実施形態では22℃としている。
【0094】
空調制御装置20は、外気温度TAMが所定温度以下であると判断すると、まず、冷凍サイクル装置21内の冷媒の圧力値に基づいて制御値因子G3Phを演算する処理を実行する(ステップS520)。この処理は、検出された冷媒の圧力Phと制御値因子G3Phの関係を表したあらかじめマイクロコンピュータに記憶されているマップタイプの制御特性データを用いて実行される。このときの冷媒の圧力は、冷凍サイクル装置21内の冷媒の圧力であれば、これを検出する部位は限定するものではないが、本実施形態では、圧力センサ14で検出される高圧部位の冷媒の圧力値Ph[MPa]とする。
【0095】
次に、空調制御装置20は、ステップS530において、蒸発器後温度センサ13によって検出される蒸発器の下流側温度TE(蒸発器後温度)に基づいてもう一つの制御値因子G3TEを演算する処理を実行する(ステップS530)。この処理は、検出された蒸発器の下流側温度TEと制御値因子G3TEの関係を表しており、あらかじめマイクロコンピュータに記憶されているマップタイプの制御特性データを用いて実行される。
【0096】
次に、空調制御装置20は、演算された制御値因子G3PhおよびG3TEを足し合わせることで、今回の制御に用いる制御値G3を演算し、このG3を今回の圧縮機1の制御に用いる制御値として決定する(ステップS540)。この制御値因子G3TEを最終的な制御値G3の演算に用いることは、冷媒の圧力Phに基づいて求めた制御値因子G3Phに対して、さらに冷凍サイクルを冷やして除湿することになるので、内気モードのときの窓曇り対策として有効である。そして、空調制御装置20は、このように決定されたG3を圧縮機1を作動させる初期駆動出力のデューティ比として実行し、圧縮機1の吐出流量が制御される(ステップS550)。
【0097】
このように本実施形態の車両用空調装置における空調制御装置20は、圧縮機1を起動させるときの制御値を、冷凍サイクル内の冷媒の圧力および蒸発器の下流側温度または蒸発器下流の空気温度に基づいて決定することが好ましい。この制御を採用した場合には、起動時の蒸発器9に及ぼされる熱的負荷をさらに高い精度で検出することができる。
【0098】
また、空調制御装置20は、車室外の外気温度が所定温度以下の場合に、上記制御値を決定する制御を実行することが好ましい。この制御を採用した場合には、蒸発器9の凍結の可能性が低い外気温度条件においては、PID制御を実施することができるので、蒸発器9の凍結の低減、および冷房能力の確保を実現できる。
【0099】
(第4実施形態)
第4実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップ(ステップS160)のサブルーチンについて図9を用いて説明する。図9は、本実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。なお、本実施形態の車両用空調装置は、各部の構成や、図2に示す基本制御ステップにおいて、ステップS160を除く各ステップの処理については、第1実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0100】
本実施形態の圧縮機1における駆動出力ステップの制御処理手順は、図3に示すサブルーチンに対して、ステップS600、S610、S620のみが異なっており、ステップS630、S640、S650、S660、S670のそれぞれは、図3に示すサブルーチンのステップS310、S320、S330、S340、S350と同様の処理が実行されるものである。このステップS600、S610およびS620について以下に説明する。
【0101】
空調制御装置20は、まずステップS600において、イグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されてから所定時間、例えば5秒が経過したか否かを判断する。空調制御装置20は、まだ所定時間が経過していないと判断した場合には、所定の制御値、例えば最大能力に対して50%の制御値を設定し(ステップS610)、設定された所定の制御値を圧縮機1を作動させる初期駆動出力のデューティ比として実行し、圧縮機1の吐出流量を制御する(ステップS650)。
【0102】
上記のイグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されてから所定時間が経過することは、圧縮機1の起動後、圧縮機1の駆動出力を設定する制御値設定条件が検出されたことと、言い換えることができる。
【0103】
なお、この所定時間の始期は、言い換えれば、空調制御装置20が圧縮機1を起動しようと制御値を決定する制御を開始した時、でもある。また、この所定時間の始期は、イグニッションスイッチがオンされた時、エアコンスイッチがオンされた時、または風量設定スイッチがオンされた時、としてもよい。
【0104】
一方、空調制御装置20は、ステップS600において、所定時間が経過したと判断すると、今回の制御値の演算が所定時間経過後の1回目の演算であるか否かを判断する(ステップS620)。空調制御装置20は、2回目以降の演算であると判断すると、蒸発器9が凍結する可能性が低いと判断してステップS660およびS670の前述したPID制御を実行し、逆に、1回目の演算であると判断すると、蒸発器9が凍結する可能性があるとしてステップS630およびS640で決定される制御値を用いて圧縮機1の駆動出力を制御する(ステップS650)。
【0105】
このように図9に示すサブルーチンでは、圧縮機1の起動後、圧縮機1の駆動出力を設定する制御値設定条件が検出された場合、冷凍サイクル装置21内の冷媒の圧力、および外気温度の少なくともいずれか一方に基づいて決定する制御値で圧縮機1を駆動させる制御を実行している。
【0106】
この制御により、起動時の蒸発器9に及ぼされる熱的負荷に対して過剰な制御値で運転することを抑止して蒸発器9の一時的な冷えすぎによる凍結を低減することに加えて、さらに圧縮機1の能力を過剰に低下させない効率的な制御を実施する車両用空調装置が得られる。
【0107】
また、制御値設定条件として、空調制御装置20が圧縮機1を起動しようと制御値を決定する制御を開始してから所定時間が経過したことを採用することにより、圧縮機1の起動時における制御の遅れ、いわゆるタイムラグに対応可能となり、または、時間によって凍結の可能性が低い状態であることを判断することができる。
【0108】
(第5実施形態)
第5実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップ(ステップS160)のサブルーチンについて図10を用いて説明する。図10は、本実施形態における圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。なお、本実施形態の車両用空調装置は、各部の構成や、図2に示す基本制御ステップにおいて、ステップS160を除く各ステップの処理については、第1実施形態の車両用空調装置と同様である。
【0109】
本実施形態の圧縮機1の駆動出力ステップの制御処理手順は、図9に示すサブルーチンに対して、ステップS700のみが異なっており、ステップS700以降のステップは、図9に示すサブルーチンの各ステップと同様の処理が実行されるものである。このステップS700について以下に説明する。
【0110】
空調制御装置20は、最初のステップS700において、イグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給された後に、蒸発器温度センサ12によって検出された蒸発器9の温度が所定温度以下であるか否かを判断する(ステップS700)。この判断において、蒸発器9の温度が所定温度以下であると判断された場合は、空調制御装置20は、圧縮機1の起動後、圧縮機1の駆動出力を設定する制御値設定条件が検出したことになる。
【0111】
なお、この所定温度は、実際の蒸発器9の温度がこの所定温度以下であるときに、PID制御による制御値で圧縮機1を駆動した場合には蒸発器9の凍結が起こる、もしくはその可能性があると考えられる温度であり、あらかじめマイクロコンピュータに記憶されている閾値であり、本実施形態では10℃としている。
【0112】
空調制御装置20が、ステップS700において蒸発器9の温度が所定温度より高いと判断した場合には、所定の制御値、例えばほぼ最大能力の制御値を設定し(ステップS710)、設定された所定の制御値を圧縮機1を作動させる初期駆動出力のデューティ比として実行し、圧縮機1の吐出流量を制御する(ステップS750)。
【0113】
一方、空調制御装置20は、ステップS700において、蒸発器9の温度が所定温度以下であると判断すると、今回の制御値の演算が、第4実施形態と同様にイグニッションスイッチがオンされて空調制御装置20に電源が供給されてから所定時間が経過後の1回目の演算であるか否かを判断する(ステップS720)。空調制御装置20は、2回目以降の演算であると判断すると、ステップS660およびS670の前述したPID制御を実行し、逆に、1回目の演算であると判断すると、蒸発器9が凍結する可能性があるとしてステップS730およびS740で決定される制御値G1を用いて圧縮機1の駆動出力を制御する(ステップS750)。
【0114】
本実施形態車両用空調装置は、圧縮機1の起動後、圧縮機1の駆動出力を設定する制御値設定条件として、空調制御装置20が圧縮機1を起動しようと制御値を決定する制御を開始した後において蒸発器9の温度が所定温度以下である条件を採用する。
【0115】
この条件を採用したことにより、圧縮機1の起動時における、凍結の可能性が低いと考えられる所定温度付近に蒸発器が冷えるまでは、高い制御値で圧縮機を駆動する制御を実行できるので、起動時の冷房能力不足を抑えた空調を実施できる。
【0116】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0117】
例えば、上記実施形態における冷凍サイクル内の冷媒圧力の検出は、高圧領域に設けられた圧力検知器14によって行われているが、冷凍サイクル内の冷媒が流れる部位であれば、これに限定するものではない。例えば、冷凍サイクル内の低圧領域において、冷媒の圧力を検出する構成でもよい。
【0118】
また、上記実施形態における圧縮機は可変容量型の圧縮機であるが、これに限らず、固定容量型の圧縮機で構成してもよい。
【0119】
また、上記実施形態における圧縮機は、エンジンの回転による駆動力を利用する構成の他、バッテリなどの電力を利用する電動式圧縮機で構成してもよい。
【0120】
また、冷凍サイクル装置21を流れる冷媒としては、二酸化炭素の他、例えば、エチレン、エタン、酸化窒素などの冷媒を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の各実施形態に共通した車両用空調装置の概略構成を示した模式図である。
【図2】車両用空調装置の空調制御装置による、各実施形態に共通した基本の制御ステップを示したフローチャートである。
【図3】第1実施形態の圧縮機駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。
【図4】外気温度TAMに基づいて冷媒流量Fを算出するときに用いられる制御マップである。
【図5】冷媒の密度と比例関係にある冷媒圧力Phと冷媒流量Fとの関係を示し、制御値Gを算出するときに用いられる制御マップである。
【図6】冷媒圧力Phに基づいて制御値Gを算出するときに用いられる制御マップである。
【図7】第2実施形態の圧縮機駆動出力ステップの制御処理手順における制御値G2の演算処理を示した図である。
【図8】第3実施形態の圧縮機駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。
【図9】第4実施形態の圧縮機駆動出力ステップの制御処理手順を示したフローチャートである。
【図10】第5実施形態の車両用空調装置における圧縮機の制御を示したフローチャートである。
【図11】圧縮機起動後の制御値および蒸発器温度の推移について、本願記載の発明と従来技術の比較を示したタイムチャートである。
【符号の説明】
【0122】
1 圧縮機
9 蒸発器
20 空調制御装置(制御手段)
21 冷凍サイクル装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(1)から吐出された冷媒を蒸発器(9)内で蒸発させるとともに、前記蒸発器(9)を通過して車室内へ送風される空気を冷却する冷凍サイクル装置(21)と、
前記圧縮機(1)の駆動出力を決める制御値を演算して前記圧縮機(1)の運転を制御する制御手段(20)と、を備え、
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)を起動させるときに、前記冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力に基づいて決定する制御値によって前記圧縮機(1)を駆動することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)を起動させるときの制御値を、前記冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力および車室外の外気温度に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御手段(20)は、前記冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力に基づいて制御値を決定するための制御特性データを、特定の外気温度に対応するように複数記憶し、
前記圧縮機(1)を起動させるときの外気温度に応じて、演算に用いる制御特性データを前記複数の制御特性データの中から選択して制御値を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)を起動させるときの制御値を、前記冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力、および蒸発器(9)下流の空気温度に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記蒸発器(9)の下流側温度が所定温度に安定するときの前記冷凍サイクル(21)を流れる冷媒流量をあらかじめ記憶する記憶装置を備え、
前記制御手段(20)は、冷媒の圧力と前記記憶装置に記憶されている前記安定時の冷媒流量とから制御値を決定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記圧縮機(1)は冷媒流量と吸入圧に相関関係がある吸入圧制御式で構成されており、
前記蒸発器(9)の下流側温度が所定温度に安定するときの冷媒流量に相当する吸入圧をあらかじめ記憶する記憶装置を備え、
前記制御手段(20)は、冷媒の圧力と前記記憶装置に記憶されている前記安定時の吸入圧とから制御値を決定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
圧縮機(1)から吐出された冷媒を蒸発器(9)内で蒸発させるとともに、前記蒸発器(9)を通過して車室内へ送風される空気を冷却する冷凍サイクル装置(21)と、
前記圧縮機(1)の駆動出力を決める制御値を演算して前記圧縮機(1)の運転を制御する制御手段(20)と、を備え、
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)を起動させるときに、車室外の外気温度に基づいて決定する制御値によって前記圧縮機(1)を駆動させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)を起動させるときの制御値を、現在のモードが車室内の空気を取り入れる内気モードまたは車室外の空気を取り入れる外気モード、のいずれのモードであるかに応じて決定することを特徴とする請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記制御手段(20)は、車室外の外気温度が所定温度以下の場合に、前記制御値を決定する制御を実行することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
圧縮機(1)から吐出された冷媒を蒸発器(9)内で蒸発させるとともに、前記蒸発器(9)を通過して車室内へ送風される空気を冷却する冷凍サイクル装置(21)と、
前記圧縮機(1)の駆動出力を決める制御値を演算して前記圧縮機の運転を制御する制御手段(20)と、を備え、
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)の起動後、前記圧縮機(1)の駆動出力を設定する制御値設定条件が検出されたときに、前記冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力または車室外の外気温度に基づいて決定する制御値によって前記圧縮機(1)を駆動させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項11】
前記制御値設定条件は、前記制御手段(20)が前記圧縮機(1)を起動しようと制御値を決定する制御を開始してから所定時間が経過したこととする請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記制御値設定条件は、前記制御手段(20)が前記圧縮機(1)を起動しようと制御値を決定する制御を開始した後における前記蒸発器(9)の温度が所定温度以下であることとする請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記制御手段(20)によって制御値を可変される前記圧縮機(1)は、圧縮容量を可変できる容量可変型圧縮機で構成することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項1】
圧縮機(1)から吐出された冷媒を蒸発器(9)内で蒸発させるとともに、前記蒸発器(9)を通過して車室内へ送風される空気を冷却する冷凍サイクル装置(21)と、
前記圧縮機(1)の駆動出力を決める制御値を演算して前記圧縮機(1)の運転を制御する制御手段(20)と、を備え、
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)を起動させるときに、前記冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力に基づいて決定する制御値によって前記圧縮機(1)を駆動することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)を起動させるときの制御値を、前記冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力および車室外の外気温度に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御手段(20)は、前記冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力に基づいて制御値を決定するための制御特性データを、特定の外気温度に対応するように複数記憶し、
前記圧縮機(1)を起動させるときの外気温度に応じて、演算に用いる制御特性データを前記複数の制御特性データの中から選択して制御値を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)を起動させるときの制御値を、前記冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力、および蒸発器(9)下流の空気温度に基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記蒸発器(9)の下流側温度が所定温度に安定するときの前記冷凍サイクル(21)を流れる冷媒流量をあらかじめ記憶する記憶装置を備え、
前記制御手段(20)は、冷媒の圧力と前記記憶装置に記憶されている前記安定時の冷媒流量とから制御値を決定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記圧縮機(1)は冷媒流量と吸入圧に相関関係がある吸入圧制御式で構成されており、
前記蒸発器(9)の下流側温度が所定温度に安定するときの冷媒流量に相当する吸入圧をあらかじめ記憶する記憶装置を備え、
前記制御手段(20)は、冷媒の圧力と前記記憶装置に記憶されている前記安定時の吸入圧とから制御値を決定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
圧縮機(1)から吐出された冷媒を蒸発器(9)内で蒸発させるとともに、前記蒸発器(9)を通過して車室内へ送風される空気を冷却する冷凍サイクル装置(21)と、
前記圧縮機(1)の駆動出力を決める制御値を演算して前記圧縮機(1)の運転を制御する制御手段(20)と、を備え、
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)を起動させるときに、車室外の外気温度に基づいて決定する制御値によって前記圧縮機(1)を駆動させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)を起動させるときの制御値を、現在のモードが車室内の空気を取り入れる内気モードまたは車室外の空気を取り入れる外気モード、のいずれのモードであるかに応じて決定することを特徴とする請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記制御手段(20)は、車室外の外気温度が所定温度以下の場合に、前記制御値を決定する制御を実行することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
圧縮機(1)から吐出された冷媒を蒸発器(9)内で蒸発させるとともに、前記蒸発器(9)を通過して車室内へ送風される空気を冷却する冷凍サイクル装置(21)と、
前記圧縮機(1)の駆動出力を決める制御値を演算して前記圧縮機の運転を制御する制御手段(20)と、を備え、
前記制御手段(20)は、前記圧縮機(1)の起動後、前記圧縮機(1)の駆動出力を設定する制御値設定条件が検出されたときに、前記冷凍サイクル装置(21)内の冷媒の圧力または車室外の外気温度に基づいて決定する制御値によって前記圧縮機(1)を駆動させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項11】
前記制御値設定条件は、前記制御手段(20)が前記圧縮機(1)を起動しようと制御値を決定する制御を開始してから所定時間が経過したこととする請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記制御値設定条件は、前記制御手段(20)が前記圧縮機(1)を起動しようと制御値を決定する制御を開始した後における前記蒸発器(9)の温度が所定温度以下であることとする請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記制御手段(20)によって制御値を可変される前記圧縮機(1)は、圧縮容量を可変できる容量可変型圧縮機で構成することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−13165(P2008−13165A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131004(P2007−131004)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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