説明

車両用空調装置

【課題】室内の空調快適性の向上とアイドルストップ時間の延長を達成すること。
【解決手段】運転状態・空調状態に応じてエンジンを自動停止または自動始動させるエンジン自動始動停止手段を有する車両1に設けられる車両用空調装置30において、車両1の外気の温度を検出する外気温センサ52と、エンジン21の自動停止が行われているか否かを判定する空調制御部50と、室内温度を設定し、設定温度を出力する設定スイッチ53と、外気の温度が25℃以上の場合は、調和前空気を室内に取り込むための温調ダンパ49を蒸発器46側位置へ変位させ、外気の温度が所定温度より低い場合は、温調ダンパ49を蒸発器46側位置とヒータコア47側位置との間の設定温度に対応する位置へ変位させる空調制御部50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイドルストップ機能付きの車両に用いられる車両用空調装置に関し、特にアイドルストップ状態における室内の空調快適性の向上を達成することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護を目的にして、信号待ち時等の停車時(エンジン動力不要時)にエンジンを自動的に停止させ、発進時に自動的に再始動させて円滑に発進させるようにした、いわゆるアイドルストップ機能付きの車両(以下、「ID車両」と称する)が実用化されている。
【0003】
一方、車両には室内の温度、湿度、送風、換気等の調整を行うための空調装置が搭載されており、この空調装置のエアコンユニットは、ベンチレータ(換気機能)とヒータ(暖房機能)とクーラ(冷房・除湿機能)とによって構成されている。
【0004】
このようなID車両では、例えば、シフトレバーの位置、車速0状態の一定時間継続、ブレーキスイッチのON等がエンジンの停止条件となり、このエンジンの停止条件が成立したらエンジンを自動停止する(エコロジカル制御)。ところが、上述した空調装置が作動していた場合、エンジンが停止するとエアコンのコンプレッサやウォータポンプも停止するため、冷房機能及び暖房機能が作用せずに乗員に不快感を与えてしまう。そのため、アイドルストップ制御装置では、従来、エンジンの停止条件が成立しても空調装置を作動させたい場合にはエンジンを停止させないようにしており、アイドルストップ機能が十分に発揮できない。
【0005】
そこで、例えば、エアコンが作動された状態でエンジンの自動停止条件が成立するとエンジンを自動停止させるが、そのエンジンの自動停止条件として、ボンネットの閉止、冷却水温度が所定範囲内、バッテリの充電量が所定電圧以上、変速機のニュートラル、駐車ブレーキの作動、アイドル運転時間の所定時間の継続に加え、車室内温度が所定範囲内にあることを入れており、車室内温度が所定範囲内にあれば、エンジンを自動停止しても乗員に不快感を与えることはなく、かつ、十分な排気ガス対策や燃費向上が図ることができる(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平11−44230号公報
【特許文献2】特開2006−240459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した車両用空調装置では、次のような問題があった。すなわち、エアコンユニットは、ベンチレータとヒータとクーラを温調ダンパ(エアミックスダンパ)を用いてバランスさせて室内を快適に保つようにしている。このため、室内が快適に冷えた状態でアイドルストップが行われると、温調ダンパの変位がエアコン作動時のまま停止する。したがって、外気温が高い場合には、外気がヒータを経由して室内に流入する場合があり、時間経過とともに室内温度が上昇し、乗員が不快に感じることがある。このため、乗員は設定温度を変えた為にアイドルストップ時間が短縮されるとは限らない為、”乗員が強制的に
アイドルストップを解除してしまうことになり、エンジンが再始動し、アイドルストップ時間が短縮されてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、室内の空調快適性の向上とアイドルストップ時間の延長を達成することができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決する第1の発明(請求項1に対応)に係る車両用空調装置は、運転状態・空調状態に応じてエンジンを自動停止または自動始動させるエンジン自動始動停止手段を有する車両に設けられる車両用空調装置において、上記車両の外気の温度を検出する外気温度検出部と、上記エンジンの自動停止が行われているか否かを判定する判定部と、室内温度を設定し、設定温度を出力する設定スイッチと、上記外気の温度が所定温度以上の場合は、調和前空気を室内に取り込むための温調ダンパを蒸発器側位置へ変位させ、上記外気の温度が所定温度より低い場合は、上記温調ダンパを上記蒸発器側位置とヒータコア側位置との間の上記設定温度に対応する位置へ変位させるダンパ制御部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明によれば、外気温が高い場合であっても室内温度を低く保つことが可能になり、アイドルストップ時の乗員の快適性を維持し、アイドルストップ時間を延長することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の一実施の形態に係る車両用空調装置30が組み込まれた車両10を模式的に示す説明図、図2は温調ダンパ制御のフローチャートを示す説明図である。
【0011】
車両10は、走行駆動機構20と、車両用空調装置30と、車両10の各部を総合的に制御するECU(電子コントロールユニット)100とを備え、信号待ちなどで車両が停止する所定の条件になると、エアコンがON状態であっても、エンジン21を自動的に停止してアイドリングストップ状態とすることで、燃費向上のためのエコロジカル制御が行われている。
【0012】
走行駆動機構20は、エンジン21と、エンジン21を冷却するラジエータ機構22と、このラジエータ機構22を冷却する冷却ファン23とを備えている。なお、ラジエータ機構22は後述するヒータコア47と接続されている。
【0013】
車両用空調装置30は、空調ユニット40と、空調制御部50とを備えている。空調ユニット40は、ダクト41と、エンジン21によって駆動するコンプレッサ42と、このコンプレッサ42に連結されたコンデンサ43と、このコンデンサ43にレシーバ44を介して接続された膨張弁45及び蒸発器46と、ラジエータ機構22に接続されたヒータコア47と、ダクト41内に空気を通流させるファン48と、取り入れられた調和前空気を蒸発器46側の流路とヒータコア47側の流路の間で変位させる温調ダンパ49とを備えている。
【0014】
空調ユニット40は、コンプレッサ42によって低圧ガス状の冷媒が圧縮されて高温高圧のガスとなり、コンデンサ43で走行風やファン48によって冷却されて液化され、高圧液状の冷媒が膨張弁45によって急激に膨張して霧化しやすくなり、蒸発器46で周囲のフィンから熱を奪ってガス状冷媒となる。この気化の際に熱を大量に奪って冷却を行い、再び低圧ガス状の冷媒となってコンプレッサ42に戻され、冷凍サイクルが構成される。一方、ヒータコア47は、暖房モードのときエンジン21の冷却水を熱源として空気を加熱する機能を有している。
【0015】
ダクト41内には温度センサ51が設けられ、空調吹出温度として空調制御部50に入力され、車両停止時におけるアイドリングストップの条件が判断される。また、外気温センサ52及び設定スイッチ53が空調制御部50に接続されている。空調制御部50は、温調ダンパ49の変位・開度を調節するダンパ制御部及びエンジン21の自動停止が行われているか否かを判定する判定部を構成している。
【0016】
ECU100には、車速センサ101や図示しないエンジン回転数センサ、アクセル開度センサ、エアフローセンサ等の各種センサ類が接続されており、これらセンサ類からの検出情報に基づいて演算された燃料噴射量や点火時期等の最適値により、適正量の燃料が適正なタイミングで噴射され、点火プラグによって適正なタイミングで点火が実施される。 また、ECU100は各種センサ類からの検出情報に基づいてエンジン21の運転状態に応じてこのエンジン21をアイドリングストップまたは自動始動させる制御を行っている(エコロジカル制御)。すなわち、車両10が信号でアイドル状態で停止しているとき、所定のアイドリングストップ条件、例えば、シフトレバーの位置、車速0状態の一定時間継続、ブレーキスイッチのON等の停止条件が成立したらエンジンを自動停止する。そして、所定のエンジン始動条件、例えば、クラッチペダルの踏み込み、シフトレバーの走行位置等の始動条件が成立したらエンジンを再始動する。
【0017】
一方、空調制御部50では、温度条件等の各種の条件によってエンジン21のアイドリングストップの可否を判定するとともに、ECU100からの情報に基づいて現時点でアイドリングストップしているか否かを判定すする。また、アイドリングストップ時においては、次のような制御を行う。すなわち、外気の温度が25℃以上の場合は、温調ダンパ49を蒸発器46側位置へ変位させ、外気の温度が25℃より低い場合は、温調ダンパ49を蒸発器46側位置とヒータコア47側位置との間であって設定スイッチ53によって設定された設定温度に対応する位置へ変位させる。
【0018】
このように構成された車両用空調装置30は、以下のようにして温調ダンパ49の制御を行う。なお、以下の説明は、空調スイッチが既にONとなっている状態として説明する。また、車両用空調装置30を作動させるためのコンプレッサ42は、アイドルストップに連動する。
【0019】
アイドルストップ制御(エンジン制御)において、図2のフローチャートに示すように、エンジン21がアイドルストップしているか否かを判定し(ST10)、アイドルストップしていなければ、設定温度に合わせた温調ダンパ49の制御を行う(ST13)。すなわち、温調ダンパ49を蒸発器46側位置とヒータコア47側位置との間であって設定スイッチ53によって設定された設定温度に合わせて変位させる。
【0020】
一方、アイドルストップしていれば、外気温が25℃以上か否かが判定される(ST11)。外気温が25℃より低ければ、上述したST13の制御が行われる。
【0021】
外気温25℃以上であれば、温調ダンパ49を蒸発器46側の最大位置(MAX−COOL)に変位させる(ST12)。
【0022】
このように、外気温によって温調ダンパ49の変位を切り替えることで、外気温が高い時には外気をヒータユニット47を経由させることなく、蒸発器46側を通すことで、アイドルストップした直後であっても室内温度を低く維持させることができる。このため、乗員の快適性を維持し、アイドルストップ時間を延長させることができる。
【0023】
このように本実施の形態に係る車両用空調装置30によれば、外気の温度が25℃以上の場合は、温調ダンパ49を蒸発器46側位置へ変位させ、外気の温度が25℃より低い場合は、温調ダンパ49を蒸発器46側位置とヒータコア47側位置との間であって設定スイッチ53によって設定された設定温度に対応する位置へ変位させることで、乗員の快適性を維持し、アイドルストップ時間を延長させることができる。
【0024】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、外気温が25℃以上か否かで判断しているが、25℃に限られない。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用空調装置が組み込まれた車両の概要を示す説明図。
【図2】同車両用空調装置における制御フローを示す説明図。
【符号の説明】
【0026】
10…車両、20…走行駆動機構、21…エンジン、22…ラジエータ機構、23…冷却ファン、30…車両用空調装置、40…空調ユニット、41…ダクト、42…コンプレッサ、43…コンデンサ、44…レシーバ、45…膨張弁、46…蒸発器、47…ヒータコア、48…ファン、49…温調ダンパ、50…空調制御部、51…温度センサ、52…外気温センサ、53…設定スイッチ、100…ECU(電子コントロールユニット)、101…車速センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転状態・空調状態に応じてエンジンを自動停止または自動始動させるエンジン自動始動停止手段を有する車両に設けられる車両用空調装置において、
上記車両の外気の温度を検出する外気温度検出部と、
上記エンジンの自動停止が行われているか否かを判定する判定部と、
室内温度を設定し、設定温度を出力する設定スイッチと、
上記外気の温度が所定温度以上の場合は、調和前空気を室内に取り込むための温調ダンパを蒸発器側位置へ変位させ、上記外気の温度が所定温度より低い場合は、上記温調ダンパを上記蒸発器側位置とヒータコア側位置との間の上記設定温度に対応する位置へ変位させるダンパ制御部とを備えていることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−143552(P2010−143552A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326465(P2008−326465)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】