説明

車両用空調装置

【課題】車両への搭載性に優れ、かつ温度制御が容易であるとともに、蓄熱材への熱量の供給を効果的に行うことが可能であり、かつ車室内をより効果的に空調可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】本発明の車両用空調装置では、コントローラ11は、不使用時に、第1流出口2aと第1流入口2bとを連通させ、第1流出口2aと第3流入口60bとを不通とし、かつ第3流出口60aと第1流入口2bとを不通とするように第1、2開閉弁9、10を制御する。また、コントローラ11は、使用時に、第1流出口2aと第3流入口60bとを連通させ、かつ第3流出口60aと第1流入口2bとを連通させるように第1、2開閉弁9、10を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図2及び図3に従来の車両用空調装置が開示されている。これらの車両用空調装置は、蓄熱装置とブロアとを備えている。蓄熱装置は、熱量を負の状態又は正の状態で蓄えることが可能なパラフィン等の蓄熱材を有している。蓄熱装置の内部には、蓄熱材に熱量を供給可能な熱源が設けられている。熱源には車両の内外に設けられたエネルギー供給手段が接続されており、熱源はこのエネルギー供給手段から負の熱量又は正の熱量が供給されるようになっている。また、蓄熱装置の近傍にはブロアが設けられており、蓄熱装置の周りの空気はブロアによって車室内に供給されるようになっている。
【0003】
特許文献1開示の車両用空調装置では、例えば、蓄熱材が負の熱量を蓄えておれば、車両の使用時にブロアを作動させることにより、車室を冷房することが可能になる。また、この車両用空調装置では、蓄熱材が正の熱量を蓄えておれば、車両の使用時にブロアを作動させることにより、車室を暖房することが可能になる。
【0004】
また、特許文献2に他の車両用空調装置が開示されている。この車両用空調装置は、蓄熱装置、車内用熱交換器、ペルチェ素子等を備えている。
【0005】
蓄熱装置は、蓄熱材を有し、外部に対して断熱されている。この蓄熱装置は流路を含む蓄熱側ヒートシンクも有している。蓄熱側ヒートシンクには、蓄熱材から熱交換した熱交換媒体を流出させる第1流出口及び熱交換媒体を流入させる第1流入口が形成されている。蓄熱側ヒートシンクの第1流出口には第1配管が接続され、第1流入口には第2配管が接続されている。
【0006】
また、車内用熱交換器は周りの空気が車室内に供給されるようになっている。この車内用熱交換器には、熱交換媒体を流出させる第2流出口及び熱交換媒体を流入させる第2流入口が形成されている。車内用熱交換器の第2流出口と第2流入口とは第3配管によって接続され、第3配管には流路を含む熱源側ヒートシンクが設けられている。
【0007】
ペルチェ素子は、蓄熱側ヒートシンクと熱源側ヒートシンクとに逆の熱量を付与可能になっている。第1配管はペルチェ素子の一方側で第1開閉弁を介して第3配管に接続され、第2配管はペルチェ素子の他方側で第2開閉弁を介して第3配管に接続されている。第3配管には熱交換媒体を流通させるポンプが設けられている。ペルチェ素子、第1開閉弁及び第2開閉弁は制御部によって制御されるようになっている。
【0008】
特許文献2開示の車両用空調装置では、不使用時、制御部が第1、2開閉弁を制御することにより、第2流出口と第2流入口とが熱源側ヒートシンクを介して連通し、第1流出口と第2流入口とが不通となり、かつ第2流出口と第1流入口とが不通となる。この状態において、制御部の制御の下、ペルチェ素子が蓄熱側ヒートシンク内の熱交換媒体に吸熱を行って負の熱量を付与し、熱源側ヒートシンク内の熱交換媒体に放熱を行って正の熱量を付与する。こうして、車内用熱交換器と熱源側ヒートシンクとが第3配管によって熱交換媒体を流通させながら、蓄熱装置の蓄熱材に負の熱量を蓄えさせることができる。
【0009】
また、使用時には、第1流出口と第2流入口とが連通し、かつ第2流出口と第1流入口とが連通し、第2流出口と第2流入口とが蓄熱側ヒートシンクを介して連通する。こうして、車内用熱交換器と蓄熱側ヒートシンクとが第1〜3配管によって熱交換媒体を流通させる。このため、蓄熱装置の蓄熱材が蓄えている負の熱量により、車室を冷房することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−99724号公報
【特許文献2】特開2001−304633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記特許文献1の車両用空調装置は、熱源として、線又は面状の電気ヒータ、熱交換媒体を循環させて熱伝導させる水道管、温水パイプ又はヒートパイプ等を採用しており、大型化によって車両への搭載性が懸念される。
【0012】
この点、ペルチェ素子を熱源とすれば、車両用空調装置を小型化でき、車両への搭載性を向上できると考えられる。また、ペルチェ素子は、電流の極性を逆転させることにより、付与する熱量を負又は正で切り替えることが可能であることから、ペルチェ素子を採用した車両用空調装置は温度制御が容易になるとも考えられる。
【0013】
しかしながら、ペルチェ素子により蓄熱材に熱量を供給するため、ペルチェ素子を蓄熱装置内に設けたのでは、ペルチェ素子が放熱と吸熱とを同時に行うことから、蓄熱装置内の蓄熱材を効果的に加熱したり、冷却したりすることができない。このため、その車両用空調装置では、車室内を好適に空調することが困難である。
【0014】
特許文献2の車両用空調装置においても、車室内の空調が不十分になり易い。すなわち、この車両用空調装置では、蓄熱材に負の熱量を蓄えている間、ペルチェ素子は、蓄熱側ヒートシンク内の熱交換媒体に対して吸熱を行う一方、熱源側ヒートシンク内の熱交換媒体に対して放熱を行う。このため、この車両用空調装置では、冷房運転中において、蓄熱装置の蓄熱材によって冷却された熱交換媒体が車内用熱交換器内及び第3配管内の熱交換媒体によって温められてしまい、車室内を十分に冷却し難い。
【0015】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、車両への搭載性に優れ、かつ温度制御が容易であるとともに、蓄熱材への熱量の供給を効果的に行うことが可能であり、かつ車室内をより効果的に空調可能な車両用空調装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1発明の車両用空調装置は、蓄熱材を有し、該蓄熱材から熱交換した熱交換媒体を流出させる第1流出口及び該熱交換媒体を流入させる第1流入口が形成され、外部に対して断熱された蓄熱装置と、
該第1流出口と該第1流入口とを接続する第1配管と、
該熱交換媒体を流出させる第2流出口及び該熱交換媒体を流入させる第2流入口が形成され、周りの空気が車外に放出される車外用熱交換器と、
該第2流出口と該第2流入口とを接続する第2配管と、
該熱交換媒体を流出させる第3流出口及び該熱交換媒体を流入させる第3流入口が形成され、周りの空気が車室内に供給される車内用熱交換器と、
該第3流出口と該第1配管とを接続する第3配管と、
該第3流入口と該第1配管とを接続する第4配管と、
該第1配管内の該熱交換媒体と該第2配管の該熱交換媒体とに逆の熱量を付与可能なペルチェ素子と、
該第1配管内の該熱交換媒体を流通させる第1ポンプと、
該第2配管内の該熱交換媒体を流通させる第2ポンプと、
該第1配管と該第3配管との間に設けられた第1開閉弁と、
該第1配管と該第4配管との間に設けられた第2開閉弁と、
該ペルチェ素子と該第1開閉弁及び該第2開閉弁とを制御する制御部とを備え、
該制御部は、不使用時に、該第1流出口と該第1流入口とを連通させ、該第1流出口と該第3流入口とを不通とし、かつ該第3流出口と該第1流入口とを不通とするように該第1開閉弁及び該第2開閉弁を制御し、
使用時に、該第1流出口と該第3流入口とを連通させ、かつ該第3流出口と該第1流入口とを連通させるように該第1開閉弁及び該第2開閉弁を制御することを特徴とする(請求項1)。
【0017】
(暑い環境下)
暑い環境下では、熱量を負の状態で蓄え易い蓄熱材が採用される。そして、第1発明の車両用空調装置では、不使用時、制御部が第1、2開閉弁を制御することにより、第1流出口と第1流入口とが連通し、第1流出口と第3流入口とが不通となり、かつ第3流出口と第1流入口とが不通となる。なお、ここで、不使用時とは、車両用空調装置で冷房を行っていない時をいう。
【0018】
この状態において、制御部の制御の下、ペルチェ素子が第1配管内の熱交換媒体に吸熱を行って負の熱量を付与し、第2配管内の熱交換媒体に放熱を行って正の熱量を付与すれば、蓄熱装置内の熱交換媒体は冷却され、車外用熱交換器内の熱交換媒体は加熱される。このため、蓄熱装置の蓄熱材に負の熱量を蓄えることが可能である。また、蓄熱装置は外部に対して断熱されているため、蓄熱材は外部の熱量を吸熱し難い。一方、車外用熱交換器は周りの空気に放熱を行い、第2配管内の熱交換媒体を冷却することが可能である。
【0019】
そして、その後の使用時、制御部が第1、2開閉弁を制御することにより、第1流出口と第3流入口とが連通し、第3流出口と第1流入口とが連通する。このため、蓄熱装置の蓄熱材が蓄えた負の熱量は熱交換媒体によって車内用熱交換器に供給される。このとき、この車両用空調装置では、車内用熱交換器内並びに第1、3及び4配管内の熱交換媒体はペルチェ素子によって加熱されてはいないため、蓄熱装置の蓄熱材によって冷却された熱交換媒体がそれらの内部の熱交換媒体によって温められることはない。このため、車内用熱交換器によって車室内を好適に冷房することが可能になる。なお、ここで、使用時とは、車両用空調装置で冷房を行っている時をいう。
【0020】
(寒い環境下)
他方、寒い環境下では、熱量を正の状態で蓄え易い蓄熱材が採用される。そして、不使用時、制御部の制御の下、ペルチェ素子が第1配管内の熱交換媒体に放熱を行って正の熱量を付与し、第2配管内の熱交換媒体に吸熱を行って負の熱量を付与すれば、蓄熱装置内の熱交換媒体は加熱され、車外用熱交換器内の熱交換媒体は冷却される。このため、蓄熱装置の蓄熱材に正の熱量を蓄えることが可能である。また、蓄熱装置は外部に対して断熱されているため、蓄熱材は外部に熱量を放熱し難い。一方、車外用熱交換器は周りの空気から吸熱を行い、第2配管内の熱交換媒体を加熱することが可能である。なお、ここで、不使用時とは、車両用空調装置で暖房を行っていない時をいう。
【0021】
そして、その後の使用時、蓄熱装置の蓄熱材が蓄えた正の熱量は熱交換媒体によって車内用熱交換器に供給される。このとき、この車両用空調装置では、車内用熱交換器内並びに第1、3及び4配管内の熱交換媒体はペルチェ素子によって冷却されてはいないため、蓄熱装置の蓄熱材によって加熱された熱交換媒体がそれらの内部の熱交換媒体によって冷却されることはない。このため、車内用熱交換器によって車室内を好適に暖房することが可能になる。なお、ここで、使用時とは、車両用空調装置で暖房を行っている時をいう。
【0022】
したがって、第1発明の車両用空調装置は、従来のような大掛かりな熱源を用いることなく車室内の冷房及び暖房が可能であるため、車両への搭載性を満足させることができる。
【0023】
また、この車両用空調装置は、ペルチェ素子を使用しているため、温度制御が容易である。
【0024】
そして、この車両用空調装置は、ペルチェ素子を蓄熱装置の外に備えていることから、放熱中の吸熱と、吸熱中の放熱とを巧みに利用することが可能であり、蓄熱装置内の蓄熱材を効果的に加熱したり、冷却したりすることができる。また、この車両用空調装置は、車内用熱交換器と車外用熱交換器とを備えていることから、蓄熱装置の蓄熱材によって冷却された熱交換媒体を無駄に暖めたり、蓄熱材によって加熱された熱交換媒体を無駄に冷却したりすることを防止できる。このため、この車両用空調装置では、車室内をより効果的に空調可能である。
【0025】
第1発明の車両用空調装置において、第1配管及び第2配管の少なくとも一方は、内部に流路が形成されたヒートシンクを一体的に有していてもよい。その場合には、ペルチェ素子による吸熱及び放熱が効果的に行われる。
【0026】
第1発明の車両用空調装置において、蓄熱装置は、外部に対して断熱されたハウジングと、ハウジング内に設けられ、熱交換媒体を貯留可能であるとともに、熱交換媒体を熱交換器との間で流通可能な貯留室と、貯留室内に保持され、蓄熱材が充填された蓄熱体とを有し得る。そして、蓄熱体は、内部に蓄熱材を収容する蓄熱タンクと、蓄熱タンクと一体的に設けられ、第1配管と連通して熱交換媒体を流通可能な流路が形成されたジャケットと、ジャケットに固定され、伝熱材料で形成されて流路内の熱交換媒体と蓄熱タンク内の蓄熱材とに接触される伝熱材とを有していることが好ましい(請求項2)。
【0027】
この場合、蓄熱装置のハウジング内が外部に対して断熱されているため、蓄熱材に蓄えた熱量が長時間の放置によって吸熱又は放熱し難い。このため、その後の使用時に長時間の冷房又は暖房を行うことが可能となる。つまり、この蓄熱装置は、長時間放置した後においても、長時間の冷房や暖房を行い易い。さらに、伝熱材が伝熱材料で形成されているため、流路内の熱交換媒体の熱量は、伝熱材を介し、蓄熱材に迅速に蓄えられることとなる。つまり、貯留室内の熱交換媒体を介してのみ蓄熱材に熱量を蓄えさせる場合と比べて、より素早く蓄熱材に熱量を蓄えさせることが可能になる。
【0028】
ここで、伝熱材料とは、樹脂等と比較して熱を伝え易い材料をいう。例えば、銅や錫等の金属を採用することが可能である。
【0029】
この蓄熱装置において、流路は、第1配管の上流側と連通する第4流出口と、第1配管の下流側と連通する第4流入口とを有し得る。また、第4流出口及び第4流入口には、制御部によって制御される第3開閉弁が設けられ得る。そして、制御部は、不使用時に、第4流出口と第4流入口とを連通させ、かつ第1流出口と第1流入口とを不通とするように第3開閉弁を制御し、使用時に、第1流出口と第1流入口とを連通させ、かつ第4流出口と第4流入口とを不通とするように第3開閉弁を制御することが好ましい(請求項3)。
【0030】
この場合、伝熱材を介してのみ蓄熱材は熱量を蓄えることができる。一方、貯留室内の熱交換媒体を介して蓄熱材に熱量を蓄えることとはしない。このため、蓄熱タンクの材質にかかわらず、蓄熱材に迅速に熱量を蓄えることが可能である。また、この場合、貯留室内の熱交換媒体が循環しないため、貯留室内の熱交換媒体の熱量が不使用時に外部に一層放熱され難い。
【0031】
また、蓄熱タンクは個々の内部で蓄熱材を収容する凹部を有し、伝熱材はジャケットから各凹部内に延びていることが好ましい(請求項4)。
【0032】
この場合、各凹部の外面によって蓄熱タンクの表面積を大きくすることができるため、効率よく貯留室内の熱交換媒体を加熱又は冷却することができる。また、伝熱材が各凹部内に延びているため、各凹部内の蓄熱材毎に流路内の熱交換媒体の熱量を蓄えさせることが可能になる。このため、蓄熱材に一層素早く熱量を蓄えさせることができる。
【0033】
第2発明の車両用空調装置は、蓄熱材を有し、該蓄熱材から熱交換した熱交換媒体を流出させる第1流出口及び該熱交換媒体を流入させる第1流入口が形成され、外部に対して断熱された蓄熱装置と、
該第1流出口と該第1流入口とを接続する第1配管と、
周りの空気が車外に放出される車外用熱交換器と、
該熱交換媒体を流出させる第3流出口及び該熱交換媒体を流入させる第3流入口を有し、周りの空気が車室内に供給される車内用熱交換器と、
該第3流出口と該第1配管とを接続する第3配管と、
該第3流入口と該第1配管とを接続する第4配管と、
該第1配管内の該熱交換媒体と該車外用熱交換器とに逆の熱量を付与可能なペルチェ素子と、
該第1配管内の該熱交換媒体を流通させるポンプと、
該第1配管と該第3配管との間に設けられた第1開閉弁と、
該第1配管と該第4配管との間に設けられた第2開閉弁と、
該ペルチェ素子と該第1開閉弁及び該第2開閉弁とを制御する制御部とを備え、
該制御部は、不使用時に、該第1流出口と該第1流入口とを連通させ、該第1流出口と該第3流入口とを不通とし、かつ該第3流出口と該第1流入口とを不通とするように該第1開閉弁及び該第2開閉弁を制御し、
使用時に、該第1流出口と該第3流入口とを連通させ、かつ該第3流出口と該第1流入口とを連通させるように該第1開閉弁及び該第2開閉弁を制御することを特徴とする(請求項5)。
【0034】
(暑い環境下)
暑い環境下では、熱量を負の状態で蓄え易い蓄熱材が採用される。そして、第2発明の車両用空調装置では、不使用時、制御部が第1、2開閉弁を制御することにより、第1流出口と第1流入口とが連通し、第1流出口と第3流入口とが不通となり、かつ第3流出口と第1流入口とが不通となる。
【0035】
この状態において、制御部の制御の下、ペルチェ素子が第1配管内の熱交換媒体に吸熱を行って負の熱量を付与し、車外用熱交換器に放熱を行って正の熱量を付与すれば、蓄熱装置内の熱交換媒体は冷却され、車外用熱交換器は加熱される。このため、蓄熱装置の蓄熱材に負の熱量を蓄えることが可能である。また、蓄熱装置は外部に対して断熱されているため、蓄熱材は外部の熱量を吸熱し難い。一方、車外用熱交換器は周りの空気に放熱を行い、冷却される。
【0036】
そして、その後の使用時、制御部が第1、2開閉弁を制御することにより、第1流出口と第3流入口とが連通し、第3流出口と第1流入口とが連通する。このため、蓄熱装置の蓄熱材が蓄えた負の熱量は熱交換媒体によって車内用熱交換器に供給される。このとき、この車両用空調装置では、車内用熱交換器内並びに第1、3及び4配管内の熱交換媒体はペルチェ素子によって加熱されてはいないため、蓄熱装置の蓄熱材によって冷却された熱交換媒体がそれらの内部の熱交換媒体によって温められることはない。このため、車内用熱交換器によって車室内を好適に冷房することが可能になる。
【0037】
(寒い環境下)
他方、寒い環境下では、熱量を正の状態で蓄え易い蓄熱材が採用される。そして、不使用時、制御部の制御の下、ペルチェ素子が第1配管内の熱交換媒体に放熱を行って正の熱量を付与し、車外用熱交換器に吸熱を行って負の熱量を付与すれば、蓄熱装置内の熱交換媒体は加熱され、車外用熱交換器は冷却される。このため、蓄熱装置の蓄熱材に正の熱量を蓄えることが可能である。また、蓄熱装置は外部に対して断熱されているため、蓄熱材は外部に熱量を放熱し難い。一方、車外用熱交換器は周りの空気から吸熱を行い、加熱される。
【0038】
そして、その後の使用時、蓄熱装置の蓄熱材が蓄えた正の熱量は熱交換媒体によって車内用熱交換器に供給される。このとき、この車両用空調装置では、車内用熱交換器内並びに第1、3及び4配管内の熱交換媒体はペルチェ素子によって冷却されてはいないため、蓄熱装置の蓄熱材によって加熱された熱交換媒体がそれらの内部の熱交換媒体によって冷却されることはない。このため、車内用熱交換器によって車室内を好適に暖房することが可能になる。
【0039】
したがって、第2発明の車両用空調装置も、第1発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0040】
第2発明の車両用空調装置において、第2配管は、内部に流路が形成されたヒートシンクを一体的に有していてもよい。その場合には、ペルチェ素子による吸熱及び放熱が効果的に行われる。
【0041】
第2発明の車両用空調装置において、蓄熱装置は、外部に対して断熱されたハウジングと、ハウジング内に設けられ、熱交換媒体を貯留可能であるとともに、熱交換媒体を熱交換器との間で流通可能な貯留室と、貯留室内に保持され、蓄熱材が充填された蓄熱体とを有し得る。そして、蓄熱体は、内部に蓄熱材を収容する蓄熱タンクと、蓄熱タンクと一体的に設けられ、配管と連通して熱交換媒体を流通可能な流路が形成されたジャケットと、ジャケットに固定され、伝熱材料で形成されて流路内の熱交換媒体と蓄熱タンク内の蓄熱材とに接触される伝熱材とを有していることが好ましい(請求項6)。この場合、請求項2と同様の作用効果を生じる。
【0042】
この蓄熱装置において、流路は、配管の上流側と連通する第4流出口と、配管の下流側と連通する第4流入口とを有し得る。また、第4流出口及び第4流入口には、制御部によって制御される第3開閉弁が設けられ得る。そして、制御部は、不使用時に、第4流出口と第4流入口とを連通させ、かつ第1流出口と第1流入口とを不通とするように第3開閉弁を制御し、使用時に、第1流出口と第1流入口とを連通させ、かつ第4流出口と第4流入口とを不通とするように第3開閉弁を制御することが好ましい(請求項7)。この場合、請求項3と同様の作用効果を生じる。
【0043】
また、蓄熱タンクは個々の内部で蓄熱材を収容する凹部を有し、伝熱材はジャケットから各凹部内に延びていることが好ましい(請求項8)。この場合、請求項4と同様の作用効果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1〜4に係り、不使用時の車両用空調装置等を示す模式構造図である。
【図2】実施例1〜4に係り、使用時の車両用空調装置等を示す模式構造図である。
【図3】実施例1に係り、不使用時の蓄熱装置の模式断面図である。
【図4】実施例1に係り、コントローラに対する接続回路を示す摸式回路図である。
【図5】実施例1に係り、不使用時で負の熱量又は正の熱量を蓄熱している時の蓄熱装置の模式断面図である。
【図6】実施例1に係り、使用時の蓄熱装置の模式断面図である。
【図7】実施例2に係り、不使用時で負の熱量又は正の熱量を蓄熱している時の蓄熱装置の模式断面図である。
【図8】実施例2に係り、使用時の蓄熱装置の模式断面図である。
【図9】実施例3に係り、不使用時の蓄熱装置の模式断面図である。
【図10】実施例3に係り、使用時の蓄熱装置の模式断面図である。
【図11】実施例3に係り、蓄熱装置の拡大模式断面図である。
【図12】実施例3に係り、ジャケットの拡大摸式断面図である。
【図13】実施例4に係り、不使用時の蓄熱装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を具体化した実施例1〜4を図面を参照しつつ説明する。
【0046】
(実施例1)
実施例1の車両用空調装置は、図1及び図2に示すように、ハイブリッド車又は電気自動車である車両1に搭載されている。この車両用空調装置は、蓄熱装置2と、車外用熱交換器3と、車内用熱交換器60と、第1配管4と、第2配管5と、第3配管61と、第4配管62と、ペルチェ素子6と、第1ポンプ7(図3〜6参照)と、第2ポンプ8と、第1開閉弁9(図3〜6参照)と、第2開閉弁10(図3〜6参照)と、制御部としてのコントローラ11(図4参照)と、車外用熱交換器3周りの空気を車外に供給するためのブロア12と、車内用熱交換器60周りの空気を車室内に供給するためのブロア63とを備えている。
【0047】
蓄熱装置2は、図3に示すように、第1流出口2a及び第1流入口2bが形成されたハウジング21を備えている。ハウジング21の内面には真空断熱材22が貼り付けられている。真空断熱材22内には、蓄熱タンク13と、蓄熱タンク13より下方に位置する貯留タンク14とが設けられている。
【0048】
蓄熱タンク13内には、熱量を負の状態又は正の状態で蓄えることが可能なパラフィン等の蓄熱材15が充填されている。蓄熱タンク13内には熱交換パイプ16が設けられている。貯留タンク14及び熱交換パイプ16内には、空気とともに熱交換媒体としての水が充填されている。
【0049】
熱交換パイプ16は、蓄熱タンク13の上方に開く流出口16a及び流入口16bと、蓄熱タンク13の下方に開く連絡口16cとを有している。流出口16aと連絡口16cとは上下に延びる第1パイプ16dによって接続されている。流入口16bには第2パイプ16eが接続され、第2パイプ16eは無数に屈曲しながら連絡口16cの上方で第1パイプ16dに接続されている。
【0050】
熱交換パイプ16の流出口16aには真空断熱材22を貫いてハウジング21の第1流出口2aまで延びる流出パイプ17が接続されている。ハウジング21及び真空断熱材22内の流出パイプ17に第1ポンプ7が接続されている。また、ハウジング21及び真空断熱材22外の流出パイプ17には、開閉弁19が接続されている。流出パイプ17は図1及び図2に示す第1配管4の一端に接続されている。第1配管4は複数本の直線部4aを有している。
【0051】
また、図3に示すように、熱交換パイプ16の流入口16bには真空断熱材22を貫いてハウジング21の第1流入口2bまで延びる流入パイプ30が接続されている。ハウジング21及び真空断熱材22内の流入パイプ30には、流入連絡パイプ31が分岐されている。また、ハウジング21及び真空断熱材22外の流入パイプ30には、開閉弁32が接続されている。流入パイプ30は図1及び図2に示す第1配管4の他端に接続されている。
【0052】
図3に示すように、熱交換パイプ16の連絡口16cには貯留タンク14の内底面に開く流出連絡パイプ23が接続されている。流出連絡パイプ23には主弁24が接続されている。また、流入連絡パイプ31は貯留タンク14の内上面に開いている。流入連絡パイプ31には副弁25が接続されている。
【0053】
車外用熱交換器3には第2流出口3a及び第2流入口3bが形成されており、第2流出口3aと第2流入口3bとは第2配管5によって接続されている。第2配管5には第2ポンプ8が設けられている。第2配管5も複数本の直線部5aを有している。第1配管4の直線部4aと第2配管5の直線部5aとは対面しており、これらの間には直線部4a、5aに各面が当接した状態でペルチェ素子6が設けられている。
【0054】
車内用熱交換器60には第3流出口60a及び第3流入口60bが形成されており、第3流出口60aと第1配管4とは第3配管61によって接続され、第3流入口60bと第1配管4とは第4配管62によって接続されている。第1配管4と第3配管61との接続箇所には第1開閉弁9が設けられており、第1配管4と第4配管62との接続箇所には第2開閉弁10が設けられている。第1、2開閉弁9、10は、三つの流路に接続され、二つの流路を連通しつつ、一つの流路を不通とするいわゆる三方弁である。
【0055】
図4に示すように、第2ポンプ8、第1開閉弁9、第2開閉弁10、ペルチェ素子6、開閉弁19、開閉弁32、第1ポンプ7、主弁24及び副弁25はコントローラ11に電気的に接続されている。
【0056】
また、図1及び図2に示すように、車両1には、バッテリ27が搭載されている。車両1はバッテリ27に蓄電された電力によって走行できるようになっている。
【0057】
図1に示すように、車両1の不使用時の例として、車両1が家庭の駐車場に駐車されている間、バッテリ27に家庭用電源28が接続され、バッテリ27に蓄電が行われる。
【0058】
(暑い環境下)
暑い環境下では、熱量を負の状態で蓄え易い蓄熱材15が採用される。そして、蓄熱装置2の熱交換パイプ16に循環装置29が接続され、熱交換パイプ16内の水が冷却された水と置換される。
【0059】
この間、蓄熱装置2は、図5又は図6に示すように、蓄熱タンク13内の熱交換パイプ16内に水が充填された状態とされている。熱交換媒体としての水の温度も蓄熱材15と同等にしておいた方が迅速な冷房が可能だからである。どのようにこの状態にするかは後述する。こうして、この車両用空調装置では、図1に示すように、家庭の駐車場の他、種々の場所において水を冷却することが可能である。
【0060】
水の冷却は水の温度に応じて行われる。水の温度が所定温度になれば、水の冷却は停止される。そして、蓄熱装置2は、図3に示すように、蓄熱タンク13内の熱交換パイプ16内に水が存在しない状態とされる。どのようにこの状態にするかは後述する。
【0061】
図5に示すように、蓄熱タンク13内の熱交換パイプ16内に水が充填された状態において、コントローラ11が第1、2開閉弁9、10を制御することにより、第1流出口2aと第1流入口2bとが連通し、第1流出口2aと第3流入口60bとが不通となり、かつ第3流出口60aと第1流入口2bとが不通となる。
【0062】
この状態において、コントローラ11の制御の下、ペルチェ素子6が第1配管4内の水に吸熱を行って負の熱量を付与し、第2配管5内の水に放熱を行って正の熱量を付与すれば、蓄熱装置2内の水は冷却され、車外用熱交換器3内の水は加熱される。この際、第2ポンプ8が作動され、車外用熱交換器3と第2配管5との間で水が循環する。このため、蓄熱装置2の蓄熱材15に負の熱量を蓄えることが可能である。また、車外用熱交換器3はブロア12によって周りの空気に放熱を行い、第2配管5内の水を冷却することが可能である。
【0063】
また、図2に示すように、車両1が走行中であれば、バッテリ27には十分な蓄電がなされ易い。このため、車両1の走行中に蓄熱材15が蓄えた負の熱量が不足した場合には、バッテリ27からペルチェ素子6に給電を行い、水や蓄熱材15が蓄える負の熱量を増加させることができる。
【0064】
そして、車両1の使用時の例として、車両1を走行させる。この際、図3に示すように、コントローラ11による制御の下、主弁24、副弁25、開閉弁19及び開閉弁32が開かれ、第1ポンプ7が作動される。このため、図5に示すように、貯留タンク14内の水が流出連絡パイプ23、主弁24を経て熱交換パイプ16内に移動する。
【0065】
貯留タンク14内に水が存在しなくなれば、主弁24及び副弁25が閉じられる。このため、第1配管4と熱交換パイプ16との間で水が循環する。この状態において、コントローラ11が第1、2開閉弁9、10を制御することにより、図6に示すように、第1流出口2aと第1流入口2bとが直接には不通となり、第1流出口2aと第3流入口60bとが連通し、かつ第3流出口60aと第1流入口2bとが連通する。
【0066】
そして、この車両用空調装置では、蓄熱装置2に蓄えた負の熱量をもつ水が車内用熱交換器60に供給される。このとき、この車両用空調装置では、車内用熱交換器内60並びに第1、3及び4配管4、61、62内の水はペルチェ素子6によって加熱されてはいないため、蓄熱装置2の蓄熱材15によって冷却された水がそれらの内部の水によって加熱されることはない。そして、ブロア63が作動され、車内用熱交換器60によって車室が好適に冷房される。この時、第2ポンプ8は作動停止される。
【0067】
車両1は、目的地に到着し、そこに駐車される。そこには蓄熱装置2及びバッテリ27に接続する電源は存在しない。この際、コントローラ11による制御の下、図3に示すように、主弁24、副弁25、開閉弁19及び開閉弁32が開かれ、第1ポンプ7が作動停止される。このため、熱交換パイプ16内の水が自重によって主弁24、流出連絡パイプ23を経て貯留タンク14内に移動する。熱交換パイプ16内に水が存在しなくなれば、主弁24、副弁25、開閉弁19及び開閉弁32が閉じられる。
【0068】
(寒い環境下)
他方、寒い環境下では、熱量を正の状態で蓄え易い蓄熱材15が採用される。そして、不使用時には、図1に示すように、蓄熱装置2の熱交換パイプ16に循環装置29が接続され、熱交換パイプ16の水が温められた水と置換される。また、図5に示すように、コントローラ11の制御の下、ペルチェ素子6が第1配管4内の水に放熱を行って正の熱量を付与し、第2配管5内の水に吸熱を行って負の熱量を付与すれば、蓄熱装置2内の水は加熱され、車外用熱交換器3内の水は冷却される。このため、蓄熱装置2の蓄熱材15に正の熱量を蓄えることが可能である。また、車外用熱交換器3はブロア12によって周りの空気から吸熱を行い、第2配管5内の水を加熱することが可能である。
【0069】
そして、その後の使用時、蓄熱装置2の蓄熱材15が蓄えた正の熱量は水によって車内用熱交換器60に供給される。このとき、この車両用空調装置では、車内用熱交換器内60並びに第1、3及び4配管4、61、62内の水はペルチェ素子6によって冷却されてはいないため、蓄熱装置2の蓄熱材15によって加熱された水がそれらの内部の水によって冷却されることはない。このため、車内用熱交換器60によって車室内を好適に暖房することが可能になる。
【0070】
したがって、この車両用空調装置は、従来のような大掛かりな熱源を用いることなく車室内の冷房及び暖房が可能であるため、車両への搭載性を満足させることができる。
【0071】
また、この車両用空調装置は、ペルチェ素子6を使用しているため、温度制御が容易である。
【0072】
そして、この車両用空調装置は、ペルチェ素子6を蓄熱装置2の外に備えていることから、放熱中の吸熱と、吸熱中の放熱とを巧みに利用することが可能であり、蓄熱装置2内の蓄熱材15を効果的に加熱したり、冷却したりすることができる。また、この車両用空調装置は、車内用熱交換器60と車外用熱交換器3とを備えていることから、蓄熱装置2の蓄熱材15によって冷却された水を無駄に暖めたり、蓄熱材15によって加熱された水を無駄に冷却したりすることを防止できる。このため、この車両用空調装置では、車室内をより効果的に空調可能である。
【0073】
また、この車両用空調装置では、不使用時に蓄熱装置2の第1流出口2a内及び第1流入口2b内から水を自重によって退避させ、第1流出口2a内及び第1流入口2b内に空気を存在させる。このため、水は空気を介してハウジング21外の環境に曝されることとなり、水への吸熱又は水からの放熱が生じ難い。また、この車両用空調装置は、ハウジング21及び真空断熱材22によって蓄熱タンク13及び貯留タンク14を断熱しながら包囲しているため、蓄熱材15や水への吸熱及び蓄熱材15や水からの放熱がより生じ難い。つまり、この車両用空調装置は、長時間放置した後においても、長時間の暖房や冷房を行い易い。
【0074】
(実施例2)
実施例2の車両用空調装置では、図7及び図8に示す車外用熱交換器41を備えている。ペルチェ素子6の一面はこの車外用熱交換器41に当接している。他の構成は実施例1の車両用空調装置と同様である。
【0075】
(暑い環境下)
暑い環境下では、熱量を負の状態で蓄え易い蓄熱材15が採用される。そして、図7に示すように、コントローラ11が第1、2開閉弁9、10を制御することにより、第1流出口2aと第1流入口2bとが連通し、第1流出口2aと第3流入口60bとが不通となり、かつ第3流出口60aと第1流入口2bとが不通となる。
【0076】
この状態において、コントローラ11の制御の下、ペルチェ素子6が第1配管4内の水に吸熱を行って負の熱量を付与し、車外用熱交換器41に放熱を行って正の熱量を付与すれば、蓄熱装置2内の水は冷却され、車外用熱交換器41は加熱される。このため、蓄熱装置2の蓄熱材15に負の熱量を蓄えることが可能である。また、車外用熱交換器41はブロア12によって周りの空気に放熱を行い、冷却される。
【0077】
そして、その後の使用時、図8に示すように、コントローラ11が第1、2開閉弁9、10を制御することにより、第1流出口2aと第3流入口60bとが連通し、第3流出口60aと第1流入口2bとが連通する。このため、蓄熱装置2の蓄熱材15が蓄えた負の熱量は水によって車内用熱交換器60に供給される。このため、車内用熱交換器60によって車室内を好適に冷房することが可能になる。
【0078】
(寒い環境下)
他方、寒い環境下では、熱量を正の状態で蓄え易い蓄熱材15が採用される。そして、コントローラ11の制御の下、ペルチェ素子6が第1配管4内の水に放熱を行って正の熱量を付与し、車外用熱交換器41に吸熱を行って負の熱量を付与すれば、蓄熱装置2内の水は加熱され、車外用熱交換器41は冷却される。このため、蓄熱装置2の蓄熱材15に正の熱量を蓄えることが可能である。また、車外用熱交換器41は周りの空気から吸熱を行い、加熱される。
【0079】
そして、その後の使用時、蓄熱装置2の蓄熱材15が蓄えた正の熱量は水によって車内用熱交換器60に供給される。このため、車内用熱交換器60によって車室内を好適に暖房することが可能になる。
【0080】
したがって、この車両用空調装置も、実施例1と同様の作用効果を発揮可能である。
【0081】
(実施例3)
図9及び図10に示すように、実施例3の車両用空調装置では、実施例1の車両用空調装置の構成を変更し、第1配管4に第1ポンプ7が設けられている。また、蓄熱装置2に替えて蓄熱装置20が備えられている。
【0082】
図11に示すように、蓄熱装置20は、ハウジング21aと、貯留タンク53と、蓄熱体51とを有している。ハウジング21aの内面には真空断熱材22aが貼り付けられている。貯留タンク53はハウジング21aの内部に固定されている。貯留タンク53内は貯留室53aとされており、貯留室53a内には不凍液が貯留されている。
【0083】
ハウジング21a及び真空断熱材22a内において、貯留タンク53の一端側の下部には流出パイプ17aが接続されている。流出パイプ17aは、上方に持ち上げられた後、ハウジング21a及び真空断熱材22aを貫通し、水平に延びた後、上方に開いている。流出パイプ17aの開口が第1流出口20aである。
【0084】
また、ハウジング21a及び真空断熱材22a内において、貯留タンク53の他端側の上部には流入パイプ30aが接続されている。流入パイプ30aは、水平に延びてハウジング21a及び真空断熱材22aを貫通し、上方に開いている。流入パイプ30aの開口が第1流入口20bである。
【0085】
蓄熱体51は、蓄熱タンク52と、ジャケット59と、伝熱材54とからなる。蓄熱タンク52は下方に凹んだ複数個の凹部52aを有している。各凹部52a内に蓄熱材15が収容されている。
【0086】
ジャケット59は、図11及び図12に示すように、蓄熱タンク52と一体的に設けられている。ジャケット59の底面には銅製の伝熱材54が固定されている。伝熱材54は、平板状の本体54aと、本体54aから下方に一体に延びる複数枚のフィン54bとからなる。各フィン54bは凹部52a内に延びており、蓄熱材15と接触している。
【0087】
図9及び図10に示すように、ジャケット59は伝熱材54の上面に流路55を有しており、流路55は第4流出口59a及び第4流入口59bにより開口している。第4流出口59aには第5配管56が接続されている。また、第4流入口59bには第6配管57が接続されている。
【0088】
第1配管4の上流側、流出パイプ17a及び第5配管56は第3開閉弁58aに接続されている。また、第1配管4の下流側、流入パイプ30a及び第6配管57は第3開閉弁58bに接続されている。第3開閉弁58a、58bは三方弁である。第3開閉弁58a、58bは図4に示すコントローラ11に接続されている。他の構成は実施例1と同様であり、同一の構成については同一符号を付して構成の詳細な説明は省略する。
【0089】
(暑い環境下)
暑い環境下では、熱量を負の状態で蓄え易い蓄熱材15が採用される。そして、図9に示すように、不使用時には、コントローラ11が第1、2開閉弁9、10及び第3開閉弁58a、58bを制御することにより、第4流出口59aと第4流入口59bとが直接連通し、第1流出口20aと第3流入口60bとが不通となり、かつ第3流出口60aと第1流入口20bとが不通となる。また、第1流出口20aと第1流入口20bとが不通となる。
【0090】
この状態において、コントローラ11の制御の下、第1ポンプ7により第1配管4内の不凍液を循環させ、ペルチェ素子6が第1配管4内の不凍液に吸熱を行って負の熱量を付与すれば、第1配管4内の不凍液は冷却されて第4流入口59bからジャケット59内の流路55へ至る。この際、不凍液は各フィン54bを介して凹部52a内の蓄熱材15と熱交換を行う。そして、不凍液は第4流出口59aから第1配管4へ至る。
【0091】
図10に示すように、その後の使用時、コントローラ11が第1、2開閉弁9、10及び第3開閉弁58a、58bを制御することにより、第1流出口20aと第3流入口60bとが連通し、第3流出口60aと第1流入口20bとが連通し、かつ第1流出口20aと第1流入口20bとが不通となり、第4流出口59aと第4流入口59bとが不通となる。このため、蓄熱装置20内で蓄熱材15が蓄えた負の熱量は不凍液によって車内用熱交換器60に供給される。このため、車内用熱交換器60によって車室内を冷房することが可能になる。
【0092】
(寒い環境下)
他方、寒い環境下では、熱量を正の状態で蓄え易い蓄熱材15が採用される。そして、図9に示すように、不使用時には、コントローラ11の制御の下、ペルチェ素子6が第1配管4内の不凍液に放熱を行って正の熱量を付与することで、第1配管4内の不凍液は加熱され、第4流入口59bからジャケット57内の流路55へ至る。この際、不凍液はフィン54bを介して凹部52a内の蓄熱材15と熱交換を行う。そして、不凍液は第4流出口59aから第1配管4へ至る。
【0093】
図10に示すように、その後の使用時、蓄熱装置20内で蓄熱材15が蓄えた正の熱量は不凍液によって車内用熱交換器60に供給される。このため、車内用熱交換器60によって車室内を好適に暖房することが可能になる。
【0094】
この車両用空調装置では、伝熱材54が銅で形成され、かつ各フィン54bが凹部52a内の蓄熱材15と接触しているため、流路55内の不凍液の熱量は、伝熱材54を介し、蓄熱材15に迅速に蓄えられることとなる。つまり、貯留室52a内の不凍液を介してのみ蓄熱材15に熱量を蓄えさせる場合と比べて、より素早く蓄熱材15に熱量を蓄えさせることが可能になる。
【0095】
特に、この車両用空調装置では、図9に示すように、コントローラ11は不使用時に、第4流出口59aと第4流入口59bとを連通させ、かつ第1流出口20aと第1流入口20bとを不通とするように第3開閉弁58a、58bを制御する。つまり、流出パイプ17aと第1配管4とが不通となり、流入パイプ30aと第1配管4とが不通となる。このため、流出パイプ17a及び流入パイプ30a内には空気の層が形成される。このため、不凍液は空気の層によっても断熱されることとなる。このため、貯留タンク53内の不凍液の正又は負の熱量が不使用時に外部に一層放熱され難くすることができる。
【0096】
また、蓄熱タンク52は個々の内部で蓄熱材15を収容する凹部52aを有し、フィン54bはジャケット59から凹部52a内に延びている。このため、蓄熱タンク52の表面積を大きくすることができ、効率よく貯留室53a内の不凍液を加熱又冷却することができる。また、凹部52a内の蓄熱材15毎に流路55内の不凍液の正又は負の熱量を蓄えさせることが可能になる。このため、蓄熱材15に一層素早く正又は負の熱量を蓄えさせることができる。他の作用効果は実施例1と同様である。
【0097】
(実施例4)
実施例4の車両用空調装置は、図13に示すように、実施例2の車両用空調装置において、蓄熱装置2に替えて蓄熱装置20を採用したものである。他の構成は実施例2、3と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0098】
実施例4の車両用空調装置においても、実施例2、3と同様の作用効果を奏することができる。
【0099】
以上において、本発明を実施例1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜4に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0100】
蓄熱装置2、20の蓄熱材15としては、パラフィン、塩化カルシウム水和物、硫酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、酢酸ナトリウム水和物等の熱量を正の状態で蓄えることが可能なものの他、保冷剤(蓄冷剤)と言われるポリアクリル酸ナトリウム等の熱量を負の状態で蓄えることが可能なものを採用することが可能である。
【0101】
蓄熱材15を加熱可能な加熱手段として、電熱ヒータ、配管内に温水等の熱交換媒体を供給させる温水ヒータ等を採用することが可能である。また、蓄熱材15を冷却可能な冷却手段として、配管内に冷水等の熱交換媒体を供給させる冷水ヒータ等を採用することも可能である。
【0102】
ハウジング21、21aによる断熱は、真空断熱材22、22aに限られず、発泡スチロール、グラスウール、空気、真空等によって行うことが可能である。
【0103】
貯留タンク14、53内の水又は、不凍液を加熱又は冷却可能な加熱冷却手段を設けることも可能である。
【0104】
開閉弁19、32に替えて三方弁を採用し、各三方弁に第3配管及び第4配管をそれぞれ接続することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の車両用空調装置はハイブリッド車、電気自動車等の車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0106】
15…蓄熱材
2a、20a…第1流出口
2b、20b…第1流入口
22、22a…真空断熱材
2、20…蓄熱装置
3a…第2流出口
3b…第2流入口
3、41…車外用熱交換器
5…第2配管
60a…第3流出口
60b…第3流入口
60…車内用熱交換器
4…第1配管
61…第3配管
62…第4配管
6…ペルチェ素子
7…第1ポンプ、ポンプ
8…第2ポンプ
9…第1開閉弁
10…第2開閉弁
11…制御部(コントローラ)
21、21a…ハウジング
14、53…貯留タンク
53a…貯留室
51…蓄熱体
13、52…蓄熱タンク
55…流路
59…ジャケット
54…伝熱材(54a…本体、54b…フィン)
59a…第4流出口
59b…第4流入口
58a、58b…第3開閉弁
52a…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱材を有し、該蓄熱材から熱交換した熱交換媒体を流出させる第1流出口及び該熱交換媒体を流入させる第1流入口が形成され、外部に対して断熱された蓄熱装置と、
該第1流出口と該第1流入口とを接続する第1配管と、
該熱交換媒体を流出させる第2流出口及び該熱交換媒体を流入させる第2流入口が形成され、周りの空気が車外に放出される車外用熱交換器と、
該第2流出口と該第2流入口とを接続する第2配管と、
該熱交換媒体を流出させる第3流出口及び該熱交換媒体を流入させる第3流入口が形成され、周りの空気が車室内に供給される車内用熱交換器と、
該第3流出口と該第1配管とを接続する第3配管と、
該第3流入口と該第1配管とを接続する第4配管と、
該第1配管内の該熱交換媒体と該第2配管の該熱交換媒体とに逆の熱量を付与可能なペルチェ素子と、
該第1配管内の該熱交換媒体を流通させる第1ポンプと、
該第2配管内の該熱交換媒体を流通させる第2ポンプと、
該第1配管と該第3配管との間に設けられた第1開閉弁と、
該第1配管と該第4配管との間に設けられた第2開閉弁と、
該ペルチェ素子と該第1開閉弁及び該第2開閉弁とを制御する制御部とを備え、
該制御部は、不使用時に、該第1流出口と該第1流入口とを連通させ、該第1流出口と該第3流入口とを不通とし、かつ該第3流出口と該第1流入口とを不通とするように該第1開閉弁及び該第2開閉弁を制御し、
使用時に、該第1流出口と該第3流入口とを連通させ、かつ該第3流出口と該第1流入口とを連通させるように該第1開閉弁及び該第2開閉弁を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記蓄熱装置は、外部に対して断熱されたハウジングと、該ハウジング内に設けられ、前記熱交換媒体を貯留可能であるとともに、該熱交換媒体を前記熱交換器との間で流通可能な貯留室と、該貯留室内に保持され、蓄熱材が充填された蓄熱体とを有し、
前記蓄熱体は、内部に前記蓄熱材を収容する蓄熱タンクと、該蓄熱タンクと一体的に設けられ、前記第1配管と連通して前記熱交換媒体を流通可能な流路が形成されたジャケットと、該ジャケットに固定され、伝熱材料で形成されて該流路内の該熱交換媒体と該蓄熱タンク内の該蓄熱材とに接触される伝熱材とを有している請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記流路は、前記第1配管の上流側と連通する第4流出口と、該第1配管の下流側と連通する第4流入口とを有し、
該第4流出口及び該第4流入口には、前記制御部によって制御される第3開閉弁が設けられ、
該制御部は、不使用時に、該第4流出口と該第4流入口とを連通させ、かつ該第1流出口と該第1流入口とを不通とするように該第3開閉弁を制御し、
使用時に、該第1流出口と該第1流入口とを連通させ、かつ該第4流出口と該第4流入口とを不通とするように該第3開閉弁を制御する請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記蓄熱タンクは個々の内部で前記蓄熱材を収容する凹部を有し、前記伝熱材は前記ジャケットから各該凹部内に延びている請求項2又は3記載の車両用空調装置。
【請求項5】
蓄熱材を有し、該蓄熱材から熱交換した熱交換媒体を流出させる第1流出口及び該熱交換媒体を流入させる第1流入口が形成され、外部に対して断熱された蓄熱装置と、
該第1流出口と該第1流入口とを接続する第1配管と、
周りの空気が車外に放出される車外用熱交換器と、
該熱交換媒体を流出させる第3流出口及び該熱交換媒体を流入させる第3流入口を有し、周りの空気が車室内に供給される車内用熱交換器と、
該第3流出口と該第1配管とを接続する第3配管と、
該第3流入口と該第1配管とを接続する第4配管と、
該第1配管内の該熱交換媒体と該車外用熱交換器とに逆の熱量を付与可能なペルチェ素子と、
該第1配管内の該熱交換媒体を流通させるポンプと、
該第1配管と該第3配管との間に設けられた第1開閉弁と、
該第1配管と該第4配管との間に設けられた第2開閉弁と、
該ペルチェ素子と該第1開閉弁及び該第2開閉弁とを制御する制御部とを備え、
該制御部は、不使用時に、該第1流出口と該第1流入口とを連通させ、該第1流出口と該第3流入口とを不通とし、かつ該第3流出口と該第1流入口とを不通とするように該第1開閉弁及び該第2開閉弁を制御し、
使用時に、該第1流出口と該第3流入口とを連通させ、かつ該第3流出口と該第1流入口とを連通させるように該第1開閉弁及び該第2開閉弁を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
前記蓄熱装置は、外部に対して断熱されたハウジングと、該ハウジング内に設けられ、前記熱交換媒体を貯留可能であるとともに、該熱交換媒体を前記熱交換器との間で流通可能な貯留室と、該貯留室内に保持され、蓄熱材が充填された蓄熱体とを有し、
前記蓄熱体は、内部に前記蓄熱材を収容する蓄熱タンクと、該蓄熱タンクと一体的に設けられ、前記配管と連通して前記熱交換媒体を流通可能な流路が形成されたジャケットと、該ジャケットに固定され、伝熱材料で形成されて該流路内の該熱交換媒体と該蓄熱タンク内の該蓄熱材とに接触される伝熱材とを有している請求項5記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記流路は、前記配管の上流側と連通する第4流出口と、該配管の下流側と連通する第4流入口とを有し、
該第4流出口及び該第4流入口には、前記制御部によって制御される第3開閉弁が設けられ、
該制御部は、不使用時に、該第4流出口と該第4流入口とを連通させ、かつ該第1流出口と該第1流入口とを不通とするように該第3開閉弁を制御し、
使用時に、該第1流出口と該第1流入口とを連通させ、かつ該第4流出口と該第4流入口とを不通とするように該第3開閉弁を制御する請求項6記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記蓄熱タンクは個々の内部で前記蓄熱材を収容する凹部を有し、前記伝熱材は前記ジャケットから各該凹部内に延びている請求項6又は7記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−260528(P2010−260528A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193570(P2009−193570)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】