説明

車両用空調装置

【課題】メンテナンス時にアウトレットを容易に脱着可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両に設けられた空調ユニットから送られる空気をインストルメントパネル1の近傍に導くダクト4と、このダクト4に連結され、インストルメントパネル1に設けられたアウトレット用開口に配置されてインストルメントパネル1の裏側に固定され、ダクト4を介して送られた前記空気を車室内に吹き出すアウトレット3と、を備えた車両用空調装置において、アウトレット3はフロントフレーム10を貫通するビス40によってインストルメントパネル1に固定するための締め付け座を4つ有し、そのうちの2つの締め付け座16A,16Bが平面視略U字形をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のインストルメントパネルには、空調ユニットから送られてくる空気を車室内に吹き出すためのアウトレットが設置されている。
アウトレットは、インストルメントパネルに形成された開口に嵌め込まれ車室内に臨んで配置されるフロントフレームと、このフロントフレームの吹出口に連なる筒状のバックフレームとを備えて構成され、インストルメントパネルの裏側から取り付けられている。そして、アウトレットのバックフレームはダクトを介して空調ユニットに連結されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−40767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アウトレットをインストルメントパネルにビスなどのネジ部材によって固定する場合、従来は、フロントフレームあるいはバックフレームにフランジ部を設け、このフランジ部に複数の貫通孔を設けて、この貫通孔に貫通させたビスをインストルメントパネルの裏面のボス部にねじ込んで固定している。
【0005】
しかしながら、この構成では、メンテナンス時等にアウトレットをインストルメントパネルから取り外すときには、総てのビスをインストルメントパネルのボス部から抜かなければアウトレットを取り外すことができず、作業効率が悪かった。特に、メンテナンス時には、作業者は車室内側からインストルメントパネルの裏側に手を入れての作業となるため、総てのビスを脱着するとなると、その作業負担が大きかった。
【0006】
そこで、この発明は、メンテナンス時のアウトレットの脱着が容易な車両用空調装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車両用空調装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、車両に設けられた空調ユニットから送られる空気をインストルメントパネル(例えば、後述する実施例におけるインストルメントパネル1)の近傍に導くダクト(例えば、後述する実施例におけるダクト4)と、このダクトに連結され、前記インストルメントパネルに設けられた開口(例えば、後述する実施例におけるアウトレット用開口6)に配置されて該インストルメントパネルの裏側に固定され、前記ダクトを介して送られた前記空気を車室内に吹き出すアウトレット(例えば、後述する実施例におけるアウトレット3)と、を備えた車両用空調装置において、前記アウトレットは該アウトレットを貫通する締結部材(例えば、後述する実施例におけるビス40)によって前記インストルメントパネルに固定するための締め付け座(例えば、後述する実施例における締め付け座15A,15B,16A,16B)を複数有し、前記締め付け座の少なくとも1つが平面視略U字形をなすことを特徴とする車両用空調装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記締結部材はネジ部材(例えば、後述する実施例におけるビス40)であり、前記締め付け座は前記インストルメントパネルの裏側から前記ネジ部材によって前記インストルメントパネルに締め付け固定されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記アウトレットは前記平面視略U字形をなす締め付け座を複数備え、この平面視略U字形をなす締め付け座の総てが同一方向を指向していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、平面視略U字形をなす締め付け座を締め付けている締結部材については完全に外さなくても緩めるだけでアウトレットをインストルメントパネルから水平移動させることができ、メンテナンス時にアウトレットの脱着が容易になる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、メンテナンス時にアウトレットを取り外す際に、車室内側からインストルメントパネルの裏側に手を回してネジ部材を回す作業となるが、平面視略U字形をなす締め付け座を締め付けているネジ部材については緩めるだけでよいので、作業負担が少なくて済み、メンテナンス時にアウトレットの脱着が容易になる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、平面視略U字形をなす締め付け座の総てが同一方向を指向しているので、アウトレットを容易に水平移動することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に係る車両用空調装置を備えた車両のインストルメントパネルの外観斜視図である。
【図2】グローブボックスを取り外して示すインストルメントパネルの外観斜視図である。
【図3】インストルメントパネルの裏面側から見たアウトレットおよびダクトの斜視図である。
【図4】アウトレット単体を正面側から見た外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明に係る車両用空調装置の実施例を図1から図4の図面を参照して説明する。
図1は、左ハンドル車両のインストルメントパネル1を車室内側から見た斜視図であり、インストルメントパネル1の助手席側(図1において右側)の下部にはグローブボックス2が設けられ、このグローブボックス2の上側に、空調空気を車室内に吹き出すためのアウトレット3が左右一対配置されている。
【0015】
図2は、インストルメントパネル1にアウトレット3および空調用のダクト4だけを装着した状態を車室内側から見た斜視図であり、図2において符号5は、インストルメントパネル1に形成されたグローブボックス取付用開口である。
インストルメントパネル1には、グローブボックス取付用開口5の上部に左右一対のアウトレット用開口6が設けられており、各アウトレット用開口6にそれぞれアウトレット3が装着されている。2つのアウトレット3は左右対称形をなし、基本的な構成は同じである。以下、図1および図2において左側に配置されたアウトレット3を代表として説明する。
【0016】
図4はアウトレット3を正面側から見た斜視図である。アウトレット3は、吹出口11を有するフロントフレーム10と、フロントフレーム10の背面に連結された筒状のバックフレーム30と、バックフレーム30の後端に連結されたダクト取付座31と、バックフレーム30の内部に回動可能に設置された水平ルーバー32および垂直ルーバー33と、垂直ルーバー33よりも後方のバックフレーム30内に設置されたシャッタ(図示略)を開閉するためのシャッタ開閉装置34等からなり、これらを1つのユニットとして組み付けられて構成されている。
【0017】
フロントフレーム10は、吹出口11を含むその周辺が他の部分よりも正面側に一段高く突出して意匠部12となっており、意匠部12には吹出口11に隣接して操作開口部13が形成されている。操作開口部13からはシャッタ開閉装置34の操作摘み35の一部が車室内側に若干突出しており、操作摘み35を回動することにより前記シャッタが回動され、バックフレーム内の空調空気の通路を開閉することができるように構成されている。
【0018】
フロントフレーム10において、意匠部12の後端外周縁には所定高さを有する周壁部14が連なっている。周壁部14は正面視略矩形をなし、周壁部14の後端四隅からは平板状の締め付け座15A,15B,16A,16Bが外方へ張り出すようにして設けられている。
図4において右側に配置された上下2つの締め付け座15A,15Bには円形のビス孔17が形成されている。一方、図4において左側に配置された上下2つの締め付け座16A,16Bには左端を開口させたビス孔18が形成されており、締め付け座16A,16Bはいずれも左側を開口させた略U字形をなしている。換言すると、正面視略U字形をなす締め付け座16A,16Bは同一方向を指向して設けられている。
【0019】
図3は、図2において左側に配置されたアウトレット3およびダクト4をインストルメントパネル1の裏面側から見た図である。インストルメントパネル1の裏面であってアウトレット用開口6の外側には、4つのアウトレット取付用のボス部7が後方に向かって突設されている。4つのボス部7はそれぞれ、アウトレット3の締め付け座15A,15B,16A,16Bに対応して配置されている。
【0020】
アウトレット3はインストルメントパネル1の裏面側から取り付けられている。詳述すると、アウトレット3の意匠部12をインストルメントパネル1の裏面側からアウトレット用開口6に嵌入し、アウトレット3の締め付け座15A,15B,16A,16Bを対応するインストルメントパネル1のボス部7に突き当て、ビス(ネジ部材、締結部材)20を締め付け座15A,15Bのビス孔17および締め付け座16A,16Bのビス孔18に貫通し、それぞれボス部7のねじ孔に締め込むことによって、締め付け座15A,15B,16A,16Bがインストルメントパネル1に締め付け固定され、アウトレット3がインストルメントパネル1に固定されている。
【0021】
さらに、インストルメントパネル1に固定されたアウトレット3のダクト取付座31に、ダクト4が嵌合固定されている。ダクト4は、ダクト取付座31に嵌合される嵌合部4aから下方に延び、さらに運転席側に水平に延びるとともに車体後方側へ延び、さらに再び車体前方側へ折り返すように屈曲形成されている。このダクト4は、図示しない別のダクトを介して、コンプレッサやコンデンサ等からなる空調ユニット(図示略)に連結されている。したがって、ダクト4は、空調ユニットから送られてくる空気をインストルメントパネル1の近傍に導くダクトと言うことができる。
【0022】
このように構成された車両用空調装置では、メンテナンス等においてアウトレット3を取り外す場合には、予めグローブボックス2をインストルメントパネル1から取り外し、グローブボックス取付用開口5を開放して、車室内側からインストルメントパネル1の裏面側の作業を行えるようにする。
そして、グローブボックス取付用開口5からインストルメントパネル1の裏面側に手を入れ、アウトレット3からダクト4の嵌合部4aを取り外す。
【0023】
次に、アウトレット3の締め付け座15A,15B,16A,16Bに装着されている4本のビス40を適宜に緩める。
次に、アウトレット3の締め付け座15A,15Bに係合している2本のビス40を、インストルメントパネル1のボス部7から完全に取り外す。締め付け座15A,15Bのビス孔17は丸孔であるので、このビス孔17を貫通するビス40がボス部7に取り付けられたままでは、アウトレット3をインストルメントパネル1から取り外すことができないからである。なお、締め付け座16A,16Bに係合している2本のビス40については、ボス部7から取り外す必要はなく、緩めるだけでよい。
【0024】
次に、アウトレット3の意匠部12がインストルメントパネル1のアウトレット用開口6との係合を解除できる程度に、アウトレット3を車体前方側に押し込み、さらにアウトレット3を図3において左方向に水平移動する。ここで、アウトレット3の締め付け座16A,16Bに装着されている2本のビス40は緩めただけであって、ボス部7に取り付けられたままであるが、締め付け座16A,16Bのビス孔18はどちらも正面視で左端(図3では裏面側から見ているので右端)が開放されているので、アウトレット3を図3において左方へ移動することで、ボス部7に取り付けられているビス40がビス孔18から抜け出ることが可能であり、ビス40と締め付け座16A,16Bとの係合を解除することができる。これにより、アウトレット3をインストルメントパネル1から取り外すことができる。
また、アウトレット3をインストルメントパネル1に再度取り付ける場合には、取り外す場合と逆の手順で行うことができる。
【0025】
以上説明するように、この実施例の車両用空調装置によれば、アウトレット3の平面視略U字形をなす締め付け座16A,16Bを締め付けているビス40については、インストルメントパネル1のボス部7から完全に外さなくても緩めるだけで、アウトレット3をインストルメントパネル1に対して水平移動し取り外すことができるので、メンテナンス時にアウトレットの取り外しが容易になる。また、アウトレット3を取り付ける場合も、締め付け座16A,16Bを締め付ける2本のビス40がボス部7に取り付けられた状態から始められるので、取り付け作業も容易になる。
【0026】
特に、メンテナンス時には、前述したように、車室内側からインストルメントパネル1のグローブボックス取付用開口5を介してインストルメントパネル1の裏面側に手をまわし、ビス40を回さなければならないので、4本総てのビス40をインストルメントパネル1のボス部7から取り外すのは作業負担が極めて大きくなるが、実施例の車両用空調装置の場合には、ボス部7から完全に取り外す必要があるのは2本のビス40だけであり、他の2本のビス40は緩めるだけで済むので、作業負担が少なくなる。
【0027】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、前述した実施例ではアウトレットに設けた複数の締め付け座の一部を平面視略U字形としたが、総ての締め付け座を平面視略U字形にしても構わない。この場合、U字形の指向方向は総て同じにする。また、平面視略U字形の締め付け座の数は2つに限るものではない。
【符号の説明】
【0028】
1 インストルメントパネル
3 アウトレット
4 ダクト
15A,15B,16A,16B 締め付け座
6 アウトレット用開口(開口)
40 ビス(ネジ部材、締結部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた空調ユニットから送られる空気をインストルメントパネルの近傍に導くダクトと、
このダクトに連結され、前記インストルメントパネルに設けられた開口に配置されて該インストルメントパネルの裏側に固定され、前記ダクトを介して送られた前記空気を車室内に吹き出すアウトレットと、
を備えた車両用空調装置において、
前記アウトレットは該アウトレットを貫通する締結部材によって前記インストルメントパネルに固定するための締め付け座を複数有し、前記締め付け座の少なくとも1つが平面視略U字形をなすことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記締結部材はネジ部材であり、前記締め付け座は前記インストルメントパネルの裏側から前記ネジ部材によって前記インストルメントパネルに締め付け固定されることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記アウトレットは前記平面視略U字形をなす締め付け座を複数備え、この平面視略U字形をなす締め付け座の総てが同一方向を指向していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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