説明

車両用空調装置

【課題】除霜運転に関する情報を報知することができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】除霜運転を実施していない場合には、着霜の度合い(着霜レベル)を示す着霜情報を出力するように制御装置40によって表示部37bが制御される。したがって乗員は、着霜情報によって着霜の度合いを認識することができる。また除霜運転を実施中の場合には、除霜運転が実施中であることを示す除霜中情報を出力するように制御装置40によって表示部37bが制御される。したがって乗員は、除霜中情報によって除霜運転を実施中であることを認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプサイクル装置を用いて車室内の暖房を行うとともに、室外熱交換器に付着した霜を除霜する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の車両用空調装置では、外気と熱交換するための室外熱交換器を備える。室外熱交換器において、外気温が低い場合などに着霜する場合があり、着霜すると外気から吸熱(熱交換)することができず、暖房能力が低下する。
【0003】
このような室外熱交換器の着霜状態を判断するために、外気温と、室外熱交換器における冷媒の蒸発温度との差を用いた技術が開示されている(たとえば特許文献1参照)。そして特許文献1に記載の技術によって着霜していると判断すると、室外熱交換器を除霜する除霜運転を実施し、ランプで除霜運転中であることを表示する技術が開示されている(たとえば特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53−119449号公報
【特許文献2】実開昭55−5002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の従来技術では、除霜運転中であることはランプによって報知されるが、除霜運転がいつ開始されるのかが乗員に報知されない。除霜運転がいつ開始されるかが乗員は不明であるので、乗員の気が付かないうちに除霜運転が実施されることがあり、空調能力の変化によって乗員に不快感を与えることがある。また乗員の気が付かないうちに除霜運転が実施されると、除霜運転中は空調を行うことができないので、たとえば窓曇りを除去する空調を実施することができず利便性が悪いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、除霜運転に関する情報を報知することができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、高圧の冷媒と外気との間で熱交換して冷媒を凝縮する室外熱交換器(25)を有するヒートポンプサイクル(20)と、
室外熱交換器における着霜の度合いを算出する着霜状態算出手段(42)と、
着霜の度合いを含む着霜に関する情報を、車室内に向けて出力する出力手段(37b)と、
ヒートポンプサイクルを構成する各部(23,26)の作動を制御して、室外熱交換器に付着した霜を溶かすための除霜運転を実施する制御手段(40)と、を含み、
制御手段は、
除霜運転を実施していない場合には、着霜状態算出手段によって算出された着霜の度合いを示す着霜情報を出力するように出力手段を制御し、
除霜運転を実施中の場合には、除霜運転が実施中であることを示す除霜中情報を出力するように出力手段を制御することを特徴とする車両用空調装置である。
【0009】
請求項1に記載の発明に従えば、除霜運転を実施していない場合には、着霜の度合いを示す着霜情報を出力するように制御手段によって出力手段が制御される。したがって乗員は、着霜情報によって着霜の度合いを認識することができる。着霜の度合いを認識することによって、乗員は着霜の度合いから除霜運転の開始時期をある程度予想することができる。したがって着霜状態によって自動的に除霜運転が開始された場合であっても、乗員に除霜運転が突然開始されたとの認識を与えることを防ぐことができる。また除霜運転を実施中の場合には、除霜運転が実施中であることを示す除霜中情報を出力するように制御手段によって出力手段が制御される。したがって乗員は、除霜中情報によって除霜運転を実施中であることを認識することができる。これによって乗員は、除霜運転によって空調能力が低下した場合であっても、故障などと判断することを防ぐことができる。このように本発明の車両用空調装置では、除霜運転に関する情報が出力されるので、乗員の利便性を向上することができる。
【0010】
また請求項2に記載の発明では、制御手段は、除霜運転中に、着霜の度合いを用いて、除霜運転によって除霜が終了するまでの時間である除霜終了時間を算出し、除霜運転を実施中の場合には、除霜中情報を出力するように出力手段を制御するとともに、除霜終了時間を出力するように出力手段を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明に従えば、除霜運転を実施中の場合には、除霜中情報を出力するように出力手段を制御するとともに、除霜終了時間を出力するように制御手段によって出力手段が制御される。したがって乗員は、除霜終了時間によって、除霜運転が終了するまでの時間を認識することができる。これによって乗員は、除霜運転によって空調能力が低下した場合であっても、除霜終了時間が経過後には空調能力が回復すると認識されるので、乗員に与える不快感を抑制することができる。
【0012】
さらに請求項3に記載の発明では、除霜運転の実施が必要な着霜の度合いであるか否かを判断する判断手段(43)をさらに含み、
制御手段は、除霜運転を実施していない場合であって、判断手段の判断に基づいて除霜運転の実施が必要なときには、除霜運転の実施が必要であることを示す除霜必要情報を出力するように出力手段を制御することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明に従えば、除霜運転を実施していない場合であって、判断手段の判断に基づいて除霜運転の実施が必要なときには、除霜必要情報を出力するように制御手段によって出力手段が制御される。したがって乗員は、除霜必要情報によって、除霜運転が必要なことを認識することができる。これによって着霜によって空調能力が低下した場合であっても、故障などと判断することを防ぐことができる。
【0014】
さらに請求項4に記載の発明では、除霜運転の開始を指示する開始情報を入力するための開始手段(37a)をさらに含み、
制御手段は、開始手段によって開始情報が入力されると、除霜運転を実施するように各部の作動を制御することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明に従えば、開始手段によって開始情報が入力されると、除霜運転を実施するように制御手段によって各部の作動が制御される。これによって乗員は、着霜の度合いに基づいて、希望するタイミングで除霜運転を開始することができる。たとえば着霜はしているが着霜の度合いが低い場合であっても、こまめに乗員に意思によって除霜運転を実施することによって、着霜量が多くなることを防止することができる。
【0016】
さらに請求項5に記載の発明では、除霜運転の停止を指示する停止情報を入力するための停止手段(37a)をさらに含み、
制御手段は、停止手段によって停止情報が入力されると、除霜運転を停止するように各部の作動を制御することを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明に従えば、停止手段によって停止情報が入力されると、除霜運転を停止するように制御手段によって各部の作動が制御される。これによって乗員は、除霜運転中であっても、希望するタイミングで除霜運転を停止することができる。たとえば除霜は完了していないが、着霜の度合いが低い場合であっても、乗員に意思によって除霜運転を停止することによって、ある程度回復した空調能力によって車室内を空調することができる。
【0018】
さらに請求項6に記載の発明では、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段(44)をさらに含み、
制御手段は、車両が停止している状態にて除霜運転を実施中の場合に、走行状態検出手段によって車両の走行開始が検出されると、除霜運転を停止するように各部の作動を制御することを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明に従えば、車両が停止している状態にて除霜運転を実施中の場合に、走行状態検出手段によって車両の走行開始が検出されると、除霜運転を停止するように制御手段によって各部の作動が制御される。これによって走行を開始すると、いわば自動的に除霜運転が停止される。したがって走行開始時に除霜運転によって空調能力が低下することが防止することができる。
【0020】
さらに請求項7に記載の発明では、外気温度を検出する外気温度検出手段(35)と、
室外熱交換器の出口部における冷媒温度を検出する冷媒温度検出手段(25a)と、をさらに含み、
着霜状態算出手段は、外気温度検出手段によって検出された外気温度と、冷媒温度検出手段によって検出された冷媒温度との温度差を用いて着霜の度合いを算出することを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明に従えば、外気温度と冷媒温度との温度差を用いて着霜の度合いが着霜状態算出手段によって算出される。したがって検出手段は、外乱の影響を抑えて、高精度に着霜の度合いを検出することができる。
【0022】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置10の全体構成を示す概略図である。
【図2】車両用空調装置10における制御構成を示すブロック図である。
【図3】除霜運転に関する制御装置40の処理を示すフローチャートである。
【図4】外気温度と冷媒温度との関係の一例を示すグラフである。
【図5】外気温度と第1閾値との関係の一例を示すグラフである。
【図6】外気温度と第2閾値との関係の一例を示すグラフである。
【図7】外気温度と第3閾値との関係の一例を示すグラフである。
【図8】温度差と着霜レベルとの関係の一例を示すグラフである。
【図9】除霜経過時間と冷媒温度との関係の一例を示すグラフである。
【図10】通常運転時に表示される画像の一例である。
【図11】着霜時に表示される画像の一例である。
【図12】除霜運転時に表示される画像の一例である。
【図13】除霜運転時に除霜終了時間を表示している画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図13を用いて説明する。図1は、第1実施形態の車両用空調装置10の全体構成を示す概略図である。図2は、車両用空調装置10における制御構成を示すブロック図である。本実施形態の車両用空調装置10は、ヒートポンプサイクル20および空調ユニット30を備え、図1に示す構成部品を用いて空調運転を行うものであり、例えばハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池車等に使用することができる。本車両用空調装置10は、少なくとも暖房運転、冷房運転および除霜運転(熱を与えて熱交換器に付着した霜をとかす運転)を行うように構成されている。図1に示すヒートポンプサイクル20は、本車両用空調装置10に適用されるヒートポンプサイクルの一例であり、その冷媒流れは、暖房運転時には後述する暖房運転サイクルとなり、冷房運転時には後述する冷房運転サイクルとなる。
【0025】
先ず、ヒートポンプサイクル20に関して説明する。ヒートポンプサイクル20は、サイクル内を流れる冷媒(例えば、二酸化炭素等の超臨界圧以上になる冷媒)の状態変化を利用することにより、冷房用の蒸発器21と暖房用の室内熱交換器22によって車室内間に対して冷房および暖房を行うことができる。
【0026】
図1に示すように、ヒートポンプサイクル20は、電動圧縮機23、室内熱交換器22、第1電動弁24、室外熱交換器25、蒸発器21、第2電動弁26およびアキュムレータ27を備えており、これらを配管により環状に接続することによりサイクルが形成されている。
【0027】
第1電動弁24の上流側および下流側の冷媒通路(第1分岐通路24c)には、第1電動弁24をバイパスする第1バイパス通路24aが接続されている。第1バイパス通路24aには、第1電動弁24と並列関係にある第1電磁弁24bが設けられている。また第2電動弁26の上流側および下流側の冷媒通路(第2分岐通路26c)には、第2電動弁26をバイパスする第2バイパス通路26aが接続されている。第2バイパス通路26aには、第2電動弁26と並列関係にある第2電磁弁26bが設けられている。
【0028】
第1電動弁24は、冷房運転サイクル時に蒸発器21に流入させる冷媒を減圧する膨張弁(他の減圧手段)であり、例えば冷媒通路の開口面積を調整自在にする電子制御弁で構成される。第2電磁弁26bは、第2バイパス通路26aを流れる冷媒を流通および遮断する開閉弁であり、冷房運転サイクル時に第2バイパス通路26aを閉鎖し、暖房運転サイクル時に第2バイパス通路26aを開放するように構成される。
【0029】
室外熱交換器25の出口側から延びる冷媒通路は、蒸発器21の入口側に接続される第1分岐通路24cと、蒸発器21をバイパスしてアキュムレータ27の吸入側に接続される第1バイパス通路24aとに分岐している。また、第1分岐通路24cは、蒸発器21の出口側からも延設され、アキュムレータ27の吸入側で第1バイパス通路24aに接続するようになっている。蒸発器21の入口側における第1分岐通路24cには、第1電動弁24が設けられている。第1バイパス通路24aには第1電磁弁24bが設けられている。また、室外熱交換器25の冷媒流出側には、冷媒温度センサ25aが設けられている。冷媒温度センサ25aは、室外熱交換器25の出口部における冷媒温度を検出する冷媒温度検出手段である。
【0030】
電動圧縮機23は、蓄電池である車載バッテリ(図示せず)からの給電によって駆動し、冷媒を高温高圧に圧縮して吐出する圧縮機であり、回転数制御が可能なように構成されている。電動圧縮機23は、インバータ23aにより周波数が調整された交流電圧が印加されてそのモータ23mの回転速度が制御される。インバータ23aは、車載バッテリから直流電源の供給を受け、制御装置40によって制御される。電動圧縮機23は、冷媒の圧縮容量を無段階に可変できる可変容量式の圧縮機でもある。アキュムレータ27は、電動圧縮機23に流入する前の冷媒を気液分離するタンクである。
【0031】
電動圧縮機23の出口には、電動圧縮機23によって吐出された高圧側冷媒の圧力を検出する吐出圧センサ23bが設けられている。吐出圧センサ23bが検出する信号は、制御装置40に入力される。また、制御装置40は、入力されたサイクルの高圧側の冷媒圧力から高圧側の冷媒温度を算出することができる。
【0032】
室内熱交換器22は、電動圧縮機23から吐出された冷媒が流入し、暖房運転サイクル時に高圧の冷媒と温風通路31aを流れる空気とが熱交換して、当該空気を加熱する加熱用熱交換器である。第2電動弁26は、暖房運転サイクル時に室内熱交換器22で冷却された冷媒を減圧する膨張弁(減圧手段)であり、例えば冷媒通路の開口面積を調整自在にする電子制御弁で構成される。第2電磁弁26bは、第2バイパス通路26aを流れる冷媒を流通および遮断する開閉弁であり、暖房運転サイクル時に第2バイパス通路26aを閉鎖し、冷房運転サイクル時に第2バイパス通路26aを開放するように構成される。
【0033】
室外熱交換器25は、車両の車室外に配置されており、室外器用送風機28により強制的に送風される外気と冷媒とを熱交換する熱交換器である。室外熱交換器25では、暖房運転サイクル時に第2電動弁26で減圧された冷媒が流入して外気から吸熱し、冷房運転サイクル時に高圧の冷媒が放熱するようになる。したがって室外熱交換器25は、室内熱交換器22を流下した冷媒を外気との間で熱交換して凝縮する熱交換器である。
【0034】
蒸発器21では、暖房運転サイクル時に冷媒が流れないようになっており、冷房サイクル運転時に内部を流れる冷媒の吸熱作用によって車室内へ送風される空気を冷却するようになる。
【0035】
暖房運転サイクル時には、第1電磁弁24bが開、第2電磁弁26bが閉、第1電動弁24が0パルス制御されて閉じられ、第2電動弁26が要求される減圧量に制御される。これにより、ヒートポンプサイクル20における暖房運転サイクルの冷媒経路は、順に、アキュムレータ27、電動圧縮機23、室内熱交換器22、第2電動弁26、室外熱交換器25、第1電磁弁24b、アキュムレータ27となる(図1の破線の矢印参照)。
【0036】
冷房運転サイクル時には、第1電磁弁24bが閉、第2電磁弁26bが開、第2電動弁26が0パルス制御されて閉じられ、第1電動弁24が要求される減圧量に制御される。これにより、ヒートポンプサイクル20における冷房運転サイクルの冷媒経路は、順に、アキュムレータ27、電動圧縮機23、室内熱交換器22、第2電磁弁26b、室外熱交換器25、第1電動弁24、蒸発器21、アキュムレータ27となる(図1の一点鎖線の矢印参照)。
【0037】
次に、空調ユニット30に関して説明する。空調ユニット30は、車室内に空調風を提供するためのユニットで、空調ケース31を外郭とし、例えば、車室内前方のインストルメントパネルの裏側に設けられている。空調ケース31は、内部に空気の通風路を備え、一方側に空気取入口である外気吸入口32aおよび内気吸入口32bが形成され、他方側に車室内に吹き出される空気調節された空気(以下、空調空気とする)が通過するフェイス吹出し開口(図示せず)、フット吹出し開口(図示せず)、デフ吹出し開口(図示せず)が少なくとも形成されている。空調ケース31は、複数のケース部材からなり、その材質は例えばポリプロピレン等の樹脂成形品である。
【0038】
フェイス吹出し開口は、車室内の乗員の上半身に向かって吹き出される空調空気が通過する開口である。フット吹出し開口は、車室内の乗員の足元に吹き出される空調空気が通過する開口である。デフ吹出し開口は、車両のフロントガラスの内面に吹き出される空調空気が通過する開口である。これらの各開口は、それぞれ吹出しダクト(図示せず)を介して車室内空間に接続されており、吹出し開口切替えドア(図示せず)によって吹出しモードに対応してそれぞれ開閉される。
【0039】
内気吸入口32bと外気吸入口32aとは、内外気設定ドア32によって、空気取入れモードに対応してその開放、閉鎖が切替え自在、または開放度合いが調整自在に行われる。すなわち、内外気設定ドア32は、そのドア本体がサーボモータ32m等のアクチュエータで角度調整されることによって、外気および内気の少なくとも一方を空気取入口から空調ケース31内に取り入れることができるようになっており、内気循環モードと、外気導入モードと、これらの中間のモード(内気循環および外気導入の両方を有するモード)とを設定することができる。
【0040】
空調ケース31は、一方側に、内外気設定ドア32を備える内外気切替箱32cと、その吸込部が外気吸入口32aと内気吸入口32bに接続されている空調用送風機33と、を備えている。例えば、冬季等の暖房時には、外気導入モードを行うことにより外気吸入口32aから湿度の低い外気を導入し、通風路を通して空調してフロントガラスの内面に吹き出すことにより防曇効果を高めることができる。また、内気循環モードを行うことにより内気吸入口32bから温度の高い内気を導入し、通風路を通して空調し乗員の足元に向けて吹き出すことにより暖房負荷を軽減することができる。
【0041】
空調用送風機33は、遠心多翼ファン33a(例えばシロッコファン)とこれを駆動するモータ33mとからなり、遠心多翼ファン33aの周囲はスクロールケーシング33cで囲まれている。空調用送風機33の吹出口は、遠心多翼ファン33aの遠心方向に延びるように設けられた通風路に接続されている。この通風路は、送風空気の上流側から順に、冷却用熱交換器である蒸発器21が横断する通路と、蒸発器21の送風空気下流側に配置される冷風通路31bおよび温風通路31aと、冷風通路31bと温風通路31aとを流れてきた空気が混合される空気混合空間部31cと、からなっている。空調用送風機33よりも送風空気の下流側における空調ケース31内には、上流側に蒸発器21が配置され、蒸発器21よりも下流に室内熱交換器22およびエアミックスドア34が配置されている。
【0042】
蒸発器21は、空調用送風機33直後の通路全体を横断するように配置されており、空調用送風機33から吹き出された空気の全部が通過するようになっている。蒸発器21は、冷房運転時や除霜運転時において内部を流れる冷媒の吸熱作用によって冷風通路31bに流入する手前の送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。空気が通過する蒸発器21の出口部(蒸発器21の下流側部位)には、蒸発器21によって冷却された空気の温度を検出する蒸発器後温度センサ21aが設けられている。蒸発器後温度センサ21aによって検出された信号は制御装置40に入力される。
【0043】
温風通路31aには室内熱交換器22が配置されており、温風通路31aは、エアミックスドア34によって開放および閉鎖されるようになっている。エアミックスドア34は、空気取入口から取り入れた空気のうち、室内熱交換器22を通過させる空気(温風)の風量を調整する風量調整手段である。蒸発器21を通過した空気は、エアミックスドア34によって、室内熱交換器22を通る空気と室内熱交換器22を迂回する空気とに風量比率が自在に分けられるようになっている。
【0044】
エアミックスドア34は、アクチュエータであるサーボモータ34mによりそのドア本体位置を変化させることで、温風通路31aおよび冷風通路31bのそれぞれの一部または全部を塞ぐことができる。そして、エアミックスドア34による温風通路31aの開度は、室内熱交換器22を通過できる空気の通風路が開放される割合のことであり、0から100%の範囲で調整可能になっている。また、エアミックスドア34による冷風通路31bの開度は、温風通路31aの開度に反比例して変化するようになっており、これも0から100%の範囲で調整可能になっている。
【0045】
室内熱交換器22は、電動圧縮機23から吐出された冷媒が流入し、暖房運転サイクル時に内部を流れる冷媒の放熱作用によって温風通路31aを流れる送風空気を加熱する加熱用熱交換器として機能する。外気温度センサ35は、外気温度を検出する外気温度検出手段である。内気温度センサ36は、車室内の空気温度を検出する内気温度検出手段である。
【0046】
コントロールパネル37は、操作部37aと表示部37bとを備える。操作部37aは、たとえば表示部37bと一体になったタッチスイッチ、もしくはメカニカルなスイッチ等によって構成され、各種入力に使用される。操作部37aによって入力された信号は、制御装置40に与えられる。操作部37aを用いて、たとえば吹出モードの変更、ならびに暖房、冷房および除霜などの運転モードの変更を入力することが可能である。操作部37aは、除霜運転の開始を指示する開始情報を入力するための開始手段としての機能を有する。また操作部37aは、除霜運転の停止を指示する停止情報を入力するための停止手段としての機能を有する。
【0047】
表示部37bは、着霜レベルを含む着霜に関する情報を、車室内に向けて出力する出力手段であって、具体的には情報を視覚的にユーザに報知する。表示部37bは、たとえば液晶ディスプレイによって構成される。表示部37bは、制御装置40から与えられる各種の情報を画面に表示する。表示部37bは、たとえば現在設定される吹出モードおよび運転モードなどの情報を表示する。また表示部37bは、たとえば着霜レベル、除霜運転中であるか否か、および除霜運転が終了するまでの時間(除霜終了時間)など着霜に関する情報を表示する。
【0048】
制御装置40は、図2に示すように、車室内の空調および室外熱交換器25の着霜をとかす除霜運転を制御する制御手段である。制御装置40は、各運転状態に応じて、ヒートポンプサイクル20を構成する各部品の作動、室外器用送風機28の作動、内外気設定ドア32の作動およびエアミックスドア34の作動等を制御する。制御装置40は、マイクロコンピュータ(図示せず)、入力回路(図示せず)、出力回路(図示せず)、除霜時間算出部41、着霜状態算出部42、除霜運転判断部43、走行状態検出部44、および表示制御部45を含んで構成されている。
【0049】
入力回路には、車室内前面に設けられたコントロールパネル37上の操作部37aからの信号、外気温度センサ35、冷媒温度センサ25a、吐出圧センサ23b、蒸発器後温度センサ21aおよび内気温度センサ36等の信号が入力される。マイクロコンピュータは、ROM(読み込み専用記憶装置)、RAM(読み込み書き込み可能記憶装置)等のメモリおよびCPU(中央演算装置)等から構成されており、制御対象である各部品の適切な作動状態を演算するための各種プログラムを有している。マイクロコンピュータは、入力回路に入力された各種信号と各種プログラムとによって演算を行い、演算結果を出力回路に出力する。出力回路は、インバータ23a、第1電動弁24、第1電磁弁24b、第2電動弁26、第2電磁弁26b、室外器用送風機28のモータ28m、内外気設定ドア32のサーボモータ32m、空調用送風機33のモータ33m、エアミックスドア34のサーボモータ34m等の各種アクチュエータ、およびコントロールパネル37上の表示部37bに演算結果に基づいた出力信号を送る。
【0050】
着霜状態算出部42は、着霜状態算出手段であって、外気温度および室外熱交換器25の冷媒温度等を用いて着霜の度合い(以下、「着霜レベル」ともいう)を算出し、算出した着霜レベルをマイクロコンピュータに送信するように構成されている。着霜の度合いは、室外熱交換器25における着霜量の多寡と同義である。
【0051】
除霜運転判断部43は、除霜運転の実施が必要な着霜の度合いであるか否かを判断する判断手段であり、着霜レベルに基づいて当該判断を行い、当該判断結果をマイクロコンピュータに送信するように構成されている。
【0052】
除霜時間算出部41は、除霜運転中に、着霜の度合いを用いて、除霜運転によって除霜が終了するまでの時間である除霜終了時間を算出する算出手段である。除霜時間算出部41は、算出した除霜終了時間をマイクロコンピュータに送信するように構成されている。
【0053】
表示制御部45は、表示部37bに表示される画像を制御する。表示制御部45は、マイクロコンピュータから与えられる情報に基づいて、所定の画像を生成する。また表示制御部45は、生成する画像を画面に表示すべきタイミングおよび位置を制御する。
【0054】
走行状態検出部44は、たとえば車両の車速およびイグニッションスイッチ(図示せず)のスイッチング態様を検出することによって、車両の走行状態を検出する。ここで制御装置40に情報を与える各種センサには、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段(図示せず)を含む。走行状態検出部44は、検出した情報をマイクロコンピュータに送信するように構成されている。ここでイグニッションスイッチのスイッチング態様とは、車両のイグニッションのON/OFFのスイッチング態様に関する情報である。
【0055】
次に、上記構成に係る車両用空調装置10の各運転モード(冷房、暖房、除霜)の作動を説明する。コントロールパネル37の操作部37aにおけるエアコンスイッチがON状態のとき、制御装置40は電動圧縮機23を起動し、そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべき運転モードを冷房運転と判定すると、第2電磁弁26bを開状態、第1電磁弁24bおよび第2電動弁26を閉状態にするとともに、第1電動弁24の開度を所望の冷房能力が得られる減圧量になるように制御する。さらに制御装置40は、冷房運転であるので吹出しモードがフェイス吹出しとなるように吹出し開口切替えドアを制御する。
【0056】
冷房運転時の冷媒の流れは、前述のように図1の一点鎖線矢印で示した流れであり、電動圧縮機23から吐出された高温高圧のガス冷媒は室内熱交換器22に流入するが、室内熱交換器22を通過する送風量がないため、室内熱交換器22での放熱量は少ない。そして冷媒は、第2バイパス通路26aを通って室外熱交換器25に流入し、室外熱交換器25内を通るときに室外器用送風機28により送風された空気に熱を奪われて冷却され霧状冷媒となる。その後、霧状冷媒は、第1バイパス通路24aに流れ、第1電動弁24で減圧されて蒸発器21に流入し、空調用送風機33によって空調ケース31内の通風路を流れる送風空気から吸熱して蒸発器21内で蒸発する。そして、冷媒はアキュムレータ27で気液分離された後、電動圧縮機23に吸入される。蒸発器21で吸熱され冷却された冷風はさらに通風路を進んで主にフェイス吹出し開口から乗員の上半身に向けて吹き出されて車室内を冷房する。
【0057】
次に、暖房運転が行われた場合の冷媒の流れを説明する。制御装置40はコントロールパネル37の操作部37aにおけるエアコンスイッチがON状態のとき、電動圧縮機23を起動する。そして乗員が設定した温度と各種センサから受信した信号とから運転すべきモードを暖房運転と判定すると、第1電磁弁24bを開状態、第2電磁弁26bおよび第1電動弁24を閉状態にするとともに、第2電動弁26の開度を所望の減圧量になるように制御する。さらに制御装置40は、暖房運転時であるので吹出しモードが設定温度に応じてフット吹出し、またはデフ吹出しとなるように吹出し開口切替えドアを制御する。
【0058】
暖房運転時の冷媒の流れは、前述のように図1の破線矢印で示した流れであり、電動圧縮機23から吐出された高温高圧のガス冷媒は、室内熱交換器22に流入し室内熱交換器22内を通るときに温風通路31aを通る送風空気に熱を奪われて冷却され放熱する。そして冷媒は、第2電動弁26に流入し、第2電動弁26によって減圧される。第2電動弁26で減圧された冷媒は室外熱交換器25に流入し、室外熱交換器25内を通るときに室外器用送風機28により送風された空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器25で蒸発したガス冷媒は第1バイパス通路24aに流れ、第1電磁弁24bを通りアキュムレータ27で気液分離された後、電動圧縮機23に吸入される。
【0059】
暖房運転時に空調ケース31内に取り込まれた低温の空気(例えば冬期の外気)は、蒸発器21を通過した後、エアミックスドア34によって温風通路31aを流れ、室内熱交換器22によって加熱され温風となる。そして、暖房時にデフ吹出しモードが行われる場合は、この温風は室内熱交換器22を通過した後、吹出し開口切替えドアによって開放されたデフ吹出し開口を通ってフロントウィンドウの内面に向けて吹き出される。また、暖房時にフット吹出しモードが行われる場合は、この温風は室内熱交換器22を通過した後、吹出し開口切替えドアによって開放されたフット吹出し開口を通って乗員の足元に向けて吹き出される。
【0060】
また、暖房サイクル運転時のバイレベルモードが行われる場合は、空調ケース31内に取り込まれた低温の空気はエアミックスドア34によって、冷風通路31bおよび温風通路31aのそれぞれを流れる空気に適切な風量比率で分けられることになる。そして、温風通路31aを流れる低温の空気は、室内熱交換器22によって加熱され、空気混合空間部31cで冷風通路31bを流れてきた低温の空気と混ざり合って温度調節され、フット吹出し開口を通って乗員の足元に向けて吹き出される。他方、冷風通路31bを流れる低温の空気は、室内熱交換器22を通らないため加熱されることなく、低温のまま空気混合空間部31cで温風通路31aを流れてきた温風と混ざり合って温度調節され、フェイス吹出し開口を通って乗員の上半身に向けて吹き出される。このようにして、乗員の上半身と足元とに適切な温度差(例えば10〜15℃)のある空気が吹き出されるので、乗員に対し頭寒足熱(足元が暖かく、頭部付近が涼しい)の空調を提供することができる。
【0061】
次に除霜運転に関して説明する。除霜運転は、第1除霜運転と第2除霜運転との2つの除霜モードがある。2つの除霜モードは、乗員の設定、乗員の操作などによって適宜選択される。
【0062】
先ず、第1除霜運転に関して説明する。第1除霜運転は、ヒートポンプサイクル20における冷媒の流れは前述の暖房運転時と同じ(暖房運転サイクル)になるように、ヒートポンプサイクル20の各部の作動を制御する。さらに、制御装置40は、第1除霜運転においては室外器用送風機28を停止し、外気導入モードに設定し、空調用送風機33を低速運転して送風量を低減し、エアミックスドア34の開度を所望の暖房能力が得られるように制御する。
【0063】
これにより、ヒートポンプサイクル20内の冷媒は、室内熱交換器22で温風通路31aを流れる空気と熱交換して放熱し、暖房風を提供する。そして、室外熱交換器25では室外器用送風機28が停止しているため、当該冷媒と周囲空気との積極的な熱交換が行われず、当該冷媒の熱によって室外熱交換器25の表面が暖められ、付着していた霜がとけるようになる。また、このときのヒートポンプサイクル20の挙動は、電動圧縮機23の仕事量は室内熱交換器22での放熱と室外熱交換器25での放熱とに使われるようになる。したがって、第1除霜運転では、暖房空調を提供しつつ、室外熱交換器25の着霜を除去することができる。
【0064】
次に、第2除霜運転に関して説明する。制御装置40は、第2除霜運転時には、ヒートポンプサイクル20における冷媒の流れは前述の冷房運転時と同じ(冷房運転サイクル)になるように、ヒートポンプサイクル20の各部の作動を制御する。さらに、制御装置40は、室外器用送風機28を停止し、内気循環モードまたは中間のモード(内気循環および外気導入の両方を有するモード)に設定し、空調用送風機33を高速運転して送風量を増加し、エアミックスドア34の開度を閉状態または温風通路31aを絞る方向に制御する。
【0065】
これにより、ヒートポンプサイクル20内の冷媒は、室内熱交換器22で周囲空気との積極的な熱交換が行われず、放熱しない。そして、室外熱交換器25では室外器用送風機28が停止しているため、当該冷媒と周囲空気との積極的な熱交換が行われず、積極的な放熱が行われないが、当該冷媒の熱によって室外熱交換器25の表面が暖められ、付着していた霜がとけるようになる。さらに、蒸発器21では、第1電動弁24で減圧された冷媒が空調用送風機33によって送風された内気と熱交換し、内気から吸熱するようになる。このときのヒートポンプサイクル20の挙動は、通常の超臨界サイクルを示すようになる。したがって、除霜運転時には、車両の余熱によって暖められた内気を空調ケース31内に多く取り入れ、蒸発器21で内気から積極的に吸熱して熱回収を行うことができる。
【0066】
次に、本車両用空調装置10の作動について図3を用いて説明する。図3は、除霜運転に関する制御装置40の処理を示すフローチャートである。本フローは、イグニッションがオンの状態で実行される。
【0067】
フローが開始されると、ステップS1では、着霜レベルを算出し、ステップS2に移る。着霜レベルの算出は、前述のように着霜状態算出部42によって実施され、外気温度と冷媒温度との差を用いて着霜レベルを算出する。
【0068】
ステップS2では、着霜レベルに基づいて、着霜の有無を判断し、着霜している場合には、ステップS3に移り、着霜していない場合には、ステップS1に戻る。ステップS3では、着霜しているので、着霜レベルを示す着霜情報を表示部37bによって表示するように制御し、ステップS4に移る。これによって表示部37bには、着霜レベルが表示される。着霜レベルが、たとえば最大レベルのとき、最大レベルであることを示す情報(除霜必要情報)が表示される。
【0069】
ステップS4では、除霜運転が許可されたか否かを判断し、除霜運転が許可された場合には、ステップS5に移り、許可されていない場合には、ステップS3に戻る。除霜運転が許可されたか否かは、除霜運転判断部43によって、たとえば着霜レベルが予め設定される最大レベルに達した場合に、自動的に除霜運転の実施が許可されているモード(自動除霜モード)に設定されており、着霜レベルが最大レベルに達したときである。この場合には、除霜運転が許可される。また、乗員が操作部37aを操作して開始情報が入力された場合である。この場合も、除霜運転が許可される。またたとえば、乗車前の車室内空調であるプレ空調を行ったとき、着霜している場合である。したがってプレ空調時に着霜している場合には、除霜運転が許可される。
【0070】
ステップS5では、除霜運転が許可されたので、除霜運転を実施するように各部を制御し、ステップS6に移る。ステップS6では、除霜運転中であるので、除霜運転中であることを示す除霜運転状態(除霜中情報)を表示するように、表示部37bを制御し、ステップS7に移る。除霜中情報には、除霜運転中であることを示す情報、および着霜レベルを示す着霜情報を含む。これによって乗員は、除霜運転中であること、また除霜運転によって着霜レベルの変化を認識することができる。
【0071】
ステップS7では、除霜時間算出部41によって、除霜運転によって除霜が終了するまでの時間である除霜終了時間を算出し、ステップS8に移る。ステップS8では、算出した除霜終了時間を表示するように表示部37bを制御し、ステップS9に移る。
【0072】
ステップS9では、除霜運転判断部43によって、除霜終了条件が成立したか否かを判断し、成立した場合には、ステップS10に移り、成立していない場合には、ステップS6に戻り除霜運転を継続する。除霜終了条件は、たとえば着霜レベルが予め設定される除霜終了レベルまで低下したことが条件である。また除霜終了条件は、乗員が操作部37aを操作して停止情報が入力されたことが条件である。また除霜終了条件は、車両が停止している状態から、走行状態検出部44によって車両の走行開始が検出されたことが条件である。除霜終了条件に、たとえば外気温度条件など、他にも条件を考慮して判断するようにしてもよい。ステップS10では、除霜終了条件が成立したので、除霜運転を停止するように各部を制御し、本フローを終了する。
【0073】
このように図3に示すフローでは、除霜運転前は、ステップS3にて着霜レベルが表示され、除霜運転中は、ステップS6にて除霜運転状態およびステップS8にて除霜終了時間が表示される。したがって乗員は、表示部37bに表示される情報に基づいて、除霜開始および除霜停止の判断をすることができる。
【0074】
次に、ステップS1における着霜レベルの算出に関して図4〜図8を用いて説明する。図4は、現在の外気温度と室外熱交換器25の出口部における冷媒温度との関係の一例を示すグラフである。図4における横軸は外気温度を示し、縦軸は冷媒温度を示し、破線の斜線は室外熱交換器25の蒸発温度変化線であり、外気条件により変化する。また図4における縦線Gは、除霜運転の臨界線であり、外気温度がある閾値(例えば12℃)以上になったときは、室外熱交換器25の冷媒温度の如何に拘らず除霜運転を行わないものとする。冷媒温度が、レベル1の斜線で示される温度より低くなった場合に、着霜と判断されるが、斜線の判定温度条件をレベル2およびレベル3と離散的に定めることで、着霜の進行状況をレベルとして判定する。図4に示す着霜レベルは、「レベル1」から「レベル3」のように数字が大きくなるにつれて、着霜量が多くなることを示す。したがって、同じ外気温度でも、冷媒温度が小さい場合には、温度差が大きくなり、着霜量が多くなる。このような図4に示すようなモデルに基づいて、着霜レベルを算出する。
【0075】
次に、具体的な着霜レベルの算出方法に関して説明する。図5は、外気温度と第1閾値との関係の一例を示すグラフである。図6は、外気温度と第2閾値との関係の一例を示すグラフである。図7は、外気温度と第3閾値との関係の一例を示すグラフである。図8は、温度差と着霜レベルとの関係の一例を示すグラフである。前述の図4に示したように、着霜レベルは、同じ外気温度であっても、冷媒温度との温度差によって異なる。したがって、先ず、外気温度に基づいて、レベル分けのための3つの閾値を図5〜図7を用いて設定する。3つの閾値が、図4に示す3本の斜線にそれぞれ対応する。たとえば、外気温度が−10度のときは、図5〜図7を用いて、第1閾値が3度、第2閾値が5度、第3閾値が8度に設定される。
【0076】
このように設定された閾値と温度差とを用いて、図8に示すように着霜レベルを決定する。したがって温度差が第1閾値以上第2閾値未満のときは、着霜レベルがレベル1となり、温度差が第2閾値以上第3閾値未満のときは、着霜レベルがレベル2となり、温度差が第3閾値以上のときは、着霜レベルがレベル3となる。たとえば外気温度が−10度のとき、温度差が3度以上5度未満の時は、レベル1となり、温度差が5度以上8度未満のときはレベル2になり、温度差が8度以上のときはレベル3になる。
【0077】
このように着霜状態算出部42は、外気温と、外気温度と冷媒温度との温度差とを用いて、着霜レベルを決定している。また図4〜図8に示す例では、3段階でレベル分けしているが、3段階に限るものではなく、2段階以上であればよい。
【0078】
次に、ステップS7における着霜終了時間の算出に関して図9を用いて説明する。図9は、除霜経過時間と冷媒温度との関係の一例を示すグラフである。図9における横軸は除霜開始時を0として場合の除霜経過時間を示し、縦軸は冷媒温度を示す。また除霜運転を終了する除霜終了条件として、冷媒温度が予め設定される除霜終了温度(例えば5℃)を定めておく。したがって除霜運転によって除霜が進み、冷媒温度が除霜終了温度を超えると除霜運転を終了する。
【0079】
このような場合、除霜終了時間を算出するため、除霜経過時間と、その時の変化分、すなわち傾きを算出し、現時刻を起点とした、傾きのn回平均(例えばn=4、ΔT=0.25sec)と、除霜終了温度とにより、除霜終了までの到達時間を算出する。これによって除霜時間算出部41は、現在時点から除霜が終了する時点までの除霜終了時間を算出することができる。
【0080】
次に、表示部37bに表示される画像の例に関して、図10〜図13を用いて説明する。図10は、通常運転時に表示される画像の一例である。図10に示すように、通常運転(たとえば暖房運転および冷房運転)時、設定温度、風量、吹出モードに関する情報が表示される。
【0081】
図11は、着霜時に表示される画像の一例である。図11に示すように、着霜時には、通常時とは設定温度の表示方法が異なり、設定温度を点滅表示(たとえば0.5Hz)させる。したがって図11に示す画像が、ステップS3にて表示される画像の一例である。図11に示す例では、たとえば着霜レベルに応じて、点滅スピードを変更してもよいし、表示色を変更してもよい。また着霜レベルに応じて、他の表示領域に別の画像、たとえば「☆」などを表示し、その表示個数によって着霜レベルを表示してもよい。
【0082】
図12は、除霜運転時に表示される画像の一例である。図12に示すように、除霜運転時には、通常運転時とは表示方法が異なり、設定温度以外の画像を非表示として、さらに設定温度を着霜時よりも早く点滅表示(たとえば1Hz)させる。したがって図12に示す画像が、ステップS6にて表示される画像の一例である。図12に示す例では、たとえば非表示領域に「除霜運転中」など除霜運転中であることを明確に示す情報を表示してもよい。また除霜運転中であることを専用のマークを用いて表示してもよい。
【0083】
図13は、除霜運転時に除霜終了時間を表示している画像の一例である。図13では、時間経過に伴う3枚の画像を1部重ねて、仮想的に表示している。図13に示すように、除霜運転時であって、除霜終了時間を表示するときには、通常運転時とは表示方法が異なり、設定温度の表示領域に除霜終了時間を表示し、他の画像を非表示とする。したがって図13に示す画像が、ステップS8にて表示される画像の一例である。図13に示す例では、たとえば非表示領域に「除霜終了カウント中」など除霜カウント中であることを明確に示す情報を表示してもよい。また現在時刻に除霜終了時間を加算した、除霜終了時刻を表示してもよい。
【0084】
以上説明したように本実施形態の車両用空調装置10では、除霜運転を実施していない場合には、着霜の度合い(着霜レベル)を示す着霜情報を出力するように制御装置40によって表示部37bが制御される(図3のステップS3参照)。したがって乗員は、着霜情報によって着霜の度合いを認識することができる。着霜の度合いを認識することによって、乗員は着霜の度合いから除霜運転の開始時期をある程度予想することができる。したがって着霜状態によって自動的に除霜運転が開始された場合であっても、乗員に除霜運転が突然開始されたとの認識を与えることを防ぐことができる。
【0085】
また除霜運転を実施中の場合には、除霜運転が実施中であることを示す除霜中情報を出力するように制御装置40によって表示部37bが制御される(図3のステップS6参照)。したがって乗員は、除霜中情報によって除霜運転を実施中であることを認識することができる。これによって乗員は、除霜運転によって空調能力が低下した場合であっても、故障などと判断することを防ぐことができる。このように本実施形態の車両用空調装置10では、除霜運転に関する情報が出力されるので、乗員の利便性を向上することができる。
【0086】
また本実施形態では、除霜運転を実施中の場合には、除霜中情報を出力するように表示部37bを制御するとともに、除霜終了時間を出力するように制御装置40によって表示部37bが制御される(図3のステップS8参照)。したがって乗員は、除霜終了時間によって、除霜運転が終了するまでの時間を認識することができる。これによって乗員は、除霜運転によって空調能力が低下した場合であっても、除霜終了時間が経過後には空調能力が回復すると認識されるので、乗員に与える不快感を抑制することができる。
【0087】
さらに本実施形態では、除霜運転を実施していない場合であって、除霜運転判断部43の判断に基づいて除霜運転の実施が必要なときには、除霜必要情報を出力するように制御装置40によって表示部37bが制御される(図3のステップS3)。したがって乗員は、除霜必要情報によって、除霜運転が必要なことを認識することができる。これによって着霜によって空調能力が低下した場合であっても、故障などと判断することを防ぐことができる。
【0088】
また本実施形態では、開始手段である操作部37aによって開始情報が入力されると、除霜運転を実施するように制御装置40によって各部の作動が制御される(図3のステップS4参照)。これによって乗員は、着霜の度合いに基づいて、希望するタイミングで除霜運転を開始することができる。たとえば着霜はしているが着霜の度合いが低い場合であっても、こまめに乗員に意思によって除霜運転を実施することによって、着霜量が多くなることを防止することができる。
【0089】
さらに本実施形態では、停止手段である操作部37aによって停止情報が入力されると、除霜運転を停止するように制御装置40によって各部の作動が制御される(図3のステップS9参照)。これによって乗員は、除霜運転中であっても、希望するタイミングで除霜運転を停止することができる。たとえば除霜は完了していないが、着霜の度合いが低い場合であっても、乗員に意思によって除霜運転を停止することによって、ある程度回復した空調能力によって車室内を空調することができる。
【0090】
また本実施形態では、車両が停止している状態にて除霜運転を実施中の場合に、走行状態検出部44によって車両の走行開始が検出されると、除霜運転を停止するように制御装置40によって各部の作動が制御される(図3のステップS9参照)。これによって走行を開始すると、いわば自動的に除霜運転が停止される。したがって走行開始時に除霜運転によって空調能力が低下することが防止することができる。
【0091】
さらに本実施形態では、外気温度と冷媒温度との温度差を用いて着霜の度合いが着霜状態算出部42によって検出される。したがって着霜状態算出部42は、外乱の影響を抑えて、高精度に着霜の度合いを検出することができる。
【0092】
したがって本実施形態では、車両用空調装置10の動作状態を、運転中の乗員に明確に知らせる事により、着霜に伴う空調能力低下による乗員の不快感と、故障等に対する乗員の不安感などを取り除くことができる。また着霜の進行状況を視覚的に捉えることができ、ユーザ操作により任意に除霜開始を行えること、かつ、除霜完了までの残り時間が見えることで、たとえば乗員の判断により、信号待ちなどのちょっとした時間などを利用し、都合良いタイミングで、積極的な除霜開始の判断を促すことが出来る。また、除霜終了時間が見えることで、乗員に待つ気構えを誘発する効果があり、結果として確実な除霜が行える。
【0093】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0094】
前述の第1実施形態では、着霜の度合いを示す着霜情報は、3段階の着霜レベルを示す情報であるが、このような情報に限るものではなく、着霜量を示す情報であってもよく、4段階以上にレベル分けした情報であってもよい。
【0095】
前述の第1実施形態における外気温度および冷媒温度を用いた検出手段に限るものではなく、着霜の度合いの検出手段として、室内外の熱交換器に湿度センサを設置し、湿度センサの情報も用いることで、さらに精度良く着霜度合いを検出するように構成してもよい。
【0096】
前述の第1実施形態において表示部37bに表示される画像は一例であって、他の画像および出力手段を用いてもよい。また表示部37bにおける運転状態の表示方法に、冷房、暖房、除湿、除霜など実際に運転状態を表示するようにしてよい。また除霜終了時間の表示方法として、たとえば専用の表示液晶部を設けるなど、他の方法によって表示するようにしてもよい。また画像だけでなく、発光、音声および振動などによって情報を出力してもよい。
【符号の説明】
【0097】
10…車両用空調装置
20…ヒートポンプサイクル
21…蒸発器
22…室内熱交換器
23…電動圧縮機
25…室外熱交換器
25a…冷媒温度センサ(冷媒温度検出手段)
26…第2電動弁
35…外気温度センサ(外気温度検出手段)
37…コントロールパネル
37a…操作部(開始手段、停止手段)
37b…表示部(出力手段)
40…制御装置(制御手段)
41…除霜時間算出部(制御手段)
42…着霜状態算出部(着霜状態算出手段)
43…除霜運転判断部(判断手段)
44…走行状態検出部(走行状態検出手段)
45…表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧の冷媒と外気との間で熱交換して前記冷媒を凝縮する室外熱交換器(25)を有するヒートポンプサイクル(20)と、
前記室外熱交換器における着霜の度合いを算出する着霜状態算出手段(42)と、
前記着霜の度合いを含む着霜に関する情報を、車室内に向けて出力する出力手段(37b)と、
前記ヒートポンプサイクルを構成する各部(23,26)の作動を制御して、前記室外熱交換器に付着した霜を溶かすための除霜運転を実施する制御手段(40)と、を含み、
前記制御手段は、
前記除霜運転を実施していない場合には、前記着霜状態算出手段によって算出された前記着霜の度合いを示す着霜情報を出力するように前記出力手段を制御し、
前記除霜運転を実施中の場合には、前記除霜運転が実施中であることを示す除霜中情報を出力するように前記出力手段を制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記除霜運転中に、前記着霜の度合いを用いて、前記除霜運転によって除霜が終了するまでの時間である除霜終了時間を算出し、前記除霜運転を実施中の場合には、前記除霜中情報を出力するように前記出力手段を制御するとともに、前記除霜終了時間を出力するように前記出力手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記除霜運転の実施が必要な着霜の度合いであるか否かを判断する判断手段(43)をさらに含み、
前記制御手段は、前記除霜運転を実施していない場合であって、前記判断手段の前記判断に基づいて前記除霜運転の実施が必要なときには、前記除霜運転の実施が必要であることを示す除霜必要情報を出力するように前記出力手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記除霜運転の開始を指示する開始情報を入力するための開始手段(37a)をさらに含み、
前記制御手段は、前記開始手段によって前記開始情報が入力されると、前記除霜運転を実施するように前記各部の作動を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記除霜運転の停止を指示する停止情報を入力するための停止手段(37a)をさらに含み、
前記制御手段は、前記停止手段によって前記停止情報が入力されると、前記除霜運転を停止するように前記各部の作動を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段(44)をさらに含み、
前記制御手段は、前記車両が停止している状態にて前記除霜運転を実施中の場合に、前記走行状態検出手段によって前記車両の走行開始が検出されると、前記除霜運転を停止するように前記各部の作動を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
外気温度を検出する外気温度検出手段(35)と、
前記室外熱交換器の出口部における冷媒温度を検出する冷媒温度検出手段(25a)と、をさらに含み、
前記着霜状態算出手段は、前記外気温度検出手段によって検出された前記外気温度と、前記冷媒温度検出手段によって検出された前記冷媒温度との温度差を用いて前記着霜の度合いを算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−187938(P2012−187938A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50529(P2011−50529)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】