説明

車両用空調装置

【課題】冷凍回路の性能低下や不安定化を防止しつつ、冷媒圧力の高圧力化を抑制させることのできる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】外気温度Tambが車室内温度Tinよりも大である場合には(S21)、高圧側冷媒圧力Pdに応じて内外気調節ダンパの開度θを段階的に調節する内外気切替ダンパ制御を行う(S22)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に係り、詳しくは冷凍回路の冷媒圧力に応じた内外気導入量制御に関する。
【背景技術】
【0002】
主に圧縮機、放熱器、減圧器、蒸発器からなる蒸気圧縮式の冷凍回路を有する車両用空調装置では、従来、冷凍回路の圧縮機から減圧器までの高圧側の圧力が過度に上昇するのを防止するため、当該高圧側圧力が所定圧力以上となった場合には圧縮機の駆動を停止させていた。
または容量を可変可能な可変容量圧縮機を備え、高圧側圧力が所定圧力以上となった場合に当該圧縮機の容量を減少させることで冷媒圧力を低下させていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−112156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のように圧縮機の駆動を停止させたり、上記特許文献1のように圧縮機の容量を減少させると、冷媒流量が低下し蒸発器での空気冷却性能が低下して、車室内の温度が上昇する等して乗員に不快感を与えるおそれがあった。
また、圧縮機の運転を停止または制限した後に運転を再開させると、冷凍回路の冷凍サイクルが不安定になるおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、冷凍回路の性能低下や不安定化を防止しつつ、冷媒圧力の高圧力化を抑制させることのできる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1の車両用空調装置では、車両の車室内に配設され、車室内及び車室外から空気を導入可能なダクトと、前記車両に搭載され、内部を冷媒が循環する冷凍回路と、該冷凍回路の一部をなし、該冷凍回路内の冷媒を圧送するよう作動する圧縮機と、前記冷凍回路の一部をなし、前記ダクト内に設けられ、前記冷媒の気化熱を利用して該ダクト内を通過する空気を冷却する蒸発器と、前記車室内の温度を検出する車室内温度検出手段と、前記車室外の温度を検出する車室外温度検出手段と、前記冷凍回路の高圧側の冷媒圧力を検出する冷媒圧力検出手段と、前記ダクト内への車室内からの空気導入量及び車室外からの空気導入量の割合を調節可能な内外気導入量調節手段と、前記車室内温度検出手段により検出された車室内温度が前記車室外温度検出手段により検出された車室外温度よりも低い状態である場合に、値の異なる複数の所定圧力を設定し、前記冷媒圧力検出手段により検出された冷媒圧力が前記各所定圧力より大となる毎に、前記内外気導入量調節手段により車室内からの空気導入量割合を所定量増加させる内外気導入量制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項2の車両用空調装置では、車両の車室内に配設され、車室内及び車室外から空気を導入可能なダクトと、前記車両に搭載され、内部を冷媒が循環する冷凍回路と、該冷凍回路の一部をなし、該冷凍回路内の冷媒を圧送するよう作動する圧縮機と、前記冷凍回路の一部をなし、前記ダクト内に設けられ、前記冷媒の気化熱を利用して該ダクト内を通過する空気を冷却する蒸発器と、前記車室内の温度を検出する車室内温度検出手段と、前記車室外の温度を検出する車室外温度検出手段と、前記冷凍回路の高圧側の冷媒圧力を検出する冷媒圧力検出手段と、前記ダクト内への車室内からの空気導入量及び車室外からの空気導入量の割合を調節可能な内外気導入量調節手段と、前記車室内温度検出手段により検出された車室内温度が前記車室外温度検出手段により検出された車室外温度よりも低い状態である場合に、前記冷媒圧力検出手段により検出された冷媒圧力が上昇するのに伴い、前記内外気導入量調節手段により車室内からの空気導入量割合を連続的に増加させる内外気導入量制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項3の車両用空調装置では、請求項1において、前記内外気導入量制御手段は、前記各所定圧力よりも一定量低い値の第2の所定圧力をそれぞれ設定し、前記内外気導入量調節手段により車室内からの空気導入量を増加させた後、前記冷媒圧力検出手段により検出された冷媒圧力が前記第2の所定圧力より小となった場合に、該増加させた車室内からの空気導入量割合を増加させる前の状態に戻すことを特徴としている。
【0009】
請求項4の車両用空調装置では、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記冷凍回路の一部をなし、前記ダクト内に設けられ、モータにより駆動し該ダクト内の空気流下流側に向け送風を行う送風機と、前記モータへの供給電圧を調節することで前記送風機による送風量を制御する送風機制御手段とを備え、前記送風機制御手段は、前記内外気導入量制御手段により車室内からの空気導入量割合を増加させているとき、前記モータへの供給電圧を低下させることを特徴としている。
【0010】
請求項5の車両用空調装置では、請求項4において、前記送風機制御手段は、前記ダクト内の前記車室内からの空気導入量が増加するのに応じて、前記モータへの供給電圧を低下させることを特徴としている。
請求項6の車両用空調装置では、請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記冷媒として二酸化炭素を用いることを特徴としている。
【0011】
請求項7の車両用空調装置では、請求項1乃至6のいずれかにおいて、前記冷媒圧力検出手段は、前記冷凍回路の前記圧縮機から、前記冷凍回路に設けられ冷媒の温度を低下させる放熱器との間の冷媒圧力を検出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上記手段を用いる本発明の請求項1の車両用空調装置は、冷凍回路の高圧側冷媒圧力に応じてダクト内への内外気導入量の割合を段階的に調節することで、ダクト内の空気温度と蒸発器との温度差、即ち蒸発器の冷却負荷を調節し、圧縮機の仕事量を調節するものである。
このような内外気制御により圧縮機の仕事量を調節することで、圧縮機の性能を維持しながら、冷凍回路の不安定化を招くことなく、冷凍回路の高圧側冷媒圧力を調節することができ、当該冷媒圧力の高圧化も防止することができる。
【0013】
特に、複数の所定圧力を設定し、高圧側冷媒圧力が当該各所定圧力より大となる毎に、内気導入量割合を所定量増加させることで、単に内気循環モードと外気導入モードを切り換えるよりも、より適切に高圧側冷媒圧力に応じた内外気導入量制御を行うことができる。
また、車室外温度が車室内温度よりも高いときに、内気導入量割合の増加を行うことで、確実に蒸発器の冷却負荷を低減させることができ、効率よく高圧側冷媒圧力を低下させることができる。
【0014】
請求項2の車両用空調装置によれば、冷凍回路の高圧側冷媒圧力に応じてダクト内への内外気導入量の割合を連続的に調節することで、ダクト内の空気温度と蒸発器との温度差、即ち蒸発器の冷却負荷を調節し、圧縮機の仕事量を調節するものである。
このような内外気制御により圧縮機の仕事量を調節することで、圧縮機の性能を維持しながら、冷凍回路の不安定化を招くことなく、冷凍回路の高圧側冷媒圧力を調節することができ、当該冷媒圧力の高圧化も防止することができる。
【0015】
特に、高圧側冷媒圧力が上昇するに伴い内気導入量割合を増加させることで、単に内気循環モードと外気導入モードを切り換えるよりも、より一層適切に高圧側冷媒圧力に応じた内外気導入量制御を行うことができる。
また、車室外温度が車室内温度よりも高いときに、内気導入量割合の増加を行うことで、確実に蒸発器の冷却負荷を低減させることができ、効率よく高圧側冷媒圧力を低下させることができる。
【0016】
請求項3の車両用空調装置によれば、高圧側冷媒圧力に応じ内気導入量割合を増加させた後に、高圧側冷媒圧力が上記所定圧力より一定量低い第2の所定圧力より小となった場合に、当該内気導入量割合の増加を元に戻すことで、ハンチングを防止し良好に内外気導入量を戻すことができる。
【0017】
請求項4及び5の車両用空調装置によれば、内気導入量割合に応じて、送風機のモータへの供給電圧を低下させることで、省動力化させることができる。
請求項6の車両用空調装置によれば、冷媒に二酸化炭素を用いることで、環境に好適な冷凍回路とすることができる。
請求項7の車両用空調装置によれば、高圧側冷媒圧力を圧縮機から放熱器の間で検出することで正確な高圧側冷媒圧力を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】車両用空調装置のエアコンECUにより実行される基本的な内外気制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例に係る車両用空調装置のエアコンECUにより実行される内外気制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】実施例に係る内外気導入量制御を示すマップである。
【図5】実施例に係るブロア制御を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1を参照すると、本発明に係る車両用空調装置の概略構成図が示されている。
図1は車両の前部分を概略的に示しており、空調装置(エアコン装置)は、車両のエンジン2(内燃機関)が配設されているエンジンルーム4から、隔壁6により区画された車室内8に亘って構成されている。
【0020】
そして、当該空調装置の空気通路を形成する通風ダクト10が車室内8の図示しないインストルメントパネル内に設けられている。
当該インストルメントパネルにはデフ用、フェース用、フット用の吹出口(図示せず)がそれぞれ所定の位置に形成されており、これに対応して通風ダクト10の一端側には各吹出口と連通するデフ用、フェース用、フット用の3つの開口部12a、12b、12cが形成されている。
【0021】
これら各開口部12a、12b、12cには、対応する開口部12a、12b、12cの開閉を行うデフ用ドア14a、フェース用ドア14b、フット用ドア14cがそれぞれ設けられている。
一方、通風ダクト10の他端側には、車室内8と連通した内気導入口20及び車室外と連通した外気導入口22がそれぞれ隣接して形成されている。そして、当該内気導入口20及び外気導入口22の間には、内気導入口20側から外気導入口22側まで回動可能であり当該開度を変化させることで当該各導入口20、22からの空気導入量の割合を調節可能な内外気調節ダンパ24(内外気導入量調節手段)が設けられている。
【0022】
このように構成された通風ダクト10では、他端側の内気導入口20及び外気導入口22から一端側の開口部12a、12b、12cへと空気流が形成される。
そして、当該通風ダクト10には、他端側から一端側に向けて順に、ブロア30(送風機)、エバポレータ32(蒸発器)、ヒータコア34が設けられている。
ブロア30は、通風ダクト10内部の他端側、内気導入口20及び外気導入口22の空気流下流側近傍に設けられている。当該ブロア30はモータ30aにより駆動する所謂遠心式の送風機であり、通風ダクト10の一端側へ向け送風を行う機能を有している。
【0023】
エバポレータ32は、冷凍回路40の一部をなしており、当該冷凍回路40内を循環する冷媒を内部で蒸発させ、この気化熱を利用してエバポレータ32外部を通る空気、即ち通風ダクト10内の空気の冷却を行う機能を有している。
ヒータコア34は、エンジン2を通り温水となった冷却水が当該ヒータコア34内を流通することで当該ヒータコア34が加熱され、通風ダクト10内の当該ヒータコア34を通過する空気を加熱する機能を有している。
【0024】
また、ヒータコア34の空気流直上流位置には、エアミックスドア36が設けられている。当該エアミックスドア36は開閉駆動しヒータコア34への空気流の量を調節することで、エバポレータ32で冷却された空気量のうちヒータコア34により再加熱される空気量を調節する機能を有している。
また、上記冷凍回路40については、環境に好適な自然系冷媒であるCO2(二酸化炭素)が内部を循環して冷凍サイクルを形成するものであり、当該冷凍サイクルの順に、圧縮機42、ガスクーラ(放熱器)44、内部熱交換器46の高温部46a、減圧器48、エバポレータ32、アキュームレータ50(気液分離器)及び内部熱交換器46の低温部46bが介挿されて構成されている。
【0025】
圧縮機42は可変容量式の圧縮機であり、一端には電磁クラッチ42aを介してプーリ42bが設けられている。当該プーリ42bはエンジン2の駆動軸の一端に設けられたプーリ2aとベルト2bを介して接続されている。そして、圧縮機42は、電磁クラッチ42aにより接続及び遮断が行われることでエンジン2からの動力の伝達及び遮断が行われる。当該圧縮機42はエンジン2からの動力が伝達されて作動することで、冷凍回路40内の冷媒を圧縮し放熱器44へと送る機能を有している。
【0026】
ガスクーラ44は圧縮機42により圧縮された高温高圧の冷媒を冷却するものであり、内部熱交換器46は高温部46aを通る冷媒と低温部46bを通る冷媒との間で熱交換を行うものであり、減圧器48は冷媒を減圧し霧状とするものであり、アキュームレータ50はエバポレータ32で蒸発し低温低圧となった冷媒において残留している液相成分を除去するものである。
【0027】
また、車室内8にはエアコンECU(電子コントロールユニット)60が設けられており、当該エアコンECU60は図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM、RAM、BURAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えている。
エアコンECU60の入力側には、冷凍回路40の圧縮機42と放熱器44との間に設けられ当該冷凍回路40における高圧側の冷媒圧力を検出する高圧側冷媒圧力センサ62(冷媒圧力検出手段)、車室内8に設けられ車室内温度Tinを検出する車室内温度センサ64(車室内温度検出手段)、車室外に設けられ外気温度Tambを検出する外気温度センサ66(車室外温度検出手段)等の各種センサ類が電気的に接続されている。
【0028】
そして、エアコンECU60の出力側には、内外気調節ダンパ24を駆動するアクチュエータ24a、ブロア30のモータ30a、エアミックスドア36を駆動するアクチュエータ36a、電磁クラッチ42aのクラッチコントローラ42c等が電気的に接続されている。
当該エアコンECU60は上記センサ類からの情報に基づき各種装置を制御し空調制御(以下エアコン制御ともいう)を行う機能を有しており、例えばブロア30のモータ30aに供給されるブロア電圧BLVの調節を行ったり(送風機制御手段)、冷凍回路40内の高圧側冷媒圧力に応じて上記内外気調節ダンパ24の開度を制御し、通風ダクト10内に導入される空気量の割合を調節する内外気制御を行う(内外気導入量制御手段)。
【0029】
以下このように構成された本発明に係る車両用空調装置におけるエアコンECU60により実行される内外気制御について詳しく説明する。
まず、基本的な内外気制御について説明する。なお、ここでは、内外気調節ダンパ24により内気導入口20を開放し外気導入口22を閉鎖する内気循環モード、及び内気導入口20を閉鎖し外気導入口22を開放する外気導入モードの2つの空気導入モードが選択可能である。
【0030】
図2を参照すると、車両用空調装置のエアコンECU60により実行される基本的な内外気制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下同フローチャートに基づき説明する。
まず、ステップS1では、上記各種センサ等からそれぞれの情報を読み込む。具体的には、高圧側冷媒圧力センサ62から高圧側冷媒圧力Pd、車室内温度センサ64から車室内温度Tin、外気温度センサ66から外気温度Tamb、ブロア30のモータ30aのブロア電圧BLVを読み込む。
【0031】
次のステップS2では、上記ステップS1で読み込んだ高圧側冷媒圧力Pdが、予め設定されている所定圧力Paより大であるか否かを判別する。当該所定圧力Paは例えば圧縮機42の正常作動が確保される上限圧力より僅かに低い値に設定されている。当該判別結果が偽(No)である場合は、当該ルーチンをリターンする。一方、当該判別結果が真(Yes)である場合はステップS3に進む。
【0032】
ステップS3では、ステップS1において読み込んだ外気温度Tambが車室内温度Tinより大であるか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合は、当該ルーチンをリターンする。一方、当該判別結果が真(Yes)である場合、即ち外気温度Tambの方が車室内温度Tinよりも高い場合にはステップS4に進む。
ステップS4では、空気導入モードが外気導入モードに設定されているか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合、即ち内気循環モードである場合は、当該ルーチンをリターンする。一方、当該判別結果が真(Yes)である場合はステップS5に進む。
【0033】
ステップS5では、空気導入モードを外気導入モードから内気循環モードに切り替えるよう内外気調節ダンパ24を制御し、次のステップS6ではモータ30aに供給されるブロア電圧BLVを予め設定された所定電圧まで低下させる。
そして、ステップS7において、再度高圧側冷媒圧力Pdの読み込みを行い、ステップS8において当該高圧側冷媒圧力Pdが第2の所定圧力Pbより大であるか否かを判別する。なお、当該所定圧力Pbは、上記所定圧力Paよりも低い値に設定されており、例えば圧縮機42の正常作動が確保される上限圧力より十分に低い値に設定されている。当該判別結果が偽(No)である場合はステップS7に戻り高圧側冷媒圧力Pdの判定を繰り返し、当該判別結果が真(Yes)となったら、ステップS9に進む。
【0034】
ステップS9では、内外気調節ダンパ24を外気導入モードに戻し、通常の内外気調節ダンパ制御に復帰させる。
次のステップS10ではブロア電圧BLVをステップS6で低下させる前の元の値に戻し、通常のブロア電圧制御に復帰させ、当該ルーチンをリターンする。
このように当該内外気制御では、外気導入モードでの運転中であり、車室内温度Tinが外気温度Tambよりも低い場合に、冷凍回路40の高圧側冷媒圧力Pdが所定圧力Pa以上となると、内外気調節ダンパ24を内気循環モードへ切り替えることとしている。
【0035】
内気循環モードに切り替えることで、通風ダクト10内の空気温度は低下し、当該空気温度と蒸発器32との間の温度差が小さくなる。これにより当該蒸発器32の冷却負荷は低減されることから、圧縮機42における仕事量も低減され、高圧側冷媒圧力Pdを低下させることができる。
また、上記のようにして高圧側冷媒圧力Pdを低下させ第2の所定圧力Pbより小となった場合には通常の制御に復帰するようにしている。当該第2の所定圧力Pbは上記所定圧力Paよりも低い値に設定されていることから、所定圧力Pa前後で内気循環モードと外気導入モードとの切り替えを繰り返すようなハンチング現象を防止することができ、良好に通常制御に復帰させることができる。
【0036】
また、内気循環モードに切り替えるとともに、ブロア30のモータ30aへ供給するブロア電圧BLVを低下させることで、省動力化させることができる。
以上のように、当該車両用空調装置では、上記のような内外気制御により圧縮機の仕事量を調節することで、圧縮機42の性能を維持しながら、冷凍回路の不安定化を招くことなく、冷凍回路40の高圧側冷媒圧力Pdを低下させ当該冷媒圧力の高圧化を抑制することができる。
【0037】
次に本発明の実施例について説明する。なお、当該実施例では、内外気調節ダンパ24は段階的に開度を調節することが可能である。
図3乃至5を参照すると、図3には実施例に係るエアコンECU60により実行される内外気制御ルーチンを示すフローチャートが、図4には実施例に係る内外気導入量制御を示すマップが、図5には実施例に係るブロア制御を示すマップがそれぞれ示されている。以下、図4、5を参照しつつ図3のフローチャートに沿い説明する。
【0038】
まず、ステップS20、ステップS21は、上記図2のフローチャートのS1、S3と同様であり、上記各種センサ等からそれぞれの情報を読み込み、外気温度Tambが車室内温度Tinよりも大であるか否かを判別する。ステップS21の判別結果が偽(No)である場合は当該ルーチンをリターンし、真(Yes)である場合は、ステップS22に進む。
【0039】
ステップS22では、内外気調節ダンパ制御を行う。
当該内外気調節ダンパ制御は、図4に示すように高圧側冷媒圧力Pdに応じて内外気調節ダンパの開度θを調節するものである。
詳しくは、高圧側冷媒圧力Pdが上昇する場合、高圧側冷媒圧力Pdの閾値として所定圧力Px1、Px2、Px3がそれぞれ設定されており、高圧側冷媒圧力Pdが当該所定圧力以上となる毎に内外気調節ダンパ24の開度を内気循環モード側、即ち外気導入口22側に回動させるものである。
【0040】
具体的には、内気導入口20を閉鎖する開度θambの外気導入モードである状態から、高圧側冷媒圧力Pdが上昇し所定圧力Px1より大となった場合には、内外気調節ダンパ24を所定量外気導入口22側へ回動させた開度θaとする。さらに、高圧側冷媒圧力Pdが上昇し所定圧力Px2より大となった場合には、内外気調節ダンパ24をさらに所定量外気導入口側へ回動させた開度θbとする。そして、高圧側冷媒圧力Pdが所定圧力Px3より大となった場合には、内外気調節ダンパ24により外気導入口22を閉鎖する開度θin、即ち内気循環モードまで回動させる。
【0041】
一方、高圧側冷媒圧力Pdが低下する場合には、上記所定圧力Px1、Px2、Px3よりも所定量低い値に設定された第2の所定圧力Py1、Py2、Py3が設定されており、高圧側冷媒圧力Pdが当該第2の所定圧力より小となる毎に内外気調節ダンパの開度を所定量戻していくものである。
具体的には、内気循環モードである状態、即ち開度θinである状態から、高圧側冷媒圧力PdがPy3以下となると内外気調節ダンパ開度を開度θbに、さらにPy2以下となると開度θaに、さらにPy3以下となると開度θamb、即ち外気導入モードへと切り替える。
【0042】
そして、上記内外気調節ダンパ制御を実行した後、次のステップS23ではブロア電圧制御を行う。
当該ブロア電圧制御は、図5のマップに基づき内外気調節ダンパ開度θに応じてブロア電圧BLVの調節を行うものである。
図5のマップでは、内外気調節ダンパ24の開度が外気導入モード側の開度θambから内気導入モード側の開度θinに向かうに伴ってブロア電圧BLVが所定量低下するよう設定されている。
【0043】
そして、当該ステップS24の制御を実行した後、当該ルーチンをリターンする。
以上のように当該実施例での内外気制御では、複数の所定圧力Px1、Px2、Px3を設定し、高圧側冷媒圧力Pdが当該所定圧力より大となる毎に、内気導入量割合を所定量増加させるものとしている。
また、当該各所定圧力Px1、Px2、Px3に対し、一定量低い値の第2の所定圧力Py1、Py2、Py3を設定し、高圧側冷媒圧力Pdが第2の所定圧力より小となる毎に内外気調節ダンパ24の開度θを戻すようにしている。
【0044】
さらに、内外気切替ダンパ24の開度θに応じてブロア電圧BLVの制御も行うこととしている。
以上のことから、本発明の実施例に係る車両用空調装置では、上記基本的な内外気制御と同様の効果を奏することができる上、所定圧力を複数設定し内外気調節ダンパ24の開度θを段階的に調節していることから、より適切に高圧側冷媒圧力Pdに応じた内外気導入量の制御を行うことができる。
【0045】
以上で本発明に係る車両用空調装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態では内外気導入量の制御とともにブロア電圧の制御を行っているが図2、図3の一点差線で示すように当該ブロア電圧の制御を行わない内外気制御としても構わない。
【0046】
また、上記実施例では、所定圧力として3段階の所定圧力Px1、Px2、Px3を設定しているが、当該所定圧力は何段階設定しても構わない。また、より一層適切に高圧側冷媒圧力Pdに応じた内外気制御を行うべく、高圧側冷媒圧力Pdが上昇するに伴い内気導入量割合を連続的に増加させる制御としても構わない。
また、冷凍回路40や圧縮機42、内外気調節ダンパ24の構成は上記実施形態のものに限るものではなく、上記実施形態では、冷凍回路40は内部熱交換器46やアキュームレータを備えた構成であるがこのような構成に限られるものではなく、例えば内部熱交換器を備えていない構成や、放熱器の冷凍サイクル下流側にレシーバを設けた構成であっても構わない。
【0047】
また、上記実施形態では、圧縮機42は可変容量式であるが、当該可変容量式に限られるものではない。
また、上記実施形態では内外気導入量調節手段として内外気調節ダンパ24を設けているが、当該内外気導入量調節手段の構成はこれに限られるものではなく、例えば内気導入口及び外気導入口のそれぞれにダンパを設けた構成でもかまわない。
【0048】
また、上記実施形態では、高圧側冷媒圧力センサ62、車室内温度センサ64、外気温度センサ66等より高圧側冷媒圧力Pd、車室内温度Tin、外気温度Tambを検出しているが、これらは推定により検出しても構わない。
【符号の説明】
【0049】
2 エンジン
10 通風ダクト
20 内気導入口
22 外気導入口
24 内外気調節ダンパ(内外気導入量調節手段)
30 ブロア(送風機)
30a モータ
32 エバポレータ(蒸発器)
40 冷凍回路
42 圧縮機
44 ガスクーラ(放熱器)
48 減圧器
60 エアコンECU(内外気導入量制御手段、送風機制御手段)
62 高圧側冷媒圧力センサ(冷媒圧力検出手段)
64 車室内温度センサ(車室内温度検出手段)
66 外気温度センサ(車室外温度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に配設され、車室内及び車室外から空気を導入可能なダクトと、
前記車両に搭載され、内部を冷媒が循環する冷凍回路と、
該冷凍回路の一部をなし、該冷凍回路内の冷媒を圧送するよう作動する圧縮機と、
前記冷凍回路の一部をなし、前記ダクト内に設けられ、前記冷媒の気化熱を利用して該ダクト内を通過する空気を冷却する蒸発器と、
前記車室内の温度を検出する車室内温度検出手段と、
前記車室外の温度を検出する車室外温度検出手段と、
前記冷凍回路の高圧側の冷媒圧力を検出する冷媒圧力検出手段と、
前記ダクト内への車室内からの空気導入量及び車室外からの空気導入量の割合を調節可能な内外気導入量調節手段と、
前記車室内温度検出手段により検出された車室内温度が前記車室外温度検出手段により検出された車室外温度よりも低い状態である場合に、値の異なる複数の所定圧力を設定し、前記冷媒圧力検出手段により検出された冷媒圧力が前記各所定圧力より大となる毎に、前記内外気導入量調節手段により車室内からの空気導入量割合を所定量増加させる内外気導入量制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
車両の車室内に配設され、車室内及び車室外から空気を導入可能なダクトと、
前記車両に搭載され、内部を冷媒が循環する冷凍回路と、
該冷凍回路の一部をなし、該冷凍回路内の冷媒を圧送するよう作動する圧縮機と、
前記冷凍回路の一部をなし、前記ダクト内に設けられ、前記冷媒の気化熱を利用して該ダクト内を通過する空気を冷却する蒸発器と、
前記車室内の温度を検出する車室内温度検出手段と、
前記車室外の温度を検出する車室外温度検出手段と、
前記冷凍回路の高圧側の冷媒圧力を検出する冷媒圧力検出手段と、
前記ダクト内への車室内からの空気導入量及び車室外からの空気導入量の割合を調節可能な内外気導入量調節手段と、
前記車室内温度検出手段により検出された車室内温度が前記車室外温度検出手段により検出された車室外温度よりも低い状態である場合に、前記冷媒圧力検出手段により検出された冷媒圧力が上昇するのに伴い、前記内外気導入量調節手段により車室内からの空気導入量割合を連続的に増加させる内外気導入量制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
前記内外気導入量制御手段は、前記各所定圧力よりも一定量低い値の第2の所定圧力をそれぞれ設定し、前記内外気導入量調節手段により車室内からの空気導入量を増加させた後、前記冷媒圧力検出手段により検出された冷媒圧力が前記第2の所定圧力より小となった場合に、該増加させた車室内からの空気導入量割合を増加させる前の状態に戻すことを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記冷凍回路の一部をなし、前記ダクト内に設けられ、モータにより駆動し該ダクト内の空気流下流側に向け送風を行う送風機と、
前記モータへの供給電圧を調節することで前記送風機による送風量を制御する送風機制御手段とを備え、
前記送風機制御手段は、前記内外気導入量制御手段により車室内からの空気導入量割合を増加させているとき、前記モータへの供給電圧を低下させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記送風機制御手段は、前記ダクト内の前記車室内からの空気導入量が増加するのに応じて、前記モータへの供給電圧を低下させることを特徴とする請求項4記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記冷媒として二酸化炭素を用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記冷媒圧力検出手段は、前記冷凍回路の前記圧縮機から、前記冷凍回路に設けられ冷媒の温度を低下させる放熱器との間の冷媒圧力を検出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−35842(P2012−35842A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253502(P2011−253502)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【分割の表示】特願2006−326880(P2006−326880)の分割
【原出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】