説明

車両用空調装置

【課題】本発明は、車室内を暖房可能にする車両用空調装置において、再生用の加熱手段の電力消費を抑えて、暖房時の除湿が行えることに加えて、車外へ排出する空気から熱を回収することで、加熱手段の負荷を削減し、暖房時の電力消費をより抑えることを目的とする。
【解決手段】車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段20の再生に用いることにより、除湿手段20の再生に別の加熱手段を設ける必要がない。さらに、車外へ吹出す空気から熱を回収する手段として、冷房時に使用する冷却用熱交換器8を用いるので、熱回収用に別の熱回収手段を設ける必要がなく、加熱用熱交換器9の加熱負荷を低減させることができ、小型化かつ省エネ効果のある車両用空調装置を提供するという効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を暖房可能にする車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガソリン車の暖房ではエンジンの廃熱を利用したものが主流であり、暖房時の課題である窓等の曇りを防止する除湿装置が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この除湿装置は図5に示すように、車両用除湿装置として構成されており、車室内後方のトランクルーム内に空調装置の通風系とは独立に設置されるもので、除湿装置101の室内空気の吸入口102は車室内後方のリアパッセージトレーの開口部(図示せず)を通して車室内後方部に連通している。
【0004】
この吸入口102の下方部に送風機103を配置している。この送風機103は周知の遠心多翼ファン103aと、この遠心多翼ファン103aを回転自在に収容しているスクロールケース103bとを有し、この空気出口部にケース104が接続されている。このケース104の内部の通風路は、仕切り板105により除湿用の第一通風路106と再生用の第2通風路107とに仕切られている。
【0005】
そして、除湿用の第一通風路106の入口部には、冷却手段としての第一通風路106内の室内空気と低温外気との間で熱交換を行う第1顕熱交換器108が配置されている。この第1顕熱交換器108の下流側に乾燥剤を有する乾燥剤ユニット109が配置され、さらに、その下流側に第2顕熱交換器110が配置されている。
【0006】
このため、第1顕熱交換器108は外気用通路111に接続されており、この外気用通路111の一端部111aは車室外に開口しており、冬期暖房時の低温外気を吸入する。また、外気用通路111の他端部側は送風機103のモータ103cの外周側に形成された補助吸入口112を介して遠心多翼ファン103aの負圧部に連通している。これにより、遠心多翼ファン103aが回転駆動されると、低温外気が外気用通路111および第1顕熱交換器108を通して遠心多翼ファン103aの負圧部に向かって流れる。
【0007】
乾燥剤ユニット109は除湿用の第一通風路106だけでなく、再生用の第2通風路107にわたって設置されており、図示しないモータ等の駆動手段によりケース体109bを回転駆動するようになっている。また、再生用の第2通風路107において、乾燥剤ユニット109の上流側には電気発熱体113が設置され、第2顕熱交換器110は、再生用の第2通風路107の高温空気により除湿用の第一通風路106の空気を加熱する。除湿用の第一通風路106において、第2顕熱交換器110の下流側には車室内への吹出口114が設けられ、第2顕熱交換器110からの再生空気の出口115は車室外に開口している。
【0008】
上記のように、この車両用除湿装置は空調装置の通風系とは独立しており、空調装置の通風系内には前記の再生用の電気発熱体113とは別に暖房用の加熱手段が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−108655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような車両用除湿装置では、再生空気としては内気と外気を混合した空気を使用しているため、再生用の第2通風路内に加熱手段を設置して再生空気を高温に加熱しなければならず、そのための電力消費が増大するという課題があった。
【0011】
そこで本発明は、上記従来の課題である再生用の加熱手段の電力消費を抑えるとともに、車外へ排出する空気から熱を回収することで、加熱手段の負荷を削減し、さらに省エネ効果のある車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、この目的を達成するために、本発明は、
外気を導入する第一外気導入口から車内に空調風を吹出す空調吹出口の間に設けた空気流を発生させる第一送風手段と、
前記第一外気導入口から前記第一送風手段にかけての車外吸気風路と、
内気を導入する内気導入口から前記第一送風手段にかけての除湿風路と、
前記車外吸気風路と前記除湿風路の交差部に前記第一外気導入口から導入される外気と前記内気導入口から導入される内気とを熱交換させる顕熱交換器を備え、
前記第一送風手段から前記空調吹出口にかけて、
ヒートポンプサイクルを形成する空気を冷却する冷却用熱交換器および空気を加熱する加熱用熱交換器を備え、
車外に空気を排気する車外吹出口へと接続される再生風路へ前記加熱用熱交換器を通風した空気の少なくとも一部を分岐する第一の風路切替手段を備え、
前記再生風路と前記除湿風路内の前記顕熱交換器の下流部との交差部に、
前記内気導入口から導入される内気を除湿する除湿部と、前記再生風路内の空気によって再生される再生部を有する除湿手段を備えたものであって、
前記第一送風手段から前記冷却用熱交換器を通って前記空調吹出口に至る冷風風路と、
前記第一送風手段から前記加熱用熱交換器を通って前記空調吹出口に至る温風風路と、
前記冷却用熱交換器および前記加熱用熱交換器よりも上流側に前記第一送風手段から吹出される空気が流れる風路を冷風風路または温風風路に切り替える冷温切替手段を備え、
前記除湿手段から前記車外吹出口にかけての前記再生風路の一部分と、
前記冷却用熱交換器を通り前記空調吹出口にかけての前記冷風風路の一部分とは同一の風路であり、
この同一の風路内に流れる空気を前記車外吹出口または前記車内吹込口へと切替える第二の風路切替手段を備えた構成とし、前記再生風路内の空気から前記冷却用熱交換器を介して熱を回収し除湿暖房を行うものであり、
これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段の再生に用いることにより、除湿手段の再生用に別の加熱手段を設けなくてもよく、除湿された空気を除湿手段の再生に用いているので、除湿しない空気に比べより低温での再生が可能となり、ヒートポンプの電力消費を抑えて、省エネ効果のある車両用空調装置を提供することができる効果を得ることができる。
【0014】
さらに、前記除湿手段から前記車外吹出口にかけての前記再生風路の一部分と前記冷却用熱交換器を通り前記空調吹出口にかけての前記冷風風路の一部分とを同一の風路構成とすることで、前記除湿手段の再生後に車外へ排出する空気から前記冷房用熱交換器により熱を回収することができ、省エネ効果のある車両空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1の車両用空調装置の風路構成図
【図2】同除湿暖房時運転の風路構成図
【図3】同冷房時運転の風路構成図
【図4】同除湿暖房時運転における凍結防止モード風路構成図
【図5】従来の車両用除湿装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の車両用空調装置の除湿暖房運転時の風路構成図である。
【0018】
この車両用空調装置の構成は、まず、外気を導入する第一外気導入口1と車内に空調風を吹出す空調吹出口2との間に設けた空気流を発生させる第一送風手段3が備えられている。送風路として、第一外気導入口1から第一送風手段3にかけての車外吸気風路4と、内気を導入する内気導入口5から第一送風手段3にかけての除湿風路6とを設けており、車外吸気風路4と除湿風路6との交差部には、第一外気導入口1から導入される外気と内気導入口5から導入される内気とを熱交換させる顕熱交換器7を配置している。また、第一送風手段3から空調吹出口2にかけての送風路内には、後述するヒートポンプサイクルを形成する空気を冷却する冷却用熱交換器8および空気を加熱する加熱用熱交換器9を配置している。また、外気と冷媒との熱交換を行う車外熱交換器10と、車外熱交換器10に外気を送風する車外送風手段11を車室外に配置している。
【0019】
ヒートポンプサイクルは、冷媒を圧縮する圧縮機12と、冷媒を膨張させて減圧する減圧手段と、冷媒の流れ方向を切り替える三方弁13と、冷却用熱交換器8、加熱用熱交換器9、車外熱交換器10とこれらの間に冷媒を循環させる冷媒配管で構成されている。そして、圧縮機12の高圧冷媒吐出側に三方弁13と、三方弁13と車外熱交換器10の間に冷媒の流れを一方向に制限する逆止弁14と、車外熱交換器10と冷却用熱交換器8の間に減圧手段としての絞り弁15(図に示すように膨張弁15aと15bを内臓)と、加熱用熱交換器9と車外熱交換器10との間に冷媒の流れを一方向に制限する逆止弁14と、加熱用熱交換器9と逆止弁14との間に減圧手段としての絞り弁16配置されている。
【0020】
また、加熱用熱交換器9の下流側に設けた第一の風路切替手段17により、加熱用熱交換器9を通風した空気の少なくとも一部を分岐して、車外に空気を吹出す車外吹出口18へと連通する再生風路19を備えている。再生風路19と除湿風路6内の顕熱交換器7の下流側の交差部に、後述する除湿手段20を配置している。
【0021】
除湿手段20は、吸湿材料を有しており、吸湿材料への吸湿によって通過する空気を除湿する除湿部と、吸湿材料からの通過する空気への放湿によって吸湿材料を再生する再生部によって構成されている。
【0022】
そして、第一送風手段3から冷却用熱交換器8を通って空調吹出口2に至る冷風風路21と、第一送風手段3から加熱用熱交換器9を通って空調吹出口2に至る温風風路22を配置し、冷却用熱交換器8および加熱用熱交換器9よりも上流側に、第一送風手段3から吹出される空気が流れる風路を冷風風路21または温風風路22に切り替える冷温切替手段23を備え、除湿手段20から車外吹出口18にかけての再生風路19の一部分と、冷却用熱交換器8を通り空調吹出口2にかけての冷風風路21の一部分とは同一の風路を備え、この同一の風路内に流れる空気を車外吹出口18または空調吹出口2へと切替える第二の風路切替手段24を備えた構成となっている。
【0023】
さらに、再生風路19内の除湿手段20と冷風風路21内の冷却用熱交換器8との間に、第一送風手段3と同じブロアモータで回転駆動する第二送風手段25を配置した構成となっている。
【0024】
さらに、内気導入口5と車外吸気風路4内の顕熱交換器7より下流側とを接続するバイパス風路26を備え、車外吸気風路4とバイパス風路26との風路を切替える第三の風路切替手段27を備えている。バイパス風路26には、外気を導入する第二外気導入口28が備えており、第二外気導入口28には、導入する空気を外気または内気に切替える内外切替手段29を配置している。また、除湿風路6内の除湿手段20より下流側と、再生風路19内の除湿手段20より下流側と、を接続する接続口30を備え、接続口30と除湿風路6内の除湿手段20より下流側との風路を切替える第四の風路切替手段31を備えた構成となっている。
【0025】
以上述べた構成において、その運転動作について図2〜4を参照しながら説明する。
【0026】
はじめに、除湿暖房運転時の動作について、図2を参照しながら説明する。除湿暖房運転時には、冷温切替手段23を温風風路22側に切替え、第一の風路切替手段17を再生風路19側に切替え、第二の風路切替手段24を車外吹出口18側に切替え、第三の風路切替手段27を車外吸気風路4側に切替え、第四の風路切替手段31を除湿風路6側に切替える。
【0027】
そして、第一送風手段3の運転によって、第一外気導入口1から導入した外気は顕熱交換器7を通風して、第一送風手段3に吸込まれる。また、内気導入口5から導入した内気は顕熱交換器7を通風したあと、除湿手段20の除湿部を通風し、第一送風手段3に吸込まれる。
【0028】
ここで、顕熱交換器7の作用によって、除湿風路6を通る内気は外気によって冷却されて相対湿度が上昇する。一方、車外吸気風路4内の空気は内気によって加熱され温度が上昇する。
【0029】
また、顕熱交換器7を通過して相対湿度が上昇した内気は、除湿手段20の除湿部へと送風され、除湿部で除湿されて乾燥する。そして除湿手段20での除湿に伴い、吸湿材料の水分吸着熱を受け取って加熱されその温度が上昇する。
【0030】
第一送風手段3に吸込まれた外気と内気は、冷温切替手段23により温風風路22へと送風され、温風風路22内の加熱用熱交換器9の作用により空気は加熱され、空調吹出口2から車内各所、例えば窓、顔、足元へと分配される。
【0031】
このとき、第一の風路切替手段17により、加熱用熱交換器9を通風した加熱された空気の少なくとも一部を再生風路19に導入し、除湿手段20の再生部へと送風する。
【0032】
ここで、加熱された空気は除湿手段20の再生部において、再生部の吸湿材料は再生風路19内の空気から熱を受け取って水分を空気中に放湿し、除湿手段20の再生が行われる。
【0033】
除湿手段20の再生後の空気は、第二送風手段25の運転により、冷風風路21内の冷却用熱交換器8を通風し第二の風路切替手段24により車外吹出口18から車外へ吹出す。
【0034】
このとき、ヒートポンプサイクルは、制御手段によって冷媒が圧縮機12、三方弁13、加熱用熱交換器9、絞り弁16、逆止弁14、車外熱交換器10、絞り弁15、冷却用熱交換器8、圧縮機12の順に流れるように動作し、この冷却用熱交換器8の作用によって、車外へ吹出す空気から冷媒を介して熱を回収し、圧縮機12の運転により回収した熱を加熱用熱交換器9へとくみ上げる。
【0035】
ここで、本発明の構成では、車内暖房用に除湿され加熱された空気を第一の風路切替手段17によって再生風路19に分配し、この空気を除湿手段20の再生に使用する構成となっている。
【0036】
このように構成することで、再生のための別の加熱手段を設ける必要がないので、ヒートポンプの電力消費が抑えられ、省エネ効果のある車両用空調装置を提供することができる。
【0037】
また、本発明の構成では、再生風路19内の除湿手段20を通過した後の車外へ吹出される空気から冷却用熱交換器8内の冷媒へと熱を回収し、圧縮機12によって加熱用熱交換器9へ送るという構成となっている。
【0038】
このような構成にすることで、熱回収用に別の熱回収手段を設ける必要がなく、加熱用熱交換器9の加熱負荷を低減させることができ、小型化かつ省エネ効果のある車両空調装置を提供することができる。
【0039】
また、本発明の構成では、第二送風手段25を動作させることによって、除湿暖房時に再生風路19内に流れる空気の風量を増加させる構造となっている。
【0040】
このように構成することで、再生風路19内の除湿手段20を通過する風量が増加し、除湿手段20の吸湿材料からより多くの水分が脱着可能となり、さらに除湿効果の高い車両空調装置を提供できることが可能となる。
【0041】
また、本発明の構成では、第二送風手段25を動作させることによって、除湿暖房時に冷風風路21内に流れる空気の風量を増加させる構造となっている。
【0042】
このように構成することで、冷風風路21内の冷却用熱交換器8を通過する風量が増加するので、冷却用熱交換器8内の冷媒へより多くの熱を回収し、この回収した熱を加熱用熱交換器へと循環させることによって、加熱用熱交換器9の加熱負荷を低減させることができ、さらに省エネ効果のある車両空調装置を提供することができる。
【0043】
加えて、外気温が氷点下の場合、車外熱交換器による外気から冷媒への吸熱が不足しやすいが、冷却用熱交換器8によって再生風路19内を通る車外へ吹出す空気から吸熱できるので、不足分の吸熱を補うことによってヒートポンプサイクルを継続して作用させることが可能となる。
【0044】
次に、夏季など、車内気温よりも車外気温が高い場合の動作について図3を参照しながら説明する。車内気温よりも車外気温が高い場合には、冷房運転に切り替わる。
【0045】
冷房運転時には、冷温切替手段23を冷風風路21側に切替え、第一の風路切替手段17により再生風路19を遮断するように切替え、第二の風路切替手段24を空調吹出口2側に切替え、第三の風路切替手段27をバイパス風路26側に切替え、第四の風路切替手段31を接続口30側に切替え、内外切替手段29をバイパス風路26側に切替える。
【0046】
第一送風手段3および第二送風手段25を運転させると、第三の風路切替手段27および第四の風路切替手段31により、内気導入口5からバイパス風路26内に吸込まれた内気は、第一送風手段3および第二送風手段25へと吸込まれる。そして、第一送風手段3および第二送風手段25から吹出された内気は、冷温切替手段23の作用によって、冷風風路21内の冷却用熱交換器8へ通風され、冷却用熱交換器8の作用によって冷却される。そのあと、冷却された内気は、第二の風路切替手段24の作用によって、空調吹出口2へと送風される。
【0047】
このときヒートポンプサイクルは、制御手段によって冷媒が圧縮機12、三方弁13、逆止弁14、車外熱交換器10、絞り弁15、冷却用熱交換器8、圧縮機12の順に流れるように動作し、車外熱交換器10が凝縮器、冷却用熱交換器8が蒸発器として作用する。またこのとき、加熱用熱交換器9には冷媒は流さない。
【0048】
ここで、本発明の構成では、冷房運転時に、第一送風手段3および第二送風手段25を動作させることによって、内気導入口5からバイパス風路26内に吸込まれた内気は、冷風風路21内の冷却用熱交換器8で冷却し、空調吹出口2へと送風される構成となっている。
【0049】
このように構成することで、第一送風手段3によって送風される内気に加えて、第二送風手段25によって送風される内気が冷却用熱交換器8によって冷却され、空調吹出口2へ送風される。そのため、第一送風手段3の負荷を削減することができるので、第一送風手段3及び第二送風手段25から発生する騒音が小さくなり、車内の静粛性を保つことができる。
【0050】
次に、極寒冷地での使用など、外気温が氷点下であり、車内気温に比べて非常に低い温度である場合の動作について、図4を参照しながら説明する。この場合、除湿暖房運転中に顕熱交換器7が凍結する可能性がある。本実施の形態では、顕熱交換器7が凍結するような場合、除湿暖房運転の凍結防止モードとなり、冷温切替手段23を温風風路22側に切替え、第一の風路切替手段17を再生風路19側に切替え、第二の風路切替手段24を車外吹出口18側に切替え、第三の風路切替手段27をバイパス風路26側に切替え、第四の風路切替手段31を除湿風路6側に切替え、内外切替手段29を第二外気導入口28側に切替える。このように変更すると、顕熱交換器7に導入される空気が除湿風路6を通過する空気のみとなり、外気が導入されなくなるので、顕熱交換器7の温度が上昇して表面に着氷しにくくなる、もしくは氷が付着してもそれを融かすことができる。
【0051】
このとき、ヒートポンプサイクルは、除湿暖房時と同様のサイクルで運転する。
【0052】
このような構成にすると、顕熱交換器7の凍結を抑制できるので、極寒冷地でも連続的な除湿暖房運転が可能となる。さらに、除湿暖房運転時と同様、車外吹出口から吹出される空気から熱を回収できるので、加熱用熱交換器の負荷を削減することができ、省エネ効果のある車両空調装置を提供することができる。
【0053】
以上述べたように、本発明における実施の形態1の構成および動作によれば、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段20の再生に用いることにより、除湿手段20の再生に別の加熱手段を設ける必要がなる。さらに、車外へ吹出す空気から熱を回収する手段として、冷房時に使用する冷却用熱交換器8を用いるので、熱回収用に別の熱回収手段を設ける必要がなく、加熱用熱交換器9の加熱負荷を低減させることができ、小型化かつ省エネ効果のある車両用空調装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように本発明にかかる車両用空調装置は、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段の再生に用いることにより、除湿手段の再生用に別の加熱手段を設けなくてもよく、加熱負荷を低減させることが可能である。さらに加えて、除湿手段の再生後に車外へ排出する空気から冷房用熱交換器により熱を回収することができ、省エネ効果の増大を可能とするものであるので、車両空調装置等として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 第一外気導入口
2 空調吹出口
3 第一送風手段
4 車外吸気風路
5 内気導入口
6 除湿風路
7 顕熱交換器
8 冷却用熱交換器
9 加熱用熱交換器
10 車外熱交換器
11 車外送風手段
12 圧縮機
13 三方弁
14 逆止弁
15 絞り弁
16 絞り弁
17 第一の風路切替手段
18 車外吹出口
19 再生風路
20 除湿手段
21 冷風風路
22 温風風路
23 冷温切替手段
24 第二の風路切替手段
25 第二送風手段
26 バイパス風路
27 第三の風路切替手段
28 第二外気導入口
29 内外切替手段
30 接続口
31 第四の風路切替手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を導入する第一外気導入口と車内に空調風を吹出す空調吹出口との間に設けた空気流を発生させる第一送風手段と、
前記第一外気導入口から前記第一送風手段にかけての車外吸気風路と、
内気を導入する内気導入口から前記第一送風手段にかけての除湿風路と、
前記車外吸気風路と前記除湿風路の交差部に前記第一外気導入口から導入される外気と前記内気導入口から導入される内気とを熱交換させる顕熱交換器を備え、
前記第一送風手段から前記空調吹出口にかけて、
ヒートポンプサイクルを形成する空気を冷却する冷却用熱交換器および空気を加熱する加熱用熱交換器を備え、
前記加熱用熱交換器の下流側に設けた第一の風路切替手段により、前記加熱用熱交換器を通風した空気の少なくとも一部を分岐して車外に排気する車外吹出口へと送風する再生風路と、
前記再生風路と前記除湿風路内の前記顕熱交換器の下流側の交差部に、
前記内気導入口から導入される内気を除湿する除湿部と、前記再生風路内の空気によって再生される再生部と、を有する除湿手段を備えたものであって、
前記第一送風手段から前記冷却用熱交換器を通って前記空調吹出口に至る冷風風路と、
前記第一送風手段から前記加熱用熱交換器を通って前記空調吹出口に至る温風風路と、
前記冷却用熱交換器および前記加熱用熱交換器よりも上流側に前記第一送風手段から吹出される空気が流れる風路を冷風風路または温風風路に切り替える冷温切替手段を備え、
前記除湿手段から前記車外吹出口にかけての前記再生風路の一部分と、
前記冷却用熱交換器を通り前記空調吹出口にかけての前記冷風風路の一部分とは同一の風路であり、
この同一の風路内に流れる空気を前記車外吹出口または前記空調吹出口へと切替える第二の風路切替手段を備えた構成とし、
除湿暖房運転時には、前記冷温切替手段を温風風路側に切替え、前記第二の風路切替手段を前記車外吹出口側に切替えて、
前記温風風路内の前記加熱用熱交換器によって加熱された空気の少なくとも一部を前記第一の風路切替手段によって前記再生風路に導入し、前記除湿手段の再生部と、前記冷却用熱交換器と、を通過させることにより、
前記除湿手段の再生後の空気から熱を前記冷房用熱交換器で回収したのちに車外へ排気することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記再生風路内の前記除湿手段と前記冷風風路内の前記冷却用熱交換器との間に、前記第一送風手段と同じブロアモータで回転駆動する第二送風手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記内気導入口と、前記車外吸気風路内の前記顕熱交換器より下流側と、を接続するバイパス風路と、
前記車外吸気風路内の前記顕熱交換器より下流側と、前記バイパス風路と、の風路を切替える第三の風路切替手段を備え、
前記除湿風路内の前記除湿手段より下流側と、前記再生風路内の前記除湿手段より下流側と、を接続する接続口を備え、
前記接続口と前記除湿風路内の前記除湿手段より下流側との風路を切替える第四の風路切替手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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